〔令和5年度税制改正における〕電子帳簿等保存制度の見直し 【追補】
国税庁は、令和5年6月30日に「「電子帳簿保存法取扱通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)」及び「電子帳簿保存法一問一答(Q&A)」(以下「一問一答」という)の更新等を公表した。
本稿では、電子帳簿保存法に関する令和5年度税制改正に伴い整備された上記の改正通達及び一問一答の内容について解説する。
法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例55】「従業員に対する賞与の損金算入時期」
私は、近畿地方のある県庁所在地において、主として旅行者向けの土産物店や飲食店を営む株式会社X(資本金5,000万円で3月決算)に勤務し、現在総務部長を務めている者です。2020年以来のコロナ禍で、わが社がターゲットとするインバウンドの旅行客は激減し、一時は廃業やむなしという瀬戸際まで追い込まれました。そのため、インバウンド一本やりの経営戦略を改め、国内客の取り込みも必死になって行うとともに、政府の様々な支援策や社長の必死の資金策によりどうにかこうにかこの度の経営危機を乗り切り、今年は国内客のみならずインバウンドの旅行客もだいぶ戻ってきたため、お陰様で何とか一息つくことができました。
金融・投資商品の税務Q&A 【Q82】「信託型ストックオプションの行使により取得した株式の譲渡」
私(居住者たる個人)は、勤務先(上場企業)が信託会社を通じてストックオプションを付与する制度(いわゆる、信託型ストックオプション)を導入しているため、この制度に基づいてストックオプションを取得しました。今年、このストックオプションを行使して株式を取得し、市場で売却しましたが、この場合、確定申告が必要でしょうか。
なお、この株式は国内証券会社の一般口座に預けられています。
暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第25回】
平成31年3月14日の参議院財政金融委員会において、藤巻健史議員は、国税庁の見解を前提にすると議論すべきは暗号資産の譲渡による所得に関して、「要するに値上がり益があるか値下がり損があるかということ、要するにキャピタルゲインがあるかどうかの判断だというふうに思っていますけれども、キャピタルゲイン、私はキャピタルゲインだと思」うと述べた上で、諸外国の税制がキャピタルゲインとして認識しているのか否かを確認する質問を行った後、要旨次のような発言をしている。
〈判例・裁決例からみた〉国際税務Q&A 【第33回】「租税負担割合の計算における課税標準外所得金額の意義」
外国子会社合算税制において、外国関係会社の租税負担割合を計算する場合に、課税標準外所得金額を分母に加算する趣旨はどのようなものでしょうか。
〈事例から理解する〉税法上の不確定概念の具体的な判断基準 【第9回】「国税通則法第68条第1項の重加算税が賦課される「納税者」の範囲」
① 専務取締役は株式会社である審査請求人(請求人)に採用され、課長、部長、常務取締役を経て現職に就いている。
② 専務取締役は、その知人の経営する会社に架空の請求書を発行させること及び請求人の外注先に代金を水増しした請求書を発行させることにより、請求人の経理担当者に当該請求額が正規の請求額であると誤信させて支払処理をさせる方法により、請求人から各取引先を経由して各金員(本件各金員)を詐取した。
③ 請求人は、本件各金員を損金の額に算入して(課税仕入れの支払い対価の額に含めて)法人税等及び消費税等の申告をした。
④ 請求人は、税務調査を受け、損金の額(課税仕入れの支払い対価の額)から本件各金員を減額して修正申告をした。
⑤ 原処分庁は重加算税の賦課決定処分をして、請求人は過少申告加算税を超える部分を不服として審査請求した。
《速報解説》 国税庁、インボイス制度開始を前に2割特例適用時の申告書の手引きを公表~記載不要な欄も明示~
インボイス制度開始まで1ヶ月を切った9月1日付、国税庁は「消費税及び地方消費税の確定申告の手引き(2割特例用)」を公表、2割特例適用時の申告書及び付表の書き方について周知を図っている(内容は個人事業者・法人に共通)。
谷口教授と学ぶ「税法基本判例」 【第29回】「課税処分の後発的違法と不当利得の成否」-「未必所得」課税額不当利得返還請求事件・最判昭和49年3月8日民集28巻2号186頁-
前回は、納税義務の成立要件としての課税要件のうち帰属(課税物件の人的帰属)の意義とこれに係る課税処分の過誤に関する判例を検討したが、今回は、納税義務の消滅原因(拙著『税法基本講義〔第7版〕』(弘文堂・2021年)【104】)の1つである還付金等の充当(同【116】)の前提として整理した還付金等の意義(同【115】)に関連して、過納金相当額の不当利得の返還を認めた判例を取り上げ検討することにする。
Q&Aでわかる〈判断に迷いやすい〉非上場株式の評価 【第29回】「〔第2表〕株式等保有特定会社の判定の留意点」
A社、B社、C社及びD社における株式の相続税評価額の計算において、それぞれA社及びB社については直前期末方式を採用し、C社及びD社については仮決算方式を採用した場合には、下記の通り株式等保有割合が50%未満となり、株式等保有特定会社に該当せず、一般の評価会社として評価することができますか。
なお、いずれの会社も株式等特定会社以外の特定の評価会社には該当しないものとします。
「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例125(贈与税)】 「相続開始直前の贈与につき、相続財産が基礎控除以下であったため、相続時精算課税で申告を行っていれば、贈与税の負担はなかったにもかかわらず、暦年課税で申告したため、負担が発生してしまった事例」
令和X年に依頼者は実母から2,000万円の贈与を受けたが、翌年3月に実母が死亡した。税理士は実母に相続税額が発生するものと思い込み、支払った贈与税は相続税から控除される旨の説明を行い暦年課税で贈与税申告を行った。しかし、実際には2,000万円を生前贈与加算しても相続財産は基礎控除以下であったため、贈与税額控除が受けられなかった。これにより、2,000万円の生前贈与について相続時精算課税で申告を行っていれば、そもそも贈与税額の負担はなかったとして、暦年課税により納付した贈与税額につき損害賠償請求を受けた。