租税争訟レポート 【第13回】非課税貯蓄申込書の受付義務と損害賠償
本件は、障害者手帳の交付を受ける原告が、被告株式会社A銀行(以下「被告銀行」という)B支店に定期預金の預入をした際、所得税法10条所定の非課税貯蓄申込書等を郵送したところ、被告銀行が郵送による受付はしないとしてこれを返却したため、定期預金の利子所得について所得税及び地方税の課税を受けた等と主張し、被告銀行に対し債務不履行責任又は不法行為責任に基づき、被告国に対し国家賠償法上の賠償責任に基づき、被告埼玉県に対し同法上の賠償責任に基づき、課税額相当損害金38円及び慰謝料10万円の連帯支払を求める事案である。
〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載31〕 合併に係る個人株主の課税関係
私が株主となっているA社がB社に吸収合併されることになりました。
この場合の所得税の課税関係を教えてください。
酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第2回】「馬券訴訟(その2)」~一時所得・雑所得の判定要件~
前回に事案の概略を紹介したとおり、馬券収入が一時所得に該当するとするY(国側)と雑所得に該当するとするX(納税者側)との間で争われたのであるが、国税不服審判所は一時所得に該当するとのYの主張を妥当と判断している。
ここでの問題点は、一時所得に該当することになると、所得金額の計算上控除することができるのが「その収入を得るために支出した金額」とされ、その金額が、「その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る」と限定されることにある。
すなわち、仮に、Xが主張するように雑所得に該当するのであれば、その必要経費が控除できることになるところから、その場合にははずれ馬券も控除の対象となり得るという大きな違いが生じるのである。
酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第1回】「馬券訴訟」
個人が得た競馬の馬券の払戻金に対しては所得税が課されることとなるが、その際の所得区分が争点となっている事案が注目を集めている。ここでは、札幌国税不服審判所平成24年6月27日裁決(札裁(所)平成23第9号)を取り上げてみたい。
裁決では、納税者の主張する雑所得ではなく一時所得に該当するとの判断が示されているが、その判断の妥当性について考えてみたい。まずは、事案の概要と国税不服審判所の裁決内容を紹介しよう。
租税争訟レポート 【第11回】配偶者が受給する年金から特別徴収された介護保険料(所得税更正処分取消請求事件)
原告と生計を一にしている原告の配偶者は、平成18年においてその受給する国民年金(老齢基礎年金)の中から介護保険料4万6,600円を特別徴収の方法により徴収された。
原告は、平成19年2月26日、「社会保険料控除」の欄に、配偶者が特別徴収された介護保険料を含めた額である「33万5,400円」と記入した申告書を提出した。
西宮税務署長は、原告の平成18年分の所得税につき、社会保険料控除の額は、前記の確定申告における33万5,400円から介護保険料4万6,600円を差し引いた28万8,800円が正しいとして、平成19年12月10日付けで、課税総所得金額54万8,000円、還付金の額に相当する税額3万4,882円とする更正処分を行った。
「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例3(所得税)】 「個人所有の賃貸建物を同族会社にサブリースしたところ、同族会社が受け取る管理料相当額が「著しく高額」として同族会社の行為計算の否認により更正処分を受けた事例」
平成20年から22年分の所得税につき、個人所有の賃貸建物を同族会社にサブリースしたところ、同族会社が受け取る管理料相当額が「著しく高額」として同族会社の行為計算の否認により更正処分を受けた。
税理士はこれを不服として、異議申立、審査請求を行ったが認められず、依頼者との相談によりこれを受け入れ、訴訟には持ち込まなかった。
これにより更正による追徴税額900万円につき損害が発生し、賠償請求を受けた。
〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載25〕 海外赴任中のストックオプションの権利行使と株式譲渡について
私は日本の上場企業に勤める会社員です。平成22年4月に、会社からシンガポールへの海外赴任を命ぜられ、現在も引き続きシンガポールに居住しています。
最近の日本の株高の傾向を受けて、下記のストックオプションを平成25年6月に権利行使しようと思っています。また、権利行使後、適当な時期にその取得した株式を譲渡しようと思っています。
この場合、私は、どのような課税関係になるのでしょうか。
いわゆる、税制適格ストックオプションの場合と税制非適格ストックオプションの場合について、教えてください。
租税争訟レポート 【第10回】勝馬投票券の払戻金に係る所得を雑所得と判断した事例
判決は、「被告人の本件馬券購入行為は、一般的な馬券購入行為と異なり、その回数、金額が極めて多数、多額に達しており、その態様も機械的、網羅的なものであり」、かつ、「利益を得ることに特化したものであって、実際にも多額の利益を生じさせている」ことから、被告人の馬券購入による所得は、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得」には該当しないから、一時所得に当たらず、雑所得に分類される」とした。
〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載18〕 海外子会社から受け取る役員退職金の取扱い
当社の代表取締役甲は、当社の100%海外子会社A社(A国)の社長も兼任していましたが、平成25年3月31日をもって、A社社長を退職することとなりました。
退職に際し、甲にはA社から500万円の役員退職金が支給され、A国の源泉所得税を差し引いた後の残額が甲の日本の銀行口座に送金されました。
海外子会社であるA社から受け取ったこの役員退職金について、日本における甲の所得税の課税関係はどうなるのでしょうか?
なお、甲は、3年5ヶ月間A社社長として勤めましたが、A国には常駐せず、月に1週間程度のA国への出張で仕事を行っていました。