常識としてのビジネス法律
【第26回】
「会社法《平成26年改正対応》(その7)」
弁護士 矢野 千秋
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第1 総論
第2 株式
1 総論
(1) 株式、株主
(2) 株主平等の原則
2 株式の譲渡制限制度
3 自己株式の取得
(1) 株式の消却の概念の整理
(2) 自己株式の取得手続
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4 募集株式発行(持分価値&持分比率)
(1) 募集株式発行(新株発行および自己株式処分)の手続
(2) 出資を履行する期間の設定
(3) 株主割当
(4) 払込証明
(5) 新株予約権
(6) 支配株主の異動を伴う募集株式の発行等
5 株主
(1) 株主の権利
(2) 単独株主権、少数株主権、行使要件
(3) 基準日
6 株券と株主名簿
7 株式買取請求権
8 端株・単元株
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第3 機関設計に関する重点ポイント
1 会社の区別
(1) 大会社、非大会社
(2) 公開会社、非公開会社(株式譲渡制限会社)
2 株式会社の機関設計
第4 株主総会に関する重点ポイント
1 開催までの手続
2 招集通知
3 決議
4 非取締役会設置会社における株主総会
5 議決権行使書面
6 議長と議事進行
《(その4)はこちら》
7 質問と説明義務
8 動議
9 総会決議の瑕疵
10 総会議事録
(1) 作成時期、作成通数など
(2) 記載事項
(3) 署名・押印について
(4) 備え置き
第5 取締役・代表取締役・取締役会に関する重点ポイント
1 総説
2 取締役
(1) 取締役の資格、員数
(2) 任期
(3) 選任、解任
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3 非取締役会設置会社の取締役
(1) 意義
(2) 会社の業務執行機関
(3) 会社の代表機関
4 取締役会
(1) 取締役会設置会社の取締役の職務権限
(2) 意義
(3) 意思決定権限
(4) 職務執行の監督権限
(5) 取締役会の招集
(6) 取締役会の決議
(7) 取締役会の書面決議
(8) 代理人による決議
(9) 利害関係人
5 代表取締役
(1) 意義
(2) 選定
(3) 退任
(4) 職務権限
(5) 専務・常務取締役
《(その6)はこちら》
6 取締役と会社との関係
(1) 善管注意義務と忠実義務
(2) 競業避止義務
(3) 自己取引(利益相反取引)の制限
7 取締役の責任
(1) 取締役の責任
(2) 免責
(3) 役員等の責任追及の訴え(株主代表訴訟)
(4) 取締役の違法行為の差止め
8 取締役と第三者との関係
(1) 総説
(2) 第三者の損害
9 取締役の報酬・賞与・退職慰労金
(1) 総説
(2) 報酬の範囲
(3) 退職慰労金
第6 監査役
1 監査役の資格、員数、任期、選任・解任
取締役と同様、非公開会社について、定款の定めをもって、監査役の資格を株主に限ることを認めた(335条1項、331条2項)。また、商法で欠格事由とされた「破産手続開始の決定を受け復権していない者」を監査役の欠格事由から外すとともに、金融商品取引法や各種倒産法制に定める罪を犯した者を欠格事由に加え(335条1項、331条1項3号)、さらに、法人などが監査役になれないことを明文化した(335条1項、331条1項1号2号)。
監査役設置会社においては員数の制限はない。監査役会設置会社においては、監査役は、3人以上で、そのうち半数以上は、社外監査役でなければならない(335条3項)。
会社法は、監査役の任期を原則4年としながら、非公開会社については、定款に定めることで、監査役の任期を最長で10年まで伸長できることとした。非公開会社では株主構成が変わらないような会社も多いからである。
監査役を選任する株主総会の決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(3分の1以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行わなければならない(341条)。
監査役を解任する株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(3分の1以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。監査役の独立性である。
2 監査役の権限
監査役は、原則として業務監査権限および会計監査権限を有する(381条)。
監査役は取締役の職務の執行を監査する機関であるから、その職務権限は会計監査を含む業務全般の監査に及ぶ。しかし監査はその性格上消極的・防止的なものに過ぎず、しかも違法又は著しく不当な点を指摘できるだけであって、取締役の裁量的決定に容喙(ようかい)すべきものではない(適法性監査)。
(1) 事業報告請求権、業務財産の調査権(381条2項)
監査役は、いつでも、取締役及び会計参与並びに支配人その他の使用人に対して事業の報告を求め、又は監査役設置会社の業務及び財産の状況の調査をすることができる(381条2項)。
請求の相手方の「使用人」とは一般的には雇用契約による被用者を指すが、取締役に継続的に従属する地位にあるものも含む。嘱託、相談役、顧問等の名称の如何を問わない。
請求の時期には法文上制限は無いので、それが会社の業務に著しい支障を及ぼすような時間でない限り拒絶はできない。
調査の範囲であるが、取締役が調査を拒否できる範囲は限られている。監査役の職務と関係のない個人的利益のための場合や、必要性を明らかに欠くような場合である。高度の企業秘密等でも、それが監査に必要である以上拒否できない。監査等委員、監査委員にもあり。限定監査役(下記(6)。監査の範囲を会計に関するものに限定されている監査役を便宜上こう呼ぶ)は会計のみ。
(2) 子会社調査権(381条3項)
監査役は、その職務を行うため必要があるときは、監査役設置会社の子会社に対して事業の報告を求め、又はその子会社の業務及び財産の状況の調査をすることができる(381条3項)。その場合、子会社は、正当な理由があるときは、同項の報告又は調査を拒むことができる(同条4項)。
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