収益認識会計基準と法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第56回】
筆者:泉 絢也
文字サイズ
- 中
- 大
- 特
収益認識会計基準と
法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究
【第56回】
千葉商科大学商経学部准教授
泉 絢也
(2) 混合取引(特に現物配当)を巡る議論
法人税法22条の2第6項との関係では、資本等取引の要素と損益取引の要素が混合ないし混在している取引(混合取引)に関する議論を確認しておく必要がある。
金子宏「法人税における資本等取引と損益取引」同編『租税法の発展』337頁以下(有斐閣2010)において、要旨次のような問題提起及び提言がなされていた(下図は筆者作成)。
混合取引の例としては、現物配当、残余財産の現物分配、現物出資(特に、デット・エクイティ・スワップ)、自己の株式の取引等が挙げられる。
○記事全文をご覧いただくには、プレミアム会員としてのログインが必要です。
○プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。

○プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。
○一般会員の方は、下記ボタンよりプレミアム会員への移行手続きができます。
○非会員の皆さまにも、期間限定で閲覧していただける記事がございます(ログイン不要です)。
こちらからご覧ください。
連載目次
収益認識会計基準と法人税法22条の2及び
関係法令通達の論点研究
(第Ⅰ部 収益認識会計基準の概要)
(第Ⅱ部 法人税法上の収益計上時期・計上額①(概要))
(第Ⅲ部 法人税法上の収益計上時期・計上額②(法人税法22条の2の逐条解説))
第Ⅲ部 法人税法上の収益計上時期・計上額②(法人税法22条の2の逐条解説)
1 法人税法22条の確認
(1) 法人税法22条1項
(2) 法人税法22条2項
〈更なる検討〉「益金」又は「損金」と純資産増加説
(3) 法人税法22条3項
(4) 法人税法22条4項
ア 法人税法22条4項の規定内容と会計の三重構造
イ 3つの会計の目的の相違
ウ 逆基準性
エ 公正処理基準の意義
(5) 法人税法22条5項
2 法人税法22条2項の考察
(1) 収益の額と別段の定めによる益金算入額・不算入額との関係
(2) 収益の計上時期の問題
〈更なる検討〉「取引」への着目①
〈更なる検討〉「取引」への着目②
(3) 収益の計上額の問題
3 法人税法22条の2第1項の検討
(1) 法人税法22条の2の格納場所(条文配置)からの検討
ア 視点の抽出
イ 視点③を出発点とした考察
ウ 視点①を出発点とした考察
(2) 規定の文言等からの検討
ア 収益の計上時期(時間的帰属)の規範としての顔
イ 「目的物の引渡しの日」と「役務の提供の日」
参考:出荷基準の位置付けに係る国税庁と研究者・実務家との認識のズレ
(3) 法人税法22条2項との比較検討
〈更なる検討〉法人税法22条の2第1項と22条2項の規律範囲・内容の比較
〈更なる検討〉「無償による資産の譲受けその他の取引」を含めていないことの意義(法人税法22条の2第1項との関係)
(4) 法人税法22条の2第2項及び第3項との比較検討
ア 法人税法22条の2第2項及び3項の概要等
イ 引渡・役務提供基準の位置付け
ウ 1項と2項のどちらが原則的な基準か?
エ 申告調整による引渡・役務提供基準の採用
(5) 収益認識会計基準との比較検討
(6) 立案担当者の見解の要旨
ア 法人税法22条の2第1項は「収益の額を益金の額に算入する時期」に関する通則的な定めであること及びかかる定めを設けた趣旨
イ 改正前における収益の益金算入時期の考え方や収益認識会計基準との整合性
ウ 引渡・役務提供基準が着目する側面とその趣旨
エ 法人税法22条の2第1項の「別段の定め」から22条4項を除いた趣旨
〈更なる検討〉法人税法22条の2第1項創設後における22条2項の意義
オ 法人税法22条の2第1項の「別段の定め」の具体例
カ 役務の提供には資産の貸付けが含まれること
キ 収益認識会計基準の適用対象取引と法人税法22条の2第1項の適用対象取引は異なる部分があること
4 法人税法22の2第2項
(1) 規定の文言等からの検討
ア 収益の計上時期(時間的帰属)の規範としての顔
イ 近接日基準の適用要件の整理
ウ 公正処理基準準拠要件
(ア) 「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」の意義や具体的範囲
(イ) 公正処理基準準拠要件の意義
エ 近接日における確定決算収益経理要件
(ア) ➊近接日要件(収益経理した日が目的物の引渡日又は役務提供日と近接した日であること)
《不明確性の根源》
《法人税基本通達が定める近接日基準》
〈更なる検討〉法人税法22条の2第2項と22条4項のいずれを根拠とすべきか
〈更なる検討〉法令用語「その他の」・「その他」と契約効力基準
(イ) ➋確定決算収益経理要件(確定した決算において収益として経理したこと)
参考:確定決算主義
オ 別段の定め不存在要件
(ア) 「別段の定め」の具体的範囲等
(イ) 「別段の定め」から法人税法22条4項が除かれていること
〈更なる検討〉無償による資産の譲渡又は役務の提供に対する法人税法22条の2第2項の適用の可否
(2) 立案担当者の見解の要旨
ア 法人税法22条の2第2項の趣旨
イ 法人税法22条の2第2項の「別段の定め」から22条4項を除いた趣旨及び「別段の定め」の具体例
ウ 法人税法22条の2第2項による収益計上に当たっては継続性が求められること
エ 割賦基準・延払基準による収益計上は別段の定めがない限り、認められないこと
オ 法人税法22条の2第2項にいう「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」は法人税法第22条第4項と同様の範囲であること
5 法人税法22の2第3項
(1) 申告調整を通じた近接日基準による益金算入
(2) 法人税法22条の2第2項を通じた益金算入
(3) 法人税法22条の2第3項の適用要件
〈更なる検討〉法人税法22条の2第3項は、2項が確定決算による収益経理を要請したことの意義を失わせるか
(4) 法人税法22条の2第3項の適用対象となる額
(5) 法人税法22条の2第3項は恣意的な申告調整を認めないものか
(6) 立案担当者の見解の要旨
ア 法人税法22条の2第3項は当初申告における申告調整により近接日基準による収益計上を可能とするものであること
イ 法人税法22条の2第3項により、確定決算による収益認識日を申告調整により他の日(収益認識日)に「変更する」ことはできないこと
ウ 申告調整によって1項が定める引渡日又は役務提供日の益金の額とすることも可能であること
エ 法人税法22条の2第3項を適用する際にも公正処理基準準拠要件の充足が求められること
6 法人税法22の2第4項・5項
(1) 法人税法22条の2第4項の概要
ア 時価による益金算入
イ 適用対象
(2) 法人税法22条の2第5項の概要
ア 貸倒れと買戻しの可能性への対応
イ 法人税法施行令18条の2第4項と貸借対照表項目のズレ
〈更なる検討〉返品調整引当金を廃止した理由
〈更なる検討〉「第七目 引当金」から「第七目 貸倒引当金」への目名改正と引当金損金不算入の根拠を巡る議論
(3) どの時点の時価であるか
ア 資産の販売又は譲渡
イ 役務提供
ウ 法人税法61条の2第1項との比較
(4) 譲渡した資産の「価額」と提供した役務につき「通常得べき対価の額」
〈更なる検討〉「対価の額」とは「時価」ではなく「当事者間で合意した額」か?
(5) 収益認識会計基準との比較
(6) 資産の引渡しの時の価額等の通則を定める法人税基本通達2-1-1の10
(7) 変動対価に関する法人税基本通達2-1-1の11
ア 概要
イ 平成30年度改正と法人税基本通達2-1-1の11との関係
ウ 損金不算入費用等に該当しないものに限定する趣旨と変動対価の要因となるその他の事実の範囲
エ 本通達の要件(1)~(3)について
(8) 売上割戻しの計上時期を定める法人税基本通達2-1-1の12
(9) 一定期間支払わない売上割戻しの計上時期を定める法人税基本通達2-1-1の13・14
(10) 値増金の益金算入時期を定める法人税基本通達2-1-1の15
(11) キャッシュバックなど相手方に支払われる対価の取扱いを定める法人税基本通達2-1-1の16
ア 概要
イ 本通達の趣旨
(12) 立案担当者の見解の要旨
ア 収益認識会計基準の導入に対応する形で、法人税法の改正を行うべきか①
イ 収益認識会計基準の導入に対応する形で、法人税法の改正を行うべきか②
ウ 「価額」及び「通常得べき対価の額」は幅のある概念であること
エ 時価と異なる価額を対価の額とする取引が行われた場合の取扱い
参考:限定説と無限定説
オ 法人税法22条の2第4項の「別段の定め」から22条4項を除いた趣旨
カ 法人税法22条の2第4項の「別段の定め」の具体例
キ 値引きや割戻し、貸倒れ見込みや返品権付きの販売
7 法人税法22条の2第6項
(1) 概要等
(2) 混合取引(特に現物配当)を巡る議論
参考1:法人税法62条の5第3項
参考2:解釈論の余地
(3) 立案担当者の見解の要旨
8 法人税法22条の2第7項
(1) 収益認識会計基準への対応
(2) 法人税基本通達2-2-16(前期損益修正)
(3) 法人税法施行令18条の2第1項・第2項
ア 法人税法施行令18条の2第1項
イ 法人税法施行令18条の2第2項
(4) 法人税法施行令18条の2第3項
(5) 法人税基本通達2-1-1の11注書
(6) 法人税法施行令18条の2第4項は委任の趣旨を逸脱しているか
9 通達の取扱い
(1) 収益の計上の単位の通則(法人税基本通達2-1-1)
ア 概要
イ 「資産の販売等」の定義
ウ 従来の取扱いとの関係
エ 本通達の趣旨
オ 立案担当者の見解等
カ 契約単位・履行義務単位と申告調整
(2) 部分完成の事実がある場合の収益の計上の単位(法人税基本通達2-1-1の4)
ア 概要
イ 本通達の趣旨
ウ 強制適用する趣旨
(3) 技術役務の提供に係る収益の計上の単位(法人税基本通達2-1-1の5)
ア 概要
イ 本通達の趣旨
ウ 強制適用する趣旨
(4) ノウハウの頭金等の収益の計上の単位(法人税基本通達2-1-1の6)
ア 概要
イ 本通達の趣旨
ウ 強制適用する趣旨
(5) 資産の販売等に係る収益の額に含めないことができる利息相当部分(法人税基本通達2-1-1の8)
ア 概要
イ 本通達の趣旨
(6) 棚卸資産の引渡しの日の判定(法人税基本通達2-1-2)
ア 概要
イ 本通達の趣旨
ウ 法人税法22条の2第1項の引渡概念との関係
(7) 委託販売に係る収益の帰属の時期(法人税基本通達2-1-3)
ア 概要
イ 本通達の趣旨
(8) 固定資産の譲渡に係る収益の帰属の時期(法人税基本通達2-1-14)
ア 概要
イ 本通達の趣旨
(9) 履行義務が一定の期間にわたり充足されるものに係る収益の帰属の時期(法人税基本通達2-1-21の2)
ア 概要
イ 本通達の趣旨
ウ 履行義務の充足に係る進捗度
エ 各通達の法的根拠
(10) 請負に係る収益の帰属の時期(法人税基本通達2-1-21の7)
ア 概要
イ 本通達の趣旨
ウ 本通達と役務提供基準
第Ⅳ部 法人税法上の収益計上時期・計上額③(個別論点・事例研究)
〈Q1〉 引渡しとは
〈Q2〉 民法上の引渡しと引渡基準
〈Q3〉 出荷基準と引渡基準の関係
【第80回】 6/9公開
〈Q4〉 出荷基準と引渡基準・近接日基準の関係
【第81回】 6/23公開
〈Q5〉 出荷基準・到着(着荷)基準と引渡基準
【第82回】 7/14公開
〈Q6〉 出荷基準にいう出荷とは
〈Q7〉 引渡基準と権利確定主義
【第83回】 7/28公開
〈Q8〉 引渡基準と管理支配基準
【第84回】 8/10公開
〈Q9〉 収益認識会計基準の履行義務充足基準との関係
【第85回】 8/25公開
〈Q10〉 無償譲渡の場合の収益の計上時期・計上額
〈Q11〉 申告調整による引渡基準の採用
【第86回】 9/8公開
〈Q12〉 収益の計上額と金銭債権の貸倒れの見込み
〔連載の終了にあたって〕
筆者紹介
泉 絢也
(いずみ・じゅんや)
千葉商科大学商経学部准教授
博士(会計学)千葉商科大学大学院経済学研究科准教授、中央大学商学部非常勤講師、中央大学大学院商学研究科非常勤講師、中央大学ビジネススクール非常勤講師
国士舘大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。中央大学商学研究科博士課程後期課程修了。【著書】
・酒井克彦編『キャッチアップ 改正相続法の税務〔令和元年度税制改正対応〕』(ぎょうせい)(共著)
・松嶋 隆弘=渡邊涼介編著『仮想通貨はこう変わる!!暗号資産の法律・税務・会計』(ぎょうせい)(共著)
・福原竜一編『実務にすぐに役立つ改正債権法・相続法コンパクトガイド』(ぎょうせい)(共著)
など【論文】
・「仮想通貨(暗号通貨、暗号資産)の譲渡による所得の譲渡所得該当性-アメリカ連邦所得税におけるキャピタルゲイン及び為替差損益の取扱いを手掛かりとして-」税法学581号3頁以下
・「収益認識会計基準公表に伴う法人税法の改正-法人税法22 条の2を巡る『別段の定め』論議を中心として-」千葉商大論叢57巻2号71頁以下
など
Profession Journal関連記事
関連書籍
-
令和4年版
演習法人税法
公益社団法人 全国経理教育協会 編
定価:2,530円(税込)
会員価格:2,277円(税込)
-
令和3年10月改訂/問答式
法人税事例選集
公認会計士・税理士 森田政夫 共著 公認会計士・税理士 西尾宇一郎 共著
定価:4,840円(税込)
会員価格:4,356円(税込)
-
令和3年版
法人税の決算調整と申告の手引
大西啓之 編
定価:5,720円(税込)
会員価格:5,148円(税込)
-
改訂増補 調査現場からの厳選蔵出し事例集
税理士が判断に迷う 会社税務130例
税理士 馬場文明
定価:3,080円(税込)
会員価格:2,772円(税込)
-
令和3年版/重点解説
法人税申告の実務
公認会計士・税理士 鈴木基史 著
定価:4,400円(税込)
会員価格:3,960円(税込)
-
〔新版〕企業への影響からみる
収益認識基準 実務対応Q&A
EY新日本有限責任監査法人 編
定価:4,180円(税込)
会員価格:3,762円(税込)
-
キャッシュレス決済のしくみと会計実務
EY新日本有限責任監査法人 編
定価:2,420円(税込)
会員価格:2,178円(税込)
-
JAのための収益認識基準の会計実務
みのり監査法人 編著
定価:2,860円(税込)
会員価格:2,574円(税込)
-
現場の視点で疑問に答える
収益認識[会計・法務・税務]Q&A
公認会計士・税理士 貝沼彩、公認会計士・税理士 照井慎平、 公認会計士・税理士 西澤拓哉、公認会計士・税理士 三上光徳 著
定価:2,640円(税込)
会員価格:2,376円(税込)
-
奇跡の通達改正
公認会計士 山本史枝 著
定価:2,640円(税込)
会員価格:2,376円(税込)