理由付記の不備をめぐる事例研究
【第15回】
「過大役員退職給与」
~役員退職給与が過大であると判断した理由は?~
中央大学大学院商学研究科 博士後期課程
(酒井克彦研究室所属)
泉 絢也
今回は、青色申告法人X社に対して、前代表取締役に対する役員退職給与の額が過大であるとして、その一部の損金算入を否認した法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた、静岡地裁昭和63年9月30日判決(判時1299号62頁。以下「本判決」という)を取り上げる。
1 更正通知書に記載された更正の理由(本件理由付記)
更正の理由
貴法人備え付けの帳簿書類を調査した結果、所得金額等の計算に誤りがあると認められますから次のように申告書に記載された所得金額等に加算して更正しました。
(過大役員退職給与の損金不算入 140,671,500円)
貴法人が×年×月×日に支給し損金の額に算入されました前代表取締役Mに対する役員退職給与の額2億7,269万1,500円は、貴法人と同種の事業を営み事業規模が類似すると認められる法人(類似法人)5社の役員に対する役員退職給与の支給状況(別表)に照らし、不相当に高額と認められます。
当該類似法人における功績倍率の平均は2.5、最低は1.0、最高は4.1であることから、最高の4.1によりMに対する退職給与の額を計算しますと下記のとおり1億3,202万円となりますので、これを超える部分1億4,067万1,500円は、法人税法34条2項の規定により損金の額に算入することができません。
退職給与適正額1億3,202万円=最終月額報酬140万円×勤続年数23年×功績倍率4.1倍
(別表 類似法人の役員に対する役員退職給与の支給状況)
(注) 素材とした本判決の判決文から読み取ることができる理由付記の一部を筆者が加工している。
この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員(プレミアム
会員又は一般会員)としてのログインが必要です。
通常、Profession Journalはプレミアム会員専用の閲覧サービスですので、プレミアム
会員のご登録をおすすめします。
プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。
プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。