《速報解説》 改正通達受け「消費税経理通達関係Q&A」及び趣旨説明が公表される ~インボイス導入後の免税事業者との取引における法人税(申告調整等)の取扱いを事例で示す~ 税理士 石川 幸恵 1 パブコメを経て改正消費税経理通達が公表される 令和2年12月15日から約1ヶ月間パブコメに付されていた「「消費税法等の施行に伴う法人税法の取扱いについて」(法令解釈通達)(以下「消費税経理通達」)ほか1件の一部改正(案)」は、令和3年2月10日、軽微な修正を経て正式に公表された。 今回の消費税経理通達改正の目的は、仮に、法人が免税事業者からの課税仕入れについてインボイス導入前のように仮払消費税等の額として区分した金額があっても、税務上はその仮払消費税等の額として経理した金額を取引の対価の額に算入して法人税の所得金額の計算を行うことを明らかにするためである。ほか1件とは所得税に関する通達を指し、同様の目的の改正がなされている。 本改正の背景については、パブコメ段階における下記拙稿も参照されたい。 2 改正消費税経理通達の発遣に伴う関連2情報の公表 (1) 改正通達の趣旨説明 上記の改正通達発遣を受け、2月19日、国税庁ホームページにおいて、改正消費税経理通達の趣旨説明が公表された。 この「趣旨説明」では、改正消費税経理通達において改正・廃止・新設のあった項目ごとに、何を明らかにするものか、旧経理通達からの変更内容、廃止の項目については廃止の理由を解説している。 (2) 令和3年改正消費税経理通達関係Q&A (1)の公表に合わせて、改正後の消費税経理通達を基に、免税事業者からの課税仕入れについて、法人税の課税所得計算と申告調整を事例(全9問)で解説している(詳細は後述)。なお「消費税経理通達」という略称はこのQ&A[凡例]において定義されている。 3 Q&Aでは法人税の課税所得計算を具体的に解説 (1) 免税事業者から取得した建物の取扱い 免税事業者から取得した店舗用建物につき、支払対価の110分の10を仮払消費税等として区分して経理し、決算時に仮払消費税等を雑損失に振り替えた場合の別表四、別表五(一)の記載の仕方が具体的に示されている(問5)。 本事例では、この雑損失の額は、本来は建物の取得価額に算入すべきものであるので、 という申告調整を行うとしている。 なお、インボイス制度導入後6年間は、免税事業者からの課税仕入れについて、仕入税額相当額の一定割合を課税仕入れに係る消費税額とみなす経過措置が設けられており、この経過措置期間内の取得についての取扱いも例示されている(問8・問9)。 (2) 交際費の取扱い 交際費の損金不算入制度は、平成26年4月1日から令和4年3月31日までの間に開始する事業年度について適用される(措法61の4)ため、インボイス制度が開始する令和5年10月1日以降の同制度の在り方は、Q&A公表時点では不明である。 このためQ&Aでは、仮に現行制度のまま延長された場合を前提として、免税事業者に支払った飲食代につき、仮払消費税等を区分して経理したときの交際費の額の計算や、交際費から除かれる飲食費の金額基準である5,000円以下の判定についても言及している(問7[参考])。 全9問の項目及びリンク先は以下の通り。 (了) ↓お勧め連載記事↓
2021年2月25日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.408を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
令和2年度税制改正における 国外財産調書制度の見直し 【第5回】 (最終回) 税理士 谷口 勝司 4 国外財産調書に記載すべき国外財産に関する書類の提示又は提出がない場合の過少申告加算税等の軽減措置又は加重措置の特例の創設 (1) 特例の内容 国外財産に係る所得税又は国外財産に対する相続税に関し修正申告等があり、過少申告加算税又は無申告加算税の適用がある居住者が、その修正申告等があった日前に、国税庁、国税局又は税務署の当該職員から国外財産調書に記載すべき国外財産の取得、運用又は処分に係る一定の書類(その電磁的記録を含む)又はその写しの提示又は提出を求められた場合において、その提示又は提出を求められた日から60日を超えない範囲内でその提示又は提出の準備に通常要する日数を勘案して当該職員が指定する日までにその提示又は提出をしなかったとき(その居住者の責めに帰すべき事由がない場合を除く)における軽減措置又は加重措置の適用については、次のとおりとされた(調書法6⑦)。 上記の特例は、要するに、税務調査時の税務当局の求めがあった場合に、これに応じないで、国外財産の関連資料を指定された期限までに提示・提出しなかったときは、過少申告加算税等の軽減措置は適用せず、また、加重措置は加算税割合を更に5%加重するというものである。 例えば、国外財産に係る所得税に関する修正申告等があった場合、当該国外財産につき国外財産調書の提出・記載があれば、通常10%の過少申告加算税は軽減措置の適用により5%の割合になるが、税務当局の求めに応じないで国外財産の関連資料を提示・提出しなかった場合はこの特例措置により(軽減措置は適用されず)10%の割合となる。 また、修正申告等の基因となった国外財産につき国外財産調書の提出・記載がなければ、通常10%の過少申告加算税は加重措置の適用により15%の割合になるが、税務当局の求めに応じないで国外財産の関連資料を提示・提出しなかった場合は、この特例措置により更に5%加重されて最終的に20%の割合となる、ということである。 また、上記(1)本文の「その居住者の責めに帰すべき事由がない場合」とは、例えば、調査において国外財産に関する書類の提示又は提出を求められた後に、その居住者又はその書類を保有する者が、災害、病気による入院等があったことにより、指定された期限までにその提示又は提出をすることができない場合のほか、当該書類を保有する者に書類の取寄せを依頼しても、当該書類の収集に相当な困難を伴うことが判明した場合をいう(調書通達6-6)。 なお、過少申告加算税等の軽減措置又は加重措置の適用に当たっては、その修正申告等の基因となる国外財産についての国外財産調書への記載の有無(重要な事項の記載が不十分であるかどうかを含む)について、一の国外財産ごとに判定することとされている。このため、この提示・提出がない場合の特例の適用に当たっても、国外財産調書に記載すべき国外財産の取得、運用又は処分に係る一定の書類の提示・提出の有無は、一の国外財産ごとに判定することになる(調書通達6-7、6-8)。 (2) 国外財産調書に記載すべき国外財産の取得、運用又は処分に係る書類 上記(1)の「国外財産調書に記載すべき国外財産の取得、運用又は処分に係る一定の書類」は、調書法規則において国外財産の区分に応じてそれぞれその書類が定められており、居住者が通常保存し、又は取得することができると認められるものに限られている。 例えば、次の国外財産は、それぞれ次の書類とされている(調書法規則13の2)。 5 過少申告加算税等の軽減措置、加重措置等の対象となる追徴本税額の計算規定の整備等 国外財産調書の提出がある場合の軽減措置又は国外財産調書の提出がない場合等の加重措置、税務調査時に関連資料の提示・提出がない場合の特例などの適用については、一の国外財産ごとに判定することとされている。 また、一の修正申告等があった場合、その修正申告等の中には、過少申告や無申告が国外財産に基因するものとそれ以外のもの、あるいは隠蔽・仮装によるもの(重加算税対象のもの)等が含まれる場合があり、この場合には、それぞれに応じて加算税の割合や種類が異なることとなる。 このため、一の修正申告等による追徴本税額について、加算税の割合や種類が異なるごとに追徴本税額を区分計算する必要があり、令和2年度改正においてはこの区分計算規定の整備も行われている(調書法6⑧、調書法施行令11②~⑦、12②③)。 この整備の内容については、技術的な計算規定に関するものであり、また字数の関係もあることから、本稿では割愛させていただいた。 【参考】 改正前後の加算税割合の一覧表 〇 国外財産に係る所得税に関し修正申告等があった場合の加算税の割合 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ※1 一の国外財産ごとに判定を行う。 ※2 加算税の税率は通常の税率を示している。例えば、過少申告加算税は、期限内申告税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分は15%となる等、通常の税率と異なる場合があるが、その場合にはそれぞれの税率に、軽減又は加重した税率となる。 ※3 期限後の提出が、調査があったことにより更正又は決定があるべきことを予知してされたものでないときは、期限内に提出されたものとみなされる。 ※4 その年の12月31日において相続国外財産を有する者の責めに帰すべき事由がない場合には、国外財産調書の提出がない場合等の加重措置は適用されず、それぞれ5%減額した税率になる(15%⇒10%、20%⇒15%、25%⇒20%)。 ※5 その居住者の責めに帰すべき事由がない場合を除く。 〇 国外財産に対する相続税に関し修正申告等があった場合の加算税の割合 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ※1 一の国外財産ごとに、かつ、相続人ごとに判定を行う。 ※2 加算税の税率は通常の税率を示している。例えば、過少申告加算税は、期限内申告税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分は15%となる等、通常の税率と異なる場合があるが、その場合にはそれぞれの税率に、軽減又は加重した税率となる。 ※3 期限後の提出が、調査があったことにより更正又は決定があるべきことを予知してされたものでないときは、期限内に提出されたものとみなされる。 ※4 その年の12月31日において相続国外財産を有する者の責めに帰すべき事由がない場合には、国外財産調書の提出がない場合等の加重措置は適用されず、それぞれ5%減額した税率になる(15%⇒10%、20%⇒15%、25%⇒20%)。 ※5 その居住者の責めに帰すべき事由がない場合を除く。 (連載了)
居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第18回】 「買換資産を取得した年の12月31日以前に住宅借入金を全額返済した場合」 -居住用家屋の所有者とその敷地の所有者が異なる場合- 税理士 大久保 昭佳 Q X(夫)とY(妻)は、共に12年程前から住んでいたX所有のA家屋を1,000万円で、Y所有のA土地を2,000万円で、本年3月に売却しました。 買換資産Bに係る購入価額は総額6,000万円で、譲渡資産のそれぞれの収入金額割合に応じ、家屋Bと土地Bの各持分をXが3分の1、Yが3分の2の割合で、本年5月に取得しました。 なお、その購入資金は売却代金の他に、XはM銀行から、YはN銀行から別々の住宅ローンを組んで購入しましたが、同年12月に、XはM銀行にその全額を返済しました。 その他の適用要件が具備されている場合、Yは「居住用財産買換の譲渡損失特例(措法41の5)」を受けることはできるでしょうか。 A 買換資産に係るXの住宅ローンが、買換資産を取得した日の属する年の12月31日までに全額返済されていることから、Yも「居住用財産買換の譲渡損失特例」を受けることができません。 ●○●○解説○●○● 「居住用財産買換の譲渡損失特例」に係る譲渡家屋の所有者以外の者が、その譲渡家屋の敷地の用に供されている土地等で、その譲渡の年の1月1日における所有期間が5年を超えているものの全部又は一部を所有している場合において、租税特別措置法通達41の5-11(居住用家屋の所有者とその敷地の所有者が異なる場合の取扱い)に掲げる要件の全てを満たすときは、これらの者がともに同特例を受ける旨の申告をしたときに限り、その申告を認めるとされています。 そして、上記通達に掲げる要件(4)において、住宅借入金等の年末残高に係る要件が示されています。 ※下線及び赤字部分については筆者加筆。 したがって、本事例の場合は、Yは買換資産を取得した年の12月31日に住宅ローンの金額を有しているものの、譲渡物件に係る家屋の所有者のXが有していないことから、譲渡物件に係る土地の所有者であるYも「居住用財産買換の譲渡損失特例」の適用を受けることができません。 (了)
〈判例評釈〉 ユニバーサルミュージック高裁判決 【第2回】 公認会計士・税理士 霞 晴久 3 争点及び当事者の主張 (1) 争点 本件の争点は、本件各更正処分の適法性であり、具体的には①法人税法132条1項にいう「その法人の行為又は計算で、これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」の該当性、及び②Xの本件事業年度における所得金額及び納付すべき法人税額である。ただし、本件では、第一審及びその控訴審ともに、①の争点における該当性が認められなかったため、②については、いずれの判決においても検討されていない。 (2) 国(被告・控訴人)の主張(※8) (※8) 控訴審における当事者の補充主張を要約している。 法人税法132条1項の不当性要件については、原判決も説示する経済合理性基準(「専ら経済的、実質的見地において、当該行為又は計算が純粋経済人として不自然、不合理なものと認められるか否か、すなわち経済的合理性を欠くか否かという客観的、合理的基準」をいう。以下同じ)を踏まえ、①同族会社の具体的な行為・計算が異常ないし変則的であるといえるか否か、②その行為・計算を行ったことにつき租税回避以外に正当で合理的な理由ないし事業目的があったと認められるか否かによって判断すべきである。 これを本件についてみると、次の(A)~(E)の事情に照らせば、本件組織再編取引等及びその一部である本件借入れは、①極めて異常で変則的なものであり、②これを行ったことにつき租税回避以外に正当で合理的な理由ないし事業目的はなかったから、経済的合理性を欠く「不当」なものであり、法人税法132条1項の不当性要件該当性が認められる。 (3) Xの主張 法人税法132条1項の不当性要件については、納税者の経営判断の当否に課税庁の独自の視点で過度に踏み込んで判断してはならず、経済合理性基準を踏まえて、法人税の負担が減少するという利益を除けば当該行為又は計算によって得られる経済的利益がおよそないといえるか、あるいは、当該行為又は計算を行う必要性を全く欠いているといえるかという観点から判断すべきである。控訴人の主張する不当性要件の判断枠組みに関する解釈は、独自の見解であり、失当である。 本件組織再編取引は、V社グループが全世界で買収を重ねた結果、錯綜したグループ内の関連会社の関係を整理して事業を効率化するとともに、財務上の利益を図るために実施されたものであり、次のようなオランダ法人の負債軽減(下記目的①)、日本法人の経営の合理化(同目的②・③、⑥~⑧)及び日本法人の財務の合理化(同目的④・⑤)の3つの柱(本件8つの目的)を同時に達成するために、経営上の必要から行われたものである。したがって、本件借入れには経済合理性がある。 【V社グループが設定した本件8つの目的(目的達成のため組織再編取引等を実施)】 (続く)
〔令和3年3月期〕 決算・申告にあたっての税務上の留意点 【第4回】 (最終回) 「「地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の拡充と延長」 「法人事業税の税率の見直し」 「大法人の電子申告の義務化」 「特定資産の買換え特例の見直しと延長」 「法人の土地譲渡益に対する追加課税制度の見直しと適用停止措置の期限延長」」 公認会計士・税理士 新名 貴則 令和2年度税制改正における改正事項を中心として、令和3年3月期の決算・申告においては、いくつか留意すべき点がある。【第3回】は「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策における税制上の措置」、「中小企業者の欠損金等以外の欠損金の繰戻し還付不適用措置の延長」及び「時価評価制度の見直し」について解説した。 最終回である【第4回】は「地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の拡充と延長」、「法人事業税の税率の見直し」、「大法人の電子申告の義務化」、「特定資産の買換え特例の見直しと延長」及び「法人の土地譲渡益に対する追加課税制度の見直しと適用停止措置の期限延長」について解説する。 1 地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の拡充と延長 地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)とは、青色申告法人が、地域再生法の認定地域再生計画に記載された「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」に関連する寄附金を支出した場合に、従来の損金算入措置に加えて税額控除(法人事業税、法人住民税、法人税)を受けることができる制度である。 (1) 控除割合の引上げと適用期間の延長 令和2年度税制改正により、税額控除割合が最大30%から60%に引き上げられている。このため、通常の損金算入による税額軽減効果(約30%)と合わせると、最大約90%の税額軽減効果が得られることになる。また、同時に適用期間が5年間(令和7年3月31日までの寄附まで)延長されている。 (※1) 法人道府県民税と法人市町村民税の合計。 (※2) 法人住民税から控除しきれなかった金額は、法人税から控除可能(上限あり)。 (2) 手続の簡素化・迅速化 個別事業を認定する方式から、包括的に事業を認定する方式に転換し、認定手続を簡素化する。 この改正は令和2年4月1日以後に支出する寄付に適用されるので、令和3年3月期の決算申告においては適用されることになる。 2 法人事業税の税率の見直し 令和元年度税制改正により、法人事業税の税率が見直されており、また、地方法人特別税が廃止され特別法人事業税が創設されている。ただし、全体としての税負担率は変わらないように設定されている。 令和元年10月1日以後に開始する事業年度から適用されるので、令和3年3月期の決算申告においては適用されることになるので注意が必要である。 3 大法人の電子申告の義務化 平成30年度税制改正により、一定の法人が行う法人税の申告は、電子申告により提出することが義務化されている 。電子申告義務化の対象は法人税だけではなく、消費税、法人市町村民税、法人都道府県民税、法人事業税も対象である。また、確定申告書だけではなく、中間申告書や修正申告書も対象となる。 (※) 消費税については、国及び地方公共団体も対象。 電子申告すべき書類を申告期限内に電子提出せず、書面により提出した場合は、その申告書は無効となり、無申告加算税の対象となるので注意が必要である。 ただし、一定の事由(電気通信回線の故障、災害等の理由によりインターネットが利用できず電子申告ができない場合)により電子的な提出が困難と認められる場合は、税務署長の承認に基づき、例外的に書面による申告書等の提出が可能である。 令和2年4月1日以後に開始する事業年度から適用されるので、令和3年3月期の決算申告には適用されることになる。 4 特定資産の買換え特例の見直しと延長 「特定資産の買換え特例」とは、法人が所有する特定の資産(譲渡資産)を譲渡し、一定期間内に特定の資産(買換資産)を取得し、取得から1年以内に事業供用した場合又は供用する見込みである場合に、買換資産について圧縮記帳の適用を受けることができる制度である。 適用期間は令和2年3月31日までとされていたが、令和2年度税制改正により3年間(令和5年3月31日まで)延長されている。したがって、令和3年3月期の決算申告においては制度の適用がある。 また、令和2年度税制改正において主に次の見直しを行っている。 ① 既成市街地等の内から外への買換え 適用対象を次の通り見直している。 ② 長期所有の土地、建物等の買換え 対象資産を次の通り見直している。 これらの見直しは令和2年4月1日以後に譲渡資産を譲渡し、買換資産を取得する場合に適用されるので、令和3年3月期の決算申告においては適用があることになる。 5 法人の土地譲渡益に対する追加課税制度の見直しと適用停止措置の期限延長 (1) 一般の譲渡益の場合 土地譲渡益に対する追加課税制度とは、法人が土地の譲渡等をした場合に、その譲渡利益金額の合計額に対し、通常の法人税とは別に5%の税率による追加課税が行われる制度である。ただし、この制度は令和2年3月31日までの土地譲渡等については、適用が停止されていた。 令和2年度税制改正により、追加課税制度の一部見直しを行った上で、適用停止措置が3年間(令和5年3月31日までの土地譲渡等まで)延長されている。したがって、令和3年3月期の決算申告においては、追加課税制度の適用は停止されていることになる。 (2) 短期の譲渡益の場合 法人が短期所有(所有期間5年以下)の土地の譲渡等を行った場合に、その譲渡利益金額に対し、通常の法人税とは別に10%の税率による追加課税が行われる制度である。 一般の譲渡益と同様、令和2年3月31日までの土地譲渡等については適用が停止されていたが、令和2年度税制改正により、適用停止措置が3年間(令和5年3月31日までの土地譲渡等まで)延長されている。したがって、令和3年3月期の決算申告においては、追加課税制度の適用は停止されていることになる。 (連載了)
「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例95(相続税)】 税理士 齋藤 和助 《基礎知識》 ◆障害者控除(相法19の4) 相続又は遺贈により財産を取得した者が法定相続人(居住無制限納税義務者に限る)で、障害者である場合には、その者の相続税額から次の算式で計算した障害者控除額を控除した金額をもってその納付すべき相続税額とする。 ◆控除不足額の取扱い 障害者控除額に控除不足額が生じた場合には、その者の扶養義務者で同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した者の相続税額から控除することができる。 この場合において、控除を受けることができる扶養義務者が2人以上あるときは、各扶養義務者の控除額は、次の①又は②の金額とされる。 ◆扶養義務者(相基通1の2-1) 「扶養義務者」とは、配偶者並びに民法(明治29年法律第89号)第877条《扶養義務者》の規定による直系血族及び兄弟姉妹並びに家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となった三親等内の親族をいうのであるが、これらの者のほか三親等内の親族で生計を一にする者については、家庭裁判所の審判がない場合であってもこれに該当するものとして取り扱うものとする。なお、上記扶養義務者に該当するかどうかの判定は、相続税にあっては相続開始の時、贈与税にあっては贈与の時の状況による。 ◆過去に障害者控除を受けたことがある場合 障害者控除を受けることができる者が、その者又はその扶養義務者について既に障害者控除を受けたことがある場合には、その者又はその扶養義務者が障害者控除を受けることができる金額は、既に控除を受けた金額の合計額が、障害者控除を受けることができる金額に満たなかった部分の金額に限るものとする。 (了)
租税争訟レポート 【第53回】 「居住用不動産の売買取引に係る課税仕入れの区分 (東京地方裁判所令和2年9月3日判決)」 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 【判決の概要】 【事案の概要】 不動産の売買及び仲介業務等を目的とする株式会社である原告は、平成27年3月期から平成29年3月期までの各課税期間において、将来の転売を目的としてマンション84棟(その一部又は全部が住宅として貸し付けられているもの。以下「本件各マンション」という)を購入した。 本件各マンションの購入は、消費税法2条12号に定める課税仕入れに当たるところ、原告は、各課税期間に係る消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という)の確定申告において、本件各課税仕入れが同法30条2項1号にいう「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」(課税対応課税仕入れ)に区分されるとして、本件各課税仕入れに係る消費税額の全額を当該課税期間に係る課税標準額に対する消費税額から控除して申告を行った。 これに対し、麹町税務署長(処分行政庁)は、本件各課税仕入れは同号にいう「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」(共通対応課税仕入れ)に区分すべきものであるから、本件各課税仕入れに係る消費税額の一部しか控除することができないとして、平成30年7月30日付けで、原告に対し、各課税期間に係る消費税等の各更正処分及びこれらに伴う過少申告加算税の各賦課決定処分をした。 本件は、原告が、被告を相手に、本件各更正処分のうち申告額を超える部分及び本件各賦課決定処分の取消しを求める事案である。 【判決の概要】 1 争点 争点は次のとおりであるが、東京地方裁判所は、〔争点1〕の課税仕入れの区分について、原告の主張を全面的に認容する判断を示して、〔争点2〕及び〔争点3〕については判示していないことから、本稿でも、〔争点1〕を中心に、被告及び原告の主張並びに裁判所の判断を中心に検討することとしたい。 2 被告(国/処分行政庁)の主張 〔争点1〕について、被告は次のように事実関係を述べたうえで、結論として、「本件各課税仕入れは、(中略)将来の転売(課税資産の譲渡等)に要するものであるとともに、(中略)住宅の貸付け(その他の資産の譲渡等)にも要するものであるから、共通対応課税仕入れに区分すべきである」と主張した。 (1) 用途区分の判定基準 事業者が行った仕入れが課税仕入れ等に該当するか否かは、仕入れを行った日において判断されるべきものである。そして、課税仕入れ等に該当すると判断された場合には、当該課税仕入れ等に係る消費税額は、対応する課税資産の譲渡等が実際に行われたか否かにかかわらず、仕入れを行った日の属する課税期間において、課税標準額に対する消費税額から控除されることになる。いわゆる費用収益対応の原則は、仕入税額控除においては採用されていない。 控除の対象となる税額を個別対応方式に基づいて計算する場合、課税期間中に国内において行った課税仕入れ等について、その用途区分を明らかにする必要があるところ、消費税法30条2項1号は、課税仕入れ等が実際にいかなる資産の譲渡等に用いられたかを問題としていない。 以上を踏まえれば、用途区分の判定に当たっては、当該課税仕入れ等を行った日の状況に基づき、その取引が事業者において行う将来の多様な取引のうちどのような取引に要するものであるのかを客観的に判断すべきものと解するのが相当である。そして、このような判断は、将来の事情を想定して行わざるを得ないものであるから、当該課税仕入れ等を行った日を基準に、当該事業者における過去の同種の課税仕入れ等の状況や事業内容、あるいは当該課税仕入れ等に係る一連の事情等から考察される当該課税仕入れ等の目的・意図、さらに、客観的にみてその後に予定されているといえる取引の内容といった事情を考慮して行うのが相当である。 (2) 本件各課税仕入れの用途区分 本件各課税仕入れは、将来の転売(課税資産の譲渡等)に要するものであるとともに、住宅の貸付け(その他の資産の譲渡等)にも要するものであるから、共通対応課税仕入れに区分すべきである。 その理由として、原告は、収益不動産を購入し、バリューアップを行ったうえで富裕層の個人投資家に転売するとのビジネスモデルに基づく事業を行っており、本件各マンションを譲り受けた日の時点において、本件各マンションを転売することを客観的に予定していたと認めるのが相当であり、本件各課税仕入れは、本件各仕入日において、原告が将来行う「課税資産の譲渡等」に要するものであったというべきである。 一方、本件各マンションは、いずれもその一部又は全部が住宅として貸し付けられていたところ、原告は、本件各マンションを譲り受けるに当たり、賃借権付売買契約により上記の貸付けに係る賃貸人たる地位を承継しているのであるから、本件各仕入日の時点において、本件各マンションから賃料を確実に収受することができる状況にあったというべきであることから、原告は、本件各仕入日の時点において、本件各マンションから生ずる貸料を収受することを客観的に予定していたと認めるのが相当であり、原告は、本件各マンションの譲受けに際し、本件各マンションから生ずる貸料を収受することを客観的に予定していたと認められるのであるから、本件各課税仕入れは、本件各仕入日において、原告が将来行う「その他の資産の譲渡等」たる住宅の貸付けに要するものであったというべきである。 3 原告の主張 原告は、〔争点1〕について、次のように事実関係を述べたうえで、結論として、「本件各課税仕入れは、(中略)将来の転売(課税資産の譲渡等)との間では条件関係が満たされる一方、(中略)住宅の貸付け(その他の資産の譲渡等)との間では条件関係が満たされないから、課税対応課税仕入れに区分すべきである」と主張した。 (1) 用途区分の判断基準 消費税法30条2項1号は、控除対象仕入税額の計算において個別対応方式を用いる場合には、課税仕入れ等の用途区分、すなわち、当該課税仕入れ等が①「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」(課税対応課税仕入れ)、②「課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等(その他の資産の譲渡等)にのみ要するもの」(非課税対応課税仕入れ)及び③「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」(共通対応課税仕入れ)のいずれに対応するものであるかを明らかにしなければならないと規定している。 この①及び②に共通して用いられている「にのみ要するもの」という文言を文理に即して解釈すれば、「その資産の譲渡等を行わないのであればそもそも事業者はその課税仕入れ等を行わなかった」という条件関係を意味するものであり、このような条件関係の判断は、課税の累積の排除という仕入税額控除の趣旨を適正に達成するため、現実に行われた個々の課税仕入れ等を前提として、当該課税仕入れ等がされた日の状況により、様々な事情を考慮して個別具体的かつ客観的に行うべきである。 上記の判断基準をコストの観点に引き直せば、課税対応課税仕入れとは、課税資産の譲渡等による売上げをもって課税仕入れ等のコストを回収することができる(コストについて条件関係が認められる)課税仕入れ、すなわち、「その対価の額が最終的に課税資産の譲渡等のコストに入るような課税仕入れ等」を意味するということになる。 また、事業者の目的(個別具体的かつ客観的に認定されるところの課税仕入れ等の目的)、という観点に引き直せば、①用途区分の判定は事業者の最終的な目的(課税資産の譲渡等が達成できないのであればそもそも事業者はその課税仕入れ等を行わなかったといえる〔すなわち条件関係が認められる〕課税資産の譲渡等)に基づいて判断すべきであり、②仮に副次的に得る対価があったとしても、その副次的に得る対価はその判断を左右しない(副次的な対価を得る資産の譲渡等が行われても行われなくても、事業者はいずれにせよその課税仕入れ等を行っていたという場合には、その資産の譲渡等との間に条件関係は認められない)ということができる。 (2) 本件各課税仕入れの用途区分 本件各課税仕入れは、次のとおり、将来の転売(課税資産の譲渡等)との間では条件関係が満たされる一方、住宅の貸付け(その他の資産の譲渡等)との間では条件関係が満たされないから、課税対応課税仕入れに区分すべきである。 ①の理由として、原告は、収益不動産を購入し、バリューアップを行ったうえで富裕層の個人投資家に転売するとのビジネスモデルに基づく事業を行っており、本件各マンショシについても、このビジネスモデルの一環として将来の転売を前提に譲り受けたものであるから、個人投資家への転売たる課税資産の譲渡等を行わないのであれば、そもそも本件各課税仕入れを行わなかったということができ、本件各課税仕入れと将来の転売(課税資産の譲渡等)との間には条件関係が認められる。 また、②の理由としては、原告は、このビジネスモデルにおいて、原告が仕入れた収益不動産を保有期間中に貸し付けることは、当該収益不動産のバリューアップという将来の転売のための前提ないしは手段にすぎないのであるから、その側面を条件関係の判断において考慮することは相当ではない。また、バリューアップという観点を離れて賃料収入を得るためだけに住宅の貸付けを行うことはないのであるから、原告について、住宅の貸付けたるその他の資産の譲渡等を行わないのであれば、そもそも本件各課税仕入れを行わなかったということはできず、したがって、本件各課税仕入れと住宅の貸付け(その他の資産の譲渡等)との間には条件関係が認められない。 4 東京地方裁判所の判断 (1) 仕入税額控除及び用途区分の趣旨等 裁判所はまず、課税仕入れの用途区分に係る判断は、税負担の累積の排除という消費税法の目的に照らし、課税仕入れに係る消費税額について税負担の累積を招くものとそうでないものとに適正に配分するという観点から、当該課税仕入れがいかなる取引のために行われたものであるのかを、その経済実態に即して適切に行うべきものであると判示したうえで、消費税法30条2項1号の文言及び趣旨に鑑みると、課税仕入れ等の用途区分に係る判断は、当該課税仕入れ等を行った日(仕入日)を基準に、事業者が将来におけるどのような取引のために当該課税仕入れ等を行ったのかを認定して行うべきであり、その認定に当たっては、税負担の判断が事業者の恣意に左右されることのないよう、①当該事業者の事業内容・業務実態、②当該事業者における過去の同種の課税仕入れ等及びこれに対応して行われた取引の内容・状況、③当該課税仕入れ等と過去の同種の課税仕入れ等との異同など、仕入日に存在した客観的な諸事情に基づき認定するのが相当であると述べた。 (2) 本件各課税仕入れに係る用途区分の判定 裁判所は、原告のビジネスモデルについて認定した事実を踏まえ、本件各課税仕入れに係る用途区分を検討した結果、原告が本件事業において仕入れた収益不動産を賃貸して得られる賃料収入は、当該収益不動産の販売を行うための手段としての賃貸から不可避的に生じる副産物として位置付けられるものであり、原告が実際に得ている賃料収入も、販売収入と賃料収入の総和に対して3課税期間の平均で5%未満にとどまっていることから、本件各仕入日に上記のような賃料収入が見込まれることをもって、本件各課税仕入れにつき「その他の資産の譲渡等」にも要するものとして共通対応課税仕入れに区分することは、本件事業に係る経済実態から著しくかい離するばかりでなく、課税仕入れに係る消費税額について税負担の累積を招くものとそうでないものとに適正に配分するという観点に照らしても、相当性を欠くものといわざるを得ないと結論づけた。 そのうえで、裁判所は、本件各課税仕入れは課税資産の譲渡等にのみ要するものとして課税対応課税仕入れに区分するのが相当であるから、本件各課税仕入れに係る消費税額は、その全額が控除対象仕入税額となるという判断を示した。 (3) 被告の主張について 被告は、原告のウェブサイトに、「ストック型フィービジネスの収益には・・中古物件を仕入れた後、販売するまでの間に確保できる賃料収入も含まれて」おり、「収益不動産残高の拡充を進め、賃料収入を増加させることで、安定した収益モデルへの転換を図って」いるとの記載があることを根拠に、本件各課税仕入れは将来の転売のみならず住宅の貸付けにも要するものであったとする主張に対して、裁判所は、原告のウェブサイトにおける上記の記載は、いわゆるIR情報(投資家向け広報)として公にされたものであり、原告の主力事業である収益不動産販売事業の拡大に伴い生ずる収益不動産残高の増加という事態を、投資家からネガティブに捉えられないよう説明する趣旨と理解することができるものであって、こうした記載が存在するというだけで、本件各課税仕入れが住宅の貸付けにも要するものであったと認めることはできないとして、被告の主張を斥けた。 【解説】 転売目的で購入した住宅用マンションについて、転売までの期間に発生する賃貸収入(消費税法においては非課税売上に該当する)を根拠に、住宅用マンション購入時の消費税等について、個別対応方式によりその全額を仕入税額控除の対象とすることを認めなかった課税庁の判断は、東京地方裁判所により覆された。 過去の税務調査においては、こうしたビジネスモデルについては、課税庁も、原告のような消費税申告を是認してきただけに、類似の事案も多く、国税不服審判所による裁決も出されているところである。判決の中では触れられなかった原告の主張と、類似案件に係る裁決の概要を見ておきたい。 1 原告であるADワークスの主張 原処分庁による更正処分を受けたADワークスは、2018年7月31日、「過年度消費税相当額等の引当てに伴う特別損失の計上に関するお知らせ」と題したリリースを公表し、過年度の消費税に係る追加納付及び加算金として757百万円を、2019年3月期第1四半期決算において特別損失として計上することを公表している。このリリースの中で、突然、消費税に係る税務処理の変更を求められたADワークスの本音が説明されているので、引用しておきたい。 このリリース公表後、ADワークスは、同年9月13日付で国税不服審判所長に対して、更正処分の取消しを求める審査請求を行い、審査請求をした翌日から起算して3ヶ月を経過しても裁決がなされなかったことから、同年12月14日付で本件更正処分等の取消しを求める訴訟を東京地方裁判所に提起したものである。 2 国税不服審判所の判断 ほぼ同種の賦課決定処分に対する審判を求めた事案で、国税不服審判所は、次のように判断して、納税者による「本件課税仕入れは、課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れに該当するというべきである」という主張を斥け、審査請求を棄却している(※)。 (※) 国税不服審判所平成30年7月9日裁決【東裁(諸)平30-12】(TAINSコード:F0-5-248)。 棄却の判断の根拠としては、「個別対応方式における用途区分は、課税仕入れを行った日の状況により行うこととされている」ことから、「本件各物件の建物は、いずれも請求人が販売に要するために取得したものと認められる一方で、本件課税仕入れを行った日には、いずれも住宅の貸付けの用にも供されていたのであるから、本件課税仕入れは、課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れに該当する」として、請求人の主張には理由がない、というものであった。 (了)
固定資産をめぐる判例・裁決例概説 【第2回】 「納骨堂は境内建物・境内地として固定資産税が非課税になるか否かで争われた判例」 税理士 菅野 真美 ▷宗教法人が有する固定資産で固定資産税が非課税となるもの 固定資産税は、その年1月1日に土地、家屋、償却資産を有する者について市町村(東京都特別区においては東京都)が、これらの価格に基づいて課税するものであるが、一定の固定資産については非課税とされている。この固定資産税が非課税とされているものには、宗教法人が有する固定資産が含まれており、次のように定められている。 そして宗教法人法では次のように定められている。 地方税法の条文で、固定資産税が非課税となるものは、宗教法人法で定義された境内建物と境内地のうち、宗教法人が専らその本来の用に供するものに限定されている。それでは、宗教法人が専らその本来の用に供するものの範囲はどのようなものかについて、納骨堂として建設された建物、土地に係る固定資産税について境内建物・境内地に該当するか否かで争われた事例に基づいて検討する。 ▷どのような事案か 時系列で経緯を書くと次のようになる。 ▷争点は何か 課税対象とされた土地、建物が「宗教法人がその本来の用に供する」「宗教法人法第3条に規定する境内建物及び境内地」に該当するか否かである。 行政庁は、宗教法人が専ら本来の用に供するとは、必須的宗教目的のために限って使用する状態のことであり、一般社会通念に基づいて客観すべきである。業者を通じて納骨堂の使用者を広く募集し、追加使用料の支払を条件として宗派を問わず法要等を営むことは、本質的な宗教活動のために専ら使用されているとは認められないと主張した。 これに対して、X側は、建物において遺骨の供養、勤行等宗教活動を行っているから境内建物や境内地に該当し、固定資産税等は非課税となるべきである。Xが、宗派を問わず、慰霊のための読経を行っているのは宗教的意義が失われるものではなく、他宗派の僧侶による法要等は例外にすぎず、業者に永代使用権の販売委託はしているが契約を締結する段階にとどまり、納骨堂事業の運営主体はXのみであると主張した。 ▷裁判所の判断 判決は、Xの請求をすべて棄却した。 固定資産税が非課税となるのは、境内建物や境内地のうち宗教法人が専ら本来の用に供している部分に限られる。これは実際の使用状況に基づいて外形的、客観的に判断すべきである。 非課税とされた部分は、本堂、庫裏、教団事務所のようなものであり、礼拝の施設等として使用している状態にあるということができるから、宗教法人が専らその本来の用に供する境内建物及び境内地に該当する。 しかし、課税対象部分は、使用状況からみると宗教団体として主たる目的を実現するために使用している状態にあると認められない。 Xは、納骨堂の使用について宗派を問わないことは宗教的意義が失われるものではないと主張したが、原告以外の宗派の僧侶等が法要を行う場合は、施設利用料を支払うとされ、例外的とはいえない割合で行われているから、専ら、宗教団体としての主たる目的実現のために使用している状態とはいえない。また、Xは販売を業者に委託しているが、その関与は契約を締結する段階にとどまるものであり、事業の運営主体と評価されるべきではないと主張したが、業者が販売業務を独占しており、建物の一部を無償で使用でき、法要時においては、仏壇等の販売が予定されていたことから、Xの主張は失当であると判断した。 * * * この事案においては、納骨堂として建設されたものと敷地についてはすべてを固定資産税の非課税の対象とせず、専ら本来の用に供する部分に限定する判断を行った。裁判所は、原告以外の宗派による法要が15%あることを捉えて例外的とはいえない割合と述べているが、ここだけ切り出して考えると厳しい判断のようにも思われる。どの程度ならば例外的な割合となるのか。 宗教法人に対する優遇税制は歴史的なものでもあり、現代の社会情勢から行政庁に厳格な対応を求められたことがこの判断につながったと考えられるが、この流れが逆戻りするような理由を見つけるのは難しい。 (了)
〔弁護士目線でみた〕 実務に活かす国税通則法 【第10回】 「流れでわかる査察手続」 弁護士 下尾 裕 本稿では、国税通則法に定めがあるものの、税理士業務の中では馴染みの薄い「査察手続」について解説する。 1 査察手続とは (1) 査察手続 査察手続とは、端的には脱税を摘発するための調査手続である。 一般に税務調査においては、納税者等に受忍義務はあるものの、納税者等が保有する資料等をその意思に反して強制的に取得することはできない。これに対し、査察手続においては、脱税を取り締まるため、刑事手続と同様に、裁判所の許可を得た上で、強制的に納税者等の手元にある資料等を差し押さえることが可能である。 これらの査察手続は、元々は、国税犯則取締法により定められていたが、平成29年税制改正において廃止され、現在は国税通則法に編入されている。 (2) 査察手続の概要 査察の手続は概ね以下のような流れで行われる。誤解を恐れずに言えば、通常の刑事手続において警察が果たすべき働きを代わりに国税局の査察部(いわゆる「マルサ」)が担うことになる。警察であれば、捜査の上、検察官に事件を送致する流れを取るが、査察手続においては、国税局が検察官に対し、犯則被疑者を告発することになる。 令和2年6月に国税庁が公表した「令和元年度 査察の概要」によれば、令和元年に処理された事案のうち告発された案件の占める割合(告発率)は70.3%、告発案件における1件あたりの脱税額は8,000万円とのことである。同年度に処理された案件の1件あたりの脱税額が7,300万円であることを踏まえると、現状においては、多くの査察案件は告発を前提に着手され、その多くが告発されていることがわかる。 また、平成29年度から令和元年度までの間に下された査察事案に係る第一審判決389件の有罪率は100%となっており、そのうち実刑となったのは20件となっている。 2 査察手続における留意点 脱税事件の手続についてはあまり詳細が語られることがないが、筆者の過去の経験等も踏まえた主な留意点は以下のとおりである。 (1) 査察調査から告発等に至るまで 査察調査は、無予告の強制調査(捜査・差押)からスタートするケースが多い。納税者(法人の場合は代表者等)が身柄を拘束されるケースは多くなく、上記強制調査により証拠を確保した後は、任意調査で事情聴取等が行われる場合が多い。 査察案件においては、納税者が脱税した金額を納税したかどうかがその後の量刑に影響することから、多くの納税者は資力がある限り脱税金額を納税することになるが、この場合の納税者の直接の窓口は、一般に査察部ではなく所轄の税務署となる。納税者は、査察部の指導を受けつつ、修正申告を行うとともに、その後別途賦課される加算税等に相当する金額を含めて、仮納付を行うなどの対応を取る場合もある。 特に身柄拘束がなされていないケースでは、査察調査の調査着手から告発に至るまで、半年から1年程度の時間を要するケースも珍しくない。 (2) 告発等 査察案件においては、対象税目が①直接国税又は申告納税方式による間接国税であるか、それとも②申告納税方式によらない間接国税であるかで、査察調査終了時の手続に差異がある。ただ、査察案件の多くは、①に該当する所得税、法人税、相続税及び消費税の案件であり、②に該当する源泉所得税の案件は少数である。また、②のケースについても、現実的に国税当局が査察調査に着手するのは告発に値するだけの案件であると想定されることから、やはり基本的には告発することが基本線であると想定される。 ① 直接国税又は申告納税方式による間接国税の場合 この場合、国税当局は、「犯則があると思料するとき」は、告発をしなければならないものとされている(国税通則法第155条)。一方、犯則の心証を得ない場合は、その旨を納税者(犯則被疑者)に通知した上で、押収していた物件等を返還することになっている(国税通則法第160条)。 ② 申告納税方式によらない間接国税の場合 この場合、①の場合とは異なり、国税当局は、犯則調査終了の時点で、まず、その調査結果を報告又は通報することが原則となっており、この時点で告発するのは、納税者(犯則被疑者)の居所不明や逃亡又は罪証隠滅の恐れがある場合に限定されている(国税通則法第156条第1項)。 その後、国税当局は、犯則の心証を得た場合には、まず納税者に対し、その理由を示した上で、追徴金及び費用の納付を通告することになる。この段階で、国税当局が告発を選択するのは、情状が懲役の刑に処すべきものである場合、犯則者に通告された金額につき、納付を履行する資力がない場合及び上記通告から20日以内に納付の履行がない場合に限られている(国税通則法第157条、第158条)。一方、犯則の心証を得ない場合は、その旨を納税者(犯則被疑者)に通知した上で、押収していた物件等を返還することになっている(国税通則法第160条)。 (3) 検察官による捜査・起訴 検察官は、国税当局からの告発を受けて、査察の関係資料を検討の上、最終的に案件を起訴するかどうかを決定する。特に都市圏においては、査察案件は特捜部又は特別刑事部といった経済犯等の専門部署が担当するのが通常である。手続の流れ上は、告発後に初めて検察官が登場するが、実際に査察部において告発前の段階から検察官と情報共有等を行って方針決定しているケースが多いのではないかと推測される。 前回述べたとおり、国税の更正期限自体は原則5年であるが、脱税が過去5年に跨っているケースでも、検察官が過去5年分をすべて起訴するケースは少なく、過去3年分程度のみを起訴する場合が多いと思われる。 (4) 刑事裁判 脱税事案の刑事裁判においては、被告人である納税者が脱税の事実を争わない場合でも、審理が1回で終わるケースは基本的になく、2回~3回の審理を経て判決に至るケースが多いように思われる。 検察官の犯罪立証は、その大半が査察部の作成した報告書や調書、さらには検察官の取調べを録取した検察官調書により行われる。その上で、被告人が事実関係を争わない事例においては、弁護人側より、被告人が納税を行った事実やその他再発防止に向けた取組み等の情状に関する証拠が提出される。 読者の皆様において関心が高いであろう実刑の基準であるが、例えば1999年に出版された松沢智『租税処罰法』(有斐閣)では、「逋脱税額が1億円以上で申告率が零か著しく低く(逋脱税額が高く)、逋脱の手口も申告納税制度の根幹を破壊するような悪質なものの実刑率が高い」(同書232頁)などと説明されている。 また、多くの有罪判決においては(執行猶予付きの)懲役刑とともに罰金が併科されるが、この場合の罰金額について、上記『租税処罰法』においては「逋脱税額」(起訴された脱税額)の20%~40%相当が多いと説明されており(同書232頁)、現在の実務も概ね同様の水準であると想定される。 以上が査察手続の概要である。近年は、国際的な租税回避が増加する中で、海外取引を利用した脱税事案に対する取組みが強化されており、令和元年度においては、租税条約に基づく情報交換制度を活用した告発事案、さらには大阪国税局において初めて平成26年に創設された国外財産調書の不提出に関する刑事処罰が行われるに至っている。 このような国際的な事案への取組みが今後も継続されるものと想定され、その動向を注視する必要がある。 (了)