フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第16回】 「セグメント情報等の開示」 仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋 【はじめに】 今回は、セグメント情報等の開示について解説する。 セグメント情報等とは、以下の4つの情報をいう(企業会計基準第17号「セグメント情報等の開示に関する会計基準(以下、「基準」という)」1)。 上記(1)のセグメント情報は、マネジメント・アプローチで開示する(基準50)。マネジメント・アプローチとは、経営上の意思決定や業績を評価するために、経営者が企業を事業の構成単位に分別した方法を基礎としてセグメント情報を開示する方法である(基準45)。 なお、セグメント情報等の開示は、財務諸表利用者が、企業の過去の業績を理解し、将来のキャッシュ・フローの予測を適切に評価できるように、企業が行う様々な事業活動の内容及びこれを行う経営環境に関して適切な情報を提供するものでなければならない(セグメント情報を開示する基本原則。基準4)。 ※各ステップをクリックすると、それぞれのページに移動します。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 (次ページ【STEP1】へ進む) (前ページ【はじめに】へ戻る) セグメント情報の開示のため、まず、報告セグメント(セグメント情報を開示する対象となるセグメント)を決定しなければならない(基準10) ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。 (1) 事業セグメントの識別 まず、事業セグメントを識別する。事業セグメントとは、企業の構成単位で、次の要件のすべてに該当するものをいう(基準6)。 (※) 新たな事業を立ち上げたときのように、現時点では収益を稼得していない事業活動を事業セグメントとして識別する場合もある(基準6)。一方、企業の本社又は特定の部門のように、企業を構成する一部であっても 収益を稼得していない、又は付随的な収益を稼得するに過ぎない構成単位は、事業セグメント又は事業セグメントの一部とならない(基準7)。 また、事業セグメントの要件を満たすセグメントの区分方法が複数ある場合、各構成単位の事業活動の特徴、それらについて責任を有する管理者の存在及び取締役会等に提出される情報などの要素に基づいて、企業の事業セグメントの区分方法を決定する(基準9)。 (2) 集約基準 上記(1)で識別した事業セグメントは、そのまま報告セグメントになるわけではない。(2)から(5)で報告セグメントを決定することになる。(2)では、集約基準を検討する。 複数の事業セグメントが次の要件のすべてを満たす場合、当該事業セグメントを1つの事業セグメントに集約することができる(基準11)。集約することができる事業セグメントは集約し、(3)を検討する。集約することができない事業セグメントは、個々の事業セグメントごとに(3)を検討する。 (3) 量的基準 ここでは、報告セグメントとして開示しなければならない事業セグメントを判定する。 次の量的基準のいずれかを満たす事業セグメントを報告セグメントとして開示しなければならない(基準12)。いずれかを満たす場合、【STEP2】を検討する。いずれも満たさない場合には、(4)を検討する。 (注) なお、量的基準のいずれにも満たない事業セグメントを、報告セグメントとして開示することは妨げられていない。 (4) 経済的特徴の判断 量的基準を満たしていない複数の事業セグメントの経済的特徴が概ね類似し、かつ上記(2)③に記載した事業セグメントを集約するにあたって考慮すべき要素の過半数について概ね類似している場合には、これらの事業セグメントを結合して、報告セグメントとすることができる(基準13)。そして、次は【STEP2】を検討する。 経済的特徴が概ね類似していない場合や、経済的特徴が概ね類似しているが、上記(2)③の要素の過半数について概ね類似していない場合には、下記(5)を検討する。 (5) 外部顧客への売上高が損益計算書の売上高に占める割合 上記(4)まで検討した結果、報告セグメントの外部顧客への売上高の合計額が連結損益計算書又は個別損益計算書(以下「損益計算書」という)の売上高の 75%以上である場合、その他の事業セグメントは「その他」として開示する(基準14、15)。 75%未満である場合には、損益計算書の売上高の75%以上が報告セグメントに含まれるまで、報告セグメントとする事業セグメントを追加する。損益計算書の売上高の75%以上に達したら、その他の事業セグメントは「その他」として開示する(基準14、15)。 (次ページ【STEP2】へ進む) (前ページ【STEP1】へ戻る) 【STEP1】で報告セグメントを決定したら、セグメント情報として、(1)報告セグメントの概要、(2)報告セグメントの利益(又は損失)、資産、負債及びその他の重要な項目の額並びにその測定方法に関する事項、(3)開示項目とこれに対応する財務諸表上額との間の差異調整に関する事項を開示する。 具体的には、以下を開示する(基準17~26、78、企業会計基準適用指針第20号「セグメント情報等の開示に関する会計基準の適用指針(以下、「適用指針」という」10・12)。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 上記の他にも、「その他」に含まれる主要な事業の名称等も開示する(基準15)。 (次ページ【STEP3】へ進む) (前ページ【STEP2】へ戻る) セグメント情報そのものだけでなく、その関連情報も開示する。 具体的には、セグメント情報の中で同様の情報が開示されている場合を除き、(1)製品及びサービスに関する情報、(2)地域に関する情報、(3)主要な顧客に関する情報をセグメント情報の関連情報として開示する。なお、当該関連情報に開示される金額は、財務諸表を作成するために採用した会計処理に基づいて開示する(基準29~32、適用指針15~18)。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 なお、報告すべきセグメントが1つしかなく、セグメント情報を開示しない企業であっても、当該関連情報を開示する。 (次ページ【STEP4】へ進む) (前ページ【STEP3】へ戻る) ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。 損益計算書に固定資産の減損損失を計上している場合には、その報告セグメント別の内訳を開示する。なお、報告セグメントに配分されていない減損損失がある場合には、その額及びその内容を記載する。ただし、セグメント情報の中で同様の情報が開示されている場合には、当該情報の開示は必要ない(基準33)。 (次ページ【STEP5】へ進む) (前ページ【STEP4】へ戻る) ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。 損益計算書にのれんの償却額又は負ののれんの償却額を計上している場合には、その償却額及び未償却残高に関する報告セグメント別の内訳をそれぞれ開示する。なお、報告セグメントに配分されていないのれん又は負ののれんがある場合には、その償却額及び未償却残高並びにその内容を記載する。ただし、セグメント情報の中で同様の情報が開示されている場合には、当該情報の開示は必要ない(基準34)。 また、損益計算書に重要な負ののれんを認識した場合には、当該負ののれんを認識した事象について、その報告セグメント別の概要を開示する(基準34-2)。 * * * 以上、5つのステップをまとめたフロー・チャートを再掲する。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 (了)
確定拠出年金制度の改正をめぐる今後の展望」 【第1回】 「今回改正の背景と全体像」 特定非営利活動法人確定拠出年金総合研究所(NPO DC総研) 理事長 秦 穣治 本連載では現企業年金制度に関するあらましの知識をお持ちの方を対象にしているが、充分な知識をお持ちでないと思っておられる方々にも問題の本質をご理解いただけるよう努力している。現企業年金制度に関する情報については、厚生労働省のHPにある企業年金についてのコンテンツをご参照いただきたい。 なお、改正法律案そのものの説明を除き、筆者の私見が多数述べられていることを注記させていただく。 1 改正の背景 〈全体像〉 上図〈全体像〉にあるが、今回の企業年金制度改正の中心は確定拠出年金制度(DC)である。理由はいくつか考えられるが、 といったところが理由であろう。 加えて、退職給付会計の国際化の側面を見逃すわけにはいかない。DCが生まれる以前には、日本の制度は、退職一時金制度を含めてすべて確定給付の制度であり、社員に対して、予め決められた仕組みで退職金額を支払うこととなっていた。一般的だったのは、『退職時の給与水準×勤続年数×一定の係数』というもので、年功序列型賃金及び終身雇用を助長していた。 この仕組みに退職給付会計が導入され、社員にとっての想定退職金額は、企業にとっては時価評価に基づく現在価値としての退職給付債務となり、その裏付けとしての運用資産も時価評価することとなったから、市況が悪い時には、割引率の低下による債務金額の膨張、運用資産時価総額の減少のダブルパンチで、積立不足の大幅増に見舞われ、これがDC制度実施の引き金になったと言われている。 この傾向は、現在のように一時的にせよ市況が回復している時でさえ、大企業を中心にして既存制度からDC制度へのシフトが静かに実施されている。 同様に、中小企業の社員もその恩恵に浴していた“厚生年金基金制度”が前述の法改正により、その存続が非常に厳しいものとなり、既に始まっているが、厚生年金基金の解散、結果として中小企業社員の無企業年金化が静かに進行しようとしている。また、もともと企業年金制度を有してはいなかった企業に企業年金制度を持たせようとすれば、企業にとって負担の少ないDCにせざるを得ない。 このような流れを受けて、厚生労働省はDCをより使い勝手の良い制度にしていかねばならぬ、ということで、DCを中心とした法改正に踏み切ったわけである。 今までの議論は主として企業サイドから、会計基準の変更、年金資産の運用難、そして厚生年金基金制度の実質的な終了に伴うものだったが、実は、それ以外に国として考えなければならない重大な理由があった。それが上図の一番左側にある2つの事象、「公的年金給付水準の引き下げ」と「ライフスタイルの多様化」である。 ほんの10年前までは、定年まで勤めていた多くのサラリーマンにとって、老後は公的年金によって生活の基本はカバーできるので、企業年金ないし退職一時金は、老後をより豊かにする資金として使っていける、という明るい展望を持てる時代だった。 しかしながら、公的年金制度に年金保険料の上限設定とそれに伴うマクロ経済スライドという仕組みが入り、受け取れる公的年金は『毎年のインフレ率-約1%程度』でしか増加しない、結果として、毎年その額だけ実質的に公的年金受給額の目減りが発生することとなった。 「約1%の減額か」と思うかもしれないが、これは、運用の世界でよく言う“複利効果”の逆であって、毎年、年を重ねるごとにどんどん加速度的に効いてきて、大きな減額幅となる。これは実は、大変に恐ろしい事態なのである。 加えて、「ライフスタイルの多様化」とキレイな言葉で書いてあるが、実態は、正社員の非正規社員化によって、 という社員が、日本全体の労働者の4割弱を占める状態になっている。 かかる事態を踏まえ、厚生労働省は、公的年金だけで老後生活を送ることは今後極めて困難になった事実を公示し(公的年金の財政検証結果の公示)、公的年金を補完する企業年金及び自助努力年金(DC個人型)の普及強化に乗り出したわけである。 今までは公的年金制度が、制度的にも、また、対象者のカバー率においても、老後資金として確固たる地位を占めてきたことから、悪く言えば、企業年金は“付け足し”のようなものだった。要すれば、「やりたい企業が、労使でよく相談して好きなように実施してくれてよい」という程度のものだったと思われる。 加えて、税制適格年金制度(適年)や厚生年金基金制度(特に総合型)のように中小企業にとっても使い勝手の良い制度があったために、金額の多寡はともかくとして、「企業年金制度を有している」企業及びその恩恵にあずかっている従業員の全労働者に占める割合は60%を超え、まずまずの利用状況だったと考えられる。 しかしながら、適年は既に完全廃止され、厚生年金基金制度も前述のごとく極めて厳しい状況に置かれ、結果として、企業年金はDBであれ、DCであれ、いわゆる大企業のものというイメージになっている。つまり、大企業でなければ持てない制度になってきたわけである。 この点をもう少し詳しく述べると、 という状況により、中小企業への企業年金の普及が困難になっている実情がある。 したがって、今のままでは企業年金制度の恩恵に預かれない可能性の高い中小企業の社員、及びそもそも企業年金制度自体の対象となりえない契約社員・パート社員などにも、老後資金積立を計り得る仕組みの構築が喫緊の課題となってきており、今般の制度改正が不可避になったものと考える。 2 改正の全体像 上図〈全体図〉の右半分をご覧いただきたいが、諸項目のうち、実線で囲まれた四角の項目は、この4月に法改正案として盛り込まれた項目である。多くは、中小企業向け及び個人向けのDC拡充を目指したものであり、詳細は後に説明する予定である。 ただご注意願いたいのは〈DC資産運用の改善〉項目であり、これは税制上・システム上の課題というよりは、DCの運用実態を踏まえて“運営・運用上”の問題を解決したい、という厚生労働省の強い意思の現れで、今回の改正において極めて重要な意味を持っている。したがって、この項目は【第2回】で詳細に説明する。 下段にある項目群は破線の四角で囲っているが、これらの項目は、今回の法案化は見送られたものの、厚生労働省として解決の方向観は明確で、おそらく財務省との折衝を通じて今後実現されていくものと考えられる。 かつ、解決の方向観は、既存の企業年金制度の抜本的な改革を迫るものなので、改正法案に盛り込まれた内容より先に【第2回】で説明させていただく。すなわち、今回の改正案の大きな“うねり”を説明した後に、個別の法案説明に入る方針である。 なお、DBに関する改正法案内容であるが、 が中心で、今後検討予定の「DB・DCのイコール・フッティング」が最大の課題となるが、この内容については【第5回】【第6回】で詳しく触れる。 (了)
中小企業事業主のための 年金構築のポイント 【第3回】 「老齢基礎年金を受給するための要件」 特定社会保険労務士 佐竹 康男 国民年金から支給され老齢基礎年金は、受給に必要な期間(受給資格期間)を満たしたときに65歳から支給される。 1 受給資格期間 老齢基礎年金を受給するためには、公的年金(国民年金、厚生年金保険、共済年金)の被保険者期間(※)が25年以上必要である。これを「受給資格期間」という。 (※) 「被保険者期間」とは加入期間のことをいい、月単位で、その年金制度に加入した月から加入しなくなった月の前月までの期間である。例えば、厚生年金保険の場合は、入社した月から退職した日の翌日が属する月の前月までが被保険者期間になる。 老齢基礎年金の受給資格期間は、下記のとおり様々な期間が合算される。 2 公的年金の加入期間 次の期間を合算したものである。 ① 保険料納付済期間 第1号被保険者として保険料を納付した期間のほか、厚生年金保険の被保険者期間である第2号被保険者期間(20歳以上60歳未満の期間)や第3号被保険者期間も含まれる。 (※) 第1号被保険者等については【第1回】参照。 ② 保険料免除期間(第1号被保険者のみ) 障害基礎年金・障害厚生年金等の受給権者や生活保護法による生活扶助を受けている人(法定免除)及び、低所得等により保険料の納付を免除されている人(申請免除)の加入期間である。申請免除の場合は、その人の所得により「全額免除期間」「4分の3免除期間」「半額免除期間」「4分の1免除期間」の4種類がある。 なお、第2号被保険者(厚生年金保険・共済年金の加入者)及び第3号被保険者は、個々に保険料の負担をしていないので、保険料免除期間は生じない。 ③ 合算対象期間(カラ期間) 年金額には反映されないが、受給資格期間には算入されるものをいう。 厚生年金保険の昭和36年4月以降の被保険者期間のうち20歳前や60歳以後の期間、サラリーマンの配偶者で昭和36年4月1日から昭和61年3月31日まで任意加入期間中に任意加入しなかった期間(20歳以上60歳未満の期間)等がある。 3 受給資格期間の特例(厚生年金保険・共済年金の被保険者期間の特例) 厚生年金保険に加入している人は、保険料の滞納がない。被保険者期間がそのまま受給資格期間になる。したがって、厚生年金保険に25年加入すれば受給資格期間を満たすことができる。 昭和31年4月1日以前に生まれた人は、共済年金及び厚生年金保険の年金の被保険者期間が20年から24年以上(単独、合算いずれも可)あれば、公的年金の被保険者期間が25年以上なくても、受給資格期間を満たすことができる。 4 受給資格期間の改正(平成29年4月1日施行予定) 老齢基礎年金の受給資格期間が、平成29年4月1日以降、現在の25年から10年に短縮される予定である。 《おさらいQ&A》 (了)
《速報解説》 会社法及びコーポレートガバナンス・コードを踏まえた「監査役監査基準」及び「内部統制システムに係る監査の実施基準」の改定案が公表 ~「監査報告のひな型」の対応及び改定スケジュールも明らかに~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成27年4月28日付で、日本監査役協会は「監査役監査基準」及び「内部統制システムに係る監査の実施基準」の改定案を公表し、意見募集を行っている。 これは、コーポレートガバナンス・コード原案の公表、会社法及び法務省令の改正などを踏まえたものである。 意見募集期間は、平成27年5月20日までである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 監査役監査基準の改定案 改定案は、コーポレートガバナンス・コード(原案)への対応、改正会社法及び法務省令への対応に大きく分かれている。 また、各規定の語尾について、法定事項は、原則として、「ねばならない」、「できない」に統一するなどとしている。 1 コーポレートガバナンス・コード(原案)への対応 2 改正会社法及び法務省令への対応 Ⅲ 内部統制システムに係る監査の実施基準の改定案 Ⅳ 今後の改定スケジュール ①「監査役監査基準等の今後の改定スケジュールについて」と②「監査報告のひな型改定予定等について」が公表されており、現在のところ、次のスケジュールが予定されている。 改正会社法の施行が目前の5月1日であることから、「監査報告のひな型改定予定等について」は、ぜひ、原文をお読みいただきたい。 (了)
《速報解説》 改正「中小企業の会計に関する指針」が関係4団体より公表 ~退職給付会計基準等の改正に対応~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成27年4月21日(ホームページ掲載日は4月27日)、「中小企業の会計に関する指針」(以下「中小会計指針」という)の改正が行われ、関係4団体(日本税理士会連合会、日本公認会計士協会、日本商工会議所及び企業会計基準委員会)より公表された。これにより、平成27年1月14日付で意見募集されていた公開草案が確定することとなる。 今回の改正は、「退職給付に関する会計基準」(企業会計基準第26号)などの企業会計基準の改正等に対応するものである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な改正内容 1 固定資産の減価償却 従来、減価償却計算に適用した耐用年数又は残存価額の修正を行う場合、過年度における減価償却累計額を修正し、その修正額を特別損失に計上するとしていた。 今回の改正により、中小会計指針では、資産の陳腐化その他一定の事由により使用可能期間が従来の耐用年数に比して著しく短くなった場合は、未経過使用可能期間(使用可能期間のうちいまだ経過していない期間)にわたり減価償却を行うこととされた。 2 退職給付債務・退職給付引当金 今回の改正により、確定給付制度、退職給付債務、確定拠出制度の用語を用いた表現に改正されている。 3 組織再編の会計 今回の改正により、「少数株主」から「非支配株主」の用語へ改正されている。 (了) ↓お薦め連載記事↓
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《速報解説》 経済産業省が「持続的成長に向けた企業と投資家の対話促進研究会」報告書を公表 ~企業情報開示や監査、株主総会の日程や付議事項などを総合的に検討~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成27年4月23日付で、経済産業省は、「持続的成長に向けた企業と投資家の対話促進研究会」報告書を公表した。 「日本再興戦略」改訂2014では、「持続的な企業価値の創造に向けた企業と投資家との対話の促進」を取り組むべき施策として掲げられている。 「持続的成長に向けた企業と投資家の対話促進研究会」は、平成26年9月に設置され、さらに研究会の下に「企業情報開示検討分科会」と「株主総会のあり方検討分科会」が設置されている。 研究会は、次のものとの関連を明確に意識し、報告書にも反映しているとのことである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 報告書の概要 報告書は、企業と投資家(株主を含む)が対話を通じて相互理解を深め、持続的成長あるいは中長期的な企業価値の向上という目的を達成するために、国際的に見ても質の高い対話環境を目指すべきと述べている。 このため、対話環境を形づくる様々な要素、例えば、企業情報開示や監査、株主総会の日程や付議事項、電子化の促進等を総合的に検討し、全体最適を図るための方策について述べている。 1 一体的・統合的な企業情報開示 現在、企業内容等の開示に関する規制としては、金融商品取引法、会社法、証券取引所の上場規則に基づく開示があり、開示内容によって類似する部分も見られるが、規制の種類により、異なる開示が行われている。また、アニュアルレポート等の任意開示を行う企業もある。 報告書は、投資家にとって有用な情報をより効果的かつ効率的に提供するため、一体的・統合的な企業情報開示を行うものとして、「モジュール型開示システム」という考え方を示している。 これは、開示すべき情報の全体像(一体的・統合的な企業報告の全体)を認識した上で、そこから投資家にとって必要な情報の「モジュール(まとまった構成要素)」を切り出し、適切なタイミングで提供するという考え方である。 報告書は、監査の実質的な一元化や四半期開示の一本化等についても述べている。 2 中長期的な企業価値評価・分析のための情報の充実 情報開示については、企業のビジョンや経営方針、戦略やガバナンス等が、企業の成果や財政状況、持続的な価値創造といかに結びつくのかを統合的に理解できるようにすることが重要であると考えられている。 報告書は、企業と投資家等が集まる場において、中長期的な企業価値向上に関する対話を促進するための情報開示として、中期経営計画やESG(環境・社会・ガバナンス)情報の開示、統合報告のあり方等について述べている。 3 対話型の株主総会プロセスへの転換 報告書では、株主総会に至るプロセス全体を企業と投資家の対話の一環として捉え、次のような見直しについて述べている。 (1) 株主の議案検討と対話のための適切な日程設定と情報提供 日本の株主総会は、諸外国に比して決算後早いタイミングで行われており、かつ6月下旬に集中していることから、株主の実質的な議案検討や企業との対話を行うための期間が十分ではないと認識されているとのことである。また、株主が必要とする情報が早く利用しやすい形で提供されることが求められているとのことである。 報告書は、株主総会に向けて、株主が議案検討や企業との対話を通じて理解を深めるために十分な期間の確保と適時かつ充実した情報を入手するための方策として、「対話型株主総会プロセス」を実現するための必要条件(期間や情報提供のあり方等)、総会日程やその前提となる議決権の基準日の設定を見直す際の考え方や方法などについて述べている。 (2) 電子化の促進 報告書は、株主の議案検討や対話期間を確保し、プロセス全体を効率化するとともに、統合的な情報開示を実現する観点から、株主総会プロセスにおける電子化の促進について述べている。 具体的には、①議案や招集通知に添付する書類(招集通知関係書類)の情報の早期(発送前)Web開示、②招集通知関係書類の電子化、③議決権行使の電子化の促進である。 (3) 株主の参加の円滑化等、意義ある株主総会に向けた環境整備 報告書は、機関投資家や個人株主が株主総会に参加しやすくするための方策等について述べている。 例えば、「名義株主以外の機関投資家等」が株主総会に参加する場合のガイダンスの策定、議決権行使比率の向上も含む個人株主を意識した総会運営、それ以外の機会も含む対話や情報開示の検討である。 4 企業と投資家の意識と行動、対話支援産業の役割 報告書は、企業と投資家が対話に向けた共通認識を醸成し、双方の見識・実力を高めることの重要性について述べている。 企業経営者や投資家が対話を深めるための懸念や問題等を把握し、それぞれの根拠等について検証し、明確化を積み重ねていくべきこと、また、信託銀行や証券代行、弁護士、コンサルタント、アナリスト等が、企業と投資家の対話全般を支援する「対話支援産業」としてそれぞれの役割を一層強化することへの期待が述べられている。 (了)
《速報解説》 大阪国税局より(文書回答事例)「相続があった年に遺産分割協議が行われた場合における共同相続人の消費税の納税義務の判定について」が公表 ~被相続人の基準期間の課税売上高への遡及は不要と判断~ 税理士 齋藤 和助 大阪国税局に対して「相続があった年に遺産分割協議が行われた場合における共同相続人の消費税の納税義務の判定について」事前照会があり、平成27年3月24日付で文書回答がなされ、その内容が国税庁ホームページに掲載された(掲載日:4月16日)。 1 事前照会に係る取引等の事実関係 2 照会の内容 その年において相続があった場合において、その年の基準期間における課税売上高が1,000万円以下である相続人が、当該基準期間における課税売上高が1,000万円を超える被相続人の事業を承継したときは、当該相続のあった日の翌日から納税義務を免除しないとされている(消法10①)。 この場合において、2以上の相続人があるときには、相続財産の分割が実行されるまでの間は、各相続人が共同して被相続人の事業を承継したものとして取り扱うこととされており、各相続人のその課税期間に係る基準期間における課税売上高は、当該被相続人の基準期間における課税売上高に法定相続分等の割合を乗じた金額とされている(消基通1-5-5)。 これに基づき、納税義務の判定を行うと①のようになる。 しかし、民法第909条の規定によれば、遺産の分割は相続開始の時に遡ってその効力を生ずるとされていることから、平成26年中に行った遺産の分割により、照会者は相続開始時に被相続人から3分の2の財産を相続により承継したこととなり、これに基づき、納税義務の判定を行うと②のようになる。 照会者は、消費税法第10条の適用に当たっては、事業者が、判定時点での適正な事実関係に基づき消費税関係法令等の規定に従って納税義務が判定されたものである場合にはその判定が認められるものと解するのが相当であるとして、上記①の判定で差し支えないかを事前照会していた。 3 大阪国税局の回答 これに対し、大阪国税局は、照会者の上記①の判定で差し支えないとしている。 つまり、相続開始年分に遺産分割協議が行われた場合には、その遺産分割の効力は、被相続人の基準期間の課税売上高にまで遡及しなくてよいということである。 これは、短期間に課税事業者となる納税者に対する配慮であると思われるが、以下の3要件を満たす必要があることから、実務における適用事例は限定的になると思われる。 (了)
《速報解説》 法人税率の引下げにより 純資産価額方式における法人税額等相当額を38%とする改正通達が公表 ~取引相場のない株式等の評価明細書様式も一部改正~ 税理士法人オランジェ 代表社員 税理士 小幡 修大 平成27年度の税制改正において平成27年4月1日以後開始事業年度より法人税の本則税率が23.9%に引き下げられたのに伴い、4月17日に国税庁ホームページにおいて「財産評価基本通達の一部改正について(法令解釈通達)」が公表され、純資産価額方式における「評価差額に対する法人税額等に相当する金額」の算定に用いる「法人税(地方法人税を含む)、事業税(地方法人特別税を含む)、道府県民税及び市町村民税の税率の合計に相当する割合」が「40%」から「38%」に改正された(評基通186-2)。 1 従来の取扱い 取引相場のない株式等を評価する場合の純資産価額方式は、次の算式により計算することとしている。 (算式) この場合の「評価差額に対する法人税額等に相当する金額」は、「相続税評価額による純資産価額」から「帳簿価額による純資産価額」を控除した残額に「法人税(地方法人税を含む)、事業税(地方法人特別税を含む)、道府県民税及び市町村民税の税率の合計に相当する割合」として「40%」を乗じて計算した金額としていた。 2 改正通達の概要 (1) 法人税の税率の改正等 平成27年度税制改正により、法人税の本則税率が現行の25.5%から23.9%に引き下げられ、平成27年4月1日以後に開始する事業年度から適用することとされた。 (2) 通達改正の概要 上記(1)のとおり、法人税の本則税率の引下げにより、「法人税率等の合計相当割合」の根拠となる税率が変わることから、「法人税率等の合計に相当する割合」を「40%」から「38%」に改正することとなった。 (3) 評価明細書様式の改正 上記の改正に伴い、「「相続税及び贈与税における取引相場のない株式等の評価明細書の様式及び記載方法等について」の一部改正について(法令解釈通達)」が合わせて公表され、次の評価明細書における「評価差額に対する法人税額等相当額」欄の記載が変更されている。 ◆「第5表 1株当たりの純資産価額(相続税評価額)の計算明細書」 ◆「第8表 株式保有特定会社の株式の価額の計算明細書(続)」 (4) 適用時期 平成27年4月1日以後に相続、遺贈又は贈与により取得した財産の評価に適用されることとなった。 (了)
2015年4月23日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.116が 公開されました。 プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布中! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。