2020年3月5日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.359を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
monthly TAX views -No.86- 「新制度で変われるか、法科大学院」 東京財団政策研究所研究主幹 中央大学法科大学院特任教授 森信 茂樹 筆者は法科大学院に14年間勤務してきたが、本年3月に定年退官する。おりしも法科大学院は今、大きな変革期を迎えようとしている。この機会に、自らの経験を基に法科大学院改革について述べてみたい。 法科大学院制度は創設から15年を経たが、設立当初の目的を果たしているとは言い難い状況にある。法曹人口の増加を受け入れるだけの社会体制が整わず、司法試験の合格者や合格率が想定より大きく低下した。加えて、合格まで時間がかかることによる経済的な負担の増加、極めつけは予備試験という抜け道が拡大したことによる。 * * * 司法試験を受験するには法科大学院の修了が要件となっており、通常、法学既修者で2年、未修者で3年かかる。その間の経済的負担は、授業料だけで年間200万円弱である。 一方、経済的負担などを考慮して、法科大学院に行かなくても司法試験を受験できる例外的な制度として予備試験がある。時間的・経済的負担が軽減できるので、多くの大学生が予備試験を選択し始めた。このため予備試験は優秀な学生が受験するコースとして認識され、予備試験合格者は大手法律事務所の就職に有利になるという、本末転倒な状況が生じている。 その結果、法科大学院への志願者は大幅に減少した。過半数の法科大学院が募集を停止、入学者はピーク時の28%にまで落ち込んだ。志願者に至ってはピーク時の1割強という惨状である。 このような状況を踏まえ、本年4月から新たな制度が始まる。 新制度では、法学部に法科大学院直結の3年法曹コースが設置され、法科大学院既修コース(2年間)に入れば在学中に司法試験の受験ができるようになる。これにより、法科大学院卒業後、直ちに司法研修所に入所すれば、法曹になるまでの年数が8年から6年へと2年短縮され、予備試験合格者と同じになる。 * * * しかし、法科大学院の根本問題は、グローバル化・複雑化した経済社会の中で多様な法務ニーズに応える法曹人材の育成ができるかどうかということであり、法科大学院の生き残り策ではない。 筆者はコロンビアロースクールで学んだ経験がある。米国の大学には法学部がないので、ロースクールの入学者は皆、法律の素人である。それが2年間の教育で、驚くほどの法律知識を吸収する。24時間開いている図書館は、常に学生で埋まっている。 この彼我の違いがどこから来るのか、筆者には未だ理由はわからないが、多くのロースクール生が数年の社会人経験を経ていることが影響しているのではないかと思う。理科系の学生や哲学などを先行した多様な学生が集まり、これが多方面で活躍するローヤーの供給につながっている。 多様な法曹の育成という見地からは、大学で法学を終了していない未修者や社会人経験者への教育がカギを握る。未修者は累積合格率(大学院修了後5年間)が5割と低く、志半ばで進路変更する者も数多く存在する。これは、現在の司法試験があまりにも知識に偏った内容であることによる。 今後は、社会人経験者の貴重な経験を尊重したなんらかの優遇措置を考えていくことも一案である。今回の改革は、出発点に過ぎない。 (了)
〔免税事業者のための〕 インボイス導入前後の実務対応 【第4回】 「免税事業者が適格請求書発行事業者になるための手続②」 -ケーススタディ- 税理士 石川 幸恵 前回の解説を踏まえ、免税事業者が適格請求書発行事業者の登録をする場合の手続について、次の5つのケースに分けて検討する。 なお、〔ケース1〕及び〔ケース2〕は免税事業者が適格請求書発行事業者の登録をする場合の原則的な手続であり、〔ケース3〕及び〔ケース4〕は適格請求書等保存方式の施行日である令和5年10月1日を含む課税期間についての経過措置を受けた手続である。 また〔ケース5〕では、相続があった場合のみなし登録期間について取り上げる。相続があったときの消費税の取扱いについては、遺産分割等の後にまわされがちなので、気をつけておきたい。 ◆ ◆ ◆ ① 登録手続 納税地の所轄税務署長に、適格請求書発行事業者の登録申請書を提出する。申請書の「納税義務の免除の規定の適用を受けないこととなる翌課税期間の初日から登録を受けようとする事業者」にレ点を入れ、翌課税期間の初日を記載する(下図参照)。 併せて、下記のそれぞれの届出書を提出する。 ② 効力発生日 翌課税期間の初日。 ③ 提出期限 適格請求書発行事業者の登録申請書の提出期限は、課税事業者となる課税期間の初日の前日から1月前の日である(インボイス通達2-1)。 〔課税事業者となる翌課税期間から適格請求書発行事業者登録を受ける場合〕 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 上図では、令和7年1月1日に開始する課税期間を想定して、第1-(5)号様式を用いている。令和6年1月1日に開始する課税期間から適格請求書発行事業者の登録を受ける場合には、第1-(1)号様式又は第1-(3)号様式(提出日が令和5年10月1日の前か後かによって使い分ける)を提出することで、同様に翌課税期間から適格請求書発行事業者となることができる(詳しくは前回参照)。 ① 登録手続 納税地の所轄税務署長に、「課税事業者選択届出書」及び「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出する。申請書の「事業を開始した日の属する課税期間の初日から登録を受けようとする事業者」にレ点を入れ、課税期間の初日を記載する(下図参照)。 ② 効力発生日 事業を開始した課税期間の初日。 ③ 提出期限 「課税事業者選択届出書」及び「適格請求書発行事業者の登録申請書(第1-(5)号様式)」共に、事業を開始した日の属する課税期間の末日までである。 〔令和6年10月1日以後に設立した新設法人又は開業した個人事業者〕 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ① 登録手続 納税地の所轄税務署長に、適格請求書発行事業者の登録申請書(第1-(1)号様式)を提出する。申請書(次葉)の「免税事業者の確認」上段の「令和5年10月1日の属する課税期間中に登録を受け、所得税法等の一部を改正する法律(平成28年法律第15号)附則第44条第4項の規定の適用を受けようとする事業者」という欄にレ点を入れる(下図参照)。なお、経過措置の適用を受けるため、課税事業者選択届出書は提出しない。 ② 効力発生 令和5年10月1日が登録日となり、同日から課税事業者となる。 ③ 提出期限 令和3年10月1日から申請書を提出できることととなっている(インボイスQ&A 問2)。ただし、申請書(次葉)における免税事業者の確認欄は、令和5年10月1日時点の納税義務が明らかになった後でなければ、正確に記載できない。提出期限は前回の(2)②の経過措置があるので、令和5年9月30日までとなる。 〔令和5年10月1日から登録を受ける場合〕 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ① 登録手続 適格請求書発行事業者の登録申請書(第1-(3)号様式)を提出する。 ② 効力発生日 登録日。前回の(2)①の経過措置の適用があるので、登録日前は免税事業者、登録日から課税事業者となる。 ③ 提出期限 登録申請書の提出から登録日までの期間は、本稿執筆時点では明らかになっていないため、速やかに提出すべきと考えられる。 事業を開始した日にさかのぼって適格請求書発行事業者の登録を受けたいのであれば、〔ケース2〕と同様に、課税事業者選択届出書を併せて提出する必要があると考えられる。 〔令和5年10月1日に設立した新設法人又は新規開業した個人事業者〕 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (※) 相続があった場合の納税義務の免除の特例(消法10)により、課税事業者となる相続人を想定している。 ① 登録手続 適格請求書発行事業者の死亡に関しては、個人事業者の死亡届出書(第7号様式)及び適格請求書発行事業者の死亡届出書(第4号様式)を適格請求書発行事業者の納税地の所轄税務署長に、速やかに提出しなければならない。 相続人が適格請求書発行事業者の登録を受けるためには、納税地の所轄税務署長に適格請求書発行事業者の登録申請書、課税事業者届出書、相続・合併・分割等があったことにより課税事業者となる場合の付表(第4号様式)を提出する。 ② 効力発生日 相続人の適格請求書発行事業者の登録日。 ③ 提出期限 特に設けられていないが、速やかに提出すべきと考えられる。 ④ みなし登録期間 適格請求書発行事業者である個人事業者が死亡した場合、適格請求書発行事業者の登録は相続人に引き継がれない。適格請求書発行事業者でない相続人が被相続人の事業を引き継ぐときは、相続人が新たに適格請求書発行事業者の登録申請を行う必要がある。相続人が登録を受けるまでの間、事業の継続に支障を来さないよう、みなし登録期間が設けられている。 「みなし登録期間」とは、相続のあった日の翌日から、相続人が適格請求書発行事業者の登録を受けた日の前日又は被相続人が死亡した日の翌日から4月を経過する日のいずれか早い日までの期間である。 みなし登録期間は、相続人を適格請求書発行事業者とみなし、被相続人の登録番号を相続人の登録番号とみなす(インボイス制度導入後の新消費税法57の3)。 〔みなし登録期間〕 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 * * * 連載最終回となる次回は、免税事業者が課税事業者(適格請求書発行事業者)になった後の取扱いについて確認する。 (了)
法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例15】 「特許業務法人の社員は使用人兼務役員に該当するのか」 国際医療福祉大学大学院准教授 税理士 安部 和彦 【Q】 私は都内で個人の税理士事務所を経営しております。今回のご相談は、その中のクライアントで、高校時代のサッカー部の仲間Aが経営するある特許業務法人Bの法人税の取扱いに関するものです。 特許業務法人というのは、弁理士法に基づき設立される特殊法人(弁理士法37)で、弁護士法に基づく弁護士法人や税理士法に基づく税理士法人に類似する制度です。特許業務法人Bには4名の社員がおり、そのうちの1名(A)が代表社員となっています。 代表社員Aの給与は固定給で、前年度の法人全体の収益の状況を基に算定した金額を12等分し、毎月同額ずつ支払っております。残りの社員はいずれも弁理士で、その報酬たる給与は固定給部分(月額20万円)と歩合給部分で構成されています。このうち歩合給は、各社員が担当した案件につき、法人Bが顧客に請求する金額の一定割合を乗じた金額としています。当該歩合給は、年2回、他の従業員に対して賞与を支払う時期と同じタイミングで各社員に支給しています。 私は特許業務法人Bの法人税の申告書を作成するにあたり、代表社員AとA以外の社員に対する給与の支払い内容を確認しました。その結果、A以外の社員は優秀な弁理士で科学技術には滅法明るいのですが、事務作業には興味がなく、事務所の経営にタッチする意欲もないことから、勤務実態は使用人としての色彩が強いといえます。勿論、特許業務法人の社員であるので、法律上業務執行権を有していることから、法人税法上は、使用人兼務役員に該当するものと考えました。そこで、特許業務法人Bの社員になる一歩手前の職種であるディレクター3名の給与と比較し、それを上回る部分の金額は損金不算入としましたが、それ以下の部分の金額については全額損金に算入しました。 ところが、最近特許業務法人Bが受けた税務調査で、特許業務法人の社員は使用人としての立場でその職務に従事するものではないため、法人税法上、使用人兼務役員には該当せず、代表社員A以外の社員に対して支払った給与のうち、歩合給部分は全額損金不算入である旨を調査官から言い渡されました。 既に説明したとおり、A以外の社員はいわば「技術オタク」で事務所の経営にタッチする意欲はなく、おおよそ役員や経営者としての役割を果たしておらず、実際、事務所経営はAが1人で担っているのが実態であることから、調査官の主張には納得がいきません。法人税法上、A以外の社員が使用人兼務役員に該当する余地はないのでしょうか、教えてください。 【A】 法人税法上、使用人兼務役員に該当する場合、法人がその者に支払う給与のうち使用人分に対する金額は損金算入されますが、弁理士法上、特許業務法人の社員は、すべての業務執行の権限を有し、義務を負うと定められていることから、法人と社員との関係は雇用関係ではなく民法上の(準)委任の関係にあると考えられます。 そうなると、特許業務法人の社員は、代表権を有していなくとも法人の経営に従事しているものに該当するため、法人税法上の役員に該当し、また、業務を執行する権限を有するため、使用人には該当しないということとなります。 したがって、特許業務法人の社員は、法人税法上、使用人兼務役員には該当しないことから、当該社員に対する役員給与のうち、歩合給部分は損金に算入されないこととなります。 ■ ■ ■ 解 説 ■ ■ ■ (1) 法人税法上の役員給与の意義 法人税法上、役員とは、取締役、執行役や監査役等及び清算人のほかに、使用人以外の者でその法人の経営に従事しているもの、同族会社の使用人のうち一定の同族判定株主グループに属する者で、その会社の経営に従事しているものを含むとされている(法法2十五、法令7)。 このような役員に対して法人が支払う給与のうち、法人税法上、損金算入されるものは以下の3つの形態である(法法34①)。 (2) 法人税法上の使用人兼務役員の意義 上記のとおり、法人税法上の役員に該当すると、その者に対して支払う給与の損金性は限定されることとなる。そこで問題となるのは、取締役経理部長のように、役員としての地位と従業員としての地位を併せ持つ社員の存在である。このような社員は一般に「使用人兼務役員」と称されるが、法人税法上の「使用人兼務役員(使用人としての職務を有する役員)」の定義は、役員のうち、部長、課長その他法人の使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事する役員をいう、とされている(法法34⑥)。 なお、以下の役員は使用人兼務役員になることはできない(法令71①)。 法人税法上の使用人兼務役員の意義は、その者に対する給与のうち使用人部分の金額が、役員ではない一般の使用人に対する給与と同様に、原則として(すなわち過大でない限り、法法36)損金算入が認められるという点にある。 (3) 特許業務法人の社員への給与の損金性が争われた事例 それでは本件のように、特許業務法人の社員のうち代表社員以外の社員は、法人税法上、使用人兼務役員としてその使用人部分の給与は損金算入されるのであろうか。この件について争われた事例(東京高裁平成29年8月28日判決・訟月64巻5号826頁、TAINSコード:Z267-13042)があるので以下でみていきたい。 ① 事例の概要 本件は、特許業務法人である控訴人Xが、代表社員であるA以外の社員であるB、C及びDに対して支給した給与のうち、歩合給(実績給及び賞与)につき、所轄の芝税務署長から、本件社員B~Dがいずれも法人税法に規定する役員に該当し、かつ、使用人としての職務を有する役員(使用人兼務役員)に該当しないとした上、歩合給部分が法人税法上損金算入される役員給与の要件のいずれも該当しないから、損金の額に算入することはできないとして、平成20年3月期から平成24年3月期までの法人税の各更正処分を受け、また、本件各事業年度のうち平成20年3月期を除く各事業年度の法人税に係る各過少申告加算税の賦課決定処分を受けた。 それに対し、特許業務法人である控訴人Xは、本件社員B~Dは法人税法に規定する役員ではなく、仮に役員に該当するとしても、使用人兼務役員に該当する上、その職務は全て使用人としての職務として行われたものであるとして、本件歩合給部分は全て損金の額に算入されるべきであるとして、その取消しを求めた事案である。 本件一審の判決(東京地裁平成29年1月18日判決・訟月64巻5号847頁、TAINSコード:Z267-12956)で、裁判所は、特許業務法人の社員は、弁理士法上の権限や責任に照らせば法人の経営に従事していると一般的・類型的に評価し得るものであり、役員に該当すると解されるから、その地位にある本件社員B~Dは、原告における具体的な職務の内容にかかわらず、原告の役員に該当するというべきであるとした。 また、裁判所は、業務を執行する役員と特許業務法人との関係には民法の委任に関する規定が準用され、両者は一般には雇用契約等に基づく使用人と事業主との関係に立つものではないというべきであり、弁理士である役員が従事する具体的な職務の中に使用人である弁理士が行う職務と同種の職務が含まれている場合であっても、それは使用人としての立場で従事するものではないと一般的・類型的に評価し得るものであることから、使用人兼務役員に該当しないものというべきであるとして、本件各更正処分は適法であると判示した。 ② 事例の争点 特許業務法人であるXの社員B~Dは法人税法に規定する役員に該当するのか、また、使用人兼務役員に該当するのか。 ③ 裁判所の判断 〈特許業務法人の社員の役員該当性〉 〈特許業務法人の社員の使用人兼務役員該当性〉 (4) 文理解釈及び私法上の法律関係に即した解釈の重要性 「今更」という感がないでもないが、税理士が実務に没頭する中で知らず知らずのうちに忘れてしまいがちな事項であるので、改めてここで強調しておきたい。本件においても、納税者側は一審で認められなかった「社員の使用人兼務役員該当性」につき、様々な観点からその正当性を主張したが、裁判所は、まず特許業務法人とその社員の弁理士法上の法的意義を提示し、次に社員の法的地位及び属性につき、会社法に規定された合名会社の社員の意義から判断を下している。 具体的には、合名会社に準ずる特別会社に位置づけられる特許業務法人(※1)は、2名以上の社員により構成されるが、当該社員は、弁理士法上、「業務を執行する権限を有している」ことから、その代表権の有無を問わず、社員たる地位に基づいて弁理士業務を行うことが本来的に予定されていると認められるのである。 (※1) 税理士法上の税理士法人も同様と考えられる。日本税理士会連合会編『新税理士法(改訂版)』(税務経理協会・平成15年)158頁。 ここでいう「業務を執行する権限」とは、会社法上、株式会社等がその目的を達成するために必要な、事業戦略の決定、数値目標の設定、目標達成のための計画の策定、経営資源を購入及び配分、製品の販売、雇用した従業員の管理といった業務を決定し執行することを指す(※2)。要するに、業務の執行とは法人の役員が行使する法人の経営管理をいうと考えられる。 (※2) 江頭憲治郎『株式会社法(第7版)』(有斐閣・2017年)379頁。 会社法においては、このような業務執行を行う取締役として「業務執行取締役」という者を定義しているが(会社法2十五イ)、会社との間に雇用契約はないため、使用人兼務取締役(使用人兼務役員)とは異なると解されている(※3)。会社法では、業務執行を行う取締役は、会社との間に雇用契約はないため、使用人としての地位を有することはないということになる。合名会社に準ずる特別会社に位置づけられる特許業務法人の社員の地位も、会社法のこの考え方に従って解するのが妥当といえるであろう。そうなると、「業務を執行する権限を有している」特許業務法人の社員は、使用人としての地位は有していないと解される。 (※3) 江頭前掲(※2)書383頁。 したがって、テクノロジーには滅法明るく著作権の保護には並々ならぬ意欲がある「オタク気質」の弁理士が、一方で、法人の経営管理運営には全く興味がなく、実際にその義務をほとんど果たしていないのが実態であるとしても、その弁理士が特許業務法人の社員の地位を有している場合には、弁理士法上に規定された法的な権限が付与されていることから、その法的属性に従って法人税法上の役員に該当するのか、更には使用人兼務役員に該当するのか判断するよりほかないといえる。 そうなると、特許業務法人の社員は、法人税法上、法人の経営に従事する者であるため、役員に該当し、また、「業務を執行する権限」を有するため、使用人には該当しないということとなる。したがって、特許業務法人の社員は、法人税法上、使用人兼務役員には該当しない。 ただし、一点付言すべきは、一審で裁判所は、特許業務法人の社員は本来、「令71条1項各号の一に列挙されるべきものと解される。」としており、法人税法施行令第71条第1項で定める役員は、限定列挙なのか例示列挙なのかにつき踏み込んでいる点である。高裁では当該事項につき言及していないのが惜しまれるところではある。 (5) 歩合給部分の業績連動給与該当性 ところで、本件の社員に対する給与のうち、固定給部分(月額20万円)は定期同額給与に該当するものと考えられるが、もう1つの構成要素である歩合給部分は、損金に算入される余地はないのであろうか。役員給与のうち当該歩合給部分が損金算入されるとしたら、それは業績連動給与に該当する場合であろう。 しかし、特許業務法人は非上場で有価証券報告書を発行していないため、社員に対する歩合給部分は、損金に算入される業績連動給与(利益連動給与)の要件を満たさないこととなる(法法34①三)。 (6) 本件への当てはめ 〇特許業務法人の社員に対する役員給与の損金性 法人税法上、使用人兼務役員に該当する場合、法人がその者に支払う給与のうち使用人分に対する金額は損金算入されるが、弁理士法上、特許業務法人の社員は、すべての業務執行の権限を有し、義務を負うと定められていることから、法人と社員との関係は雇用関係ではなく民法上の(準)委任の関係にあると考えられる。 そうなると、特許業務法人の社員は、代表権を有していなくとも法人の経営に従事しているものに該当することから、法人税法上の役員に該当し、また、業務を執行する権限を有するため、使用人には該当しないということとなる。したがって、特許業務法人の社員は、法人税法上、使用人兼務役員には該当しない。そのため、社員に対する役員給与のうち、歩合給部分は損金に算入されないこととなる。 (了)
街の税理士が「あれっ?」と思う 税務の疑問点 【第2回】 「低い家賃の貸家建付地の評価」 城東税務勉強会 税理士 大塚 進一 問 題 相続財産の家屋に借家権があり、その宅地が「貸家建付地」に該当するかどうかを判断する際に、低額な家賃しか受け取っていない場合(特に同族関係者が借家人のケース)、貸家としての評価控除(借家権割合30%)が可能か否かを検討するに当たっては、何を基準とすればよいでしょうか。また、小規模宅地等の特例の適用はどうでしょうか。 回 答 貸家建付地の相続税評価額は、 自用地価額 ×(1 - 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)とされ、貸家では、 固定資産税評価額 ×(1 - 借家権割合 × 賃貸割合)とされています(評基通26)。 賃貸借契約書から借地借家法の適用がある場合は借家権があり、宅地は貸家建付地として評価し、建物は借家権割合を控除してよいでしょう。借地借家法の適用には、受け取っている家賃が、近隣家賃相場と差があるか、社宅の場合は実際家賃と通常負担すべき家賃との差、その他貸主と借主との関係及びその契約の経緯などを総合的に判断する必要があります(社宅は原則自用地評価でも家賃が相場並みなら借地借家法の適用があります)。 小規模宅地等の特例の適用について、貸家建付地なら一般的には貸付事業用宅地等として適用可能(その他の事業保有継続等要件を満たす場合)と思われますが、「継続して相当の対価」を得ていないとなりません。これには、減価償却費+固定資産税などの必要経費の額がポイントと思われます。 考 察 〇貸家建付地の評価 貸家建付地とは一般的に「借家権の目的となっている家屋(貸家)の敷地の用に供されている宅地」(評基通26)とされています。また、「社宅」に対する記述ではありますが、以下の国税庁・質疑応答事例にあるとおり、貸家建付地であるには、借地借家法が適用される借家権がある建物の敷地でないといけません。 (※) 下線部筆者 借地借家法が適用される賃貸借契約としては、建物の所有を目的とする土地の借地契約又は建物の借家契約があります。ここで、建物の使用契約が賃貸借か否かには、次の判例(要旨)があります。 上記の判例は税務裁判ではなく借用概念となりますが、整理しますと、評価する宅地上の建物が社宅の場合、その使用料が近隣家賃相場と同等の時は賃貸借として借地借家法の適用があるので、貸家建付地となります(なお公務員宿舎には借地借家法の適用はありません)。また、評価する宅地上の建物が社宅でない通常の建物の場合、固定資産税等額程度の家賃では、賃貸借ではなく使用貸借となり、借地権がなく自用地評価となります。 では、固定資産税等額は超えているが近隣家賃相場には届かない場合はどうでしょう。上記判例から、賃貸借であるには、家賃が使用収益に対して対価性がないといけませんが、賃貸借での使用収益に対する対価の下限は、具体的に示されていません。また、使用貸借での通常の必要費(民法第595条第1項)の上限も同様に示されていません。物件の状態や近隣家賃相場、貸主と借主の関係や経緯など総合的な判断となります。 他税目として、法人税法では、住宅用土地の貸付けの場合、固定資産税等額の3倍超なら、収益事業となります(法令5①五へ、法規4)。しかし、家屋の貸付けには、このような規定はありません。 ただし、所得税関係では、租税特別措置法通達37-3(事業に準ずるものの範囲)に、「事業に準ずるものとは、例えば不動産の貸付けなどの場合で事業といえるほどの規模ではないものの相当の対価を得て継続的に行われるものをいう。相当の対価を得ているかどうかは、不動産の貸付けなどの場合、減価償却費や固定資産税ほかの必要経費を回収した後において、なお相当の利益が生じているかどうかにより判定する。」とあり、これは相当の対価について述べたものですので、使用収益の対価については「減価償却費や固定資産税ほかの必要経費」という記述が参考にでき、相当の利益までは必要ないと考えますが、如何でしょうか。 なお、現在低い家賃であっても賃貸開始時は世間並みの相場で賃貸借であったものが、その後、家賃の値上げができず、結果的に低い状態である場合は、借家権があるものと考えられます。 〇小規模宅地等の特例の適用 小規模宅地等の特例について貸付事業用宅地等であるための要件に、事業に至らない小規模な不動産の貸付けでも、「相当の対価を得て継続的に行うもの」なら「事業に準ずるもの」として、小規模宅地等の対象となります。 相当の対価を得ているかどうかの判断は、租税特別措置法通達37-3(事業に準ずるものの範囲)のとおり、「減価償却費や固定資産税ほかの必要経費を回収した後において、なお相当の利益が生じているかどうか」です。この額は、借家権が認められるとされる額より高いものと考えられます。なお、古い建物では減価償却費がない場合もあります。 同族関係者等に近隣家賃相場より大幅に低く、減価償却費+固定資産税などの必要経費程度の額で貸している場合、貸家建付地には該当しても、小規模宅地等の特例は適用できないことになります。 (了)
2020年3月期決算における会計処理の留意事項 【第1回】 RSM清和監査法人 公認会計士 西田 友洋 Ⅰ 税制改正 平成31年度税制改正及び令和2年度税制改正大綱(以下、「税制改正大綱」という)のうち、会計処理等において留意すべき改正点としては、以下が挙げられる。 (注) なお、本解説では、平成31年度税制改正等及び税制改正大綱のうち、会計処理等において留意すべき改正点のみを解説しているため、全てを解説しているわけではない。 1 税率 今回の税制改正大綱において、税率の改正は予定されていない。ただし、平成31年度税制改正等において、以下の改正が行われている。 適用は、2019年10月1日以後に開始する事業年度からである。 (1) 地方法人特別税の廃止 ① 資本金の額1億円超で、年800万円超の所得の場合 また、資本金1億円超の普通法人の所得割の制限税率は、標準税率の1.2倍から1.7倍に引き上げられる。 ② 資本金の額1億円以下で、年800万円超の所得の場合 (2) 特別法人事業税の創設 法人事業税の一部を分離して、「特別法人事業税」が創設される。その分、法人事業税の税率が引き下げられる。結果として、「改正前の法人事業税の税率」と「改正後の法人事業税と特別法人事業税の税率の合計」は同じである。 また、特別法人事業税は国税であるが、申告納付は法人事業税と併せて行う。そして、特別法人事業税の課税標準は法人事業税額(標準税率により計算された所得割額)である。 ◆ ◇ 会計上の論点 ◇ ◆ 地方法人課税の偏在是正のための改正であるため、法定実効税率に変更はない(注)。 具体的な税率は、下記の設例①②を参照されたい。 (注) なお、今後、各地方公共団体で超過税率が改正された場合、法定実効税率が変わる可能性がある。 設例① 当社は、東京都に本社があり、外形標準課税適用法人である。 また、税率は以下のとおりである。 (※) ここでは、標準税率1.0%+改正前の超過税率と標準税率の差分0.18%(=3.78%-3.6%)=1.18%で計算している(企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」48(2)②イ、49(1)参照)。 設例② 当社は、東京都に本社があり、外形標準課税適用外法人である。 また、税率は以下のとおりである。 (※) ここでは、標準税率7.0%+改正前の超過税率と標準税率の差分0.48%(=10.08%-9.6%)=7.48%で計算している(企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」48(2)②イ、49(1)参照)。 2 租税特別措置法における「みなし大企業」の範囲の改正 (1) 租税特別措置法における「みなし大企業」 租税特別措置法における中小企業者とは、以下の①又は②の法人である(租税特別措置法42の4⑧七、租税特別措置法施行令27の4⑫)。 上記のうち、①(ⅰ)及び(ⅱ)が「みなし大企業」に該当する。 (2) 「大規模法人」範囲の改正 平成31年度税制改正において、「大規模法人」の対象が以下のように2つ増えている。 増えたことにより、「みなし大企業」に該当するケースが増える。そのため、「中小企業者」に該当せず、税務上の恩典が受けられなくなるケースが増えることになる。 (注) 「大法人」とは、資本金の額又は出資金の額が5億円以上である法人、相互会社もしくは外国相互会社(常時使用従業員数が1,000人超のものに限る)又は受託法人をいう。 また、大規模法人の判定にあたっての自己株式の取扱いも改正されている。 (3) 適用時期 2019年4月1日以後に開始する事業年度から適用する。なお、中小企業者に該当するかどうかの判定時点は、各税制により異なるので留意が必要である。 3 連結納税制度からグループ通算制度への移行 連結納税制度は、企業グループの各法人を納税主体とするのではなく、グループ全体で1つの納税主体とするものである。しかし、連結納税制度は、企業グループ内の損益を通算できるメリットがある一方で、税額計算が煩雑であったり、どこか1つの法人で誤りがあった場合、グループ全体で税金を再計算しないといけないなど、デメリットもある。そのため、より使いやすくするために、税制改正大綱では企業グループ内の損益通算は残しつつ、各社ごとに申告及び納税する「グループ通算制度」へ移行する改正が行われている。 (1) 適用関係等 連結納税制度とグループ通算制度の適用関係等の主な相違点は、以下のとおりである。 (※1) 欠損金の繰越期間に対する制限を潜脱するため又は離脱法人に欠損金を帰属させるためあえて誤った当初申告を行う場合など。 (※2) プロラタ方式とは、以下の計算のことをいう。欠損法人の欠損金額の合計額(所得法人の所得の金額の合計額を限度)を所得法人の所得の金額の比で配分し、所得法人において損金算入する。そして、この損金算入された金額の合計額を欠損法人の欠損金額の比で配分し、欠損法人において益金算入する。 (出所:経済産業省「令和2年度(2020年度)経済産業関係 税制改正について」P.16) (2) 時価評価 グループ通算制度においても、時価評価は行われる。連結納税制度とグループ通算制度における相違点は、以下のとおりである。 (3) 開始前の欠損金・含み損等 制度開始前の欠損金と含み損等の連結納税制度とグループ通算制度における相違点は、以下のとおりである。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (※1) 連結親法人を設立した株式移転に係る完全子法人で、その株式移転の直前に他の法人により50%超保有されておらず、また、株式移転後連結親法人によって継続して100%直接保有されている子法人の欠損金は、原則として、特定連結欠損金ではなく、連結欠損金として親会社と同様に連結所得から控除できる。 (※2) 制度開始直前に親法人との間(親法人の場合は子法人との間)に支配関係がある法人で以下の要件の全てに該当する法人 a.当該法人の主要な事業と通算グループ内のいずれかの法人の事業との事業関連性要件 b.上記aの各事業の事業規模比5倍以内要件又は当該法人の特定役員継続要件 c.当該法人の上記aの主要な事業の事業規模拡大2倍以内要件又は特定役員継続要件 (※3) 支配関係発生から5年経過日と開始又は加入から3年経過日とのいずれか早い日まで制限される。 (4) グループ加入時の欠損金・含み損等 グループ加入時の欠損金と含み損等の連結納税制度とグループ通算制度における相違点は、以下のとおりである。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (※4) 通算グループ内のいずれかの法人と共同事業を行う法人として、以下に該当する法人 (イ) 加入の直前に親法人との間に支配関係がない法人で以下に該当する法人 a.親法人との間の完全支配関係の継続要件 b.当該法人の従業者継続要件 c.当該法人の主要事業継続要件 d.当該法人の主要な事業と通算グループ内のいずれかの法人の事業との事業関連性要件 e.上記dの各事業の事業規模比5倍以内要件又は当該法人の特定役員継続要件 (ロ) 加入の直前に親法人との間に支配関係がある法人で以下の要件の全てに該当する法人 a.当該法人の主要な事業と通算グループ内のいずれかの法人の事業との事業関連性要件 b.上記aの各事業の事業規模比5倍以内要件又は当該法人の特定役員継続要件 c.当該法人の上記aの主要な事業の事業規模拡大2倍以内要件又は特定役員継続要件 (ハ) 非適格株式交換等により加入した株式交換等完全子法人で共同で事業を行うための適格株式交換等の要件のうち対価要件以外の要件に該当する法人 (5) 所得金額及び法人税額の計算 所得金額及び法人税額の計算の連結納税制度とグループ通算制度における相違点は、以下のとおりである。 (※5) 税額控除限度額と控除上限額とのいずれか少ない金額 (※6) 「通算税効果額」とは、グループ通算制度を適用することにより減少する法人税及び地方法人税の額に相当する金額として内国法人間で授受される金額をいう。 〈連結納税の計算イメージ図〉 〈グループ通算制度の計算イメージ図〉 (出所:第24回 税制調査会(2019年8月27日)【総24-2】説明資料(連結納税制度の見直しについて)P.7、8) (6) その他 その他の連結納税制度とグループ通算制度における相違点は、以下のとおりである。 (※7) 期末資本金の額が1億円以下の普通法人(資本金の額が5憶円超の法人である大法人に株式の100%を直接又は間接に所有されている場合における子法人等を除く)をいう。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (7) 適用時期 グループ通算制度は、2022年4月1日以後開始する事業年度から適用する。 連結納税制度の承認は、2022年4月1日以後に開始する事業年度においては、グループ通算制度の承認とみなす。 連結法人は、連結親法人が2022年4月1日以後最初に開始する事業年度開始の日の前日までに税務署長に届出書を提出することにより、グループ通算制度を適用しない単体納税法人となることができる。 ◆ ◇ 会計上の論点 ◇ ◆ グループ通算制度では、親会社の欠損金の利用が個別の所得を限度とするため、繰延税金資産の計上額に影響する可能性がある。 また、税制改正が期末までに行われた場合、税効果の計上は、改正後の税法に基づいて行う必要がある。グループ通算制度に改正された場合の税効果の取扱いについては、下記「Ⅱ「連結納税制度からグループ通算制度への移行に係る税効果会計の適用に関する取扱い(案)」の公表」を参照されたい。 4 単体納税制度の見直し グループ通算制度の移行に合わせて、単体納税制度も見直しが行われている。 5 交際費等の損金不算入制度、少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の延長 税制改正大綱では、交際費等の損金不算入制度及び少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例が延長されている。 (1) 交際費等の損金不算入制度 交際費等の損金不算入制度の適用期限が2年延長され、2022年3月31日までとなる。また、接待飲食費の50%の損金算入の特例及び中小法人の定額控除限度額(800万円/年)までの損金算入の特例の適用期限も2年延長され、2022年3月31日までとなる。 なお、接待飲食費に係る損金算入の特例の対象法人から、資本金の額等が100憶円を超える法人が除外される。 (2) 少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例 中小企業者等が少額減価償却資産(取得価額300万円未満)を取得した場合に、1事業年度当たり300万円まで取得価額の全額を損金算入することができる特例が2年延長され、2022年3月31日までとなる。 ただし、対象法人について、以下の見直しも行われる。 6 国際的なM&Aを利用した租税回避防止 子会社が配当を行うとその分、純資産が減少し、子会社株式の時価は低下するが、簿価は変動しない。そして、配当後に第三者に譲渡すると、売却損を損金算入できる場合がある。一方、受領した配当は親会社で益金不算入となり課税されない。 そのため、現在では、子会社の配当後に子会社株式を第三者に譲渡することによる過度な節税対策が行われている。そのため、税制改正大綱では、子会社からの配当と子会社株式の譲渡を組み合わせた租税回避への対応のための見直しが行われた。 (1) 株式等の帳簿価額の引下げ 法人が、特定関係子法人(※1)から受ける配当等の額(その事業年度開始の日からその受ける直前までにその特定関係子法人から受ける配当等の額を含む。以下「対象配当金額」という)が株式等の帳簿価額の10%超の場合、その対象配当金額のうち益金不算入相当額を、その株式等の帳簿価額から引き下げる。 (※1) 「特定関係子法人」とは、配当等の決議の日(以下「配当決議日」という)において特定支配関係(※2)を有する他の法人をいう。 (※2) 「特定支配関係」とは、一の者(一の者と特殊の関係のある者を含む)が他の法人の株式等又は一定の議決権の数等の50%超を直接又は間接に有する場合における当該一の者と他の法人との関係等をいう。 (2) 適用対象 以下の対象配当金額は、適用対象外となる。 (3) 適用時期 税制改正大綱では、適用時期は、記載されていない。 (出所:経済産業省「令和2年度(2020年度)経済産業関係 税制改正について」P.25) 7 消費税の申告期限の特例 (1) 改正内容 消費税の確定申告書の提出には、延長が認められていなかったが、税制改正大綱において、認められることになった。 法人税の確定申告書の提出期限の延長の特例の適用を受ける法人が、消費税の確定申告書の提出期限を延長する旨の届出書を提出した場合には、当該提出をした日の属する事業年度以後の各事業年度の末日の属する課税期間に係る消費税の確定申告書の提出期限を1ヶ月延長することができる。 現在、消費税は5月末ごろ、法人税は6月末ごろに申告書を提出していることが多いと考えられるが、当該改正により、法人税及び消費税ともに6月末ごろに提出することが可能となる。 (2) 適用時期 2021年3月31日以後に終了する事業年度の末日の属する課税期間から適用する。なお、確定申告書の提出期限が延長された期間の消費税の納付は、当該延長された期間に係る利子税も納付する。 8 電子帳簿等保存制度の見直し (1) 改正内容 電子取引を電磁的記録により保存する場合に、以下の方法が加えられる。 (2) 適用時期 2020年10月1日から施行する。 Ⅱ 「連結納税制度からグループ通算制度への移行に係る税効果会計の適用に関する取扱い(案)」の公表 2020年2月13日にASBJより実務対応報告公開草案第58号「連結納税制度からグループ通算制度への移行に係る税効果会計の適用に関する取扱い(案)(以下、「グループ税効果案」という)」が公表された。 令和2年度税制改正において従来の連結納税制度が見直され、グループ通算制度に移行する税制改正法(「所得税法等の一部を改正する法律」)(以下「改正法人税法」という)案が第201 回通常国会に提出されている。グループ税効果案では、改正法人税法が成立した場合、グループ通算制度の適用対象となる企業が、改正法人税法の成立日以後に終了する事業年度の決算において、グループ通算制度の適用を前提としてどのように税効果会計を適用するかの取扱いをまとめている。 (1) 適用対象 改正法人税法の成立日の属する事業年度において連結納税制度を適用している企業及び改正法人税法の成立日より後に開始する事業年度から連結納税制度を適用する企業を対象とする(グループ税効果案2)。 (2) 会計処理 改正法人税法の成立日以後に終了する事業年度の決算(四半期決算を含む)について、グループ通算制度の適用を前提とした税効果会計については、実務対応報告第5号「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その1)」及び実務対応報告第7号「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その2)」に関する必要な改廃が行われるまでの間は、グループ通算制度への移行及びグループ通算制度への移行にあわせて単体納税制度の見直しが行われた項目については、決算日において改正法人税法が成立していても改正前の税法の規定に基づき(連結納税制度を前提として)、税効果会計を適用することができる(グループ税効果案3)。つまり、従前どおりに検討し、繰延税金資産及び繰延税金負債を計上することで問題ない。 (3) 注記 繰延税金資産及び繰延税金負債の額について、グループ税効果案の取扱いにより改正前の税法の規定に基づいている旨を注記する(グループ税効果案4)。 (了)
会計士が聞く! 決算早期化「現場の回答」 【第4回】 「“スケジュール管理”について聞きたい!」 石王丸公認会計士事務所 《登場人物紹介》 〈ベテラン経理のコバヤシさん〉 世界シェアトップの某メーカーで30年以上にわたり経理部に勤務。その間に会社は東証一部上場を達成。年々、開示制度の充実強化が図られる中で、5年間で13日の連結決算早期化を実現。 〈会計士〉 決算早期化の秘訣を知りたい公認会計士。といっても、そういうコンサルをしているわけではなく、単なる興味本位。 * * * 〔勘定明細作成分担表(第〇期期末)〕 〔第〇期期末開示関連等業務分担〕 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。 (注) なお、本連載「会計士が聞く! 決算早期化「現場の回答」」の著作権は、石王丸周夫公認会計士及びベテラン経理のコバヤシさんに属するものとします。 (了)
計算書類作成に関する “うっかりミス”の事例と防止策 【第31回】 「「△」のつけ忘れはこんなところでも起こる」 公認会計士 石王丸 周夫 1 今回の事例 計算書類のドラフトにはうっかりミスがつきものです。 たとえば、こんなミスをよく見かけます。 【事例31-1】 負数を示す△が記載されていない。 【事例31-1】は、個別注記表で開示される「税効果会計に関する注記」です。この中に、間違いが1ヶ所あります。事例のタイトルから、△の付け忘れがあるということはすぐにわかると思います。しかし、それがどの数字なのか、一瞬、考えてしまうかもしれません。 2 0の前にも△がつくことがある では、正解を見てみましょう。以下のとおりです。 正解に示したとおり、【事例31-1】では、赤丸を付けた△マークが抜けていました。 繰延税金資産・負債の発生原因別内訳の注記では、貸方残高の数字に△を付します。具体的には、借方サイドの繰延税金資産から控除される「評価性引当額」と、貸方サイドの「繰延税金負債の各項目」の数字です。 【事例31-1】でも、そのような理解で作成されていましたが、1ヶ所だけ△が抜けていました。「繰延税金負債 その他 △0」のところです。 ここで△を付け忘れてしまった原因は、おそらく、数字が0だったからでしょう。0という数字はプラスでもマイナスでもありませんので、△0(マイナスゼロ)という表記を日常で目にすることはありません。したがって、△のない「0」を見ても不自然と感じることはなく、△を付け忘れてしまったのです。 ところが、「0百万円」は「0円」ではありません。「0円」の場合は「-百万円」と表示されます。「0百万円」は「1円~999,999円」の範囲の数字です。これが貸方残高であれば、△表示となり、「△0」となるわけです。 このように、0の前の△というのはミスしやすいので、注意が必要です。 3 これまで紹介した「数字の前の△に関するミス」 この連載では、数字の前の△に関するミスをいくつか紹介してきました。それらのミス事例を整理しておきましょう。 いずれも一見単純なミスでしたが、ミスが起きてしまった背景はそれぞれ異なっていました。 今回の【事例31-1】も単純なミスですが、0の前の△でミスをするという点は、上記の3事例のいずれにも見られなかったことです。△に関するミスにもいろいろあるので、できるだけ多くの事例を頭に入れておくことで、ミスの防止・発見につながります。 〈今回のまとめ〉 0の前に△が付く場合、△が抜けていても気がつかないことが多いので注意しましょう。 (了)
企業結合会計を学ぶ 【第37回】 (最終回) 「被結合企業の株主に係る会計処理④」 -受取対価が現金等の財産と結合企業の株式である場合の 被結合企業の株主に係る会計処理- 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 本連載の最終回となる今回は、被結合企業の株主に係る会計処理のうち、受取対価が現金等の財産と結合企業の株式である場合の被結合企業の株主に係る会計処理を解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 受取対価が現金等の財産と結合企業の株式である場合の被結合企業の株主に係る会計処理(子会社を被結合企業とした企業結合) 現金等の財産(結合分離適用指針268項)と結合企業の株式を対価とする企業結合により、子会社株式である被結合企業の株式が引き換えられた場合、当該被結合企業の株主(親会社)に係る会計処理は、事業分離における分離元企業の会計処理に準じて行う(事業分離等会計基準45項、結合分離適用指針282項)。 被結合企業の株主は、次のように会計処理する(結合分離適用指針282項)。 Ⅲ 受取対価が現金等の財産と結合企業の株式である場合の被結合企業の株主に係る会計処理(関連会社を被結合企業とした企業結合) 関連会社を被結合企業とする企業結合により、現金等の財産と結合企業の株式を対価として関連会社株式である被結合企業の株式が引き換えられ、当該被結合企業(関連会社)に対する持分比率が減少するが、結合後企業が引き続き当該被結合企業の株主の関連会社である場合(関連会社株式から関連会社株式)、被結合企業の株主は次のように会計処理する(事業分離等会計基準46項、結合分離適用指針283項)。 Ⅳ 受取対価が現金等の財産と結合企業の株式である場合の被結合企業の株主に係る会計処理(子会社や関連会社以外の投資先を被結合企業とした企業結合) 子会社や関連会社以外の投資先(共同支配企業を除く)を被結合企業とする企業結合により、対価として子会社株式や関連会社株式以外の被結合企業の株式が、現金等の財産と結合企業の株式とに引き換えられた場合、被結合企業の株主は、金融商品会計基準に準じて会計処理する(事業分離等会計基準47項、結合分離適用指針284項)。 このため、次のように会計処理する。 (連載了)
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う会社対応のポイント 特定社会保険労務士 第一種衛生管理者 産業カウンセラー 寺本 匡俊 1 はじめに 現在、感染が拡大している「新型コロナウイルス感染症」であるが、もし会社から感染者が出た場合、会社としては、労働力の低下、営業停止の恐れ、風評被害などの業務上のリスクがあることは明らかであり、すでにその影響は大きくなりつつある。 そこで本稿では、今般の新型コロナウイルス感染症に関し、職場において労使を問わず、その予防(かからない)及び感染拡大の阻止(うつさない)の方策、また、罹患の疑い又は患者が発生した場合の当面の会社対応についてポイントをまとめることとする。 現状、新型のウイルスであり感染拡大中ともあって、公官庁から公表される情報は刻々と更新されていることから、本稿は2020年3月3日午後3時の時点での公開情報に基づくものとする。実際、追加・修正が頻繁であり、例えば厚生労働省の「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」(以下、「Q&A」という)も3月2日付で更新され、本稿公開時点(2020年3月5日午前10時30分)において、既に異なる情報が公表されているかもしれない。 2 予防及び感染拡大阻止のための会社対応 「新型コロナウイルス」はいわば通称であり、英語で病名は「COVID-19」、ウイルスは「SARS-CoV-2」と正式に命名された。この「新型コロナウイルス」も、別の「新型」が出れば、改めて固有名詞ができると考えられる。また、ウイルス名から分かるとおり、2003年に流行したSARSの言わば第2号であり、別の病とはいえ医学的に類似点があるのだろう。 SARSの時と同様、新型コロナウイルスも予防薬・治療薬は現在のところ存在しない。そのため予防の手段としては、資料により若干異なるものの、概ね風邪や季節性のインフルエンザと同様である。 主な予防手段の共通点を挙げると、次のようになる これらは一般的な風邪予防の基礎であるが、まずはこれらを従業員に周知することが、社内の安全衛生対策の第一歩となる。 なお、安全衛生対策の参考として、医学界の情報を下記に掲載しておく。 上記の予防手段の3点は私生活においても同様であるが、特に職場や通勤・帰宅においては、不特定多数と接触する機会も多いことから、多くの会社が実施しているように、例えば、次のような方策を徹底するのも重要である。 上記の(4)以降については、「働き方改革」と組み合わせて行うこともできるので、前向きな検討をお勧めしたい。 また報道によれば、新型コロナウイルスの特徴として、発熱する人が多いことや、肺炎にいたる重症者に高齢者が多いことが挙げられる。行政や医学界が、毎日の体温測定を呼び掛けているのも、発熱は個々人で自覚しやすい兆候だからだが、これに関連して一点、注意願いたいことがある。 内閣官房サイトの「新型コロナウイルス感染症の対応について」のなかで、「次の症状がある方は『帰国者・接触者相談センター』にご相談ください」という箇所の「風邪の症状や37.5℃以上の発熱が4日以上続いている」という文言がネット等で強調され、「熱が出ても4日間も待つのか」という苦情が流れているが、これは上記の相談センター(都道府県や保健所に設置されている)にアクセスする際の目安である。その続きの文中にあるように、高熱等でつらいとき、かかりつけ医の診断・治療を受けることを妨げるものではないため、もし罹患の疑いがある従業員が出た場合には、上記のような誤情報ではなく、正しい情報を伝えられるよう情報の取得には留意すべきである。 また、肺炎が死因に占める割合は、高齢になるほど高くなる傾向があるため、高齢者雇用が進んでいる職場では、特に予防には注意を要したい。なお、一部報道によれば本ウイルス検査は、保険診療になる方向で検討がなされているとのことだ。 3 不調者や患者の発生時の会社対応 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、全世界で前回SARSの症例報告数を、早くも上回っている。感染率がかなり高いことを前提として、今回の特徴的症状として報じられている発熱、セキ、倦怠感(だるさ)の自覚・他覚(周囲から見て)がある場合は軽い症状でも、従業員本人の納得・同意を得たうえで、回復するまで極力、会社を休んでもらうことが望ましい。 この場合、その時々で個々人に休業を命ずる場面を避けるため、あらかじめ会社の方針として、早いうちにこの旨をトップから内定者にいたるまでの全員に周知しておくことが重要である。また、休業者が出ると周囲の従業員の仕事が増えることもあるため、労働時間の管理などについてのケアも考慮しておきたい。 次に、発症者又はその疑いのある人が仕事を休んだ場合、休業手当(労働基準法第26条)の取扱いが課題となる。結論からいえば、Q&Aに示されているように、ケース・バイ・ケースの対応となる。 Q&Aによれば、患者発生の場合、「感染症法に基づき、都道府県知事が該当する労働者に対して就業制限や入院の勧告等を行うことができる」とあるように、文面上は都道府県で対応が異なる可能性があり、確認を要する。 とはいえ、私見ながら現状、就業制限の勧告が出ないとは考えづらい。勧告があれば行政の判断として「就業させないでください」となるため、一般に、「使用者の責」とはならない。一方、少し疑わしいという程度で上司の判断により休業を命ずる場合は、会社都合であるから、休業手当の支払い対象となると考えられる。 一方、Q&Aの「3 労働者を休ませる場合の措置(休業手当、特別休暇など)」の問1にあるように、休業手当を支払わない場合、次の2つの要件を満たすものでなければならないと解されている。 ②は三六協定を超えた長時間労働や休日不足などの法令違反を避けるのはもちろん、多くの職場でやっているような予防対策(前出の例でいえば、アルコール消毒液の設置、室内の換気、勤務条件の緩和など)を怠らないことだ。 病気以前の問題として、「他の会社がやっていて、うちの会社だけなぜやらない」というような、人事労務に何より重要な労使の信頼関係を損なうような事態を避けるためには、同業他社や地域の企業等との情報交換等を心掛けたい。 なお、休業手当は、会社の責ではない場合、「払わなくてもよい」のであって、「支払ってはならない」わけではない。特に、本人に働く意思があるにもかかわらず会社の命令で休ませるような場合、平均賃金の6割とはいかずとも、何らかの生計補助的な支援ができないか、あらかじめ検討し準備しておくのも一案である。 また、条件を満たせば、今回の影響に伴い実施されている特例で「雇用調整助成金」が出るかもしれない。なお、問合せ先はハローワークとなる。他にも企業支援の方策が検討されている。 4 さいごに 当面は諸情報の追加・修正が続くと考えられるので、厚生労働省の新型コロナウイルスに関する特設ページや「報道発表資料」を毎日確認することをお勧めする。医療、労働法、社会保障など同省の全分野におけるプレス・リリースの内容が、日々更新されている。 また、同省に限らず他省庁や地方自治体からも情報発信があるので、業種・職種・地域により確認いただきたい(下記に新型コロナウイルスに関する公官庁の主要な特設ページ等を参考までに掲載する)。 (了)