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平成31年度税制改正における『連結納税制度』改正事項の解説 【第7回】「M&A・組織再編税制の見直し」

筆者:足立 好幸

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平成31年度税制改正における

『連結納税制度』改正事項の解説

【第7回】

「M&A・組織再編税制の見直し」

 

公認会計士・税理士
税理士法人トラスト
足立 好幸

 

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[6] M&A・組織再編税制の見直し

組織再編税制における適格要件のうち、以下の2つの組織再編について新たに適格組織再編成の対象とするため、適格要件の見直しを行った。

(1) 親会社が子会社を完全子会社化した後に行う逆さ合併

(2) 間接保有の完全親会社の株式を用いた組織再編

連結納税を採用している法人が組織再編をする場合も、適格要件は単体納税と同じ要件となるため、上記の適格要件の見直しは、単体納税、連結納税いずれであっても、同じ取扱いとなる。

以下、連結納税を採用している法人に特有の論点について解説する。

(1) 親会社が子会社を完全子会社化した後に行う逆さ合併

平成31年4月1日以後に行われる株式交換等について、株式交換等の後に株式交換等完全親法人を被合併法人とし、株式交換等完全子法人を合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合には、その株式交換等に係る適格要件のうち完全支配関係継続要件、支配関係継続要件及び親子関係継続要件について、その適格合併の直前の時までの関係により判定することとする(法令4の3⑱⑲⑳、平成31年法令改正法令附則1・2)。

連結法人が株式交換等完全親法人となり、連結法人以外の法人を株式交換等完全子法人とする場合、株式交換等完全子法人は新たに連結納税に加入することになる(ただし、連結子法人が株式交換等完全親法人となり、当該連結子法人の株式を再編対価とする場合は、株式交換等の日において、当該連結子法人は連結納税から離脱するため、株式交換等完全子法人は連結納税に加入しない。以下、再編対価は連結親法人株式又は現金であるものとする)。

改正前は、株式交換等の後に株式交換等完全親法人(連結法人)を被合併法人とし、株式交換等完全子法人(加入連結子法人)を合併法人とする適格合併を行うことが見込まれている場合、非適格株式交換等に該当していたため、加入連結子法人(株式交換等完全子法人)は非特定連結子法人に該当し、時価評価が必要となり、繰越欠損金も切捨てになっていた(旧法法61の12①、81の9②)。

これが、この改正によって、適格株式交換等に該当することになったため、加入連結子法人(株式交換等完全子法人)は特定連結子法人に該当することになり、時価評価は不要となり、繰越欠損金も切り捨てられないことになった(法法61の12①、81の9②)。

なお、株式交換等完全親法人が連結親法人である場合、株式交換等の後に株式交換等完全親法人(連結親法人)を被合併法人とし、株式交換等完全子法人(加入連結子法人)を合併法人とする適格合併を行う場合、合併日において連結納税が取りやめとなることに留意する必要がある(法法4の5②三)。

[株式交換等による連結納税の加入後に逆さ合併を予定しても特定連結子法人に該当することに!]

※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。

※1 再編対価がA社株式の場合、連結子法人A社は連結納税から離脱し、B社は連結納税に加入しない。

※2 特定連結子法人の場合、時価評価が不要、繰越欠損金は持込み可能。非特定連結子法人の場合、時価評価が必要で、繰越欠損金は切り捨てられる。

(2) 間接保有の完全親会社の株式を用いた組織再編

平成31年4月1日以後に行われる合併、分割及び株式交換に係る適格要件並びに被合併法人等の株主における旧株の譲渡損益の計上を繰り延べる要件のうち、対価に関する要件について、対象となる合併法人等の親法人の株式に合併法人等の発行済株式の全部を間接に保有する関係がある法人の株式を加える(法法2十二の八・十二の十一・十二の十七、61の2②④⑨、法令4の3①⑤⑰、119①五・六・九、119の7の2①③④。平成31年所法等改正法附則1・13・20①)。

例えば、適格合併の金銭等不交付要件を満たす「合併親法人株式」の定義は以下のとおりとなる。

「合併親法人株式」とは、合併法人との間に合併法人の発行済株式(自己株式を除く)の全部を保有する関係がある法人の株式をいう。 発行済株式の全部を保有する関係とは、次の2つの要件を満たす場合の合併法人と親法人との間の関係となる。 	合併の直前に合併法人と合併法人以外の法人(親法人)との間に当該親法人による直接完全支配関係(2の法人のいずれか一方の法人が他方の法人の発行済株式の全部を保有する関係をいう)があること 	合併後に合併法人と親法人との間に当該親法人による直接完全支配関係が継続することが見込まれていること	「合併親法人株式」とは、合併法人と合併法人以外の法人(親法人)との間に当該親法人による完全支配関係がある場合の当該親法人の株式をいう。 完全支配関係とは、次の2つの要件を満たす場合の合併法人と親法人との間の関係となる。 	合併の直前に合併法人と親法人との間に当該親法人による完全支配関係(直前完全支配関係)があること 	合併後に合併法人と親法人との間に当該親法人による完全支配関係が継続することが見込まれていること

また、例えば、被合併法人の株主における旧株の譲渡損益の計上を繰り延べる要件を満たす「親法人株式」の定義は以下のとおりとなる。

「親法人株式」とは、合併の直前に合併法人との間に合併法人の発行済株式(自己株式を除く)の全部を保有する関係がある法人の株式をいう。	「親法人株式」とは、合併法人と合併法人以外の法人(親法人)との間に当該親法人による完全支配関係がある場合の当該親法人の株式をいう。

なお、株式交換の場合の親法人株式(株式交換完全支配親法人株式)、分割の場合の親法人株式(分割承継親法人株式)も同様の定義となる。

連結孫法人を合併法人、分割承継法人、株式交換完全親法人、連結法人以外の法人を被合併法人、分割法人、株式交換完全子法人とする合併、分割、株式交換をする場合、連結孫法人を連結納税から離脱させないためには、再編対価を、現金又は連結親法人株式にする必要がある。

しかし、改正前は、再編対価を現金又は連結親法人株式にすると、その再編が、非適格合併、非適格分割、非適格株式交換に該当してしまうという問題があった(注)

(注) 合併法人・株式交換等完全親法人が被合併法人・株式交換等完全子法人の株式の3分の2以上を保有している場合、現金を再編対価としても適格合併・適格株式交換等に該当する。

これが今回の改正によって、連結子法人と同じく、連結孫法人も連結親法人株式を対価として、連結納税から離脱させることなく、適格合併、適格分割、適格株式交換によって他の法人又は事業を買収することが可能になった。

[連結孫法人が買収会社となる場合でも連結納税から離脱させないことが可能に!]

※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。

連結納税から離脱しないが、非適格になる。非適格合併の場合、C社の時価譲渡と繰越欠損金の切捨て。非適格株式交換の場合、非特定連結子法人として時価評価と繰越欠損金の切捨て。 C社株主にも課税(株式譲渡損益)が生じる。

 

〔凡例〕
法法・・・法人税法
法令・・・法人税法施行令
地方法法・・・地方法人税法
地法・・・地方税法
措法・・・租税特別措置法
措令・・・租税特別措置法施行令
平成31年所法等改正法・・・所得税法等の一部を改正する法律(平成31年法律第6号)
(例)法法57⑪三・・・法人税法57条11項3号

(了)

この連載の公開日程は、下記の連載目次をご覧ください。

連載目次

税制改正における『連結納税制度』改正事項の解説 

▷平成31年度税制改正(全8回)

▷平成30年度税制改正(全9回)

▷平成29年度税制改正(全9回)

※クリックすると表示されます

【第1回】 非特定連結子法人の時価評価資産の対象範囲の見直し

はじめに

[1] 非特定連結子法人の時価評価資産の対象範囲の見直し

1 改正内容

2 『自己創設営業権』の評価問題が解消!

3 連結納税開始日・加入日が平成29年10月1日の場合は旧税制が適用に!

4 どうせ時価課税されるなら、合併で時価譲渡になる方がいいのか、スクイーズアウトで時価評価される方がいいのか?(時価課税の有利・不利)

【第2回】 スクイーズアウトにおける特定連結子法人の範囲の拡大

[2] スクイーズアウトにおける特定連結子法人の範囲の拡大

1 改正内容

2 連結納税の不利益を受けずに少数株主排除が可能に!

3 連結納税開始日が平成29年10月1日以後であっても、株式交換等が平成29年9月30日以前に行われた場合は旧税制が適用される!

4 全部取得条項付種類株式方式又は株式併合方式により連結納税に加入した場合、「完全支配関係を有することとなった日」はいつになるのか?

【第3回】 研究開発税制の見直し

[3] 研究開発税制の見直し

【第4回】 所得拡大促進税制の見直し他

[4] 所得拡大促進税制の見直し

[5] 役員給与等の見直し

[6] 地域未来投資促進税制の創設

【第5回】 中小企業者向け設備投資促進税制の拡充(その1)

[7] 中小企業者向け設備投資促進税制の拡充

1 中小企業経営強化税制の創設

【第6回】 中小企業者向け設備投資促進税制の拡充(その2)

2 中小企業投資促進税制の見直しと適用期限の延長

3 商業・サービス業活性化税制の適用期限の延長

【第7回】 中小企業者向け租税特別措置の適用法人の制限、災害特例措置

[8] 震災・災害に関する税制措置の整備

[9] 中小企業者向け租税特別措置の適用法人の制限

【第8回】 連結法人の申告期限の延長の見直し

[10] 連結法人の申告期限の延長の見直し

1 法人税の申告期限の延長について

2 事業税の申告期限の延長について

【第9回】 地方税率の改正時期の変更他

[11] 地方税率の改正時期の変更

[12] 組織再編税制に係る改正

[13] タックス・ヘイブン税制の総合的見直し

▷平成28年度税制改正(全12回)

※クリックすると表示されます

【第1回】 法人税率等の改正

~はじめに~

[1] 連結法人税、連結地方法人税、住民税、事業税の税率の改正

【第2回】 欠損金の繰越控除制度の見直し

[2] 連結欠損金の繰越控除制度の見直し

[3] 事業税に係る繰越欠損金の繰越控除制度の見直し

[4] 控除対象個別帰属調整額及び控除対象個別帰属税額の繰越控除制度の見直し

【第3回】 減価償却制度の見直し

[5] 減価償却制度の見直し

【第4回】 役員給与の見直し

[6] 役員給与の見直し

【第5回】 雇用促進税制の見直し

[7] 雇用促進税制の見直し

【第6回】 地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の創設

[8] 地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の創設

【第7回】 組織再編関連税制の見直し

[9] 適格現物出資の見直し

[10] 組織再編税制の見直し

【第8回】 移転価格文書化制度(その1)

[11] 移転価格文書化制度

1 多国籍企業グループの移転価格文書化制度

(1) 国別報告書

【第9回】 移転価格文書化制度(その2)

(2) マスターファイル(事業概況報告事項)

【第10回】 移転価格文書化制度(その3)

(3) ローカルファイル(独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類)

2 国外事業所等との内部取引に係る移転価格文書化制度

【第11回】 日台民間租税取決めに規定された内容の実施に係る国内法の整備

[12] 日台民間租税取決めに規定された内容の実施に係る国内法の整備

【第12回】 その他国際税務の改正・固定資産税の特例措置

[13] 外国子会社合算税制(タックス・ヘイブン税制)の見直し

[14] 国際課税原則の帰属主義への変更の円滑な実施

[15] 機械装置の固定資産税の特例措置の創設

▷平成27年度税制改正(全12回)

※クリックすると表示されます

【第1回】 法人税率の引下げ

~はじめに~

[1] 連結法人税率の引下げ

【第2回】 欠損金の繰越控除制度の見直し(その1)

[2] 連結欠損金の控除限度額の段階的引下げ

(1) 連結欠損金の控除限度額の段階的引き下げ

(2) 連結所得金額の100%を控除限度額とする特例

① 中小法人等

② 経営再建中の法人

【第3回】 欠損金の繰越控除制度の見直し(その2)

③ 新設法人

【第4回】 欠損金の繰越控除制度の見直し(その3)

[3] 連結欠損金の繰越期間の延長

[4] 事業税に係る繰越欠損金の繰越控除制度の見直し

[5] 控除対象個別帰属調整額及び控除対象個別帰属税額の繰越控除制度の見直し

【第5回】 受取配当等の益金不算入制度の見直し

[6] 連結納税適用法人に係る受取配当等の益金不算入制度の見直し

【第6回】 研究開発税制の見直し

[7] 連結納税適用法人に係る研究開発税制の見直し

【第7回】 地方拠点強化税制の創設(その1)

[8] 連結納税適用法人に係る地方拠点強化税制の創設

(1) 改正の概要

(2) 地方拠点建物等の取得費の特例措置

【第8回】 地方拠点強化税制の創設(その2)

(3) 雇用促進税制の拡充

【第9回】 特定資産の買換えの場合の課税の特例の縮減・延長

[9] 特定資産の買換えの場合の課税の特例の縮減・延長

【第10回】 所得拡大促進税制・その他の租税特別措置法上の見直し

[10] 連結納税適用法人に係る所得拡大促進税制の見直し

[11] その他の租税特別措置法上の見直し

【第11回】 事業税の改正

[12] 連結納税適用法人に係る事業税の改正

【第12回】 国際税務の改正

[13] 連結納税適用法人に係る国際税務の改正

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