「税効果会計に適用する税率に関する適用指針」を踏まえた 平成28年度税制改正への対応 【第2回】 「税制改正法案の成立を受けた設例解説」 公認会計士・税理士 八代醍 和也 Ⅰ はじめに 本連載では前回、平成28年3月14日に企業会計基準委員会が公表した「税効果会計に適用する税率に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第27号、以下「本適用指針」という)について、従前の取扱いからの変更点(公布日基準から成立日基準への変更)を中心に解説した。 今回、平成28年3月29日に平成28年度税制改正法案(所得税法等の一部を改正する法律案及び地方税法等の一部を改正する等の法律案)(以下、「改正税法」という)が参議院で可決、国会で成立したことを受け、本適用指針のさらなる理解に資するよう、その実際の取扱いについて、設例を用いた解説を行う。 なお、文中の意見に関する部分は、筆者の私見であることを申し添える。 Ⅱ 改正税法における税率の改正点 まずは、改正税法における税率の改正点について確認する。 【表1】 法人税の税率の改正 【表2】 法人事業税の税率の改正(平成28年4月1日以後開始事業年度より適用) (※1) 所得割の税率下段のカッコ内の率は、地方法人特別税等に関する暫定措置法適用後の税率であり、当該税率の制限税率が標準税率の2倍(改正前:1.2倍)に引き上げられている。 (※2) 3以上の都道府県に事務所又は事業所を設けて事業を行う法人の所得割に係る税率については、軽減税率の適用はない。 (※3) この法人事業税の税率の改正に伴い、負担変動を緩和するための所要の軽減措置が設けられている。 【表3】 地方法人特別税の税率の改正(平成28年4月1日以後開始事業年度より適用) 【表4】 法人住民税法人税割の税率の改正(平成29年4月1日以後開始事業年度より適用) 【表5】 地方法人税の税率の改正(平成29年4月1日以後開始事業年度より適用) Ⅲ 設例による法定実効税率の算定 ここまで解説してきた内容を踏まえて、以下、代表的な3つのケースにおける法定実効税率の算定方法について、設例を用いて解説したい。 なおここで、住民税等の取扱いについてまとめた前回掲載の表を再掲しておく。 ※再掲図※ 住民税等の取扱い(3月末決算会社を想定) (※1) 標準税率又は超過税率による税率 (※2) 改正地方税法に規定された税率 (※3) 改正地方税法の標準税率に、改正前の条例の超過課税の税率が改正前地方税法の標準税率を超える差分を調整 〈設例1〉 標準税率のケース (1) 前提条件 ① 3月末決算会社 ② 会社の所在地の地方公共団体は標準税率による住民税及び事業税を課している。 ③ 法定実効税率算定に関する税率は以下の通り。 【表6】 前提となる税率 (※1) 都道府県民税と市町村民税の法人税割の税率を合算している。 (※2) 事業税(所得割)の上段は、地方法人特別税の税率を含めた事業税率を示す。下段は、地方法人特別税等に関する暫定措置法において、当該措置法が適用されることにより読み替えられている地方税法の税率を示す。なお、地方法人特別税は平成29年4月1日以後に開始する事業年度から廃止され法人事業税に復元されることになっているが、改正後税率等が不明であるため、設例上は税率を据え置いている。 (2) 法定実効税率の算定 上記税率に基づいて、以下の計算式により、各事業年度の法定実効税率を計算する。 計算結果は以下の通り。 【平成29年3月期】 【平成30年3月期】 【平成31年3月期】 〈設例2〉 超過課税の税率によるケース(その1) 改正地方税法等が決算日以前に成立し、当該改正地方税法等を受けた改正条例が当該決算日に成立している場合 (1) 前提条件 ① 3月末決算会社 ② 会社の所在地の地方公共団体は超過課税の税率による住民税及び事業税を課している。 ③ 法定実効税率算定に関する税率は以下の通り。 【表7】 前提となる税率 (※1) 都道府県民税と市町村民税の法人税割の税率を合算している。 (※2) 事業税(所得割)の上段は、地方法人特別税の税率を含めた事業税率を示す。下段は、地方法人特別税等に関する暫定措置法において、当該措置法が適用されることにより読み替えられている地方税法の税率を示す。なお、地方法人特別税は平成29年4月1日以後に開始する事業年度から廃止され法人事業税に復元されることになっているが、改正後税率等が不明であるため、設例上は税率を据え置いている。 (2) 法定実効税率の算定 上記税率に基づいて、前述の計算式により、各事業年度の法定実効税率を計算すると、以下のようになる。 【平成29年3月期】 【平成30年3月期】 【平成31年3月期】 〈設例3〉 超過課税の税率によるケース(その2) 改正地方税法等が決算日以前に成立し、当該改正地方税法等を受けた改正条例が当該決算日に成立していない場合 (1) 前提条件 ① 3月末決算会社 ② 会社の所在地の地方公共団体は超過税率による住民税及び事業税を課している。 ③ 改正地方税法等は成立済みで、平成28年4月1日以後開始事業年度の事業税(所得割)の標準税率は改正済みである。 ④ 平成28年4月1日以後開始事業年度の超過課税による税率を定めた改正条例は決算日(平成28年3月31日)で未成立。 ⑤ 法定実効税率算定に関する税率は以下の通り。 【表8】 前提となる税率 (※1) 都道府県民税と市町村民税の法人税割の税率を合算している。 (※2) 改正地方税法等に規定されている。 (※3) 事業税(所得割)の上段は、地方法人特別税の税率を含めた事業税率を示す。下段は、地方法人特別税等に関する暫定措置法において、当該措置法が適用されることにより読み替えられている地方税法の税率を示す。なお、地方法人特別税は平成29年4月1日以後に開始する事業年度から廃止され法人事業税に復元されることになっているが、改正後税率等が不明であるため、設例上は税率を据え置いている。 (※4) 改正地方税法等を受けた改正条例が決算日(平成28年3月31日)において成立していないため未定。 (2) 法定実効税率の算定 ① 平成28年4月1日以後開始事業年度における事業税(所得割)の超過課税の税率の算定 会社所在地の地方公共団体において事業税(所得割)について超過課税による税率が採用されており、かつ、決算日において改正地方税法等が成立し、これを受けた改正条例が成立していない場合の、税効果会計の適用にあたっての事業税(所得割)の税率の算定方法について、本適用指針はその第8項において次の2つの方法を例示している。 (※) 上記の結果として得られた税率が、改正地方税法等に規定されている制限税率を超える場合は、当該制限税率とする。 【表8】を前提として超過課税の税率を算定すると、以下のようになる。 〈選択肢①〉の方法による場合:0.7%+(3.4%-3.1%)=1.0% 〈選択肢②〉の方法による場合:0.7%×(3.4%÷3.1%)=0.8% ② 法定実効税率の算定 【表8】及び①の結果に基づき法定実効税率を計算すると、以下のようになる。 〈選択肢①〉の方法による場合 【平成29年3月期】 【平成30年3月期】 【平成31年3月期】 〈選択肢②〉の方法による場合 【平成29年3月期】 【平成30年3月期】 【平成31年3月期】 (連載了)
《速報解説》 複数年度にまたがる工事に係る補助金の 経理処理及び圧縮記帳の取扱いについて 東京国税局が文書回答事例を公表 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 東京国税局が平成28年3月3日付で回答を行った事前照会が、同月18日に国税庁HPにおいて公開された。 照会した当事者は、鉄道事業を営む法人であり、複数年度にまたがって鉄道工事を行うとともに補助金を受け取る場合の、経理処理及び圧縮記帳の取扱いについて、事前照会を行ったものである。 この事前照会に対して、回答者である東京国税局審理課長は、「標題のことについては、ご照会に係る事実関係を前提とする限り、貴見のとおりで差し支えありません」との回答を示した。 照会内容は以下のとおりである。 1 事案の概要 照会当事者は、独立行政法人A機構及びB市から補助金の交付を受けて、鉄道駅等の改良工事事業を予定している。 補助金の特徴としては、次の4点が挙げられる。 しかし、このような場合における国庫補助金等や固定資産の税務上の取扱いについては明文上明らかではないことから、事前照会に至ったものである。 【図:工事の進捗報告と補助金交付の流れ】 2 経理処理 こうした補助金事業について、照会当事者の質問の趣旨は以下のとおりである。 そのうえで、具体的な経理処理として、次のように説明している。 (1) 補助金受領時 (2) 工事代金支払時 (3) 期末建設仮勘定振替時 (4) 固定資産取得時(本件工事完了後) 3 理由 照会当事者は、上記2のような経理処理の理由を次のように説明している。 ここで、法人税法の規定を確認しておくと、第42条では、国庫補助金の交付を受けた事業年度において資産を取得し、その返還を要しないことが確定した場合の圧縮記帳の定めであり、一方、第43条では、その事業年度の終了の日までに、国庫補助金の返還を要しないことが確定しない場合の圧縮記帳の定めであることから、「国庫補助金などの交付を受けた事業年度に資産の取得ができず」、かつ、「国庫補助金等の返還を要しないことが確定している」照会当事者にとっては、明文上、規定が明らかではない、ということである。 とはいえ、国庫補助金等の圧縮記帳の制度の趣旨からすれば、こうした複数年度にわたり補助金を受け取り、その後、引渡しを受けた資産の取得に際して圧縮記帳を行うことを妨げるものでないことは、照会当事者の理由のとおりであろう。 そして、照会当事者は、以下のように結論づけ、事前照会を受けた東京国税局審理課長もこれを是認した。 4 他の事案への適用可能性 本件事前照会は、鉄道事業者に係る国庫補助金等に対するものであるが、同様に複数の事業年度にわたり工事・整備が行われることが予定されている事業についても、同様の考え方が適用できるものと思料する。 複数年度にまたがる工事等を受注した法人が、単年度の予算に縛られる国や地方公共団体等から、工事等の進捗に応じて補助金・助成金を取得した場合における経理処理、課税関係を明らかにした事前照会に対する回答であり、実務において参考となるのではないだろうか。 (了)
《速報解説》 「連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針」等が改正 ~「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」及び 「税効果会計に適用する税率に関する適用指針」に対応~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成28年3月25日、日本公認会計士協会は次の実務指針等の改正を公表した。 これは、企業会計基準委員会から公表された「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第26号。以下「回収可能性適用指針」という)及び「税効果会計に適用する税率に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第27号。以下「税率適用指針」という)に対応するものである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な改正内容 主な改正内容は次のとおりである(「結論の背景」及び「設例」も改正)。 Ⅲ 適用時期等 (了)
《速報解説》 金融庁より「有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項について(平成28年3月期版)」及び「有価証券報告書レビューの実施について(平成28年3月期以降)」が公表 ~退職給付及びセグメント情報等に関する『適切ではない事例』を紹介~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成28年3月25日、金融庁は次のものを公表した。 平成28年3月期以降の有価証券報告書の作成に当たっては、これらに記載されている事項に特に注意し、適切に作成する必要があると考えられる。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 有価証券報告書の作成・提出に際しての留意事項 「有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項について(平成28年3月期以降)」では以下の事項が述べられており、有価証券報告書の作成に際して注意が必要である。 1 新たに適用となる開示制度・会計基準に係る留意事項 平成28年3月期に新たに適用となる開示制度のうち、主なものは「企業結合に関する会計基準」等の公表を踏まえた連結財務諸表規則等の改正である(平成26 年3月28日公布)。 2 平成27年度有価証券報告書レビューを踏まえた留意事項 現在、実施中である平成27年度有価証券報告書レビュー(重点テーマ審査及び情報等活用審査)に関して、現在までに把握された事象を踏まえた留意すべき点として、次の事項を述べている(「別紙2」参照)。 平成27年3月期以降の重点テーマは、以下のとおりである。 ここでは、「審査結果」において確認された事例について、「適切ではない事例」として紹介する。また、「別紙2」では「留意すべき事項」として具体的な財務諸表等規則などの根拠規定が紹介されているので、実際に有価証券報告書を作成する際にお読みいただきたい。 Ⅲ 有価証券報告書レビューの実施について(平成28年3月期以降) 平成28年3月期以降の事業年度に係る有価証券報告書のレビューについては、次の内容で実施するとのことである。 1 法令改正関係審査 平成25年9月に公表された「企業結合に関する会計基準」等を踏まえて改正された連結財務諸表規則等に基づき適切な記載がなされているかどうかについて審査する。 「調査票」が添付されており、有価証券報告書の提出日後、所管の財務局等に提出することになる。 2 重点テーマ審査 重点テーマ審査は、特定の重点テーマに着目して審査対象となる会社を抽出し、当該会社に対して所管の財務局等が個別の質問事項を送付し、回答を受けることで(ヒアリングを行うこともある)、より深度ある審査を実施するものである。 平成28年3月期以降の重点テーマは、以下のとおりである。 3 情報等活用審査 上記の重点テーマに該当しない場合であっても、適時開示や報道、一般投資家等から提供された情報等を勘案して、所管の財務局等から、個別の質問事項が送付されることがある。 「平成27年度有価証券報告書レビュー(重点テーマ審査及び情報等活用審査)を踏まえた留意すべき事項」(別紙2)では、財務局等からの質問状には、次の観点も反映していると述べられており、本3月期の有価証券報告書の作成に際しても、下記の観点を十分に考慮し、開示の要否を判断すべきものと解される。 (了)
《速報解説》 「公認会計士・監査審査会検査の実効性の向上」が公表 ~大手監査法人を中心とした検査に対する問題意識と今後の対応をとりまとめ~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成28年3月24日、公認会計士・監査審査会は「公認会計士・監査審査会検査の実効性の向上~大規模監査法人を中心に~」を公表した。 これは、上場大企業において不正会計事案が発生するなどしていることから、検査の実効性の一層の向上を図ることを目的として、これまでの検査内容及び手法等について検討したものである。 「資料」として「審査会検査実施状況調査会議 調査結果報告について」があり、新日本有限責任監査法人に対して実施した検査(平成23事務年度と平成25事務年度の検査)の適切性について述べられている。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 大手監査法人に対する検査 1 大手監査法人の監査状況 新日本有限責任監査法人、有限責任監査法人トーマツ、有限責任あずさ監査法人、PwCあらた監査法人で、①全上場会社の73%を監査し、②上場時価総額全体の92%を占めている(平成27年4月末時点)。 「平成27年度監査事務所等モニタリング基本計画」における大手監査法人に対する検査では、次の事項を検査することとなっている。 2 今後の対応 公認会計士・監査審査会の今後の対応として、次のことが述べられている。 (了)
《速報解説》 会計士協会、「監査人から引受事務幹事会社への書簡」 (コンフォート・レター)に係る実務指針及び 要綱の改正(公開草案)を公表 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成28年3月23日、日本公認会計士協会は次の公開草案を公表し、意見募集を行っている。 これは、比較情報に関する監査基準の改訂や、平成26年8月における指定国際基準に準拠して作成した連結財務諸表等に係る監査報告書に関する企業内容開示府令等の改正、また、書簡に関連する実務動向等を踏まえた対応である。 意見募集期間は、平成28年4月25日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な改正内容 1 書簡(コンフォート・レター)とは 募集又は売出しによる株式、社債等の引受審査に関連して、発行会社及び引受事務幹事会社が発行会社の財務諸表を監査した公認会計士又は監査法人から受領する「監査人から引受事務幹事会社への書簡」(コンフォート・レター)の制度がある(1項)。 書簡は、発行会社による新規証券の発行等に際して、発行会社及び引受事務幹事会社からの依頼に基づき、監査人が届出書等に記載された発行会社の財務情報及びその後の変動につき調査した結果を、引受事務幹事会社に報告するために監査人が作成する文書のことである(6項)。 2 公開草案 監査・保証実務委員会実務指針の主な改正内容は次のほか、書簡の文例や経営者確認書の文例の改正である。 「要綱」については、監査・保証実務委員会実務指針の反映と契約書のひな型の改正である。 (了)
《速報解説》 ASBJにおける「マイナス金利に関する 会計上の論点への対応等」審議について〔続報〕 ~金利スワップの特例処理の取扱いへの見解、 減価償却に関する税制改正対応の検討状況を公表~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに マイナス金利に関する会計上の論点への対応については、既報の通り平成28年3月10日に公表された「第331回企業会計基準委員会の概要」で明らかとなったが、その後、3月23日に企業会計基準委員会が開催され、マイナス金利に関する会計上の論点への対応として「金利スワップの特例処理の取扱い」と、「減価償却に関する税制改正への対応」などについてさらに審議がなされ、翌24日、その内容が公表された。 本稿ではこの2項目について取り上げる。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 金利スワップの特例処理 3月23日の企業会計基準委員会では「マイナス金利に関する会計上の論点への対応」が審議され、次のように「金利スワップの特例処理の取扱い」が述べられている。 次の検討が述べられている。 Ⅲ 減価償却に関する平成28 年度税制改正への対応 3月23日の企業会計基準委員会では「減価償却に関する平成28年度税制改正への対応」が審議され、次の論点について審議された。ただし、審議資料の「審議(3)」では、具体的な結論は記載されていない。 なお、本件については、会計処理に関する部分を含むため、日本公認会計士協会では特段のアナウンスメントをする予定はないと聞いていると記載されている。 審議資料では、①何らかの対応を図るべきとの意見と②対応を図ることは困難ではないかとの意見とが記載されている。 (了)
《速報解説》 中小企業者を対象とした 「軽減税率対策補助金」の内容が明らかに ~改修等の内容によりA型・B型の2区分、税制改正法案成立後の改修等が支援対象 Profession Journal編集部 〇軽減税率対策補助金の専用ホームページが開設 消費税率10%の引上げをめぐっては、政府が有識者の意見を聞くなど未だ先行き不透明な状態だが、予定通り軽減税率制度が来年4月1日に導入されるとした場合、この制度に対応したレジ等のシステム導入・改修には1年以上の期間を要するケースもあり、対応が必要な企業にとっては待ったなしの状態だ。 特に中小企業や個人事業者ではシステム改修に係る資金面が不安視されるところ、このたび中小企業・小規模事業者が軽減税率に対応する一定のシステム改修等を行った際に支援される補助金(軽減税率対策補助金)の専用ページが開設され、その内容が明らかとなった。 上述の通り消費税率引上げの動きについては不透明感が増しているものの、軽減税率対策補助金の支援対象は、近いうちに国会での成立が見込まれる「所得税法等の一部を改正する法律案」の成立日から平成29年3月31日までに導入又は改修等が完了したものが支援対象となる。 現在はまだ補助金申請の受付は始まっていないが、その内容についてクライアント企業への周知を忘れないようにしたい。 〇軽減税率対策補助金は大きくA型とB型に区分 軽減税率対策補助金は、改修等の内容によって大きくA型とB型の2つに分けられる。それぞれの特徴をまとめると次のとおり。 (注意) 2016/4/4付け同ホームページにて、受発注システムの改修等支援のB-2型が、事前申請から事後申請に変更となった旨、記載されている。 〇A型は「複数税率対応レジの導入等支援」 まずA型は「複数税率対応レジの導入等支援」であり、レジの種類や複数税率への対応方法(導入or改修)によってさらに次のように、A-1型からA-4型の4種類に分けられる。 これらはレジ本体のほかに、レジ機能に直結する付属機器等(レシートプリンタ・キャッシュドロア・バーコードリーダー・決済端末及びリーダー・カスタマーディスプレイ・ルーター・サーバ)も合わせて補助対象となる。 それぞれの型において、補助額は1台あたり20万円が上限となるが、新たに行う商品マスタの設定や機器設置(運搬費含む)に費用を要する場合は、さらに1台あたり20万円(合計40万円)を上限に支援される。 補助率は原則として導入・改修費用の2/3だが、1台のみ機器導入を行う場合でかつ導入費用が3万円未満の機器については3/4、タブレット等の汎用端末については1/2と補助率が異なる。 なお、複数台数を申請する場合、1事業者あたり200万円が上限となる。 〇B型は「受発注システムの改修等支援」 A型よりも比較的規模の大きい改修として、取引先間での電子的な受発注システムを利用している事業者では、電子的受発注に必須となる商品マスタや、発注・購買管理、受注管理機能のうち、複数税率の対応に伴い改修・入替が必要となるものがある。これらの改修等支援がB型だ。 B型では、電子的受発注データのフォーマットやコード等の複数税率対応に伴う改修や、現在利用している電子的受発注システムから複数税率対応したシステムへの入替が補助対象となる。もともと電子的受発注システムを利用していない企業が新規導入するケースは対象外となっているが、取引先の要請等により新規導入する場合は補助対象となる。 補助上限額は、発注システム側・受注システム側の改修・入替ごとに異なり、(小売事業者等の)発注システムの場合の補助上限額は1,000万円、(卸売事業者等の)受注システムの場合の補助上限額は150万円で、両方の改修・入替が必要な場合の上限は1,000万円となる(補助率は改修・入替に係る費用の2/3)。 〇B型は指定事業者による代理店申請が原則 上記のように改修等の内容によって大きくA型・B型に分かれているが、その申請時期についても、A型は導入・改修後の申請、B型はシステム改修・入替前の申請が必要となる点が異なっている。 (注意) 2016/4/4付け同ホームページにて、受発注システムの改修等支援のB-2型が、事前申請から事後申請に変更となった旨、記載されている。 また、A型は一部販売店等による代理申請等が利用可能である一方、B型はシステムベンダー等の指定事業者による代理申請を原則としている(自らパッケージソフトを購入し導入した場合は除く)。 つまりB型は専門知識を必要とするシステムの改修・入替のため、「指定事業者による代理申請制度」が導入され、申請者に代わって、あらかじめ指定されたシステムベンダー等が申請手続を行うことになる。なお、この申請は、改修・入替に着手する前の「交付申請」と、改修・入替が完了した後の「実績報告」という2段階の制度となっている(補助金の交付決定以前に改修等の作業に着手した場合は、補助対象にならない)。 なお、上記専用ページにはレジメーカー・販売代理店・ベンダー向けのページが設けられ、A型・B型ともに、対象となる製品型番やサービス等の登録受付、B型の指定事業者の登録受付方法等が掲載されている。 〇軽減税率対応のためのシステム改修費の取扱いは? 上記補助金と合わせて、消費税の軽減税率に対応するためのソフトウェア・システム改修費が資本的支出に該当するのか修繕費に該当するのか、その取扱いが気になるところ。 中小企業庁が3月に公表した資料(消費税軽減税率(案)への対応について)によると、当該費用についてはソフトウェアの効用を維持するために行われる支出に該当するとして修繕費に該当、費用処理できる旨の取扱いの明確化を、国税庁に要請しているとのことだ。 (※) 中小企業庁ホームページより (了)
《速報解説》 東京国税局、包括受遺者への相次相続控除適用の可否に関する 文書回答事例を公表 ~相続税法では相続人と包括受遺者を別の取扱いと判断~ 税理士 齋藤 和助 1 はじめに 国税庁は、相続人以外の者が包括遺贈により財産を取得した場合における相次相続控除の適用の可否の事前照会について、平成28年3月3日付で、「貴見(相次相続控除は適用できない)のとおりで差し支えない」との回答を公表している(ホームページ公表日は3月18日)。 以下、その内容と実務上の留意点を確認する。 2 照会の趣旨 次の相続関係図において、乙の死亡による第一次相続については、甲がすべての財産を取得し、甲が申告と納付を行った。甲の死亡による第二次相続については、遺言により乙の甥・姪であるa及びbがすべての財産を取得することとされており、当該遺言に基づきa及びbが第二次相続に係る相続税の申告と納付を行うこととしている。 この場合、第二次相続におけるa及びb(包括受遺者)に対し、相次相続控除の適用が可能かどうかというものである。 (国税庁HPより) 3 相次相続控除(相続税法20条) 相次相続控除とは、第二次相続に係る被相続人が、第二次相続の開始前10年以内に開始した第一次相続により財産を取得したことがあるときは、第二次相続に係る被相続人から相続により財産を取得した者については、第二次相続に係る被相続人が第一次相続により取得した財産につき課せられた相続税額に一定の割合を乗じて計算した金額を控除できるとするものである。 この規定は、短期間のうちに相続が続いた場合、同じ承継財産に2回の相続税が課税されることになるため、この負担を考慮して設けられたものである。 4 包括受遺者 包括受遺者は民法990条において「包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有する。」と規定されている。また、上記相次相続控除に規定する相続には「被相続人からの相続人に対する遺贈を含む。」とされていることから、包括受遺者に対しても相次相続控除の適用が認められるのではないかという疑問が生ずる。 しかし、相続税法において、包括受遺者にも適用があるものについては「相続人(包括受遺者を含む)」と規定されており、相次相続控除(相続税法20条)にはこのような記載はないことから、相続人に限って認められることになる。 5 実務上の留意点 上記4のように、民法において包括受遺者は相続人と同一の権利義務を認められているものの、相続税法においては別々に取り扱われている。 したがって、相続人だけに適用のあるものと相続人と包括受遺者の双方に適用があるものを区別し、納税者に誤ったアドバイスをしないよう注意すべきである。 (了)
2016年3月24日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.162を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!- - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。