租税争訟レポート 【第15回】従業員による横領と法人に対する重加算税〔納税者勝訴〕
本件は、処分行政庁が、原告に対し平成12年5月1日から平成18年4月30日までの6年間にわたる各事業年度の間に、原告の従業員が関係業者からリベートとして受領していた手数料合計9,786万3,000円のうち、
(1) 平成13年4月期において609万9,000円を総勘定元帳の雑収入科目に計上しなかったとして、青色申告承認の取消処分を行い、
(2) 各事業年度において、本件手数料に係る収益を益金の額に算入せず法人税を申告し、
(3) 各事業年度に対応する各課税期間において、本件手数料を課税資産の譲渡の対価の額に算入せずに消費税等を申告した上、
(4) 本件手数料に係る収益を益金の額に算入せず、原告に属する手数料を費消して横領した従業員に対する損害賠償請求権の額を課税資産の譲渡等の対価の額に算入せずに隠ぺい又は仮装したとして更正処分及び各重加算税の賦課決定処分を行った
ところ、原告が、これらの収益は従業員個人に帰属するものであって、隠ぺい仮装を行った事実もないと主張して各処分の取消しを求めたという事案である。
小説 『法人課税第三部門にて。』 【第22話】「建設会社の税務調査(その1)」─不審─
渕崎統括官は少し苛々しながら、壁に掛かっている時計を見た。
午後6時を少しまわっている。
「遅いなあ・・・」
椅子に座りながら、呟く。
田村上席と山口調査官は、税務調査からまだ帰ってこない。
今日は2人で、河内税務署管内にある内藤建設の調査に出かけている。
〈平成26年1月から適用〉延滞税等に関する改正事項のおさらい
延滞税及び利子税(以下「延滞税等」という)は、滞納を防止し、期限内に納付した納税者との間の税負担の公平を確保する観点から設けられたもので、債務不履行に対する遅延利息的なものである。
その延滞税及び利子税について、平成25年度税制改正により、平成11年度の税制改正以来、14年ぶりの税率引下げが行われた。併せて国からの還付金等に付される還付加算金についても引下げが行われ、地方税の延滞金、還付加算金についても同様の措置がとられる。今回の改正の背景には、低金利の時勢や納税者の負担軽減という狙いがある。
小説 『法人課税第三部門にて。』 【第21話】「退職した税務職員の再任用制度」
「そうか・・・蔵本さんも今年が定年で、退職されたのか・・・」
渕崎統括官が椅子にもたれながら、「定期人事異動速報」を見ている。
蔵本は統括官で、この7月の人事異動で退職している。
小説 『法人課税第三部門にて。』 【第20話】「調査の終了の際の手続に関する納税義務者の同意書」
「この「同意書」を提出していなかったので・・・」
山口調査官は、渕崎統括官に説明する。
山口調査官の右手には、「調査の終了の際の手続に関する納税義務者の同意書」がある。
「そうか・・・それは仕方ないな」
小説 『法人課税第三部門にて。』 【第19話】「印紙税の税務調査と『印紙税不納付事実申出書』」
「『印紙税不納付事実申出書』って、一体何なのですか?」
山口調査官はいきなり大きな声で、田村上席に質問を投げかけた。
小説 『法人課税第三部門にて。』 【第18話】「行政指導か、税務調査か」
「おい、君は一体、どう言ったんだ!」
渕崎統括官は、少し声を荒げる。
調査選定をしている山口調査官は目を丸くして、渕崎統括官の声に驚く。
小説 『法人課税第三部門にて。』 【第17話】「源泉徴収に係る所得税の調査(その3)」
「ということは・・・」
山口調査官は、少し考えながら、言葉を続けた。
「・・・もし、支給者である徴収義務者が受給者に対して源泉所得税を徴収しなかった場合でも、受給者は、本来支払うべき源泉所得税を、確定申告から控除をすることができるんですね」
山口調査官は、田村上席の顔を見て、確認する。
〔書面添付を活かした〕税務調査を受けないためのポイント 【第4回】「書面添付を円滑に実施するためのクライアント・事務所(スタッフ)運営」
これまで3回にわたり、書面添付制度により税務調査を回避しうること、また、そのための具体的な準備について考察してきた。
結果として、納税者であるクライアント(顧客)と適切なコミュニケーションをとりつつ、きちんとした会計指導や税務処理指導を行い適切な添付書面を記載することが、「税務調査が来ない企業」にする方法であることがご理解いただけたものと思われる。
ここで、様々なクライアント(税理士の顧客である納税者)を抱えている場合に、どのようにしてクライアントをそのレベルまで持っていくか、また、書面添付実務を円滑化するために事務所スタッフをどのように指導するかを考察する。
租税争訟レポート 【第14回】理由附記の不備による課税処分の取消し
納税者である控訴人(第1審原告)は、東大阪市が全額寄附をし、大阪府から設立許可を受けて設立された財団法人(公益法人等に該当する)であり、処分行政庁から法人税の青色申告の承認を受けている。
控訴人は、その行う事業を、公益事業会計及び収益事業会計の2つの事業に区分して経理しており、本件各事業年度において、収益事業会計として区分していた事業のみを法人税法2条13号に規定する収益事業に該当するとして、本件各事業年度の法人税の確定申告をした。
処分行政庁は、控訴人が営む事業のうち、公益事業会計に区分して経理していた事業についても収益事業に該当するとして、平成19年11月28日付けで、控訴人に対し、各更正処分及び各過少申告加算税賦課決定処分をした。
控訴人は、本件各更正処分等を不服として、異議申立て、審査請求を経て、平成21年11月5日、本訴を提起した。