〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第54回】「シンガポール居住者該当性訴訟(地判令1.5.30、高判令1.11.27)(その1)」~旧所得税法2条1項5号、5条1項、2項、同法施行令14条1項2号~
X(原告・被控訴人)は、所得税法(平成25年法律第5号による改正前のもの)2条1項5号の「非居住者」に該当するとの認識の下、平成21年分から平成24年分までの所得について日本では申告を行わず、シンガポールの居住者として同国で所得税の申告を行っていたところ、所轄税務署長から同項3号の「居住者」に該当するとして、期限後申告を勧奨されたため、期限後申告を行ったうえで平成23年及び平成24年分の所得税につき更正の請求をしたが認められず、本件各年分の所得税の無申告加算税に係る各賦課決定処分を受けたため、その取消しを求めた。
酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第135回】「消費税の性質論(その3)」
すなわち、消費税は転嫁が予定されている租税であるということ、そのことと、実際に転嫁がなされるかどうかという点は別問題であることが判然とした。本件判決はその点を指摘したものと位置付けることができよう。
他方で、転嫁が予定されていることの根拠を探ってきたが、それはあくまでも税制改革法であり、消費税転嫁対策特別措置法であった。別言すれば、消費税法そのものに転嫁が規定されているわけではないということも可能であろう。
谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第30回】「国税通則法74条の11(~74条の13の4)・74条の14」-調査終了の際の手続における信頼保護効果と理由附記「セット論」-
前回は、平成23年度[11月]税制改正による税務調査(質問検査)手続の改正のうち事前通知手続について検討したが、今回は、事前通知手続と並んであるいはこれとの関連において(事前通知事項の事後通知については前回3参照)同改正の重要事項である調査終了の際の手続(税通74条の11)について検討することにする。
国際課税レポート 【第6回】「国際的な視点から見た金融所得課税の論点」
この指摘は、現在のグローバルな議論の潮流や実態と整合的なのだろうか。あるいは、金融所得を軽課税すべき理由として説得的なのだろうか。以下では、金融所得課税をめぐるいくつかの論点について、Q&A形式で整理を試みることとしたい。
〈適切な判断を導くための〉消費税実務Q&A 【第1回】「受注した者と商品を発送した者が異なる場合の輸出免税の適用」
当社(A社)は日用雑貨等の輸出業を営んでいます。外国法人(B社)から紙おむつパックの注文を受けましたが、紙おむつパックの取扱いについては同業者であるC社が得意とするところであったので、商品の仕入れから発送まですべてをC社に依頼しました。
なお、書類の名義や保存者、お金の流れは次のとおりです。
Q&Aでわかる〈判断に迷いやすい〉非上場株式の評価 【第46回】「〔第5表〕直前期末から課税時期までの間に土地の売買契約をした場合の資産の部の計上金額の留意点」
経営者甲(令和6年8月1日相続開始)が100%所有している甲株式会社の株式を長男が相続していますが、甲株式会社の資産の中に駐車場として賃貸していたA土地があります。A土地につき令和6年5月1日に売買契約を締結し、同日に10,000千円の手付金を受領し、令和6年10月1日に引渡しを行っています。
さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第100回】「国際興業管理事件」~最判令和3年3月11日(民集75巻3号418頁)~
内国法人X社は、平成24年4月1日から平成25年3月31日までの事業年度において、外国子会社A社(X社がその出資持分の全部を保有)から、資本剰余金及び利益剰余金を原資とする剰余金の配当を受けた(本件配当)。X社は、このうち資本剰余金を原資とする部分(本件資本配当)は法人税法24条1項3号(当時。以下同様)の資本の払戻しに、利益剰余金を原資とする部分(本件利益配当)は同法23条1項1号の剰余金の配当にそれぞれ該当するとして、本件連結事業年度の法人税の連結確定申告をした。
monthly TAX views -No.139-「わが国でも「タックス・ギャップ」の本格的な議論を」
ギャップ」という言葉自体に対する定番の日本語訳が存在しないことが、その現状を物語っているといえよう。
法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例66】「中古資産を事業の用に供した後においてその耐用年数を変更することの可否」
当社が保有する不動産は名古屋市内を中心に中部地方の県庁所在地や政令指定都市に立地しており、ここ数年は地価の上昇を背景に賃貸料についての値上げ交渉が可能となっているため、借入金利息の負担が依然重いものの、業績は持ち直しております。そんな中、先月から税務署の調査を受けており、当社が保有する賃貸物件(建物)の減価償却費について、議論のすれ違いが生じております。すなわち、当社が保有する建物の減価償却については、耐用年数を39年として定額法で計算しておりましたが、そのうち数棟は既存の建物を取得して賃貸物件として事業の用に供したことに気付いたことから、それ以後の事業年度については中古資産の耐用年数(簡便法)の適用により減価償却を行いました。
しかし、税務署の調査官は、中古資産の耐用年数の算定は、その中古資産を事業の用に供した事業年度において行うことができるものであり、その事業年度において耐用年数の算定をしなかったときは、その後の事業年度において耐用年数の算定をすることはできないと言い張っております。調査官の当該主張は不当であると考えるのですが、税法上はどのように考えるのでしょうか、教えてください。