《速報解説》 平成27年度税制改正に伴う 税効果会計の適用における法定実効税率について、 企業会計基準委員会より検討ペーパーが公表 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成27年3月9日付で、企業会計基準委員会は「第307回企業会計基準委員会の概要」をホームページに掲載しており、平成27年度税制改正において法人実効税率の引下げが予定されていることを踏まえ、同ページ内に議事概要別紙として「平成27年度税制改正に伴う税効果会計の適用における法定実効税率の検討」(以下「議事概要別紙」)を公表している。 平成27年度税制改正に係る改正法案は、平成27年2月17日に国会に提出され、審議中である。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 適用時期の関係 税率の変更に関する取扱いについては、「税効果会計に係る会計基準」第四、3及び4並びに「個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針」(会計制度委員会報告第10号)18項などに規定されている。 同18項では、税効果会計上で適用する税率は決算日現在における税法規定に基づく税率によるとされており、改正税法が当該決算日までに公布され、将来の適用税率が確定している場合は改正後の税率を適用することとされている。 このため、3月決算を前提にすると次のようになる。 Ⅲ 税率の改正 平成27年度税制改正に係る改正法が公布されることに伴い、当該改正法に基づき、次のとおり税効果会計の適用における法定実効税率を算定することになる。 (※1) 事業税の標準税率 (※2) 各地方団体が条例で定めた事業税率(標準税率又は超過税率) 議事概要別紙では「事業税率(標準税率)の取扱い」及び「事業税率(超過税率)の取扱い」も記載されており、参考として、議事概要別紙に記載された方法により算定した法定実効税率(東京都の場合)として、次の図表が記載されている。 具体的な算定式については、議事概要別紙をお読みいただきたい。 (※) 年800万円超の所得 (了)
《速報解説》 監査役協会より「改正会社法及び改正法務省令に対する 監査役等の実務対応」が公表 ~各改正項目における対応内容・留意点を紹介~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成27年3月5日付で、日本監査役協会は次のものを公表している。 ①及び②は、改正会社法が本年の5月1日から施行されることに対応するものである。 ③は、本年6月1日から適用予定のコーポレートガバナンス・コードに対する日本監査役協会の考え方を述べたものである。 本稿は、①における監査役もしくは監査役会又は監査委員会、監査等委員会(以下「監査役等」という)の留意点について述べるものである。ただし、会社法の適用に関する重要な論点も述べられているので、監査役等だけでなく、法務部、経理部の方々にも参考になるものと考えられる。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 1 社外取締役を置くことが相当でない理由の説明・開示 監査役等の対応として次のことが述べられている。 2 社外取締役及び社外監査役の要件の厳格化及び緩和 監査役等の留意点として次のことが述べられている。 3 責任限定契約を締結することが認められる範囲の拡大 改正会社法により、責任限定契約を締結することができる者が、いわゆる非業務執行役員全般まで拡大された(定款での規定は必要)。 その結果、(いわゆる社内)監査役も責任限定契約を締結することが可能となった(会社法427条1項)。 4 監査等委員会設置会社 改正会社法においては、常勤の委員の選定は義務付けられていないが、常勤の委員の選定の有無及びその理由が事業報告記載事項となっていることからも(会社法施行規則121条10号イ)、監査等委員会として常勤の委員を選定するかどうかの検討は必須であると述べられている。 5 会計監査人の選解任等に関する議案の内容の決定及び会計監査人の報酬の同意 改正会社法において、会計監査人の選解任等に関する議案の内容は、監査役会が決定することとなった(会社法344条)。 法務省令において、会計監査人の解任・不再任に関する議案を提出する場合には、監査役が議案の内容を決定した理由を株主総会参考書類に記載しなければならず、会計監査人の報酬等に監査役が同意した場合には、その理由を事業報告に記載しなければならないと規定されている(会社法施行規則81条2号、126条2号)。 改正会社法の適用に関して、経過措置が設けられており、施行日前に株主総会の招集手続が開始された場合における会計監査人の選解任等に係る手続については、改正会社法は適用されないものとされている(改正会社法附則15条)。 6 内部統制システム 「株式会社の業務の適正を確保するために必要な体制」(内部統制システム)について、次の事項が追加されるとともに、内部統制システムの運用状況の概要についても事業報告の内容とされた(会社法施行規則118条2号)。 監査役等は、決議の内容の概要もしくは運用状況の概要の記載内容が相当でないと認めるときは、その旨及びその理由を監査報告に記載しなければならない(会社法施行規則129条1項5号、130条2項2号、130条の2第1項2号、131条1項2号)。 したがって、決議の内容の概要及び運用状況の概要の記載内容を評価しなければならない。 7 企業集団における内部統制システム 株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の内容に、企業集団における業務の適正を確保するための体制が含まれる旨、会社法に規定された(会社法362条4項6号)。 会社法の規定を受け、法務省令に次の事項が、企業集団における業務の適正を確保するための体制の例示として定められた(会社法施行規則100条1項5号)。 会社法362条4項6号は、従来会社法施行規則に定められていたものが、会社法に格上げされたものである。 上記①から④の事項は、改正法務省令において「当該株式会社並びにその親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制」の例示として定められたものであり、従前の解釈を拡大する趣旨ではなく、また、上記①から④の事項に形式的に区分した決議をすることまで求められているわけではなく、実質的に当該事項について決議がされていればよい。 監査役等としては従来と同様に、親会社における子会社管理体制、企業集団を構成する子会社の業種、規模、重要性や性質に応じたグループ内部統制システムが適正に構築・運用されているかどうか、監視・検証することが必要であると述べられている。 8 支配株主の異動を伴う第三者割当て 改正会社法により、公開会社における募集株式の割当て等に関して、募集株式の割当て等により募集株式の引受人となる者が募集株式を引き受けた結果議決権の過半数を有することとなる場合には、株主に対して、割当てに関する情報を通知しなければならない(会社法206条の2第1項、会社法施行規則42条の2)。 監査役等は、経営者から独立した機関として、第三者割当ての必要性や相当性等について慎重かつ適正な検討をした上で、取締役会において十分な審議が行われているか、会社役員の地位の維持を目的として株主の共同の利益に反する第三者割当て等が行われるものではないか等、十分な監査を行う必要があると述べられている。 9 親会社等との利益相反取引の情報開示の充実 改正法務省令において、親会社等との利益相反取引に関する情報開示に関して、個別注記表等に表示された取引のうち、親会社又はそれと同等の影響力を有すると考えられる自然人等(親会社等)との利益相反取引について、取締役(会)の判断や監査役等の意見が、事業報告及び監査報告の記載内容とされた。 具体的には、個別注記表に記載されている親会社等との利益相反取引について、次の事項が事業報告(又は附属明細書)の記載事項となり(会社法施行規則118条5号、128条3項)、これらの事項についての監査役等の意見が、監査役等の監査報告の記載事項となった(会社法施行規則129条1項6号、130条の2第1項2号、131条1項2号)。 このため、3月決算会社においては、平成27年5月1日以降の取引について、平成28年6月の定時株主総会に提出する事業報告及び監査報告の内容とすればよいこととなる。 (了)
《速報解説》 「コーポレートガバナンス・コード原案」が確定 ~確定版は5月上旬、東証において制定予定~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成27年3月5日付で、コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議から、「コーポレートガバナンス・コードの基本的な考え方《コーポレートガバナンス・コード原案》~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~」が公表された。 これにより、平成26年12月12日付(掲載日12月17日)で、意見募集がなされていた「コーポレートガバナンス・コードの基本的な考え方(案)《コーポレートガバナンス・コード原案》~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~」が確定することになる。 今後、東京証券取引所におけるコーポレートガバナンス・コードの確定が5月上旬に予定されており、本コード原案をその内容とすることが想定されているとのことである(コーポレートガバナンス・コード(原案)に対する「パブリックコメントの概要」の3ページ)。 現在、東京証券取引所は、「コーポレートガバナンス・コードの策定に伴う上場制度の整備について」(公開草案)を公表し、意見募集を行っている。 本稿では、「コード(原案)」のうち、特徴的と思われる部分について述べる。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ パブリックコメントの概要 パブリックコメントについては、①パブリックコメントの概要、②和文のパブリックコメント、③英文のパブリックコメントが公表されている。 寄せられたコメントは、概ね下記のように分類されるとのことである。 以下では、寄せられたコメントの概要を紹介する。 ただし、一部記載を省略した部分もあるので、正確な理解のためには、公表されている「主なパブリックコメント(和文)の概要及びそれに対する回答」、「主なパブリックコメント(英文)の概要及びそれに対する回答」をお読みいただきたい。 1 重複開示について コーポレート・ガバナンス報告書における開示と、自社のホームページにおける記載などの重複開示を避けてほしいとのコメントが寄せられている。 これに対しては、東京証券取引所における検討の結果、本コード(原案)において「開示」又は「公表」と記載されている事項の多くは、いずれもコーポレート・ガバナンス報告書において統一的に記載するよう求められることが想定されていると述べられている。 ただし、その記載に当たっては、コーポレート・ガバナンス報告書に直接記載する方法のほか、自社のウェブサイトのURL等を記載する方法も選択できることとなる見込みであり、重複開示の問題は生じないように考えられている。 2 中期経営計画の策定について 補充原則4-1②は支持するが、当補充原則における「エクスプレイン」を回避するために、(「中期経営計画」とは)別の名称に変更したり、そもそも「中期経営計画」の策定をやめたりする会社がでてくる可能性があるのではないかとのコメントが寄せられている。 これに対しては、我が国においては、多くの上場会社が中期経営計画を策定・公表しており、その達成に関する信頼性の向上を図ることが望ましいと考えられることから、「中期経営計画も株主に対するコミットメントの一つであるとの認識に立ち、その実現に向けて最善の努力を行うべきである」との補充原則4-1②を設けていると述べている。 もっとも、そもそも中期経営計画を策定しないという経営判断も否定すべきでないと考えられ、こうした上場会社には、上記原則は適用されないとのことである。 なお、本コード(原案)はプリンシプルベース・アプローチを採用しているため、実質的にみて「中期経営計画」といえる内容のものであれば、その名称にかかわらず上記原則の適用があるものと考えられるとのことである。 3 独立社外取締役の兼任について 多数の会社の取締役を兼任している独立社外取締役が、その役割を実効的に果たすことができるか否かについて懸念を示すコメントが寄せられている。 会社の規模・事業の性質等、他の要素を考慮に入れる必要はあるが、取締役の役割に要求されるだろう時間・労力について慎重に検討し、独立社外取締役の候補者を指名する際には、社外者としての地位の兼任数の上限を伝えるべきと考えるとのコメントが寄せられている。 これに対しては、今後の議論や実務の集積が必要な事項と考えられることから、今後の議論に向けた貴重な意見と考えられている。 Ⅲ コード(原案)の主な特徴 コード(原案)では、次のように、コーポレートガバナンス・コードについて述べている。 コード(原案)については、次のような特徴が述べられている(コード(原案)、2~5ページ)。 「コンプライ・オア・エクスプレイン」に関して、「実施しない理由」の説明を行う際には、実施しない原則に係る自らの対応について、株主等のステークホルダーの理解が十分に得られるよう工夫すべきであり、「ひな型」的な表現により表層的な説明に終始することは「コンプライ・オア・エクスプレイン」の趣旨に反するものであると述べられている。 Ⅳ コード(原案)の主な内容 基本原則として次のことが述べられている。 基本原則には、「考え方」、「補充原則」、「背景説明」が記載されているので、それらを含めてお読みいただきたい。 例えば、より詳細に、次のことが述べられている。 Ⅴ 今後の予定 (了)
《速報解説》 内閣官房より「事業者による個人番号の事前収集について」が公表 ~従業員等のマイナンバーは平成27年中でも収集可能と明示~ 仰星監査法人 公認会計士 岡田 健司 内閣官房より「事業者による個人番号の事前収集について」と題したお知らせ(以下「お知らせ」)が公表された(平成27年2月17日付)。 これは、多くの事業者からの質問に広く応えたもので、税や社会保障の手続きに関して「個人番号関係事務実施者」となる事業者は、個人番号の通知を受けている従業員本人などから、個人番号の利用開始(平成28年1月)前に、あらかじめ個人番号を収集することを可能とする見解を示したものである。 以下、「お知らせ」の内容と留意点について解説する。 1 「お知らせ」公表前に考えられていた問題点について 冒頭申し上げたとおり、「お知らせ」は、個人番号の利用開始(平成28年1月)前であっても、従業員本人などから個人番号を収集することができるとする内閣官房の公式見解である。 内閣官房から公表されたものであるが、これまでのFAQとは異なり個別に「お知らせ」として公表した点あたりからも、この内容に関する問い合わせが多かったことを窺わせる。 「お知らせ」が公表される以前は、あくまでも個人番号の利用開始は平成28年1月以降であることから、それ以前の平成27年度中にはたとえ個人番号関係事務のためであっても個人番号を入手してはならない、というのが通説であった。 そこで、例えば、実務的には年末調整の関係で年度内に提出(※1)されることの多かった「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」(※2)について、平成28年度分以降は個人番号を記載して提出する必要があるが、平成27年度中に事業者が提出を受ける場合には、個人番号は記載しない状態で提出を受ける必要があると考えられていた(※3)。 (※1) 法的にはその年の最初に給与の支払を受ける日の前日(中途就職の場合には、就職後最初の給与の支払を受ける日の前日)までに給与の支払者にて提出すればよい。 (※2) 様式は「こちら」(平成27年度分であり番号法に対応する前の旧様式である。) (※3) 「お知らせ」が公表される以前は、番号法の施行予定である平成28年1月より前であるからという整理であった。 そこで、個人番号の記載のない「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は法定の記載事項を充たしていないことから、事業者としては当然事後に再度本人から個人番号を記載して再提出してもらう必要があると考えられていたものと思われる。また、この方法はあまりにも非効率的であることから、多くの事業者では平成28年度分に限っては、平成28年度の初回の給与の支払を受ける日の前日までに提出を受ける方向性で考えられていたように思われる。 ただし、一方ではこの場合に、どのようにして給与支給控除額の適正さを確保するかが問題であった。さらに、多数の従業員を雇用する企業においては、個人番号の確認、本人確認のための業務負担は多大である。 このような状況が想定されるなか、個人番号が通知される平成27年10月から12月までの3ヶ月間において、これらの業務ができないとするのはあまりにも実務への配慮を欠くことから、平成27年10月からの個人番号の通知に併せて従業員本人等からの個人番号の入手等を可能とすることが期待されていた。 このように、今回の「お知らせ」により実務上の問題解消と業務負担の軽減が期待されることとなる。 2 「お知らせ」への対応について 「お知らせ」の内容並びにポイント及び留意点をまとめると次のとおりである。 ① お知らせの内容 平成27年10月から個人番号の通知が開始される。そこで、事業者は、通知の開始以降、個人番号の通知を受けている本人から、個人番号関係事務のために、あらかじめ個人番号を入手することを可能とする。 ② ポイント及び留意点 番号法の制度上当然であるが、個人番号の入手はあくまで個人番号関係事務のために必要な場合に限られる。 個人番号入手時点では、安全管理措置の整備など実務対応は終えている必要がある。 個人番号入手時には「本人確認」を行う必要がある。本人確認については実務上の負担も大きいところであるが、本制度の信頼を維持するためのいわば生命線であることから、確実に取組みを進めたい。 なお、本人確認の方法(そのための書類を含む)は順次関係省庁から公表されているところであるが、直近では、国税庁から「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律施行規則に基づく国税関係手続に係る個人番号利用事務実施者が適当と認める書類等を定める件」(※4)として本人確認にかかる告示が公表されている(平成27年1月30日付)。これらの情報収集について、漏れなく正確に行う必要がある。 (※4) 当該告示案の内容については拙稿「《速報解説》 国税庁、マイナンバー取得時の本人確認手続に係る告示案を公表~税務手続に必要な確認書類が明らかに~」を参照されたい。 さらに国税庁の以下のページでは、当該告示に加え「自身の個人番号に相違ない旨の申立書」など本人確認手続に関する様式も掲載されているので、ぜひご覧いただきたい。 【参考図】 (内閣官房ホームページより) (了) ↓お薦め連載↓
《速報解説》 「地方法人税に係る加算税の取扱いについて(事務運営指針)」が公表 ~地方法人税に関する各加算税の賦課に関する取扱基準を整備~ 税理士 佐藤 善恵 はじめに 昨年度の税制改正により創設された「地方法人税」(下記〔概要〕参照)は、平成26年10月1日以後に開始する事業年度について適用されるところであるが、平成27年2月13日付、これに係る加算税の取扱いを示した通達(「地方法人税に係る加算税の取扱いについて(事務運営指針)」(以下「本通達」という))が公表された(公表日は3月4日)。 加算税の取扱いに関しては、税目別に過少申告加算税等の通達及び重加算税の通達(いわゆる「加算税通達」)がそれぞれ平成12年に制定されたが、本通達がこれら一連の通達に加えられたということになる。 本通達は、第1から第5までで構成されており、以下に各項目を紹介する。 1 過少申告加算税及び無申告加算税の取扱い 過少申告加算税の取扱い(本通達第1)、無申告加算税の取扱い(本通達第2)では、各「正当な理由」に当たるケースや「更正予知」に当たらないケース、さらに無申告加算税を課す場合の留意事項を定めている。 これらは具体的には、税法の不知等は正当な理由に当たらないといった内容等を定めており、いずれも「法人税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて(事務運営指針)」(以下「法人税過少申告等通達」という)の第1の1及び2、第2の1~3と同趣旨である。 2 過少申告加算税及び無申告加算税の計算 過少申告加算税及び無申告加算税の計算(本通達第3の1)は、正当な理由に係る部分の税額を控除する場合(国税通則法施行令第27条)の計算について定めている。なお、この部分は、法人税過少申告等通達の第3の1と同趣旨である。 3 重加算税の取扱い及び計算 本通達第4は、法人税において隠ぺい又は仮装していた事実がある場合は地方法人税も同様である旨を定めている。そして、本通達第5は、重加算税の基礎となる税額の計算について定めている。この部分は、「法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)」及び「連結法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)」の「第2 重加算税の計算」に合わせる形であり、これらの通達の第2も本通達に対応して改正されている(下記リンク参照)。 (了)
2015年3月5日(木)AM10:30、 Profession Journal(プロフェッションジャーナル) No.109 が公開されました。 - ご 案 内 - Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。
monthly TAX views -No.26- 「誤解されている消費税“インボイス”」 中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 森信 茂樹 与党の税制協議会が立ち上がり、軽減税率やインボイス(区分経理)の議論が再開される。昨年すでに軽減税率の対象範囲の8つの案が出されており、いまさら何を議論するのだろうか。 果てしない堂々巡りが年末まで続く、というのが正直な印象である。 筆者が注目するのは、軽減税率に加えて、インボイス(区分経理)の取扱いだ。これについても4つの案が出されている。 公明党案(A案)は、「売手が軽減品目に印をつけ、買い手がそれに基づき判断・経理区分する」というものである。この提案の背景にあるのは、「インボイスという話が前面に出ると、事業者の反対が強くなり、軽減税率そのものがとん挫するので、現行制度から最小限の変更にしたい」という意向である。 与党税制協議会の事業者ヒアリングでも、「インボイスの導入は多大の事務コストがかかる」と反対の意見が圧倒的に多かった。 しかし、仮に生鮮食料品に軽減税率が導入されるとなったらどうだろう。 おそらく事業者の意見は、「軽減税率が導入された場合には、インボイスがなければやってられない」というものに変わる可能性が高い。 このあたり、話がねじれているのである。 * * * そもそもインボイスは、納税者間で取引に伴う消費税をダブルチェックするためにある。売手と買手の間には、仕入税額控除という制度のもとで相互けん制効果が働き、それにより納税の正確性が担保される。 同時に、インボイスは、軽減税率に伴う煩雑な作業を軽減する効果も持つ。特定の品目が軽減税率の対象になるかどうか、売手と買手の認識をインボイスにより一致させることができるからである。 事業者は、消費税申告の計算に際して、インボイスに記された、売上と仕入れに関わる税額を足し上げていけば、納税額が算出できる。 つまりインボイスは、軽減税率に伴う複雑な事務の手間を省くためのツールでもある。 事務コストが大変なのは、軽減税率の導入であり、インボイスではない。 * * * もう一つ、インボイスには重要な機能がある。 それは、事業者間で価格を転嫁しやすくするという機能である。 買手は、売手がインボイスに記載した消費税額を売手に支払うが、買手が負担した消費税額は、自らの仕入税額控除額となるので、負担は生じない。消費税額は「通過するだけ」である。 事業者間の価格は税抜きで決まり、消費税額はインボイスにより相手事業者にきちんと転嫁できる、これが欧州における取引の姿である。 このように見ていくと、インボイスには、簡素で正確な納税計算、確実な転嫁というメリットがあるので、軽減税率導入の成否にかかわらず、導入すべきものとも考えられる。 もちろん導入に際しては、わが国に根付いた請求書などを活用して、「番号を付さない税額別記方式」C案(「日本型インボイス」)から始めていくことが実践的であろう。大半の領収書にはすでに消費税額が別記されているので、追加的な手間は大きくはないはずだ。 最後にひとこと。 巷ではこの問題が、集団的自衛権・安保法制への公明党の協力と関連している、と言われている。真偽のほどは筆者には不明であるが、人命に関わる安保の問題と、消費税軽減税率の問題が同じ天秤にかけられるとしたら、何とも割りきれない気持ちになる。 (了)
~税務争訟における判断の分水嶺~ 課税庁(審理室・訟務官室)の判決情報等掲載事例から 【第2回】 「買換え特例の対象となる「一の家屋」の判断基準を示した事例」 税理士 佐藤 善恵 〔概要等〕 納税者(以下「甲」)は、居住の用に供していた土地建物を譲渡して、1棟のマンションの中に存する2つの区分建物(本件各居室)を取得し、当該2つの区分建物を一体として買換え特例制度(本件特例)の適用を受けるものとして確定申告をした。これに対して、課税庁は、本件特例の適用を受けるのは一方の区分建物だけであるとして更正処分等を行ったことから、甲がその取消しを求めた。 争点は、本件各居室が、本件特例の適用対象となる「買換資産」に該当するか否かである。 〔双方の主張の要旨〕 〔課税要件等〕 措置法施行令第24条の2第12項2号(※)は、2以上の家屋を買換資産として取得する場合の本件特例の対象となる範囲を規定している。 整理すると次のとおりである。 したがって、原処分が取り消されるためには、「本件各居室」が全体で「一の家屋」を構成した上で、居住の用に供されていることが必要である。 〔裁判所の述べる判断基準等〕 ▷解説 裁判所は、本件特例及びその適用対象を規定する措置法施行令が「建物の構造、機能、規模等の客観的状況」に着目して適用範囲を定めていることから、「一の家屋」かどうかは、まず、建物の客観的状況を考慮して判断すべきものと解している。そして、建物使用状況といった主観的事情は、「主としてその居住の用に供するとき」の判断で考慮されるものの、「一の家屋」該当性については副次的な判断要素にとどまると解している。 〔判断(要約)〕 ▷解説 裁判所は、(1)で客観的状況を評価し、(2)で主観的事情を評価している。その上で、(3)の〈1〉で、客観的事情により「一の家屋」に当たらないとの判断を示し、〈2〉で主観的事情によりその判断は左右されないとしている。 判断の結論は、乙号室のみが、本件特例の適用対象というものである。 〔判断の分水嶺〕 本件における判断の分水嶺は、本件特例の「一の家屋」要件が、「建物の客観的状況」により判断すると解された上で、2つの居室が客観的に独立性の高い2つの区分建物であったという事実にある。 この点、納税者は、使用状況等の主観的事情によって「一の家屋」に当たることを前提に主張しているようであり、「一の家屋」の判断基準が裁判所と異なるようである。 なお、裁判所は、「主としてその居住の用に供する」要件については、家屋の客観的状況及び使用状況を「総合考慮」して、甲号室はB夫妻の、乙号室は原告の各生活の本拠であると判断している。 〔本判決が示唆するもの〕 判断(要旨)の(1)の客観的状況を評価するにあたって裁判所が重視したことは、①本件各居室の機能的独立性、②譲渡資産と取得資産(1つの居室)の広さ、③両居室の距離等である。 そうすると、仮に、2つの居室を併せて初めて家屋としての機能を有し(①)、譲渡資産は2つの居室の合計面積に近く(②)、2つの居室が隣接(③)しているといった条件をすべてあるいは一部満たしている場合には、客観的状況からみて、2つの居室で「一の家屋」を構成すると認められる余地があるのかもしれない。 もっとも、「主観的事情」も、家屋の個数の判断において副次的に斟酌されると本件は解しているから、それを前提とすれば建物の実際の使用状況等も「一の家屋」該当性において考慮されるのであり、客観的状況からみて、「一の家屋」にあたる可能性があっても、建物の使用状況等によって、「一の家屋」該当性が排除される可能性があることにも留意したい。 (了)
贈与実務の頻出論点 【第1回】 「税務署に否認されない贈与の方法」 税理士法人チェスター 解 説 生前贈与は計画的にやれば相続税対策として有効ですが、誤った方法で贈与をした場合には、税務署から指摘をされ、名義預金として相続財産に含めなければならない場合もあるため、注意が必要です。名義預金と認定されるということは贈与が成立していないといわれることと同義です。 贈与の成立を適正に立証するために、下記に重要なポイントをまとめます。 [1] 贈与契約書の作成 民法上、贈与契約は口頭でも成立しますが、口頭の贈与契約は取消しができるため、贈与契約書を作成し、贈与契約の内容を明確に書面で記録しておくことがいいでしょう。 [2] 贈与契約の実行 贈与契約書を作成しただけで、贈与を実際に行わなければ、贈与が成立したとはいえません。よって、作成した贈与契約書に基づき必ず贈与を実行してください。また、贈与の実行は現金ではなく、できるだけ客観的な記録が残る預金を通して行うべきでしょう。 [3] 贈与後の管理支配 受贈者は、贈与を受けた預貯金等を実質的に管理支配する必要があります。すなわち、受贈者の意思で自由に使える状態になければ贈与が成立したとはいえません。たまに親が子どもに内緒で子ども名義の預金通帳を作成しているケースが見受けられますが、これでは贈与の成立を立証することは困難です。 よって、問題なく贈与を成立させる方法のひとつとして、受贈者の普段使っている預金口座に振り込むことが考えられます。 [4] 贈与税の申告 贈与税の基礎控除額である110万円を超える贈与をし、贈与税の確定申告をすることも贈与を立証するために有効です。 例えば、120万円の贈与であれば贈与税は1万円ですむため、比較的低コストで行うことが可能です。 (了)
土地評価をめぐるグレーゾーン 《10大論点》 【第5回】 「市街地山林、2つの評価方法」 税理士法人チェスター 税理士 風岡 範哉 [1] 参考資料 解説書においては、宅地造成が不可能と認められるような形状としては、急傾斜地(分譲残地等)が考えられている。 宅地造成が不可能な急傾斜地等に該当するか否かの判定にあたっては、急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律が「急傾斜地」の定義を「傾斜度が30度以上である土地」としていることから、急傾斜地の目安として傾斜度30度以上とすることも一案であると考えられている(谷口裕之『財産評価基本通達逐条解説(平成25年版)』大蔵財務協会〔2013年〕289頁)。 [2] 重要裁決事例 (1) 宅地比準方式によることができないとされた事例 平成14年3月27日裁決〔裁決事例集第63集538頁〕においては、2つの山林の評価が争われている。 まず、傾斜が約30度を超える平坦な部分のないがけ状の岩山である山林(地積124㎡)においては、開発後に宅地として客観的な交換価値を見いだせない限り、通達を適用して評価することに不都合と認められる特段の事情が認められるとされている。 なぜなら、宅地として開発する場合には多額の造成費が見込まれ、仮に宅地に転用したとしても十分な地積を確保することはできないと認められ、開発後に宅地としての客観的な交換価値があると認めることはできず宅地比準方式を適用して評価することが不都合と認められるからである。 裁決では、本件土地と状況が類似する(固定資産税評価額が同額、譲渡日が評価時点が近い、譲渡価額が正常価格)近隣の土地の売買実例の単価(総額12万円)が採用されている。 (2) 宅地比準方式によることが相当とされた事例 一方、傾斜度が約20度の山林(地積4,660㎡)においては、宅地としての客観的な交換価値がない土地とは認められず、評価通達を適用し、宅地比準方式により評価することに、特に不都合と認められる特段の事情は認められないとされている。 (了)