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これだけ知っておこう!『インド税制』 【第3回】「インドの間接税」

これだけ知っておこう! 『インド税制』 【第3回】 「インドの間接税」   公認会計士・税理士 野瀬 大樹   前回までインドの法人所得税・個人所得税の基礎情報について触れたので、第3回となる今回はインドの「間接税」について解説することとする。 インドでビジネスをする時に大きな障壁になるのが、実はこの「間接税」。日本と比べてインドはこの間接税が非常に複雑なのである。 誤解を承知でシンプルに言うと「日本の消費税が何種類もある」というイメージなのだが、そんな間接税が「どうして複雑なのか」ここでは簡単に全体像を俯瞰することとする。   1 税の種類の多さ 【第1回】でも触れたが、インドの間接税は日本より数が非常に多くなっている。 当然だがそれぞれに税率が設定されているうえに、その税率も対象となるモノ・サービスの種類によって細かく規定されているため、その税額計算は複雑になることが容易に想像できる。   2 それは「モノ」なのか「サービス」なのか 先述の通り、どの間接税を適用するのかは「モノ」や「サービス」かの判断により決まるのだが、たとえば「レストランでの食事」などはどうだろうか? 日本の場合だと消費税一本だから何ら問題は生じない。ただ、インドの場合、この問題は複雑だ。 レストランで我々が手に入れるのは確かに食事という「モノ」である。しかし、その食事を作ったりテーブルまで運んだりしてくれるのは「サービス」とも考えられる。このような場合にはそのビジネスの「何割がサービスなのか」という点などを考慮して適用される間接税の種類とその税率が変わってくるのである。 詳しくは個々の間接税の項に譲るが、このような前提からも、現地で税務に携わる場合は、対象となる会社の「ビジネスの性質(モノ?サービス?その複合?)」について詳しく考える必要があるのである。 また、同じ会社であっても取り扱うモノ・サービスによって当然税率が変わるので、そのあたり経理担当者及び会計事務所は神経を使うことになる。   3 州をまたぐケース VATは基本的に「州内で取引が完結している」ケースが該当する。一方のCSTは「州をまたいでの取引」のケースとなる。これだけだと適用される州の税率さえ調べればよいのだが、話はこれで終わりではない。 この「州をまたぐ」ケースにおいては、受取間接税と支払間接税が相殺できない可能性があるのである。 ご存知のように、日本の消費税は100円のものが108円で販売されるのだが、受け取った8円の消費税をそっくりそのまま税務署に納めるわけではない。そのお店が「支払った」消費税と「相殺」してその差額分だけを税務署に納めるシステムになっている。 インドにおいても基本的な考え方は日本の消費税と同じなのだが、このVAT/CSTの計算上、「相殺できない」部分が出てくるケースがある。VATやCSTの税率は12%~14% 程度なので、もしこれが相殺できないとなれば利益が吹き飛ぶことになるため注意が必要となる。 事実、このあたりの税金のシミュレーションを事前に行わず「とりあえず」インドに現地法人を作ったものの、相殺できると思っていた支払間接税が相殺できずビジネスが行き詰まる日本企業は少なくないので、事前に入念な調査・検討が必要となる。 また逆に、自分が売り手の場合つまり受取間接税が生じるケースでも、その間接税を支払間接税として相殺できない顧客から取引を断られるケース(もしくは顧客がある州に移転してくれという要望)も見受けられるので、インドに拠点を作る際にはそのロケーションが非常に重要となるのである。   4 税率の多さ 先ほども少し触れたが、物品税やサービス税などに関しては日本の消費税のように税率が1つではない。たとえば物品税は生活必需品や医薬品などは軽く、貴金属などは重くなっている。そのため、何か新しい商品を販売する場合には事前にそのあたりをチェックしなければ、後から予想もしない税負担を被る可能性がある。 またこの税率については、毎年毎年細かな改正がなされるので、このあたりの情報もタイムリーに補足し続ける必要がある。この点からもたくさんの商品・製品を扱うような事業の場合、経理担当者及び会計事務所の負担は非常に重くなる。   5 「GST」導入のゆくえ この会計担当者泣かせとも言える複雑な間接税、当然国内だけではなく海外からも批判は大きいので、シンプルに1つに統一しようという動きがあるのも事実である。それがGSTというものである。 このGSTの導入により、事務手続きの簡素化・税の捕捉の効率化が実現でき、一説によればインドのGDPを2%も押し上げる効果があると言われている。 ただしこのGST、導入されることはすでに2009年の時点で決まっているのだが、そこは世界最大の民主主義国家インドらしく、なかなか可決・施行がされない。それはこのGST導入により税収が増える州と減る州があるからで、なかなかその利害が調整されないからである。 かれこれ5年以上議論が続いているのだが、今年2月末に発表されたインド予算案では、2016年4月1日よりの導入を目指すと明記された。ただ、この8月のいわゆる「モンスーン議会」でも可決には至らず持越しになる見通しなので、まだまだ安心できる状況ではないと言える。 現状では14%~16%程度の税率を予定しているようだが、このあたり日系企業への影響も大きいので、今後も注目する必要があるだろう。 (了)

#No. 137(掲載号)
#野瀬 大樹
2015/09/24

こんなときどうする?復興特別所得税の実務Q&A 【第35回】「国外転出(贈与)時課税の適用を受ける場合の所得税及び復興特別所得税の処理」

こんなときどうする? 復興特別所得税の実務Q&A 【第35回】 「国外転出(贈与)時課税の適用を受ける場合の 所得税及び復興特別所得税の処理」   税理士・社会保険労務士 上前 剛   私は、年金暮らしをしています。平成27年9月1日、東京証券取引所に上場しているA社株式1万株のうちの100株をアメリカに居住している子(非居住者)へ贈与しました。 国外転出(贈与)時課税が創設されましたが、対象になるのでしょうか? 平成27年9月24日現在の保有資産は以下の通りです。 国外転出(贈与)時課税についてご教示ください。   1 概要 国外転出(贈与)時課税とは、平成27年7月1日以後に、贈与時点で1億円以上の対象資産を所有又は契約の締結をしている居住者(贈与の日前10年以内に国内在住期間が5年超)が国外に居住する親族等(非居住者)へ対象資産の全部又は一部(贈与対象資産)を贈与した場合には、贈与時にその贈与対象資産の譲渡又は決済があったものとみなして、贈与対象資産の含み益に所得税及び復興特別所得税が課税される制度である。 次のいずれかに該当する場合には、贈与者は国外転出(贈与)時課税により課された税額を取り消すことができる。 また、納税猶予の適用を受けることで納税を猶予することができる。   2 対象資産   3 確定申告書の提出時期 事例の場合、平成28年3月15日までに国外転出(贈与)時課税の適用による所得を含めて所得税及び復興特別所得税の確定申告書を税務署へ提出するとともに、納税しなければならない。 対象資産1億円以上の判定は、9月1日(贈与の日)で行う。また、贈与しなかった対象資産の価額を含めて行う。 東京証券取引所のA社株式の9月1日(贈与の日)の最終価格1万円に株式数1万株を乗じた額が1億円以上なので、国外転出(贈与)時課税の適用を受ける。 (了)

#No. 137(掲載号)
#上前 剛
2015/09/24

税務判例を読むための税法の学び方【69】 〔第8章〕判決を読む(その5)

税務判例を読むための税法の学び方【69】 〔第8章〕判決を読む (その5)   立正大学法学部准教授 税理士 長島 弘   (2 判決をみるポイント) (② 結果を左右した要素を見極める) (3) 判決の示した「一般的法命題」は何か 以前、【第46回】にて「判例といった場合には、その事実が他の事実と入れ替わっても結論に変わりがないような事実を、その具体的事実の中から取り除いて、結論にとって意味のある事実だけを残すことによって抽象化された内容ということになる。」と記したが、この抽象化された内容、一般化した内容を、判決が明確に示すことが多い。 それを「一般的法命題」又は「抽象的法命題」と呼ぶ(ただし、判決でこれが示されない場合があるが、そのような判決を通常「事例判決」と呼ぶ)。 そしてその事案をこの法命題に当てはめることにより、判決が下される。 では前回検討した、馬券の払戻に係る裁判(大阪事案)の最高裁判決から、この点を検討する。 この事案に係る最高裁判決を、裁判所HPの裁判例情報から入手して読んでいただきたい。最高裁第三小法廷平成27年3月10日判決である。 この中の「第2 当裁判所の判断」の「2 本件払戻金の所得区分について」には、以下のようにある。 この部分が、一般的法命題の部分であり、最高裁が今後の同種の事案における判決の方向性を明らかにしたものであり、「判例」とされる部分である。 まず、前回、最高裁では「機械的、網羅的」な購入を重要な事実と認識していない旨記したが、その点を確認しよう。 「第2 当裁判所の判断」の「1 本件事実関係」には以下のようにある。 そして「第2 当裁判所の判断」の「2 本件払戻金の所得区分について」の上記一般的法命題を記した後に、この事案の事実をこの法命題への当てはめるにあたり、以下のように述べている。 最高裁判決中では、あえて「機械的」という文言を避けて一切使っていない。そして「大量的かつ網羅的」という表現が2度出てきている(しかし上記のように「大量的」を使っていない箇所もある)。 このことから、最高裁においては、「機械的」は全く重要な事実として認識されておらず、「網羅的」な購入であることのみが(「大量的」である点含まれるかは、以下で検討する)「重要な事実」とされていることが分かるのである。 次に、ここで明らかにされた一般的法命題の内容について検討しよう。この中の「行為の期間、回数、頻度その他の態様、利益発生の規模、期間その他の状況等の事情を総合考慮して判断」をどう読めばよいかである。 第一審判決では、この点につき 「所得の基礎となる行為の規模(回数、数量、金額等)、態様その他の具体的状況に照らして判断」 としており、控訴審判決では 「行為の態様、規模その他の具体的状況に照らして、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」かどうかを判断」 と表現している。 第一審、控訴審とも「行為の態様」「行為の規模」「その他の具体的状況」を判断要素に挙げており、第一審ではこの規模を示すものとして、「回数」「数量」「金額」が挙げられている。 なお「行為の規模、態様その他の具体的状況」又は「行為の態様、規模その他の具体的状況」と態様と規模の後に「「その他の」具体的状況」となっているのであるから、この「態様」と「規模」は具体的状況の例示ということになる。 しかし最高裁では「行為の期間、回数、頻度その他の態様」となっていることから、「行為の態様」の例示として「期間」「回数」「頻度」が挙げられており、また「利益発生の規模、期間その他の状況」となっていることから、「利益発生の状況」の例示として「規模」「期間」が挙げられている。そしてこの「「行為の態様」と「利益発生の状況」等の事情を総合考慮して判断」することとされている。 すなわち最高裁判決では、「利益発生の状況」という第一審判決や控訴審判決では示されていなかった要素が加えられたのであった。 ここで、「大量的」が「重要な事実」に含まれるかについて検討しよう。 「大量的」というのは期間や回数、頻度ではなく、規模を示すものである。そうであるならば、これは「行為の態様」の判断要素ではなく、「利益発生の状況」の判断要素であるところ、上記したように、「購入」という行為の説明として「大量的かつ網羅的な購入」などと使っているのである。 しかし「行為の期間、回数、頻度その他の態様」という一般的法命題の点からは「大量的」は「行為の態様」を示すものではないため(つまり、「長期間、多くの回数、頻度にわたっての購入」が「大量的」にはなるとしても、「大量的」購入が直ちに「長期間、多くの回数、頻度にわたっての購入」になるとは限らない)、「大量的」は「重要な事実」と認識されていなかったものと見るべきであろう。 (続く)

#No. 137(掲載号)
#長島 弘
2015/09/24

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第21回】「無対価での100%子会社同士の合併~連結財務諸表作成会社の場合~」

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第21回】 「無対価での100%子会社同士の合併 ~連結財務諸表作成会社の場合~」   仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋   【はじめに】 今回は、無対価での100%子会社同士の合併(連結財務諸表作成会社で、親会社が設立当初から子会社の株式を100%保有している場合)について解説する。 無対価での100%子会社同士の合併とは、例えば、100%子会社A社が100%子会社B社の株主に対して何の対価も交付せずに100%子会社を吸収合併する場合をいう。 また、子会社同士の合併は、「共通支配下の取引(【第18回】参照)」に該当する。 なお、孫会社がある場合については、解説していない。 ※各ステップをクリックすると、それぞれのページに移動します。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 (次ページ【STEP1】へ進む) (前ページ【はじめに】へ戻る) 子会社同士の合併は、共通支配下の取引に該当するため、吸収合併存続子会社は、吸収合併消滅子会社の適正な帳簿価額を引き継ぐ(企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準(以下「基準」という)」41)。そのため、吸収合併消滅子会社は合併期日の前日に決算を行い、個別財務諸表上の適正な帳簿価額を算定する(企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針(以下、「適用指針」という)」246)。 また、個別財務諸表上の適正な帳簿価額とは、吸収合併消滅子会社が継続すると仮定した場合の適正な帳簿価額である(適用指針83、391)。したがって、適正な帳簿価額の算定において、固定資産の減損や繰延税金資産の回収可能性などの会計処理を行う際は、吸収合併が行われないと仮定して会計処理を行う。 なお、【第18回】及び【第19回】と異なり、連結財務諸表上の適正な帳簿価額を算定する必要はない。 親会社と子会社の合併のように垂直的な合併の場合は、合併前と合併後でグループとして実態は何ら変わらないため、合併前の連結財務諸表(親会社と吸収合併消滅子会社のみで作成した連結財務諸表)と合併後の親会社の個別財務諸表は実態として同一になるように、連結財務諸表上の適正な帳簿価額を用いる。 一方、子会社同士の合併のように水平的な合併の場合は、子会社だけで連結財務諸表を作成するわけではないので、合併前の連結財務諸表(親会社と吸収合併消滅子会社のみで作成した連結財務諸表)と合併後の親会社の個別財務諸表を実態として同一になるように会計処理する必要はない。そのため、個別財務諸表上の適正な帳簿価額を用いればよい。 (次ページ【STEP2】へ進む) (前ページ【STEP1】へ戻る) 吸収合併存続子会社は、【STEP1】で算定した吸収合併消滅子会社の資産及び負債を引き継ぐ。 また、吸収合併消滅子会社の払込資本(資本金及び資本準備金)はその他資本剰余金として引き継ぐ。利益剰余金は、そのまま引き継ぐ(適用指針203-2、185(1)②、会社計算規則36②)。 (次ページ【STEP3】へ進む) (前ページ【STEP2】へ戻る) 親会社の個別財務諸表においては、吸収合併消滅子会社株式の帳簿価額を吸収合併存続子会社株式の帳簿価額に加算する(適用指針203-2(1)なお書)。 (次ページ【STEP4】へ進む) (前ページ【STEP3】へ戻る) ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。 連結財務諸表における会計処理では、以下の(1)から(3)を検討する。企業グループ全体で見れば、合併前後で何ら変わりはないため、あたかも合併がなかったかのように会計処理することがポイントである。 (1) 開始仕訳及び開始仕訳の振り戻し 連結財務諸表を作成するため、連結財務諸表上での前期までの会計処理を引き継ぐ(開始仕訳を行う)。しかし、子会社同士の吸収合併が行われたため、吸収合併消滅子会社に係る前期までの投資と資本の相殺消去の会計処理はもう引き継ぐ必要はない。そのため、投資と資本の相殺に係る開始仕訳の振り戻しを行う(開始仕訳を消去する)。 (2) 吸収合併存続子会社株式と資本剰余金の相殺 【STEP2】で資本剰余金が計上されるが、子会社同士の吸収合併は連結グループ内の内部取引にすぎないため、【STEP2】で計上した資本剰余金と【STEP3】で振り替えた子会社株式を相殺する(基準44)。 (3) 利益剰余金の期首残高への振り替え 子会社同士の吸収合併を行っても、連結財務諸表上は、吸収合併前と吸収合併後で経済的実態は何ら変わりない。そのため、【STEP2】で吸収合併存続子会社が引き継いだ利益剰余金のうち、取得後利益剰余金については、期首に発生済みのため、期首残高に振り替える。 《設例》 〈会計処理〉 1 A社の会計処理 (※1) 子会社B社の帳簿価額 (※2) 子会社B社の資本金 2 P社の会計処理 (※1) B社株式の帳簿価額をA社株式の帳簿価額に加算する。 結果、合併後のA社株式の帳簿価額は8,000である。 3 連結財務諸表における会計処理 (1) 開始仕訳 (2) 開始仕訳の振り戻し (3) 吸収合併存続会社株式と資本剰余金の相殺 (※1) 1で計上したその他資本剰余金と2で計上したA社株式を相殺 (4) 利益剰余金の期首残高への振り替え 4 連結貸借対照表 (次ページ【STEP5】へ進む) (前ページ【STEP4】へ戻る) 企業結合年度において、共通支配下の取引等に係る重要な取引がある場合には、以下の(1)及び(2)を注記する。なお、個々の共通支配下の取引等についての重要性は乏しいが、企業結合年度における複数の共通支配下の取引等全体では重要性がある場合には、当該企業結合全体で注記する(基準52)。 なお、計算書類では、上記のような注記は必ずしも求められていない。 *   *   * 以上、5つのステップをまとめたフロー・チャートを再掲する。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 (了)

#No. 137(掲載号)
#西田 友洋
2015/09/24

金融商品会計を学ぶ 【第11回】「満期保有目的の債券の会計処理」

金融商品会計を学ぶ 【第11回】 「満期保有目的の債券の会計処理」   公認会計士 阿部 光成   今回は、「金融商品に関する会計基準」(企業会計基準第10号。以下「金融商品会計基準」という)及び「金融商品会計に関する実務指針」(会計制度委員会報告第14号。以下「金融商品実務指針」という)に規定する満期保有目的の債券の会計処理について解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅰ 満期保有目的の債券とは 1 定義 「満期保有目的の債券」とは、満期まで所有する意図をもって保有する社債その他の債券のことをいう(金融商品会計基準16項)。 債券には、国債、社債、転換社債型新株予約権付社債などがあるが(金融商品実務指針68項)、このうち満期保有目的の債券に分類できるものは、定義及び要件を満たす債券に限られる(金融商品実務指針272項)。 償還株式は厳密には債券ではないが、一定額で償還されるという債券との類似性に着目してその範囲に含められている。一定額で償還されない償還株式は持分証券(株式)として取り扱う(金融商品実務指針68項)。 2 条件 満期保有目的の債券に分類するためには、価格変動のリスクのないことがポイントとなる。そのため、(a)あらかじめ償還日が定められており、かつ、(b)額面金額による償還が予定されているという条件を満たす必要がある(金融商品実務指針68項、272項)。 債券であっても、その属性から満期保有目的の条件を満たさないものは、この区分に含めることはできず、次のことに留意が必要である(金融商品実務指針68項、272項)。   Ⅱ 「満期まで所有する意図をもって保有する」とは 「満期まで所有する意図をもって保有する」とは、企業が償還期限まで所有するという積極的な意思とその能力に基づいて保有することをいう(金融商品会計基準16項、金融商品実務指針69項)。 次のことに留意する(金融商品実務指針69項、273項)。   Ⅲ 満期保有目的の債券の会計処理 1 考え方 金融商品会計基準は、満期保有目的の債券に関する会計処理の考え方を次のように説明している(金融商品会計基準71項、金融商品実務指針272項、273項)。 2 貸借対照表価額及び償却原価法 満期保有目的の債券については、取得原価をもって貸借対照表価額とする(金融商品会計基準16項)。 ただし、債券を債券金額より低い価額又は高い価額で取得した場合において、取得価額と債券金額との差額の性格が金利の調整と認められるときは、償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額としなければならない(金融商品会計基準16項)。 次のことに留意する。 3 満期保有目的の債券の売却取引 満期保有目的の債券を償還期限前に売却した場合、売却価額と売却時の償却原価との差額を当期の売却損益に計上する(金融商品実務指針83項ただし書、71項)。 次のことに留意する(金融商品実務指針71項、275項)。 4 満期保有目的の債券の売却に係る損益の表示 「金融商品会計に関するQ&A」Q68では、満期保有目的の債券の売却損益は、残りの満期保有目的の債券の保有意思を否定されない合理的な理由による売却に伴う損益である限り、純額で営業外損益に計上することが適切としている。 ただし、満期保有目的の債券の売却は厳しく制限されており(金融商品実務指針83項)、合理的な理由によらない売却に伴う損益は、特別損益に計上する必要があると述べている。 (了)

#No. 137(掲載号)
#阿部 光成
2015/09/24

中小企業事業主のための年金構築のポイント 【第13回】「個人事業主の年金と国民年金基金」

中小企業事業主のための 年金構築のポイント 【第13回】 「個人事業主の年金と国民年金基金」   特定社会保険労務士 古川 裕子   1 国民年金の加入者と保険料 【第1回】で述べたように、国民年金の加入者には、「第1号被保険者」「第2号被保険者」「第3号被保険者」の3種類の種別があり、保険料の負担の仕方が異なる。 第1号被保険者は、国民年金の保険料として毎月15,590円を支払わなければならないが、第2号被保険者と第3号被保険者は、第2号被保険者が支払う厚生年金保険の保険料に国民年金の保険料が含まれており、国民年金の保険料として、第1号被保険者のように個々に納付することを要しない。 (【第1回】掲載図) (※) 厚生年金保険等の保険料の一部が国民年金にまわっている(基礎年金拠出金という)。   2 老齢基礎年金と付加年金 個人事業主等の第1号被保険者は、保険料を支払った月に応じて年金額が決まる。老齢基礎年金として、40年間納付すれば、満額780,100円(27年度価額)の年金が受給できる。 また、本来の保険料の他に、付加保険料(月額400円)を支払えば、付加年金が老齢基礎年金に上乗せして支給される。付加年金の額は、「200円×付加保険料納付期間の月数」で計算され、加入月数は問わない。 〈事例1〉 《保険料の総額》 400円×10年×12=48,000円 《付加年金の額》 200円×10年×12=24,000円 → 単純計算で、2年で元が取れる。   3 国民年金基金の加入で年金額を増額 国民年金基金は個人事業主とサラリ-マンの年金額の格差を埋めるために設けられた制度で、老齢基礎年金に上乗せされる形で支給される。 加入の対象は、個人事業主等の第1号被保険者のみで、第2号被保険者であるサラリ-マンや第3号被保険者である専業主婦等は加入できない。なお、国民年金基金に加入していると付加保険料を支払うことはできない。 (1) 国民年金基金の種類 国民年金基金は、47都道府県に設立された「地域型基金」と25の職種別に設立された「職能型基金」の2種類がある 地域型と職能型の2つの形態が設けられているが、それぞれの基金が行う給付の内容は同じである。なお、加入する場合はいずれか1つの基金にしか加入できないので、どちらかを選択することになる。 ① 地域型国民年金基金 地域型基金に加入できるのは、同一の都道府県に住所を有する国民年金の第1号被保険者の人である。 ② 職能型国民年金基金 職能型基金に加入できるのは、各基金ごとに定められた事業または業務に従事する国民年金の第1号被保険者の人である。 (2) 給付 老齢給付と遺族給付がある。 国民年金基金への加入は、口数制で、年金額や給付の型は自分で選択できる。選択した年金の型と口数、加入した月の年齢及び性別に応じて受け取る年金額が決まる。 ① 老齢給付 給付の型は、終身年金のA型・B型と確定年金のⅠ型・Ⅱ型・Ⅲ型・Ⅳ型・Ⅴ型の7種類がある。 1口目の終身年金を基本として、2口目以降は月額掛金が上限額の68,000円(1口目と2口目以降の合計)になるまで何口でも加入できる。加入途中でもプラン変更が可能である(1口目は基本A型から基本B型への変更は不可)。 〈事例2〉 選択した口数と加入時の年齢により、掛金と年金額が決まる。 掛金は1,0610円で、60歳まで支払う。 65歳から終身年金で年額245,088円の年金になる。 ② 遺族給付 保証期間のある終身年金A型と、確定年金Ⅰ型、Ⅱ型、Ⅲ型、Ⅳ型及びⅤ型に加入している人が年金を受け取る前に死亡した場合には、加入時年齢と死亡時年齢及び死亡時までの掛金納付期間に応じた額の一時金が遺族に支払われる。なお、遺族一時金の額はそれまでの払込み掛金額を下回ることがある。 また、保証期間のない終身年金B型のみに加入している場合でも、年金を受給する前に死亡したときには、1万円の一時金が遺族に支給される。 〈事例3〉 死亡時年齢 及び死亡時までの掛金納付期間に応じ下記の一時金が支給される。 (3) 掛金 掛金月額は、選択した年金の型、加入口数、加入時の年齢、性別によって決まる。掛金の上限は、月額6万8,000円である。 給付の型及び加入口数は、掛金月額6万8,000円以内で選択できる。ただし、確定年金(Ⅰ型・Ⅱ型・Ⅲ型・Ⅳ型・Ⅴ型)の年金額が終身年金(基本A型・基本B型・A型・B型)の年金額を超える選択はできない。   《おさらいQ&A》 (了)

#No. 137(掲載号)
#古川 裕子
2015/09/24

経産省研究会による会社法の「法的論点に関する解釈指針」のポイントと企業実務への影響 【前編】

経産省研究会による 会社法の「法的論点に関する解釈指針」の ポイントと企業実務への影響 【前編】   西村あさひ法律事務所 パートナー 弁護士・ニューヨーク州弁護士 柴田 寛子   1 経産省研究会による報告書の全体像 2015年7月24日、経済産業省により設置された「コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会」(以下「本研究会」という)は、その成果である「コーポレート・ガバナンスの実践~企業価値向上に向けたインセンティブと改革」を公表した(以下「本報告書」という)。 本報告書は、本年6月30日に閣議決定された「『日本再興戦略』改訂2015-未来への投資・生産性革命-」において、日本の競争力向上のために講ずべき施策として挙げられていた「コーポレート・ガバナンスの実践を後押しする環境整備」の一環として取りまとめられたものである。 具体的には、本報告書は、①経営者等に対する業績向上への適切なインセンティブ付けの付与を促進することで、攻めの経営を可能とすること、また、②そのような攻めの経営のもとで、業務執行の適正を担保するための監督体制を再構築するとの視点に基づき、本研究会での成果を簡潔にまとめている。 加えて、日本企業51社、社外取締役25名及び監査役12名に対するヒアリング結果を、本報告書別紙1「我が国企業のプラクティス集」として公表し、また、本報告書で提言するコーポレート・ガバナンスの見直し又は強化を進める上で、現行法上問題となり得る点についての分析及び法解釈の指針を、本報告書別紙3「法的論点に関する解釈指針」(以下「本指針」という)として整理している。 なお、本報告書別紙2は「役員賠償責任保険(D&O保険)の実務上の検討ポイント」として、現在のD&O保険の一般的な構造及び今後の同制度の積極的活用に際して生じ得る実務上の検討ポイントの整理を行ったものである。 本報告書の全体像を図示したものが、〈図1〉である。 〈図1〉 本報告書の構造 以下、本稿では前編・後編に分けて、本指針で示された内容と企業実務への影響についてまとめてみたい。   2 取締役会の上程事項 (1) 基本的視点 上記の通り、本指針、つまり本報告書別紙3「法的論点に関する解釈指針」では、本報告書において提言するコーポレート・ガバナンスの見直し等を進める上で、現行法上問題となり得る点についての分析及び法解釈の指針をまとめている。 なお、本指針において示されている解釈指針には、現時点では必ずしも通説的とはいえないものも含まれているが、本指針の策定には、法務省民事局参事官室も参画していることから、その内容は、今後の法解釈及び法改正に反映されることが十分に予想される。 (2) 取締役会の上程事項の「限定化」 本指針は、〈図1〉の通り、4つの項目を対象とし、その第一番目の項目が、「取締役会の上程事項」である。「取締役会の上程事項」における解釈指針は、一言でいえば、取締役会への上程事項の限定である。 その問題意識は、会社法上、監査役会設置会社における取締役会は、①代表取締役の指名や取締役の報酬の決定を通じて業務執行を評価することによる監督機能と、②会社の業務執行の具体的な意思決定機能の2つの機能を果たすことが予定されているが(会社法362条2項)、コーポレート・ガバナンスの実効性確保との観点からは、監督機能は、むしろ、取締役会が自ら決定していない事項(具体的な決定を代表取締役等に授権した事項)について十分に発揮できるのであり、意思決定機能、つまり取締役会への上程事項については限定的に解釈しなければ、実質的な監督機能を果たせないというものである。 本指針は、この基本的な視点に沿って、取締役会の上程事項を限定するに際しての考慮要素として〈表1〉の各項目を挙げている。 〈表1〉 取締役会の上程事項の限定化における考慮要素 取締役会の上程事項については、会社法上、数量的な基準は示されていないが、実務においては、例えば、「重要な財産の処分及び譲受け」(会社法362条4項1号)は、総資産の1%程度が目安とされるとの考え方も浸透しており、また、取締役会の人数及び決議対象事項の肥大化・形骸化が問題として指摘されることも多かった。取締役会の上程事項を限定すべきとの解釈指針は、これらの問題の解決を図ろうとするものと評価できる。 もっとも、本指針の文言からは明らかではないが、取締役会の上程事項の限定に際して、上記の3項目が前提となっているとすると、任意の指名・報酬委員会を設置する会社が多数とまではいえない現状においては、ハードルの高い基準が示されていることになる(※)。 (※) 日経225を構成する3月期決算会社184社(指名委員会等設置会社を除く)が提出した2013年度に係る「コーポレート・ガバナンス報告書」を対象とした三井信託銀行による調査(資料版商事法務367号(2014年)13頁)によれば、任意の報酬又は諮問委員会を設置する会社は69社(約37%)である。 また、取締役会の監督機能を強化する際に、監査役会との役割分担をどう考えるかについて本指針は言及しておらず、実務上の課題として残されている。   3 社外取締役の役割・機能 本指針は、社外取締役の役割・機能として〈表2〉の3つを挙げている。 〈表2〉 社外取締役の役割・機能 【監督①】に関しては、上記2同様、社外取締役を委員とする任意の委員会の設置を提案する。また、社外取締役の監督責任が加重にならないよう、その監視義務は、内部統制システムが機能している場合には、同システムの構築・運用を確認し、その過程で不正行為の端緒を発見した場合に限り適切な調査をすれば足りるとの解釈を示している。 また、実務上有用なのは、社外性の要件である非業務執行性(「業務を執行した」(会社法2条15号イ)に該当しないこと)の判断についての具体例を示している点であろう。 例えば、「経営会議その他、経営方針に関する協議を行う取締役会以外の会議体に社外取締役が出席し、意見すること」、「社外取締役が、その人脈を生かして、自らM&Aその他の商取引の相手方を発見し、紹介すること」又は「株主や投資家との対話や面談を行うこと」については、「業務を執行した」には該当しないとの解釈が示されている。 なお、社外取締役の具体的な活用例については、後述する「役員就任条件(報酬・会社補償・保険料負担・提訴判断)」に関する解釈指針においても示されており、これらについては次回(後編)で紹介する。 (了)

#No. 137(掲載号)
#柴田 寛子
2015/09/24

養子縁組を使った相続対策と法規制・手続のポイント 【第8回】「離縁の手続(普通養子・特別養子)」

養子縁組を使った相続対策と 法規制・手続のポイント 【第8回】 「離縁の手続(普通養子・特別養子)」   弁護士・税理士 米倉 裕樹   [1] はじめに 今回は養子の離縁に関し、普通養子と特別養子それぞれの手続面について説明を行う。 普通養子の離縁については、 協議離縁 調停離縁 審判離縁 裁判離縁 の4つの手続が認められているものの、特別養子の離縁については、厳格な要件のもと、家庭裁判所による審判に基づく離縁しか認められていない。 相続対策は主に普通養子を想定してなされることが多いことから、以下、普通養子の離縁を中心に解説を行う。   [2] 普通養子の離縁手続 1 協議離縁 養親と養子がそれぞれ署名押印し、証人2名が署名押印したものを市区町村長に提出することで離縁が成立する(民812・739②、戸法70・27)。 養子が未成年でも、養子縁組を行う場合と異なり、家庭裁判所の許可は不要である。ただし、養子が15歳未満の場合は、離縁後に法定代理人となる者が代諾権者として養親との間で離縁の合意を行う(民811②)。 離縁が当事者間の話し合いによって合意できるのであれば、何ら特別な理由は必要でなく、離縁理由は限定されない。 なお、配偶者の連れ子を養子とした場合(この場合、連れ子が未成年者でも裁判所の許可は不要)、その配偶者と離婚しただけでは、配偶者の連れ子との養子縁組は存続するため、配偶者の連れ子との親子関係を解消するには、別途、連れ子との離縁手続が必要である。 2 調停離縁 離縁事件は「人事に関する訴訟事件」(家法244)であることから、養親子間で離縁の協議が整わない場合であっても、いきなり訴訟を提起することはできず、まずは、家庭裁判所に対して調停を申し立てる必要がある(調停前置主義・家法257①)。 調停離縁を申し立てるには、申立権者またはその代理人が、申立書を作成して管轄の家庭裁判所に申し立てる(家法255)。 申立権者は、離縁当事者(養親または養子)である。なお、養親が夫婦である場合に未成年の養子と離縁するには、夫婦ともにしなければならない(民811の2)。ただし、養親夫婦の一方がその意思を表示することができないときは、他の一方のみでできる(民811の2但書)。 申立書には、申立の趣旨の欄に、申立人と相手方は離縁するとの調停を求める旨を記載する。申立の実情の欄には、民法814条第1項各号に定められた離縁原因に該当する具体的事実を記載することになる。なお、調停や審判による離縁の場合には、民法814条第1項各号規定の法定の離縁原因に該当する事実の存在は要件とはされないため、申立の実情は、便宜上、記載するものである。 添付書類としては、養親、養親の戸籍謄本(全部事項証明書)各1通、養子が15歳未満の場合は、離縁後に法定代理人となるべき者の戸籍謄本(全部事項証明書)がさらに必要となる。申立裁判所は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所である(家法245①)。 調停離縁申立の際に、同時に相手方に対して慰謝料請求を求めることができる。ただし、離縁に関しては財産分与に関する民法の規定が存在しないため、財産分与請求は想定されていない。 調停において、当事者間に離縁の合意が成立し、これを調書に記載したときは、調停が成立したものとされ、その記載は確定判決と同一の効力を有する(家法268①)。これにより離縁が成立する。 離縁の調停が成立したときは、調停申立人は、調停成立日から10日以内に、養親または養子の本籍地もしくは届出人の所在地の市区町村長に離縁の届出をしなければならない(戸法73①・63①)。協議離縁が届出によって離縁の効力が生じるのに対し、この届出は報告的届出である。なお、調停申立人が届出をしないときは相手方が届け出ることができる(戸法73①・63②)。 3 審判離縁 調停離縁が申し立てられ、これが不成立に終わった場合には、離縁訴訟提起となるのが原則であり、一般的に、審判手続に移行することはない。もっとも、調停が成立しない場合であっても、主要事項については合意に達しており、その他財産関係等、付随的事項をめぐって合意に達しないような場合には、家庭裁判所が職権で調停に代わる審判を下すことができる(調停に代わる審判・家法284)。 ただし、調停に代わる審判は、審判日から2週間以内に異議申立があると効力を失ってしまうことから(家法286・279)、異議申立が予想される案件では、調停に代わる審判を経ずに調停不成立とし、離縁訴訟に誘導・移行させることが多いと言われている。 4 裁判離縁 離縁の訴えでは、養子縁組の当事者(養親及び養子)の一方が原告となり、他方が被告となる。養子が満15歳未満の場合は、養子に代わって離縁後にその法定代理人となるべき者(代諾権者)が訴訟遂行を行い、訴訟継続中に養子が15歳に達した場合は、訴訟手続は中断し、養子本人が受継する(民訴124①三)。 なお、離縁の手続は、養親または養子の一方が死亡した場合、例えば、離縁したい養親が原告となって養子を被告として訴訟をしたが、養親が離縁の訴訟中に死亡した場合、当事者がいなくなったことによりその訴訟は当然に終了する(人訴27)。 この場合、養親が養子に自分の遺産を相続させたくないとして離縁の調停や訴訟をしていても、その手続中に養親が死亡してしまうと離縁の手続が当然に終了する結果、離縁できなくなり、養子が養親の遺産を相続することになる。そのため、養親が離縁を決断した場合は速やかに離縁の手続をすべきである。 他方で、離縁したくない養子または養親が先に死亡した場合、残った養親または養子が家庭裁判所の許可を受けて離縁をすることができる(死後離縁)。もっとも、養親死亡後に養子が多額の相続をしながら、養親の親族に対する扶養義務を免れることのみを意図した離縁など道義に反するような場合、養子が未成年である場合の養子からの死後離縁のように、それを認めることで離縁後の養子の福祉に合しない場合等には死後離縁が認められる可能性は少ない。   [3] 特別養子の離縁手続 特別養子縁組の離縁は、養子、実父母または検察官の請求により家庭裁判所が審判によって行う。養親からの離縁の審判請求は認められておらず(民817の10①)、特別養子が成年に達して監護の必要性がないときには特段の事情がない限り、離縁させることはできない。また、実父母の双方が死亡した場合、または子が棄児(捨て子)であって実父母がない場合にも認められない(中川善之助・山畠正男『新版注釈民法(24)』(有斐閣、2002年)634頁~)。 なお、普通養子の場合には、養親が夫婦のときでも、養子が未成年者である場合を除き、養親の一方と離縁できるが(民811の2)、特別養子の場合には、養親の双方と離縁しなければならない。そのため、養親が離婚した場合、及び養親の一方が死亡している場合でも、その一方のみと離縁させることはできない。 特別養子については、家庭裁判所の審判によってのみなされるため(民817の10)、調停離縁を申し立てることはできない。普通養子縁組の場合と異なり、15歳未満であっても、意思能力を有する限り、養子が自ら申立を行うことができる。 (了)

#No. 137(掲載号)
#米倉 裕樹
2015/09/24

コーポレートガバナンス・コードのポイントと企業実務における対応のヒント 【第12回(特別編)】「2015年8月末までに新様式で提出されたコーポレート・ガバナンス報告書の概観」

コーポレートガバナンス・コードのポイントと 企業実務における対応のヒント 【第12回(特別編)】 「2015年8月末までに新様式で提出された コーポレート・ガバナンス報告書の概観」   PwCあらた監査法人 マネージャー 米国公認会計士 阿部 環   〔コーポレート・ガバナンス報告書の概観の対象会社〕 2015年6月1日よりコーポレートガバナンス・コード(以下、「コード」)の適用が始まった。コードを反映した新様式でのコーポレート・ガバナンス報告書(以下、「報告書」)の最初の提出には総会終了後6ヶ月間の猶予が与えられているにもかかわらず、任意に報告書を早期提出する企業が少なからずあり、中にはコード適用初日の6月1日に提出する企業もあった。 本連載はコード原案が確定した3月よりいち早く連載を開始し、コードの重要項目と企業対応について、7月まで解説を行ってきた。 今回はその特別編として、コード適用からおよそ3ヶ月経過した2015年8月31日までに、新様式での報告書を提出した東証一部・二部上場会社66社(一部上場64社および二部上場2社)を対象として、その開示状況を概観してみる。 なお、マザーズやJASDAQについては「基本原則」部分のみが適用の対象となっており、今回の調査対象としていない。集計は9月10日時点における筆者によるものであり、その後の更新状況により最新の情報と異なる場合があり、網羅的な情報に基づくものではない。なお、文中の意見に相当する部分は、筆者の私見であることをお断りしておく。   〔各原則を実施せずエクスプレインした会社数〕 上述の今回集計の対象とした66社のうち、【コーポレートガバナンス・コードの各原則を全て実施している】会社は40社であり、一方【各原則を実施しない理由を開示した会社】は26社であった。 表1:2015年8月31日までに新様式での報告書を提出した東証一部・二部上場会社66社のコード適用状況 (出所:日本取引所グループ東京証券取引所 コーポレート・ガバナンス情報サービスをもとに筆者が作成) 各原則を実施しない理由を開示した26社について、開示された「実施しない理由」を原則別に見ると、内訳は表2のとおりであった。 表2:コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (※) 東証の上場規則による「特定事項を開示すべきとする11原則」については、後述を参照のこと。 (出所:日本取引所グループ東京証券取引所 コーポレート・ガバナンス情報サービスをもとに筆者が作成) 「実施しない理由」(すなわちエクスプレイン)は30項目と、比較的多岐にわたっているようである。基本原則の章別に見ると、基本原則4「取締役会等の責務」に記載された諸原則についてエクスプレインしている会社が多いことがわかる。 では、基本原則4の中からエクスプレインの多かったトップ3の項目(表2のハイライト参照)についてみてみよう。   〔エクスプレインの多かった上位3項目〕 補充原則4-11③「取締役会の実効性評価」(【第7回】参照)は、エクスプレインが最も多かった項目であり、16社にのぼった。「取締役会の実効性評価」自体が日本企業には馴染みがないことに起因するものと思われる。実際に、「取締役会の実効性評価は誰がどのように行うべきかわからない」といった声は企業側から多く聞かれる。 また、コード導入当初は、取締役会運営やガバナンス態勢の見直し段階であり、今後一定期間の運用を経た上で取締役会の実効性評価を実施することが適切とも考えられるので、この補充原則は、当初からエクスプレインする会社が多いことが想定されていた項目でもある。 次にエクスプレインが多かった項目は、原則4-8「独立社外取締役 少なくとも2名以上選任」(【第5回】参照)であり、66社中11社にのぼった。 2015年8月1日に日本取締役協会から発表された「上場企業のコーポレート・ガバナンス調査」によると東証一部1,888社中、社外取締役を2人以上選任している企業が59.4%(前年比24.7%増)、独立取締役を2人以上選任している企業が49.1%(前年比27.5%増)と、社外取締役・独立取締役の複数選任が2014年に較べ大幅にアップしたことを示している。両者の増加傾向は明らかにコード適用の影響といえよう。 3番目にエクスプレインが多かった項目は、補充原則4-10①「取締役の選任・報酬などの重要な事項に関する検討にあたり独立社外取締役(または任意の諮問委員会)の適切な関与・助言」であった。 この項目についてエクスプレインをした7社のうち、2社はタイプA「本来は実施したいが、何らかの理由で今は実施できていない。今後実施する予定である。」という説明があり、それ以外の5社はタイプB「自社の状況に照らすと別な方法によりガバナンスの趣旨を達成しているので、現段階では実施していない。」というものであった。 現在までの日本の開示では、ほとんどがタイプAの説明が多いなか、当該補充原則ではタイプBのものが目立った(注:タイプA及びタイプBは筆者の命名による)。   〔特定の事項を開示すべきとする原則に基づく開示〕 【コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示】として報告書に記載するか、もしくは各社のウェブサイト上等にて開示することとされている11項目のうち、上記の表2で「●」のついている9項目についてはエクスプレインしている会社がある。ひるがえって、以下の表3に示す残りの2項目については、今回集計対象とした66社全てがコンプライしているという結果となっている。 表3:集計した66社が全てコンプライしていた開示11項目のうちの2項目 上記原則1-7「関連当事者取引」については、コードで求められている開示項目は、関連当事者間の取引の重要性やその性質に応じた適切な手続きの枠組みの開示であり、今までも有価証券報告書等で開示が要求されている関連当事者取引そのものとは異なるが、開示にあたっての社内承認等の枠組みはあるということで、8月31日までに開示した66社は全てコンプライという結果となったものと思われる。 また上記原則5-1「株主との対話」については、各社IRとしてなんらかの形で過去から取り組んできたということを踏まえ、コンプライが比較的容易と判断した会社が多く見られたのではないかと思われる。 【コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示】の方法については、多種多様である。開示が求められる11項目について、企業のホームページのURLを掲載し、参照を織り交ぜながら1項目ずつ説明している企業もあれば、全ての項目について企業のホームページのURLを一括して参照する方式を採用している企業もあった。 今回考察の対象としている東証一部・二部上場の66社がどのように開示したか、その傾向を表4にまとめた。 表4:開示方法の傾向 (出所:日本取引所グループ東京証券取引所 コーポレート・ガバナンス情報サービスをもとに筆者が作成) 合計66社のうち圧倒的に②の方式をとっている会社が多いことがわかる。こちらの方式は、従来から統合報告やガバナンス開示を行っている会社が採っている傾向にある。 6月1日のコード適用から、報告書発表まで時間の少なさを考えた場合、当期は各社が一番対応しやすい形にまとめているような印象をもった。 来年以降、開示方法がどのように変わっていくか、興味深いところである。   〔海外でのコンプライまたはエクスプレインの進化の過程〕 今回、8月25日の時点において、日本ではコード適用初年度で66社中40社(およそ61%)が、全て実施(コンプライ)しているという結果となった。 1992年からコードを採用している英国で、コンプライまたはエクスプレインがどのような進化を遂げてきたか、グラントソントン社が英国のFTSE350を対象とした調査結果によれば、全て実施している会社が半数(50%)を超えたのは2010年のコード適用9年目であり、コード適用14年目の2014年になって、全て実施している会社の割合は61%であった(※)。 (※) 出所:Grant-thornton社の「CORPORATE GOVERNANCE REVIEW 2014」P.14を参考にしている。 今回考察の対象とした66社に着目すると、全てコンプライしている企業が半数を超えてはいる。ここまではコンプライしている企業の比率が比較的高いような印象であるが、報告書を任意に早期に提出する企業は、もともとガバナンスに対する意識が高く、従前から態勢整備やガバナンス開示を進めていたとの見方もある。 今後、上場会社3,000社超(東証一部上場企業数は1,888社)の報告書が出そろうにつれ、開示がどのような傾向になっていくのか、興味深いところである。 日本人の真面目な性質から「各原則は全てコンプライした」という会社が多くなるのか、その際には「取組に対して真摯な姿勢が伝わってくる」と取れるのか、または「表層的にコードを適用したように見せている」のか、今後ステークホルダーからの声を聞いていきたい。 いずれにしても、適用初年度、報告書提出の出だしが好調であるというのは喜ばしいことである。1年足らずで適用となった我が国のコードであるが、イギリス・フランス・ドイツなど他国に追随したコード適用であり、海外投資家から見ると、今後提出される報告書次第ではあるが、満を持して適用されたコードという好印象を与えるのではなかろうか。 (了)

#No. 137(掲載号)
#阿部 環
2015/09/24

現代金融用語の基礎知識 【第22回】「アクルーアル」

現代金融用語の基礎知識 【第22回】 「アクルーアル」   事業創造大学院大学 准教授 鈴木 広樹   1 アクルーアルとは アクルーアル(accrual)とは、財務指標の一種で、利益と現金収入の差を表すものである。損益計算書における税引後経常利益(税引後当期純利益から特別損益の影響を除いた額)から、キャッシュ・フロー計算書における営業活動によるキャッシュ・フローを引いて算出する。 なお、アクルーアルという言葉を初めて聞く方もいらっしゃるかもしれないが、現在の利益計算の原則である発生主義は誰もがご存知だろう。その発生主義は、英語で「accrual basis」である。   2 アクルーアルが低い企業=利益の質が高い企業? このアクルーアルは、最近新しく考えられた財務指標というわけではなく、以前からある財務指標なのだが、平成27年7月23日の日本経済新聞の「会計問題、身構える市場」という記事で、「市場関係者の共通の話題に上るキーワード」として紹介されている。 そこでは、アクルーアルが低い企業は、利益の質が高い企業であるとされているのだが、そうした捉え方には違和感を持たざるを得ない。確かに、アクルーアルが高いと、利益に対して現金収入が少ないということになる。しかし、だからといって、アクルーアルの高低を利益の質の高低に結び付けるのは少し乱暴だろう。 そもそも現金主義により計算される利益には問題があるため、発生主義が考え出されたわけであるし、アクルーアルは、保有する固定資産の量や取引サイクルなど、企業の事業形態の違いによって差が生じる性質のものである。   3 財務指標の使い方 財務指標には、売上高~利益率、ROE、自己資本比率など、様々なものがある。そうした比率は高いほど良いように思われるかもしれないが、必ずしもそうとは限らない。企業の事業形態や経営戦略などの違いにより差が生じる性質のものであるため、そうした企業の内容を踏まえた上で使わないと、実はあまり意味のないものなのである。 アクルーアルの使い方にも同様に注意が必要である。上述の日本経済新聞の記事には、「投資先のクオリティを測る際には必ず参照する」というある金融機関の株式運用担当者の方の言葉が紹介されているが、アクルーアルのみによって投資判断を行うのは適切とはいえない。あくまで、企業の内容を踏まえた上で、様々ある投資判断材料の中の一つとして使うべきだろう。   (了)

#No. 137(掲載号)
#鈴木 広樹
2015/09/24
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