収益認識会計基準と法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第35回】
既に述べたとおり(本連載第32回参照)、法人税法22条の2第3項は、2項の適用に当たり、確定決算収益経理要件を満たす効果を発揮するにすぎない。よって、異論はあるものの、法人税法22条の2第3項の適用がある場合でも、公正処理基準準拠要件をはじめとする2項の他の要件を同時に満たさない限り、申告調整により、資産の販売等に係る資産の引渡日又は役務提供日に近接する日の属する事業年度の益金の額に算入することは認められないと解される。
谷口教授と学ぶ「税法の基礎理論」 【第41回】「租税法律主義と租税回避との相克と調和」-不当性要件と経済的合理性基準(7)-
第37回から前回まで4回にわたって、ユニバーサルミュージック事件・東京地判令和元年6月27日(未公刊・裁判所ウェブサイト。以下「本件東京地判」という)が示した不当性要件の判断枠組み及びそこでの経済的合理性基準に係る判断を検討してきた。この判決は「極めて画期的な内容の判決」(太田洋「ユニバーサル・ミュージック事件東京地裁判決の分析と射程」租税研究844号(2020年)50頁、51頁)として注目を集めたが、本年6月24日に、結論は同じでも、一見すると「地裁が示した不当性要件の判断枠組みは否定した」(T&Amaster841号(2020年7月6日)4頁)ようにも思われる控訴審判決が、東京高裁で示された(未公刊。以下「本件東京高判」という)。
今回は、本件東京高判の判断枠組みについて、本件東京地判やヤフー事件・最判平成28年2月29日民集70巻2号242頁(以下「ヤフー事件最判」という)のそれと比較検討することによって、その意味内容を明らかにすることにしたい。
事例でわかる[事業承継対策]解決へのヒント 【第20回】「役員持株会を用いた対策の留意点」
このたび、来月行われる定時株主総会での任期満了をもって、取締役の1名(F氏)が退任することになりました。B社長は、これまで通り取締役会のメンバーで3分の2以上の株式を保有し続けたいと考えていますが、残る取締役4名がF氏の株式を取得すると議決権割合が15%以上となってしまうため、配当還元価額により株式を取得することができなくなると顧問税理士から指摘を受けました。
そこで、F氏の退任前に役員持株会を設立し、取締役5名の保有株式を役員持株会で保有する形に組み替えるアイデアが検討されています。F氏が当社の取締役を退任した後も役員持株会の会員として留まることができるように、役員持株会の会員資格を「K社の取締役及び元取締役」とし、当面の間、F氏に株式を保有し続けてもらう計画ですが、問題ないでしょうか。
令和2年度税制改正における『連結納税制度』改正事項の解説 【第7回】「「開始・加入・離脱に伴う時価評価と繰越欠損金の取扱い」「利益・損失の二重計上の防止措置」「地方税」」
グループ通算制度の開始・加入・離脱時において、一定の場合には、資産の時価評価や繰越欠損金の切り捨て等の制限が生じる。
Q&Aでわかる〈判断に迷いやすい〉非上場株式の評価 【第8回】「〔第1表の1〕医療法人の出資の評価方法」
同族関係者でない甲と乙が下記の通り、医療法人(出資額限度法人以外の持分ありの医療法人)の出資をしている場合において、乙に相続が発生した場合には、乙の相続人が承継する医療法人の出資の評価金額はいくらになるのでしょうか。
乙の相続人は乙の長男のみであり、乙の長男は医療法人の出資者たる地位を承継するものとします。
金融・投資商品の税務Q&A 【Q58】「航空機リース事業に係る投資損失の取扱い」
私(居住者たる個人)は航空機リース事業に投資を行っていますが、旅客ビジネスが不調となり、当初見込んでいた賃貸料収入が得られなくなる見込みです。
航空機リース事業で損失が生じた場合、どのような課税関係になるのでしょうか。
なお投資の形態には、機体を直接保有して賃貸しているものと、任意組合を通じて投資しているものがありますが、当該任意組合の業務執行には関与していません。
さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第62回】「デラウェア州LPS事件」~最判平成27年7月17日(民集69巻5号1253頁)~
Xは、A証券との間でファイナンシャル・アドバイザリー契約を締結し、アメリカに所在する不動産への投資事業に参加した。
まず、Xは、B銀行との間で信託契約を締結し、B銀行に資金を拠出した。B銀行は、デラウェア州有限責任会社との間で、当該州法に基づき、リミテッド・パートナーシップ契約(LPS契約)を締結し、リミテッド・パートナーシップ(LPS)を設立した。その際、Xが拠出した資金をもってLPSに資金拠出し、パートナーシップ持分を取得した。LPSは、建物を購入し、第三者に賃貸する事業を行った。
Xは、LPSの建物賃貸事業により生じた所得はXの不動産所得に該当するものとして、当該事業に基づく不動産所得の損失(減価償却等によるもの)を他の所得と損益通算の上、所得税の確定申告をした。これに対し、Y税務署長が、不動産所得該当性を否定し、損益通算はできないとして、Xにつき更正処分・過少申告加算税の賦課決定処分を行った。Xがこれを争ったのが本件である。
monthly TAX views -No.91-「国への信認確保のために現実的な財政目標を」
新型コロナ対策で2度の補正予算を組み、121兆円の財政支出を計上し、追加公債発行額は57兆円で、当初と合わせて90兆円の公債発行となった。今年度の国の財政収支は対GDP比で10%を超える大幅な赤字となる見通しだ。
コロナ禍という未曽有の危機への対応なのでやむを得ないのだが、これだけの財政赤字を抱えて、ひとたび国家への信認が失われば、インフレなどさらなる巨大リスクを生じかねず、それへの対策が必要である。
谷口教授と学ぶ「税法の基礎理論」 【第40回】「租税法律主義と租税回避との相克と調和」-不当性要件と経済的合理性基準(6)-
第37回以来、ユニバーサルミュージック事件・東京地判令和元年6月27日(未公刊・裁判所ウェブサイト。以下「本件東京地判」という)における不当性要件に関する同判決の判断枠組みを検討してきた。なお、そうこうしているうちに本年6月24日に控訴審判決が東京高裁で示されたが(T&Amaster841号(2020年7月6日)4頁参照)、この判決については次回検討することにする。