〈IT会計士が教える〉 『情報システム』導入のヒント (!) 【第5回】 「システムの選定は自分に合った服を選ぶように」 公認会計士 坂尾 栄治 はじめに ~そのシステムの導入目的は明確か?~ 企業はどのような時、システムの導入や更改(いわゆる再構築)を検討するだろうか。 中堅企業が、今使っている会計システムを新しい別の会計システムに更改する場合を考えてみよう。 ハードウエアやソフトウエアの保守が切れる場合には、システムの更改を考えるだろう。ハードウエアが故障したときにメーカーのサポートが受けられないとなると、企業にとっては一大事であるが、これはソフトウエアについても同様で、システム更改を真剣に考える最も典型的なケースと考えられる。 あるいは、新たに適用される制度に対応するためにシステムを更改しようと考える場合もあるだろう。少し前には、IFRSに対応するためにシステムの更改を検討した企業が数多くあったと記憶している。 このように、ハードウエアやソフトウエアの保守切れや新制度対応のためのシステムの導入・更改をする場合には、その目的が明確であるため、方向性が大きくぶれることはあまりない(ただし、「せっかくなのでこの機会に他の目的も達成しよう」などと考え始めると、とたんに方向性がぶれるのだが)。 一方、「効率化をしたい」「経営管理のレベルを向上したい」といった目的で会計システムの更改を考える場合には、注意が必要である。 この「効率化」や「管理レベルの向上」といったものは、一見、目的のように見えるが、実はその根っこにある『明確な目的』が見えない、非常に漠とした状態なのである。 そして「目的が非常に漠とした状態」でシステムの導入を検討するのは危険であり、さらにその状態でパッケージシステムの選択を行うことは、その危険性をより高めることになる。 以下ではその理由について説明したい。 ▼パッケージシステムは既製品のシャツ▼ もし、システムを一から自社開発するのであれば、作り始めてからでもある程度の方向転換は可能かもしれない。しかし、カスタマイズができない市販のパッケージを前提とする場合には、方向転換できる幅は大幅に狭まり、導入作業が進むに従って、方向転換はより難しいものになっていく。 市販のパッケージシステムは、いうなれば、既製品のシャツのようなものと考えればよい。 例えば、首周り40センチ、袖丈82センチの人が既製品のシャツを買いに行ったとする。既製品なので首周りと袖丈の組み合わせが決まっており、首周りが40センチのシャツは袖丈が84センチのものしかないとする。この場合、首周りを40センチより小さくすると苦しくて着ることができないので、袖丈が理想より2センチ長いが我慢する(譲歩する)ことになる。このようにシャツの場合には簡単な直しができないため、そのままを受け入れ、「我慢できる部分」(袖丈2センチ部分)を我慢する。 市販のパッケージシステムを導入する場合も同様である。 つまり、「自社が譲れないところ」(目的)を明確にし、その「譲れないところ」を満たすパッケージを選ばなければならない。 ▼カスタマイズできるパッケージは既製品のズボン▼ これに対して、カスタマイズができるパッケージは、既製品のズボンと似ている。 既製品のズボンは、前提としてウエストサイズの合ったものを選ぶのが一般的であり、ウエストを測らずにズボンを購入するようなことはしないであろう。ウエストを直そうとすると大手術となり、相当なコストがかかるためである。 このように既製品のズボンを買うとき、よほどのことがない限りウエストは直さない。 ただし「裾上げ」は、当たり前のように行われている。 したがって人は既製品のズボンを買うとき、ウエストのサイズは気にするが、裾は気にしなくてよい。 カスタマイズを前提としたパッケージも同様である。 パッケージの根幹(目的)に関わる部分、ズボンで言えばウエストの部分は変更できないが、裾に当たる部分、例えば入力画面やレポートといったものは、カスタマイズすることを前提としており、カスタマイズしやすい作りとなっている。 このようなパッケージを導入する場合でも、やはりパッケージの根幹に関わる部分(いわゆるウエスト部分)が自社の要求とズレていると、そのズレを合わせるためには大手術が必要となる。 そのため、入力画面やレポートについての多少のズレは後で直せばよいのであまり気にしなくてよいが、その根幹(目的)についてはズレがないように注意しなければならない。 ▼システム導入の『目的』は時間をかけて考える▼ システムの導入や更改にはなんらかの目的があり、その目的を達成するために、既製品のシャツのように、その目的に根幹がフィットしたシステム、あるいは既製品のズボンのように、完全にはフィットしていないがその目的に合わせて修正可能なシステムを選ぶ必要がある。 当然ながらその前提として目的を明確にする必要があるのだが、よく言われるような「効率化」とか「管理レベルの向上」といったものでは、冒頭に述べたとおり、明確化されたとはいえない。 つまり、効率化といっても、膨大な量の手作業をシステム化することを指しているのか、毎夜行われる長時間のバッチ処理の効率化を指しているのか、はたまた効率化と言いながら決算の早期化を指しているのかを明らかにしなければならない。そしてその場合に必要とされる機能、非機能を明らかにしなければ、本当に適合したシステムを選ぶことはできない。 管理レベルの高度化についても同様である。そもそもどのような目的で何を管理するのかを明確にしないことには、必要となるデータの粒度(製品、組織、勘定)やタイミング、管理項目が明らかにならないため、システムに対する要求事項は導出できない。 よく、システムを選定する前に要求定義を行う期間を設けるが、それはシステムで何をしたいのかを明らかにするためである。この要求定義フェーズで目的を明確にし、それをまとめ上げ、RFP(提案依頼書)としてシステムベンダーに伝えるのである。 そこには、服にたとえるなら以下のようなことが書かれている。 こういった細かなことまであらかじめ明確にすることで、導入したけど使えないシステムや導入の途中で大きな齟齬が露見し大問題となることを回避できるのだ。 要件定義フェーズに時間と労力をかけるのはもったいないと感じるかもしれないが、システムは一旦導入したら数年間、場合によっては10数年間使い続けることとなる。 このため、目的にフィットした、不満の少ないものにするための重要なステップと捉え、長く着られる自分に合った服を選ぶように、時間と労力をかけることをお勧めしたい。 (了)
女性会計士の奮闘記 【第26話】 「聞いたことでも自分の糧に」 公認会計士・税理士 小長谷 敦子 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 ◆ワンポントアドバイス◆ お客様にとって役に立つ情報であれば、研修で教わったことでも、理解を深め、自分のものにしてお客様に説明することが必要です。 もちろん自分自身が実際経験した話の方が、重みが増すことは言うまでもありません。 チャンスがあれば、自ら飛び込んで経験を重ね、説得力を高めていきましょう。 (了)
《速報解説》 平成27年度税制改正法案が公表 Profession Journal編集部 昨年12月30日に与党大綱がとりまとめられ本年1月14日に大綱が閣議決定された平成27年度税制改正について、このたび国税関係の税制改正法案「所得税法等の一部を改正する法律案」が、本日(2月18日)、財務省ホームページにおいて公表された。新旧対照表は未公表。 なお地方税関係の改正法案については総務省ホームページにおいて「地方税法等の一部を改正する法律案」として公表されている。新旧対照条文あり。 両法案は現在会期中の第189回通常国会(会期:平成27年1月26日~6月24日)において、3月末の成立を目指し審議されている。 なお、両法案共に「概要」によると、施行日は平成27年4月1日(原則) とされている。 (了)
《速報解説》 金融庁、「平成26年3月期有価証券報告書の法令改正関係審査の実施結果」を公表 ~退職給付に関する記載で4つの「適切でない事例」に注意~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成27年2月10日、金融庁は、次のものを公表した。 いずれも有価証券報告書の開示に関する重要な事項が記載されているので、注意が必要である。 本稿では上記②について解説する。 ①については、同時公開の下記拙稿を参照いただきたい。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 平成26年3月期有価証券報告書の法令改正関係審査 1 審査対象会社 平成26年3月31日を決算日とする有価証券報告書の提出会社2,782 社のうち、以下のすべての要件に該当する2,245社のうち2,198社を対象として実施した。 平成26年3月31日を決算日とする連結財務諸表を作成している。 退職給付制度を採用している。 連結財務諸表を日本基準で作成している 2 審査内容 退職給付に係る「科目表示」や「注記事項」等に関する記載 3 留意事項 (了)
《速報解説》 金融庁、「平成25年度有価証券報告書レビューの重点テーマ審査及び情報等活用審査の実施結果」を公表 ~企業結合等の「適切ではない事例」に注意~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成27年2月10日、金融庁は、次のものを公表した。 いずれも有価証券報告書の開示に関する重要な事項が記載されているので、注意が必要である。 本稿では上記①について解説する。 ②については、同時公開の下記拙稿を参照いただきたい。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 平成25年度有価証券報告書レビュー関係 1 重点テーマ審査 次の事項について審査を行っている。 財務局等からの質問状には、次の観点も反映しているとのことである。 2 適切ではない事例 アンダーラインは、筆者が記入したものである。 (了)
《速報解説》 会社法やコーポレートガバナンス・コード(案)等の改正を受け、 JICPAが「社外役員候補としての公認会計士紹介制度」を公表 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成27年2月13日(掲載日)、日本公認会計士協会は、社外役員候補として、公認会計士を紹介する案内を掲載している。 これは、政府が予定している、民間企業における女性社外役員の登用促進を目的とする「はばたく女性人材バンク(仮称)」の創設にも応えるものとのことである。 Ⅱ 企業の担当者の皆様へ 申込方法については、所定の申込書をダウンロードし、必要事項を記入の上、現在事項全部証明書(発効後3ヶ月以内のもの)を添えて、郵送で申し込むこと、貴社のご希望に合致する公認会計士に、貴社が社外役員への登用を検討している旨を連絡することなど、7つのステップが記載されている。 「社外役員候補公認会計士紹介申込書(企業用)」には、「希望キャリアなど」を記載する欄もあるので、自社が必要とする社外役員の適性について、あらためて検討されてはいかがだろうか。 Ⅲ 会員(公認会計士)の皆様へ 社外役員への就任を検討している会員(公認会計士)向けに、「社外役員候補公認会計士名簿登載申込書(会員用)」が用意されている。 「政府その他公的機関の審議会等の委員歴」や「自己PR」を記載する欄があるので、社外役員への就任を希望する公認会計士の方は、利用されてはいかがだろうか。 (了)
プロフェッションネットワーク主催セミナー Web講座・DVD講座の サンプル動画をご覧いただけます! プロフェッションネットワークは、お忙しい実務家の方々向けに、教室開催だけでなく、Web講座やDVD講座など時間や場所に捉われない動画コンテンツをご提供しております。 すでに多くのお申し込みをいただいておりますが、よりお申込みいただきやすいように、このたび各講座ページにおいて、下記のようなサンプル動画を公開いたしました(画像をクリックするとご覧いただけます)。 お申込期限が設定されている講座が多くありますので、この機会にぜひサンプル動画をご覧の上、お申込みください。 セミナートップページは以下よりお進みください。
《速報解説》 パブコメを経て、改正会社法の法務省令が公布(2/6) ~コメント対応と改正内容を確認~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成27年2月6日付(官報号外第28号)で、会社法の改正に伴う会社更生法施行令及び会社法施行規則等の改正が公布された。これにより、平成26年11月25日に意見募集されていた改正案が確定することになる。 次のものが改正される。 以下では、会社法施行規則及び会社計算規則に関する部分について、改正案へ寄せられたコメント対応のポイント及び主な改正内容を述べる。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ コメント対応のポイント 1 会社法施行規則関係 2 会社計算規則関係 Ⅲ 主な内容 1 会社法施行規則関係 2 会社計算規則関係 Ⅲ 適用時期 平成27年5月1日から施行する。 ただし、経過措置が規定されているので、実際の適用に際しては注意が必要である。 (了)
2015年2月12日(木)AM10:30、 Profession Journal(プロフェッションジャーナル) No.106 が公開されました。 - ご 案 内 - Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開します。
酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第26回】 「消費税法上の「事業」と所得税法上の「事業」(その2)」 ~租税法内部における同一概念の解釈~ 中央大学商学部教授・法学博士 酒井 克彦 Ⅳ 解説 1 消費税法上の「事業」の定義 本件事案においては、消費税法上の「事業」の意義が争点とされた。 Yは、消費税法上の「事業」とは、「対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供が反復、継続、独立して行われることをいう」とする消費税法基本通達5-1-1の考え方を示した上で、この定義からすれば、その判断に当たって事業の規模を問うものではないと主張した。 ここで、消費税法基本通達5-1-1をみることとする。 そして、Yは、 という。 これに対して、Xは、Yの主張によれば、消費活動以外の反復、継続、独立した収入を得る活動は事業活動に該当することになり、 というのである。その上で、消費税法は、Yの主張するような、少額な収入まで全てを事業として取り込む趣旨で小規模事業者の納税義務の免除制度(限界控除制度)を設けたものではないという。 さらに、Yが引用する消費税法基本通達5-1-1については、限界控除制度廃止前に出されたものであるから、廃止後もこれと同様に解すべきではないと主張したのである。 2 消費税法上の「事業」と所得税法上の「事業」 (1) 所得税法と消費税法の基礎とする「担税力」の相違 担税力に応じた適正公平な課税の実現など、所得税法と消費税法に共通の趣旨を掲げたとしても、次に乗り越えなければならない問題がある。それは、「担税力」に対する所得税法と消費税法の視角の相違という壁である。 所得税法は、所得の大きさをその所得の発生原因ないし源泉に応じて各種所得に区分し、かかる所得区分の上で課税所得を算出する仕組みを採用している。 所得税法が、いかなる態様で個々の納税者が所得を稼得したのかという点に着目する租税制度であるということに思いを致す必要があろう。同法は、納税者の行った所得稼得活動がいかなるものであったのかをみた上で、それが業務的な規模によって稼得されたものであるのか、あるいはより営利性や有償性の見地からみて事業的な規模といい得るような活動から得られたものであるのかにより、その取扱いを異にしている。すなわち、所得稼得活動の規模を基準に担税力の相違を判断し、課税標準の計算にそのことを織り込んでいるとみることができよう。 例えば、所得税法は、事業所得か雑所得かという点や、不動産所得の規模が事業的規模か業務的規模かという点に関心を寄せて、資産損失の取扱い、青色事業専従者給与の取扱いなどを定めている。このように、さまざまな点において、「事業的規模」であるのか「業務的規模」であるのかという視角を制度の隅々に織り込んで体系を構築しているのである。 ※なお、東京地裁平成7年6月30日判決(訟月42巻3号645頁)、国税不服審判所平成19年12月4日裁決(裁決事例集74号37頁)は、所得税法上の「事業」か「業務」かは単なる規模ではなく社会通念上「事業」といい得るか否かによって判断すべきと論じている。ここで筆者が規模と述べているのは、そのことを踏まえた上での便宜的な表現であることを付言しておきたい。 これに対して、消費税法における担税力は何に求められているのであろうか。 一般的な消費税は物品やサービスの消費に担税力を認めて課税されるものであるが、その担税力の捉え方は、消費税法上の「消費税」についても同様である。消費税法上の消費税は、直接消費税とは異なり間接消費税であることからすれば、その担税力の所在と納税義務者との関係は見えづらくなってはいるものの、その本質は異ならないはずである。最終的な消費行為の前段階において物品やサービスに対する課税が行われ、あらかじめ租税負担が物品やサービスのコストに含められて最終的に消費者に転嫁されることが予定されている租税であるから、担税力の所在は直接消費税と異なるところではないはずである。 すなわち、消費支出がどの程度であるかという消費税法上の「担税力」は、その物品やサービスの提供者の活動規模とは直接の関係性を有していないのである。このような基本的な理解を前提とすれば、Xが主張する限界控除制度のような小規模事業者の納税義務の免除制度というものが、消費税法上の納税義務者の範囲を画する議論に用いられたことには違和感を覚える。小規模事業者の納税義務の免除制度は、あくまでも原則論ではなく特例であって、これは消費税制度導入の際に議論された事務負担等への配慮にすぎないのであるから、これをもって消費税法上の納税義務者の範囲を論じることは困難であるといわざるを得ない。 そもそも、消費税は、原則としてすべての物品とサービスの消費に対して「広く薄く」課税することを目的とした租税であって、課税ベースが広いところに特徴がある。例えば、国税不服審判所平成5年7月1日裁決(裁決事例集46号225頁)は、 と論じている。 なお、税制改革法10条1項は次のとおり規定している。 また、消費税法には、所得税法のような業務的規模と事業的規模の別に課税上の取扱いを規定する仕組みも存在しないのであるから、消費税法を所得税法と同様に解することは困難であるように思われる。 この点は、水野忠恒教授も、 と論じられるところである(水野忠恒『租税法〔第5版〕』739頁(有斐閣))。 このように、所得税と消費税がそれぞれいかなる課税物件に対して「担税力」を見出しているのかという点からみれば、両者の差異は明らかであるはずである。したがって、所得税法が規模の大きさに応じて「事業」と「業務」とを分けて課税上の取扱いを異にしているところ、そのような取扱いをしていない消費税法上の「事業」を所得税法上の「事業」と同様に解することは難しいといわざるを得ない。 もっとも、そうであるからといって、租税法律主義の要請する法的安定性の見地からすれば、同じ租税法上の概念(用語)を別異に理解することに躊躇を感じないわけではない。 まして、同じ租税法中の用語の概念の意義は同じように解するべきとの判決があることも踏まえて考えると、この点については、もう少し検討を要するように思えるのである。 (続く)