租税争訟レポート 【第69回】「税理士損害賠償請求事件~賠償額制限条項適用の有無(福岡地方裁判所令和5年6月21日判決)」
本件は、原告代表者が100%出資して平成27年2月16日に設立した、国内外の企業に対する経営コンサルティング事業、遊漁船の経営等を目的とする資本金300万円の株式会社である原告が、税理士である被告に消費税及び法人税の申告に関する事務処理を委任し、被告の指導・助言に従って4事業年度にわたり消費税の申告をしたところ、①課税事業者を選択した方が原告に有利であったのに免税事業者としたこと及び②本則課税のままであった方が原告に有利であったのに簡易課税事業者を選択したことにより、納付する必要のない消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という)を納めることになり、消費税等の還付を受けることができたのにこれを受けられなかったなどと主張して、被告に対し、民法415条の債務不履行又は同法709条の不法行為に基づき、損害賠償金合計605万3,951円及びこれに対する令和元年6月19日(催告日の翌日)から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第91回】「冷凍倉庫事件」~最判平成22年6月3日(民集64巻4号1010頁)~
固定資産の価格を過大に決定されたことによって損害を被った納税者が、地方税法432条1項本文に基づく審査の申出・同法434条1項に基づく取消訴訟等の手続を経ていない場合において、国家賠償請求により損害賠償請求をすることができるか。
monthly TAX views -No.128-「大型経済対策がインフレタックスを加速させる」
岸田首相は9月26日、10月中に経済対策をとりまとめるよう指示するとともに、「成長の成果である税収増を国民に適切に還元すべきだ」と語った。現在生じている税収増は本当に「成長の成果」といえるものなのか、検証してみたい。
法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例56】「有価証券評価損の誤計上に対する減額更正に係る嘆願書の効力」
私は、中部地方の政令指定都市に隣接する市において、主として光学医療機器の製造・販売を行う株式会社X(資本金30億円で3月決算)に勤務し、現在経理部長を務めている者です。医療機器は、分野によって異なりますが、海外の製品が強い分野があったり、逆にわが国のメーカーが強い分野があったりと様々な状況といえますが、わが社が扱う光学医療機器(医用光学機械)は、比較的わが国のメーカーが強い分野ではないかと思われます。そのため、わが社もこれまで順調に利益を計上し内部留保を積み上げてきましたが、その再投資先として同業ないし隣接する分野の他社の株式(いずれも上場企業)を購入してきたという経営トップの意思決定は、結果としてみれば、あまり適切ではなかったように思われます。
〈事例から理解する〉税法上の不確定概念の具体的な判断基準 【第10回】「所得税基本通達2-47に定める「生計を一にする」の判定」
① 審査請求人(請求人)は、平成23年8月に死亡した被相続人の子であり唯一の相続人である。
② 被相続人は昭和24年にA市B区C丁目24番25に住所を定め、以後、死亡まで住民票上の住所に異動はなかった。
③ 請求人及び被相続人は平成4年12月までは、被相続人の居宅に同居していたが、請求人は同日A市C区内に転居し、他方、被相続人は同日以降も引き続き同人の居宅に単身で居住した。
④ 請求人は、平成8年7月、被相続人の配偶者の死亡により相続(持分2分の1・他の2分の1は被相続人が相続)したA市B区C丁目21番3の宅地(本件宅地)上に居宅を建築し、同地に住所を定め、以後、被相続人の相続開始日まで住所に異動はなかった。
⑤ 被相続人の相続税申告において、請求人が取得した本件宅地の被相続人持分につき、小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)を適用した。
⑥ 原処分庁は、請求人に小規模宅地等の特例の適用はない等の理由により更正処分をした。
金融・投資商品の税務Q&A 【Q83】「付与契約の内容を変更した税制適格ストックオプションの行使により取得した株式の譲渡」
私(居住者たる個人)は、勤務先(上場を目指すスタートアップ企業)から税制適格ストックオプションを付与されていますが、今般、2023年8月に、当該ストックオプションに係る契約を変更して権利行使価額を引き下げると聞きました。引下げ後の権利行使価額に基づいて当該ストックオプションを行使したことにより取得する株式を、上場後に譲渡する際に留意することはありますか。
暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第27回】
暗号資産について、資金決済法上、代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる財産的価値と規定されていることや、消費税法上も支払手段に類するものとして位置付けられていること自体はそのとおりであるが、いくつか指摘しておくべきことがある。
〈判例・裁決例からみた〉国際税務Q&A 【第34回】「外国関係会社の課税対象金額の意義」
外国子会社合算税制において、内国法人の所得の金額の計算上益金に算入される外国関係会社の課税対象金額は、平成17年度の税制改正において、その内国法人が有する請求権の内容を勘案した数又は金額を用いて算定されるとされ、いわゆる持株基準割合から、利益持分割合に応じて合算されることとなりましたが、その改正の趣旨はどのようなものでしょうか。
谷口教授と学ぶ「税法基本判例」 【第30回】「誤還付「過納金」相当額の「納付」に係る延滞税の賦課と課税上の衡平」-延滞税不発生事件・最判平成26年12月12日訟月61巻5号1073頁-
本件は、納税者(上告人ら)が相続税の期限内申告及び納付をした後で更正の請求をしたところ、所轄税務署長において、相続財産(土地)の評価の誤りを理由に減額更正をし、その減額分相当額を過納金として還付した後、自ら当該減額更正の内容を覆しこれに係る相続財産の評価の誤りを理由に増額更正を行い、これにより「新たに」納付すべきこととなった本税額につき、平成28年度税制改正前の国税通則法60条1項2号、2項及び61条1項1号に基づき、法定納期限の翌日から完納の日までの期間に係る延滞税の納付の催告をしたことから、納税者が国(被上告人)を相手に、上記の延滞税は発生していないとして、その納付義務がないことの確認を求めた事件である。