〔これなら作れる ・使える〕 中小企業の事業計画 【第7回】 「個別計画の作成手順(その2)」 税理士・中小企業診断士・ITストラテジスト 高畑 光伸 第7回では、前回の続きとなる売上計画の作成のポイントについて確認する。 (4) 売上計画の修正 たとえば、製品B、製品Dの高付加価値化に失敗し、さらに製品B、製品Dの販売数量が大幅に低下(課題解決前から30%低下)した場合、損益状況は次のようになる。 《販売数量が大幅に低下した場合の製品別の損益状況》 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ※[比率]等については、小数点第2以下を四捨五入している(以下同様)。 目標値を大きく下回る場合には、売上計画を修正する。上記の損益状況が四半期のタイミングで判明した場合、何も対策せずに継続するのであれば、差異が大きく膨れ上がることになる。製品B、製品Dの取扱いを検討したうえで、目標値を修正するなどの見直しが必要になる。 (5) 売上計画の3つのシナリオの検討 当初のシナリオどおりに事業が進むとは限らない。さまざまなシナリオを想定することができるが、将来どうなるかは誰しもが分からないため、ベースとなるシナリオのほか、アップサイド(景況が良い場合のシナリオ)、ダウンサイド(景況が悪い場合のシナリオ)の3つのシナリオを想定するのが良い。 ① アップサイド(景況が良い場合のシナリオ) 《販売数量が当初より20ポイント上昇した場合 (課題解決前から20%増加した場合)》 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ② ダウンサイド(景況が悪い場合のシナリオ) 《販売数量が当初より20ポイント低下した場合 (課題解決前から20%減少した場合)》 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 3 売上原価計画 (1) 小売業の場合 小売業の場合、売上原価の構成要素は原則、商品仕入高のみである。年間を通じて商品在庫の増減がなければ、前年度以前の仕入高あるいは仕入率から売上原価を試算する。また、仕入先との取引条件の見直し、仕入単価の増減などが見込まれる場合は、これらの条件を計画値に反映する。 なお、期首時点で商品在庫の残高、増減が大きい場合は、当期中の原価に大きな影響が生じるため、在庫表を通じて商品在庫の内容を確認する必要がある。 (2) 製造業・建設業などの場合 製造業・建設業などの場合、売上原価の構成要素は材料費、労務費、経費である。労務費、経費は、個別計画の人員計画、経費計画により反映することになる。なお、複数の製品・サービスを取り扱っている場合は、原価を一定の配賦基準に従って、各製品・サービスに割り振る。 《原価・経費への割振り》 (3) サービス業 サービス業の場合、前述の製造業・建設業などと同様に、労務費、経費は、個別計画の人員計画、経費計画により反映することになる。また、貸借対照表に仕掛品が計上されることがある。これは、該当期の収益に対応させるため、仕掛品としていったん貸借対照表に繰り延べられているものである。よって、該当期の収益に対応するものかどうか、仕掛品の内容を確認する必要がある。 たとえば、映画演劇業の場合、公演日の数ヶ月前よりチケット収入、物販収入などの収益があり、公演日が属する事業年度の収益になる。 一方、費用については公演日よりも前に多くの支出を伴い、稽古場の賃借料、キャストの給与、小道具などの消耗品などがかかる。公演日と支出日が同じ年度中であれば、当該年度の費用として計上されるまでだが、前年度以前から支出が生じている場合、公演日が到来するまで、仕掛品として処理することになる。 《仕掛品リスト》 (続く)
〈小説〉 『所得課税第三部門にて。』 【第37話】 「年末調整の電子化」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一 「浅田君は・・・今年から新しくなる年末調整の手続きを知ってるかい?」 中尾統括官は、浅田調査官に声をかける。 「年末調整・・・ですか?」 浅田調査官は怪訝そうな顔をする。 「10月に国税庁がホームページで年末調整控除申告書作成用のソフトを公表するという・・・あれだよ。」 中尾統括官は、険しそうな表情で浅田調査官を見る。 「あ~、はいはい・・・あの・・・控除証明書等の必要書類のデータを一括取得して、自動入力ができるという・・・あれですね。」 浅田調査官は、苦笑いしながら、答える。 「そうだ。もっとも、保険料控除申告書などに添付する証明書について、保険会社からの電子的控除証明書によることが可能になるというのは、2年前の平成30年度の税制改正に基づくものだが・・・」 そう言いながら、中尾統括官は、所得税法198条7項を開く。 「平成30年度の税制改正で、この7項が新たに追加されたのだが・・・」 中尾統括官が説明する。 「この改正を受けて、国税庁は、年末調整控除申告書作成用ソフトを無償で、納税者に提供しようとするのですね。今はこのソフトのプロトタイプ版が公表されていて、10月1日に正式なものが公表されるようです。」 浅田調査官はパソコンで国税庁のホームページを見ながら頷く。 「しかし・・・マイナポータルを活用した年末調整及び所得税確定申告の簡素化・・・と、国税庁のホームページは謳っているが・・・マイナポータルって・・・何だったっけ?」 中尾統括官は、浅田調査官に真面目な顔で尋ねる。 「中尾統括官・・・マイナポータルを知らないのですか?」 浅田調査官は、冷ややかな眼差しで見つめる。 「マイナポータルは、政府が運営するオンラインサービスのことです・・・マイナポータルで提供される具体的なサービスとは・・・」 そう言うと浅田調査官は、自分のスマートフォンから、マイナポータルの画面を見せる。 「・・・具体的なサービスとして、情報提供等記録表示、自己情報表示、お知らせ、民間送達サービスとの連携、子育てワンストップサービス、公金決済サービス・・・などがあります。」 中尾統括官は、浅田調査官のスマートフォンの画面をのぞき込む。 「ところで、マイナポータルと連携するためには、マイナンバーカードが必要なんですけど・・・統括官は持っていますか?」 浅田調査官の問いに、中尾統括官は黙って首を横に振る。 「まだ、マイナンバーカードを持っていないのですか・・・」 浅田調査官は、呆れた顔をする。 「いや・・・忙しくて・・・カードの取得手続きに行くことができないんだ。」 中尾統括官は、頭をかきながら、言い訳をする。 「ただ・・・国税庁のホームページを見ても、この内容の説明では、一般の人がこの制度を利用できるとは思えないが・・・」 中尾統括官は、抵抗する。 「国税庁のホームページでは、『ご利用いただくための準備』として、4つのステップが示されています。」 浅田調査官は、ホームページの内容を読み上げる。 「これだけのことをやって初めて年末調整の一部が電子化できるのか?」 中尾統括官は、不満そうに言う。 「③や④については、マイナポータルとの連携方法については、わざわざ「保険会社等によって異なる可能性もある」なんて書いてある・・・そして聞くところによると、保険会社によっては、従来通り、ハガキで控除証明書を送付するというところもあるらしい・・・」 中尾統括官は、令和2年10月以降の「年末調整手続の電子化概要図」を見ながら、首を傾げる。 (※) 国税庁ホームページより 「この図を見ると簡単そうだけれど・・・従業員が国税庁の年調ソフトを使って、マイナポータルからデータを入力し、それを勤務先に送信をするといった作業を考えると、私は・・・従来の紙ベースで年末調整控除申告書を作成した方が、簡単だと思うのだが・・・」 中尾統括官は、自分の言葉に納得するように、頷く。 (つづく)
《速報解説》 ASBJ、実務対応報告第40号「LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い」を公表 ~金利指標置換後の取扱いについては、公表から約1年後に再度確認を予定~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2020年9月29日、企業会計基準委員会は、「LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い」(実務対応報告第40号)を公表した。これにより、2020年6月3日から意見募集していた公開草案が確定することになる。 ロンドン銀行間取引金利(London Interbank Offered Rate:LIBOR)の公表は、2021年12月末をもって恒久的に停止される。2021年3月5日、LIBOR運営機関である ICE Benchmark Administrationから、米ドルの一部テナーを除いて、現行のパネル行が呈示するレートを一定の算出方法に基づき算出するLIBORについては、2021年12月末をもって公表を停止する旨が公表されている。LIBORの公表の停止に伴う今後の対応については、関係機関の動向に注意されたい。 これにより、LIBORを参照している契約において、参照する金利指標の置換が行われる可能性が高まっていることから、LIBORを参照する金融商品について必要と考えられるヘッジ会計に関する会計処理及び開示上の取扱いを明らかにするものである。 なお、今回の実務対応報告公表時には、金利指標の選択に関する実務や企業のヘッジ行動について不確実な点が多いため、本実務対応報告の公表から約1年後に、金利指標置換後の取扱いについて再度確認する予定である(53項)。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 範囲 LIBORを参照する金融商品について金利指標を置き換える場合に、その契約の経済効果が金利指標置換の前後で概ね同等となることを意図した金融商品の契約上のキャッシュ・フローの基礎となる金利指標を変更する契約条件の変更のみが行われる金融商品を適用範囲とする(3項、27項、29項)。 次のものも適用範囲とする。 Ⅲ 金利指標置換前の会計処理 1 ヘッジ対象又はヘッジ手段の契約の切替 本実務対応報告の適用範囲に含まれる金融商品をヘッジ対象又はヘッジ手段としてヘッジ会計を適用している場合、金利指標改革に起因する契約の切替が行われたときであっても、ヘッジ会計の適用を継続することができる(5項)。 2 ヘッジ会計の原則的処理方法(繰延ヘッジ) 3 時価ヘッジ 本実務対応報告の適用範囲に含まれる金融商品をヘッジ対象又はヘッジ手段として時価ヘッジを適用する場合、繰延ヘッジを適用する場合について定めた特例的な取扱いと同様の取扱いとすることができる(10項)。 4 金利スワップの特例処理等 Ⅳ 金利指標置換時の会計処理:ヘッジ会計の原則的処理方法(繰延ヘッジ) 金利指標置換前において本実務対応報告の適用範囲に含まれる金融商品をヘッジ対象又はヘッジ手段としてヘッジ会計を適用していた場合については、金利指標置換時において、ヘッジ会計開始時にヘッジ文書で記載したヘッジ取引日(開始日)、識別したヘッジ対象、選択したヘッジ手段等を変更したとしても、ヘッジ会計の適用を継続することができる(13項)。 Ⅴ 金利指標置換後の会計処理 1 ヘッジ会計の原則的処理方法(繰延ヘッジ) 金利指標置換前において本実務対応報告の適用範囲に含まれる金融商品をヘッジ対象又はヘッジ手段としてヘッジ会計を適用していた場合、事後テストに関する8項の取扱いを適用していたか否かにかかわらず、金利指標置換時以後、同項の取扱いを適用し、2023年3月31日以前に終了する事業年度までヘッジ会計を継続することができる。(14項)。 これは、LIBOR の公表停止が予定されている2021年12月末から概ね1年間を想定したものである(53項)。 また、当該取扱いを継続している間、再度金利指標を置き換え、ヘッジ文書の記載を変更したとしても、ヘッジ会計の適用を継続することができる(14項)。 金利指標改革とは関係なくヘッジ会計が中止となった場合で、本実務対応報告の適用範囲に含まれる金融商品をヘッジ対象としている場合、当該ヘッジ対象の契約の切替が行われたときであっても、契約の切替後のヘッジ対象に係る損益が認識されるまで、ヘッジ手段に係る損益又は評価差額を繰り延べる(17項)。 2 包括ヘッジ 金利指標置換前において本実務対応報告の適用範囲に含まれる金融商品を含むグループをヘッジ対象として包括ヘッジを適用していた場合、包括ヘッジに関する9項の取扱いを適用していたか否かにかかわらず、金利指標置換時以後、同項の取扱いを適用し、2023年3月31日以前に終了する事業年度まで包括ヘッジの適用を継続することができる(18項)。 また、同項の取扱いを継続している間、再度金利指標を置き換え、ヘッジ文書の記載を変更したとしても、包括ヘッジの適用を継続することができる(18項)。 3 金利スワップの特例処理等 金利スワップの特例処理及び振当処理についても原則的処理方法に関する特例的な取扱いと同様の特例的な取扱いをすることができる(19項)。 Ⅵ 注記事項 Ⅶ 適用時期等 (了)
《速報解説》 日本監査役協会、「多様な『監査役スタッフ像』に関する研究 -その現状と課題-」を公表 ~12の課題に対して監査役スタッフ数に着目し、3類型に分類した上で分析~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2020年7月10日付けで(ホームページ掲載日は2020年9月24日)、日本監査役協会 本部監査役スタッフ研究会は、「多様な『監査役スタッフ像』に関する研究-その現状と課題-」を公表した。 監査役スタッフの職務内容に大きな影響を与える要素としてスタッフ数に着目した分析を行っている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 1 分析の方法 検討している課題は次の12項目であり、表紙を含めて64ページに及ぶものである。 各課題について、監査役スタッフの数に着目し、次の3つの類型に分類して、分析を行っている。 2 検討を通じて浮かび上がった傾向や課題 スタッフ数が多いほど、監査役等に対し、よりきめ細やかなサポートが行えているであろうという当初の予想は、ほぼそのとおりであったとのことである。 監査役スタッフが置かれた環境により、次のような傾向や課題が見られた。 (了)
2020年9月24日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.387を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第75回】 「連結納税制度からグループ通算制度へ」 税理士 山本 守之 1 改正の概要 令和2年度税制改正で現行の連結納税制度が見直され、令和4年4月1日以後に開始する事業年度から「グループ通算制度」に移行します。 従来の連結納税制度では、企業グループ全体を1つの課税単位として計算した法人税額を親会社が申告していましたが、グループ通算制度では、企業グループ内の親会社及び子会社それぞれを納税単位として各法人が個別に法人税額の計算と申告を行うことになります。 2 改正事項 連結納税制度からグループ通算制度に移行するにあたっての改正事項は、主に次のようになります。 3 改正の背景 平成14年度税制改正で創設された連結納税制度は、企業グループ内の個々の法人の損益を通算する等、グループ全体を1つの納税主体として課税する制度です。本制度は企業グループ内の損益通算や親法人の加入時の欠損金が利用できるメリットがありますが、所得計算や税額計算の煩雑さ、税務調査後の修正・更正等に時間がかかりすぎる点など、納税者及び課税当局の双方にとって事務負担が重くなっていました。 このような現行制度は、理論上、問題があるものとまでは言えませんが、連結納税制度導入から18年が経過することもあり、企業グループ内の各法人を納税単位として、各法人が個別に法人税額の計算及び申告を行うために損益通算等の調整を簡素な仕組みとすることで事務負担の軽減を図り、また、親法人の開始時の欠損金の利用制限を行うことにより公平公正な税負担の措置を考慮する観点から連結納税制度を見直し、グループ通算制度へ移行することになります。 以上が改正にあたっての財務省からの主な説明ですが、民間の立場から想像するに、連結納税制度を創設する際に損益通算による財政収入の減少を恐れて制度自体を必要以上に使いにくいものにした官僚が、現行制度を「厳しくしすぎた」という反省から簡素な制度にするということでしょう。 4 グループ通算制度の計算イメージ グループ通算制度の所得税等の計算イメージは、次のようになります。 【グループ通算制度における所得金額等の計算イメージ】 (出所) 経済産業省資料 5 時価評価の適用外 グループ加入時の時価総額の適用の類型を考えてみると、次のようになります。 【グループ加入時に時価評価課税等の対象外となる類型の例】 (出所) 経済産業省資料 6 適用時期 グループ通算制度は、令和4年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。 連結納税制度を適用している法人は、令和4年4月1日以後に開始する事業年度において、グループ通算制度の承認を受けたものとみなされます。 なお、グループ通算制度に移行せず、単体納税法人となる場合には、令和4年4月1日以後最初に開始する事業年度開始の日の前日までに税務署長に届出書を提出する必要があります。 7 グループ通算制度の注意点 グループ通算制度への移行にあたっての注意点をまとめると、主に次のようになります。 (了)
谷口教授と学ぶ 税法の基礎理論 【第44回】 「租税法律主義の基礎理論」 -租税法律主義の機能的考察と法の支配によるコーティング- 大阪大学大学院高等司法研究科教授 谷口 勢津夫 Ⅰ はじめに 前回から、「租税法律主義の基礎理論」を主題として、日税研論集77号(近刊)で公表予定の拙稿「租税法律主義(憲法84条)」をベースにして租税法律主義の「総論的」検討を始めたが、今回は、上記拙稿のⅠの4「租税法律主義の機能的考察-法の支配による租税法律主義のコーティング-」をベースにして租税法律主義の法的性格・法的構成を検討することにする。 その検討に入る前に、後述する租税法律主義の機能的考察との関係で、法学体系における「租税法の独立性のモメント」(金子宏『租税法理論の形成と解明 上巻』(有斐閣・2010年187頁[初出・1972年])。以下『形成と解明(上)』と略記する。太字筆者)について簡単に述べておきたい。 租税法律主義の基本的性格は、前回みたように、法律による行政の原理であるが、その原理は、租税法律主義の民主主義的再構成によって修正を受け厳格化された(第34回Ⅱ3・4参照)だけでなく、「課税要件法を租税法の中心にすえることによって、租税法を行政法とは独立の法の一部門として構成すること」(金子・前掲書187頁)によっても、修正を受け厳格化された(第3回Ⅲ、第34回Ⅲ参照)。そのような「租税法の独立性のモメント」を提供したのは、租税法律関係に関する債務関係説であったと考えられる(藤谷武史「租税法と行政法-歴史と展望」金子宏編『租税法の発展』(有斐閣・2010年)71頁、73頁等参照)。 Ⅱ 租税法律主義の機能的考察 「租税法の独立性のモメント」は、一方で、上述のように、債務関係説によって提供されたが、他方で、税法学における「租税実体法(特に課税要件法)中心の学問体系」(藤谷・前掲論文75頁)の選択を促し、租税法律主義の「現代取引社会における経済的機能」(金子・前掲『形成と解明(上)』13頁[初出・1966年]。太字筆者)に着目しこれを重視した「租税法律主義の機能的考察・・・・・」(同25頁注(12)[初出・1966年]。傍点原文・太字筆者)につながった。この学問的プロセスにおいて主導的役割を果たされたのは金子宏教授であった。 金子教授は「租税法律主義の機能的考察・・・・・」について夙に次のとおり述べておられた(同・前掲『形成と解明(上)』13-14頁[初出・1966年])。 金子教授は、これに続けて、「かかる見地から租税法律主義の内容とされるべき点を列挙してみると」として、❶課税要件法定主義、❷課税要件明確の原則、❸遡及立法の禁止、❹課税処分に対する司法的救済の途が完全に開かれていること等、を挙げておられた(同・前掲『形成と解明(上)』14-15頁[初出・1966年])。 以上でみた租税法律主義の機能的考察は、「私的経済活動の局面における租税法と私法の密接関連性という現実の法現象」(藤谷・前掲論文78頁)を前提にして、税法を私的経済活動の局面においていわば「私法(特に取引法)的に機能させる」ための基礎理論的考察とみることができるように思われる。 Ⅲ 法の支配による租税法律主義のコーティング ところで、一般に、「理性的な人々の行動を規制するために法が備えるべき特質、という意味における法の支配」(長谷部恭男『比較不能な価値の迷路-リベラル・デモクラシーの憲法理論-〔増補新装版〕』(東京大学出版会・2018年)149頁[初出・1991頁])とは、「①法が一般的抽象的であり、②公示され、③明確であり、④安定しており、⑤相互に矛盾しておらず、⑥遡及立法(事後立法)が禁止され、⑦国家機関が法に基づいて行動するよう、独立の裁判所によるコントロールが確立していること」(同『憲法〔第7版〕』(新世社・2018年)19頁。以下『憲法』と略記する)など、「一国の法秩序において、法が法として機能するための条件、言いかえれば人が法に従いうるための最低限の条件となる要請」(同129-130頁)をいうが、この要請は次のとおり敷衍されている(同130頁)。 法の支配の意味内容を以上のように理解する場合、金子宏教授は租税法律主義の機能的考察によって、租税法を私的経済活動の局面においていわば「私法(特に取引法)的に機能させる」ために租税法律主義が具備すべき条件を解明し、もって租税法の分野における法の支配を実現しようとされた、と解することができるように思われる。金子教授が租税法律主義の機能的考察により示された内容(前記Ⅱ)のうち❶は前記の法の支配の諸要素のうち①②⑤に、❷は③④に、❸は⑥に、❹は⑦にそれぞれ対応するものとみることができる。 そもそも、わが国では、租税法律主義の基本的性格は、前回述べたとおり、法律による行政の原理であるが、金子教授による租税法律主義の機能的考察は、そのような基本的性格の上に法の支配の諸要素をコーティング(coating)し、もって租税法律主義の下で私人に私的経済活動の租税効果につき予測可能性を保障しようとしたもの、と解することができるように思われる。 法律による行政の原理(侵害留保原理)は「自由主義の原理にまさに適合的である」(塩野宏『行政法Ⅰ〔第6版〕行政法総論』(有斐閣・2015年)80頁)が、法の支配も、「国家機関の行動を一般的・抽象的で事前に公示される明確な法によって拘束することにより、国民の自由を保障しようとする理念」(長谷部・前掲『憲法』18頁)であることから、法律による行政の原理の上にまさに「定着可能な」要請である。 そうであるからこそ、そのようなコーティングは成功するのである。ただし、法の支配による租税法律主義のコーティングは、私的経済活動における私人の予測可能性の保障のための「表面処理」(機能の明確化)にとどまらず、租税の賦課・徴収の根拠となる法律の内部(内容)にまで法の支配の諸要素を「浸潤」させることによって、租税法律主義を、その名宛人に税務行政だけでなく租税立法者をも取り込むもの(特に❶❷❸)として再構成することを可能にしたもの、と解することができると考えるところである。 なお、金子宏教授は、明示的に租税法律主義の機能的考察それ自体の見地からではないが、その後、租税法律主義の内容に「手続的保障原則」を加えられた(同『租税法〔初版〕』(弘文堂・1976年)76頁参照)。金子教授は後に、手続的保障原則による租税法上の適正手続の保障を「ルール・オブ・ロー」の観点から論じておられる(同・前掲『形成と解明(上)』121頁以下[初出・2008年]参照)が、そもそも、適正手続の保障については「憲法31条以下の諸条文の中には、前述した『法の支配』の要請を直截に表現したものがある」(長谷部・前掲『憲法』265頁)以上、租税法律主義の内容に手続的保障原則を加えることは、法の支配による租税法律主義のコーティングの一環として理解してもよいであろう。 Ⅳ おわりに 今回は、金子宏教授による租税法律主義の機能的考察について検討を加え、それを法の支配による租税法律主義のコーティングとして理解することを試みた。そのような理解によれば、金子教授の租税法律主義論については次のように総括することができるように思われる。 すなわち、金子宏教授は、わが国で明治憲法の制定以来展開・再構成されてきた租税法律主義の「歴史的沿革や憲法思想史的意義」(前記Ⅱの囲みの引用文)を十分に踏まえられた上で、租税法律主義に、その機能的考察によって、法の支配の諸要素をコーティングし浸潤させ、租税法律主義の「総仕上げ」をされたものとみることができよう(第42回Ⅲ2も参照)。 そのような「総仕上げ」後の租税法律主義の内容として、金子教授は、体系書『租税法』(弘文堂)の初版(1976年)以降、課税要件法定主義、課税要件明確主義、合法性の原則、手続的保障原則、遡及立法の禁止及び納税者の権利保護の6つを挙げておられる(同『租税法〔第23版〕』では81頁参照)。 次回からは、租税法律主義の上記の6つの内容を順次検討していくことにする。 (了)
Q&Aでわかる 〈判断に迷いやすい〉非上場株式の評価 【第14回】 「〔第2表〕比準要素数1の会社の判定の留意点」 税理士 柴田 健次 Q A社は開業後30年の会社であり、創業以来、配当を行ったことがなく、債務超過になった事業年度もありません。毎期経常的に利益が出ていますが、前々期に社長の退職金を支給したことによって、前々期は赤字となっています。 A社の類似業種比準価額の計算要素である1株当たりの年配当金額、年利益金額、純資産価額は、下記の通りとなります。 1株当たりの年利益金額は、「直前期末以前1年間の利益金額」と「直前期末以前2年間の利益金額÷2」を選択することができますので、類似業種比準価額の計算上は、低い0円(直前期末以前2年間の利益金額÷2を基に計算)を選択した場合には、必ず比準要素数1の会社に該当するのでしょうか。 A 類似業種比準価額の計算上は、低い0円(直前期末以前2年間の利益金額÷2を基に計算)を選択した場合においても、特定の評価会社(比準要素数1の会社)の判定上は、50円(直前期末以前1年間の利益金額を基に計算)又は0円(前期末以前2年間の利益金額÷2を基に計算)を選択することができ、50円を選択した場合には比準要素数1の会社に該当しませんが、0円を選択した場合には、比準要素数1の会社に該当します。 したがって、必ず比準要素数1の会社に該当するわけではありません。 ◆ ◆ ◆ ① 比準要素数1の会社の意義と計算方法 比準要素1の会社に該当するのは、第4表で直前期末を基準に計算した「1株当たりの年配当金額(第4表の(B1)の金額)」「1株当たりの年利益金額(第4表の(C1)の金額)」及び「1株当たりの純資産価額(第4表の(D1)の金額)」のうちいずれか2の判定要素が0であり、かつ、直前々期末を基準にして計算した「1株当たりの年配当金額(第4表の(B2)の金額)」「1株当たりの年利益金額(第4表の(C2)の金額)」及び「1株当たりの純資産価額(第4表の(D2)の金額)」のうちいずれか2以上の判定要素が0であるものです。 比準要素数1の会社に該当した場合の株式の価額は、下記の通り計算されることになります。 ② 直前期末を基とした判定で「直前期末以前1年間の利益金額」を選択した場合 特定の評価会社(比準要素数1の会社)の判定上、50円(直前期末以前1年間の利益金額を基に計算)を選択した場合の比準要素数1の判定は下記の通り、「非該当」となります。 したがって、他の特定の評価会社に該当していない場合には、一般の評価会社に該当することになります。 ③ 直前期末を基とした判定で「直前期末以前2年間の利益金額÷2」を選択した場合 特定の評価会社(比準要素数1の会社)の判定上、0円(前期末以前2年間の利益金額÷2を基に計算)を選択した場合の比準要素数1の判定は下記の通り、「該当」となります。 ☆実務上のポイント☆ 比準要素数1で計算した株式の価額で当初申告した後に比準要素数1の会社に該当しないものとして株価を計算し、更正の請求を行うことは、計算の誤りに起因とするものではなく、課税負担の錯誤を理由とするもの(第10回参照)となりますので、原則として更正の請求は認められないものとなります。 特定の評価会社への該当を避けるためには、特定の評価会社の判定上は、「直前期末以前1年間の利益金額」と「直前期末以前2年間の利益金額÷2」のいずれか大きい方を選択することになりますが、実際の株価の計算においては、いずれか低い方を選択することで株価は下がることになります。 (了)
組織再編税制、グループ法人税制及びグループ通算制度の 現行法上の問題点と今後の課題 【第4回】 「無対価組織再編成、グループ法人税制及び株式交換等」 公認会計士 佐藤 信祐 6 無対価組織再編成 平成22年度税制改正により無対価組織再編成の明確化が図られ、対価の交付を省略したと同視することができる場合を条文に限定列挙し(法令4の3)、それ以外の場合には、非適格組織再編成に該当するという制度に改められた(※1)。 (※1) 佐々木浩ほか『平成22年版改正税法のすべて』320-321頁(大蔵財務協会、平成22年)。 この点につき、佐々木浩税理士は、「今は、段階を追って処理をしましょうということですね。将来的には、省略形にこだわらなくてもよいのではないかということになることもあるかもしれませんが。」(※2)と述べられている。つまり、対価の交付を省略したと同視することができる場合に限定しないことも、立法論としては可能であると言える。 (※2) 佐々木浩(発言)仲谷修ほか編『企業組織再編税制及びグループ法人税制の現状と今後の課題』57頁(大蔵財務協会、平成24年)。 そして、平成29年度税制改正により、適格合併に該当する現金交付型合併を行った場合には、法人サイドでは適格合併として処理しながらも、株主サイドでは株式譲渡損益を実現させるという制度となった(法法61の2②)。そのため、省略形でない無対価合併を行ったとしても、法人サイドでは適格合併として処理しながらも、株主サイドでは譲渡損益を実現させるという制度にすることに違和感がなくなったということが言える。 むしろ、合併法人が被合併法人の発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上に相当する数又は金額の株式又は出資を有する場合には、1株当たり1円という軽微な金銭を交付する場合には適格合併となり、まったく交付しなければ非適格合併になってしまうことから、1株当たり0円の金銭を交付したと考えることにより、省略型でない無対価組織再編成についても、適格組織再編成に該当させることができるようにすることで、整合性の取れた制度にすることができると考えられる。 なお、被合併法人の株主に1円を交付する適格合併を行った場合には、増加すべき資本金等の額から被合併法人の株主に交付する金銭の額を減算するため(法令8①五)、被合併法人の資本金等の額が100円である場合には、合併法人において、以下の仕訳を行うことになる。 【合併受入仕訳】 ① 資産及び負債の引継ぎ ② 抱き合わせ株式の消却 これに対し、省略形でない無対価合併を適格合併として処理した場合における税務上の仕訳は以下のようになると思われる。 【合併受入仕訳】 ① 資産及び負債の引継ぎ ② 抱き合わせ株式の消却 このように、吸収合併、新設合併、株式交換及び株式移転については、資本金等の額から減算すべき金額を調整すれば済むことから、合併法人、株式交換完全親法人及び株式移転完全親法人の受入処理ができないという問題は生じない。 これに対し、現金交付型分割及び省略型でない無対価分割については、分割法人において簿価で資産及び負債を譲渡したものとみなすというだけでは済まない問題がある。なぜなら、分割により資産300円及び負債200円を移転し、対価として500円を交付した場合には、差額の400円についての譲渡損益を繰り延べるという仕訳にならざるを得なくなり、対価を交付しなかった場合には、500円の寄附金を認識したうえで、差額の400円についての譲渡損益を繰り延べるという仕訳にならざるを得なくなるからである。 【分割法人(500円を交付した場合)】 【分割法人(省略型でない無対価合併)】 この場合に、現行法上のグループ法人税制のように、時価で資産及び負債を譲渡したものとみなして譲渡損益を繰り延べるという税制にするという考え方もあるが、簿価で資産及び負債を譲渡したものとみなして譲渡損益を繰り延べるという税制にするという考え方もあり得る。 この点については、現金交付型分割及び省略型でない無対価分割については、分割法人においては投資が清算されているものの、グループ全体からすれば投資が清算されたわけではないという整理になると思われるため、時価で資産及び負債を譲渡したものとみなして譲渡損益を繰り延べるという税制にすべきであると思われる。そうなると、組織再編税制ではなく、グループ法人税制により解決すべき問題ということになるため、グループ法人税制の範囲と金銭等不交付要件が緩和される範囲を一致させる必要があると考えられる。 7 グループ法人税制の範囲を拡大する問題点 グループ法人税制の範囲を「発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上に相当する数又は金額の株式又は出資を保有する関係のある法人に対する資産の譲渡」にまで広げ、金銭等不交付要件の緩和、省略型でない無対価組織再編成の緩和を行うとなると、避けて通れない議論として、例えば、少数株主が発行済株式総数の100分の10に相当する数の株式を保有している場合において、譲渡損益のうち100分の90に相当する金額を繰り延べるのか、譲渡損益の全額を繰り延べるのかという議論である(※3)。現行法上、吸収合併及び株式交換についてのみ金銭等不交付要件が緩和された理由も、こういった議論を避け、簡易な税制にするためであると考えられる。 (※3) 佐々木前掲(※2)74-76頁参照。 この点につき、移転資産に対する支配が継続しているという理由により譲渡損益を繰り延べるということであれば、少数株主がいることを理由として譲渡損益の一部を実現させる必要はないと考えられる。むしろ、少数株主がいることを理由として譲渡損益の一部を実現させるとなると、移転した資産のうち一部について支配が継続していないという理論構成が必要になるため、現行法とは異なるロジックによりグループ法人税制を整理しなおす必要が生じてくる。 さらに、グループ通算制度のように損益通算をするわけではないことから、繰り延べられた譲渡損益に相当する部分の金額を適正に分配する必要もないし、少数株主との間に利益相反が生じることもないため、譲渡損益の全額を繰り延べる制度になったとしても、不都合はないと思われる。 8 株式交換及びスクイーズアウト 株式交換等(※4)を行った場合において、支配関係内の株式交換等に該当するかどうかは、株式交換等の直前に支配関係があり、株式交換等後に支配関係が継続することが見込まれている必要がある(法令4の3⑲)。 (※4) 株式交換及びスクイーズアウトを総称したものを「株式交換等」という(法法2十二の十六)。 そのため、株式交換等完全子法人となる法人の発行済株式総数の100分の50に相当する数の株式を取得してから株式交換等を行うことにより、支配関係内の株式交換等に該当させることができる。さらに、発行済株式総数の3分の2以上に相当する数の株式を取得してから株式交換等を行った場合には、金銭等不交付要件も課されないことから、容易に適格株式交換等に該当させることができる。 すなわち、買収会社が被買収会社の支配株主から被買収会社株式を取得した後に、少数株主をキャッシュアウトするために株式交換又はスクイーズアウトを行うという典型的なM&A手法が税制適格要件を満たすようになっていることから、本来、非適格株式交換等として課税の対象にすべき取引というのが想定しがたいという問題がある。 それだけでなく、株式交換及びスクイーズアウトに対しては、そもそも資産の移転を伴わない有価証券取引を組織再編税制の対象にする必要があったのかという疑問がある(※5)。そして、資産の移転を伴わない有価証券取引であっても、時価評価課税の対象にするというのであれば、相対取引により発行済株式又は出資の全部を取得するという行為に対しても時価評価の対象にすべきであるという議論も考えられる。 (※5) 朝長英樹『現行税制の現状と課題(組織再編成税制編)』380頁(平成29年、新日本法規)。 さらに、令和元年の会社法改正により導入された株式交付の制度にまでその議論を発展させるのであれば、株式交付により発行済株式のうち相当部分を取得する場合にも時価評価の対象にすべきという議論にもなるし、相対取引により発行済株式又は出資のうち相当部分を取得する場合にも時価評価の対象にすべきという議論にもなる。 すなわち、現行法上、グループ通算制度の加入に伴う時価評価課税が導入されているが(法法64の12)、これをさらに広げ、グループ法人税制の加入に伴う時価評価課税を導入すべきであるという議論も考えられるのではなかろうか。具体的には、発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上に相当する数又は金額の株式又は出資を取得した場合にグループ法人税制に加入させ、かつ、グループ法人税制の加入に伴う時価評価課税を課すことができれば、どのような手法により株式を取得したとしても時価評価課税の対象になることから、株式交換、スクイーズアウト、株式交付及び相対取引による株式購入との間で整合性の取れた制度にすることができる。 さらに発展させれば、グループ内の適格組織再編成を「発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上に相当する数又は金額の株式又は出資を保有する関係のある法人との間で行われる組織再編成」としたうえで、グループ法人税制の範囲も同様にしてしまえば、合併の直前に発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上に相当する数又は金額の株式又は出資を保有していることを理由として適格合併に該当した場合には、グループ法人税制に加入した時点で時価評価課税が課されていることから、繰越欠損金の引継制限、使用制限及び特定資産譲渡等損失額の損金不算入(法法57③④、62の7)を課すべきなのかという議論にまで繋がっていく(法令112の2⑥⑦参照)。 この点については、グループ通算制度の加入に伴う時価評価課税(法法64の12)、グループ通算制度への繰越欠損金の持込制限及び特定欠損金の制度(法法57⑧、64の6①③、64の7②三、64の14など)を分析する必要があるため、本連載を通じて検討を行っていきたい。 このように、グループ通算制度の一部をグループ法人税制に導入した場合には、組織再編税制への影響がかなり大きくなると思われるが、本連載においては、グループ通算制度の加入又は離脱における時価評価課税、離脱法人の株式に係る帳簿価額修正をグループ法人税制に導入することによる影響についても触れていきたいと思う。 * * * 次回では、株式移転税制について解説を行う予定である。 (了)
「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例90(法人税)】 税理士 齋藤 和助 《基礎知識》 ◆農地所有適格法人の肉用牛の売却に係る所得の課税の特例(措法67の3①) 農地所有適格法人が、昭和56年4月1日から令和6年3月31日までの日を含む各事業年度において、定められた方法により肉用牛を売却した場合において、その売却した肉用牛のうちに免税対象飼育牛(売却価額が100万円(交雑種80万円、乳用種50万円)未満である肉用牛等をいう。以下同じ)があるときは、その農地所有適格法人のその免税対象飼育牛の売却による利益の額(1,500頭を限度とする)に相当する金額は、その事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入する。 ◆「肉用牛の免税特例」の適用要件(措法67の3③) 「肉用牛の免税特例」は、確定申告書等に損金の額に算入される金額の損金算入に関する申告の記載があり、かつ、当該確定申告書等にその損金の額に算入する金額の計算に関する明細書並びに免税対象飼育牛の売却が定められた方法により行われたこと及びその売却価額その他一定の事項を証する売却証明書の添付がある場合に限り、適用する。 この場合において、特例により損金の額に算入される金額は、その申告に係るその損金の額に算入されるべき金額に限るものとする。したがって、更正の請求による免税対象飼育牛の追加適用は認められない。 (了)