事例でわかる[事業承継対策]解決へのヒント 【第64回】「合同会社の事業承継における留意点」
私は、電子部品の製造・販売を行っているX社(上場会社)の社長です。X社の株式については、資産管理会社所有分を含めて4%(内訳:個人2%、資産管理会社2%)所有しています。
10年ほど前に、X社が株主還元を目的に自己株式取得を進め、その自己株式を消却したことをきっかけに、私のX社株式の所有比率が3%以上となりました。そのため、X社からの配当金が総合課税になることを避けるため、私個人で所有しているX社株式の一部を資産管理会社へ現物出資しました。
現物出資財産であるX社株式の時価が10億円でしたので、設立時の登録免許税を節約するため、資産管理会社の会社形態を合同会社とし、現在も私1人が社員である合同会社の運営を行っています。
私には2人の子供がいるため、合同会社の持分を2人の子供に承継させたいと考えていますが、承継にあたり、合同会社のままでよいのか、株式会社へ組織変更した方がよいのか悩んでいます。その選択にあたっての留意点をご教示ください。
monthly TAX views -No.138-「年金財政検証、正面から議論する政権の誕生を期待する」
7月3日、5年に1度の年金の財政検証結果が公表された。「公的年金の長期にわたる財政の健全性を定期的にチェック」することにより、制度の持続可能性を担保する目的で行われているものだ。あわせて、2025年に予定されている年金制度改正の項目や政策効果も示された。
令和6年度税制改正における『グループ通算制度』改正事項の解説 【第4回】
交際費等の損金不算入制度について、次の措置を講じた上、その適用期限が3年(令和9年3月31日までの間に開始する事業年度まで)延長されている(新措法61の4①、令6改所法等附1、38)。
なお、下記①の改正は、その法人の決算日に関係なく、令和6年4月1日以後に支出する飲食費について適用される(令6改措令附1、16)。
法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例65】「公益法人等が普通法人に移行した後有価証券を譲渡した場合における当該有価証券の取得価額」
私は、九州地方のある県庁所在地に本拠を置く一般財団法人において、理事長補佐を務めております。当法人は、もともとある地元の事業家が成した財産を元手に美術品を管理する目的で設立された財団法人(法人税法上は公益法人等)でしたが、いわゆる公益法人制度改革により、約10年前に一般財団法人(法人税法上は非営利型法人ではなく普通法人扱い)に移行しております。
財団法人は一般に、財産の集合体と捉えられ、設立者から拠出された財産を管理運用する目的で運営されていますが、当法人も現金預金ばかりでなく、有価証券や不動産を相当数所有しており、その効果的な運用も常に重要な任務となっております。中でも有価証券への投資はリスクもあり相当慎重に行ってきたところですが、金融機関出身者が理事に就任してからは、その者が専門知識を生かして堅調な投資実績を上げてきており、ひとまず安心といったところです。
ところが、先日、当法人が設立後初めて受けた税務調査で過年度の有価証券への投資が問題となり、困惑しております。すなわち、一般財団法人に移行する前から所有していた有価証券の一部を移行後に譲渡したのですが、その際の譲渡原価の額及び譲渡損益が当法人の申告内容と異なるというのです。
租税争訟レポート 【第74回】「所得税等の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分取消請求事件~裁判上の和解に基づき支払いを受けた金員の非課税所得該当性(国税不服審判所令和4年12月13日裁決)」
本件は、請求人が勤務先であったA社から裁判上の和解に基づき支払を受けた金員について、原処分庁が、当該金員のうち未払賃金相当額以外の金員につき、未払賃金に対する遅延損害金に相当する金員は雑所得に、残余の金員は一時所得に該当するとして所得税等の更正処分等を行ったのに対し、請求人が、未払賃金相当額以外の金員は非課税所得である旨主張して、その一部の取消しを求めた事案である。
〈判例・裁決例からみた〉国際税務Q&A 【第43回】「外国法人の代理人PE認定」
平成30年度の税制改正により、代理人PEの範囲から注文取得代理人の規定が削除されましたが、同改正後は、注文取得代理人は代理人PEの範囲から完全に除外されるのでしょうか。
暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第48回】
上記「web3ホワイトペーパー2024」は、web3のマスアダプションの文脈において、米国でビットコインETFが承認され、これまで以上に幅広い投資家が暗号資産に投資するようになったと説明している(3~4頁)。また、税制との関係では、「個人が保有する暗号資産に対する所得課税の見直し」の項目において、次のような問題が存在することを指摘している。
〈事例から理解する〉税法上の不確定概念の具体的な判断基準 【第20回】「推計課税に求められる「必要性」と「合理性」」
本件調査において、調査担当職員は、請求人に対し、再三にわたり帳簿等を提示するよう求めたにもかかわらず、請求人は様々な理由を付けてこれを拒否したものである。(略)これらによれば、調査担当職員は、本件調査によるも、請求人の事業所得の金額について実額で把握するに足りる資料を得られなかったものと認められるから、推計の必要性を肯定することができる。
《速報解説》 大阪国税局、DC制度への移行に伴い同制度の資格得喪者(移行月の退職者)に対して支払われるDB制度の終了に伴う分配金の退職所得該当性を示した文書回答事例を公表
大阪国税局は、令和6年6月20日付(ホームページ掲載日は令和6年7月17日)で文書回答事例「確定拠出年金制度への移行に伴い同制度の資格得喪者(移行月の退職者)に対して支払われる確定給付企業年金制度の終了に伴う分配金の退職所得該当性について」を公表した。
谷口教授と学ぶ「税法基本判例」 【第40回】「青色更正の理由附記に関する判例法理」-最判昭和38年5月31日民集17巻4号617頁の「原理論」及び「技術論」とその後の展開-
租税法律主義は法律に基づく課税を命じるが、憲法における適正手続の保障(13条、31条)の税法における具体化として課税の手続が適正なものであることを要請する。この要請を手続的保障原則(金子宏『租税法〔第24版〕』(弘文堂・2021年)87頁、拙著『税法基本講義〔第7版〕』(弘文堂・2021年)【27】等参照)というが、これは課税処分の手続についても妥当する。