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さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第24回】「養老保険事件」~最判平成24年1月13日(民集66巻1号1頁)~

さっと読める! 実務必須の [重要税務判例] 【第24回】 「養老保険事件」 ~最判平成24年1月13日(民集66巻1号1頁)~   弁護士 菊田 雅裕   (了)

#No. 200(掲載号)
#菊田 雅裕
2016/12/28

包括的租税回避防止規定の理論と解釈 【第30回】「租税回避と実務上の問題点①」

包括的租税回避防止規定の 理論と解釈 【第30回】 「租税回避と実務上の問題点①」   公認会計士 佐藤 信祐   前回までは、租税回避に対する裁判例や過去の学説を見ることにより、租税回避の射程を探っていった。しかし、我々は実務家であることから、やはり実務に当てはめて考える必要がある。 本稿では、①株式譲渡損益とみなし配当、②税制適格要件について検討を行う。   1 はじめに ここでは、拙著『組織再編における包括的租税回避防止規定(中央経済社、平成21年)』(以下、今回以降において「包括否認本」という)に挙げられている事例を参考に、どのような場合に租税回避に該当するか否かの検討を行う予定である。 なお、当時から述べていた点であるが、経済合理性の有無だけでなく、制度趣旨も理解する必要がある。ヤフー・IDCF事件では、租税回避の範囲が広まったかのように言われているが、制度趣旨に反するような否認を受ける可能性があり得ないため、実務上は、ヤフー・IDCF事件前の対応でも問題ないと思われる。   2 株式譲渡損益とみなし配当 包括否認本の第2章では、①法人株主における受取配当金の認識、②みなし配当と株式譲渡損の両建て、③所得税額控除の3つについて解説を行った。 当時、解説を行わなかったのは、個人株主における株式譲渡益の認識である。すなわち、オーナー株主が自分の会社を売却する際には、配当所得ではなく、譲渡所得の方が有利である。このような譲渡所得により節税を図ることについて租税回避に該当するかどうかの解説は行わなかった。この点につき、本連載の【第17回】で解説したように、「会社ぐるみ譲渡ということが、もっとも簡便、合理的な方法ということができる」と判断されていることから、事業譲渡や会社分割よりも簡便、合理的な方法である株式譲渡の手法を租税回避と認定することはできないと考えられる。 さらに、①法人株主における受取配当金の認識については、二重課税の排除という受取配当等の益金不算入の制度趣旨の範囲内であれば、租税回避と認定することは困難であると解説した。また、③所得税額控除については、当時とほとんど税制が変わっていない。 これに対し、当時と税制が大きく変わったのは、②みなし配当と株式譲渡損の両建てである。グループ法人税制の導入により、自己株式の買取り、清算、現金交付型合併によりみなし配当と株式譲渡損の両建てを行うことが困難になった。そのため、現行法上、想定される租税回避はグループ法人税制の対象から外したうえで、自己株式の買取り、その他資本剰余金の配当、清算などを行う方法である。この点については、平成22年から現在に至るまでほとんど相談を受けていない。どうしても、グループ法人税制の対象から除外するという行為が不自然になり、事実認定により名義株として否認を受けてしまう可能性が残ってしまうからであると考えられる。   3 税制適格要件 包括否認本の第3章では、①意図的な非適格組織再編成の選択、②意図的な適格組織再編成の選択について解説を行った。このうち、①については、グループ法人税制の導入によりほとんど使えなくなってしまった。そのため、実務で受ける相談は、(ⅰ)完全支配関係のない内国法人に譲渡する、(ⅱ)自然人に譲渡する、の2つである。 このうち、前者については、グループ法人税制の対象から除外することができるかという論点がある。当初から完全支配関係が外れていればよいのであるが、含み損の実現のために完全支配関係を外した後に資産を譲渡するという方法は、かなり不自然な行為となってしまい、多くの場合において、真実の事実関係は完全支配関係が継続していると認定されてしまう可能性が高い。この点については、法的実質主義の範疇である。 これに対し、自然人への譲渡は当該自然人の資金調達能力の問題がある。法人税の実効税率が40%くらいであった頃は、オーナーの給料を引き上げたりすることで、なんとか売買代金を支払えるようにしていたが、法人税の実効税率が引き下げられてしまうと、オーナーの所得税が高く感じてしまい、あまり現実的ではなくなっているのかもしれない。 なお、IDCF事件は意図的な非適格組織再編成の選択に該当する事例である。IDCF事件は、通常であれば適格組織再編成に該当するものの、迂回取引により非適格組織再編成に該当させた事件である。本事件についての評釈は省略するが、迂回取引を行ったり、個別の要件に無理矢理当てはめることにより、税制適格要件を満たすようにしたり、満たさないようにしたりすることは、典型的な租税回避行為と言われている。 ここで留意が必要なのは、経済合理性の判断を組織再編成の目的で行わずに、目的を達成するための手段で行うべきであるという点である。すなわち、ヤフー事件でも、IDCF事件でも、組織再編成の目的そのものは存在したものの、それを達成するための手法が問題視されていることから、組織再編成全体に経済合理性があればよいという話ではないという点に留意が必要である。 そして、②意図的な適格組織再編成の選択については、当時とあまり変わっておらず、相対取引で100%子会社化を行ってから合併をしたとしても、そのような行為が行われることを前提として繰越欠損金の引継制限、特定資産譲渡等損失の損金不算入が規定されていることから、租税回避には該当しない旨の解説を行った。このことは、他の組織再編成についても同様のことが言える。 さらに、当時は、端株株式交換、全部取得条項付種類株式による少数株主の締出しについて解説を行った。当時と異なり、平成26年改正会社法により、株式併合や株式等売渡請求による少数株主の締出しが可能になったため、これらの手法を用いて少数株主を締め出したとしても、株式交換の脱法行為と認定される可能性はなくなったと言える。 そのため、迂回取引を行ったり、個別の要件に無理矢理当てはめることにより、税制適格要件を満たすようにしたり、満たさないようにしたりする場合を除き、税制適格要件に対する租税回避の議論は生じないと考えて差し支えないと思われる。 次回では、①欠損等法人、②適格合併による繰越欠損金の利用、③損失の二重利用について解説を行う予定である。 (了)

#No. 200(掲載号)
#佐藤 信祐
2016/12/28

税務判例を読むための税法の学び方【99】 〔第9章〕代表的な税務判例を読む(その27:「政令委任と租税法律主義④」)

税務判例を読むための税法の学び方【99】 〔第9章〕代表的な税務判例を読む (その27:「政令委任と租税法律主義④」)   立正大学法学部准教授 税理士 長島 弘   ⑥ ネット通販商品保管等アパート・倉庫のPE認定事件 第一審 東京地裁平成27年5月28日(TAINS:Z888-1928) 控訴審 東京高裁平成28年1月28日(TAINS:Z888-2014) この事案は、裁判所HPで紹介されている。是非、入手の上、ご一読頂きたい。また、控訴審はこの命令への委任に関する点について判断を示していないため、ここに紹介するに留める。 原告は、所得税法上の非居住者として、アメリカ合衆国(以下「米国」という)から本邦に輸入した自動車用品を、インターネットを通じて専ら日本国内の顧客に販売する事業(以下「本件販売事業」という)を営んでいた。そして原告は、処分行政庁から、本件販売事業の用に供していた日本国内にあるアパート及び倉庫(以下、併せて「本件アパート等」という)は、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約(平成16年条約第2号。以下「日米租税条約」という)5条の規定する「恒久的施設」に該当し、原告は本邦において所得税を納税すべき義務があるとして、原告の平成17年分ないし平成20年分の所得税についての各決定処分及び無申告加算税の各賦課決定処分を受けた。そこで、本件アパート等は恒久的施設に該当せず、原告が本邦において所得税を納税すべき義務はないとして、本件各処分の取消しを求めた事案である。 関係法令は以下のとおりである。 (A) 第一審の判断 このように、租税法律主義の点から実特法による白紙委任規定に基づく省令の課した事前届出書について、手続要件である点を否定した。しかし次に実体的要件の存否により判断すべきとして、以下の判示をする。 このように実体的要件からの判断により、恒久的施設に当たるとされて原告の主張は排斥されたのであるが、省令の付加した手続要件を無効と判断した重要な裁判例と評価し得よう。 (続く)

#No. 200(掲載号)
#長島 弘
2016/12/28

〈業種別〉会計不正の傾向と防止策 【第5回】「銀行業」

〈業種別〉 会計不正の傾向と防止策 【第5回】 「銀行業」   公認会計士・税理士 中谷 敏久   どのような業種業態か? 銀行業は法人あるいは個人からの預金を集め、その集めた資金を事業者に対しては事業用資金として、また個人に対しては住宅取得用資金として貸し付けて貸付金利息を得る一方、株式や債券などの有価証券に投資し運用利益を得ることを主たる業務としている。 貸付金利息及び有価証券運用益が一般事業会社の売上高に該当し、預金者に支払う利息が売上原価に相当する。そしてその差益から人件費、設備費などを負担している。したがって企業の設備投資などの資金需要が旺盛で株式市場が活況であれば必然的に収益は増えるものの、低経済成長期にあっては、経済情勢に比較してどの地域でも都市銀行、地方銀行、信用金庫などが飽和状態であり、銀行間の競争は激しい。 最近ではマイナス金利政策の影響もあり、営業店の統廃合や人員削減に取り組んでいる銀行も少なくない。以前は護送船団方式で国家に守られていたため銀行が倒産するなど考えもしなかったが、バブル崩壊後の金融危機を経て、金融自由化の中で生き残る銀行が選別されている状況である。   どのような不正が起こりやすいか? 銀行業務は国の経済政策に密接に関係しているため、他の業種に比べ公共性が非常に高い。したがって、健全な経営がなされるよう自己資本比率の規制が設けられている。国内業務のみを行う銀行は4%以上、国際業務も行う銀行は8%以上の自己資本比率を維持しなければならない。 この規制が不正を行う動機になる。なぜなら、この比率が未達の場合には、規制当局から業務改善命令などの早期是正措置を受けることになるからである。 1 貸倒引当金の過少計上 不正としてまず挙げられるのは、不適切な自己査定による貸倒引当金の過少計上である。 銀行は年に一度、保有する資産を自ら制定した自己査定マニュアルに基づいて評価しなければならない。保有する資産のうち、株式や債券などの有価証券は取引市場が確立しているために時価評価は比較的容易であるが、事業者等に対する貸付金の評価は個別事情を考慮しなければならないため非常に難しい。 具体的には、債務者の財務状況、資金繰り、収益力等により債務者を「正常先」「要注意先」「破綻懸念先」「実質破綻先」「破綻先」に区分する。また貸付金自体を「非(Ⅰ)分類」「Ⅱ分類」「Ⅲ分類」「Ⅳ分類」に分類する。この債務者区分と債権分類に基づいて、貸付金に対して設定すべき貸倒引当金を算出するのであるが、この中で特に「要注意先」「破綻懸念先」「実質破綻先」の区分に恣意性が入る余地が残されているのである。 確かに自己査定マニュアルは金融庁が検査時に用いる「金融検査マニュアル」を参考にして作成されており、「金融検査マニュアル」には判断基準がより具体的に示されてはいるものの、最終的に「要注意先」なのか「破綻懸念先」なのか「実質破綻先」なのかを決定する場合に、実務上微妙なケースが存在するのである。 貸倒引当金の引当率は各銀行によってまちまちであるが、仮に以下のような引当率になっている場合、要注意先と破綻懸念先とでは引当額に50%の差が生じ、破綻懸念先と実質破綻先では30%の差が生じることになる。 自己資本比率が4%ないし8%すれすれの場合、貸倒引当金の繰入額を抑えるために何とかして上位ランクの債務者区分にできないかと考え、甘い自己査定が行われるケースがある。   2 繰延税金資産の過大計上 もう一つの不正として、繰延税金資産の過大計上がある。 繰延税金資産とは、会計上で計上した費用が税務上はその会計期間の損金として認められない場合に、会計上と税務上の税額の差異を貸借対照表に計上するために設けられる科目である。先に説明した貸倒引当金も繰延税金資産の計上根拠の一つになる場合がある。 ただし、この資産は固定資産のように実体がある資産ではなく、あくまで税金費用の期間按分のために計上される一種の擬制資産である。したがって、将来的に利益(課税所得)が発生することが見込まれない場合には、繰延税金資産を計上することができない。さらに言えば、誰も断定することができない将来の利益(課税所得)予測額に、その計上根拠をもつのである。 当然この繰延税金資産も自己資本を構成するが、4%ないし8%の自己資本比率を維持するために、甘い将来利益予測に基づいて繰延税金資産を過大に計上したとすれば、それはまさしく会計不正であり粉飾といえる。   事例検証 貸倒引当金の過少計上については、1998年に経営破綻した日本長期信用銀行の事例がある。関連ノンバンクなどに対する不良債権を独自の基準で甘く査定し、貸倒引当金を約3,130億円過少に計上した。 また、繰延税金資産の過大計上については、2003年に実質国有化されたりそな銀行の事例がある。銀行は将来5年分の利益に対応する繰延税金資産の計上を主張したが、監査法人が3年分の利益に対応する繰延税金資産の計上しか認めなかったため、自己資本比率が2%台になり、国による公的資本注入並びに早期是正措置、業務改善命令が発動された。   不正の防止策 貸倒引当金の過少計上を防止するためには、マニュアルに基づいた適切な自己査定が必要であり、そのためには銀行自体による債務者の正しい経営実態の把握が欠かせない。 また、繰延税金資産の過大計上を防止するためには、楽観的な将来利益予測ではなく、ストレスを加味した慎重な利益計画の策定が必要である。   同様の不正が起こりうる業種業態は? 保険会社、JA、信用金庫、信用組合などの銀行以外の金融機関も自己資本比率の規制が設けられているため、同様の不正が起こりうると考えられる。 (了)

#No. 200(掲載号)
#中谷 敏久
2016/12/28

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第33回】「退職給付引当金(複数事業主制度)」

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第33回】 「退職給付引当金(複数事業主制度)」   仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋   【はじめに】 今回は、退職給付引当金(複数事業主制度)の会計処理について解説する。 連合設立型厚生年金基金、総合設立型厚生年金基金及び共同で設立された確定給付企業年金制度などが複数事業主制度に該当する(企業会計基準適用指針第25号「退職給付に関する会計基準の適用指針(以下、「適用指針」という)」118)。 なお、本フロー・チャートでは、複数事業主制度からの脱退、移行、解散については解説していない。 ※各ステップをクリックすると、それぞれのページに移動します。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 複数事業主制度の場合、自社の拠出に対応する年金資産の額を合理的に計算することができるか、できないかにより会計処理が異なる(企業会計基準第26号「退職給付に関する会計基準(以下、「基準」という)」33)ため、まず、自社の拠出に対応する年金資産の額を合理的に計算することができるか、できないかを検討する。 複数事業主制度において、「自社の拠出に対応する年金資産の額を合理的に計算することができない」場合とは、複数事業主制度において、事業主ごとに未償却過去勤務債務に係る掛金率(※)や掛金負担割合等の定めがなく、掛金が一律に決められている場合(適用指針64)をいう。 これは、年金基金の規程等で確認することができる。 (※) 未償却過去勤務債務に係る掛金率の定めがあるかどうかとは、事業所脱退時の未償却過去勤務債務の清算を指しているのではなく、過去勤務債務の償却のために必要な掛金(厚生年金基金制度及び確定給付企業年金制度では特別掛金という)に負担区分等がなく、一律的に適用されている掛金率であるかどうかということである(適用指針120)。 上記に該当する場合であっても、親会社等の特定の事業主に属する従業員に係る給付等が制度全体の中で著しく大きな割合を占めているときは、当該親会社等の財務諸表上、自社の拠出に対応する年金資産の額を合理的に計算できない場合にはあたらない(適用指針64)。 なお、総合設立型の場合には、自社の拠出に対応する年金資産の額を合理的に計算できない場合が多い(適用指針120)。 上記の検討の結果、自社の拠出に対応する年金資産の額を合理的に計算することができる場合、【STEP2】を検討する。できない場合は、【STEP3】を検討する。 自社の拠出に対応する年金資産の額を合理的に計算できる場合、自社に帰属する年金資産を計算する。 自社の負担に属する年金資産等の計算を行うときの合理的な基準としては、以下に例示する額について、制度全体に占める各事業主に係る比率によって計算することができる(適用指針63)。 上記以外については、退職給付引当金(原則法)と同様である。退職給付引当金(原則法)については、本連載【第14回】「退職給付引当金(原則法)」を参照されたい。 また、下記の検討は不要である。 自社の拠出に対応する年金資産の額を合理的に計算できない場合、要拠出額を退職給付費用として計上する(基準33(2)、31、32)。また、未拠出の額がある場合、未払金として計上する(基準33(2)、32)。 【会計処理】 上記の会計処理のとおり、自社の拠出に対応する年金資産の額を合理的に計算できない場合、退職給付引当金は計上されない。 以下の注記が必要となる(基準33(2)、32、30、適用指針65)。 なお、(3)については、重要性が乏しい場合には当該注記を省略できる(適用指針65)。 (上記の注記は、自社の拠出に対応する年金資産の額を合理的に計算できない複数事業主制度に関する注記のみ記載している。) (3)の「年金制度全体の直近の積立状況等」とは、年金制度全体の直近の積立状況等(年金資産の額、年金財政計算上の数理債務の額と最低責任準備金の額との合計額及びその差引額)及び年金制度全体の掛金等に占める自社の割合並びにこれらに関する補足説明をいう(適用指針65)。 「年金財政計算上の数理債務の額と最低責任準備金の額との合計額」とは、厚生年金基金の場合は両者の合計額であり、確定給付企業年金の場合は代行部分の給付がないことから、年金財政計算上の数理債務の額のみとなる。また、年金財政計算上の数理債務の額は、厚生年金基金及び確定給付企業年金の貸借対照表には表示されず、欄外に注記されているため、注記の額を計算するにあたっては、厚生年金基金及び確定給付企業年金の貸借対照表の欄外に注記されている「数理債務」の額と貸借対照表に表示されている「最低責任準備金」(負債)の額に基づき注記する。なお、注記対象が確定給付企業年金のみの場合には、注記において使用する名称を「年金財政計算上の数理債務の額」とする(適用指針126-2)。 「年金制度全体の直近の積立状況等」は、必ずしも貸借対照表日(期末日)時点の数値を入手することができないため、入手可能な直近時点の数値により注記することになる(適用指針125)。通常、貸借対照表日(期末日)時点よりも1年程度前の時点の数値を注記することになると考えられる。 また、「年金制度全体の掛金等に占める自社の割合」についても入手可能な直近時点の数値により注記することになる。 入手した数値の時点が貸借対照表日と一致しない場合、注記上、これを明示する必要がある(適用指針[開示例3]) 補足説明の例としては、以下が挙げられる(適用指針[開示例3])。 具体的な注記例としては、適用指針[開示例3]を参照されたい。 なお、計算書類では上記のような注記は必ずしも求められていない。 *   *   * 以上、4つのステップをまとめたフロー・チャートを再掲する。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 (了)

#No. 200(掲載号)
#西田 友洋
2016/12/28

ストック・オプション会計を学ぶ 【第6回】「公正な評価単価」

ストック・オプション会計を学ぶ 【第6回】 「公正な評価単価」   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 今回は、「ストック・オプション等に関する会計基準」(企業会計基準第8号。以下「ストック・オプション会計基準」という)及び「ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第11号。以下「ストック・オプション適用指針」という)にしたがって、公正な評価単価について解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 公正な評価単価 1 概要 【第4回】で解説したように、ストック・オプション会計基準は、権利確定日以前の会計処理として、ストック・オプションの公正な評価額を、対象勤務期間にわたって費用として計上し、対応する金額を、ストック・オプションの権利の行使又は失効が確定するまでの間、貸借対照表の純資産の部に、新株予約権として計上すると規定している(ストック・オプション会計基準4項)。 ストック・オプションの公正な評価額は、公正な評価単価にストック・オプション数を乗じて算定する(ストック・オプション会計基準5項)ことから、公正な評価単価の算定がポイントとなる。 2 公正な評価単価の算定技法 ストック・オプションは、通常、市場価格を観察することができないため、株式オプションの合理的な価額の見積りに広く受け入れられている算定技法を利用することとなる。 利用に際しては、次のことに注意する(ストック・オプション会計基準6項(2)、ストック・オプション適用指針39項)。 ストック・オプション適用指針は、公正な評価単価の算定方法について次のように規定している(ストック・オプション適用指針5項~7項)。 3 株式オプション価格算定モデル 「株式オプション価格算定モデル」とは、ストック・オプションの市場取引において、一定の能力を有する独立第三者間で自発的に形成されると考えられる合理的な価格を見積るためのモデルであり、市場関係者の間で広く受け入れられているものをいう。例えば、ブラック・ショールズ式や二項モデル等が考えられている(ストック・オプション会計基準48項)。 ストック・オプション適用指針は、株式オプション価格算定モデルについて次のように説明している(ストック・オプション適用指針2項)。 4 算定技法の変更 算定技法の変更が認められるのは、原則として、次の場合に限られるとし、以下のような合理的な理由がない場合に、みだりに算定技法の変更を行うことは認められないと考えられている(ストック・オプション適用指針8項、42項)。 (了)

#No. 200(掲載号)
#阿部 光成
2016/12/28

家族信託による新しい相続・資産承継対策 【第5回】「家族信託と成年後見制度との違い」

家族信託による 新しい相続・資産承継対策 【第5回】 「家族信託と成年後見制度との違い」   弁護士 荒木 俊和   1 はじめに 財産を保有している本人が、認知症等により意思能力(法律的な判断をする能力)がなくなってしまった場合、本人が財産を売ったり、贈与したり、遺言書を書いたりするなどの法律行為を行うことができなくなってしまう。 このような場合、本人以外が本人のために法律行為を行うことが求められる場合があるが、それを実現するための制度として「家族信託」と「成年後見制度」がある。 本稿ではこの異同を取り上げたい。   2 意思能力がなくなった場合の問題点 まず、本人に意思能力がなくなった場合、以下のような問題が発生する恐れがある。 (1) 不動産の管理・処分の問題 本人が不動産を所有している場合、その不動産の管理を継続したり、売却、贈与等の処分を行ったりすることができなくなってしまうという問題がある。 この問題は、本人が高齢者施設に入所する際に自宅不動産をそのままにしておくことで発生することが多く、空き家の増加問題につながっている部分がある。 また、本人が収益物件を所有している場合には、物件価値が高く、かつ、賃借人管理もできなくなるため、自宅不動産に比べて問題がより大きくなる場合がある。 (2) 会社経営・事業承継の問題 本人が会社のオーナー社長であり、自社株の多くを保有している場合、意思能力がなくなると会社運営が不可能になってしまうという問題がある。 すなわち、本人が会社の代表者として対外的、対内的な法律行為ができなくなるうえ、株主権を行使できなくなることから、役員改選の決議も行えなくなってしまうことになる。 本人が事業承継を進めていた場合であっても、事業承継の完了までは数年単位での時間を要することが通常であり、その途中で意思能力を失うことによって事業承継の計画が頓挫してしまうおそれがある。 (3) 遺産分割協議の問題 本人が相続人となる場合、他の相続人との遺産分割協議に参加することが必要であるが、意思能力を失っている場合であれば遺産分割協議に参加することができない。 これにより、預貯金の解約ができなかったり、不動産の相続登記ができなかったりするなどの問題が発生する。 相続人のうち1人でも意思能力がなければ遺産分割協議が成立しないことから、高齢者が死亡し兄弟が相続人になるような場合には、この問題が起こる可能性が高いといえる。   3 成年後見制度の概要 次に、成年後見制度の概要を紹介する。 (1) 概要 成年後見制度とは、認知症等により意思能力を欠くような状態になった人を保護するための制度であり、本人に代わって後見人が法律行為を行い、また(法定後見の場合は)本人が行った不利益な法律行為を後見人が取り消すことを認める制度である。 成年後見制度には、「法定後見制度」と「任意後見制度」がある。 成年後見制度は平成12年から導入されたが、成年後見制度(成年後見、保佐、補助及び任意後見を含む)の利用者数は年々増加しており、平成27年12月末時点で19万人を超えるものとされている。 (2) 法定後見制度 法定後見制度は、本人が意思能力を欠くような状態になった場合に、本人、配偶者又は四親等内の親族等が裁判所に後見開始の審判を申し立てることによって、成年後見人が選任される制度である。 この場合、成年後見人に選任される者としては、親族と第三者(弁護士、司法書士又は社会福祉士等)とに分けられるが、親族が選任される割合は年々低下しており平成27年の実績で全体の約29.9%、第三者の割合が約70.1%にまで高まっている。 これは、昨今、親族成年後見人による横領等の問題行動が多く認められており、裁判所の審査の中で、成年後見人としての資質が厳しく見られるようになったことによるものといえよう。 法定後見の場合、成年後見人には裁判所への本人の財産状況等の定期報告義務がある他、自宅不動産の処分の制限等があるが、基本的には成年後見人の判断で包括的に本人の財産の管理・処分が行われる仕組みである。 ただし、成年後見制度の趣旨は「本人の財産保護」に重きを置いていることから、積極的な財産の運用を行うことは不適当であると解されている。 (3) 任意後見制度 任意後見制度は、本人の意思能力がある間に、本人と任意後見受任者との間で公正証書により任意後見契約を結んでおき、本人の意思能力の低下が認められた場合に、家庭裁判所に対して任意後見監督人選任の申立てを行うことで、任意後見契約の効果を発生させる制度である。 任意後見契約の効果が発生することにより、任意後見受任者が本人の任意後見人となり、任意後見監督人の監督の下で、本人に代わって法律行為を行うことになる。 法定後見と異なる任意後見の特徴としては、任意後見契約を締結する時点において本人に意思能力が必要である点、任意後見契約の内容に本人の財産管理に対する希望を含めることができる点、任意の後見人を選任できる点(ただし、任意後見監督人は必ずしも任意に選任できない)、任意後見人には同意権・取消権が認められていない点が挙げられる。   4 家族信託と成年後見制度との比較 上記を踏まえ、家族信託と成年後見制度を比較すると、次のような異同がある。 (1) 手続の流れ 家族信託の場合、基本的に委託者と受託者との間で信託契約を締結することで手続は完結する(ただし、不動産を対象とする場合には信託の登記を行う必要がある)。 家族信託の場合には信託契約の締結のみという簡素さがある反面、自由度が高いため、信託契約を効果的なものにするためにスキームを作り込む必要がある。 成年後見制度の場合、成年後見人選任の申立て又は成年後見監督人選任の申立てという手続がある。これらの手続は家庭裁判所に対して行うものであるため、家庭裁判所での処理状況次第で数ヶ月単位での時間を要することがある。 また、成年後見人候補者や成年後見監督人候補者を指定して申し立てたとしても、裁判所の判断でそれと異なる者が選任されることがあり、必ずしも本人の希望通りに進まないことがある。 (2) 裁判所の監督 家族信託の場合、委託者と受託者との間の契約関係であるため、裁判所が信託を監督するようなことはない。 また、基本的にはどのような財産でも信託することができ、信託契約においてその管理・処分の方法を指定することができ、公序良俗に反するようなことがない限り制限を受けない。 ただし、裁判所による監督がない反面、受託者に対する監督が不十分となる恐れがあるため、受託者を真に信頼できる者にすることや、受託者を監督する立場に立つ信託監督人を選任しておくなどの対応が必要な場合がある。 一方、成年後見制度の場合、本人の財産保護の要請から、裁判所が成年後見人の行為を監督することとなっている。 裁判所の成年後見人に対する監督処分として、①報告の徴求、②必要な処分の命令、③解任を行うことができるものとされている。 このため、成年後見制度においては、成年後見人による自由裁量によって本人の財産の管理・処分が行えるものではない。 (3) 効果 家族信託の場合、基本的には信託契約の締結時から効果を発生させることとなる。 これにより委託者は、即座に財産管理の煩から解放されることになる。 また、委託者(又は受益者)の死亡によっても信託を終了させないという選択ができることから、死後の財産管理にも活用することができる。 これに対し、成年後見制度の場合は、効果が発生するのは本人が意思能力を欠く状態になり、かつ、家庭裁判所による審判がなされた時点からであるため、本人の意思能力がある間は、財産を管理する者との間で財産管理委任契約を結んでおかなければならない。 また、成年後見人は本人の死後、相続人に対して財産を引き継ぎ、計算の報告を行った時点で任務が終了するため、死後の財産管理を行うことはできない。 (4) 費用 家族信託の場合には、基本的に費用はかからない。 ただし、信託契約書の作成にあたっては専門家の意見を求め、ドラフト作業を依頼する必要があることから、専門家に対する費用は必要と考えられる(専門家の費用には、統一的な基準は存在しないが、事案の複雑性等により高額になる場合がある)。 また、信託監督人を置く場合で、専門家に依頼する場合には信託監督人報酬を必要とすることがある。 成年後見制度を利用する場合、裁判所への申立て費用は数千円程度であるが、本人の意思能力に関して鑑定が必要とされた場合には、鑑定費用として数万円から10万円程度を要するとされている。 また、成年後見人又は任意後見監督人に専門家が選任された場合、本人の財産から報酬として1ヶ月あたり1万円から3万円程度(事務の内容によってはこれより上がることもある)が支出されることになる(通常は本人の死亡まで継続的に発生する)。 この他、専門家に申立書の作成を依頼する場合の報酬や、任意後見契約に係る公証人の手数料も別途必要となる。 以上のことから、単純比較はできないものの、家族信託では、専門家に依頼した場合の初期費用がある程度かかるが継続費用はあまりかからないのに対し、成年後見制度を利用した場合には、初期費用は安くとも総額では意外と費用がかさむことがある。 (了)

#No. 200(掲載号)
#荒木 俊和
2016/12/28

《速報解説》 国税不服審判所「公表裁決事例(平成28年4月~6月)」~注目事例の紹介(重加算税の賦課決定処分を中心に)~

 《速報解説》 国税不服審判所 「公表裁決事例(平成28年4月~6月)」 ~注目事例の紹介(重加算税の賦課決定処分を中心に)~   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   国税不服審判所は、平成28年12月15日、「平成28年4月から6月分までの裁決事例の追加等」を公表した。今回追加されたのは表のとおり、全16件であった。 今回の公表裁決では、国税不服審判所によって課税処分等が全部又は一部が取り消された事例が12件、棄却された事例が4件となっている。税法・税目としては、国税通則法6件、所得税法4件、相続税法及び登録免許税法が各2件、法人税法及び国税徴収法が各1件であった。 【表:公表裁決事例平成28年4月~6月分の一覧】 ※本稿で取り上げた裁決 本稿では、公表された16件の裁決事例のうち、重加算税に関する不服審判所の考え方が示された上記②から⑥の5件の裁決事例から、不服審判所が、原処分庁の課税処分の一部又は全部を取り消したポイントを中心に紹介したい。 以下においては、審判所の判断について、「重加算税の賦課決定処分の要件」と「事例への当てはめ」という形で、全体の構成を統一しており、同時に、論点を簡素化するため、複数の争点がある裁決については、その一部を割愛させていただいていることを、あらかじめお断りしておきたい。   1 重加算税(隠ぺい、仮装の認定 認めた事例)・・・② ◆相続財産である現金を申告しなかった事例 ⇒ 重加算税の賦課決定処分を認める (1) 争点 争点は、現金の申告漏れについて、重加算税の賦課要件である「隠ぺい」が認められるか否かである。 (2) 審判所の判断 審判所はまず、重加算税を課するための要件として、次のように述べた。 そのうえで、以下の理由から、請求人の行為を「隠ぺい」と認め、原処分庁による重加算税の賦課決定処分を適法であると結論づけた。 なお、前掲表中、本事例は「一部取消し」に分類されているが、これは過少申告加算税計算の基礎となるべき税額について、一部取消しがあったものであり、重加算税の賦課決定処分については、棄却されている。   2 重加算税(隠ぺい、仮装の意図)・・・③ ◆生命保険金、生命保険契約に関する権利の申告漏れ ⇒ 重加算税の賦課決定処分を取り消す (1) 争点 争点は、請求人が、課税要件事実を隠ぺい、仮装し、その隠ぺい、仮装したところに基づき過少申告をしたと認められるか否かである。 (2) 審判所の判断 審判所はまず、重加算税を課するための要件として、次のように述べた。 そのうえで、以下の理由から、請求人の行為を「隠ぺい」とは認めず、原処分庁による重加算税の賦課決定処分を取り消す判断をした。   3 重加算税(隠ぺい、仮装の意図)・・・④ ◆死亡保険金の一部の申告漏れ ⇒ 重加算税の賦課決定処分を取り消す (1) 争点 争点は、請求人が本件各無申告保険金を本件当初申告の対象に含めなかったことは、課税要件事実を隠ぺい、仮装したところに基づく過少申告であるか否かである。 (2) 審判所の判断 審判所はまず、重加算税を課するための要件として、次のように述べた。 そのうえで、以下の理由から、請求人の行為を「隠ぺい」とは認めず、原処分庁による重加算税の賦課決定処分を取り消す判断をした。   4 重加算税(隠ぺい、仮装の認定 認めなかった事例)・・・⑤ ◆太陽光発電設備の引渡しを受けた日を仮装 ⇒ 重加算税の賦課決定処分を取り消す (1) 争点 争点は、請求人が、本件太陽光発電設備の引渡しを受けた日を仮装したか否かである。 (2) 審判所の判断 審判所はまず、重加算税を課するための要件として、次のように述べた。 そのうえで、以下の理由から、請求人の行為を「隠ぺい」とは認めず、原処分庁による重加算税の賦課決定処分を取り消す判断をした。   5 重加算税(隠ぺい、仮装の認定 認めなかった事例)・・・⑥ ◆被相続人名義の預金口座の一部申告漏れ ⇒ 重加算税の賦課決定処分を取り消す (1) 争点 争点は、請求人が法定申告期限までに申告書を提出しなかったことについて、通則法第68条第2項に規定する重加算税の賦課要件を満たすか否かである。 (2) 審判所の判断 審判所はまず、重加算税を課するための要件として、次のように述べた。 そのうえで、以下の理由から、請求人の行為を「隠ぺい」とは認めず、原処分庁による重加算税の賦課決定処分を取り消す判断をした。 (了)

#No. 199(掲載号)
#米澤 勝
2016/12/27

《速報解説》 「スキャナ保存制度への対応と監査上の留意点」、意見募集を経て正式公表~監査証拠がイメージ文書の場合などのリスク・留意点を示す~

《速報解説》 「スキャナ保存制度への対応と監査上の留意点」、意見募集を経て正式公表 ~監査証拠がイメージ文書の場合などのリスク・留意点を示す~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成28年12月26日、日本公認会計士協会は、「スキャナ保存制度への対応と監査上の留意点」(IT委員会研究報告第50号)を公表した。 IT委員会研究報告第50号は、平成27年及び平成28年の電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則(以下「電子帳簿保存法施行規則」という)等の改正によるスキャナ保存制度の緩和の内容を周知し、企業がスキャナ保存制度を採用している場合の監査上の対応について述べている。 これにより、平成28年9月26日から意見募集していた公開草案が確定することになる。なお、公開草案に寄せられた主なコメントの概要及び対応も公表されている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 電子保存とは、当初から電磁的記録で作成された文書を電磁的記録で保存すること及び書面で作成された書類をスキャナでイメージ化し、電磁的記録で保存することの両方を含んでいる(Ⅰ、1)。 1 平成27年度税制改正後のスキャナ保存制度 平成27年度税制改正及び平成28年度税制改正の概要について述べている(「付録2:平成27年度・28年度税制改正の詳細」も参照)。 平成28年の電子帳簿保存法施行規則の改正によりスキャナ保存における入力機器は、「原稿台と一体になったものに限る」という要件が外されたことから、ハンディスキャナやデジタルカメラ、スマートフォン搭載の約388万画素以上のカメラによる撮影データによる電子データ化も認められることになった。 2 監査証拠がイメージ文書の場合の留意点 スキャナ保存制度により、企業は当初書面で受け取った証憑についても、電子的イメージとして保存できるようになる。 書面からイメージ文書への媒体の変換は、企業の管理下において実施されるので、会計記録や監査証拠が、オリジナルな形を変えることとなり、そこに種々のリスクが想定される(Ⅲ)。 監査人は、スキャナ保存制度の導入による被監査会社におけるリスクの発生及びそれに対応した内部統制の変化に留意するとともに、監査証拠の質の変化に伴う発見リスクの変動にも留意する(Ⅲ)。 3 経営者による内部統制の構築 書面からイメージ文書への媒体の変換により、紙の文書に比べて保存場所を取らないため保管コストが低減されるなどの利点がある。 その一方で、例えば、改竄やすり替えなどの不正行為の痕跡が残らない可能性、システム障害などにより文書が消失する可能性などのリスクがある(Ⅲ、1(1))。 経営者は、これらのリスクを低減する適切な内部統制を構築することにより対応することが述べられており、全般統制、業務処理統制等の整備・運用について詳細に述べられている(Ⅲ、1(2))。 4 監査人の対応 重要な業務処理に関するプロセスにおいてスキャナ保存手続が採用されている場合、スキャナ保存手続に関する全般統制及び業務処理統制について理解し、その整備・運用状況の有効性を評価することが考えられる(Ⅲ、2)。 被監査会社におけるリスク及びそれに対応して構築された内部統制を前提にして、監査人が実施する監査手続について述べられている(Ⅲ、2)。 IT委員会研究報告第50号では、「データ提供依頼書の例」を示し、監査人は、企業とイメージ文書入手の手続等をあらかじめ決定しておくことが望ましいとしている(Ⅲ、4(3)、【図表2】データ提供依頼書の例)。 5 原本の保存に関する被監査会社との協議 自主規制・業務本部 平成27年審理通達第3号「平成27年度税制改正における国税関係書類に係るスキャナ保存制度見直しに伴う監査人の留意事項」(平成27年9月30日)では、「監査上必要と判断される金額以上の契約書など、重要な監査証拠となり得る書類の原本を、監査に必要な期間、保存することの必要性に関して、被監査会社と事前に十分協議することが適切と考えられる。」とされている。 被監査会社との事前の協議事項のポイントとして、次の事項が挙げられている(Ⅲ、3)。 6 IT委員会研究報告第30号の廃止 前述のとおり、平成28年12月26日付けで「スキャナ保存制度への対応と監査上の留意点」(IT委員会研究報告第50号)が公表されたことから、「e-文書法への対応と監査上の留意点」(IT委員会研究報告第30号)は、同日付けで廃止されている。 (了)

#No. 199(掲載号)
#阿部 光成
2016/12/27

《速報解説》 会計士協会、改正「公益法人会計基準に関する実務指針」を公表~過年度遡及や資産除去債務会計基準等適用にあたり留意事項を示す~

《速報解説》 会計士協会、改正「公益法人会計基準に関する実務指針」を公表 ~過年度遡及や資産除去債務会計基準等適用にあたり留意事項を示す~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成28年12月22日、日本公認会計士協会は「公益法人会計基準に関する実務指針」(非営利法人委員会実務指針第38号)の改正を公表した。 これは、内閣府公益認定等委員会の下に設置された公益法人の会計に関する研究会から公表された「公益法人の会計に関する諸課題の検討状況について」(平成27年3月26日)及び内閣府公益認定等委員会から公表された「公益法人の会計に関する諸課題の検討結果について」(平成28年3月23日)に対応するものであり、Q&A方式により記載されている。 これにより、平成28年10月13日から意見募集していた公開草案が確定することになる。公開草案に寄せられた主なコメントの概要とその対応も併せて公表されており、「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(企業会計基準第24号。「過年度遡及会計基準」という)に関連するコメントが多く寄せられている。 なお、監査上の取扱いについては、平成28年9月27日に、「公益法人会計基準を適用する公益社団・財団法人及び一般社団・財団法人の財務諸表に関する監査上の取扱い及び監査報告書の文例」(非営利法人委員会実務指針第34号)が公表されている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 過年度遡及会計基準関係 「過年度遡及会計基準」の適用について、Q5及びQ6に記載されている。 公益法人では、原則として、過年度遡及会計基準に準拠することになるが、未適用の会計基準等に関する注記は、会社計算規則98条「注記表の区分」で特に記載が求められていないことから、当該注記を行うかどうかは各法人の任意と考えられている(Q5)。 また、Q6において、設例を用いて、会計方針の変更、表示方法の変更、会計上の見積りの変更、減価償却方法の変更、過去の誤謬の訂正が説明されている。 2 金融商品会計関係(開示) 「金融商品に関する会計基準」(企業会計基準第10号。「金融商品会計基準」という)40-2項における時価の開示について、Q29及びQ30に記載されている。 Q29では、「公益法人の会計に関する諸課題の検討結果について」(平成28年3月23日)の記載を用いて、開示すべき金融商品の範囲を金融商品会計基準で規定するすべての金融商品を対象とするのではなく、株式その他の出資証券及び公社債等の有価証券並びにデリバティブ取引(先物取引、先渡取引、オプション取引、スワップ取引及びこれらに類似する取引)等の法人の資産運用を図る手段として用いられる金融商品に限定していることが述べられている。 また、当該金融資産の運用次第では、公益目的事業の安定的な持続可能性に影響を与えるなど、法人運営に相当のリスクをもたらすおそれがあると法人が判断した場合に注記することとすべきであるとされているが、それ以外の場合であっても法人が自主的に注記を行うことは妨げられないことについて述べられている。 Q30では、「金融商品の状況に関する事項」の財務諸表における開示例が示されている。 3 資産除去債務関係 Q49では、公益法人における資産除去債務の会計処理上の留意点が述べられている。 資産計上された資産除去債務に対応する除去費用に係る費用配分額及び時の経過による資産除去債務の調整額は、当該資産除去債務に関連する有形固定資産の減価償却費と同じ区分に含めて事業費又は管理費に計上することになる。 資産除去債務の発生時に当該債務を合理的に見積もることができない場合についても述べられているが、例えばとして、建物を期限の定めなく公益目的事業に使用してほしいということで寄付を受けているが、当該保有に関する制約が寄付者等からいつ解除されるか明確ではない、すなわち資産除去債務の履行時期が寄付者等から明示されていないことだけをもって、ただちにその金額を見積もれない理由となるものではないことに留意するとし、このような場合には、当該資産に適用している耐用年数等から撤去時期を合理的に見積もることができないか慎重に検討する必要があるとしている。 4 賃貸等不動産関係 Q50からQ53までにおいて、公益法人における賃貸等不動産について述べられている。 基本的に「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準」(企業会計基準第20号)等に従って記載されているが、公益法人に関する留意点についても述べられている。   Ⅲ 適用時期等 平成28年4月1日から開始する事業年度から適用する。 ただし、同日前に開始する事業年度から適用することを妨げない。 (了)

#No. 199(掲載号)
#阿部 光成
2016/12/27
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