「更正の予知」の実務と平成28年度税制改正【第4回】
更正の予知に関して、主に実地の調査を前提にこれまで説明してきたが、実地の調査以外の税務執行が実際にどのように行われ、これに伴って更正の予知がどのように取り扱われているか、理解しておくことも実務上重要である。
例えば、提出された申告書の計算内容、記載内容等に誤りがあるのではないかと考えられる場合、国税当局から納税者への働きかけは、「申告書に計算誤りがあると思われるので、見直してほしい(確認してほしい)」といったように、見直し要請・確認要請という「行政指導」として実際には幅広く行われている。
「更正の予知」の実務と平成28年度税制改正【第3回】
それでは、実務上、更正の予知はどのように取り扱われているだろうか。
この点に関し、国税庁では、平成12年7月3日付課法2-9ほか「法人税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて(事務運営指針)」(以下「法人税過少通達」という)を発遣・公表しているので(下記参照)、この法人税過少通達に基づいてその取扱いを説明していきたい。
包括的租税回避防止規定の理論と解釈 【第24回】「私法上の法律構成による否認論①」
本稿では、私法上の法律構成による否認論の概要について解説する。学術的には、前回までに解説した法的実質主義とは異なるため、租税法律主義に反する可能性があるという見解もあるが、真実の事実関係を捉えるという点に限定すれば、今後の実務においても生じてくる可能性のある論点である。
〈平成28年9月30日施行〉スキャナ保存制度の見直しについて
いよいよ、平成28年9月30日以後の申請分から、領収証等をスマホやデジカメにより撮影した画像データにより保存し原本書類を廃棄できるという「平成28年度改正によるスキャナ保存制度」がスタートする。
「更正の予知」の実務と平成28年度税制改正【第2回】
加算税に関する規定は条数も少なく、また計算規定でもあり、素っ気ない。それゆえ、更正の予知の取扱いを理解していく上では、その規定振り(文理)とともに、加算税や更正の予知の制度趣旨をまず理解することが不可欠であると思われる。
これまで数多くの裁判例でその趣旨が判示されており、これに関する研究もあるが、ここでは代表的と思われる裁判例について簡単に触れておきたい。
「更正の予知」の実務と平成28年度税制改正【第1回】
過少申告加算税、重加算税等の加算税は、延滞税や利子税とともに「附帯税」と称され(通則法60~69)、その名が示すとおり、法人税や所得税等の本税に附帯するものである。
加算税は、法人税等の本税ほどその取扱いが問題となることはないものの、修正申告、更正、税務調査といった場面で、加算税固有の疑義が生ずることがある。
本稿の主題である「更正の予知」は、修正申告書提出に伴う過少申告加算税について、例外的にこれを免除する取扱いである。
~税務争訟における判断の分水嶺~課税庁(審理室・訟務官室)の判決情報等掲載事例から 【第10回】「調査期間中に修正申告書を提出したが、更正があるべきことを予知してされたものではないとして加算税賦課決定処分が取り消された事例」
原告の法人(X社)は、米国の100%子会社で半導体基盤の製造及び設計開発等を主な事業としている。X社は、機械及び装置の増加償却の特例の適用要件である増加償却の「届出書」(本件届出書)を提出していないにもかかわらず、増加償却の特例の適用があるものとして法人税の申告書を提出した。
延滞税の除算期間に係る計算期間の特例の見直しについて~最高裁判決を受けた平成28年度税制改正事項~
延滞税は、法定納期限までに国税が完納されなかったときに、未納額及び遅延期間に応じて課されるものであるが(通法60)、長期間に遡って更正処分がされた場合等は、延滞税の計算期間から一定期間を除くこととされている(通法61)。
これが、いわゆる「除算期間」(計算期間の特例)である。
改正国税通則法と新たな不服申立制度のポイント 【第5回】「現在の審判所における取消裁決の傾向、効果的な主張、立証の在り方」
ここまで4回にわたり、今般の通則法の改正のうち重要と思われる点について解説をしてきた。とはいえ、本改正については、証拠の閲覧権限の拡大等、いくつか注目すべき改正点はあるものの、課税処分を行うのは税務署、国税局であり、審査請求を審理するのは審判所であるという基本構造は変わらないので、新通則法の下においても、納税者として行うべき効果的な防御方法に大きな変化はないと思われる。
