固定資産をめぐる判例・裁決例概説
【第54回】
「水道光熱費の使用料金が極めて少なく、かつ、居住目的が特例の適用を受けるためと答述したことから、居住用財産に該当せず、特別控除の適用は認められないとされた事例」
税理士 菅野 真美
▷居住用財産の譲渡所得の特別控除の特例
居住用財産の譲渡所得の特別控除の特例は、居住の用に供している家屋の譲渡もしくはその家屋とともにするその敷地の用に供されている土地等を譲渡した場合、又は住まなくなってから3年を経過する日の属する年の年末までに譲渡した場合の特例である(措置法35①)。
譲渡所得の金額から3,000万円を限度として控除でき、短期譲渡所得であったとしても、条件を満たす場合は適用でき、他の居住用財産の特例の多くは国内の不動産に限られるが、この特例については特に制限は設けられていない。
他方、譲渡先の制限、他の措置法との重複適用の制限、譲渡年の前年、前々年に特別控除の適用等を受けていないこと等の制限もある。
この制度の適用において重要な要件の1つは、「居住の用に供している家屋」とは何かである。これは、「譲渡者が短期間臨時にあるいは仮住まいとして起居していたというのみでは足りず、真に居住の意思を持って客観的にもある程度の期間継続して生活の拠点としていた家屋をいうものと解される。そして、譲渡資産がこれに該当するか否かについては、その者の日常生活の状況やその家屋の利用の実態、その家屋の入居目的、その家屋の構造及び設備の状況等の諸事情を総合的に考慮し、社会通念に従って判断する」(令和4年4月5日広島国税不服審判所)とされている。
つまり、住民票に記載された住所で形式的に判断するのではなく、生活の実態が備わっているかによって、最終的には判断することになる。今回、生活の実態が備わっているかについて争われた事案を検討する。
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