公開日: 2013/06/13 (掲載号:No.23)
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組織再編税制における不確定概念 【第10回】「損失の二重利用②」

筆者: 佐藤 信祐

組織再編税制における不確定概念

【第10回】

「損失の二重利用②

 

公認会計士 佐藤 信祐

 

前回(第9回目)では、子会社株式の譲渡と適格合併を利用して損失を二重に利用するケースについて解説を行った。

これに対し、第10回目では、包括的租税回避防止規定が適用された事案として、パチンコ店約40グループが適格組織再編成を繰り返すことにより、損失を二重、三重に利用した事案についての解説を行う。

 

1 基本的な取扱い

適格分社型分割を行った場合には、分割法人が保有する資産及び負債が分割承継法人に対し、簿価で譲渡されることになる(法法62の3)。すなわち、分割承継法人は資産及び負債を簿価で取得したものとみなされ(法令123の4)、分割承継法人に移転した簿価純資産価額が、分割法人が取得する分割承継法人株式の取得価額となる(法令119①七)。

その結果、分割法人における移転資産の含み損益は分割承継法人株式の含み損益に振り替えられることになる。

すなわち、移転資産に含み損がある場合には、分割法人においては分割承継法人株式の含み損に振り替えられ、分割承継法人においては移転資産の含み損として認識することになるため、含み損が二重に発生するという問題がある。

さらに、グループ内の適格分社型分割の判定においては、分割時点だけでなく、分社型分割後においてもグループ関係が維持されることが見込まれている必要があるが、直接保有だけでなく、間接保有を含めた上で、当該グループ関係の判定を行うことになるため、適格分社型分割に該当する場合であっても、グループ間で子会社株式を譲渡することにより、子会社株式に係る譲渡損益が実現するケースは十分に考えられる。

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【第10回】

「損失の二重利用②

 

公認会計士 佐藤 信祐

 

前回(第9回目)では、子会社株式の譲渡と適格合併を利用して損失を二重に利用するケースについて解説を行った。

これに対し、第10回目では、包括的租税回避防止規定が適用された事案として、パチンコ店約40グループが適格組織再編成を繰り返すことにより、損失を二重、三重に利用した事案についての解説を行う。

 

1 基本的な取扱い

適格分社型分割を行った場合には、分割法人が保有する資産及び負債が分割承継法人に対し、簿価で譲渡されることになる(法法62の3)。すなわち、分割承継法人は資産及び負債を簿価で取得したものとみなされ(法令123の4)、分割承継法人に移転した簿価純資産価額が、分割法人が取得する分割承継法人株式の取得価額となる(法令119①七)。

その結果、分割法人における移転資産の含み損益は分割承継法人株式の含み損益に振り替えられることになる。

すなわち、移転資産に含み損がある場合には、分割法人においては分割承継法人株式の含み損に振り替えられ、分割承継法人においては移転資産の含み損として認識することになるため、含み損が二重に発生するという問題がある。

さらに、グループ内の適格分社型分割の判定においては、分割時点だけでなく、分社型分割後においてもグループ関係が維持されることが見込まれている必要があるが、直接保有だけでなく、間接保有を含めた上で、当該グループ関係の判定を行うことになるため、適格分社型分割に該当する場合であっても、グループ間で子会社株式を譲渡することにより、子会社株式に係る譲渡損益が実現するケースは十分に考えられる。

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連載目次

筆者紹介

佐藤 信祐

(さとう・しんすけ)

公認会計士・税理士、法学博士
公認会計士・税理士 佐藤信祐事務所 所長

平成11年 朝日監査法人(現有限責任あずさ監査法人)入所
平成13年 公認会計士登録、勝島敏明税理士事務所(現 デロイトトーマツ税理士法人)入所
平成17年 税理士登録、公認会計士・税理士佐藤信祐事務所開業
平成29年 慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程修了(法学博士)

【主な著書】
・『ケース別に分かる企業再生の税務』(共著、中央経済社)
・『企業買収・グループ内再編の税務─ストラクチャー選択の有利不利判定─』(共著、中央経済社)
・『組織再編税制 申告書・届出書作成と記載例』(共著、清文社)
・『制度別逐条解説 企業組織再編の税務』(共著、清文社)
・『組織再編における株主課税の実務Q&A』(共著、中央経済社)
・『組織再編における包括的租税回避防止規定の実務』(中央経済社)
・『債務超過会社における組織再編の会計・税務』(共著、中央経済社)
・『グループ法人税制における無対価取引の税務Q&A』(共著、中央経済社)
・『組織再編・グループ内取引における消費税の実務Q&A』(共著、中央経済社)
・『実務詳解 組織再編・資本等取引の税務Q&A』(共著、中央経済社)
・『これだけ!組織再編&事業承継税制』(共著、中央経済社)
・『無対価組織再編・資本等取引の税務』(中央経済社)
・『グループ法人税制・連結納税制度における組織再編成の税務詳解』(共著、清文社)
・『消費税 個別対応方式の実務 プラス 100Q&A』(共著、清文社)
・『組織再編による 事業承継対策』(共著、清文社)
・『組織再編の会計と税務の相違点と別表四・五(一)の申告調整』(共著、清文社)
・『中小企業のための組織再編・資本等取引の会計と税務』(共著、清文社)
・『条文と制度趣旨から理解する 合併・分割税制』(清文社)
・『事業承継M&Aの実務』(共著、清文社)
・『組織再編税制大全』(清文社)
・『新版 サクサクわかる! 超入門 中小企業再編の税務』(清文社)
・『サクサクわかる! 超入門 合併の税務』(清文社)
・『サクサクわかる!M&Aの税務』(清文社)
・『サクサクわかる!株主対策の税務』(清文社)
・『ドリル式 組織再編成の確定申告書 別表四・五(一)徹底攻略』(清文社)
・『不動産M&Aの税務』(日本法令)
・『みなし配当の税務』(日本法令)

その他M&A、グループ内再編、事業再生及び事業承継に関する書籍多数。

        

関連書籍

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