常識としてのビジネス法律
【第11回】
「手形・小切手に関する法律知識(その1)」
弁護士 矢野 千秋
1 基本的な注意点
まず、一般的な注意点を述べる。
手形・小切手(以下「手形」と略す)には、「何を記載すべきか」「何を記載してはならないか」が厳格に法で決められている。したがって、法に定められたことが記載されていなかったり、禁じられたことが記載されていたりすると、手形自体が無効になる可能性がある(要式証券性)。
手形は、券面に記載された事項だけで債務内容が決定されるので、100万円の債務の支払いであるのに誤って手形に「1,000万円」と記載すれば、手形を取得した第三者に対して1,000万円を支払わねばならなくなる(文言証券性)。
手形は、売買代金の支払いのためなど、何らかの原因関係決済のために振り出される。だとすれば、原因関係が解除されたりすれば代金を支払う必要はないはずである。しかし、手形はこれら原因関係とは切り離されており、手形を取得した第三者に対しては手形金を支払わねばならなくなる(無因証券性)。
手形は、手形を呈示して支払請求をしなければならない(呈示証券性)。したがって、手形を紛失すると手形金請求ができなくなるし、第三者がその手形を善意取得すれば手形上の権利を失うことになる。
手形を振り出して、6ヶ月内に2度その支払いができないと、銀行取引停止処分を受けることになる。これは以後2年間、手形交換所に加盟しているすべての金融機関と当座勘定取引と貸付の取引ができなくなるとする制裁処分であり、企業の死刑判決ともいえるものである(いずれ債権回収の箇所で述べるが、手形のこの制裁処分を利用して、債務者から手形を取っておくという回収の確実化の手段がある)。
手形用紙に関しては、特段の法の定めはない。しかし実際には、統一手形用紙を使用したものでなければ銀行は決済物件として取り扱わない。したがって、必ず統一手形用紙を使用した手形であることが必要である。
以下、これらを前提にして説明する。
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