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プロフェッションジャーナル No.223が公開されました!~今週のお薦め記事~

2017年6月22日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.223を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2017/06/22

山本守之の法人税“一刀両断” 【第36回】「減価償却をめぐる一考察」

山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第36回】 「減価償却をめぐる一考察」   税理士 山本 守之   1 減価償却の目的 (1) 考え方 減価償却は、何を目的として行われるかという点について大別すると、次のように2つの考え方があります。 ① 期間損益計算上の手続で、損益計算上の区切られた期間(事業年度)の費用配分 ② 減価償却資産に投下した費用の回収手続で、次期以降の投資に備えたものであるから内部留保   ②の考え方に従えば、期間毎の計算を必要とするものではなく、設備等の再調達資金を可能なとき回収すればよいとされるでしょうし、時価で回収しなければならないこととなってしまいます。 費用収益対応の原則及び取得原価主義を採る近代会計においては、到底②の考え方によることはできず、適正な期間損益を測定するためには、①の考え方が通説となっています。 税法においても、一定期間(各事業年度)の適正な所得計算を行い、これに基づいて税を課するという立場から、期間損益測定のための手続であると認識しており、この点においては企業会計と合致しています。 ところで、税法では、はじめからこの考え方を貫いてきたかといえば、そうでもありません。税法の減価償却の取扱いの沿革は、この点でも興味があります。 (2) 新しい考え方 減価償却の効用について減価償却資産の取得価額を使用可能期間にわたって費用を配分するのだという考え方が、平成19年度税制改正によって変わってきたとする向きがあります。 減価償却の目的については、一般的に次のように説明されていました。 ① 企業における期間損益計算上の手続であり、損益計算上の区切られた期間(事業年度)の費用配分である。 ② 設備等減価償却資産に投下した費用の回収手続であり、次期以降の投資に備えたものであるから内部留保である。   このうち、会計分野で特に強調されているのが①の費用配分説で、このため、減価償却資産の耐用年数も通常の維持、修理を行った場合の物理的年数を基礎とし、さらにこれに経済的陳腐化を加味した効用持続期間によって定められるとされるのです。 しかし、近年では、効用持続期間よりも、企業が投下した資本を何年で回収するかという発想で耐用年数が定められているのです。 平成19年度の税制改正で次の資産の法定耐用年数が短縮されたのも、このような考え方によるものでした。 ① フラットパネルディスプレイ製造設備5年(改正前10年) ② フラットパネル用フィルム材料製造設備5年(改正前10年) ③ 半導体用フォトレジスト製造設備5年(改正前8年)   例えば、②のフラットパネル用フィルムは液晶・プラズマテレビ用で、この分野は日本、米国、韓国が競合しており、耐用年数が米国5年、韓国4年に比べて日本は10年となっていたため、国際的なイコールフッテング(対等の地位、競争条件の平等化)のためにも日本も耐用年数を5年(改正前10年)としたもので、会計学の旧い考え方(効用持続期間)では実務に対応できなかったのです。 これらの機械の効用持続期間は10年かもしれませんが、投資に対する回収期間と考えれば、企業は5年以下の期間の中で経営上の設計をしなければ他の企業との競争に打ち勝つことはできません。このため、5年を国際的なイコールフッテングと考えなければなりません。 平成19年1月31日の東京地裁判決では、中部電力における火力発電設備が廃止により「既存の施設場所」で「固有の用途」が失われているので有姿除却は認められるべきであるとした事例があります。 この事件は、中部電力(以下A社という)が、平成不況の影響により最大電力の伸び率が純化していたため、平成3年から5年にかけて、最大電力需要に比べて供給力が急速に過大となりつつありました。その後も、長引く不況による需要低迷に加えて、同8年以降、発電効率が極めて高い火力発電所の最新鋭の大規模発電設備が順次運転を開始したため、最大電力需要に比べて供給力が過大となり、設備余剰の状態が一層顕著となっていました。 A社は、発電所を有効活用することを目的に、平成10年度以降、低効率の既存発電設備について、年間を通じて運用を停止する長期計画停止を行い、有姿除却しました。 このような事案でみますと、減価償却を単に費用の配分と考え、除却を設備の廃止を前提とする考え方はできません。 例えば、航空機でも過大な燃料を要するジャンボ機のようなものは、他に売却し、燃料効率の良い中型機(ボーイング777型機、787型機)が中心になっています。 この場合も減価償却を「費用配分」と考える会計的発想は改めなければなりません。 (3) 今後の方向 税制の改革で法人税率を引き下げ、その財源として第二次改革(平成28年以前)で減価償却の方法を定額法に限定するというのが政府の考え方ですが、技術改革が激しく事業供用の初期に多額の償却費を計上したい企業としては、定額法よりも定率法を選定したいとするのは当然です。 安倍総理は記者会見(平成25年6月24日)で、「われわれが目指すのはドイツだ」としていますが、筆者がドイツの税制改革を研究するために平成19年にドイツ首相府を訪れた際、筆者はMichael Sell氏(首相府経済総局次長(当時))に「定率法の廃止は、単に税収を上げる目的によるものなのですか。それとも、理論的に定率法より定額法が正しいという根拠があって、定率法を廃止するのですか」と質問したところ「定率法より定額法が理論的かどうかはわからない。ドイツの一般的な税に対する考え方であるが、税金と国の財政は一体である。長期的に国が財政を維持していくためには、赤字をいつまでもひきずっているわけにはいかない」という答えが返ってきました。本当に正直で、日本の官僚や学者にはない素直さに好感が持てました。 これに対して日本の学者委員が中心となる政府税調の法人課税DGでは、「減価償却方法の選択の柔軟性は、資産の使用実態に合わせた適切な減価償却費の計上が目的だが、実際はその時々の損益状況に応じた節税効果の観点から選択が行われているおそれがある。特に初期の償却限度額が大きくなる定率法は、所得操作の可能性を大きくする。また、同様の資産について同様の使用実態があるにもかかわらず、法人によって減価償却方法が異なるという不均衡を生じさせるおそれがある」としていることは納得できません。 本来は「定額法も定率法も理論的には正しい。税率引き下げで財源が欲しいから定額法に限定したい」と答えるべきではないでしょうか。   2 減価償却方法の大改正 (1) 平成19年度の改正のポイント 平成19年4月1日以後に取得する減価償却資産については、償却可能限度額(取得価額の95%)及び残存価額を廃止し、250%定率法を導入することにより耐用年数経過時に1円(備忘価額)まで償却できることとされました。 平成19年3月31日以前に取得をした減価償却資産については、償却可能限度額まで償却した後、5年間で1円(備忘価額)まで均等償却ができます。 (2) 残存価額、償却可能限度額の廃止 残存価額を有形固定資産(坑道、生物を除く)における取得価額の10%相当額を本来の用役を果たした後に得られるべき価額(salvage value)とみるのは、経済実態に即していないという指摘がかなり前からされていました。 にもかかわらず、毎年税制改正に際して、これに真正面から取り組むということは行われてきませんでした。 その理由は、定率法償却率が次の算式で計算するように定められていたからです。 これによると、ルートの中の残存価額の額がそのまま定率法償却率に影響します。 ルートの中が100分の10とされていましたが、これを100分の5にすると定率法償却率が30%引き上げられ、当時(昭和39年)で税収が4,000億円減少するのです。 定額法の場合は、取得価額から残存価額を控除したあとの金額に償却率を乗じますが、定率法の場合は、未償却額に償却率を乗ずることになり、残存価額をいかほどとするかによって償却率そのものが異なってしまうのです。 実は、昭和39年度の税制改正の際、経済界から「実情に即さない残存価額10%は是正するように」と大蔵省(当時)主税局長に要求がありました。しかし、残存価額を引き下げると、定率法の償却率が大きくなって巨額の税収減となることを恐れた主税局は、昭和39年度から残存価額とは別の償却可能限度額という概念を取り入れ、「残存価額が実情にそぐわない」という指摘に応えながら税収を減少させないという方法をとったのです。 このように、税制改正に際して残存価額はいかにあるべきかという基本的議論を避け、残存価額を引き下げた場合の税収減にどのように対処するかという財務官僚の悪知恵として考え出されたのが「償却可能限度額」ですから、諸外国にはこのような概念はありません。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (出所) 経済産業省資料を筆者が一部修正   (3) 5%に達した減価償却資産 改正前までは、資産を除却しない限り、償却可能限度額までしか償却できなかったのですが、改正後は100%まで償却できます。 なお、平成19年3月31日以前に取得し、95%まで償却が進んだ資産については、事後5年間で均等全額償却できます。 改正後の取扱いは次のようになります。 (出所) 国税庁資料 (4) 平成20年度の改正のポイント 平成20年度改正では、減価償却資産の使用の実態等について更に調査・分析を進め、法定耐用年数や資産区分の見直し、法定耐用年数の短縮特例制度の手続が簡素化されています。 平成20度年の改正内容は次の通りです。 ① 法定耐用年数区分を大括り化(390区分→55区分)することとしました。 ② 耐用年数の短縮特例の適用を受けた減価償却資産と同一の取得等をした場合等は承認不要とする等、短縮特定の手続き簡素化を行うこととしました。 ③ 中小企業者等の少額減価償却資産(30万円未満)を取得した場合の損金算入の特定適用期限を2年延長することとしました。   他に、汚水処理用減価償却資産の適用年数とばい煙処理用減価償却資産の適用年数を統合する等の改正が行われました。 (出所)財務省資料 (出所)経済産業省『平成20年度税制改正について』(平成19年12月) (了)

#No. 223(掲載号)
#山本 守之
2017/06/22

国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第6回】「非居住者とストックオプション税制」

国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第6回】 「非居住者とストックオプション税制」   税理士 菅野 真美   - 質 問 - 私(現在、日本の非居住者)甲は、乙社(日本法人)の社員で、乙社のストックオプションを付与されました。その後、現在に至るまで日本での勤務期間(1年間)と外国での勤務期間(2年間)があります。 今般、ストックオプションの権利行使をし、売却しようと考えています。この場合、日本で譲渡所得等に課税されるのでしょうか。また、他に留意点はありますか。   ◆ ◆ 解 説 ◆ ◆   ▷ストックオプションに対する課税 ストックオプションは、新株予約権の1つで、あらかじめ決められた価額で株式を購入する権利のことをいう。企業が従業員や役員のモチベーションを上げるためのインセンティブとしてストックオプションが採用されることがある。これは、経営努力で企業の業績が上がれば株価も上昇することから、ストックオプションを従業員や役員に付与し、権利行使後に市場で売却することにより報酬の支払いをマーケットが行うことになり、企業の財務体質にも寄与するというメリットがある。 このストックオプションに対する課税方法は、大きく2つに分けることができる。「税制適格ストックオプション」と「税制非適格ストックオプション」である。 ストックオプションに対する課税のタイミングとしては、付与時、権利行使時、株式譲渡(売却)時の3つがあるが、それぞれの課税関係をまとめると、次のようになる。 なお、ストックオプション税制の概要については、次の経済産業省のホームページを参照されたい。   ▷非居住者の税制適格ストックオプションの課税(国内法)の場合 それでは、非居住者が税制適格ストックオプションの付与を受け、行使し、譲渡した場合の課税関係がどのようになるのかを考える。 非居住者が内国法人の有価証券を売却した場合、原則的には課税されないが、税制適格ストックオプションを売却した場合は、所得税及び復興特別所得税の課税対象となる(措法29の2⑦、措令19の3⑭)。 これは、本来ならば権利行使時に給与所得課税を行うところを特例により譲渡時まで課税を繰り延べているのは、最終的に譲渡時に日本での課税が可能だからであって、もし非居住者ならば日本での課税が全くなくなることから、課税の公平から考えて不合理だからである。 したがって、甲が権利行使したストックオプションが税制適格ストックオプションに該当する場合は、日本で譲渡所得について15.315%の税率で課税されることとなる。この所得については、申告分離課税となり、確定申告が必要となる(所法161①三、164①二)。   ▷非居住者の税制適格ストックオプションの課税(租税条約)の場合 上記の課税関係は、あくまで国内法に基づくものである。日本は多くの国と租税条約を結んでおり、租税条約と国内法が異なる取扱いである場合は、租税条約が優先される(所法162)。 税制適格ストップオプションの売却益が生じた場合、租税条約の条項の読み方は、権利行使益(権利行使時の時価-権利行使価額)部分は給与所得の条項で、譲渡益(譲渡価額-権利行使時の時価)部分は譲渡所得の条項で検討すると解されている。 たとえば、甲が中国に居住している場合は、日中租税協定で検討することになる。日中租税協定の15条給与所得によると、一方の締約国の居住者がその勤務について取得する報酬に対しては、勤務が他方の締約国内において行われない限り、当該一方の締約国においてのみ租税を課すことができ、勤務が他方の締約国内において行われる場合は、原則的には、他方の締約国で租税を課すことができるとされている。 よって、甲の場合、付与から行使までの3年間において日本(1年間)中国(2年間)の場合、権利行使のうち日本での勤務期間対応部分については日本での課税対象となるが、あくまでも株式の譲渡益に対応するものであることから、株式等の譲渡所得に係る国内源泉所得として15.315%の税率で所得税等が課されることとなる。 次に譲渡所得部分であるが、これは、13条(譲渡所得)4項により、財産の譲渡による収益であって他方の締約国において生ずるものに対しては、当該他方の締約国において租税を課することができるとされており、この税制適格ストックオプションの譲渡益は国内法により日本での課税対象となり、譲渡益について15.315%の税率で所得税等が課されることになる。 なお、株式の譲渡所得について、多くの租税条約においては、日中租税協定とは異なり、原則的には、居住地国のみの課税とされる。   ▷税制非適格ストップオプションの課税(国内法)の場合 それでは、税制非適格ストックオプションの場合はどうなるかを考える。この場合、まず、権利行使益について給与所得課税の対象となる(所令84)。 甲は従業員であることから、給与所得のうち国内勤務部分が所得税等の対象となり、国外勤務部分は課税対象外となる(所令285①一)。こちらは、国内に恒久的施設のない非居住者の給与所得であることから、20.42%の所得税等の源泉分離課税の対象となる(所法161①十二イ、164②二)。 譲渡所得部分については、通常の株式の譲渡所得と同様となり、原則的には日本での課税対象外となる。   ▷国外転出時課税とストックオプション さて、非居住者のストックオプションの留意事項として、国外転出時課税がある。国外転出時課税の対象には有価証券が含まれることから、原則的にはストックオプションを含めた新株予約権も対象となるが、平成28年度の税制改正により、非適格ストックオプションについては、国外転出後も日本における勤務部分について課税対象となるため、国外転出時課税の対象となる有価証券から除外されることとなった(所法60の2①、所令170)。 (了)

#No. 223(掲載号)
#菅野 真美
2017/06/22

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例51(法人税)】 「「中小法人等」の範囲を誤認したため、欠損金の繰戻しによる還付請求を行わなかった事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例51(法人税)】   税理士 齋藤 和助       《基礎知識》 ◆欠損金の繰戻しによる法人税の還付(法法80①) 青色申告書である確定申告書を提出する法人が、各事業年度において欠損が生じた場合において、その欠損金をその欠損が生じた事業年度(欠損事業年度)開始の日前1年以内に開始した事業年度(還付所得事業年度)の所得に繰り戻し、その事業年度の所得に対する法人税額の全部又は一部を還付請求できる制度である。 ◆欠損金の繰戻し還付請求制度の不適用措置(措法66の13) 欠損金の繰戻し還付請求制度は、清算中に終了する事業年度及び解散等の事実が生じた場合の事業年度を除き、平成4年4月1日から平成30年3月31日までの間は、その制度の適用が停止されている。ただし、一定の中小法人等については不適用措置の対象から除かれている。 ◆中小企業者(措令27の4⑩) 資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下の法人のうち次に掲げる法人以外の法人又は資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人。 (1) 発行済株式又は出資の総数又は総額の2分の1以上が同一の大規模法人(資本金の額若しくは出資金の額が1億円を超える法人又は資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人をいい、中小企業投資育成株式会社を除く。)の所有に属している法人 (2) 発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上が大規模法人の所有に属している法人       (了)

#No. 223(掲載号)
#齋藤 和助
2017/06/22

特定居住用財産の買換え特例[一問一答] 【第19回】「譲渡者が買換資産を取得しないで年の中途で死亡した場合」-譲渡者の死亡-

特定居住用財産の買換え特例[一問一答] 【第19回】 「譲渡者が買換資産を取得しないで年の中途で死亡した場合」 -譲渡者の死亡-   税理士 大久保 昭佳   Q Xは、本年2月に自己の居住用の土地家屋(所有期間が10年超で居住期間は10年以上)を6,000万円で売却して、その売却代金をもって4,000万円の土地を購入し、家屋についても請負契約を締結したのですが、完成前の9月に死亡してしまいました。 この場合、「特定の居住用財産の買換えの特例(措法36の2)」の適用を受けることができるでしょうか。 なお、その家屋はXの相続人が取得し、本年の12月から同人が居住しています。 A 「買換えの特例」の適用を受けることができます。 ●○●○解説○●○● 譲渡資産の譲渡をした者が買換資産を取得しない場合であっても、その死亡前に買換資産の取得に関する売買契約又は請負契約を締結しているなど買換資産が具体的に確定しており、当該買換資産をその相続人が買換資産の取得期間内に取得し、かつ、その居住の用に供すべき期間内に当該買換資産を当該相続人の居住の用に供したときには、譲渡資産の譲渡をした者の当該譲渡に係る譲渡所得について「買換えの特例」の適用を受けることができることとされています(措法36の2①、措令24の2⑬、措通36の2-21(相続人が買換資産を取得した場合))。 したがって本事例の場合は、Xの死亡前に家屋の請負契約が締結されているなどその適用要件を満たしていることから、同特例の適用を受けることができることとなります。 この場合の手続きとしては、Xが年の中途において死亡したことにより、Xの相続人は、その相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月を経過した日の前日までに、所轄税務署長に対して、被相続人の生前におけるその年中の所得について準確定申告書を提出しなければならないものとされています(所法125①)ので、当該譲渡所得についても、その準確定申告書に「買換えの特例」の適用を受ける旨の記載をするとともに、所定の書類を添付する必要があります。 なお、相続人は、準確定申告の際に「買換えの特例」の適用を受けることに代えて「3,000万円特別控除(措法35)」の適用を受けることを選択することもできます。 (了)

#No. 223(掲載号)
#大久保 昭佳
2017/06/22

増額更正時における税額控除額の連動措置と手続の簡素化

増額更正時における税額控除額の連動措置と手続の簡素化   税理士 佐藤 善恵   ▷はじめに 平成29年度税制改正前、外国税額控除等については、増額更正によって税額控除額が増加しても、実際に控除できる金額は自動的に増加しない規定ぶりであったため、条文に厳密に即せば、納税者としては別途、税額控除額を増加させる旨の更正の請求を行う必要があった。 既報の通り、今年度の改正では、納税環境整備の一貫として、自動的に税額控除額が増加する措置が講じられ、手続が簡素化された。 また、修正申告や更正の請求における税額控除額の連動についても、それらの修正申告書や更正請求書において控除を受ける金額を増加させられることが明確化された。 上記の改正に関し、本稿では、改正法令における規定ぶりを確認したい。   ▷大綱と条項の確認 まず、平成29年度税制改正大綱における「7 円滑・適正な納税のための環境整備」の項目には、次のように記載されていた。 次に、改正された租税特別措置法(以下「措置法」)の内容を確認するために、一例として措置法42条の6《中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除》の申告要件に関する条項を取り上げる。   確定申告書等とは、法人税の確定申告書及び仮決算をした場合の中間申告書を指すところ(措置法2二十七)、控除される金額は、確定申告書等(以下「当初申告」)の添付書類に係る特定機械装置等が対象である旨に変更はない(つまり、資産の記載漏れがあっても後から加えることはできない)。 今年度の改正では、法人税額に変動があった場合には、その変動に係る修正申告又は更正請求において同時に税額控除額を連動させることが明確化された。改正後の条文では、計算の基礎となる取得価額に着目して、当初申告に記載した特定機械装置の取得価額が限度といった表現になった上で、修正申告書や更正請求書において、当初申告の取得価額を限度として控除金額を計算することが明記されたからである。 この点、改正前は、控除される金額が、当初申告で宣言した取得価額を基礎に計算した金額に限るという表現であったため、控除金額は動かないと解されたものである。 つまり、この条項が改正されたことにより、大綱記載の後段「要件を満たす場合には税額控除額を変更できることを明らかにすることで、税務署長が増額更正をする場合において連動的に税額控除額を増加できるものとする。」が達成されたものである。 一方で、大綱の前段「外国税額控除制度及び研究開発税制等について、その適用に係る申告要件につき、納税者の立証すべき事項及び当初申告の要否を明確化し、」の記載については、対応的に条文に反映されていない(※上記の条文新旧に緑色文字で示した)とも読み取れる。しかし、条文に「取得価額」が「限度」と明記されたことで、控除税額が連動することが明確化されたことは評価したい。   ▷条文改正の対象となった措置 この措置に関連して改正された租税特別措置法(以下「措置法」)のうち、法人に関する該当条項を以下に掲げる。   ▷適用期日 この改正は、平成29年4月1日以後提出する修正申告書若しくは更正請求書又は同日以後の更正について適用される。 (了)

#No. 223(掲載号)
#佐藤 善恵
2017/06/22

理由付記の不備をめぐる事例研究 【第25回】「受贈益」~新株引受権に係る受贈益を計上しなければならないと判断した理由は?~

理由付記の不備をめぐる事例研究 【第25回】 「受贈益」 ~新株引受権に係る受贈益を計上しなければならないと判断した理由は?~   千葉商科大学商経学部講師 泉 絢也   今回は、青色申告法人X社に対して行われた「新株引受権に係る受贈益計上漏れ」に係る法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた仙台地裁昭和53年3月27日判決(訟月24巻7号1481頁。以下「本判決」という)を素材とする。   1 更正通知書に記載された更正の理由(本件理由付記) (注) 素材とした本判決の判決文から読み取ることができる理由付記の一部を筆者が加工している。   2 本件理由付記から読み取ることができる関係図   3 本判決の判断 本判決は、大要次のとおり、本件理由付記は法の要求する理由付記として不備があると判断した。 (1) 求められる理由付記の程度 (2) 理由付記の十分性   4 検討 (1) 求められる理由付記の程度 素材とした本判決に係る訴訟における原告X社の主張を見ると、X社は、(株)Sの新株発行はすべて公募の方法によったものであり、新株引受権の付与は受けていないことを前提に、新株引受権に係る受贈益を益金の額に算入するような処理はしていなかったようである。 これに対して、課税庁の主張を見ると、(株)Sの新株発行は、形式的には公募の方法によったものの、実質的には株主以外の者に対し新株引受権を与える方法でなされたものであって、X社は新株引受権に基づき、新株20万株を取得したものであると認定した上で、払込価額と時価との差額(新株引受権の価額)を受贈益として課税すべきである(法人税法22条2項等)と判断したものであることがわかる。 課税庁における法解釈の主張について紹介することは省略するが、上記主張からすれば、増資に係るX社の帳簿書類の記載状況等は必ずしも明らかではないものの、本件更正処分は、X社の帳簿書類の記載自体を否認して更正する場合に該当するといえそうである。 したがって、理由付記の程度としては、 ことになる(最高裁昭和60年4月23日第三小法廷判決・民集39巻3号850頁等参照)。 (2) 理由付記の十分性 次のとおり、本件理由付記は、法の求める理由付記として十分なものではないと考える。 まず、本件理由付記は、本件更正処分の事実上の根拠を明らかにしていない。すなわち、課税庁は、(株)Sの新株発行について、形式的には公募の方法によったものの、実質的には株主以外の者に対し新株引受権を与える方法でなされたものであって、X社は新株引受権に基づき、新株20万株を取得したものであると認定しているにもかかわらず、その論拠及び証拠資料が記載されていないのである。したがって、更正処分の根拠として帳簿書類の記載以上に信憑力のある資料を摘示していない点で、本件理由付記には不備がある。 また、本件理由付記は、新株引受権1,940万円という金額がいかなる根拠、方法に基づいて算出されたものであるかという点について記載していない。(株)Sは非上場株式であることを前提とすると、(株)S株式の時価評価には手間と困難が伴うこともあり、また、そもそも、同一の資産であっても評価者、評価方法等により時価評価額が異なる場合もあり、通常、課税庁による評価が唯一ないし最も合理的なものであると説明することには困難を伴う。 そうであれば、上述のような手間と困難を嫌う課税庁が安易かつ恣意的に時価評価を行うことがないよう、また、評価金額、評価方法等を争う納税者の不服申立ての便宜に資するよう、新株引受権の時価評価に係る具体的な積算過程を一定程度、理由付記すべきであろう(本件とは事案が異なるものの、本連載【第11回】で掲げた参考裁判例を参照)。 したがって、本件理由付記は、更正処分庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、更正の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与えるという理由付記の趣旨目的に適うものではないと考える。 *  *  * 次回は、「有価証券譲渡益の計上漏れ」に係る法人税更正処分の理由付記の事例を取り上げる。 (了)

#No. 223(掲載号)
#泉 絢也
2017/06/22

〔判決からみた〕会計不正事件における当事者の損害賠償責任 【第1回】「エフオーアイ損害賠償請求事件第1審判決の特徴」

〔判決からみた〕 会計不正事件における当事者の損害賠償責任 【第1回】 「エフオーアイ損害賠償請求事件第1審判決の特徴」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   エフオーアイ損害賠償請求事件の概要 1 訴訟当事者 2 粉飾決算の内容 FOI社においては、平成16年3月期において、決算が大幅な赤字となって銀行融資を受けることができなくなることを防ぐため、被告Y1(奥村元代表取締役社長)、被告Y2(上畠代表取締役専務)及び被告Y3(河野取締役)ら役員が相談の上、見込生産をして製造を終了した6台のエッチング装置につき、実際には受注がなかったにもかかわらず、受注があったように装って架空の売上げを計上することにより、実際の売上高が7億1,941万328円であるのに、決算書類には売上高が23億2,799万9,328円である旨記載する粉飾決算を行った。 FOI社は、平成17年3月期以降も、平成21年3月期までの間、売上高を実際よりも水増しして計上する方法による粉飾決算を継続した。平成21年3月期の粉飾額は115億3,639万5,000円に及び、決算書類に記載された売上高の97.3%が架空の売上げであった。 これらの粉飾は、被告Y1(奥村元代表取締役社長)、被告Y2(上畠代表取締役専務)及び被告Y3(河野取締役)ら取締役のほか、主立った幹部職員らが共謀して行ったものであった(本件粉飾)。   上場申請から上場→上場廃止に至る経緯 1 1回目の上場申請と取下げ 2 2回目の上場申請と取下げ 3 3回目の上場申請から上場廃止   損害賠償責任に対する裁判所の判断 1 被告Y2(上畠代表取締役専務)、被告Y4(ゲオルギー取締役)及び被告Y1(奥村元代表取締役社長)(第5事件に限る)に対する請求について 被告Y2(上畠代表取締役専務)及び被告Y4(ゲオルギー取締役)は全事件について、被告Y1(奥村元代表取締役社長)は第5事件について、いずれも適式の呼出しを受けたにもかかわらず、本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面も提出しない。 したがって、上記被告らは、当該事件についての請求原因事実を自白したものとみなされるから、原告らの被告Y2(上畠代表取締役専務)及び被告Y4(ゲオルギー取締役)に対する請求並びに被告Y1(奥村元代表取締役社長)に対する第5事件に係る請求は、いずれも理由がある。 2 有価証券届出書等の虚偽記載の有無について (1) 被告Y1(奥村元代表取締役社長)について(第1事件ないし第4事件) 被告Y1(奥村元代表取締役社長)は、FOI社の代表取締役社長として、本件粉飾を当初から認識し、これを主導又は容認してきた人物であるから、本件有価証券届出書の虚偽記載を知っていたことは明らかである。 したがって、被告Y1(奥村元代表取締役社長)は、すべての原告らに対し、金商法21条1項1号、22条1項の責任を免れない。 (2) 被告Y3(河野取締役)について 被告Y3(河野取締役)は、FOI社の取締役として、本件粉飾に当初から関わり、これを実行してきた人物であるから、本件有価証券届出書の虚偽記載を知っていたことは明らかである。 したがって、被告Y3(河野取締役)は、すべての原告らに対し、金商法21条1項1号、22条1項の責任を免れない。たとえ被告Y3(河野取締役)が被告Y1(奥村元代表取締役社長)や被告Y2(上畠代表取締役専務)の指示又は命令によって本件粉飾に関与していたものであるとしても、上記判断は左右されない。 (3) 被告監査役らについて 被告監査役らは、いずれも、FOI社による本件粉飾を認識していなかったものと認められるから、本件有価証券届出書の虚偽記載を知らなかったものと認められる。また、被告監査役らは、FOI社の会計監査の信頼性については、一応の監査を行っていたものと認めることができる。 FOI社においては、単に財務諸表において架空の売上げを計上していたにとどまらず、取締役ら及び多数の幹部社員らが共謀し、売上取引に関する多数の書類を偽造したり、ペーパーカンパニーを設立して売掛金の回収を偽装したり、販売見込みのない製品を製造し続けるなどの大がかりな偽装工作を5年以上にわたり継続し、平成21年3月期の決算においては、実に総売上げの97%以上に上る115億円余りもの架空売上げを計上していたというのであり、取締役らのかかる違法行為は、本来監査役の業務監査によって是正されるべきものである。 被告Y6(高倉常勤監査役)は、平成16年3月期の売上げのうちに架空のものがあることを認識していたというのであり、その後、FOI社の売上げが急増したにもかかわらず売掛金の回収が進まない状況において、架空の売上げが計上されている可能性について疑問を抱き、売上げの実在性について独自の調査を行うなどの対応を執ることは十分に可能であったというべきであるが、被告Y6(高倉常勤監査役)が、会計監査人の報告を受ける以外にかかる観点から何らかの調査を行ったことをうかがわせる証拠はない。 また、被告Y6(高倉常勤監査役)は、常勤監査役であったにもかかわらず週に2日程度しか出勤しておらず、FOI社においてほぼ毎週開催されていた戦略会議にも出席していなかったのみならず、対外的には戦略会議に毎回出席していたかのように装い、議事録にかかる虚偽の記載がされていることを認識しながら放置していたというのであるから(なお、被告Y6(高倉常勤監査役)は、被告みずほ証券の引受審査における質問に対し、毎日出勤し、戦略会議にも出席している旨虚偽の回答をしている)、取締役の業務執行に対する日常の業務監査が十分であったとはいい難い。 非常勤の社外監査役である被告Y5(染谷監査役)及び被告Y7(水上監査役)は、上記のような被告Y6(高倉常勤監査役)の職務執行状況を認識していたか、容易に認識し得たと考えられるのに、これを是正するための何らかの対応を執った形跡がないところ、非常勤監査役においても、常勤監査役の職務執行の適正さに疑念を生ずべき事情があるときは、これを是正するための措置を執る義務があるというべきであるから、被告Y5(染谷監査役)及び被告Y7(水上監査役)の監査役としての職務の遂行が十分なものであったとはいい難い。 被告監査役らにおいて第1投書の存在を認識していたことを認めるに足りる証拠はないものの、監査役会において、上場申請取下げの理由について他の役員ら又は被告みずほ証券に問い合わせをするなどして調査すれば、第1投書の存在を認識することは十分に可能であったというべきであり、その上で監査役の権限を行使して調査を行えば、FOI社において粉飾決算が行われていた事実が判明していた可能性がないとはいえない。 被告監査役らについては、いまだ相当な注意を用いて監査を行っていたとは認められず、他に相当な注意を用いたにもかかわらず本件粉飾の事実を知ることができなかったことを認めるに足りる証拠はない。そうすると、被告監査役らは、いずれも、金商法21条1項1号、22条1項の責任を免れることはできないというべきである。 (4) 被告みずほ証券について 第1投書を受領したことを踏まえて行った被告みずほ証券の審査が十分なものであったとはいえず、仮に第1投書を踏まえた十分な審査を行っていれば、平成20年4月頃の時点でFOI社が粉飾決算を行っていることを発見できた可能性が少なからずあったというべきである。 よって、被告みずほ証券は、本件上場に係る引受審査について、本件有価証券届出書等の虚偽記載について、相当な注意を用いたにもかかわらずこれを知ることができなかったものと認めることはできないから、原告らに対し、金商法21条1項4号及び17条の責任を負う。 (5) 被告東証について 金商法の趣旨及び被告東証と被告自主規制法人との間の業務委託契約の内容に照らせば、被告自主規制法人は、被告東証の委託を受け、被告東証とは独立した立場において上場審査の全部を行っていたものと認められ、被告東証が行う上場審査の補助者として上場審査に関与していたものではない。したがって、仮に被告自主規制法人が行った上場審査の過程において過失があったとしても、そのことにより被告東証が不法行為責任を負うということはできない。 以上の見地からすると、原告らが被告東証らの責任原因として主張する不法行為は、被告自主規制法人が行った上場審査の過程における過失をその根拠とするものであるから、これにより被告東証が不法行為責任を負担する法律上の根拠を欠くというべきである。 (6) 被告自主規制法人について 被告自主規制法人は、上場審査において、財務諸表の内容の正確性に疑いを生じさせるような事情が存在したにもかかわらず、そのような事情を看過し、追加の審査を行うことなく漫然と上場を承認したものと認めることはできないから、同被告について、投資者に対して負っていた注意義務に違反する行為があったということはできない。 したがって、原告らの被告自主規制法人に対する請求は理由がないというべきである。   本判決の特徴 上述してきたように、エフオーアイ事件第1審判決(東京地方裁判所平成28年12月20日判決)は、粉飾決算の首謀者や実行者以外の株主に対する損害賠償責任を広く認めたものとなっている。その最大の特徴は、主幹事証券と非常勤の社外取締役の損害賠償責任を認めた点にある。 それらについて、これまでの裁判所の判断との相違について、検討したい。なお、詳細な分析については、次回以降の連載を通して検討していく予定である。 1 主幹事証券の損害賠償責任を認めた判決であること 本判決は、有価証券届出書の虚偽記載に係る引受証券会社の金融商品取引法第21条1項4号、17条に基づく民事責任について判断を示したものであり、会計監査人の監査を受けた財務諸表に虚偽記載があったことを知らなかった引受証券会社に注意義務違反があったとして損害賠償責任を認めた初めての裁判例である。 責任を認めた理由については、上述のとおり、引受審査において、有価証券届出書の虚偽記載について、相当な注意を用いたにもかかわらずこれを知ることができなかったものと認めることはできないことによるのであるが、匿名の投書を理由とした2度にわたる上場申請の取下げという本事件の特殊性も踏まえ、本連載【第5回】において、裁判所の判断のポイントとなった引受審査の状況について掘り下げて検討したい。 2 非常勤社外監査役の損害賠償責任を認めた判決であること 裁判所が非常勤社外監査役の損害賠償責任を認めた論理構成は、以下のようになる。 よって、金融商品取引法第21条1項1号、第22条1項の責任を免れることはできないというものであった。 過去の裁判では、社外監査役については損害賠償責任を負わないと判断したものが多く、また、監査役就任時の責任限定契約に基づいて、監査役が過去の報酬を返還することによって法廷外で和解をすることも少なくないものと考えられてきた。 本判決は、常勤監査役が十分に職務を果たしていない(そのため、粉飾決算が見逃されてきた)という状況の中、非常勤である社外監査役の職務について、かなり踏み込んだ判断を行ったものであり、今後の社外監査役が職務上果たすべき「相当な注意」について、警告を与えるものであると評価できよう。 *   *  * 次回以降では、監査役の損害賠償責任について、先行した2つの事件判決における裁判所の判断を見たうえで、本判決との比較検討を行いたい。 (了)

#No. 223(掲載号)
#米澤 勝
2017/06/22

電子マネー・仮想通貨等の非現金をめぐる会計処理と税務Q&A 【第9回】「仮想通貨をめぐる会計処理(総論)」

電子マネー・仮想通貨等の非現金をめぐる 会計処理と税務Q&A 【第9回】 「仮想通貨をめぐる会計処理(総論)」   公認会計士・税理士 八代醍 和也   A 我が国に比べると一部海外では仮想通貨の流通がある程度進んでいること、また、国内でも徐々に流通環境が整備され始めたことから、筆者の周りでも少しずつではあるが、類似した質問を受けることが増えつつあるように感じる。 そこで今回から4回に分けて、仮想通貨をめぐる会計処理・税務に関し、代表的な取引種類ごとに事例形式で検討していきたい。今回はその導入として、この問題に関する議論の方向性や会計処理の基本的考え方などを総論的に紹介する。 ただし、本連載【第1回】でも述べたとおり、本稿執筆現在、仮想通貨の会計処理に関しては、その拠り所となる会計基準は存在しておらず、その開発に向けた動きがようやく開始されたところである。また、税務においても、本連載【第6回】で述べたように、平成29年度税制改正において、仮想通貨の譲渡取引について消費税が非課税とされることになったものの、法人課税・所得課税の取扱いを定めた法令等は存在していない。 このため、本連載ではあくまでも現行の会計基準及び税法における類似の規定・取扱いの下で求められると考えられるものという位置づけのもと、解説を行う。したがって、今後の会計基準の開発状況や、税制改正の内容如何によっては、結論が変わる可能性もある点に留意願いたい。   1 仮想通貨の会計的特性 まず、処理を検討するに当たって、仮想通貨の会計的な性格がどういったものであるかを勘案する必要があろう。 「仮想通貨に係る会計上の取扱いに関する指針」の策定に向けて議論が始まった企業会計基準審議会の議事によると、仮想通貨を金融商品、棚卸資産、外貨建ての現金として処理する方法が検討されているようであるが、まだ結論を出すには至っていない状況と思われる。 基準諮問会議や専門委員会の議事については以下を参照されたい。 そこで、上記のうち、現状いずれが妥当な処理といえるかを検討してみたい。   2 改正資金決済法における仮想通貨の定義 詳細な検討に先立ち、改正資金決済法における定義から整理しておきたい。その内容は以下のとおりである(下線筆者)。 まず、仮想通貨が、これまで本連載で取り扱ってきた「電子マネー」とはその性格を異にするものである点を確認しておきたい。 確かに上記から、両者は「電子的なデータのやり取りによって行う決済サービスを行うことができるもの」という点で共通する部分もあるものの、それ以外の点では大きく異なる。 すなわち、仮想通貨は不特定多数の者に対して使用したり、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができるが、電子マネーは資金決済法上の前払式支払手段であり、基本的にはあくまでも発行者と利用者との間の金銭債権債務関係を生じさせるにとどまる。 また、改正資金決済法には定義されていないが、仮想通貨は、インターネット上に存在する「取引所」において法定通貨との交換が可能であることから、より通貨そのものに近い性格を有する経済的価値と評価することができよう。   3 外貨建ての現金としての性格の検討 それでは、これを法定の通貨と同様、現金として会計処理することが妥当かというと、現時点では決してそこまでは言えないと筆者は考える。 すなわち、電子マネーは法定通貨とは異なり、特定の国家に信用を付与されてはおらず、また、通貨発行機関としての中央銀行のような存在を持たない。これに加え、下記で述べるとおり金融商品や棚卸資産といった他の資産との類似性をも有するものについて、法定通貨と同様に扱うことについては、現時点で会計慣行として形成されておらず、クリアしなければならない課題も多いものと考える。 参考までに、財務諸表等規則ガイドラインにおける現金及び預金の定義を示すと以下のとおりである。会計上の現金や預金の概念は法定通貨より広いものの、現行基準上、仮想通貨が現金の範囲に含まれるとは考えにくいことが理解できよう。   4 金融商品としての性格の検討 金融商品としての性格については、平成28年11月14日開催の第28回基準諮問会議でも述べられているとおり、それ自体が権利を表章するものではないため、有価証券にも該当しない。このため、現行の金融商品会計基準等における金融商品の範囲に含まれるものとして会計処理を検討することは、適当ではないといえるだろう。   5 コモディティとしての性格の検討 一方で、仮想通貨は「取引所」において、法定通貨との交換ができることから、そこに金をはじめとするコモディティと非常によく似た性格を認めることができる。仮想通貨には実際のコモディティと異なり、本源的価値はないものの、その概念的な類似に鑑みると、棚卸資産の評価に関する会計基準における棚卸資産の範囲に含まれるというのは相対的に解釈上の無理が少ないと前述の基準諮問会議議事でも述べられているところである。 短期販売目的や投資目的ではなく、単純な資金決済目的で保有する場合に「必ずしも棚卸資産のように投資の成果を獲得することを意図しているわけではない」点に相違が認められるものの、そもそも我が国では企業会計原則と関係諸法令との調整に関する連続意見書第四にあるとおり、棚卸資産に「販売活動および一般管理活動において短期間に消費されるべき財貨」を含めるなどその範囲を広く解してきた歴史・会計慣行もあり、その点からも、棚卸資産に準じた会計処理を行うことが合理的であると考え得る。   6 税務面における基本的考え方 税務面における仮想通貨の考え方については、『税大ジャーナル第23号(2014.5)』に掲載された『ビットコインと税務』という論文に示されている。 上記の論文では、ビットコインに係る会計処理について「ビットコインの税法上の取扱いを検討する際には、ビットコインの企業会計上の取扱いを論ずる必要がある」としたうえで、「ビットコインを販売目的として取得した場合には、ビットコインは貴金属のようなコモディティと同様の性質を有することから、企業会計原則と関係諸法令との調整に関する連続意見書四に従い、棚卸資産として取り扱うべき」とし、「他の財との物々交換目的でビットコインを保有する場合にも、棚卸資産として取り扱うことが適当である」としており、棚卸資産として会計処理することを支持している。 *  *  * 次回以降の各論においては、今回の仮想通貨を棚卸資産として会計処理することを前提としたうえで、事例形式により具体的な会計処理方法について検討していく。 (了)

#No. 223(掲載号)
#八代醍 和也
2017/06/22

〈実務家が知っておきたい〉空家をめぐる法律上の諸問題【前編】

〈実務家が知っておきたい〉 空家をめぐる法律上の諸問題 【前編】   弁護士法人東町法律事務所 弁護士 羽柴 研吾   1 はじめに 総務省の統計によれば、平成25年10月1日現在における総住宅数は6,063万戸とされ、そのうち空家数は820万戸であり、空家率は13.5%といずれも過去最高を記録したと報告されている(総務省統計局平成27年2月26日付統計トピックスNo.86「統計からみた我が国の住宅 (「平成25年住宅・土地統計調査(確報集計)」の結果から)」の1を参照)。 空家戸数や空家率は今後も上昇していくものと見込まれるところ、空家は相続や住居の変更等、様々な理由から生じる身近な問題である。また、近時、空家等対策の推進に関する法律が制定されるなど、空家問題は古くて新しい問題でもある。 本稿は、空家問題に関する様々な法的問題の一端を整理することを目的としたものである。 なお、本稿内の意見等にわたる部分については筆者個人によるものであり、所属する団体等の見解を代表するものではないことを申し添える。   2 空家の発生理由と不適正管理から生じる問題 (1) 空家の発生理由 空家が生じる理由には様々な要因が存在するところ、国土交通省近畿地方整備局の「住環境整備方策調査業務報告書」(2012年3月)によれば、以下のような事情があるとされている。 (2) 空家の不適正管理から生じる問題 空家の適正な管理が行われなければ、①建物の倒壊による事故、火災による事故、外壁の落下や飛散事故、敷地内の雑草や樹木の隣地への越境等の物理的原因による問題や、②空家への不審者の侵入、不法滞在、不法投棄等の人的原因による問題が生じることになる。 そこで、上記の問題に係る法的な問題について、①民事上の問題と②行政上の問題に分けて検討することとしたい。   3 空家に係る民事上の問題 空家に係る民事上の問題としては、空家の所有権者としての責任と、損害賠償責任が問題になりうる。 (1) 相隣関係上の責任 空家の管理が行われない結果、隣地との境界上の柵が倒壊し、空家敷地内の立木の枝が隣地の敷地内に及んでいる場合、隣地所有者との権利関係については、民法の相隣関係の規定によって調整されることになる。 空家の所有権者が竹木の所有権者でもある場合、隣地の所有権者から枝の切除を請求される可能性があり、その費用も負担しなければならない。 また、空家の残置物やごみ等が隣地に及んでいる場合やそのおそれがある場合には、隣地の所有権者から所有権に基づく物権的妨害排除請求権や物権的妨害予防請求権を行使され、物件の除去や予防措置を講じる必要が生じうる。 (2) 不法行為法上の責任 (ア) 空家の発生により見込まれる損害額について 空家の倒壊、外壁の落下、火災等が生じた場合、近隣住民等の第三者に物的損害や人身損害が生じうる。 具体的な損害額は個別案件によるが、公益財団法人日本住宅総合センターの調査結果によれば、第三者の損害について以下のような試算がされており、空家の所有権者は高額な損害賠償責任を負担するおそれがある。 (※) 詳細は「空き家発生による外部不経済の実態と損害額の試算に係る調査」(公益財団法人日本住宅総合センター)を参照されたい。 (イ) 土地工作物責任 空家の倒壊・外壁落下の事故によって、近隣住民等に損害が生じた場合、空家の所有権者の土地工作物責任(民法第717条)が問題となる。 建物の設置や保存に瑕疵がある場合に、占有者及び所有権者は、民法第717条によって損害賠償責任を負担することになるが、所有者の責任は、占有者と異なり無過失責任である。 同条第1項に規定する瑕疵とは、その種の工作物として通常備えるべき安全性が欠けていることをいうところ、空家の老朽化等によって倒壊や外壁が落下するなどした場合、建物が通常備えるべき安全性を欠いていると判断される可能性が高く、空家の所有権者は非常に重い損害賠償責任を負担することになる。 (ウ) 失火責任法 それでは、空家内の漏電等により火災が発生し、近隣住民等に損害が生じた場合、空家の所有権者はどのような責任を負担するのだろうか。この問題については、不法行為の特別法である失火責任法について理解しておく必要がある。 失火責任法は、我が国に木造家屋が多く、火災が発生した場合にその損害が甚大なものになることが多いことから、失火に対する不法行為責任を特別に軽減し、重過失がある場合に限り不法行為責任を成立させることを目的とした法律である。 ここにいう重過失とは、最高裁によれば「通常人に要求される程度の相当な注意をしないでも、わずかの注意さえすれば、たやすく違法有害な結果を予見することができた場合であるのに、漫然これを見過ごしたような、ほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態」(最判昭和32年7月9日民集11-7-1203)とされており、不法行為責任を負う場面は相当程度限定されている。 それでは、土地工作物の所有権者に無過失責任を負わせる民法第717条と失火者の責任を重過失のある場合に限定する失火責任法は、どちらが優先的に適用されるのだろうか。 この問題を判断した最高裁判例はないものの、大審院時代の判決の中には、たとえば、電力会社が高圧電線の仮設施設の不十分なために火災を起こしたような場合に、失火責任法が優先的に適用され、故意又は重過失のない限り責任を負わないと判示したものがある。一方で、無過失責任たる土地工作物責任が優先するとの下級審裁判例や有力な学説もあり、理論的に固まっていない現状に鑑みれば、空家の所有権者としては、法的な責任を負うことがないよう適正に空家を管理しておくべきである。 (3) 空家が火遊び等により火災の被害に遭った場合 空家に侵入した近所の子どもの火遊びによって火災が発生し、空家が焼失した場合、空家の所有権者は誰に対して損害賠償請求をすることができるだろうか。 まず未成年者に対する損害賠償請求を行うことが考えられるが、民法第712条は、未成年者は他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能(責任能力)を備えていなかった場合に、不法行為責任を負わない旨規定している。 この責任能力に関して、11歳11ヶ月の少年の場合に肯定した裁判例もあれば、12歳7ヶ月の少年の場合に否定した裁判例もあるが、少なくとも小学校低学年のような場合は、責任能力は否定されるものと考えられる。 次に、空家の所有権者は、未成年者の監督責任者である親に対して民法第714条に基づいて損害賠償請求をすることが考えられる。ここでは、被害者救済のために責任無能力者の代わりに監督責任者に責任(代位責任)を負わせた民法第714条と失火者の責任を重過失のある場合に限定する失火責任法の関係をどのように解釈すべきか問題となる。 この問題について、最高裁は、民法714条第1項に基づき未成年者の監督義務者が右火災による損害を賠償すべき義務を負うが、監督義務者に未成年者の監督について重大な過失がなかったときは、これを免れると判示している(最判平成7年1月24日民集49-1-25)。 したがって、空家の所有権者は、被害回復のために、監督義務者の重過失という難しい立証を迫られることになる。 (4) 相続放棄後の留意点 相続人が相続放棄し、他に相続人となる者がいないときに、被相続人の債権者の申立てによって相続財産管理人が選任される場合がある。 この場合、相続放棄をした者は、たとえ遠方に居住していたとしても、相続財産管理人が選任されるまで、当該空家を自己の財産におけるのと同一の注意義務をもって、その財産の管理を継続しなければならない(民法第940条)。 相続人は、相続放棄後も、相続財産管理人に引き継ぐまでの間、損害賠償責任等を追及されることのないよう空家の適正管理を行っておくべきである。 *  *  * 【後編】(6/29公開)では、空家に係る行政上の問題点について整理する。 (了)

#No. 223(掲載号)
#羽柴 研吾
2017/06/22
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