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裁判例・裁決例からみた非上場株式の評価 【第6回】「募集株式の発行等⑤」

裁判例・裁決例からみた 非上場株式の評価 【第6回】 「募集株式の発行等⑤」   公認会計士 佐藤 信祐   前回は、神戸地裁昭和51年6月18日判決について解説を行った。 【第6回】に当たる本稿では、東京地裁昭和52年8月30日判決、東京地裁昭和56年6月12日判決について解説を行うこととする。   6 東京地裁昭和52年8月30日判決・金判533号22頁 (1) 事実の概要 本事件は、第三者割当により新株100万株を1株当たり150円で発行しようとしたところ、①適正価格が338円であり有利発行に該当すること、②支配権獲得目的のためであることから、著しく不公正な方法による新株の発行であるとして、差止めを求めた事件である。 本稿は、非上場株式の評価についての連載であるため、前者の論点のみについて解説を行うこととする。 (2) 裁判所の判断 (3) 評釈 本事件も、類似業種比準価額方式が採用されているが、算定基準日以降の業績悪化を加味したうえで修正を行っているという点で興味深い判決である。 しかし、「本件新株の価額決定時までに相当程度低落しているものと推認」されるのであれば、その数値をある程度は算定すべきであり、やや大雑把な判決であると言える。また、「新株の消化可能性」について触れられている点も興味深い。上場会社では、新株の消化可能性を考慮して10%程度のディスカウントを行うことはあり得るが、非上場会社においても同様に解されるかどうかは当然に議論がなされるべきだからである。   7 東京地裁昭和56年6月12日判決・判時1023号116頁 (1) 事実の概要 本事件は、経営支配権に争いがあったところ、①取締役に反対派を再任しなかったこと、②自派の者に対して額面金額50円で第三者割当を行った事件につき、それぞれ損害賠償責任を追及した事件である。 本稿では、このうち、後者についてのみ解説を行うこととする。 (2) 裁判所の判断 (3) 評釈 このように、純資産価額方式を採用した理由としては、小規模会社であること、経営に関与できる立場にあったことであるため、その点については、一応合理的な判決であったということができる。 しかし、その後の減額については、業績悪化によるディスカウントと非流動性ディスカウントがそれぞれ行われているが、時価純資産方式を採用している中でこのようなディスカウントを行うことは聞いたことがなく、非常に違和感のある判決である。業績悪化によるディスカウントを考慮するのであれば、DCF方式、収益還元方式との折衷方式を採用すべきであり、非流動性ディスカウントを考慮するのであれば、時価純資産の算定において、個別の資産につき清算価値を考慮すべきであり、無理矢理数字を作りこんだと言われても仕方のない判決であるともいえる。 また、含み益に対する法人税相当額の控除については、税効果会計が導入されていなかった当時ではやむを得ないのかもしれないが、現在では、このような税効果を加味するのは当然のことであり、本判決の射程は及ばないと考えられる。 現在でも、DCF方式や収益還元方式の恣意性の高さにより、時価純資産方式との折衷を行う事例は見られるところであり、そのような事件では、本事件の内容を参考にすることができると考えられる。 次回では、大阪地裁平成2年2月28日判決及び京都地裁平成4年8月5日判決について解説を行う予定である。 (了)

#No. 167(掲載号)
#佐藤 信祐
2016/04/28

理由付記の不備をめぐる事例研究 【第10回】「有価証券評価損」~有価証券評価損の計上が認められないと判断した理由は?~

理由付記の不備をめぐる事例研究 【第10回】 「有価証券評価損」 ~有価証券評価損の計上が認められないと判断した理由は?~   中央大学大学院商学研究科 博士後期課程 (酒井克彦研究室所属) 泉 絢也   今回は、青色申告法人X社に対して行われた有価証券評価損の否認に係る法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた長崎地裁平成18年11月7日判決(税資256号順号10565。以下「本判決」という)を取り上げる。   1 更正通知書に記載された更正の理由(本件理由付記) (注)  素材とした本判決の判決文から読み取ることができる理由付記の一部を筆者が加工している。   2 本件理由付記から読み取ることができる関係図   3 本判決の判断 本判決は、次のとおり、本件処分は帳簿記載の基礎となる事実関係を否定してされたものではないから、帳簿書類の記載自体を否認することなしに更正をする場合に該当するとした上で、理由付記に不備はないと判断した(この判断は、控訴審である福岡高裁平成19年4月10日判決・税資257号順号10682でも維持されている)。 (1) 求められる理由付記の程度 (2) 理由付記の十分性   4 私見 (1) 関係法令等の確認 内国法人がその有する資産の評価換えをしてその帳簿価額を減額した場合には、その減額した部分の金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入されないのが原則であり(法法33①)、例外的に特定の事実が生じた場合にのみ評価損の損金算入が認められているところ、有価証券については、法的整理の事実がある場合を除くとすれば、次の要件を満たした場合に評価損の損金算入が認められる(法法33②、法令68①二)。 本件株式のような上場有価証券以外の有価証券に係る評価損の損金算入が認められるためには、「その有価証券を発行する法人の資産状態が著しく悪化したため、その価額が著しく低下したこと」(法令68①二ロ)という上記〔1〕【2】の要件を満たす必要がある。 法人税基本通達は、この場合の「著しく低下した」というためには、①当該有価証券の当該事業年度終了の時における価額がその時の帳簿価額のおおむね50%相当額を下回ることとなり、かつ、②近い将来その価額の回復が見込まれないことという2つの基準をクリアする必要がある旨定めている(法人税基本通達9-1-7、9-1-11)。 ②の基準は条文に明記されているものではないが、企業会計原則第三の五B及び会社計算規則5条3項1号においても資産の評価損を計上する場合に求められているものであって、このような解釈は本判決を含む裁判例において認められる傾向にある(ただし、条文に明記されていない以上、厳密な意味での要件と解すべきか否かは議論があると考える)。 この点について、例えば、本判決の控訴審である福岡高裁平成19年4月10日判決(税資257号順号10682)は、大要次のとおり判示している。 (2) 求められる理由付記の程度 本件における帳簿書類の記載内容は明らかではないが、本件は、B社株式の回復見込みの有無に関する評価についてX社と課税庁の見解が相違しているケースであり、帳簿書類の記載自体を否認することなしに更正をする場合に該当すると考える。 したがって、理由付記の程度としては、更正通知書記載の更正の理由が、そのような更正をした根拠について帳簿記載以上に信憑力のある資料を摘示するものでないとしても、更正の根拠を更正処分庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という理由付記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的に明示するものである限り、法の要求する更正理由の付記として欠けるところはないことになる(最高裁昭和60年4月23日第三小法廷判決・民集39巻3号850頁等参照)。 (3) 理由付記の十分性 次のとおり、本件理由付記は、法の求める理由付記として十分なものであると考える。 本件理由付記には、法人税法上、有価証券に係る評価損の損金算入が認められるためには、「その有価証券の資産価値がその帳簿価格に比べ異常に減少し、その減少が固定的で回復の見込みがない状態であること」という要件を満たす必要があるという法令上の根拠が示されている。そして、「貴法人からは、B社が5か年で債務超過を解消する計画である旨の説明あるいは資料の提示はあるものの、本件株式の価額が回復する見込みがないことについての具体的な明示がされていません。」として、上記要件を満たすための事実が明らかにされてない旨の記載がなされている。 そうであれば、本件理由付記は、その記載内容から法令上の根拠が明らかになるものであり、かつ、法令上の要件に対応する具体的な事実を記載するものであり、これによって課税庁の判断過程が明らかとなるものであるから、更正処分庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、更正の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与えるという理由付記の趣旨目的に適うものであると考える。 *  *  * 次回は、債権放棄による貸倒損失の計上を否認した上で、寄附金に該当するものとした法人税更正処分の理由付記の事例を取り上げる。 (了)

#No. 167(掲載号)
#泉 絢也
2016/04/28

税務判例を読むための税法の学び方【81】 〔第9章〕代表的な税務判例を読む(その9:「租税法律主義の意義②」(最判昭30.3.23))

税務判例を読むための税法の学び方【81】 〔第9章〕代表的な税務判例を読む (その9:「租税法律主義の意義②」(最判昭30.3.23))   立正大学法学部准教授 税理士 長島 弘   (3) 最高裁の判断 前回の第一審・第二審に続き、最高裁判決について見ていく。 これは裁判所ホームページにて判決が公開されているため、これを入手し、読んでいただきたい。 この中では、以下の結論を示している。 この部分で、租税法律主義による基本を確認し、以下にこの視点から地方税法の規定の是非につき言及している(下線筆者)。 この判決は、事例判決かそれとも一般的法命題の示されている法理判決か、形式の点では判断の難しいところがあるが、その内容は租税法律主義の点から地方税法と憲法の関係について、見解を示している。厳密な意味で、他の税法と憲法の関係までもその射程に含んでいるかは見解が分かれそうなところではあるが、その内容から、他の税法との関係まで示唆しているものと判断できよう。 すなわち憲法84条から「租税を創設し、改廃するのはもとより、納税義務者、課税標準、徴税の手続はすべて・・・法律に基づいて定められなければならない」ことを確認した上で、租税は「法律に基づいて定めるところに委せられている」としている。 なお租税法律主義の基本的内容としては、遡及立法の禁止、課税要件法定主義、課税要件明確主義が挙げられるが、その中でも、課税要件法定主義は、判示にあるように、租税の創設・改廃、納税義務者や課税標準といった課税要件そして徴収の手続等はすべて法律または法律に基づいて定めることを要求している。 判決ではこれらについて、法律の立法にあたっての幅広い裁量権が認められていることを示しているが、もとよりその裁量権は無制限なものではなく、憲法の諸規定の範囲内であることを前提としている。判決は当然、その範囲内であるという前提に立ったものと思われるが、この点、判決は当該法律については徴税上の便宜として許容範囲内にあることを明示したものと思われる。 なおこの点、高裁は憲法13条の「公共の福祉」にあるとしたが、最高裁はこの点を「公共の福祉による制約として説示したのは妥当を欠くきらいがない」と否定している。この点は、上告審における上告人のXの主張に応えることからのものと思われる。では以下で、上告審におけるXの主張を見ていこう。   5 上告審における納税者側の主張 この上告審の主張は、上記「公共の福祉」の点のみならず、この地方税法の規定の歴史的経緯にも触れ、批判を展開しており、誠に興味深い。裁判所ホームページで公開されている判決には掲載されていないため全文を紹介したいところではあるが、カタカナ仮名による表記であるため、要点のみ紹介する。 ここで上告人(納税者側)は以下のように主張する。 すなわち、「公共の福祉」は、憲法改正の際米語「パブリック・ウェルフェア」の和訳字として採択されたもので、福祉は幸福の意義であることから、「公共ノ福祉」とは「公の幸福」であるとする。そしてその意義に照らして、土地の所有者でない者に、真の所有者のために税の支払いを義務付けることは、正当ではない旨、そしてこれは法の基本的観念である「衡平」を害するものであり、これを許せば、行政上の便宜と行政費用の節約のためには国民の基本的人権その他の権利も「公共の福祉」の名の下に無視してよいということになりかねないと批判する。 次に、固定資産税は沿革的に「地租」にその源があるとして、地租法以来の変遷を次のように紹介(上告人が記した以外に、筆者が補足して記載する)したうえで、以下の旨批判する。 そして「新法(固定資産税法)によれば毎1月1日に誤あればその年中1年の久しきに渉りこの誤を修正し方法がない。その不都合、不公平、不合理たるや前者(旧法)の比ではない。本来本税は土地に関する限り、地租と異なる処が無い以上は、旧法における比較的利便、公正を考慮しその解釈を合理化し法の欠缺を解釈によりて修正緩和して納税に付き国民に必要的害悪感を除去する努力をすることが公僕たる公務員、特に裁判官の義務である」とする。   6 「公共の福祉」の意義 少しテーマと逸れるため、詳細な検討は避けるが、丁度この判決の前後に「公共の福祉」の意義について、いくつかの裁判例で示されており(ただし直接その意義を述べるものは多くない)、裁判所ホームページにおいて公開されているもので、そのいくつかをここで紹介する。 この15頁に「ここに公共の福祉とは、・・・」と判示されている。 この判決は、上記裁判例のように「公共の福祉」について直接示したものではないが、ジュリスト別冊の憲法判例百選(初版)において「公共の福祉による財産権の制限」に関する代表的判例として掲載されていたものである。 *   *   * 次回はこの事案のまとめとして、最高裁判決への批判及び関連する判例を紹介したい。 (続く)

#No. 167(掲載号)
#長島 弘
2016/04/28

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第25回】「退職給付引当金(簡便法)」

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第25回】 「退職給付引当金(簡便法)」   仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋   【はじめに】 今回は、退職給付引当金(簡便法)の会計処理について解説する。 退職給付引当金は、原則、数理計算により算定する。これを原則法という(【第14回】参照)。一方、従業員数が比較的少ない小規模企業等において、高い信頼性をもって数理計算上の見積りを行うことが困難である場合又は退職給付に係る財務諸表項目に重要性が乏しい場合には、期末の退職給付の要支給額を用いた見積計算を行う等の簡便な方法を用いて、退職給付引当金(退職給付に係る負債)及び退職給付費用を計算することができる(企業会計基準第26号「退職給付に関する会計基準(以下、「基準」という)」26)。この方法を簡便法という。 なお、連結財務諸表上では、退職給付引当金は「退職給付に係る負債」で表示する。 ※各ステップをクリックすると、それぞれのページに移動します。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。 簡便法は全ての企業で採用できるわけではない。原則として従業員数 300 人未満の企業の場合に、簡便法を採用できる(企業会計基準適用指針第25号「退職給付に関する会計基準の適用指針(以下、「適用指針」という)」47)。300人以上の場合には、数理計算に一定水準の信頼性が得られるが、300人未満の場合には、一定水準の信頼性が得られないため、300人という基準が設けられている。 そのため、従業員数が300人未満の場合は、【STEP2】を検討し、300人以上の場合は、原則法を適用し【第14回】の内容を検討する。 ただし、従業員数が 300 人以上の企業であっても年齢や勤務期間に偏りがある(例えば、会社設立後間もないため)などにより、原則法による計算の結果に一定の高い水準の信頼性が得られないと判断される場合には、簡便法によることができる(適用指針47)。そのため、原則法による計算の結果に一定の高い水準の信頼性が得られないと判断される場合には、【STEP2】を検討し、信頼性が得られる場合には、原則法を適用し【第14回】の内容を検討する。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ここでの従業員数とは退職給付債務の計算対象となる従業員数を意味し、複数の退職給付制度を有する事業主にあっては制度ごとに判断する(適用指針47)。 また、従業員数は毎期変動することが一般的であるので、簡便法の適用は一定期間の従業員規模の予測を踏まえて決定する(適用指針47)。 なお、連結グループにおいて、原則法と簡便法のいずれかに統一する必要はない(適用指針110)。 簡便法においても退職給付引当金の算定は、原則法と同様である。 ここでは、「退職給付債務」を算定する。 退職給付債務は、「(1)退職一時金制度の場合」、「(2)企業年金制度の場合」、「(3)退職一時金制度の一部を年金制度に移行している場合」で異なる。そのため、まず、自社の退職金制度が(1)から(3)のいずれに該当するかを判断する。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (1) 退職一時金制度の場合 退職一時金制度の場合、以下の3つの方法があるため、各社でいずれかの方法を選択する必要がある。いずれも自己都合要支給額をもとに算定する。 ① 比較指数法(適用指針50(1)①) 比較指数法では以下のように退職給付債務を算定する。 翌年度以後においては計算基礎等に重要な変動がある場合は、比較指数を再計算する。 ② 割引率・昇給率法(適用指針50(1)②) 退職給付に係る期末自己都合要支給額に、平均残存勤務期間に対応する割引率(適用指針【資料1】)及び昇給率(適用指針【資料2】)の各係数を乗じた額を退職給付債務とする。 ③ 自己都合要支給額法(適用指針50(1)③) 退職給付に係る期末自己都合要支給額を退職給付債務とする。 実務上は、この方法が多いと考えられる。 (2) 企業年金制度の場合 企業年金制度の場合、以下の3つの方法があるため、各社でいずれかの方法を選択する必要がある。いずれも数理債務をもとに算定する。 ① 比較指数法(適用指針50(2)①) 比較指数法では以下のように退職給付債務を算定する。 翌年度以後においては計算基礎等に重要な変動がある場合は、比較指数を再計算する。 ② 組み合わせ法(適用指針50(2)②) 組み合わせ法では在籍従業員とそれ以外に分けて、以下のように退職給付債務を算定する。 ③ 数理債務法(適用指針50(2)③) 直近の年金財政計算上の数理債務を退職給付債務とする。 (3) 退職一時金制度の一部を企業年金制度に移行している場合 退職一時金制度の一部を企業年金制度に移行している場合、以下の2つの方法があるため、各社でいずれかの方法を選択する必要がある。 ① 退職一時金制度の未移行分と企業年金制度への既移行分に分ける方法(適用指針51(1)) 退職一時金制度の未移行部分に係る退職給付債務を上記(1)の方法で算定し、企業年金制度に移行した部分に係る退職給付債務を上記(2)の方法で算定する。 ② 在籍する従業員と年金受給者・待期者に分ける方法(適用指針51(2)) 在籍する従業員については企業年金制度に移行した部分も含めた退職給付制度全体としての自己都合要支給額を基に計算した額を退職給付債務とし、年金受給者及び待期者については年金財政計算上の数理債務の額をもって退職給付債務とする。 年金資産とは、特定の退職給付制度のために、その制度について企業と従業員との契約(退職金規程等)等に基づき積み立てられた、次のすべてを満たす特定の資産をいう(基準7)。 年金資産の額は、期末における時価(公正な評価額)により計算する(基準22)。時価は年金資産の受託会社である信託銀行や生命保険会社が算定したものを使う。 期末日における年金資産の額については、時価を入手する代わりに、直近の年金財政決算における時価を基礎として合理的に算定された金額(例えば、直近の時価に期末日までの拠出額及び退職給付の支払額を加減し、当該期間の見積運用収益を加算した金額)を用いることもできる(適用指針48(2))。 【STEP2】で算定した退職給付債務から【STEP3】で算定した年金資産を除いた金額が退職給付引当金となる。 連結上、退職給付引当金は、退職給付に係る負債で表示する。 簡便法による退職給付費用は以下のように計算する(適用指針49)。 簡便法では、数理計算上の差異や過去勤務費用は発生しない。 簡便法を適用した退職給付制度がある場合、以下の事項を注記する(適用指針62)。 なお、会社計算規則では、上記のような規定はない。 *   *   * 以上、6つのステップをまとめたフロー・チャートを再掲する。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。 (了)

#No. 167(掲載号)
#西田 友洋
2016/04/28

マイナンバーの会社実務Q&A 【第9回】「就業規則の改定②(「採用時の提出書類」の条文の改定)」

マイナンバーの会社実務 Q&A 【第9回】 「就業規則の改定②(「採用時の提出書類」の条文の改定)」   税理士・社会保険労務士 上前 剛   〈Q〉 当社の「採用時の提出書類」の条文の改定について教えてください。現在の条文は以下の通りです。   〈A〉 会社は、第1項第6号の給与所得者の扶養控除等申告書に個人番号を記載してもらい、従業員の個人番号を取得する。会社が従業員から個人番号を取得する際には、番号確認と身元確認を行わなければならない(【第4回】参照)。 取得の方法には、対面、郵送、オンラインがあるが、採用時の提出書類は通常、紙で提出することから、オンラインは除外する。 (1) 対面による取得 ① 番号確認 番号確認は、次のいずれかにより行う。 個人番号カード 通知カード 個人番号が記載された住民票記載事項証明書など ② 身元確認 対面で確認して従業員本人に相違ないことが明らかであれば、不要である。 (2) 郵送による取得 ① 番号確認 番号確認は、次のいずれかにより行う。 個人番号カードのコピー 通知カードのコピー 個人番号が記載された住民票記載事項証明書のコピーなど ② 身元確認 身元確認は、次のいずれかにより行う。 個人番号カードのコピー 運転免許証、パスポート等の写真付き身分証明書のコピーなど 上記(1)①、(2)①の個人番号が記載された住民票記載事項証明書について、個人番号が記載された住民票としなかったのは、採用時の提出書類として住民票は好ましくないので住民票記載事項証明書にするようにという通達が出ているからである(基発第83号・婦発第40号)。 以上を前提に改定を行う。   〈パターン1(郵送による取得)〉 第1号のカッコ書きに“個人番号が記載されていないもの”を追加した。これは、第9号とかぶらないようにするためである。また、第9号に“個人番号カードの写し、または、通知カードの写し及び写真付き身分証明書の写し”を追加した。   〈パターン2(対面による取得)〉 第1号のカッコ書きに“個人番号が記載されていないもの”を追加した。これは、第9号とかぶらないようにするためである。また、第9号に“個人番号カード、または、通知カード(提示)”を追加した。これは、対面による提示の場合、身元確認が不要となるためである。   〈パターン3(対面による取得)〉 第1号のカッコ書きに“個人番号が記載されているもの。提示”を追加した。これは、対面による提示の場合、身元確認が不要となるためである。 (了)

#No. 167(掲載号)
#上前 剛
2016/04/28

養子縁組を使った相続対策と法規制・手続のポイント 【第23回】「遺族年金と養子縁組」

養子縁組を使った相続対策と 法規制・手続のポイント 【第23回】 「遺族年金と養子縁組」   弁護士・税理士 米倉 裕樹   問 題 【問題①】 A男とB女の婚姻後、子Cが生まれたが、その後、A男が死亡し、B女は遺族基礎年金と遺族厚生年金を受給していた。その後、B女がD男と再婚し、D男と子Cが養子縁組を行うことで、B女または子Cの遺族基礎年金、遺族厚生年金はそれぞれどうなるか。 【問題②】 A男とB女の婚姻後、子Cが生まれたが、その後、A男とB女は離婚し(子Cの親権者はB女)、D男と再婚したものの、その後、D男が死亡した場合、B女または子Cは遺族基礎年金、遺族厚生年金を受けることができるか。D男と子Cが養子縁組を行っていた場合はどうか。 【問題③】 A男とB女の婚姻後、子Cが生まれたが、その後、A男とB女は離婚し(子Cの親権者はA男)、D女と再婚したものの、その後、A男が死亡した場合、D女または子Cは遺族基礎年金、遺族厚生年金を受けることができるか。D女と子Cが養子縁組を行っていた場合はどうか。   回 答 【問題①】 子Cは遺族厚生年金を受給でき、その後、子CがB女と別居するなどして生計同一関係が解消された場合には、子Cは遺族基礎年金も受給できる。 【問題②】 子CとD男とが養子縁組を行っていた場合、B女は遺族基礎年金と遺族厚生年金の受給権者となる。その後、子CがB女と別居するなどして生計同一関係が解消された場合には、子Cのみに遺族基礎年金、遺族厚生年金が支給される。他方で、子CとD男とが養子縁組を行わずにD男が死亡した場合には、B女は遺族基礎年金の受給権者とはならないが、遺族厚生年金の受給権者とはなる。 【問題③】 D女と子Cが養子縁組を行っていたか否かを問わず、D女は遺族基礎年金と遺族厚生年金の受給権者となる。その後、子CがD女と別居するなどして生計同一関係が解消された場合には、子Cのみに遺族基礎年金、遺族厚生年金が支給される。   解 説 [1] 遺族年金の概要 1 遺族基礎年金とは 遺族基礎年金は、国民年金に加入中の者が死亡した場合、その他一定の要件を満たした場合に、死亡した者によって生計を維持されていた子(18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか、または20歳未満であって障害等級に該当する障害の状態にあり、かつ、現に婚姻をしていないこと。以後同じ)のある配偶者、または子に支給される(国法37の2)。 遺族基礎年金は、遺族となった子を養育するための年金といえるため、子のない配偶者には受給権はなく、生計を同じくしている子がいる配偶者に遺族基礎年金が支給される。また、子に対する遺族基礎年金は、配偶者が遺族基礎年金の受給権を有するとき、または生計を同じくするその子の父もしくは母があるときは、その間、その支給が停止される(国法41②)。 そのため、子が別居するなどして親との生計同一関係が解消された場合には、子への支給停止が解除され、子に遺族基礎年金が支給され、親の受給権は失権する(国法40②・39③五)。 2 遺族厚生年金とは 遺族厚生年金は、厚生年金に加入中の者が死亡した場合、その他一定の要件を満たした場合に、死亡した者によって生計を維持されていた遺族(配偶者、子、父母、孫または祖父母)に支給される(厚法59)。 子に対する遺族厚生年金は、配偶者が遺族厚生年金の受給権を有する期間、原則としてその支給が停止され(厚法66①)、配偶者に対する遺族厚生年金は、配偶者が国民年金法に基づく遺族基礎年金の受給権を有しない場合であって子が当該遺族基礎年金の受給権を有するときは、原則としてその間、その支給が停止される(厚法66②)。 そのため、配偶者、子との間における受給権者の優先順位は、子のある配偶者、子、子のない配偶者となる。 3 受給権の失権 遺族基礎年金、遺族厚生年金の受給権がある子は、養子になったときには失権するが、直系血族、直系姻族との養子縁組の場合は失権しない(国法40①三、厚法63①三)。 そのため、子が親の再婚相手の養子となった場合、または祖父母の養子となった場合でも子の受給権は失権しない。また、親が再婚しても子の受給権が失権することはない。 遺族基礎年金、遺族厚生年金とも、受給権者が婚姻をしたときは失権する(国法40①二、厚法63①二)。 [2] 【問題①】について B女は、死亡した者(A男)によって生計を維持されていた子(子C)のある配偶者、死亡した者(A男)によって生計を維持されていた配偶者にそれぞれ該当する結果、遺族基礎年金及び遺族厚生年金の受給権者である。子Cに対する遺族基礎年金は、B女が遺族基礎年金、遺族厚生年金の受給権を有する間、その支給が停止される。 ただし、その後、B女がD男と再婚することでB女の遺族基礎年金、遺族厚生年金はいずれも失権し、子Cは、B女の遺族厚生年金が失権することで、支給停止が解除され遺族厚生年金を受給できるものの、遺族基礎年金は、「生計を同じくするその子の父または母」、すなわちB女がいるため支給停止のままである。その後、子CがB女と別居するなどして生計同一関係が解消された場合には、子Cは遺族基礎年金も受給できる。 なお、遺族基礎年金、遺族厚生年金の受給権がある子は、養子になったときには失権するが、直系血族、直系姻族との養子縁組の場合は失権しないため、子Cが直系姻族となるD男と養子縁組を行った場合でも、上記結論は同様である。 [3] 【問題②】について 子CとD男とが養子縁組を行っていた場合、B女は、死亡した者(D男)によって生計を維持されていた子(子C:養子縁組によりD男の子となる)のある配偶者、死亡した者(D男)によって生計を維持されていた配偶者にそれぞれ該当する結果、遺族基礎年金と遺族厚生年金の受給権者となる。 子Cに対する遺族基礎年金は、B女が遺族基礎年金の受給権を有する間、その支給が停止される。その後、子CがB女と別居するなどして生計同一関係が解消された場合には、子Cのみに遺族基礎年金、遺族厚生年金が支給される。子Cの遺族基礎年金が失権したとき(18歳に達する日以後の最初の3月31日が経過したとき等)には、B女の遺族厚生年金支給停止が解除され、B女に遺族厚生年金が支給される。 他方で、子CとD男とが養子縁組を行わずにD男が死亡した場合には、B女は死亡した者(D男)によって生計を維持されていた子(子C)のある配偶者には該当しない結果(養子縁組がなされていないためD男の子とはいえない)、遺族基礎年金の受給権者とはならない。ただし、死亡した者(D男)によって生計を維持されていた配偶者に該当するため、遺族厚生年金の受給権者とはなる。 [4] 【問題③】について D女は、死亡した者(A男)によって生計を維持されていた子(子C)のある配偶者、死亡した者(A男)によって生計を維持されていた配偶者にそれぞれ該当する結果、遺族基礎年金と遺族厚生年金の受給権者となる。B女は既にA男と離婚しているため遺族年金の受給権は発生しない。 【問題②】と異なり、子CはA男の子である以上、国民年金法第37条の2の要件を満たすこととなり、子CがD女と養子縁組をしているかどうかは関係ない。子Cに対する遺族基礎年金は、D女が遺族基礎年金の受給権を有する間、その支給が停止される。 (了)

#No. 167(掲載号)
#米倉 裕樹
2016/04/28

消費税の軽減税率へ対応したシステム改修のポイント

消費税の軽減税率へ対応した システム改修のポイント   公認会計士 坂尾 栄治   ▷過去の消費税率引上げとシステム改修 消費税は過去3%、5%、8%と段階的に税率が引き上げられてきた。各社はそれに合わせて、会計システムを中心としたシステム改修を行ってきた。 消費税が初めて導入されたときに構築したシステムは、税率が変更されることを考慮せずに開発されたものもあり、そのようなシステムは3%から5%に税率が上がったときに、多大なコストと期間をかけなければ改修できないものもあった。 単純に特定の日からすべての取引に対して税率を変更すれば済むのであれば、システムの対応もさして難しいものではないが、新たな消費税率が適用されてしばらくは、新税率適用前の旧税率が適用される取引や、経過措置で旧税率での処理が認められる取引等があり、新税率と旧税率が併存することとなる。 この「取引日や取引の性質に応じて複数税率が併存するケース」等は、もともとのシステムの作りが当該事象を想定した設計になっていない場合、システムの設計を大幅に変更し、作り直しといっても過言ではないレベルでの改修が必要となる場合もある。 とはいえ、すでに消費税率変更は過去に2回行われており、消費税率の変更がシステムに及ぼす影響も把握されているため、今市販されているシステムのほとんどは、今後の消費税率変更への対応が比較的スムーズに行えるように作られていると考えられる。 平成29年4月に予定されている消費税率変更も、今までと同様のものであれば、さして問題にする必要はないと考えられるが、今回適用される予定の軽減税率は、システムで対応する上で比較的難易度の高いものと考えられる。   ▷一物二価への対応が想定外のシステムも 軽減税率の対象品目として「酒類」と「外食」を除いた飲食料品と新聞があげられている。特に飲食料品については、軽減税率が適用される範囲の線引きについての議論が活発に行われている。 現在は、料理酒やウイスキーボンボンは「酒類」に入るのかとか、スーパーのイートインで食べると「外食」になるのかといった議論がなされているが、範囲の線引きについては、ルールが明確になれば、システム的な対応はさして難しいものではない。 システム的に困るのは、同じ商品で異なる税率になるものである。 例えば、ハンバーガー屋でハンバーガーを注文した場合がこのケースに該当する。 ハンバーガーを店内で食べる場合とテイクアウトする場合とで税率が異なる。ハンバーガーを店内で食べる場合は軽減税率が適用されない外食に該当し、テイクアウトする場合は外食に当たらないこととなり軽減税率の対象となる。 これらは、商品は全く同じであるため、例えばレジに「ハンバーガー店内」「ハンバーガーテイクアウト」という2つのボタンを付けるといった対応が必要となる。 人が登録するレジであればまだ人手で対応できるが、POSレジのようにバーコードを読むものはどうするのだろうか。バーコードを「店内用」と「テイクアウト用」の2種類貼っておくとか、バーコードを読む前にレジで「店内ボタン」か「テイクアウトボタン」を押すといった対応が必要となる。 ただし、ハンバーガーを2つ買って、1つを店内で食べ、もう1つを持ち帰る場合には、先にあげた対応方法ではうまくいかなそうである。 これは実質的な一物二価であり、これまでのレジシステムではほとんど想定されていないものと推定できる。   ▷仕入税額控除の対応はインボイスまで見定める 仕入税額控除については、平成33年4月1日にインボイス制度(適格請求書等保存方式)が導入されるまでは、区分記載請求書等保存方式が採用される。 どちらの方式でも、異なる税率の製商品を分けて表示する必要があり、今まで使用していた請求書では対応できない可能性が高い。 複数の製商品を受注した時に、一品一品消費税額を計算しているようなシステムであれば、請求書の出力フォーマットを改修する程度で対応できるかもしれないが、受注した製商品すべてを合計してから消費税率を乗じているような場合には、思った以上に改修の手間がかかる可能性がある。 さらにやっかいなのは、数年後にインボイス制度へ変更される点である。 つまり区分記載請求書等保存方式に対応しても、数年後にはインボイス制度に合わせて再び改修をすることになる。 これについては、今の時点で、区分記載請求書等保存方式にもインボイス制度にも対応できるようシステムを改修することで解決すると思われる。   ▷影響を受けるシステムと改修の規模は? 軽減税率の適用の影響を受けるのは、レジシステムや販売管理システム、受発注システムと考えられる。 持ち帰りサービスのある外食店では、レジシステムで店内とテイクアウトの区分等ができる機能が必要となる。販売管理システムやその周辺システムについても改修が必要なケースがあると思われる。 持ち帰りサービスのある外食店では、同一製商品でありながら税率が異なるケースがあるため、製商品の品番と税率が1対1対応ではなくなる。品番に適用税率をあらかじめ登録しておくような仕組みでは、1製商品に対して1つの税率しか適用できないため、軽減税率には対応できない。例えば、品番に店内・テイクアウト区分をつなぎ合わせて税率を判定するような製商品マスタに変更する必要が出てくる可能性がある。 このように製商品マスタに係る改修が行われる場合、販売管理システムやその周辺システムへ広く影響が出る可能性がある。そのため、製商品マスタに係る改修が想定される場合には、大がかりな改修になるケースもありうると覚悟しておく必要がある。 受発注システムについては、見積書や発注書、請求書のフォーマット変更が必要となってくる。また、取引先間でEDI/EOS等の電子的な受発注システムを利用している場合にも、取引先間の取り決めに従ったシステム改修が必要となる。 特に、取引先ごとにフォーマットが異なる場合には、修正対象となる見積書や発注書、請求書の数が膨大となり、システムの改修に多くの期間と費用を要する場合があるため、早めに状況を把握する必要がある。   ▷システム開発ベンダに確認すべき事項とは? パッケージシステムを使って業務を行っている場合には、通常はパッケージシステムの開発ベンダが法制度対応を行ってくれる。 今回の軽減税率についても、通常の開発ベンダであれば法制度対応の1つとして改修する範囲のものであり、保守契約を結んでいれば無償で対応してくれる可能性も高い。ただし、改修の規模によっては有償での対応となる場合もある。 まずは、開発ベンダに軽減税率に対応する予定があるかを確認すべきであるが、開発ベンダから「軽減税率に対応する」との回答を得れば一安心かというと、必ずしもそうではない。 軽減税率に対応して改修したシステムがいつ提供されるのかを確認しておくのは当然であるが、どのような方法で軽減税率に対応するのかも知っておく必要がある。 例えば以下のようなことを確認し、自社の運用に合うかを検討した方がよい。 また、現在のシステムを改修後のシステムに変更する場合のコスト、変更に際して自社の担当者が作業を行う必要があるか否か、作業を行う必要がある場合どの程度の期間をかけて実施する必要があるのか、その間はシステムを停止するのかも確認しておく必要がある。 テストを実施したり、データを移し替えたりする必要がある場合には、想像以上に期間を要する場合もあるので、早めに確認しておくことが肝要である。 また、改修後のシステムが現在の環境(今使っているサーバーやPC、レジ)で稼働するのかも確認しておく必要がある。新たにレジを購入する必要がある場合などは、店舗数が多い会社の場合、多額の費用がかかることとなる。   ▷自社開発システムの場合 自社開発システムの場合には、市販のシステムを利用している場合の注意点に加えて、開発ベンダが行っている作業も自社で行う必要がある。軽減税率が影響するシステムの範囲を調査し、軽減税率にどのように対応するか方針を決め、仕様を決定しシステムを改修する必要がある。 時として、自社システムの改修を行うことが期間や費用等の関係で合理的でないと判断された場合には、パッケージシステムへの置き換えを検討することも必要となってくる。   -まとめ- 軽減税率の適用によるシステム改修は、軽微な改修では済まない可能性が高いため、余裕をもって準備をする方がよい。 大きくは以下のような流れになると考えられる。 (了)

#No. 167(掲載号)
#坂尾 栄治
2016/04/28

『デジタルフォレンジックス』を使った企業不正の発見事例 【第4回】「カルテル、贈収賄などの規制当局調査に使われるデジタルフォレンジックス」

『デジタルフォレンジックス』を使った 企業不正の発見事例 【第4回】 「カルテル、贈収賄などの規制当局調査に使われる デジタルフォレンジックス」   PwCアドバイザリー合同会社 マネージャー 吉田 卓   1 はじめに 第4回では、価格カルテルや贈収賄事件などにおける、規制当局調査対応におけるデジタルフォレンジックスに関して述べさせていただく。なお、ここでいう規制当局とは、米国司法省(DOJ)や米国証券取引委員会(SEC)など、海外の規制当局を前提としている。 ここ数年、日本企業が価格カルテルや贈収賄事件などに関与し、国内外の規制当局に摘発される事件が急増している。特に価格カルテル事件に関していうと、2010年以降国内の自動車部品メーカー約30社が摘発され、50人以上の会社役員を中心とする個人が起訴された。さらにその内の約30名が実際に米国の刑務所に収監されている。また、贈収賄事件では昨年9月に、国内大手電機メーカーが約23億円でSECと和解している。 海外の規制当局、特に米国のDOJやSECは、外国企業に対する取り締まりを強化しており、日本企業にとっても注意が必要である。本稿では、実際に価格カルテルや贈収賄事件において企業が捜査対象になった際の、主にデジタルフォレンジックスを使った証拠開示の実務と留意点に関して解説する。また、平時からの対策についても参考にしていただければ幸いである。   2 対岸の火事ではない、海外規制当局による調査とその激しさ 規制当局による捜査の多くは、内部告発や競合他社からの情報提供がトリガーになると言われている。 贈収賄事件に関して言えば、SECは内部告発サイトを立ち上げており、内部告発者の情報提供によって起訴および制裁金の徴収に至った場合は、その制裁金のうちの最大3割が内部告発者に報奨金として支払われる制度を設けることで、不正行為の表面化を促している。 当局はさまざまな手段を使って情報収集を行っており、各国の当局同士で緊密に連携しているとも言われている。 DOJによる調査は通常、日本企業の米国子会社や米国支店から着手される。ある日突然、FBIの捜査官がサピーナ(※1)を持参して米国子会社を訪れ、立入調査を行う場合もある。さらに、通常、国際カルテル事件では、日本、アメリカ、EUの当局は連携しほぼ同時に捜査に着手するため、会社はパニック状態に陥る場合が多い。日本の本社には、公正取引委員会による立入調査が行われることになる。 (※1) サピーナ:大陪審捜査において裁判官が発する令状であり、資料や電子データの提出を求めるものと証言を求めるものとがある(木目田裕「米国反トラスト法における日本企業が関わる刑事事件について」月刊公正取引No.777(2015年7月号))。 サピーナでは、日本本社にある資料や電子データを、米国子会社を通じて当局に提出するように求められる。サピーナに従わない場合は法廷侮辱罪等に問われることになるため、日本本社側の基本姿勢としては、なるべく早く関連証拠を当局に開示するなどし、当局への協力姿勢をアピールすることになる。具体的には、関係者の電子データ(Eメール、ドキュメントなど)、手書きのノートや手帳などの資料をレビューし、関連するものをすべて当局に開示する。 価格カルテルのような競争法違反に関わる規制当局の捜査は、特にスピードが重要となる。なぜならば、価格カルテルの捜査にはリーニエンシー(※2)と呼ばれる司法取引制度があり、最初に不正行為を申告した企業は刑事訴追および制裁金についても免除される場合があるからである。 (※2) 課徴金減免制度(リーニエンシー):談合やカルテルを自主的に申告して調査に協力すれば、課徴金の免除や減額が受けられる制度。日本においても2006年1月施行の改正独禁法で導入された。公取委の立ち入り検査前に、最初に申請した会社は課徴金の全額が免除され、刑事告発の対象からも外れる。2番目は50%、3番目は30%が減額される。立ち入り後も3社まで30%の減額が受けられる。(2008年11月11日 朝日新聞 夕刊 2社会) 制裁金が数十億円単位で減免されるため、我々のようなフォレンジックサービスを提供するアドバイザリーファームはもちろんのこと、企業の担当者や弁護士は司法取引の機会を失しないよう、文字通り必死に対応することになる。 当局との司法取引では、つまるところ罰則の減免と引き換えに、自社が事件に関与していたことを認めつつ、競合他社もしくはまだ捜査対象となっていない他製品においても、価格カルテル行為があったことを示す証拠を自主的に開示するものである。 これらの司法取引制度がよく機能していることは、残念ながら昨今の日本の自動車部品メーカーに対する価格カルテル捜査において証明されている。 当初は自動車部品の中でもワイヤーハーネスという特定の部品に関して、5社程度を対象に捜査が開始されたが、その後ベアリング、コンプレッサーなどにも捜査が波及し、最終的には30社を超える日本企業が摘発され、合計で2,000億円を超える課徴金が科される結果となった。   3 規制当局調査におけるデジタルフォレンジックス 本章では、実際に規制当局による捜査を受けることになった際の、証拠開示の実務について解説する。 サピーナが送達された、もしくは同業他社にサピーナが送達されており、自社にもいつ当局のメスが入るか時間の問題という段階で、まず着手するべき事項は、関係者への訴訟ホールド通知とその徹底である。 訴訟ホールドとは、関連文書の改ざんや破棄が行われないように、各個人に通知し確認を取るとともに、各種ITシステムのバックアップのリサイクルなどを停止し、バックアップデータの消去や上書きが起こらないようにすることである。 単純なプロセスに聞こえるが、なかなか徹底できていない企業が多い。 訴訟ホールドをおろそかにしていて、後になって関係するメールが担当者によって削除されていたということがわかった場合、極めて深刻な問題に発展する場合がある。特に米国の刑事事件における証拠の改ざんや破棄については、司法妨害罪に問われることがあり、その場合は競争法違反とは別途、証拠の破棄を行った個人に対して重い刑事罰が科されることになる。 証拠の破棄が当局の知ることに至った場合には、その後の当局との交渉などにも極めて悪い影響を与えることになるため、当局による捜査の際には証拠となるデータの改ざんや破棄などは決して起きてはならない。 訴訟ホールド後は、実際にデータをコピーし専用のドキュメントレビュープラットフォームにアップロードし、キーワードなどによってレビュー対象とする文章を絞り込んでいく。 キーワードについては、競合先や製品の名前、または競合先との会合の呼び名(例:OO会)などを使用することになるが、レビューの途中で新たなキーワードが発見される場合も多いため、キーワードに漏れが出ないよう注意する必要がある。また、網羅的で迅速な調査を実施するため、機械学習機能を応用した機械レビューを採用する案件も増えてきている。 データの絞り込みが完了したら、弁護士事務所や企業の法務、コンプライアンスチームで構成されるドキュメントレビューチームが実際にEメールなどの文書の内容をレビューし、開示対象とすべき文書を特定していく。 調査の対象となる個人は平均で20名から多くとも50名程度であるが、リーニエンシーなどの司法取引を行う前提で調査を進める場合などは、当局にとって付加価値の高い情報をなるべく多く、迅速に提供することが重要となるため、調査範囲を自主的に敢えて広げるようなケースもある。筆者が担当した案件では、約250名のメールデータを収集、レビューしたケースがあった。その際には、営業担当者の手帳や名刺までも証拠として保全したのを覚えている。 ご想像の通り、ドキュメントレビューには膨大な費用と工数がかかる。1GBあたりのファイル数を4,000ファイルとして、対象者一人あたり5GBのメールを保持していたとすると、1人あたり2万件のファイルを処理する必要がある。キーワード検索や重複の排除などを行いレビューの対象となるファイルの数を絞り込むとはいえ、最終的には5万件から10万件のファイルをレビューすることになるケースが多い。 贈収賄案件においても、実務的には価格カルテル案件に近い内容になる場合が多い。ただし、贈収賄の調査などにおいては、メールなどの文書もさることながら、会計システム上の支払データも重要な証拠となる。そのため、贈収賄事件における調査においては、注文書(PO)や請求書のデータを会社の会計システムより抽出し、データ分析を実施するケースがある。データ分析の結果、リスクの高い支払などを特定し、異常がないか事実関係などを細かく調べていくためである。 このように、膨大なデータから、ごくわずかな証拠となるファイルやメール、会計データを迅速に特定するために、デジタルフォレンジックスの技術が必要となるのである。   4 平時からの対策およびまとめ ここまで有事の対応に関して述べてきたが、もちろん平時からの対策も重要である。 規制当局による調査などの有事の際に、企業を守ることに直結するのは平時からのコンプライアンス体制の構築と改善である。企業のコンプライアンス体制は、規制当局が制裁内容を決定する際に考慮される1つの要素だからである。実際に、高度なコンプライアンスプログラムを持つ大手投資銀行が、その中国オフィスの社員が贈賄事件に関与した際に、企業としての刑事訴追を免れたという事例がある。 特に、価格カルテルや贈収賄などの主要なコンプライアンスリスクに関してはDOJやSECがガイドラインを出しているので、是非参考としていただきたい。 日本企業のコンプライアンスプログラムの特徴として、規定類は一応一通り整備されているが、運用、モニタリングが十分に実施されていないという状況をよく目にする。この点に関しては、海外の規制当局の評価は極めて厳しいものになることが予想されるため、注意する必要がある。 規制当局は、企業のコンプライアンスプログラムがどのように現場で運用されていて、それらの運用状況が本社のコンプライアンス部にどのようにモニタリングされているのかを重要視している。有事の際の証拠開示の対応もさることながら、平時からのコンプライアンスプログラムの改善活動も、危機の際に企業を救うことになるのでここで強調させていただきたい。 なお、贈収賄リスクに関してはPwCアドバイザリー合同会社から「贈収賄リスク診断-贈収賄リスクを減らすためのガイダンス-」という冊子を無料配布しているので、参考としていただければ幸いである。 (了)

#No. 167(掲載号)
#吉田 卓
2016/04/28

〔検証〕適時開示からみた企業実態 【事例4】クックパッド株式会社「代表執行役の異動に関するお知らせ(2016.3.24)」

〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例4】 クックパッド株式会社 「代表執行役の異動に関するお知らせ」 (2016.3.24)   事業創造大学院大学 准教授 鈴木 広樹   1 今回の適時開示 今回取り上げる適時開示は、クックパッド株式会社(以下「クックパッド」という)が平成28年3月24日に開示した「代表執行役の異動に関するお知らせ」である。代表執行役が穐田誉輝氏から岩田林平氏に交代することになったため、それに関して開示している。なお、同社は指名委員会等設置会社であるため、同社の代表は、「代表取締役」ではなく「代表執行役」である。 この開示も、【事例2】で取り上げたセーラー万年筆株式会社「代表取締役および役員の異動に関するお知らせ」と同様に、「異動の理由」には、「当社の今後の事業規模拡大や経営安定化及び経営体制の一層の強化と充実を図るためです。」といった記載があるだけであり、それ自体は何の変哲も無い極めて平凡な開示といえるものである。   2 なぜ交代? 穐田氏は、平成24年、クックパッドの創業者である佐野陽光氏に代わって同社の代表執行役に就任したのだが、穐田氏が代表執行役に就任した後、同社の業績は大幅に向上していた。そうであるにもかかわらず、なぜ穐田氏は今回代表取締役を退任しなければならなかったのだろうか。 同社が、平成24年3月30日、佐野氏から穐田氏への代表執行役交代に関して開示した「代表執行役の異動に関するお知らせ」の「異動の理由」には、次のように記載されていた(「異動の理由」としては、珍しく詳細な記載である)。 佐野氏は穐田氏に同社の経営を託したように見えるが、「創業者である佐野ともよく連携を取りながら」という記載があることから、佐野氏が穐田氏に期待したのは、あくまで自身の意に沿った経営だったのかもしれない。   3 特別委員会 クックパッドは、平成27年11月27日に「特別委員会の設置に関するお知らせ」を、そして、平成27年12月18日、「特別委員会の勧告に関するお知らせ」を開示した。 ①「現在遂行中の経営計画を推し進める事業戦略上の選択肢」と②「現在遂行中の経営計画を段階的に見直し、会員事業と海外事業に経営資源を集中していくことを中心とする事業戦略上の選択肢」について、「公平かつ中立な立場から精査・評価・検討を行い、当社の企業価値の最大化に資すること及び少数株主の利益を正当に守ること」を目的として、同社の社外取締役で構成される特別委員会を設置したのだが、その特別委員会としては、①案を実施すべきという結論に達し、それを同社の取締役会に勧告したところ、承認されたという内容である。 これらの開示だけを見ても、わざわざ特別委員会を設置した理由はわからないだろう。その理由は、同社が平成28年1月19日に開示した「株主提案権の行使に係る書面の受領に関するお知らせ」によって明らかになった。 その開示は、佐野氏を含む4名の株主から、平成28年3月開催予定の定時株主総会における株主提案権の係る書面を受領したというものであり、その提案内容は、佐野氏を含む8名(穐田氏は含まない)を取締役候補とするというものであったのだが、特別委員会設置の経緯についても、次のように記載されていた。 穐田氏による①「現在遂行中の経営計画を推し進める事業戦略上の選択肢」を佐野氏が否定し、②「現在遂行中の経営計画を段階的に見直し、会員事業と海外事業に経営資源を集中していくことを中心とする事業戦略上の選択肢」を主張したため、それを検討するために特別委員会が設置されたのである。 しかし、特別委員会は佐野氏の②案を否定したため、同社議決権を43.581%持つ同社筆頭株主である佐野氏は、自身が選んだ者を取締役候補とする株主提案を行うことになった。取締役を自身の意に沿う者で固めることにより、②案を実施しようとしたのである。平成28年1月19日の開示によると、株主提案権の行使に係る書面には、提案の理由として、次のように記載されていたとのことである。   4 結末 クックパッドは、平成28年2月5日、佐野氏との間で取締役選任議案の一本化に関して基本的な合意に至ったとする「取締役選任議案に関する基本的合意について」を開示した後、平成28年2月12日に「当社第12回定時株主総会における取締役選任議案の決定及び株主提案の取り下げに対する同意に関するお知らせ」を開示した。 佐野氏らによる株主提案は取り下げられ、同社側と佐野氏ら側の双方の意向を調整した取締役候補が決められたのだが、同社議決権を43.581%持つ佐野氏の意向が反映され、取締役候補9名のうち6名は、佐野氏らによる株主提案で取締役候補とされていた者となった。 そして、平成28年3月24日に開催された定時株主総会において、その取締役選任議案は承認され、同日、今回取り上げた「代表執行役の異動に関するお知らせ」が開示されることとなった。新任代表執行役の岩田氏は、佐野氏らによる株主提案で取締役候補とされていた人物である。 同社は、平成28年3月24日、「新役員体制に関するお知らせ」も開示している。穐田氏も取締役に選任され、執行役にも選任されているのだが、上述のとおり、取締役候補9名のうち6名は、佐野氏らによる株主提案で取締役候補とされていた者であり、執行役も、穐田氏、佐野氏、岩田氏の3名で構成されており、完全に佐野氏の意向が反映された経営体制となった。 新任の取締役は株主総会で選ばれた者であり、新任の執行役と代表執行役は、その取締役で構成される取締役会で選ばれた者であるため、手続的にはまったく問題ない。しかし、佐野氏の今回の行為は、上場会社の経営者として適切だったといえるだろうか。43.581%の議決権を持っていたとしても、自分一人だけの会社ではないはずである。上場会社である以上、その経営者はすべての株主の利益に配慮しなければならない。どんなに多くの議決権を持っていたとしても、自分の会社であるかのように振る舞うことは慎まなければならないだろう。 ちなみに、同社は、平成28年3月22日、佐野氏を執行役から解任するとする「執行役の解任に関するお知らせ」を開示しているのだが、その「解任の理由」は、次のように記載されている。   5 社外取締役の意義 会社法においては、上場会社が社外取締役を置いていない場合、定時株主総会において社外取締役を置くことが相当でない理由を説明しなければならないとされ(会社法327条の2)、また、コーポレートガバナンス・コードにおいては、社外取締役を2名以上選任すべきであるとされている(原則4-8.独立社外取締役の有効な活用)。 このように、上場会社における社外取締役の数を増やそうという流れがあるのだが、クックパッドを見ていると、社外取締役の意義について疑問がわいてくる。 社外取締役には、外部からの客観的な視点による経営者の監督が求められるかと思われるが、同社の新任社外取締役6名(新任取締役9名のうち6名が社外取締役)のうち4名が、佐野氏らによる株主提案で取締役候補とされていた者である。 そうした体制で社外取締役に期待される役割を果たすことができるのだろうか。 「取締役9名のうち6名が社外取締役」という点だけ見ると、同社は企業統治先進企業のように見えるのかもしれないが。 (了)

#No. 167(掲載号)
#鈴木 広樹
2016/04/28

《速報解説》 平成28年度税制改正を踏まえた法人税申告書(別表)の新様式が公表~役員給与の見直しに係る「譲渡制限付株式に関する明細書」等が新設

《速報解説》 平成28年度税制改正を踏まえた 法人税申告書(別表)の新様式が公表 ~役員給与の見直しに係る「譲渡制限付株式に関する明細書」等が新設   Profession Journal編集部   平成28年度税制改正を受けた法人税申告書(別表)様式を定めた改正法人税施行規則が4月15日付官報号外第89号で公布され、その変更内容が明らかとなった。これら新様式は原則平成28年4月1日以後終了事業年度から適用される。 (※) 官報同号にて地方法人税及び租税特別措置の適用額明細書の様式改正も行われている。 まず昨年度(平成27年度)税制改正で持株比率基準等の見直しが行われた受取配当等の益金不算入制度について、昨年の様式変更では改正前後の取扱いを同じ様式内にまとめたことで明細書が別表8(1)と8(1)付表に分割されたが、関連法人株式等以外の負債利子計算欄が不要となったことなどにより、以下の通り新様式では再び別表8(1)として1つの様式に統合されることとなった。 〈別表8(1) 受取配当等の益金不算入に関する明細書〉 また研究開発税制についても昨年度改正で繰越税額控除限度超過額及び繰越中小企業者等税額控除限度超過額に係る税額控除制度が廃止され当該部分の記載欄が不要となったことで、 6(6) 試験研究費の総額等に係る法人税額の特別控除に関する明細書 6(7) 中小企業者等が試験研究を行った場合の法人税額の特別控除に関する明細書 6(8) 特別試験研究費の額に係る法人税額の特別控除に関する明細書 が次の1枚の様式(別表6(6) 試験研究費の総額に係る法人税額の特別控除又は中小企業者等が試験研究を行った場合の法人税額の特別控除及び特別試験研究費に係る法人税の特別控除に関する明細書)として統合されている。 〈別表6(6) 試験研究費の総額に係る法人税額の特別控除又は中小企業者等が試験研究を行った場合の法人税額の特別控除及び特別試験研究費に係る法人税の特別控除に関する明細書〉 平成28年度税制改正では、雇用促進税制について適用期限が2年延長され対象となる増加雇用者数を地域雇用開発促進法の「同意雇用開発促進地域」内にある事業所における無期雇用かつフルタイムの雇用者に限定されるなど適用範囲が縮減されることとなる一方、一定の調整計算を行うことで所得拡大促進税制との重複適用が可能となっている。この調整計算を行うための様式として新たに「別表6(19)付表 雇用者給与等支給増加重複控除額の計算に関する明細書」が設けられている。 〈別表6(19)付表 雇用者給与等支給増加重複控除額の計算に関する明細書〉 また、既報のとおり改正地域再生法の施行により4月20日から適用がスタートした企業版ふるさと納税のうち法人税額控除に係る様式として「別表6(17) 認定地方公共団体の寄附活用事業に関連する寄附をした場合の法人税額の特別控除に関する明細書」が新設された(地方税関係の様式は未公表)。 〈別表6(17) 認定地方公共団体の寄附活用事業に関連する寄附をした場合の法人税額の特別控除に関する明細書〉 さらに役員給与の見直しが行われ事前確定届出給与に一定の譲渡制限付株式(特定譲渡制限付株式)が含まれることとなり、改正法人税法54条3項の規定により特定譲渡制限付株式等の一株当たりの交付時の価額、交付数などを記載する様式として「別表14(3) 譲渡制限付株式に関する明細書」が設けられている。 〈別表14(3) 譲渡制限付株式に関する明細書〉 なお、減価償却方法の見直しにより建物附属設備及び構築物について定額法が廃止される等の改正が行われているが、各償却方法における償却額の計算方法に変更はないため、様式(別表16関係)の改正は行われていない。 (了) ↓お薦め連載記事↓

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#Profession Journal 編集部
2016/04/28
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