空き家をめぐる法律問題 【事例18】「空き家で火災が生じた場合の火災保険金の支払いの有無」
私は、父から相続した実家で生活し、実家と家財道具に火災保険を付しておりました。その後、私は、実家から転居し、半年に1度くらいの割合で実家に立ち寄るようにしていましたが、田舎にあることもあり施錠を十分に行えていませんでした。
以前、実家に立ち寄った際に、近所の方からの立ち話で、夜中に灯のようなものがついていることがあった旨聞いておりましたが、そのことを失念しており、対処を怠っていました。そうしたところ、ある日、実家で火災が生じており、放火である可能性が高いとの連絡を受けました。
今後、保険会社に火災保険金を請求することを考えておりますが、保険金を請求することに問題はありますか。
特別養子制度の改正ポイントと相続実務への影響
「特別養子制度」は昭和62年(1987年)の民法改正により創設された制度であるが、「民法等の一部を改正する法律」(令和元年法律第34号)によって令和元年(2019年)6月7日に32年ぶりに改正された(同月14日公布)。
施行予定は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日であり、本稿執筆時点では明らかになっていない。
本稿では、改正法の内容を一覧表で整理し、わかりやすく解説するとともに相続実務への影響についても検討したい。
改正相続法に対応した実務と留意点 【第9回】「配偶者短期居住権に関する留意点」
配偶者が、被相続人の死亡前から被相続人所有建物に居住していた場合、建物に関して、特段の事情がない限り、被相続人と配偶者との間で、被相続人の相続開始時を始期として使用貸借契約が成立しているものと推認されていた(最高裁平成8年12月17日判決)。しかしこのように考えたとしても、被相続人が配偶者以外の者に建物を遺贈した場合などには、被相続人と配偶者との間に使用貸借契約が成立していたとは考えられず、配偶者は直ちに建物を明け渡さなければならないことになる。
そこで、配偶者保護の観点から、配偶者が相続開始時に被相続人所有建物に無償で居住していた場合、一定の期間、配偶者は無償で建物を使用できるとする配偶者短期居住権が定められた(改正後民法1037条)。
〔検証〕適時開示からみた企業実態 【事例40】日本郵政株式会社「特別調査委員会の設置について」(2019.7.24)
今回取り上げる適時開示は、日本郵政株式会社(以下、「日本郵政」という)が2019年7月24日に開示した「特別調査委員会の設置について」である。
子会社である株式会社かんぽ生命保険(以下、「かんぽ生命」という)と日本郵便株式会社における不適切な保険販売(以下、「かんぽ不正」という)について、「事案の徹底解明と原因究明を中立・公正な外部専門家に委ねるため」、利害関係を有しない弁護士3名で構成される特別調査委員会を設置したというのだが、日本郵政のこれまでの情報開示に対する姿勢などを見ていると、信じていいのか悩ましくなってしまうのである。
組織再編時に必要な労務基礎知識Q&A 【Q22】「会社分割により承継会社に承継された者には、どの就業規則が適用されるのか」
【Q22】
会社分割により承継会社に承継された者には、どの就業規則が適用されるのか
M&Aに必要なデューデリジェンスの基本と実務 「むすびに代えて」~「財務・税務と法務との対話と協働」再び~(後編:「『損害』とは何か」を弁護士と会計士が考える)
X社はZ社の発行済全株式をY社から買収することを検討しており、財務・税務アドバイザーとして外部の公認会計士を、法務アドバイザーとして外部の弁護士を起用した。
両事務所はそれぞれZ社の財務・税務デューデリジェンス/法務デューデリジェンスを実施、X社に報告を済ませ、石毛先生が株式譲渡契約書をドラフトしてY社との条件交渉に入ろうという段階である。
松澤先生からもらった宿題に答えるため、高橋氏と石毛先生は松澤先生の事務所を訪れた。
中小企業経営者の[老後資金]を構築するポイント 【第18回】「M&Aによる第三者への承継」
中小企業経営者の事業承継の手法として、前回まで、①親族内承継(自社株の贈与や譲渡)、②親族外承継(自社株を自社の役員・従業員が購入(MBOやEBO))について、老後資金確保の観点から見てきた。今回は全くの第三者への事業承継であるM&A(Mergers and Acquisitions)について確認したい。
M&Aとは「企業の合併・買収」を意味し、具体的には経営者が持つ自社株を第三者に売却し経営権を引き渡すことである。つい先日も、アパレルのオンラインショップ大手の有名経営者がIT企業に自社の株式を譲渡したが、まさにM&Aの一形態といえる。
税務争訟に必要な法曹マインドと裁判の常識 【第11回】「法曹マインドを踏まえた税務争訟における留意点」
前回でも触れたとおり、税務訴訟において当事者双方の主張の根拠となる資料等の収集は、税務調査の段階で、その大半が完結することになる。
この点を踏まえると、税務調査終了段階で税務争訟に移行するかどうかの検討を行うにあたって、まず行うべきは、納税者側及び課税庁側の言い分を対比し、手持ちの資料を突き合わせるなどして、「その時点における争点」を明確化するとともに、その優劣を冷静に比較することである。
〔“もしも”のために知っておく〕中小企業の情報管理と法的責任 【第19回】「営業秘密を取引先に開示する場合の情報漏えいの防止策」
-Question-
他社と取引を始めるに際し、当社の製造上・営業上のノウハウが記載された書類を開示することになりました。
取引先によるこれらの情報の漏えいや不正な利用を防ぐためには、会社として、どのような方策が考えられるでしょうか。
「働き方改革」でどうなる? 中小企業の労務ポイント 【第9回】「『女性』と『シニア層』が生き生きと働ける職場づくり」
ご存知の通り、わが国の人口はすでに減少し始めています。総務省統計局によれば、2010年10月1日現在の日本の人口は1億2,805万人でしたが、2019年9月1日現在(概算値)では1億2,615万人となっており、190万人も減少しています。
一方、総人口は減少している中で、増えているのが「高齢者(65歳以上)人口」と「労働力人口」です。
「高齢者人口」は、2019年9月15日現在、3,588万人と前年(3,556万人)に比べ32万人増加し、総人口に占める割合は28.4%と、前年(28.1%)に比べ0.3ポイント上昇し、人口、割合ともに過去最高となりました。それに伴って、高齢者の就業者も増加しています。2004年以降、15年連続で増加し、2018年の高齢者の就業者は、862万人と過去最多となっています(総務省統計局「統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-」)。
