日本の企業税制 【第81回】 「令和元年の会社法改正を受けた税制措置と今後の動向」 -株式の無償交付による役員報酬等- 一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 小畑 良晴 昨年12月11日に会社法の一部を改正する法律(以下「改正会社法」)が公布された。 今回の改正は、公布の日から1年6ヶ月以内の政令で定める日から施行されることが予定されている。なお、株主総会資料の電子提供制度の創設等の一部の改正については、公布の日から3年6ヶ月以内の政令で定める日から施行されることが予定されている。 改正の内容は多岐にわたるが、株式の無償交付による役員報酬に関しては、令和2年度税制改正により既に手当がなされ、また、株式会社が他の株式会社を子会社化するに当たって、自社の株式を当該他の株式会社の株主に交付することができる制度が創設されることへの税制上の対応については、令和3年度改正の課題となっている。 〇株式の無償交付による役員報酬 改正会社法では、上場会社が業績等に連動した報酬等をより適切かつ円滑に取締役に付与することができるようにするため、上場会社が取締役の報酬等として株式の発行等をする場合には、金銭の払込み等を要しないこととする、つまり、取締役等の報酬として株式を無償交付することを認める規定が設けられた。 従来、法人からその法人の役員等にその役員等による役務提供の対価として交付される一定期間の譲渡制限その他の条件が付されている株式(以下「特定譲渡制限付株式」)については、譲渡制限期間中の処分が制限され、また、無償取得事由に該当した場合に没収される可能性があることから、特定譲渡制限付株式に関するその役員等における所得税の課税については、その特定譲渡制限付株式の「譲渡制限が解除された日」における価額が、所得税法上の収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額とされるとともに、その「譲渡制限が解除された日」が、その所得の収入金額の収入すべき時期とされている(所得税法施行令84①)。 一方、特定譲渡制限付株式を交付する法人においては、その役員等における所得税の課税時期として「給与等課税額が生ずることが確定した日」にその役員等から役務提供を受けたものとして、その役務提供に係る費用の額を、同日の属する事業年度において損金の額に算入することとされている(法人税法54①)。 令和2年度税制改正では、まず、所得税、法人税ともに、特定譲渡制限付株式として、個人に生ずる債権の給付と引換えに交付されるものその他その債権を消滅させるために給付されるもののほか、その譲渡制限付株式が実質的にその役務の提供の対価と認められるものである場合(つまり無償発行による譲渡制限付株式)が追加された(所得税法施行令84①、法人税法54①)。 併せて、所得税においては、特定譲渡制限付株式の交付を受けた個人が譲渡についての制限が解除された日前に死亡した場合において、役員等の死亡の時に発行法人等が無償で取得することとなる事由に該当しないことが確定しているその特定譲渡制限付株式の取扱いについて見直しが行われた。 すなわち、改正前は、死亡直後に行われる取締役会において譲渡制限解除事由に該当することを確認した後に譲渡制限が解除され、その日の価格により死亡した役員等の相続人に一時所得として課税されていたところ、改正後においては、その役員等の死亡の日における価額をその特定譲渡制限付株式の経済的な利益の価額及び取得価額として所得税を課税することとされた(所得税法施行令84①、109)。 なお、報酬等として金銭の払込み等を要しないで株式が発行された場合の会計処理について、会計基準の開発が必要であることから、企業会計基準委員会(ASBJ)は、「ストック・オプション等に関する会計基準」をベースに検討を進めている。 ストック・オプションと株式の無償交付とを比較すれば、報酬として付与するものである点、インセンティブ効果を有するものである点、企業の株価に応じてその価値が変動する点において共通しており、事後交付型の無償交付においては権利確定条件が成就しなければ権利を喪失し、またその権利を行使しなければ株式が発行されない点でもストック・オプションと一致している。なお、事前交付型の無償交付については、株式交付時点で株主となり配当請求権や議決権を有することになる点で相違がみられる。 このようにストック・オプションとほぼ同様の構造をもつものと考えられることから、費用の認識や測定についてはストック・オプション会計基準をベースにし、事前交付型・事後交付型の株主となるタイミングの差異については、株主資本とするか、ストック・オプションのように株主資本以外の純資産とするかという取扱いの差異として処理することが考えられるのではないか。 〇自社株式を対価とする子会社化 改正会社法では、株式会社が他の株式会社を子会社化するに当たって、自社の株式を当該他の株式会社の株主に交付することができる制度が創設された。 この点に関して、令和2年度税制改正では特段の手当はなされなかったが、与党の令和2年度税制改正大綱では、「自社株式を対価とした公開買付け等に係る課税のあり方については、会社法制の見直しを踏まえ、組織再編税制等も含めた理論的な整理を行った上で、必要な税制措置について検討する」とされたところである。 すでに、平成30年度税制改正において創設された、特別事業再編を行う法人の株式を対価とする株式等の譲渡に係る譲渡所得等の課税の特例が、先行事例として存在している。 これは、自社株式を対価として他の会社の株式等を取得し、当該他の会社の経営資源を活用して成長発展分野における事業活動等を行う計画(産業競争力強化法に基づく「特別事業再編計画」)を認定し(令和3年3月31日まで)、認定を受けた計画に基づく株式等の取得に応じた当該他の会社の株主に生じる株式の譲渡損益の計上を繰り延べる税制措置が受けられる制度である(租税特別措置法37の13の3①、66の2の2①)。 ただし、この制度は「特別事業再編計画」の認定を受けることが要件とされ、使い勝手の面で難点があることは否めず、残念ながら計画認定件数が多数に及んでいるとは言い難い状況にある。 この制度が創設された時点では、会社法の改正がなされていなかったことから、「特別事業再編計画」の認定が必要とされたことは理解できるが、改正会社法を踏まえた令和3年度改正では、計画認定を前提としない制度になることが期待される。 (了)
これからの国際税務 【第20回】 「電子経済課税ルール確立への最終局面における難題」 千葉商科大学大学院 客員教授 青山 慶二 1 はじめに G20の政治的リーダーシップの下で、140ヶ国に及ぶ包摂的枠組国間で2020年内の合意達成に向け行われていた電子経済課税ルールに関する協議が、難題に直面している。 今年1月末に、電子経済がもたらす莫大な超過収益の一部について、市場国に新たに課税権を付与する具体策の枠組みが合意され、その内容は2月開催のG20財務大臣中央銀行総裁会議において承認された。 合意された枠組みは、課税権の新たな付与の理論的根拠として、市場国の①ユーザー参加及びそのデータに着目する英国提案、②マーケティング無形資産の存在に着目する米国提案、更には、③重要な経済的存在(顧客、契約など)に着目するインドなど途上国提案のそれぞれを統合した「統合的アプローチ」と呼ばれるものである。 本稿では、この統合的アプローチ提案とそれに対し米国が提示した代替案を紹介し、当初目的としてきた今年中の新たな課税権付与を目指す国際合意を難しくしている状況を検証する。 2 統合的アプローチの理念 (1) 新しい課税権付与を必要とする対象取引の具体例 〈Googleなどの検索エンジンに関連するビジネスモデル〉 [ユーザー所在地であるA国には、従来課税権が付与されない状況] (2) 統合的アプローチの考え方 電子経済に適用されるべき国際課税ルールとして、次の2つの柱からなる提案が行われているが、市場国に新たな課税権を付与する統合的アプローチの構想は、第1の柱の「利益A」に関わっている。 ① 第1の柱 多国籍企業の所得について、新たに、自動化されたデジタルサービス提供ビジネス及び消費者向けビジネスから生じるグループ全体の利益から算定される超過収益の一部を、「利益A」と呼称する課税所得として、市場国に配分する。 〈新しく配分される利益Aのイメージ図〉 [注意点] ② 第2の柱 多国籍企業による低課税国への利益移転リスクに備えるもので、合算ルールと損金算入否認ルールに分かれるが、いずれも、既存の租税回避否認ルールの系列に属するものである。なお、合算ルールにみられるミニマムタックスの考え方は、米国が税制改正で導入したGILTI税制を参照したものと受け止められている。 3 米国ムニューシン財務長官の提案 ムニューシン財務長官は、昨年12月に、EU諸国で実施されつつある1国限りのデジタルサービス税へのけん制もしながら、第1の柱をセーフハーバー・ルールとして位置づけるべきとする米国の立場を、グリアOECD事務総長宛て書簡で公開した。 「セーフハーバー」とは、納税者が、通常の課税方式に加えて選択しうる課税手法であるが、包摂的枠組国は、第1の柱の立案趣旨を無意味にしかねないものとして懸念を示している。書簡では、第1の柱は、既存の独立企業原則とネクサス(課税上のつながり)に関するルールから離れており、納税者の予測可能性を損なうため、より時間をかけた検討が必要とも主張している。 その後、3月末に米国では、日本で言うところの経団連に相当する米国CIBから財務長官宛てに、進行中の第1の柱と第2の柱の検討を6ヶ月延期する要請がなされ、6月にはムニューシン長官は、英、仏、伊、西の財務長官宛ての書簡で、実質的に米国企業に新たな負担を求める第1の柱の検討は延期すべき(第2の柱のミニマムタックス構想には賛意)と主張した。 なお、OECDでは、これらの動向を受けて、既に包摂的枠組による政策合意のスケジュールを当初の7月から10月初めに延期している。 4 今後の見通し 本課税問題の最大のステークホルダーである米国からのセーフハーバー構想の提出を受けている現在の検討状況からは、年内は、第1の柱よりも第2の柱を中心とした国際合意が先行するのではないかとの見通しが有力になりつつある。 なお、技術的な検討は進展しているが、第1の柱の利益Aに関しては、グループ利益を最終的に個々の市場国へ配分されるまでに、3段階(①全体利益から超過収益を取り出す段階、②取り出した超過収益からオール市場国に割り当てる超過収益を取り出す段階、③市場国利益を各市場国に配分する段階)を経る必要があり、いずれの算定過程でも、分割のための定率や算式が必要とされ、これらに関する意見集約は容易ではない。 また、政府により規制されている産業などを含めて、適用除外とされるビジネスをどのように決定するのかも難問である。そのような状況をふまえると、これまで第1の柱の後ろに隠れていた第2の柱を先行合意する可能性は、十分想定されるであろう。 ただし、6月のムニューシン書簡後に発表されたOECDグリア事務総長声明文では、第1の柱を含めたパッケージ合意を年末までに得ることが、各国で進行中の単独措置(貿易措置の緊張化を伴う)を阻止する上で必須であるとする従来の立場を再確認している。 (了)
Q&Aでわかる 〈判断に迷いやすい〉非上場株式の評価 【第5回】 「〔第1表の1〕法人たる同族関係者の範囲と株主判定」 税理士 柴田 健次 Q 下記の通り、経営者甲が所有しているA社株式の全て(議決権総数の14%に相当する株式)を後継者乙に贈与する場合において、A社株式の評価方式は原則的評価方式が適用されるのでしょうか。それとも特例的評価方式(配当還元価額等)が適用されるのでしょうか。 なお、B社の株主はいずれもA社の役員及び従業員であり、B社の議決権行使は甲に一任されています。D社はA社の主要な取引先であり、甲及び乙の同族関係者には該当しないものとします。 A 乙の同族関係者としてC社も含まれますので、乙は同族株主に該当し、議決権割合5%以上となる株式を取得していますので、原則的評価方式が適用されます。 なお、同族株主がいる場合の株主判定の手順については、本連載【第1回】の「同族株主がいる場合の株主判定の手順」をご確認ください。 ◆ ◆ ◆ ① 同族株主の判定 評価通達188(1)によれば、「同族株主のいる会社の株式のうち、同族株主以外の株主の取得した株式」は、特例的評価方式(配当還元価額等)が適用されるものとされています。 そのため、乙の同族関係者の範囲にC社が含まれていなければ、乙は同族株主以外の株主に該当し、特例的評価方式(配当還元価額等)が適用されますが、C社が含まれていれば同族株主に該当し、議決権割合5%以上となる株式を取得していますので、原則的評価方式が適用されることになります。 下記②における「[付表]同族関係者の範囲等」の「2 法人たる同族関係者」の(注2)に記載の通り、甲の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意しているB社が有しているC社の議決権は甲が有するものとみなして、C社を支配しているかどうかの判定を行いますので、C社は甲に支配されている会社に該当することになります。したがって、C社は乙の同族関係者に該当することになり、原則的評価方式が適用されることになります。 ② 同族関係者の範囲 同族関係者は、法人税法施行令第4条(同族関係者の範囲)に規定する特殊の関係のある個人又は法人をいいます(評価通達188(1))。具体的には、下記の通りとなります。 (出典) 国税庁「取引相場のない株式(出資)の評価明細書の記載方法等(令和元年10月1日以降用):[付表]同族関係者の範囲等」 ③ 同一の内容の議決権を行使することに同意している者の判定 上記「[付表]同族関係者の範囲等」の「2 法人たる同族関係者」の(注2)で規定されている「同一の内容の議決権を行使することに同意している者」の判定は、契約、合意等により、個人又は法人との間で当該個人又は法人の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している事実があるかどうかにより判定することとされています(法基通1-3-7)。 また、同通達の注書きにおいて、「単に過去の株主総会等において同一内容の議決権行使を行ってきた事実があることや、当該個人又は法人と出資、人事・雇用関係、資金、技術、取引等において緊密な関係があることのみをもっては、当該個人又は法人の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者とはならない。」とされています。 本問の場合には、B社の株主であるA社役員及び従業員の議決権行使が甲に一任されていることから「同一の内容の議決権を行使することに同意している者」に該当することになります。 ☆実務上のポイント☆ 法人たる同族関係者の範囲については、支配関係があるかどうかを確認する必要があり、その範囲をよく確認しておく必要があります。 (了)
相続税の実務問答 【第49回】 「贈与税額控除により相続税額が算出されない場合の相続税の申告義務」 税理士 梶野 研二 [答] 一昨年のお母様からの贈与に係る贈与税額を控除すると納付すべき相続税額が算出されません。贈与税額控除の適用は申告書の提出が要件とはされていませんので、あなたは相続税の申告書を提出する必要はありません。 ● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ● 1 相続税の申告書の提出義務 相続税の申告書の提出義務のある者は、その相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に課税価格、相続税額その他財務省令で定める一定の事項を記載した申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならないこととされています(相法27①)。 相続税の申告書の提出を要する者は、次のいずれにも該当する個人です。ただし、持ち分の定めのない法人、人格のない社団若しくは財団又は特定の一般財団法人等については、相続税法の規定により、例外的に個人とみなされて相続税の納税義務者となることがあります。 2 贈与税額控除 相続又は遺贈により財産を取得した者が相続の開始前3年以内に被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合、その者については、当該贈与により取得した財産の価額を相続税の課税価格に加算した価額を相続税の課税価格とみなして相続税額の計算をするとともに、その贈与について課せられた贈与税があるときは、算出された相続税額から、当該贈与を受けた財産に係る贈与税の税額を控除した金額が、その者の納付すべき相続税額となります(相法19①)。 なお、この贈与税額の控除は相続税の申告書の提出の有無にかかわらず適用されます。 3 ご質問の場合 あなたの場合には、相続により取得した財産の価額の合計額に、一昨年にお母様から贈与を受けた財産の価額300万円を加算して相続税の課税価格を求めますと4,300万円となります。他に相続又は遺贈によりお母様の財産を取得した方はいませんので、課税価格の合計額は、4,300万円です。相続税の基礎控除額4,200万円(3,000万円+600万円×2人)を控除した後の100万円を基に相続税額の計算を行いますと、あなたの相続税額は10万円と算出されます。 しかしながら、一昨年のお母様からの贈与に係る贈与税額19万円を控除すると、納付すべき相続税額は算出されません。贈与税額控除の適用は相続税の申告書の提出を要件とはしていませんので、あなたは相続税の申告書を提出する必要はありません。 なお、あなたの場合、既に納付している贈与税額(19万円)が算出された相続税額(10万円)を上回りますが、この贈与税に係る贈与はいわゆる暦年贈与であって、相続時精算課税制度を選択したものではありませんので、差額の9万円の還付を受けることはできません。 (了)
令和2年度税制改正における 『連結納税制度』改正事項の解説 【第4回】 「所得金額及び法人税額の計算(その1:損益通算、欠損金の通算)」 公認会計士・税理士 税理士法人トラスト 足立 好幸 [7] 所得金額及び法人税額の計算 (1) 損益通算 ① 所得事業年度の損益通算による損金算入 通算法人の所得事業年度終了日(基準日)において、他の通算法人の基準日に終了する事業年度において通算前欠損金額が生ずる場合には、その通算法人の所得事業年度の通算対象欠損金額は、その所得事業年度の損金の額に算入される(法法64の5①②)。 すなわち、通算グループ内の欠損法人の欠損金額の合計額が、所得法人の所得の金額の比で配分され、その配分された通算対象欠損金額が所得法人の損金の額に算入される。 ② 欠損事業年度の損益通算による益金算入 通算法人の欠損事業年度終了日(基準日)において、他の通算法人の基準日に終了する事業年度において通算前所得金額が生ずる場合には、その通算法人の欠損事業年度の通算対象所得金額は、その欠損事業年度の益金の額に算入される(法法64の5③④)。 すなわち、上記①で損金算入された金額の合計額と同額の所得の金額が、欠損法人の欠損金額の比で配分され、その配分された通算対象所得金額が欠損法人の益金の額に算入される。 [損益通算の計算例1] [損益通算の計算例2] 上記の用語の定義は次のとおりである。 (※) 通算子法人については、損益通算や欠損金の通算など通算申告を行う通算事業年度は通算親法人の事業年度終了日に終了する事業年度となる。この場合、「通算親法人の事業年度終了時に通算親法人との間に通算完全支配関係がある通算子法人の事業年度は、その終了日に終了する」となるため、損益通算又は欠損金の通算の対象となる通算子法人は、通算親法人の事業年度終了時に通算完全支配関係がある通算子法人となる。 (2) 欠損金の通算 通算グループ全体の繰越欠損金の控除限度額は、各通算法人の欠損金の繰越控除前の所得金額の50%の合計額となる(法法57①、64の7①)。 ただし、通算法人が中小法人(※1)、更生法人等(※2)及び新設法人(※1)に該当する場合は、その該当する通算法人については、所得金額の50%ではなく、所得金額の100%を合計する(法法57⑪)。 したがって、通算グループ全体の控除限度額は連結納税制度と同様となる。 (※1) グループ通算制度の場合、全ての法人が単体納税の中小法人又は新設法人に該当する場合に、通算グループ内の全ての法人が中小法人又は新設法人に該当する。 (※2) 更生法人等の判定は各法人について行う。 各通算法人の繰越欠損金の控除額については、次の手順で計算を行う(法法64の7①)。 [手順1]各通算法人の10年内事業年度の繰越欠損金の配分(期首残高の調整) 各通算法人の適用事業年度開始日前10年以内に開始した各事業年度において生じた繰越欠損金は、特定欠損金額と非特定欠損金額の合計額とする(法法64の7①二)。 (※3) ここでいう各通算法人の損金算入限度額は、各通算法人ごとに計算される損金算入限度額からその非特定欠損金額の発生事業年度前に生じた繰越欠損金の控除額とその非特定欠損金額の発生事業年度に生じた特定欠損金額の控除額を控除した後の残額となる(※4)。つまり、各通算法人の損金算入限度額の残額となる。 (※4) この点で、繰越欠損金は、発生事業年度が古いものから、かつ、特定欠損金額から控除されることになる。 [手順2]各通算法人の繰越欠損金の損金算入限度額の計算(繰越控除額の計算) 各通算法人の繰越控除額は、それぞれ次の金額を限度とする(法法64の7①三)。 (※5) ここでいう各通算法人の損金算入限度額の合計額とは、各通算法人の損金算入限度額の合計額から各通算法人のその特定欠損金額の発生事業年度前に生じた繰越欠損金の控除額を控除した後の残額となる。つまり、通算グループ全体で計算した損金算入限度額の残額となる。 (※6) ここでいう各通算法人の特定欠損金額の控除後の損金算入限度額の合計額とは、各通算法人の損金算入限度額の合計額から各通算法人の「その非特定欠損金額の発生事業年度前に生じた繰越欠損金の控除額とその非特定欠損金額の発生事業年度に生じた特定欠損金額の控除額の合計額」の合計額を控除した後の残額となる。つまり、通算グループ全体で計算した損金算入限度額の残額となる。 [手順3]各通算法人の繰越欠損金の解消額の計算(繰越欠損金の期末残高の計算) 各通算法人の特定欠損金額及び配分前の非特定欠損金額の期首残高のうち、適用事業年度に解消された金額はそれぞれ次の金額とする(法法64の7①四)。 したがって、各通算法人の繰越欠損金の当期控除額と当期減少額が一致しない場合があり、その差額は通算税効果額(グループ通算制度を適用することにより減少する法人税及び地方法人税の額に相当する金額として通算法人間で授受される金額)となる(法法26④、38③)。 そして、各通算法人の特定欠損金額及び配分前の非特定欠損金額の期首残高から適用事業年度以前に解消された金額を除いた金額が期末残高となり、適用事業年度後の事業年度において繰越控除されることになる。 [欠損金の通算の計算例] 上記の用語の定義は次のとおりである。 (了)
〈ポイント解説〉 役員報酬の税務 【第16回】 「役員給与における隠ぺい又は仮装行為の具体例」 税理士 中尾 隼大 ○●○● 解 説 ●○●○ (1) 役員給与における隠ぺい又は仮装行為とは 法人税法上、役員給与に係る隠ぺい又は仮装行為は、以下の通り規定されている(※1)。 (※1) なお、法の用語は「隠蔽」であるが、本稿では引用箇所を除き「隠ぺい」と表記している。 この「隠蔽し、又は仮装し」という表現が国税通則法68条1項に定める文言と同一であり、このような行為をした場合に重加算税が賦課決定されることとなる。この規定は、売上を除外して役員に対して定時・定額で給与を支払う場合などを想定して設けられたと説かれている(※2)。 (※2) 八ッ尾順一『事例からみる重加算税の研究(第6版)』(清文社、2018年)72頁。なお、国税庁「法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)」(課法2-8他)においても、「簿外資金(確定した決算の基礎となった帳簿に計上していない収入金又は当該帳簿に費用を過大若しくは架空に計上することにより当該帳簿から除外した資金をいう。)をもって役員賞与その他の費用を支出していること」と明記されている(第1、1、(5))。 重加算税賦課要件に関して本稿では詳述しないが、日本税理士会連合会税制審議会が「その意義や態様について現行法令は極めて抽象的」と指摘している通り(※3)、役員給与に関してもどのような場合に隠ぺい又は仮装行為とされるのかが分かりにくい。そこで、以下(2)にて裁判例や裁決例を紹介する。 (※3) 日本税理士会連合会税制審議会「重加算税の問題点について-平成11年度諮問に対する答申-(平成12年2月14日)」1頁 (2) 役員給与に関して隠ぺい又は仮装行為とされた事例 ① 法人が事実上管理する代表者父母の名義預金口座に支給した役員給与等につき、帳簿書類を仮装して支給したと認定されたケース(東京地裁平成24年9月21日判決(※4)、東京高裁25年2月28日判決(※5)) (※4) 税務訴訟資料262号順号12044、TAINS:Z262-12044 (※5) 税務訴訟資料263号順号12155、TAINS:Z263-12155 本件は、代表者父母に対して支給した役員給与等につき、支給した事実のない架空のものであるとされた更正処分等の適否が争われた事案である。裁判所は、法人である納税者が代表者父母名義の口座を管理していたことを重視し、名義預金の預金者は法人であるから役員給与等の支給実態はなく架空のものであると認定した。 なお、東京国税局課税第一部国税訟務官室において、本件を題材として「納税者の供述等が得られた場合であっても、その供述等のみを課税処分の根拠とせずに、その供述等を裏付ける事実や周辺事情等についても証拠を収集し、保全しておくことが重要である」との周知がなされている(※6)。 (※6) TAINS:判決速報1263 ② 内縁の妻に対して支給した給与が、法人代表者への役員給与であるとされた上で、事実を仮装経理することにより支給したと認定されたケース(東京地裁令和元年5月30日判決(※7)、東京高裁令和2年1月16日判決(※8)) (※7) 判例集未搭載、TAINS:Z888-2279 (※8) 判例集未搭載、TAINS:Z888-2294 本件は、法人が代表者の内縁の妻に対して負担した給与は、内助の功に報いるための負担にすぎないことを裁判所が重視し、当該代表者が個人的に負担すべきであったとした上で、出勤簿の作成や厚生年金保険・健康保険の被保険者資格を取得させた上で給与として経理し、当該給与支給を損金算入したこれらの行為が事実を仮装して経理したと認定されている。 ③ 実際は開催していない臨時株主総会の議事録を後日付により作成した行為が事実の仮装であるとされた事例(国税不服審判所平成20年4月24日裁決(※9)) (※9) TAINS:F0-2-465 本件は、役員退職給与の額の損金算入時期について定めた法人税基本通達9-2-18(平成19年3月13日課法2-3ほかによる改正前のもの。現:法基通9-2-28)に沿うことを目的に、臨時株主総会議事録を後日付により作成していた事例である。 なお、本件とは別に、「株主総会の議事録の作成の有無については、株主総会の決議の効力には影響しないと解されて」おり、「同族会社にあっては、会社法に規定する株主総会の開催が必ずしも明確でない場合が多く、このような場合、株主総会の決議の有無は、株主総会が実質的に開催されたとみることができるかどうかにより判断すべきであると解される」とした上で、退職給与の額が確定した日を特定できる日記帳に高い信用性があると認め、事実の仮装がないとして重加算税賦課決定処分を取り消した事例もある(国税不服審判所平成21年11月11日裁決(※10))。 (※10) TAINS:F0-2-253 これらの事例に鑑みると、役員退職給与の額を確定させた日付について仮装して後日付により議事録を作成すると事実の仮装とされる反面、株主総会議事録の作成を失念していても、真実に基づき役員給与等を支給し、当該真実を証明できた場合には仮装行為に当たらないといえそうである。しかし、このようなリスクを負わないためには、株主総会議事録の作成は大前提であるといえよう。 (3) 留意点 これらの事例からは、役員の親族や特殊関係人が法人に対して労務提供をしていないという事実があり、なおかつ当該親族らに給与等を支給している場合に隠ぺい又は仮装行為が発生しやすいことが分かる。 したがって、役員給与や役員退職給与を支給するのであれば、法人に実在し、かつ実際に貢献のある役員本人に限るべきであるし、株主総会議事録も後日付で作成することは控え、真に確定した日を以て議事録を作成して処理するべきである。 当然のことではあるが、このような心掛けの積み重ねが、来たる税務調査にて清廉潔白を主張できる礎となると思われる。 (了)
給与計算の質問箱 【第7回】 「従業員が役員に昇格した際の賞与、退職金の注意点」 税理士・特定社会保険労務士 上前 剛 Q 2020年7月1日付けで勤続10年の従業員Aが役員に昇格しました。代表権の無い取締役であり、使用人兼務役員ではありません。なお、当社の事業年度は8月1日から7月31日です。 このAの昇格に伴う、次の①~③の場合について教えてください。 A ①~③につき次のとおりとなる。 * * 解 説 * * ① 従業員賞与 従業員が役員となった場合において、その直後に支給した賞与の額のうち従業員であった期間に係る賞与の額として相当であると認められる部分の金額は、従業員に対して支給した賞与として認められる(法基通9-2-27)。 役員に就任したのが7月1日、賞与の支給日が7月31日なので直後といえるし、他の従業員と同様に従業員の期間に係る賞与を支給するので問題ない。会社は7月31日に50万円から健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、源泉所得税を控除してAの口座へ振り込む。後日、会社は賞与支払届を年金事務所へ提出する。 ② 役員賞与 役員賞与を損金算入するためには、「事前確定届出給与に関する届出書」を税務署へ提出し、かつ、届出書の記載通りに支給しなければならない。 今回のケースにおける事前確定届出給与に関する届出書の提出期限は、役員に就任した7月1日から1月を経過する日となる7月31日(臨時改定事由が生じた日から1月を経過する日)である。会社は事前確定届出給与に関する届出書を7月31日までに税務署へ提出し、7月31日に50万円から健康保険料、厚生年金保険料、源泉所得税を控除(労働者ではないため雇用保険料の控除は無し)してAの口座へ振り込む。後日、会社は賞与支払届を年金事務所へ提出する。 ③ 従業員退職金 従業員が役員となった場合において、従業員であった期間に係る退職金を支給したときは、支給日の属する事業年度の損金に算入する(法基通9-2-36)。 当社の事業年度は8月1日から7月31日なので、支給日(2020年7月31日)の属する2020年7月期の損金に算入する。仮に支給日が1日ずれて8月1日となった場合に退職金を未払計上して2020年7月期に損金に算入することはできない。 会社はAから「退職所得の受給に関する申告書」を7月31日までに提出してもらった場合、7月31日に50万円(退職所得0円のため源泉所得税の控除は無し)をAの口座へ振り込む。Aから退職所得の受給に関する申告書の提出が無かった場合、7月31日に50万円から102,100円(50万円×20.42%)の源泉所得税を控除した397,900円をAの口座へ振り込む。 (了)
収益認識会計基準と 法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第33回】 千葉商科大学商経学部准教授 泉 絢也 〈更なる検討〉 ~法人税法22条の2第3項は、2項が確定決算による収益経理を要請したことの意義を失わせるか~ 法人税法22条の2第2項は、(1項が定める引渡・役務提供基準ではなく)近接日基準による収益計上を認める条件として、確定決算による収益経理を求めている。これは、いわば、形式面・手続面において会計処理と税務処理の一致を求めるものであるが、その影響はさほど大きくはなさそうである。それは、法人税法22条の2第3項が申告調整による近接日基準の採用を認めているからである(本連載第30回参照)。 かように、法人税法22条の2第3項を適用すると、申告調整により、近接日基準を採用することができるのであるが、このことは、2項が確定決算による収益経理を要請していたことの意義を消失させるであろうか。 この点に関しては、法人税法22条の2第3項によって、2項で確定決算による収益経理を要件としていることの意味が完全に失われるわけでもないと考える。 近接日基準を適用して確定決算による収益経理をしている場合に、3項を適用して、他の近接日基準を採用することはできない(法法22の2③括弧書き)。この意味で、会計上採用する近接日基準と法人税法上採用する近接日基準とが異なるような事態は回避されることになり、会計と税務の収益計上時期が相違するという事態は避けられる。 例えば、次のようなケースで、第3期において、法人税法22条の2第3項を適用し、申告調整による益金算入が認められるか。 このケースでは、第1期において、近接日基準により確定決算で収益計上している。よって、法人税法22条の2第2項により、法人税法上も第1期で収益を計上することになる。その後、やはり、第3期において収益を計上することが妥当であると考えなおし、申告調整により、第3期において益金算入することが認められるか(収益計上処理をした第1期については、別途、更正の請求を行うことが考えられる)。 仮に認められるならば、会計処理(近接日①の属する第1期で収益計上)と税務処理(近接日の属する第3期で益金計上)が相違することになる。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 法人税法22条の2第3項は、その括弧書きにおいて、「当該資産の販売等に係る収益の額につき一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って・・・前項に規定する近接する日の属する事業年度の確定した決算において収益として経理した場合」には同項の適用がないことを明記している。 上記のケースは、この3項の適用除外のルールに該当するため、3項の適用はないことになる。 (了)
基礎から身につく組織再編税制 【第18回】 「適格合併を行った場合の申告調整(その2)」 ~親会社が子会社を吸収した場合~ 太陽グラントソントン税理士法人 ディレクター 税理士 川瀬 裕太 前回は、子会社同士が適格合併を行った場合の申告調整の具体例を取り上げました。 今回は、親会社が子会社を適格合併により吸収した場合の申告調整の具体例について解説します。 1 適格合併を行った場合の合併法人の処理 (1) 前提条件 〔被合併法人B社の最後事業年度の貸借対照表〕 【会計】 【税務】 この合併における会計上の資産・負債と税務上の資産・負債には、下記の差異が生じています。 (2) 会計処理 合併法人A社の会計処理は、下記のとおりです。 会計上は、子会社から受け入れた資産と負債との差額のうち株主資本の額と、親会社が合併直前に保有していた子会社株式(抱合株式)の適正な帳簿価額との差額を、特別損益に計上することとされています(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針206)。 (3) 税務処理 合併法人A社の税務処理は、下記のとおりです。 ① 資産・負債の取得価額 被合併法人が適格合併により合併法人にその有する資産・負債の移転をしたときは、最後事業年度終了時の帳簿価額による引継ぎをしたものとされるため、合併法人が受け入れる資産・負債の取得価額は、被合併法人における最後事業年度終了時の「帳簿価額」となります(法法62の2、法令123の3)。 この「帳簿価額」とは、税務上の帳簿価額をいうため、税務上否認した金額も含めて受け入れることとなります(法基通12の2-1-1)。 これより、合併法人A社が受け入れる資産の取得価額は、会計上の10,000と税務上否認した金額である減価償却超過額1,500の合計である11,500となります。 また、合併法人A社が受け入れる負債の価額は、会計上の5,000から税務上否認した金額である退職給付引当金500を差し引いた4,500となります。 ② 資本金等の額 合併法人において合併により増加する資本金等の額は、次のとおりです(法令8①五)。 (ア) 加算項目 (イ) 減算項目 (※) 「抱合株式」とは、合併法人が合併前から保有している被合併法人株式のことをいいます。 上記より合併法人A社において減少する資本金等の額は、500となります。 ③ 利益積立金額 合併法人において合併により増加する利益積立金額は、次のとおりです(法令9①二)。 (ア) 加算項目 (イ) 減算項目 上記より合併法人A社において増加する利益積立金額は、5,000となります。 ④ 株主としての処理 (ア) みなし配当 適格合併が行われた場合には、被合併法人の利益積立金額は合併法人に引き継がれ、被合併法人の株主に交付されないため、被合併法人の株主であるA社においてみなし配当は計上されません。 (イ) 譲渡損益 投資が継続していると認められる場合には、譲渡損益の計上を繰り延べることとされています(法法61の2②)。なお「投資の継続」とは、株主が金銭等の交付(株式以外の交付)を合併法人より受けていないことをいいます。 会計上、被合併法人の株主であるA社においてB社株式の譲渡損益(抱合株式消滅差益)が計上されたとしても、法人税法上は、合併によってB社株式の譲渡損益を計上することはできません。 (4) 会計処理と税務処理の調整 上記の合併法人A社の会計処理と税務処理を比較すると、差異が生じているため、調整する必要があります。 調整仕訳は次のとおりです。 会計上は、抱合株式消滅差益が収益に計上されているため、別表4にて所得を減算する処理が必要となります(下記(5)参照)。 その他の調整仕訳については、別表4で申告調整が必要なものはなく、別表5(1)のみで調整することとなります(下記(6)参照)。 (5) 別表4の処理 別表4の処理については、次のとおりです。 (6) 別表5(1)の処理 別表5(1)の処理については、次のとおりです。 (注) ※は調整仕訳により生じたものであることを表示するために記入しています。 ◆ポイント◆ ① 抱合株式消滅差益の「減」の欄に記載されている4,000は、別表4にて減算したものです。 ② 合併法人A社において増加する利益積立金額が5,000(9,000-4,000)、減少する資本金等の額が500となっているかを別表5(1)で確認することが重要です。 2 適格合併を行った場合の被合併法人における資産・負債の引継ぎ 適格合併があった場合には、被合併法人の有する資産・負債は、最後事業年度終了の時の帳簿価額による合併法人への引継ぎがあったものとされ、被合併法人において譲渡損益は生じないこととされています(法法62の2①)。 (了)
値上げの「理屈」 ~管理会計で正解を探る~ 【第4回】 「安全余裕率を把握する」 ~デートにおけるワインの選び方~ 公認会計士 石王丸 香菜子 登場人物 * * * どのような時でも順調に売上を計上できるに越したことはありませんが、昨今のような不透明な環境では、思いがけず売上が落ち込むことも少なくありません。どの程度までなら売上が落ち込んでも赤字にならないかを把握しておくと、経営上の目安になります。ハーブティー部門の決算書の内訳を見てみましょう。 《ハーブティー部門》 * * * 売上高が損益分岐点売上高からどれくらい離れているかを表す指標は、『』と呼ばれます。安全余裕率が大きいと、売上高が損益分岐点売上高を大きく上回っている、すなわち、多少の売上減では赤字転落しにくい状態を意味します。逆に、安全余裕率が小さいと、少しの売上減でも赤字になってしまうことになります。 同様に、フラワーショップ駅前店の先月の決算書から、損益分岐点売上高と安全余裕率を計算してみましょう。 《フラワーショップ駅前店》 * * * 仕出し弁当の価格や、レストランのコース料理価格・ドリンク価格など、複数の価格設定がされているシーンに遭遇することがありますね。例えば、デートで訪れたおしゃれなレストランで、次のリストからグラスワインを選ぶことになったとしましょう。ワインについては詳しくないとして、どのワインを選びますか? こんなシーンでは、たいていの人は真ん中の価格のワインを注文するものです。選択肢が3つある場合、人は極端な選択肢を避けて無難に真ん中を選ぶ傾向が強いようです。 商品の価格設定にあたっては、こうした人の心理を理解しておくとよいことがあります。あえて高価格の商品を設定しておくことで、顧客の選択を真ん中の価格の商品に誘導しやすくなるのですね。価格設定の際には、商品価格そのものの値上げや値下げを考えるだけでなく、商品価格の「見せ方」も工夫したいものです。 ・・・後日・・・ (了)