公開日: 2019/04/11 (掲載号:No.314)
文字サイズ

収益認識会計基準と法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第1回】

筆者: 泉 絢也

第Ⅰ部 収益認識会計基準の概要

第Ⅰ部では、収益認識会計基準の内容を概観する。収益認識会計基準及び適用指針の詳細については、本誌掲載の他の解説を参照されたい。

1 目的と適用範囲

収益認識会計基準は、同基準第3項及び第4項の範囲に定める収益に関する会計処理及び開示について定めることを目的とする。かかる範囲に定める収益に関する会計処理については、「企業会計原則」に定めがあるが、本会計基準が優先して適用される(基準1)。収益認識会計基準の適用に当たっては、適用指針も参照する必要がある(基準2)。

収益認識会計基準は、次のものを除き、顧客との契約から生じる収益に関する会計処理及び開示に適用される(基準3)。

【収益認識会計基準の適用範囲から除かれる取引】

(1) 企業会計基準第10 号「金融商品に関する会計基準」の範囲に含まれる金融商品に係る取引

(2) 企業会計基準第13 号「リース取引に関する会計基準」の範囲に含まれるリース取引

(3) 保険法における定義を満たす保険契約

(4) 顧客又は潜在的な顧客への販売を容易にするために行われる同業他社との商品又は製品の交換取引(例えば、2つの企業の間で、異なる場所における顧客からの需要を適時に満たすために商品又は製品を交換する契約)

(5) 金融商品の組成又は取得に際して受け取る手数料

(6) 日本公認会計士協会 会計制度委員会報告第15号「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」の対象となる不動産(不動産信託受益権を含む)の譲渡

顧客との契約の一部が上記(1)から(6)に該当する場合には、上記(1)から(6)に適用される方法で処理する額を除いた取引価格について、収益認識会計基準を適用する(基準4)。

このほか、次の点に留意する。

  • 企業の通常の営業活動により生じたアウトプットではない固定資産の売却については、収益認識会計基準の適用範囲に含まれない(基準108)。
  • 他の会計基準と同様に、重要性が乏しい取引には、収益認識会計基準を適用しないことができる(基準101)。
  • 企業会計基準第15号「工事契約に関する会計基準」、企業会計基準適用指針第18号「工事契約に関する会計基準の適用指針」、 実務対応報告第17号「ソフトウェア取引の収益の会計処理に関する実務上の取扱い」は廃止。

 

2 基本原則と収益認識ステップ

本会計基準の基本となる原則は、次のとおりである(基準16)。

約束した財又はサービスの顧客への移転を当該財又はサービスと交換に企業が権利を得ると見込む対価の額で描写するように、収益を認識すること

理解を深めるために、あえて分解すると次のようになる。

この基本となる原則に従って収益を認識するために、次の5つのステップを適用する(基準17)。

ステップ1:顧客との契約の識別
本会計基準の定めは、顧客と合意し、かつ、所定の要件を満たす契約に適用する(基準17(1))。要するに、収益認識会計基準の適用対象となる契約を特定する。

※「契約」・・・法的な強制力のある権利及び義務を生じさせる複数の当事者間における取決め(基準5)。

※「顧客」・・・対価と交換に企業の通常の営業活動により生じたアウトプットである財又はサービスを得るために当該企業と契約した当事者(基準6)。

ステップ2:契約における履行義務の識別
契約において顧客への移転を約束した財又はサービスが、所定の要件を満たす場合には別個のものであるとして、当該約束を履行義務として区分して識別する(基準17(2))。契約における取引開始日に、顧客との契約において約束した財又はサービスを評価し、次の①又は②のいずれかを顧客に移転する約束のそれぞれについて履行義務として識別する(基準32)。

① 別個の財又はサービス(あるいは別個の財又はサービスの束)

② 一連の別個の財又はサービス(特性が実質的に同じであり、顧客への移転のパターンが同じである複数の財又はサービス)

※「履行義務」・・・顧客との契約において、上記①又は②のいずれかを顧客に移転する約束(基準7)。

ステップ3:契約における取引価格の算定
変動対価又は現金以外の対価の存在を考慮し、金利相当分の影響及び顧客に支払われる対価について調整を行い、取引価格を算定する(基準17(3))。取引価格の算定にあたっては、契約条件や取引慣行等を考慮する(基準47)。顧客により約束された対価の性質、時期及び金額は、取引価格の見積りに影響を与える。取引価格を算定する際には、次の①から④のすべての影響を考慮する(基準48)。

① 変動対価

② 契約における重要な金融要素

③ 現金以外の対価

④ 顧客に支払われる対価

値引き、リベート、返金、インセンティブの取決めがある又は返品権が付されているなど契約上の対価について変動する可能性のある部分を織り込んで取引価格を算定する必要がある(指針設例2には、「対価が契約書の価格と異なる場合」として、貸倒れの見込みも考慮に入れて取引価格を決定する例が示されている)。よって、契約上の対価の額と会計上の取引価格が一致しない場合がありうる。

※「取引価格」・・・財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ると見込む対価の額(ただし、第三者のために回収する額を除く)(基準8)。

※「変動対価」・・・顧客と約束した対価のうち変動する可能性のある部分。例えば、値引き、リベート、返金、インセンティブ、業績に基づく割増金、ペナルティー等の形態により対価の額が変動する場合や、返品権付きの販売等がこれに該当する(基準50、指針23)。

ステップ4:履行義務への取引価格の配分
契約において約束した別個の財又はサービスの独立販売価格又はその見積価格の比率に基づき、それぞれの履行義務に取引価格を配分する。独立販売価格を直接観察できない場合には独立販売価格を見積る(基準17(4))。

※「独立販売価格」・・・財又はサービスを独立して企業が顧客に販売する場合の価格(基準9)。

ステップ5:履行義務の充足による収益の認識
約束した財又はサービスを顧客に移転することにより履行義務を充足した時に又は充足するにつれて、充足した履行義務に配分された額で収益を認識する。履行義務は、所定の要件を満たす場合には一定の期間にわたり充足され、所定の要件を満たさない場合には一時点で充足される(基準17(5))。

企業は約束した財又はサービスを顧客に移転することにより履行義務を充足した時に又は充足するにつれて、収益を認識する。資産が移転するのは、顧客が当該資産に対する支配を獲得した時又は獲得するにつれてである。なお、収益認識会計基準において、顧客との契約の対象となる財又はサービスについて「資産」と記載することもある(基準35)。

契約における取引開始日に、識別された履行義務のそれぞれが、一定の期間にわたり充足されるものか又は一時点で充足されるものかを判定する(基準36)。

【図表:ステップの見取図】

ステップ2は、契約中に財又はサービスの移転に係る約束が2つ以上含まれている場合に、これを履行義務として、区別して、識別するものである。基本的に、契約中に1つの約束しかない場合には行う必要がない(ステップ4も同様)。もっとも、ステップ5において、履行義務を充足した時に又は充足するにつれて、収益を認識することになるから、いずれにしても契約を履行義務として捉えておく必要がある。

かように、収益認識会計基準は、契約単位ではなく履行義務単位で収益を認識するのである。

指針設例1を参考に、各ステップのフローを説明すると、次のようになる。

《前提条件》

・標準的な商品の販売と2年間の保守サービスを提供する契約を締結

・当期首に商品を顧客に引き渡し、当期首から翌期末まで保守サービスを提供

・契約書上の対価の額は12,000 千円

※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。

《各ステップにおける作業》

ステップ1:顧客との契約を識別する。

ステップ2:商品の販売と保守サービスの提供を履行義務として識別し、それぞれを収益認識の単位とする。

ステップ3:商品の販売及び保守サービスの提供に対する取引価格を12,000 千円と算定する。

ステップ4:商品及び保守サービスの独立販売価格に基づき、取引価格12,000 千円を各履行義務に配分する。商品の取引価格は10,000千円、保守サービスの取引価格は2,000千円とする。

ステップ5:履行義務の性質に基づき、商品の販売は一時点で履行義務を充足すると判断し、商品の引渡時に収益を認識する。また、保守サービスの提供は一定の期間にわたり履行義務を充足すると判断し、当期及び翌期の2年間にわたり収益を認識する。

参考:消費税等の取扱い(税込経理と税抜経理)

取引価格とは、財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ると見込む対価の額であるが、「第三者のために回収する額」を除くものとされている(基準8、47)。消費税等や酒税などがこの「第三者のために回収する額」に該当すると解されている。

非課税取引が主要な部分を占め、消費税等の負担者と認められるなどの理由により、消費税等の税込方式を採用する企業から、税込方式を容認すべきであるとの意見もあった。しかしながら、税込方式を認める場合、収益認識会計基準における取引価格の定義に対する例外を設けることになり、また非課税取引が主要な部分を占める企業における売上に係る消費税等の額は重要性に乏しいなどの理由により、代替的な取扱いを定めないこととされた(基準89、161)。

もっとも、かような説明や理解に対しては、法的な観点からすると違和感がある。
消費税法の根本的な仕組みや租税法律主義の見地からすれば、事業者が消費税を取引価格に転嫁することを「第三者のために回収する」と認識することの当否については議論の余地がある。消費税の転嫁自体は事業者等の自己のためではあっても、「第三者のために回収する」ものではないため、消費税の税込方式がこれに該当するとの見解には疑問が提起されている(酒井克彦「『収益認識に関する会計基準』と法人税法(10)」税務事例50巻11号117頁以下)。

なお、国税庁は「引き続き、法人の選択により税抜方式と税込方式のいずれも適用可能とする」と説明している(国税庁「『収益認識に関する会計基準』への対応について~法人税関係~36頁)。つまり、法人税関係個別通達「消費税法等の施行に伴う法人税の取扱いについて」(平成元年3月1日直法2-1)の3の取扱いを維持するということである。

 

3 適用時期

収益認識会計基準は、2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用される(基準81)。

次のとおり、早期適用も可能である。

2018年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首(基準82)

2018年12月31日から2019年3月30日までに終了する連結会計年度及び事業年度までにおける年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表(基準83)

 

4 適用対象企業

収益認識会計基準が適用されるのは、上場会社など金融商品取引法の規制の適用対象会社及び大会社など会社法上の会計監査人を設置している会社である。

中小企業においては、企業会計原則、中小企業の会計に関する指針又は中小企業の会計に関する基本要領等が適用される。中小企業に収益認識会計基準が強制適用されるわけではない。もっとも、中小企業が企業会計基準を適用することは妨げられないため、収益認識会計基準を適用することも可能である。

また、連結財務諸表の連結範囲に含まれる子会社である中小企業について、「同一環境下で行われた同一の性質の取引等について、親会社及び子会社が採用する会計方針は、原則として統一する」とされていることに注意が必要である(企業会計基準第22 号「連結財務諸表に関する会計基準」17)。なお、収益認識会計基準は、基本的には、連結財務諸表と個別財務諸表において同一の会計処理を定めることとしている(基準99)。

 

5 第Ⅰ部のまとめ

第Ⅰ部では、次回以降における考察に差し当たり必要な範囲で収益認識会計基準の概要を確認した。同基準の内容について、現段階で理解しておきたいことを要約すると、次のとおりとなる。

収益認識会計基準によれば、次のにより、収益を認識することになる。

 収益を認識する単位 履行義務ごと

 収益を認識する時期 履行義務充足時に又は充足するにつれて

 収益を認識する額   取引価格(独立販売価格に基づく履行義務への配分価格であり、契約上の対価の額と一致しない場合もある。)

(了)

この連載の公開日程は、下記の連載目次をご覧ください。

収益認識会計基準

法人税法22条の2及び関係法令通達論点研究

【第1回】

 

千葉商科大学商経学部講師
泉 絢也

 

(次回)→

連載の目次はこちら

連載に当たって

収益をいつ、いくらの金額で計上すべきであるかは、法人税法上の所得金額を適正に計算するために、極めて基本的かつ重要な論点の1つである。これまで、かかる収益の年度帰属(計上時期)及び収益の額の論点を規律する最も重要な規定は、法人税法22条という所得計算の通則規定であったが、平成30年度税制改正では、法人税法22条よりも、資産の販売等に係る収益に関して明確で具体的な内容を有する法人税法22条の2がここに加えられた。

法人税法22条の原型は、1965年(昭和40年)の法人税法全文改正で作られた。同条に関する改正を振り返ると、1967年(昭和42年)に公正処理基準に従った計算を要請する規定(現行法4項)が挿入され、その後、1998(平成10)、2000(平成12)、2006(平成18)、2010(平成22)年で資本等取引(現行法5項)に関する細かな改正がなされたのみである。よって、インパクトのあるものとしては、今回の改正は1967年(昭和42年)以来のものといってよい。

今回の改正は、2018年3月30日に民間の会計基準設定主体である企業会計基準委員会(ASBJ)によって公表された企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」(以下「収益認識会計基準」又は「基準」という)及び企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」(以下「適用指針」又は「指針」といい、設例部分を「指針設例」という)に伴うものである。

租税法の代表的な教科書においては、「収益および費用の年度帰属をめぐって、きわめて多くの租税争訟が生じているが、これらの個別の問題の大部分については、企業会計上その取扱は白紙の状態である」ことが指摘されてきたが(金子宏『租税法〔第23版〕』350頁(弘文堂2019)の脚注20)、収益の認識については、わが国にも包括的で詳細な会計基準が誕生したことになる。

連結財務諸表のみならず個別財務諸表にも適用されるこの収益認識会計基準は、実現主義や販売基準などの収益に係る諸原則を定める企業会計原則に優先するものとされている。仮に、収益認識会計基準と法人税法それぞれにおける収益認識のルールが相違する場合には、企業は法人税の申告に当たり、煩雑な申告調整を強いられる可能性もある。

中小企業は、収益認識会計基準を強制適用されるわけではないが、任意に適用することは可能である。とはいえ、平成30年度税制改正で導入された資産の販売等に係る収益に関する改正規定は、その適用に当たり、直接的には、収益認識会計基準を適用しているか否かを問うものではない。すなわち、中小企業にも適用されうるものである。また、平成30年度税制改正では、返品調整引当金や長期割賦販売等に係る収益及び費用の帰属事業年度の特例といった既存の規定を廃止等する改正も行われている。これらの点で、中小企業にも改正の影響があることはいうまでもない。

では、改正法はその具体的内容という面において、どのような、どの程度の影響力があるというべきか。この点は即答が難しい。資産の販売等に係る収益に関する改正規定が実務の中でどのようにワークし、実際の適用場面でいかなる問題を提起するのか、という点について、現段階で詳説することは困難である。しかしながら、政令を含む改正規定及び改正された関係通達の下で、実務は動き出している。

本連載は、このような状況に鑑み、資産の販売等に係る収益に関する改正規定(法人税法22条の2)の逐条解説や収益の計上に関する事例の研究等を通じて、今後、様々な場面で起こりうる問題又は紛争の予防ないし解決にいくらかでも貢献することを目的とする。

- 留 意 点 -

本連載は、財務省主税局又は国税庁の解説や通達等の内容をそのまま情報提供することを意図するものではない。主税局が公表する税制改正の解説は時に立案担当者の説明として重視されるものであるし、国税庁が公表する通達やQ&Aなどは、一般に、難解で抽象的な税法の条文をわかりやすく具体的に解説する点で納税者にとって有益なものである。

しかしながら、これらはあくまで法令の内容を理解するための参考資料にすぎない。租税法の世界には、租税の賦課・徴収は必ず法律の根拠に基づいて行われなければならないという峻厳なる租税法律主義の原則が存在する(憲法30、84)。かかる原則の面前では、法律ではなく、また、法律からの委任によって制定されたものではない当局の解説や通達等が直接的には法規範性を有していないことの意義を軽視することはできない。

以上を踏まえて、本連載では、新しく制定された法人税法22条の2及び関連する条文等に軸足を置いて、法的な観点から考察を進める。

この記事全文をご覧いただくには、プロフェッションネットワークの会員(プレミアム
会員又は一般会員)としてのログインが必要です。
通常、Profession Journalはプレミアム会員専用の閲覧サービスですので、プレミアム
会員のご登録をおすすめします。
プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。

プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。

連載目次

収益認識会計基準と法人税法22条の2及び
関係法令通達の論点研究

(第Ⅰ部 収益認識会計基準の概要)

第Ⅰ部 収益認識会計基準の概要

【第1回】

1 目的と適用範囲

2 基本原則と収益認識ステップ

3 適用時期

参考:消費税等の取扱い(税込経理と税抜経理)

4 適用対象企業

5 第Ⅰ部のまとめ

(第Ⅱ部 法人税法上の収益計上時期・計上額①(概要))

第Ⅱ部 法人税法上の収益計上時期・計上額①(概要)

【第2回】

1 法人税法の改正内容の概観と留意点

(1) 概観

(2) 留意点

2 法人税法施行令の改正内容の概観

【第3回】

3 法人税基本通達等の改正

(1) 国税庁による通達改正の背景等の説明

(2) 通達の整備方針

(3) 通達の内容

4 国税庁による「収益認識基準による場合の取扱いの例」の公表等

5 第Ⅱ部のまとめ

(第Ⅲ部 法人税法上の収益計上時期・計上額②(法人税法22条の2の逐条解説))

第Ⅲ部 法人税法上の収益計上時期・計上額②(法人税法22条の2の逐条解説)

【第4回】

1 法人税法22条の確認

(1) 法人税法22条1項

(2) 法人税法22条2項

〈更なる検討〉「益金」又は「損金」と純資産増加説

(3) 法人税法22条3項

【第5回】

(4) 法人税法22条4項

ア 法人税法22条4項の規定内容と会計の三重構造

イ 3つの会計の目的の相違

ウ 逆基準性

エ 公正処理基準の意義

(5) 法人税法22条5項

【第6回】

2 法人税法22条2項の考察

(1) 収益の額と別段の定めによる益金算入額・不算入額との関係

(2) 収益の計上時期の問題

【第7回】

〈更なる検討〉「取引」への着目①

〈更なる検討〉「取引」への着目②

【第8回】

(3) 収益の計上額の問題

【第9回】

3 法人税法22条の2第1項の検討

(1) 法人税法22条の2の格納場所(条文配置)からの検討

ア 視点の抽出

イ 視点③を出発点とした考察

ウ 視点①を出発点とした考察

【第10回】

(2) 規定の文言等からの検討

ア 収益の計上時期(時間的帰属)の規範としての顔

イ 「目的物の引渡しの日」と「役務の提供の日」

参考:出荷基準の位置付けに係る国税庁と研究者・実務家との認識のズレ

【第11回】

(3) 法人税法22条2項との比較検討

【第12回】

〈更なる検討〉法人税法22条の2第1項と22条2項の規律範囲・内容の比較

【第13回】

〈更なる検討〉「無償による資産の譲受けその他の取引」を含めていないことの意義(法人税法22条の2第1項との関係)

【第14回】

(4) 法人税法22条の2第2項及び第3項との比較検討

ア 法人税法22条の2第2項及び3項の概要等

イ 引渡・役務提供基準の位置付け

【第15回】

ウ 1項と2項のどちらが原則的な基準か?

エ 申告調整による引渡・役務提供基準の採用

【第16回】

(5) 収益認識会計基準との比較検討

【第17回】

(6) 立案担当者の見解の要旨

ア 法人税法22条の2第1項は「収益の額を益金の額に算入する時期」に関する通則的な定めであること及びかかる定めを設けた趣旨

イ 改正前における収益の益金算入時期の考え方や収益認識会計基準との整合性

ウ 引渡・役務提供基準が着目する側面とその趣旨

【第18回】

エ 法人税法22条の2第1項の「別段の定め」から22条4項を除いた趣旨

〈更なる検討〉法人税法22条の2第1項創設後における22条2項の意義

オ 法人税法22条の2第1項の「別段の定め」の具体例

カ 役務の提供には資産の貸付けが含まれること

キ 収益認識会計基準の適用対象取引と法人税法22条の2第1項の適用対象取引は異なる部分があること

【第19回】

4 法人税法22の2第2項

(1) 規定の文言等からの検討

ア 収益の計上時期(時間的帰属)の規範としての顔

イ 近接日基準の適用要件の整理

【第20回】

ウ 公正処理基準準拠要件

(ア) 「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」の意義や具体的範囲

(イ) 公正処理基準準拠要件の意義

【第21回】

エ 近接日における確定決算収益経理要件

(ア) ➊近接日要件(収益経理した日が目的物の引渡日又は役務提供日と近接した日であること)

《不明確性の根源》

【第22回】

《法人税基本通達が定める近接日基準》

【第23回】

〈更なる検討〉法人税法22条の2第2項と22条4項のいずれを根拠とすべきか

〈更なる検討〉法令用語「その他の」・「その他」と契約効力基準

【第24回】

(イ) ➋確定決算収益経理要件(確定した決算において収益として経理したこと)

参考:確定決算主義

【第25回】

オ 別段の定め不存在要件

(ア) 「別段の定め」の具体的範囲等

【第26回】

(イ) 「別段の定め」から法人税法22条4項が除かれていること

【第27回】

〈更なる検討〉無償による資産の譲渡又は役務の提供に対する法人税法22条の2第2項の適用の可否

【第28回】

(2) 立案担当者の見解の要旨

ア 法人税法22条の2第2項の趣旨

【第29回】

イ 法人税法22条の2第2項の「別段の定め」から22条4項を除いた趣旨及び「別段の定め」の具体例

ウ 法人税法22条の2第2項による収益計上に当たっては継続性が求められること

エ 割賦基準・延払基準による収益計上は別段の定めがない限り、認められないこと

オ 法人税法22条の2第2項にいう「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」は法人税法第22条第4項と同様の範囲であること

【第30回】

5 法人税法22の2第3項

(1) 申告調整を通じた近接日基準による益金算入

【第31回】

(2) 法人税法22条の2第2項を通じた益金算入

【第32回】

(3) 法人税法22条の2第3項の適用要件

【第33回】

〈更なる検討〉法人税法22条の2第3項は、2項が確定決算による収益経理を要請したことの意義を失わせるか

【第34回】

(4) 法人税法22条の2第3項の適用対象となる額

【第35回】

(5) 法人税法22条の2第3項は恣意的な申告調整を認めないものか

【第36回】

(6) 立案担当者の見解の要旨

ア 法人税法22条の2第3項は当初申告における申告調整により近接日基準による収益計上を可能とするものであること

イ 法人税法22条の2第3項により、確定決算による収益認識日を申告調整により他の日(収益認識日)に「変更する」ことはできないこと

ウ 申告調整によって1項が定める引渡日又は役務提供日の益金の額とすることも可能であること

エ 法人税法22条の2第3項を適用する際にも公正処理基準準拠要件の充足が求められること

【第37回】

6 法人税法22の2第4項・5項

(1) 法人税法22条の2第4項の概要

ア 時価による益金算入

イ 適用対象

【第38回】

(2) 法人税法22条の2第5項の概要

ア 貸倒れと買戻しの可能性への対応

イ 法人税法施行令18条の2第4項と貸借対照表項目のズレ

【第39回】

〈更なる検討〉返品調整引当金を廃止した理由

【第40回】

〈更なる検討〉「第七目 引当金」から「第七目 貸倒引当金」への目名改正と引当金損金不算入の根拠を巡る議論

【第41回】

(3) どの時点の時価であるか

ア 資産の販売又は譲渡

【第42回】

イ 役務提供

ウ 法人税法61条の2第1項との比較

【第43回】

(4) 譲渡した資産の「価額」と提供した役務につき「通常得べき対価の額」

【第44回】

〈更なる検討〉「対価の額」とは「時価」ではなく「当事者間で合意した額」か?

【第45回】

(5) 収益認識会計基準との比較

【第46回】

(6) 資産の引渡しの時の価額等の通則を定める法人税基本通達2-1-1の10

【第47回】

(7) 変動対価に関する法人税基本通達2-1-1の11

ア 概要

イ 平成30年度改正と法人税基本通達2-1-1の11との関係

【第48回】

ウ 損金不算入費用等に該当しないものに限定する趣旨と変動対価の要因となるその他の事実の範囲

エ 本通達の要件(1)~(3)について

【第49回】

(8) 売上割戻しの計上時期を定める法人税基本通達2-1-1の12

(9) 一定期間支払わない売上割戻しの計上時期を定める法人税基本通達2-1-1の13・14

【第50回】

(10) 値増金の益金算入時期を定める法人税基本通達2-1-1の15

(11) キャッシュバックなど相手方に支払われる対価の取扱いを定める法人税基本通達2-1-1の16

ア 概要

イ 本通達の趣旨

【第51回】

(12) 立案担当者の見解の要旨

ア 収益認識会計基準の導入に対応する形で、法人税法の改正を行うべきか①

イ 収益認識会計基準の導入に対応する形で、法人税法の改正を行うべきか②

【第52回】

ウ 「価額」及び「通常得べき対価の額」は幅のある概念であること

エ 時価と異なる価額を対価の額とする取引が行われた場合の取扱い

参考:限定説と無限定説

【第53回】

オ 法人税法22条の2第4項の「別段の定め」から22条4項を除いた趣旨

カ 法人税法22条の2第4項の「別段の定め」の具体例

【第54回】

キ 値引きや割戻し、貸倒れ見込みや返品権付きの販売

【第55回】

7 法人税法22条の2第6項

(1) 概要等

【第56回】

(2) 混合取引(特に現物配当)を巡る議論

参考1:法人税法62条の5第3項

参考2:解釈論の余地

(3) 立案担当者の見解の要旨

【第57回】

8 法人税法22条の2第7項

(1) 収益認識会計基準への対応

【第58回】

(2) 法人税基本通達2-2-16(前期損益修正)

【第59回】

(3) 法人税法施行令18条の2第1項・第2項

ア 法人税法施行令18条の2第1項

イ 法人税法施行令18条の2第2項

【第60回】

(4) 法人税法施行令18条の2第3項

【第61回】

(5) 法人税基本通達2-1-1の11注書

【第62回】

(6) 法人税法施行令18条の2第4項は委任の趣旨を逸脱しているか

【第63回】

9 通達の取扱い

(1) 収益の計上の単位の通則(法人税基本通達2-1-1)

【第64回】

ア 概要

イ 「資産の販売等」の定義

【第65回】

ウ 従来の取扱いとの関係

エ 本通達の趣旨

【第66回】

オ 立案担当者の見解等

カ 契約単位・履行義務単位と申告調整

【第67回】

(2) 部分完成の事実がある場合の収益の計上の単位(法人税基本通達2-1-1の4)

ア 概要

イ 本通達の趣旨

ウ 強制適用する趣旨

【第68回】

(3) 技術役務の提供に係る収益の計上の単位(法人税基本通達2-1-1の5)

ア 概要

イ 本通達の趣旨

ウ 強制適用する趣旨

【第69回】

(4) ノウハウの頭金等の収益の計上の単位(法人税基本通達2-1-1の6)

ア 概要

イ 本通達の趣旨

ウ 強制適用する趣旨

【第70回】

(5) 資産の販売等に係る収益の額に含めないことができる利息相当部分(法人税基本通達2-1-1の8)

ア 概要

イ 本通達の趣旨

【第71回】

(6) 棚卸資産の引渡しの日の判定(法人税基本通達2-1-2)

ア 概要

イ 本通達の趣旨

ウ 法人税法22条の2第1項の引渡概念との関係

【第72回】

(7) 委託販売に係る収益の帰属の時期(法人税基本通達2-1-3)

ア 概要

イ 本通達の趣旨

【第73回】

(8) 固定資産の譲渡に係る収益の帰属の時期(法人税基本通達2-1-14)

ア 概要

イ 本通達の趣旨

【第74回】

(9) 履行義務が一定の期間にわたり充足されるものに係る収益の帰属の時期(法人税基本通達2-1-21の2)

ア 概要

【第75回】

イ 本通達の趣旨

ウ 履行義務の充足に係る進捗度

エ 各通達の法的根拠

【第76回】

(10) 請負に係る収益の帰属の時期(法人税基本通達2-1-21の7)

ア 概要

イ 本通達の趣旨

ウ 本通達と役務提供基準

第Ⅳ部 法人税法上の収益計上時期・計上額③(個別論点・事例研究)

【第77回】

〈Q1〉 引渡しとは

【第78回】

〈Q2〉 民法上の引渡しと引渡基準

【第79回】

〈Q3〉 出荷基準と引渡基準の関係

【第80回】

〈Q4〉 出荷基準と引渡基準・近接日基準の関係

【第81回】

〈Q5〉 出荷基準・到着(着荷)基準と引渡基準

【第82回】

〈Q6〉 出荷基準にいう出荷とは

〈Q7〉 引渡基準と権利確定主義

【第83回】

〈Q8〉 引渡基準と管理支配基準

【第84回】

〈Q9〉 収益認識会計基準の履行義務充足基準との関係

【第85回】

〈Q10〉 無償譲渡の場合の収益の計上時期・計上額

〈Q11〉 申告調整による引渡基準の採用

【第86回】

〈Q12〉 収益の計上額と金銭債権の貸倒れの見込み

〔連載の終了に当たって〕

筆者紹介

泉 絢也

(いずみ・じゅんや)

東洋大学法学部准教授
博士(会計学)

2023年3月末まで千葉商科大学商経学部准教授、2023年4月より東洋大学法学部准教授。中央大学ビジネススクール非常勤講師。
(一社)アコード租税総合研究所研究顧問。
早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。博士(会計学・中央大学)。
Twitter:@taxlaw17
ブログ:https://note.com/cryptotax/

【著書】
・泉絢也『逐条解説 法人税法第22条の2 収益認識会計基準に対応する法令・通達の論点整理』(清文社2023)(単著)
・泉絢也=藤本剛平『事例でわかる! NFT・暗号資産の税務』(中央経済社2022)(共著)
・泉絢也『パブリックコメントと租税法』(日本評論社2020)(単著)
・酒井克彦編『30年分申告・31年度改正対応 キャッチアップ仮想通貨の最新税務』(ぎょうせい2019)(共著)
・松嶋 隆弘=渡邊涼介編著『仮想通貨はこう変わる!!暗号資産の法律・税務・会計』(ぎょうせい2019)(共著)

【論文】
・「仮想通貨(暗号通貨、暗号資産)の譲渡による所得の譲渡所得該当性-アメリカ連邦所得税におけるキャピタルゲイン及び為替差損益の取扱いを手掛かりとして-」税法学581号3頁以下
・「NFT(ノンファンジブルトークン)の譲渡による所得は 譲渡所得か?もしそうであれば非課税所得か?」千葉商大論叢59巻3号143頁など
・「法人税法における暗号資産税制の問題点(1)・(2完)-期末時価評価課税の改正提言-」千葉商大論叢60巻1号73頁、千葉商大紀要60巻1号61頁
など多数

記事検索

メルマガ

メールマガジン購読をご希望の方は以下に登録してください。

#
#