経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第100回】 1株当たり情報② 「1株当たり純資産額」 仰星監査法人 公認会計士 竹本 泰明 日本公認会計士協会準会員 永井 智恵 〈事例による解説〉 〈会計処理〉 ① 普通株式に係る期末の純資産額の算定 ② 1株当たり純資産額の算定 〈会計処理の解説〉 1株当たり純資産額の算定及び開示の目的は、普通株主に関する企業の財政状態を示すことにあると考えられます。ですから、普通株主に関連しない金額は、1株当たり純資産額の算定上、期末の純資産額には含めるべきではありません(適用指針 第58項)。 そのため、1株当たり純資産額の算定における普通株式に係る期末の純資産額は、貸借対照表の純資産の部の合計額を基礎とすることになりますが、普通株主に帰属しない新株式申込証拠金及び自己株式申込証拠金、新株予約権、非支配株主持分の金額を控除して算定します(適用指針 第35項)。 また、1株当たり純資産額は、普通株式に係る期末の純資産額を、期末の普通株式の発行済株式数から自己株式数を控除した株式数で除して算定します(〈会計処理〉②を参照)。ここでいう「自己株式数」には、子会社及び関連会社が保有する親会社等(子会社においては親会社、関連会社においては当該会社に対して持分法を適用する投資会社)の発行する普通株式数のうち、親会社等の持分に相当する株式数を含めます(適用指針 第34項)。 以上を本事例に照らしてまとめると、次のようになります。 なお、普通株式に係る期末の純資産額がマイナスとなる場合であっても、マイナスの当該純資産額を期末の普通株式数で除した金額を1株当たり純資産額として開示します(実務対応報告第9号「1株当たり当期純利益に関する実務上の取扱い」Q6 A)。 * * * 次回は、1株当たり情報のうち、潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定方法について解説します。 (了)
事例で検証する 最新コンプライアンス問題 【第4回】 「免震ゴムのデータ偽装事件」 弁護士 原 正雄 1 断熱パネル事案(2007年) 2007年11月5日、国土交通省は、T社がウレタン断熱パネルの不燃性能を水増ししていたと発表した。 ウレタン断熱パネルは、店舗や工場の建材として使用されるパネルで、建築基準法上、燃焼試験に合格して大臣認定を受ける必要がある。T社は、燃焼試験に用いるサンプルに難燃性の材料(水酸化アルミニウム)を混ぜて性能試験に合格し、合計6件の国交省大臣認定を得た。しかし、実際に販売した製品には水酸化アルミニウムを混ぜておらず、一部の断熱パネルでは基準の3倍近い発熱性があったとのことであった。 同年10月、同業他社N社の建材の耐火性能偽装が発覚したため、社内調査を行ったところ、従業員の告白によって「不正」が明らかになった、とのことである。 T社の「社内調査報告書」によれば「不正」に至る経緯は、以下のとおりである。 T社は、1989年、イタリアの断熱パネルメーカーと提携した。1991年には、断熱パネル工場も完成し、生産準備が整った。あとは、生産予定の断熱パネルについて、大臣からの認定を取得するのみとなった。 ところが、ここに至って、イタリアから導入予定の断熱パネルでは、日本の建築基準法に適合せず、設備稼働に間に合わないことが明らかになった。販売部門からは「何が何でも断熱パネルが欲しい」との要請が続いていた。事業本部トップからも「販売戦略上、生産維持の観点から、絶対に認定を取得すること」との指示が技術部門に下されていた。 そこで、技術部門は、1991年12月、サンプル品に水酸化アルミニウムを混入させて燃焼試験をパスするという計画を立案した。計画は成功し、1992年10月、T社は、断熱パネルについて、大臣認定を取得した。 もっとも、T社の生産設備では、水酸化アルミニウムを混入する断熱パネルは生産できなかった。実際に生産されたのは、認定を受けたサンプルとは異なる断熱パネルだった。 販売部門は、大臣認定を不正に取得した断熱パネルについて、販売宣伝の資料に掲載しなかった。こうしたことを根拠として、社内調査委員会は、社内調査報告書に「販売部は準不燃材料認定を不正取得したことを知っていたと推測される」と記載した。 以後、この問題は、2005年の建築士耐震偽装事件などを契機に、技術と販売の担当者会議で何度か議題に上ったが、結局15年近く経営幹部に報告されなかった。 断熱パネルは、2007年当時、T社の売上の約1%に過ぎなかった。しかし、この問題が発覚して、T社では社長が引責辞任するに至った。また、内部統制システムの強化、社員教育や品質監査の徹底、内部通報制度の利用促進など、様々な再発防止策が実施された。 2 免震ゴム事案(2015年3月) 2015年3月13日、国土交通省は、T社が国交相の認定を受けて販売していた免震ゴムの一部が国の基準を満たしていなかったと発表した。 「免震ゴム」とは、薄く切ったゴムと鋼板を重ね合わせ、建物の基礎部分に組み込んで地震の揺れを吸収するもので、建築基準法上、大臣の認定を受けなければならない。T社では、少なくとも2006年から2011年の間に、試験データの一部を改ざんして大臣の認定を受けていた。 データを改ざんしたのは、製品を製造する子会社で開発を担当する課長代理ら4名であった。チェック役である品質保証部門の社員も、データ改ざんに関わっていた。社外調査チームの報告書によれば、不正に関わった可能性がある社員は13名とのことであった。営業担当者から納期をせかされ、焦ってデータを改ざんしたとのことである。一部の免震ゴムは、地震の揺れを抑える性能が基準値のマイナス50%であった。 上述した2007年の断熱パネル偽装問題が発覚して騒ぎになった間も、免震ゴムのデータ偽装は継続していた。T社は、2007年当時、全製品の緊急監査を実施し、免震ゴムの社内規格が大臣規格から外れていることを把握したが、データ偽装を把握するには至らなかった。T社は、当時、そのまま「安全宣言」を出していた。 2007年当時に免震ゴムの不正が発覚しなかった大きな要因に、不正を行った課長代理が、通算15年間1人で製品評価を担当していたということがある。2013年1月、同課長代理が異動した。後任の担当者は、同年夏、データのつじつまが合わないと上司に報告し、2014年2月、子会社社長に問題を指摘した。子会社は、2014年5月、T社に問題を報告した。 T社は、その後、様々な社内会議を開催しているが「性能不足だと確証が持てなかった」として、結局、2015年3月に公表までに1年以上を要した。T社は、その間1年以上、不正な免震ゴムの出荷を継続した。 断熱パネル問題の後に強化徹底されたはずの内部統制システム、社員教育、品質監査、内部通報制度などは、実質的には機能しなかった。それどころか、公表に至る間の2014年10月の社内会議では、内部通報をされないよう要注意人物に事前説明すべきとして「内部通報者の想定リストを作成すべき」との議論や、「社内特例としてリコール対象外とする」との議論がなされるような状況であった。 免震ゴムの売上は7億円で、T社の売上の0.2%に過ぎなかったが、結果として、社内出身の取締役が全員辞任せざるを得ない状況に至った。また、300億円以上の特別損失を計上することとなった。 3 防振ゴム事案(2015年10月) T社は、2015年10月14日、防振ゴムでデータ偽装があったことを公表した。 「防振ゴム」とは、エンジンなどの音や振動を小さくするために使われるものである。T社では、少なくとも2005年ころから、データ偽装が始まっていたとのことである。 T社では、2007年、断熱パネル問題を受けての「安全宣言」を出している。また、上述の免震ゴム問題を受け、全社監査を進め、2015年8月10日には、防振ゴムを含む全製品について「安全宣言」を出している。 しかし、そうした中では、防振ゴム問題を発見することはできなかった。問題が発覚したのは、「安全宣言」から1週間以上経った8月20日、前日のコンプライアンス研修を受けた社員からの内部通報があったからであった。さらに、T社が防振ゴムの出荷を停止したのは9月2日、取引先に連絡したのは9月11日で、内部通報から3週間が経過していた。 公表後の10月30日、中間報告が実施された。しかし、国土交通省からは「報告としては不十分」との指導を受けており、全容解明にはなお時間を要する。 防振ゴムの売上は20億円で、T社の売上の約1%だった。T社は、さらなる再発防止策の徹底を迫られることになった。 4 3つの事案から 3つの事案は、すべて、売上割合が1%前後の事業から発生している。主たる事業でないほど、注意が行き届かないことが分かる。 また、販売部門からの圧力が大きかったことが、不正の理由として説明されている。関わっている人間も複数に及んでいる。必ずしも私腹を肥やすことが不正の動機とはならない。 さらに、免震ゴムの問題は、断熱パネル問題発覚後の全製品品質監査では発見できなかった。防振ゴムの問題は、断熱パネル問題及び免震ゴム問題発覚後の二度に及ぶ全製品の品質監査でも発見できなかった。不正の発見がいかに難しいかをあらためて明確にした事案といえよう。 また、不正が社内で判明した後の対応を見ると、トップが必ずしも断固たる対応をしてこなかったことが分かる。不正を防止するには、トップがその姿勢を明らかにして企業風土そのものを改善することが第一である。それができない場合、いかに会社が危険にさらされるかがよく分かる。 本件のようなことは、どの企業にも起こり得る。本件から学ぶべきことは多い。 (了)
社外取締役の教科書 【第11回】 「社外取締役としての法的責任(その3)」 クレド法律事務所 駒澤大学法科大学院非常勤講師 弁護士 栗田 祐太郎 前回に引き続き、(社外)取締役の法的責任について、具体的なケースを説明したい。 今回は、「取締役として期待された何らかの活動を、しなかった」という監視・監督義務違反が問題となったケースと、内部統制システムの構築義務違反が問題となったケースの具体例を取り上げたい。 1 監視・監督義務違反が問題となったケース -その目的とは? 2 内部統制システムの構築義務違反が問題となったケース 内部統制システムの構築は、【第9回】でも説明したように、監視・監督義務の履行につながる問題である。 近年、上記が争点とされた最高裁判例が初めて出るに至ったので、紹介する。 (了)
税理士ができる 『中小企業の資金調達』支援実務 【第7回】 「具体的な資金調達支援の流れ(その4)」 ~社長の理解を助けて存在感を出す~ 公認会計士・中小企業診断士・税理士 西田 恭隆 金融機関側に提出する書類は、事業計画書、資金繰り表、決算書、定款、その他登記簿謄本等である。このうち計数関係の資料作成について、税理士は支援できると前回説明した。その次に行う支援は、書類全体の整合性チェックである。作成者である会社、社長とは別の者によるチェックの方が、矛盾点等を発見しやすい。そこで、税理士がチェックを行う。今回はこの点を解説していく。 1 提出書類全体の整合性をチェックする 整合性チェックで判明する矛盾点とは、例えば、事業計画書の文章部分で、「人材採用を予定している」と記述しているのに、計数部分で人件費の増加が反映されていない、「月の中旬から新事業開始」とあるのに、初月の新事業売上高が1ヶ月分計上されている、新たに発生する経費項目が、事業計画書に表示されていない等である。 矛盾点や問題点があると事業計画書の信用が低下し、それを元に作成した資金繰り表の信用も低下する。社長や会社全体の信用にも影響し、融資判断にマイナスとなる。税理士による整合性チェックは重要である。 チェックは、書類全体を最初から最後まで、何度も目を通すことによって行う。「事業計画書の文章面と計数面に矛盾点はないか」逆に「計数面と見比べて追加すべき文章はないか」チェックする。気付いた点をその都度、社長に質問する。質問と回答を繰り返すことによって社長の理解は深まるし、修正する度に事業計画書の精度は高まる。融資交渉面談の対策になる。 書類全体の整合性チェックが一通り終わったら、準備は完了である。社長は、それらを持参して金融機関へ正式に申し込む。申し込み時は、基本的に書類の受け渡しだけである。内容に関する詳しい質問は、後日、交渉面談時に行われる。 2 手の込んだ資料やプレゼンは必要ない 交渉面談の際、プレゼンテーション(以下プレゼン)した方が有利なのか、面談までに別途、パワーポイントを使って事業計画書を作成した方が良いのか、質問を受けることがある。筆者のこれまでの経験でいえば不要である。パワーポイントを使ってプレゼンした社長は1人もいない。 また、「パワーポイントを使った事業計画書の方が、金融機関の印象は良い」という話を耳にすることがあるけれども、実際は関係なく、むしろ逆効果になることが多い。パワーポイント資料は、1枚1枚の情報の質が落ち、枚数が無駄に増える傾向にある。読み手である金融機関に負担をかけるし、事業の全体像がかえって見づらくなる。 金融機関は図を多用した色鮮やかな資料よりも、簡潔な文書を好む。筆者はいつもワード及びエクセルで作成している。図示した方が分かりやすい、という場合にのみ、パワーポイントを用いている。 3 融資交渉面談までの期間も重要な準備時間 申し込みから1週間前後で融資交渉面談となる。面談までの期間、社長は不安になる。事業計画書や資金繰り表を何度も見返すうちに「こんなことを聞かれたらどうしようか」、「どんな風に回答すれば良いか」心配になる。社長から相談を受けたら、税理士は回答案を具体的に示し、不安を解消するよう努める。「私だったら、このように回答します」というレベルで良い。上手く解消できれば、税理士の評価及び存在感は高まる。 回答案を直ちに示せない場合でも、社長の話を聞き、一緒に悩むという姿勢は重要である。姿勢を見せずに「分からない」、「社長ご自身で考えてください」という態度を取ると、信用を失う。「相手を納得させる回答が必要だと思います」という、会計士にありがちな「回答になっていない回答」も同様である。 * * * 以上、書類全体の整合性チェックについて税理士が果たす役割を説明した。チェックを通して事業計画書に対する社長の理解を助けることができる。正式に融資を申し込んだ後、交渉面談まで、社長は不安になることが多い。税理士は相談に乗り、不安を和らげるという支援ができる。存在感を示して信用を得る、良い機会である。 次回は、融資交渉面談時の支援について述べる。 (了)
パフォーマンス・シェア(Performance Share)と リストリクテッド・ストック(Restricted Stock) ~経済産業省報告書で示された「2つの新しい株式報酬」~ 【第3回】 (最終回) 「導入への課題と今後の動向」 弁護士・公認会計士 中野 竹司 本連載の最終回となる今回は、本稿公開時点におけるわが国法制下において、パフォーマンス・シェアとリストリクテッド・ストックを自社へ導入した場合の問題点について整理・紹介したい。 1 法律上の問題点 わが国の会社法上、役員に対して自社株式を無償で発行したり、役員から労務出資を受けることはできないとされていることから、株式型報酬は、株式取得目的のために役員に対して金銭報酬を支給し、当該金銭を原資として株式を取得するという形式をとる。このため、役員報酬の決議の枠内で支給する必要がある。 そこで、株式取得目的の報酬プランとして「役員持株会」が用いられるが、支給額に関しては、インサイダー取引規制との関係で、原則として役員の1ヶ月あたりの拠出額を「100万円未満」とする必要がある(金融商品取引法166条6項12号、取引規制府令59条1項4号)など制約が多く、柔軟な設計は困難である。 こうしたことから、わが国においては、業績連動型株式報酬として米国で普及しているタイプのリストリクテッド・ストックやパフォーマンス・シェアを、そのまま導入することは現在のところ事実上困難である。 2 税務上の問題点(会社側) パフォーマンス・シェアやリストリクテッド・ストックは、株式取得目的のために役員に対して金銭報酬を支給し、当該金銭を原資として株式を取得する形式をとる。したがって、仮に法的問題をひとまず置いたとしても、法人税法上は役員報酬であるため、法人税法上の損金算入規制を受ける。 すなわち、法人税法上、役員報酬は、定期同額給与、事前確定届出給与、利益連動給与の要件を充足することにより損金算入できるが、法人税法の定める要件を満たさない場合には、損金算入できない。 ここで、定期同額給与、事前確定届出給与、利益連動給与の要件の概要は、以下のとおりである。 上記の損金算入要件は、中長期的なインセンティブ報酬に対する対応が十分ではないため、米国型のパフォーマンス・シェアとリストリクテッド・ストックをわが国で導入した場合、法人税法上、役員報酬相当額を損金算入可能とする設計は困難と考えられる。 3 わが国におけるリストリクテッド・ストック及びパフォーマンス・シェア型の役員報酬の設計例 このように、わが国では、米国型のパフォーマンス・シェアとリストリクテッド・ストックを導入しようとしても、制度的な壁が高い。そこで、同様な中長期的インセンティブ付けの手段として、株式報酬型ストック・オプションや株式信託の活用が一部なされている。 (1) 株式報酬型ストック・オプション 株式報酬型ストック・オプション(1円ストック・オプション)とは、株式を報酬として付与することを目的とし、オプションの権利行使価格を非常に低く設定したものである(通常は1円)。これは、もともとは退職慰労金を廃止し、その代替として付与する目的で普及してきた。 ただ、役員個人の税務メリットを考えると、給与所得より退職所得と区分された方が有利なのが一般的である。しかし、退職所得と区分されることが明確なのは権利行使期間が退職から10日間に限定されているストック・オプションの場合であり(※)、それ以外の場合の所得区分は明確ではないという税務上の不明確さがある。 (※) 東京国税局(文書回答事例)「権利行使期間が退職から10日間に限定されている新株予約権の権利行使益に係る所得区分について」(平成16年11月2日) また、外国企業にとってなじみのないスキームのため、海外投資家にとって分かりにくいというデメリットがある。 (2) 株式交付信託の活用 近時、従業員のインセンティブ・プランとしてのESOP信託の役員版ともいえる、役員を対象とした株式交付信託を、新たな業績連動型の株式報酬プランとして用いるケースも現れてきている。 ただし、株式交付信託を活用する場合には、会社法上、役員報酬決議・自己株式取得規制への対応・仮想払込とみなされないための制度設計が必要である。さらに、法人税法上の取扱いについても、株式交付信託導入時には慎重な検討が必要となる。 4 業績連動型報酬導入のための税制改革の提言 経済産業省は、平成27年8月25日に公表した平成28年度税制改正に関する要望のなかで、役員給与等に係る税制の整備について、現行の役員報酬の損金算入制度は、厳格な要件が付されており、経営者のインセンティブを引き出すための報酬プランを作成する上で大きな障害となっているとしている。 (※) 経済産業省「平成28年度 税制改正に関する経済産業省要望の概要」p15-18を参照。 その上で、わが国企業の「稼ぐ力」向上に向けて、企業経営者に「攻めの経営」を促すため、コーポレート・ガバナンスが強化されている上場企業等を対象に、役員給与における多様な業績連動型報酬や株式による報酬の導入促進等を図ることを要望している。 また、役員報酬税制に関する上場企業の声として、以下のような記載を行っている。 平成28年度税制改正において、これらの要望がどのように具体化されていくかは不透明であるが、業績連動型の役員報酬を税制面でも促進しようという動きは、今後も進んでいく可能性は高いのではないだろうか。 (連載了)
此の国にも『日本企業』! 【第11回】 「《ASEAN》 ピンチをチャンスに変えるため、日本から世界へ ~野村興産(株)~」 中小企業診断士 西田 純 〈老舗企業、フィリピンへ〉 先週、フィリピン・マニラで地元の製造業や官公庁を対象に、ちょっと変わったセミナーが開かれました。 内容は「このたびマニラで、蛍光灯や電池などの水銀含有廃棄物を国際条約に従って廃棄処理をするサービスを始めたので、廃棄物の処理にお困りの方はぜひお使いください。」というもので、地元の廃棄物処理事業者と一緒にこのセミナーを主催したのが、今回ご紹介する野村興産(株)です。 同社にとって初めての海外事業となるこのプロジェクトは、しかしながら大きな変化の単なる序章にすぎません。戦前からの老舗企業に何が起こったのか、今月はそんなお話です。 〈環境の変化に翻弄されて〉 同社はもともと、北海道で金属水銀鉱山を経営する会社でした。時代の変遷もあって、鉱山業は1970年代に廃業し、新会社が設備を引き継ぐ形で水銀含有廃棄物の処理と水銀リサイクル事業者として再出発したのですが、その後しばらくは100%国内市場で生きてきた会社でした。 今世紀に入り、水銀の市況が高騰したことから、同社と海外との付き合いが始まります。「水銀を輸出してくれないか?価格はそちらの希望に合わせる」そんなオファーが海外から舞い込むようになったのです。その後、それまでほとんど経験のなかった輸出事業の急拡大により、収益は大きく改善したのですが、それに続いて同社を襲ったのが、「水俣条約」による水銀の国際商業取引禁止という劇的な環境変化でした。短い間ながら、収益の柱とも頼んできた輸出事業ができなくなるからです。 〈日本で培った適正処理技術を活かして海外へ〉 健康被害を未然に予防する必要性があるといっても、水銀を使わなければそれでよいという簡単な話ではありません。 日本では、もうだいぶ前に使われなくなった水銀ですが、世界を見れば依然として、例えば化学工業の触媒や電極の材料として使われていて、条約が成立したことにより加盟国ではこれらの水銀を適正に処理しなくてはいけなくなります。同様に使用済み蛍光灯や水銀灯、電池などの廃棄物も水銀が環境に漏えいしないような処理をしなくてはならなくなるのです。 同じような需要は、条約に署名した世界の120を超える国々にも潜在的に存在しています。早ければ2016年中にも発効することが見込まれる同条約に対応するため、世界の国々が適正処理技術の導入をしなければならないという状況になったのですが、世界を見回しても技術を提供できる主体は実はそう多くありません。 野村興産(株)が対応しようとしているビジネスは、廃棄物の破砕・洗浄工程を中心として、求める国々へ適正処理技術の移転を行おうというものですが、元々が超薄利の廃棄物処理サービスなので、いずれの国についても慎重なフィージビリティ・スタディが求められます。 〈環境の変化を事業の転換・成長の糧に〉 フィリピンを嚆矢(こうし)として、インドネシアそしてマレーシアと現在アジアで複数の向け先に対する技術移転の可能性を検証中の同社ですが、条約の要求条件を満たすためには、同時並行的に複数の国を対象とするなど、かなりハイスピードな対応が求められる状況にあります。 ほんの15年前までは海外との取引すらしたことのなかった会社が、環境の変化に対応するためとはいえ、アジアを中心とした世界各国を新たなターゲットにビジネスを展開しようという大転換を進めているのです。 急速な海外展開への展望について、同社専務取締役の市橋豊さんはそう語ってくれました。外部環境の変化に対応するため、果敢に海外市場を目指す同社の今後から目が離せません。 (了)
《速報解説》 国税庁、「相続税の申告書作成時の誤りやすい事例集」を公表 ~2割加算の適用対象者や生命保険契約に係る相続財産の判定等14事例~ Profession Journal編集部 本年1月1日以後の相続からは基礎控除額の引下げ等を含むいわゆる“相続増税”の改正が施行されており、すでに増税後初の相続税の申告期限(相続の開始があったことを知った日の翌日から10月以内)を迎えている。 この改正による申告対象者の拡充により、税理士に頼ることなく自己申告をする納税者の増加が見込まれるが、国税庁は11月9日付、ホームページにて「相続税の申告書作成時の誤りやすい事例集」(以下「事例集」)を公表し、申告書作成時の誤りやすい項目について事例形式で注意喚起を行っている。 事例集では相続人や相続財産の判定等に関し、各申告書の記載例を含む以下14の誤りやすい事例が示されており、主に基礎的な事項が中心となっているが、課税当局がどのような誤りが多いことを認識しているのか、念のため目を通しておきたい。 なお事例集では「小規模宅地等の評価減特例」や「配偶者の税額軽減」については触れられていないが、両制度については7月に「「小規模宅地等の特例」と「配偶者の税額軽減」を適用した相続税申告書の記載例」が公表されているため、そちらを合わせて参照されたい。 (了) ↓お勧め記事↓
《速報解説》 修正国際基準及び改正会社法に係る 「会社法施行規則・会社計算規則」の改正案がパブコメに 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成27年11月6日、法務省は「会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令案」を公表し、意見募集を行っている。 これは、平成27年6月30日に企業会計基準委員会から公表された「修正国際基準(国際会計基準と企業会計基準委員会による修正会計基準によって構成される会計基準)」を受けた会社計算規則の改正及び、会社法の一部を改正する法律(平成26年法律第90号)の施行に伴う会社法施行規則の改正を追加的に行うものである。 意見募集期間は、平成27年12月6日までである。 なお、修正国際基準を受けた連結財務諸表規則等の改正は、平成27年9月4日付で、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第52号)として公布されている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 会社計算規則の改正 「修正国際基準で作成する連結計算書類に関する特則」(61条、120条の2)として、次の規定が設けられる予定である。 「米国基準で作成する連結計算書類に関する特則」は、会社計算規則120条の3とする予定である。 Ⅲ 会社法施行規則の改正 平成27年5月1日に施行された改正会社法を受け、以下の改正が追加的に予定されている。 Ⅳ 適用時期等 公布の日から施行する予定である。 次の経過措置が設けられる予定である。 (了)
2015年11月5日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.143を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!- - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
〔巻頭対談〕 川田剛の“あの人”に聞く 「山田二郎 氏(弁護士)」 【後編】 〔語り手〕山田 二郎(弁護士) (写真/右) 〔聞き手〕川田 剛(税理士) (写真/左) (2015年9月15日東京都内にて収録) (了)