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税効果会計を学ぶ 【第9回】「タックスプランニング」

-お知らせ- 適用指針等を織り込んだ最新版の『税効果会計を学ぶ』が好評連載中です。   税効果会計を学ぶ 【第9回】 「タックスプランニング」   公認会計士 阿部 光成   前回に引き続き、「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」(監査委員会報告第66号。以下「監査委員会報告第66号」という)の内容について解説を行う。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅰ タックスプランニング 「個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針」(会計制度委員会報告第10号。以下「個別税効果会計実務指針」という)21項では、大きく分けて を規定している。 個別税効果会計実務指針21項(2)では、「将来減算一時差異の解消年度及び繰戻・繰越期間又は繰越期間に含み益のある固定資産又は有価証券を売却する等、課税所得を発生させるようなタックスプランニングが存在すること」が繰延税金資産の回収可能性の判断要件として規定されている。 資産の含み益等の実現可能性を判断するに当たっては、当該資産の売却等に係る会社としての意思決定の有無及び実行可能性並びに売却される当該資産の含み益等に係る金額の妥当性を検討する必要がある(監査委員会報告第66号6(1))。   Ⅱ タックスプランニングに係る実現可能性 監査委員会報告第66号における過去の業績等に基づいた回収可能性の判断指針をまとめると、次のようになる(監査委員会報告第66号6(2))。 (了)

#No. 18(掲載号)
#阿部 光成
2013/05/09

〔時系列でみる〕出産・子を養育する社員への対応と運営のヒント 【第2回】「産前・産後期間中の対応(1)」 ―就業制限と保険料負担―

〔時系列でみる〕 出産・子を養育する社員への 対応と運営のヒント 【第2回】 「産前・産後期間中の対応(1)」 ―就業制限と保険料負担―   社会保険労務士 佐藤 信   1 はじめに 女性雇用者数の長期的な推移は増加傾向にあり、雇用者総数に占める女性の割合は昭和60年に35.9%であったものが、平成23年には42.7%まで伸びている(【参考】を参照)。 また、前回(第1回)の冒頭に触れたとおり、少子化の進行により労働力人口は減少することが見込まれ、それらの変化に対応することができるよう人材活用の方法、社内体制などを見直すことが必要になってくるものと思われる。 今回は、男女雇用機会均等法及び労働基準法により、妊娠中や産後の労働者に対し会社がすべきこと(又はしてはならないこと)とされているものについて触れる。 これまで妊娠・出産に伴う退職者が多かった職場については、これを機に、今後どのような制度を整備していくかを検討する際の材料としていただければ幸いである。 なお、記事の後半では、平成24年8月に改正された産前・産後休業中の保険料免除について触れることとする。   2 保健指導又は健康診査 会社は、妊産婦が保健指導又は健康診査を受診するために必要な時間を確保することができるようにしなければならないとされている(男女雇用機会均等法22条)。 (1) 必要な時間の確保回数 健康診査等を受診するために確保しなければならない回数は、次の通りである。 (2) 必要な時間の確保方法 健康診査等を受けるために必要な時間の付与方法や付与単位は会社が決めることとなるが、決定に当たっては、労使で話し合うことが望ましい。 なお、時間の確保においては、妊娠中の労働者との調整だけではなく、周囲の労働者の理解や協力が不可欠である。 このため、従業員が利用できる制度について社内掲示、説明資料の配布など、普段から周知しておきたい。 また、時間の確保には、他の労働者による補助や社員間の業務の引継ぎなどが必要となることもある。 日頃から同じグループの労働者の業務内容や進捗状況を可視化(定例のミーティングやメール等で各自の作業の進捗を公開するなど)し、他の労働者によるサポートが可能となる体制作りを構築していく等の方法がある。 このような体制作りは、妊娠・出産を控えた労働者のサポートだけでなく、病欠社員や異動により欠員が生じるときの引継ぎを円滑に進め、業務の滞りを最小限に食い止めるといった効果も期待できる。   3 医師の指導事項を守るための措置 妊娠中及び出産後の女性労働者が、健康診査等を受け、医師等から指導を受けた場合は、その女性労働者が受けた指導を守ることができるようにするために、下記のように必要な措置を講じなければならない(男女雇用機会均等法13条)。 (1) 通勤緩和措置の具体例 通勤緩和措置の例としては、次のものがある。 (2) 休憩に関する措置 休憩に関する措置の例としては、次のものがある。 (3) 医師からの指導事項の把握 会社が母性健康管理の措置を適切に講ずるため、「母性健康管理指導事項連絡カード」(【参考】を参照)などを利用しながら、女性労働者に対して出された医師等の指導事項を的確に把握しておきたい。   4 産前・産後休業、業務転換等による母性保護 労働基準法では、妊産婦の保護規定として、以下のようなものがある(労働基準法6章の2)。 (1) 産前・産後休業 ① 産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)の女性が請求した場合は労働させてはならない 「請求した場合」がポイントであり、妊娠中であっても、労働者が就業する意思があるときは労働させても構わない。 ② 産後8週間の女性は労働させてはならない ①の期間と異なり、請求の有無にかかわらず就業が禁止される点に注意を要する。 ただし、産後6週間を経過後に、女性本人が請求し、医師が支障ないと認めた業務については、就業させることは差し支えない。 (2) 妊婦の軽易業務転換 妊娠中の女性が請求した場合には、他の軽易な業務に転換させなければならないとされる。 ただし、新たに軽易な業務を創設して与える義務まで課されているわけではないため、現在社内にある業務の中で軽易と思われる業務に転換させることでよい。 こちらも(1)①と同様に、労働者からの「請求」があった場合の措置である。 (3) 妊産婦等の危険有害業務の就業制限 妊産婦等を妊娠、出産、保育等に有害な業務に就かせることはできない。 就業制限については、平成24年10月に改正が行われているため、化学物質を取り扱う会社については、以下の【参考】にも注意を要する。 (4) 妊産婦に対する変形労働時間制の適用制限 変形労働時間制を採用している会社であっても、妊産婦が請求した場合には、1日及び1週間の法定労働時間(8時間、40時間)を超えて労働させることはできない。 この規定も「請求」があった場合の措置である。 (5) 妊産婦の時間外労働、休日労働、深夜業の制限 妊産婦が請求した場合には、時間外労働、休日労働、又は深夜業をさせることはできない。 この規定も「請求」があった場合の措置である。   5 妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止(男女雇用機会均等法9条) 会社は、女性労働者が妊娠、出産、産前・産後休業の取得、妊娠中の時差通勤などの男女雇用機会均等法による母性健康管理措置や深夜業免除など労働基準法による母性保護措置を受けたことなどを理由として、次のような不利益取扱いをしてはならないとされている。 人事部門の者だけではなく、グループ長など各労働者に直接指揮命令をする者なども、これらのことを把握した上で各労働者と接していく必要がある。   6 産前・産後期間の社会保険料免除 現在、産後8週間経過後から3歳到達までの育児休業期間については社会保険料を免除とされているが、産前・産後の休業期間〔前記4(1)①②〕については免除の対象とされていない。 この規定が平成24年8月に改正され、今後は免除となる予定である。 注:施行日は公布日の平成24年8月22日から2年の範囲内で政令で定める日とされ、本稿公開時点では未定である。   7 おわりに 今回は妊娠中から産後にかけて、会社がとるべき事項について触れた。 妊娠・出産予定の申出を受けてからの急な社内体制の整備では、当人のほか周囲の労働者についても変化に対応することが困難となることもあるため、少しずつ検討を始めておきたい。 次回は、産前・産後期間の保険給付について触れていくこととする。 (了)

#No. 18(掲載号)
#佐藤 信
2013/05/09

残業代の適正な計算方法 【第2回】 「残業時間の考え方①」

残業代の適正な計算方法 【第2回】 「残業時間の考え方①」   社会保険労務士 井下 英誉   1 はじめに 前回の「労働時間の基本をおさえる」を基に、今回から2回にわたり、労働時間の一部である残業時間について解説する。   2 残業時間とは 残業時間とは、予め労働契約で定められた労働時間(「所定労働時間」という)を超えて労働した場合の超過労働時間のことを指す。一般的には時間外労働といい、法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を基準にして「法定内時間外労働」と「法定外時間外労働」に分けられる。 ① 法定内時間外労働 ア 1日当たりの法定内時間外労働 1日の所定労働時間が8時間未満の場合で、所定労働時間を超えて8時間まで労働したときの労働時間のこと。 例えば、始業時刻が9時、終業時刻が17時の所定労働時間7時間(休憩1時間)で労働契約を締結している労働者が、17時を超えて18時まで労働した場合、17時から18時までの1時間は法定内時間外労働となる。 イ 1週当たりの法定内時間外労働 1週の所定労働時間が40時間未満の場合で、所定労働時間を超えて40時間まで労働したときの労働時間のこと。 例えば、1日7時間、月曜日から金曜日まで週5日勤務(週所定労働時間は35時間)で労働契約を締結している労働者が、土曜日(法定外休日)に5時間労働した場合、その5時間は法定内時間外労働となる。 ② 法定外時間外労働 ア 1日当たりの法定外時間外労働 1日8時間を超えて労働した労働時間のこと(労働基準法32条の2から32条の4に定める労働時間制度の場合を除く(【第1回】参照)) 例えば、始業時刻が9時、終業時刻が18時の所定労働時間8時間(休憩1時間)で労働契約を締結している労働者が18時を超えて労働した場合、18時を超えた時間は法定外時間外労働となる。 イ 1週当たりの法定外時間外労働 1週40時間を超えて労働した労働時間のこと(労働基準法32条の2から32条の4に定める労働時間制度の場合を除く) 例えば、1日8時間、月曜日から金曜日まで週5日勤務(週所定労働時間は40時間)で労働契約を締結している労働者が、土曜日(法定外休日)に5時間労働した場合、その5時間は法定外時間外労働となる。   3 法定外休日と時間外労働 労働基準法35条では、1週間に1日の休日を与えることが義務付けられている。これを「法定休日」という。一方、法定休日を上回る休日のことを「法定外休日」という。 例えば、完全週休2日制で土曜日と日曜日が休日の場合、土曜日と日曜日のどちらか1日が法定休日となり、残りの1日が法定外休日となる。どちらを法定休日とするかは会社の任意である。 同じ休日労働であっても、法定休日に労働させた場合は、法律上の休日労働として扱うが、法定外休日に労働させた場合は、法律上は時間外労働として扱って問題ないことになっている。   4 残業時間の把握と集計 毎月の残業代を適正に計算するには、まず、残業時間を適正に計算する必要がある。 ここでは、1日の残業時間をどのように計算し、1ヶ月の残業時間をどのように集計するかについて解説する。 ① 1日の残業時間の計算方法 1日の残業時間を計算するにあたり、15分や30分というような単位時間を設け、単位時間に満たない時間は切り捨てる方法は、労働基準法24条1項の「賃金全額払いの原則」に違反するため、無効である。 したがって、1日の残業時間の計算は必ず1分単位で行う必要がある。 ② 1ヶ月の残業時間の集計方法 1日の残業時間の計算が1分単位である以上、1ヶ月の残業時間の集計方法も1分単位が原則である。 しかしながら、1ヶ月の合計残業時間については、その合計時間に1時間未満の端数がある場合に30分未満を切り捨て、30分以上は1時間に切り上げるという方法は、常に労働者の不利となるものではなく、事務簡便を目的としたものであるため、認められている。 (了)

#No. 18(掲載号)
#井下 英誉
2013/05/09

民法改正(中間試案)―ここが気になる!― 【第1回】「保証人保護(1)」

民法改正(中間試案) ─ここが気になる!─ 【第1回】 「保証人保護(1)」   弁護士 中西 和幸   連載にあたって 平成25年2月26日、民法(債権関係)の改正に関する中間試案が法務省から公表され、6月17日までのパブリック・コメント手続に付されている。 この債権法改正については、まず改正そのものの手続について問題がないとはいえず、また、改正内容も、これまで積み重ねられてきた取引や裁判の実務が変更を余儀なくされるなど、多大なる影響を及ぼす可能性があるため、その社会的影響が大きいといえる。そのため、慎重な対応が必要である。 そして、慎重な対応をするためには、まずは中間試案の内容を把握しなければならない。 ところが、債権法改正の範囲は広範囲にわたっており、そのすべてを把握することは大変である。 そこで本連載では、各種ビジネス法務の経験から、実務上中間試案の内容を把握しておきたい論点についてピックアップし、コンパクトに解説したい。   1 はじめに 民法改正については、一定の範囲で弱者保護の観点も盛り込まれている。その最も著名なものの1つが、個人保証契約の制限についてである。 民法改正は中間試案の段階であり、その中で個人保証の制限については、「引き続き検討する」とされており、最終的に民法改正案に盛り込まれるかどうか定かではない。しかし、日本経済新聞に特集が掲載されるなど、その関心は高いことがうかがわれる。 そこで、今回は、個人保証の制限について解説する。   2 個人保証の制限の概要 (1) 対象となる個人 対象となる個人は、自然人を意味し、法人は除かれる。そして、いわゆる経営者は、かかる個人から除かれる。 もともと、制度趣旨が「個人の保証人が必ずしも想定していなかった多額の保証債務の履行を求められ,生活の破綻に追い込まれるような事例が後を絶たないこと」にあるところ、経営者自身は、自らの事業が不振になれば保証債務の履行を求められることは理解しているし、また、当該事業からは配当や役員報酬が得られるため、保証債務を負担させても不都合とはいえないからと解される。 (2) 対象となる取引 個人保証の制限が課される取引は、 のどちらかを選択することとされている。 いずれも、貸金以外の取引に伴う連帯保証契約(例えば、売買契約等の代金支払に関する連帯保証等)については適用されないことになる。   3 無保証取引の現況 (1) 保証人の機能 個人保証が制限された場合、不動産等の有力な担保となる資産を有しない経営者は、企業や事業拡張、日々の資金繰りの目的で融資を受ける際、苦労することになることが予想されるが、現行法下でもその点は変わらない。 個人による保証につき制限がない現行法下では、以下のようになる。 保証人がいない場合、事業者だけの信用力により融資の可否が決まることになる。そのため、担保に提供する有力な資産がなければ、おのずから融資審査のハードルは高く、また、審査に通ったとしても、融資額が抑えられてしまう。 しかし、保証人がいれば、事業者だけでなく、保証人の信用力も加えて金融機関に対して融資を申し込むことになり、事業者と保証人の資産状況や返済能力次第で融資の可否、融資額や融資条件が決定されることになる。そのため、審査は通りやすくなり、また融資額も引き上げられることになる。 金融機関の立場からみると、保証人は回収リスクを回避・低減させる極めて有効な手段である。したがって、これを制限することは、回収リスクが増加することになるため、金融機関としては、リスクの高い融資を拒否したり、融資に応じるとしても融資金額や金利、また返済条件等を厳しくせざるを得ないことが考えられる。 (2) 各種無担保・無保証融資の現状 ① 創業者支援融資 まず、創業者・起業者の中には、資産も保証人も準備できないことが少なくなく、これに対応するため、新創業融資制度(日本政策金融公庫)や起業挑戦支援無担保無保証貸出制度(商工中金)などの政府系金融機関による融資制度や、民間金融機関による融資などがある。 こうした制度は、起業前や起業後一定の期間内の融資に限られるため、利用できる事業者が限られている。 ② 通常期の無担保・無保証融資 創業者・起業者に限られない無担保・無保証融資もあるが、政府系金融機関や民間金融機関は、融資審査が厳しいことが予想される。 また、ノンバンクは融資審査が比較的厳しくはないが、金利が高いため、よほど短期に資金が準備できるなどの特殊事情がない限り、利用を控えた方がよいであろう。 ③ 無担保・無保証の審査対応 無担保・無保証の融資審査を受けるためには、金融機関の立場に立てば、担保や保証がないまま融資をしても返済される可能性が高いと信用できることが必要である。すなわち、事業遂行による借入金の返済が合理的かつ無理のないことを金融機関に説明して説得しなければならないのである。 しかし、金融機関を納得させるような事業計画を作成することについては、得意ではない経営者が多いものと予想される。こうした事業計画を作成するため、費用はかかるが専門家に依頼することも検討した方がよいであろう※。 ※ 専門家を探す方法の1つとして、経営革新等支援機関を利用することが考えられる。 以上のことは、個人保証が認められている現行法の下でも有効な方法であるので、検討していただきたい。   4 個人保証が禁止されると 個人による保証の禁止により、確かに、保証人の予想外の生活破綻を避けることはできるかもしれない。その一方で、中小企業等や新規事業の創業者が融資を受けることが困難となり、経済の活性化が妨げられることにもなりかねないというデメリットがある。 すなわち、個人保証が禁止されると、金融機関の融資審査体制及び審査基準が現在の無保証融資のように厳しくなる可能性がある。 一方、金融機関としても、個人保証に頼らない融資商品の開発等が必要になり、また、個人保証に頼らない融資審査体制の構築が必要になろう。 しかし、単に融資商品の開発や審査体制の構築といっても、現在の融資商品や審査体制は、長年の経験や蓄積に基づいて構築・開発されているものであり、日本では、保証人のない融資についての経験やノウハウが豊富に蓄積されているとは言い難いように思われる。 そのため、もし、個人保証を禁止したとしても、円滑な融資取引が定着するためには、相当程度の長い期間が必要ではなかろうか。   5 まとめ このように、個人保証の禁止といっても、実現するためには、事業者と金融機関を巻き込んだビジネス全体に影響することが予想される。 明治以来長年にわたって利用され定着してきた保証人制度は、確かに、保証人の予想外の生活破綻という悲劇を招いてきたというデメリットはある。その一方で、事業者の創業や事業継続に一定の役割を果たしてきたというメリットも見逃せない。とりわけ、過酷な取立てや高金利等については、現在、貸金業法の度重なる改正によりある程度抑えられている。 保証人の悲劇について、従前のような個別の対応により抑制するのか、それとも個人の保証人を一律禁止することがよいのか、今後の議論の要点ではなかろうか。 (了)

#No. 18(掲載号)
#中西 和幸
2013/05/09

企業の香港進出をめぐる実務ポイント 【第5回】「香港の税制(後編)」

企業の香港進出をめぐる実務ポイント 【第5回】 「香港の税制(後編)」   アースタックス税理士法人 アースタックス・ビジネスコンサルティング(香港)有限公司 税理士 白水 幹範   (前編は「こちら」) 所得税の徴収管理 1) 内国歳入庁(IRD:Inland Revenue Department) 香港の税務局のことであり、主要な税金の徴収管理を司る機関である。 全体でも2,800人程度(2012年4月時点)と非常に限られた職員で運営されている。 2) 賦課課税制度 香港の所得税は、賦課課税制度がとられている。 ちなみに日本では、納税義務者が税務申告書を作成して提出し、その申告書に基づき納税する申告納税制度がとられている。 香港では、納税義務者から提出された税務申告書に基づき税務局が査定を行い、賦課決定通知書を納税者に交付する。 そこに記載された納税額及び納付期限に従い、納税義務者が納税を行うことになる。 3) 予定納税制度 香港の所得税は予定納税制度がとられている。すなわち、確定税額の納付時に翌課税年度の予定税額も納付する。 翌課税年度の税額は、当年と同額の課税所得があったものとして計算される。 翌課税年度に確定税額を納付する際には、前年に納付済みの予定税額を控除する。 4) 税務調査 税務調査が行われる場合、通常、税務局から納税者に対し質問状が発行され、文書にてやり取りを行うのが一般的である。 納税者は、質問状に記載された項目への回答及び要求された資料を文書にて税務局へ提出する。 日本では調査官が納税者への立入り調査を行うのが一般的であるのに対し、香港では税務局の職員数が限られていることもあり、立入り調査が行われるのは、納税者に脱税の疑いがあるなど、税務局が過少申告の確証を事前に得ている場合が多い。 税務局は、課税年度終了後6年間遡って課税する権限を有し、脱税などの悪質な場合は10年間遡ることができる。 5) 加算税及び罰金 税金の納付期限までに納税を行わなかった場合、税額の5%を上限として加算税が課される。 過少申告を行った場合、申告期限までに申告を行わなかった場合などは10,000香港ドル及び過少申告税額の3倍を上限として罰金が課される。 脱税の意図をもって過少申告を行った場合又はそれを幇助した場合などは、50,000香港ドル及び過少申告額の3倍を上限として罰金が課され、最高3年間の懲役となる。   その他の税金 1) 資産所得税(Property Tax) 不動産の所有者に対して、その賃料収入に対して課税される。 『賃料収入-不動産税-法定経費(20%)』で計算した所得に15%の税率(2012/13課税年度)を乗じて課税される。 2) 印紙税(Stamp Duty) 香港における不動産売買契約書、不動産賃貸契約書、有価証券売買契約書などに課税される。 日本の印紙税の課税文書の範囲に比べると、その範囲は非常に限定的である。 3) 賭博税(Betting Duty) 競馬、宝くじ、サッカーくじに対して課税される。 4) 商業登記料(Business Registration Fees) 香港で事業を行うすべての法人、個人事業主等は、事業開始時に商業登記料を支払って商業登記証の交付を受ける。 また、商業登記証は毎年1回更新が必要で、更新の際に商業登記料を支払う。 商業登記料は、徴収料として450香港ドル、登記料は免税(2014年3月31日までの時限措置でそれ以降は未定)となっている。 5) 物品税(Excise Duty) 酒類、煙草、燃料類、自動車登録などに対して課税される。 6) 不動産税(Rates) 日本の固定資産税に相当する税金で、所轄当局の査定する評価額の5%の税率で課税される。 7) 遺産税(Estate Duty) 2006年2月11日付けで廃止となっている。 それまでは、香港に所在する遺産額に対し、一定の累進税率等で課税されていた。 8) ホテル宿泊税(Hotel Accommodation Tax) 2008年7月1日より免税となっている。 それまでは、ホテルの宿泊料金に対して3%の税率で課税されていた。 9) 資本登録税(Capital Duty) 2012年6月1日より廃止となっている。 それまでは、授権資本金の0.1%(30,000香港ドルを上限)を会社設立時及びその後の授権資本金の増加時に、会社登記局に納付することとされていた。   日本・香港租税協定 2010年11月9日、日本と香港との間で、「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府と中華人民共和国香港特別行政区政府との間の協定」(以下「本協定」)が署名され、2011年8月14日に発効し、以下のものに適用されることとなった。 本協定の目的は、下記のとおりである。   タックスヘイブン対策税制 タックスヘイブン対策税制は、日本の居住者又は内国法人がタックスヘイブン(軽課税国)を利用して租税回避を図ることを防止するために設けられた制度である。 当該税制の適用対象となった場合には、香港法人における留保所得が日本の株主の所得に合算され、日本において課税されることになる。 ただし、香港法人が適用除外要件(事業基準、実体基準、管理支配基準又は所在地国基準)のすべてを満たす場合には、当該税制の適用対象にはならず、合算課税は行われない。 さらに、当該税制の近年における改正により、統括会社の概念の導入・資産性所得の合算課税の導入など、制度はより複雑化してきている。 香港法人の設立にあたっては、国際税務の専門家などを活用して慎重にタックスプランニングを行うことが重要になると考えられる。   移転価格税制 香港においては、近年、税務局により移転価格税制の整備が積極的に進められている。 とりわけ、2009年12月に公表されたDIPN46号(課税当局の解釈及び実務指針:Departmental Interpretation and Practice Notes)においては、移転価格算定方法や移転価格に関連する諸問題に対する取扱いなど、移転価格に関する包括的なフレームワークが整備された。 課税当局の移転価格行政に対する関心の高さが窺えるといえよう。 なお、DIPN46号においては、移転価格文書の作成は義務化とはなっていないが、文書を作成することが推奨されている。 (了)

#No. 18(掲載号)
#白水 幹範
2013/05/09

会計事務所 “生き残り” 経営コンサル術  【第5回】「3年先5年先の経営計画書を作っている会社があるけれど、これって本当に役に立っているの」

会計事務所 “生き残り” 経営コンサル術 【第5回】 「3年先5年先の経営計画書を 作っている会社があるけれど、 これって本当に役に立っているの」   株式会社 経営ステーション京都 代表取締役 京セラ株式会社 元監査役 公認会計士・税理士 田村 繁和   私が開業して間もない頃、会計事務所業界では、経営計画シミュレーションの仕事が全国的に盛んになりました。 3年先5年先のP/L、B/Sを自動的に計算してくれるという商品です。 これからは記帳業務じゃなくて、経営計画シミュレーションの時代だと業界誌も書き立てました。 なにせコンピュータのソフトを含めた価格が1,000万円もしましたが、どんどんこれにのめり込んでいく事務所が増えたのでした。 販売会社は「リースにすれば月20万円ですから、月2件お客様をとれば元がとれます」と言って、全国の会計事務所に営業をかけていました。 私も他の事務所に負けないようにこれを買おうとしましたが、どうも変な予感がして、最終的には買いませんでした。 後日、上場会社の監査役を経験して、「買わなかったことは正解だった」と自信をもって言えるようになりました。 その理由としては、3年先5年先のP/L、B/Sまで、上場会社でも作っていなかったのです。 「なぜ作らないのですか」と私が質問しますと、「3年先5年先のことなんか、世の中の変化ですぐに変わってしまう。そんないいかげんなものを作ってどうするんだ。それよりも1年先の経営計画をしっかり作りあげることが大切じゃないのか」と言われました。 さらに続けて「1年先のしっかりした経営計画を作ろうと思えば、毎月の計画、毎日の計画を作って朝礼で発表していく。こんな地道なことが大切なんだ」と教えられたのです。 当時私は先輩から「とにかく5年先までのP/L、B/Sを付けて、製本してお客様に提出すれば100万円はもらえる。それに、金融機関もこんなすごい資料にびっくりするはずだ」と聞かされました。 そして、その先輩から「最後に君に成功のヒントをあげるよ。製本した資料はぶ厚ければ厚いほどお金になるんだ」と忠告されたものでした。 私がお世話になった会社では、1年先の経営計画は紙1枚でした。 しかし、それを実行するために、朝礼で毎日の計画を発表し、翌朝その結果を反省するというものでした。 このことを経験して、この商品は会計業界の中の机上の話として生まれてきたのかなあと、思わずにはいられませんでした。 会計業界の中には、現在でもこんな話がたくさんころがっています。 原理原則で考えていけば、私たちは会計事務所コンサルから学ぶのではなく、成長しているクライアントから学ぶべきです。 成長しているクライアントの中に、成長の秘訣がいっぱいあるのです。 (了)

#No. 18(掲載号)
#田村 繁和
2013/05/09

NPO法人 “AtoZ” 【第6回】「NPO法人の税務①」~NPO法人の収益事業~

NPO法人 “AtoZ” 【第6回】 「NPO法人の税務①」 ~NPO法人の収益事業~   税理士 岩田 聡子   1 収益事業に該当する場合 NPO法人も、一般の法人と同様に、収益事業を行っている場合には、法人税の申告をしなければならない。 収益事業とは、特掲事業として定められた次の34業種で、継続して事業場を設けて行われるものをいう(法法2十三、法令5)。 NPO法人の行う事業が、NPO法人の本来の目的である特定非営利活動に係る事業であっても、特定非営利活動に係る事業以外の事業(その他の事業)であっても、この特掲事業に該当すれば、その事業に付随して行われる行為も含めて、法人税が課税される(法基通15-1-1)。 これは、NPO法人の行う事業のうち、一般の企業との競合性、公平性を考慮した法人税法特有の考えから規定されているものであり、それが特定非営利活動であるか否かは関係ない。 したがって、NPO法人が行っている事業が収益事業に該当するかどうかは、個別に判断しなくてはならないケースが多いこともあり、常に慎重な判断が求められる。 主な判断のポイントとしては、以下の要件が挙げられる。   2 収益事業から除外される場合 上記の要件に該当していても、収益事業から除外されるものがある。 (1) 個別の特掲事業から除外される場合 公益性、その他の事由で、法令等により個別に特掲事業から除外されるものである。 例としては、常設の美術館、博物館等の所蔵品の観覧等がこれに当たる(法基通15-1-52注)。 また、一定の条件を満たすチャリティー・ショー、アマチュア演劇等も除外される場合があるが、これらについては税務署長の確認を受けなければならない(法基通15-1-53)。 (2) 一定の条件を満たす公益法人等が行う特掲事業で特に社会福祉に貢献すると認められる場合 NPO法人が行う特掲事業のうち、その事業に従事する身体障害者、生活扶助者、知的障害者、精神障害者、65歳以上の者、寡婦等がその事業に従事する者の総数の半数以上を占め、かつ、その事業がこれらの者の生活の保護に寄与している事業がこれに該当する(法令5②二)。   3 法人税の申告をしていない場合 NPO法人の中には、最初に税務署へ行って相談したから安心、と思っている方も多くおられるようであるが、活動内容によっては、納税義務が生ずる場合もある。 例えば、イベントで物品販売をしたら、金額の多寡によらず、物品販売業(=収益事業)となってしまう等の場合である。 気付かずに収益事業を行っていた場合には、遡って申告をしなければならないケースもあり、その場合には、最悪、5年間分の確定申告をすることとなる。 また、利益が出ていないから、税金はない、と安心していてはいけない。 収益事業を行っていたら、利益は出ていなくても、県民税と市民税の均等割は必ず納付することとなる。 5年分であれば、自治体によって税額は違うのだが、おおむね均等割7万円×5年分=35万円と、資金基盤の脆弱なNPO法人にとっては、重い負担となってしまう。 今、行っている事業が、本当に収益事業に該当しないのか、しばらく確認していないNPO法人は、再度、見直してみることをお勧めする。 (了)

#No. 18(掲載号)
#岩田 聡子
2013/05/09

monthly TAX views -No.4-「消費税率引上げと価格表示」

monthly TAX views -No.4- 「消費税率引上げと価格表示」   中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 森信 茂樹   消費税率が上がる2014年4月、2015年10月に向けて、政府は、消費税の円滑で適正な転嫁を確保するため、転嫁拒否の行為を禁じたり、価格表示について、これまでとは異なる特別な措置を講じるための法整備を行う。 大規模小売業者のような優越的地位にあるものが、商品納入業者に対して買いたたきを行ったり、消費税の転嫁を拒否するような行為を禁じることについては、異論はない。 しかし、価格表示に関する規制については、すでに大手小売関係者が発言しているように、違和感を感じる部分がある。 政府は事業者に対し、消費税の転嫁を阻害する表示をしてはならないとして、次のような表示を禁止するという。 取引の相手方に消費税を転嫁していない旨の表示、つまり「消費税は転嫁しません」、「消費税は当店が負担しています」等の表示である。また、「消費税率上昇分値引きします」「消費税還元セール」等の表示も、誤解を生むので禁止するという。 消費税はあくまで消費者が負担するので、その分値引きするという表示はおかしいということのようだ。 これらを実効あらしめるために、消費者庁が具体的ガイドラインを定め、転嫁を阻害する表示に対する勧告、指導等を行うことになる。 確かに、大企業が優越的な地位を利用して、下請会社に消費税を負担させることは禁じるべきだ。また、「消費税は当店が負担します」という表示は、意図的な間違いなので、問題だろう。 ここで取り上げたいのは、2004年に義務付けられ、それなりに定着してきた「総額表示」を、時限的にではあるが、「(税抜きであることが明示されておれば)税抜表示でもかまわない」とする点だ。 「価格が税込価格であると誤認されないための措置を講じているときに限り、税込価格を表示することを要しない」ということのようだが、2つの表示が並行することにより、消費者の混乱を招くことは間違いない。 総額表示は、消費者利便を考えて、2004年4月に導入されたものである。「税抜価格」のお店と「税込価格」のお店が混在することによる消費者の混乱を避けるために、消費税法63条で、総額表示を義務付けたのである。 フランス大蔵省の消費税担当課長と話した際、こんなことを言われたことがある。 フランスでは、消費税率引上げ時に、事業者が表示にこだわることはない。消費税率の引上げは、いろいろな原材料費や電気代・ガス代・人件費などが上がる中で、コスト増加の一要因にすぎないという認識が事業者には浸透している。したがって、消費税率引上げだけを考えて価格を改定することはしない。 消費税率が上がるということになると、そのほかのコストの状況を見ながら、売れ筋の商品は少しずつ値段を引き上げていく。売れないものは消費税率引上げ時にも価格を据え置かざるを得ない。 要は、「自らのマージンが確保されていればよい」というのが彼らの認識だ。消費税率の引上げの前日に徹夜して価格表示を書き換えるという話は、聞いたことがない、と。 そもそも消費税の納税額は、(売上げ×消費税率)-(仕入れ×消費税率)で計算するので、商品一つ一つに消費税率が対応しているわけではない。このことからも、商品一つ一つの表示を徹夜して貼り替えるという作業が、的外れのように感じられる。 電気代が上がる、円安で石油価格が上がる、原材料費も上がる、それらコスト変化のワンノブゼムとして、消費税率も上がる。コスト上昇を転嫁できるかどうかは、経済状況次第である。法律で「消費税は消費者が負担」といっても、相手側がその値段で買ってくれなければ転嫁できないわけだ。 さまざまなコストの変化を見通しながら、ものによっては、価格を据え置いて販売数量を増加させるという戦略も考えられる。最大関心事は、自らのマージンをいかに確保するか、そのために商品一つ一つにいかなる価格を付けるのがいいのかということのはずだ。 今回の消費税率の二度にわたる引上げは、このような、消費税と価格の関係を考える絶好のチャンスであった。それを、時限的にせよ法律で縛ることで、潰してしまったことは大変残念に思う。 (了)

#No. 17(掲載号)
#森信 茂樹
2013/05/02

海外で依頼した通訳等の対価の源泉所得税・消費税の取扱い

海外で依頼した通訳等の対価の 源泉所得税・消費税の取扱い   税理士 郭 曙光   【問】 当社は、中国視察の際に、現地で甲氏に通訳を含めたコーディネートを依頼しました。甲氏は日本人ですが、2年前から中国の大学に留学しています。 この場合、当社(日本)から甲氏に対して支払うコーディネート料に関する日本の源泉所得税や消費税はどのような取扱いとなるのでしょうか。   【回答(要旨)】 1 所得税法上の取扱い 2年前から中国の大学に留学していることから、甲氏は日本の非居住者に該当すると推定される。非居住者に対しては、日本の国内源泉所得にのみ所得税が課税されることとなる。 甲氏が行った通訳等のコーディネートは、現地(中国)で行われていることから、日本の国内源泉所得には該当しない。 このため、貴社が甲氏に対して支払うコーディネート料については、日本の所得税の源泉徴収をする必要はない。 (1) 甲氏が日本の居住者に該当するか否か 日本の所得税法は、日本における住所又は居所の有無に基づいて、個人の納税義務者を「居住者」と「非居住者」に区分している。 居住者については、日本の国内及び国外で生じたすべての所得に対して課税されるが、非居住者については、日本の国内源泉所得に対してのみ課税される(所法2①三・五、7①)。 このため、所得税法上は、居住者と非居住者の区分が課税所得の範囲を決める重要なポイントとなる。 国の内外にわたって居住する場所が異動する者の住所が日本国内にあるかどうかの判定に関しては、次のとおり、所得税法施行令15条1項(国内に住所を有しない者と推定する場合)において推定規定が設けられている。 この推定規定は、職業に従事する者に関する規定となっているが、学術、技芸の習得のために国外に居住することとなった者についても、同様の取扱いとなる。 所得税基本通達3-2(学術、技芸を習得する者の住所の判定)では、次のとおりとされている。 また、継続して1年以上であるかどうかについては、所得税基本通達3-3(国内に居住することとなった者等の住所の推定)において、次のとおりとされている。 すなわち、職業に従事するため、又は、学術、技芸の習得のために国外に居住することとなった者については、国外における在留期間が契約等によってあらかじめ1年未満であることが明らかな場合を除き、国外において継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有する場合に該当するものとされて、日本国内に住所を有しない非居住者となると推定される。 ご質問の場合は、甲氏が2年前から中国の大学に留学していることから、甲氏は日本の非居住者に区分されることになる。 (2) コーディネート料が日本国内源泉所得に該当するか否か 非居住者が日本で課税を受ける所得は、日本の国内源泉所得に限られる。国内源泉所得について、所得税法161条(国内源泉所得)においては、次のように規定している。 甲氏が行った通訳等のコーディネート(人的役務の提供)は、日本ではなく、現地(中国)で行われているため、上記の所得税法161条2号に掲げられている日本の国内源泉所得には該当しない。 ご質問の場合には、甲氏は日本の非居住者に区分され、また、コーディネート料は日本の国内源泉所得に該当しないことから、日本で所得税の課税を受けることとはならない。 よって、貴社は甲氏より所得税の源泉徴収を行う必要はない。   2 消費税法上の取扱い ご質問のコーディネート料に関しては、役務の提供が行われた場所が現地(中国)であるため、消費税法上、国外取引に該当し、消費税の課税対象とはならない。 消費税法4条1項(課税の対象)においては、次のように規定されている。 また、資産の譲渡等が国内において行われたかどうかの判定について、消費税法4条3項では、次のとおりとされている。 上記のとおり、役務の提供が国内において行われたかどうかの判定に関しては、その役務の提供地によって判定するものとされている。 ご質問の場合は、甲氏が行ったコーディネートという役務提供が現地(中国)で行われているため、貴社が甲氏に支払ったコーディネート料は、この消費税法4条1項の規定に該当せず、日本の消費税の課税対象外となる。 (了)

#No. 17(掲載号)
#郭 曙光
2013/05/02

企業不正と税務調査 【第7回】「従業員による不正」 (1)経理部門社員による横領

企業不正と税務調査 【第7回】 「従業員による不正」 (1) 経理部門社員による横領   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   今回から3回にわたって、従業員による不正について、横領事件を中心に見ていきたい。 本連載【第1回】で引用した事例が2例とも従業員による横領であったように、税務調査をきっかけにして、経営者・顧問税理士・会計監査人が気付かなかった従業員不正が発覚することは少なくない。 また、犯人とされた従業員は、概してまじめで、休みも少なく、業務に精通しており、周囲からの信頼が厚い場合が多い。 彼らは、どのようにして不正への道に足を踏み入れ、いかに巧妙な隠蔽工作をし、にもかかわらず、国税調査官が発見できたのはなぜか。 具体的な手口を見る前に、まず、こうした不正がどのような犯罪を構成するか、刑法の条文で確認したい。 従業員による不正で成立する犯罪は、詐欺又は業務上横領であり、それぞれ次のように規定されている。 従業員が勝手に、会社に帰属する金銭などの資産を私的に流用してしまった場合は、詐欺か横領の罪名で刑事告訴されることになり、今回取り上げる経理担当者による不正は、上記の「電子計算機使用詐欺」に問われることもあるわけだが、本稿では、犯罪の構成要件を解説することが目的ではないので、こうした私的流用行為を広く「横領」として記述する。   1 経理部担当者による横領の特徴 ここでは、昨年10月に発覚した文具製造会社の事例を参照したい。 本連載【第1回】で紹介した【事例2】のケースとまったく同じ手口であり、どちらも中堅以上の企業でありながら、経理部門における内部統制に関してはいかにも手薄であるとの印象を持つのだが、共通しているのは、 の2点である。 この「単独犯」であること、換言すれば、1人で不正が完結できることが、経理部門担当者による不正の大きな特徴である。 〔経理担当者による不正の流れ〕 経理部門、特に出納業務担当者の不正が多発する原因は、以下のようにまとめることができる。 (1) 経理部門の業務は属人的になりやすい 長引く不況の影響もあり、管理部門社員の数を減らしてコスト削減に取り組んできた企業は多い。 本来であれば、複数の担当者を置き、相互牽制機能により、ミスを防止し、不正ができない仕組みを構築すべきことは分かっていても、コスト面から、経理担当者を1人しか置けない、場合によっては、管理部門の社員が1人だけというケースもあるかもしれない。 この段階で、不正のトライアングルにおける「機会」が生じてしまう。 ただし、本連載【第2回】で見たように、これだけでは不正は発生しない。本事例は、「遊興費」を必要とする「動機」が存在していた。また、不正を「正当化」する何らかの社内事情もあって、結果的に巨額の業務上横領に至ったものである。 経理部担当者の「正当化」としては、経営者の野放図な支出、コスト削減による給料・残業代のカット、営業部門社員との待遇の差など、経理担当者しか知り得ない社内事情に基づくものが多い。 (2) 不正を防止又は発見するための仕組みがない 不正が長期間にわたり繰り返される理由はただ一つ。不正を防止し、又は発見するための仕組みがないからである。 たとえ業務を担当者任せにせざるを得なかったとしても、経営者が事後的に支払内容を確認し、請求書と照合する手間を惜しまなければ、被害が巨額になる前に発見でき、従業員を犯罪者にすることも防げたのではないか。 「監視されている」という思いを抱かせるだけで、抑止効果はある。 (3) 犯罪者は勤勉である 不正を発見するための仕組みの一つが、経理担当者にまとまった有給休暇を取らせ、その間に業務内容をチェックするという手法であるが、往々にして犯罪者は勤勉であり、有給休暇は取らず、休日出勤は当たり前で残業時間も多い。 管理部門の人員削減を進めてきた経営者は、経理担当者が多忙な責任の一端を感じ、ますます信頼感を高めかねないが、実は、不正の隠蔽工作の多くは、残業時間に行われていることが多い。   2 経理担当者の不正が税務調査により発覚するパターン (1) 銀行調査 上記の事例では、経理担当者は、自分名義の口座に振込みを繰り返していたらしく、国税調査官が取引銀行の入出金履歴を調査すれば、すぐに発覚する手口であった。 通常、企業が支払いをする相手は法人であることが多いため、そこに個人名が混在し、かつ、それが経理担当者と一致していたような場合に、国税調査官が見破れないわけはない。 (2) 反面調査 さらに、架空の、又は変造された請求書を使用していた場合には、その請求書を発行している取引先に対し反面調査を行うことにより、架空又は変造の事実をつきとめることとなる。 (3) 従業員も自白の機会をうかがっている 不正を繰り返してきた経理担当者からしても、不正に得た金額が雪だるま式に膨らみ、とうてい返済し得ないことは分かっている。とはいえ、自分から経営者に事実を打ち明ける勇気もない。経理担当者にとって、税務調査は、願ってもない自白のチャンスでもある。 *  *  * 次回は、従業員による不正のうち、経理部門以外の社員(営業部門・購買部門)による不正事例を参考に、税務調査による不正発見手法を検討したい。 (了)

#No. 17(掲載号)
#米澤 勝
2013/05/02
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