2026年8月20日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.682を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
日本の企業税制 【第154回】 「消費税減税に関する総理の決意表明に対する経済界の反応」 一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 魚住 康博 高市早苗総理大臣は7月30日、総理大臣官邸で「飲食料品に係る消費税率の引下げ」及び「給付付き税額控除」についての会見を行った。前日の社会保障国民会議の親会議において策定された「中間とりまとめ」では、消費税減税に関する与野党間の意見の相違が解消されないまま各党の主張が並記されていたことから、高市総理による決意表明が行われた。 総理会見に先立って、高市総理は自民党幹部に対して党内の意見集約を指示しており、8月5日の党内手続きを経て同日に政府での閣議決定に至ったことから、秋から始まる臨時国会への法案提出の準備が進められている。 国民会議では、2月に検討が開始されて以降、22回に及ぶ「給付付き税額控除等に関する実務者会議」と7回に及ぶ「有識者会議」が開催されており、短期間で精力的な検討が進められてきた。総理の決意表明で示された改正案は、国民会議の小野寺五典実務者会議議長による提案に基づいて、次のステップで進められる予定である。 〈今後のステップのイメージ〉 消費税減税に関しては、実務上で様々な影響が生じることが懸念されることもあり、今後の検討継続の必要性を含めて、経済界では総理の決意表明を受けたコメントを公表した。「給付付き税額控除」の最終形の導入に向けて、さらなる議論の深掘りや環境整備が重要となる。 〇経団連:社会保障国民会議中間とりまとめを踏まえた高市総理表明に関する筒井会長コメント 〇日本商工会議所:飲食料品に係る消費税減税に関する高市内閣総理大臣の表明に対する小林会頭コメント 〇経済同友会:飲食料品に係る消費税の実質ゼロ化について(山口明夫代表幹事コメント) (了)
暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【特別編:第1回】 「暗号資産の分離課税の全体像」 -令和8年度税制改正- 東洋大学法学部教授 泉 絢也 1 特別編を設ける理由 本連載第38回「10 暗号資産に係る所得を分離課税にしてほしいという改正要望」では、業界団体及び与党プロジェクトチームによる分離課税の要望を紹介したうえで、国会答弁を見る限り「要望が通る道は険しいようである」と述べた。 その後、事態は動いた。 令和8年3月31日、所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号。以下「改正法」という)が成立・公布され、租税特別措置法に、特定暗号資産の譲渡による所得に対する申告分離課税(措法38の2)と、特定暗号資産に係る譲渡損失の繰越控除(措法38の3)が創設された。 20%(所得税15%、個人住民税5%)の比例税率による課税と、3年間の繰越控除である。要望の中核部分は、ほぼ要望どおりの形で実現したことになる。 もっとも、実現したのは「暗号資産一般の分離課税」ではない。 分離課税の対象は、「特定暗号資産」を「暗号資産取引業者を通じて」「譲渡」した場合に限られる。それ以外の暗号資産、それ以外の経路による譲渡、そして譲渡に当たらないマイニング、ステーキング、レンディング、エアドロップ等は、従来どおり総合課税である。 改正後の暗号資産税制は、分離課税と総合課税が併存する二重の構造をとることになった。この点を見落とすと、実務判断を誤る。 そこで本連載では、特別編として3回にわたり改正の全体像を紹介する。 第1回にあたる本稿では、改正に至る経緯と、改正がどの法律のどこを動かしたのかを俯瞰する。第2回では分離課税ルートの要件と計算を、第3回では総合課税ルートに残された取扱いと「経路選択」を扱う。 2 改正に至る経緯 ―「金商法への移管」が扉を開いた 長らく、分離課税の要望に対する政府の回答は否定的であった。 第38回で紹介したとおり、住澤整財務省主税局長は令和4年3月16日の参議院財政金融委員会で、鈴木俊一国務大臣は同年4月13日の衆議院財務金融委員会で、それぞれ、上場株式等の譲渡益等に20%の分離課税が採用されているのは、税制の中立性・簡素性・適正執行の確保に加え、貯蓄から投資へという政策的要請と、一般投資家が投資しやすい税制を構築するという考え方によるものであると説明していた。 そのうえで、暗号資産については、給与や事業で稼いだ者に最大55%の税率が適用されることとのバランスについて国民の理解を得られるか、株式のように家計が暗号資産を購入することを国として推奨することが妥当かといった課題を挙げていた。 この膠着を動かしたのは、暗号資産の規制法上の位置付けを見直すという発想である。 自由民主党デジタル社会推進本部と金融調査会の連名による「暗号資産を国民経済に資する資産とするための緊急提言」(令和6年12月)は、暗号資産取引の振興や分離課税への道を拓く観点から、暗号資産の一部を金融商品として法的に位置付け、金融商品取引法の規制対象とすることも考えられるとして、規制法の移管を正面から取り上げた。 考え方はこうである。暗号資産を資金決済に関する法律上の「決済手段」から金融商品取引法上の「金融商品」へと位置付け直せば、同法の規制下にある上場株式やFX取引と課税上の取扱いを揃える道が開かれる。 実態の面でも、国内の暗号資産の口座開設数は1,400万を超え、利用者の取引動機のほとんどは長期的な値上がりを期待したものであるとされており(金融庁「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案 説明資料」2頁)、投資対象としての利用実態と規制法上の位置付けとの隔たりは大きくなっていた。 以後の経緯は次表のとおりである。 【分離課税導入に至る主な経緯】 時期 事項 令和元年8月 JVCEA・JCBAが「2020年度税制改正に関する要望書」で分離課税を要望 令和4年11月 自由民主党デジタル社会推進本部 web3PT「web3関連税制に関する緊急提言」。20%申告分離課税・3年繰越控除・デリバティブ取引の対象化を提言 令和6年12月 自由民主党デジタル社会推進本部・金融調査会「暗号資産を国民経済に資する資産とするための緊急提言」。規制法の金商法への移管に言及。同月の与党令和8年度税制改正大綱に「検討事項」として記載 令和7年6月 閣議決定「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」に分離課税の導入を含む見直しの検討を明記 令和7年8月 JVCEA・JCBAが「2026年度税制改正に関する要望書」を公表。金融庁の令和8年度税制改正要望にも分離課税の導入を含む見直しが盛り込まれる 令和7年12月 与党の令和8年度税制改正大綱に分離課税の導入が明記され、閣議決定された政府大綱に具体的措置が示される 令和8年3月31日 改正法(令和8年法律第12号)成立・公布 令和8年7月23日 金商法等改正法(令和8年法律第64号)公布(同月15日成立) 3 改正の全体マップ 今回の改正は、租税特別措置法だけの話ではない。所得税法本法から国税徴収法にまで及んでいる。 【令和8年度税制改正における暗号資産関連の改正】 法令 主な改正事項 根拠条文 所得税法 暗号資産の定義を金商法2条49項に変更 所法2①十六括弧書 譲渡所得に「暗号資産の譲渡による所得」の区分を新設 所法33③三 暗号資産の譲渡益から50万円特別控除を排除 所法33④⑤ 暗号資産の譲渡所得を2分の1課税の対象から除外(保有期間の長短を問わない) 所法22② 暗号資産の譲渡所得の損失を損益通算から排除 所法69② 租税特別措置法 特定暗号資産の譲渡による所得の申告分離課税(20%)の創設 措法38の2①~③ 特定暗号資産に係る譲渡損失の3年間繰越控除の創設 措法38の3 特定暗号資産年間取引報告書の提出制度の創設 措法38の2④~⑨ 先物取引の分離課税の対象に特定暗号資産デリバティブ取引を追加 措法41の14①二 上場証券投資信託等の償還金等に係る課税の特例の対象拡大 措法9の4の2①二 ミニマムタックスの基準所得金額に特定暗号資産に係る譲渡所得等の金額を追加 措法41の19②九 地方税法 個人住民税5%の分離課税 地法附則35の3の6①④ 消費税法施行令 暗号資産の譲渡を「支払手段に類するもの」から「有価証券に類するもの」へ再分類 消令9①一 課税売上割合の計算上、譲渡対価の5%相当額を分母に算入 消令48⑤ 暗号資産の貸付け(レンディング)の利用料を非課税化 消令10③十一 国税徴収法 自己管理暗号資産(特定電子移転財産権)の差押手続の整備 徴法72①、72の2 実務上の関心が集中するのは租税特別措置法38条の2の分離課税であるが、射程がより広いのは所得税法本法の改正である。所得税法本法の改正は、分離課税ルートと総合課税ルートの双方に共通して適用されるからである。 とりわけ、暗号資産の譲渡による所得が譲渡所得に区分されうることが法律上明記された一方で(所法33③三)、その譲渡所得からは50万円の特別控除も2分の1課税も奪われている(所法33④⑤、22②)。 これらは措置法の読替えによるものではなく、所得税法本法そのものの改正によって行われている。したがって、海外取引所やDEXでの譲渡であっても、これらの制限を免れることはできない。この点は第3回で詳述する。 4 3つの柱 改正の中身は、投資形態別に次の3つの柱で構成されている。 【令和8年度税制改正の3つの柱】 対象取引 課税上の位置付け 課税グループ 柱 ① 特定暗号資産の現物取引(暗号資産取引業者への売委託又は同業者に対する譲渡) 申告分離課税を新設 特定暗号資産の現物取引グループ (単独) 柱 ② 特定暗号資産デリバティブ取引 既存の先物取引の分離課税に追加 先物取引グループ (FX・商品先物等と同一) 柱 ③ 特定暗号資産ETF 一部の手当てのみ。個人の譲渡に係る分離課税は今後、措置される可能性 上場株式等グループ 柱①が改正の中核であり、本特別編でも中心的に扱う。 柱②は、新たな分離課税の枠組みを創設するものではなく、既にFX取引や商品先物取引について分離課税が適用されている「先物取引グループ」(措法41の14)に、特定暗号資産を原資産とするデリバティブ取引を追加するものである。 暗号資産デリバティブ取引は、原資産である暗号資産の有用性についての評価が定まっていなかったこと等から、令和2年度税制改正で同特例の対象から明示的に除外されていた経緯があり、今回はその取扱いを覆すものである。 実務上は、暗号資産のデリバティブ取引の損益をFX取引の損益と通算できるようになる点が大きい。 もっとも、対象となるのは、特定暗号資産を原資産とする市場デリバティブ取引と、金融商品取引業者又は登録金融機関を相手方とする店頭デリバティブ取引に限られる。外国市場で行われるものや、特定暗号資産以外の暗号等資産に係るものは、金融商品先物取引等から除外され、総合課税のままである(措法41の14①二)。 柱③は、限られた措置がとられたにとどまる。 閣議決定された大綱は、投資信託及び投資法人に関する法律施行令の改正を前提として、①上場証券投資信託等の償還金等に係る課税の特例の適用対象に一定の投資信託を加えること、②一般株式等に係る譲渡所得等の課税の特例等の対象となる株式等の範囲に特定暗号資産を投資の対象とする投資信託の受益権を加えることの2つを掲げていた。 しかし、令和8年度税制改正で法制化されたのは①のみである(措法9の4の2①二)。しかも、この特例は内国法人等が支払を受ける収益の分配について源泉徴収を要しないこととするものであり、個人に対する申告分離課税の措置ではない。 個人が暗号資産ETFの受益権を譲渡した場合の課税関係については、上記②が法制化されていない。投資信託及び投資法人に関する法律施行令の改正により暗号資産ETFの組成が認められた場合に、分離課税の適用に関して措置法上の整備的な規定が置かれるかどうかは、現時点では明らかではない。 そもそも暗号資産ETFの組成自体が上記施行令の改正を前提としており、その改正時期も未確定である。 ここで、決定的に重要な点を確認しておきたい。 3つの柱は、それぞれ別個の課税の枠組みであり、柱をまたいだ損益通算はできない。特定暗号資産の現物取引で生じた損失を特定暗号資産デリバティブ取引の利益から控除することはできず、その逆もできない。 もちろん、上場株式等の譲渡益と通算することもできない。「分離課税になったのだから株式やFXと通算できる」という理解は誤りである。 5 いつから適用されるのか 改正規定の適用開始日は、金商法等改正法の施行の日の属する年の翌年1月1日である(改正法附則1十イ・ロ、39①)。 金商法等改正法は令和8年7月23日に公布されたが、暗号資産に係る規制見直しの施行日は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日とされており、本稿執筆時点でこの政令は定められていない。 もっとも、公布日が確定したことにより、遅くとも令和9年7月22日までには施行されることとなった。新制度への準備期間を踏まえると令和9年中の施行が見込まれ、その場合、適用開始日は令和10年1月1日となる。 注意を要するのは、関連する制度の適用時期が一律ではない点である。以下、令和9年中に施行された場合を前提に、実務上とくに重要なものを挙げる。 まず、分離課税と繰越控除の本体は、令和10年1月1日以後に行う特定暗号資産の譲渡について適用される(改正法附則39①)。所得税法本法の改正、すなわち暗号資産の定義、譲渡所得の区分、50万円特別控除、2分の1課税及び損益通算に関する改正も、令和10年分以後の所得税について適用される(改正法附則4、6①、7)。 次に、個人住民税は前年課税であるため、その分離課税(5%)の適用は所得税より1年遅れ、令和11年度分以後となる(改正地法附則3十六、11十三)。 さらに、暗号資産取引業者が税務署長に提出する特定暗号資産年間取引報告書の制度も、分離課税本体より1年遅れ、令和11年1月1日以後に行う行為から開始する(改正法附則39②)。 * * * 次回は、分離課税ルートの適用要件と計算を、特定暗号資産の意義と取引経路の限定を中心に取り上げる。 (了) 【書籍情報】 令和8年度改正に伴う暗号資産の取扱いについて もっと知りたい方のための書籍ができました! 暗号資産の税金はこう変わる-分離課税の仕組みと実務(清文社) 著者:泉 絢也 発行日:2026年8月14日 ISBN:978-4-433-72716-1 判型:A5判292頁 定価:3,080円(税込) 詳しくは[こちら]
税理士が押さえておきたい「社宅」の税務と周辺知識 第4回 従業員用の借上げ社宅④ ~水道光熱費と寄宿舎の非課税要件~ 公認会計士・税理士 桝井康弘 〇社宅の水道光熱費 〇寄宿舎等の所得税非課税 (次回に続く)
相続税の実務問答 【第122回】 「共同相続人中に不在者がいる場合」 税理士 梶野 研二 [答] あなたが本年2月10日のうちにお母様の亡くなられたことを知ったとすれば、その日の翌日から10か月後の本年12月10日があなたの相続税の申告書の提出期限となります。 一方、お兄様につきましては、お母様が亡くなられたことを知らないうちは、相続税の申告期限は到来しませんが、お兄様の財産管理人が選任されますと、その者がお母様の亡くなられたことを知った日が、お兄様がお母様の亡くなられたことを知った日となり、その日の翌日から10か月以内に、その財産管理人がお兄様の相続税の申告をすることとなります。 お兄様の財産管理人がお兄様の法定代理人の立場で遺産分割を行うことができるとしても、お兄様の利益を害するような遺産分割に応じることはできないでしょうし、お兄様の利益を害することのない遺産分割ができたとしても、小規模宅地等の適用のための選択において、お兄様の利益を害することとなるような同意をすることはできません。 このため、あなたがお母様と同居していた建物の敷地を相続し、その敷地について小規模宅地等の特例を適用したいとのお考えであったとしてもそのような遺産分割や小規模宅地等の特例の適用ができるとは限らないことに注意する必要があります。 ● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ● 1 音信不通の相続人等以外の相続人等の相続税の申告 相続税の申告は、原則として、被相続人の相続開始を知った日の翌日から10か月以内に行わなければなりません(相法27①)。通常は、被相続人に相続が開始すれば、その日のうち又はそれに近接した日のうちには、被相続人に相続が開始したことを知ることになりますので、その日の翌日から10か月以内に相続税の申告をすることとなります。 相続人又は受遺者(以下「相続人等」といいます。)の一部の者が、従来の住所地又は居所を離れ、音信不通の状態になっている場合(このような相続人等を本稿では「音信不通の相続人等」といいます。)で、次の2で説明する不在者の財産管理人がいないため、あるいは、不在者の財産管理人がいても申告期限内に遺産分割ができない場合には、相続税の申告においては、相続税法第55条の規定により、民法(第904条の2(寄与分)を除きます。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って遺産を取得したものとして相続税の課税価格を計算することとなります。 この相続税法第55条の規定に従った相続税の申告においては、租税特別措置法第69条の4第1項に規定する「小規模宅地等に係る相続税の課税価格の計算の特例」(以下「小規模宅地等の特例」といいます。)を適用することはできません。なお、遺産分割がされた場合に、小規模宅地等の特例の適用を受けようとする場合には、相続税の申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付します。 2 音信不通の相続人等の相続税の申告 音信不通の相続人等であっても、被相続人に相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に相続税の申告書を提出しなければならないという原則に変わりはありません。しかしながら、音信不通の相続人等は、被相続人に相続が開始したことを知り得ない場合が多いだろうと思います。被相続人に相続の開始したことを知らない限り、相続税の申告期限は到来しません。 (注) ただし、税務署長は、相続又は遺贈により財産の取得があった場合には、被相続人の相続開始があった日の翌日から10か月を経過したときには、相続税の申告書の提出期限前であっても相続税の課税価格又は相続税額の決定をすることができるとされています(相法35②一)。 ところで、従来の住所地又は居所を去った者(このような者を「不在者」といいます。)が、その財産の管理人を置く場合があります。また、不在者がその財産の管理者を置かなかった場合には、利害関係者又は検察官の請求により家庭裁判所が財産の管理人を選任することができます。このような管理人を「不在者の財産管理人」又は「財産管理人」といいます。 不在者の財産管理人は、不在者の法定代理人と解されており(名古屋高裁平成26年9月18日判決(裁判所ホームページ))、不在者の財産の保存行為及び不在者の財産又は権利の性質を変えない範囲内において不在者の財産の利用又は改良を目的とする行為を行う権限を有します(民法28、103)。また、不在者の財産管理人が権限を有する行為以外の行為であってもその行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得ることによりその行為を行うことができます(民法28)。 音信不通の相続人等が被相続人に相続が開始したことを知らないとしても、その法定代理人である不在者の財産管理人が被相続人に相続が開始したことを知った場合には、音信不通の相続人等が被相続人の相続開始を知ったものと解することが相当であると考えられます。不在者の税務申告は不在者の財産の保存行為と考えられます(注)ので、音信不通の相続人等の相続税の申告は、不在者の財産管理人が被相続人に相続が開始したことを知った日の翌日から10か月以内に同財産管理人が行うこととなります。 (注) 不在者の財産管理人が家庭裁判所の権限外行為の許可を得て、不在者の財産を譲渡した事例において、当該譲渡についての納税申告は保存行為に該当すると解されることから、不在者の財産管理人は、家庭裁判所の権限外行為の許可を得ることなく、不在者の代理人として納税申告を行うことができるとされています。 (国税庁ホームページ/法令等/質疑応答事例/譲渡所得/「不在者財産管理人が家庭裁判所の権限外行為許可を得て、不在者の財産を譲渡した場合の申告」) 3 小規模宅地等の特例の適用 小規模宅地等の特例を適用するためには、同特例を適用する者が特例を適用しようとする宅地等を遺産分割等により確定的に取得していることが必要です。不在者の財産管理人は、家庭裁判所の許可を得た上で、不在者を代理して遺産分割協議に参加することができると解されます。ただし、その内容は不在者の利益を害することのないものでなければなりませんし、同相続人等の利益を害することのない遺産分割がされたとしても、小規模宅地等の適用のための選択において、同相続人の利益を害することとなるような同意をすることはできないと考えられます。 なお、原則として、相続税の申告書の提出期限から3年以内に遺産分割ができない場合には、小規模宅地等の特例を適用することができなくなりますが、租税特別措置法施行令に定めるやむを得ない事情がある場合において税務署長の承認を受けたときには、特例対象宅地等の分割ができることとなった日の翌日から4か月以内に分割されたときには、その分割された特例対象宅地等については、更正の請求等の手続きにより、小規模宅地等の特例を適用することができます(措法69の4④⑤)。 このやむを得ない事情として租税特別措置法施行令には、相続又は遺贈に係る財産が当該相続又は遺贈に係る申告期限の翌日から3年を経過する日までに分割されなかつたこと及び当該財産の分割が遅延したことにつき税務署長においてやむを得ない事情があると認める場合が掲げられています(措令40の2㉓、相令4の2①四)。その具体例として、通達において相続税の申告期限の翌日から3年を経過する日において、共同相続人又は包括受遺者の一人又は数人が行方不明又は生死不明であり、かつ、その者に係る財産管理人が選任されていない場合が示されており(相基通19の2-15(1))、これに該当する場合には、その事情の消滅の日、すなわち相続人等の所在又は生死が明らかになった日、又は財産管理人が選任された日の翌日から4か月以内に分割されたときには、小規模宅地等の特例の適用が可能になります。 (注) 音信不通の相続人等について小規模宅地等の特例の適用の可能性がある場合には、不在者の財産管理人は、「申告期限後3年以内の分割見込書」の提出や3年経過後の税務署長の承認の手続きを行う必要があります。 4 ご質問の場合 相続等により財産を取得した相続人等は、相続人等が被相続人の相続開始を知った日の翌日から10か月以内に相続税の申告をしなければなりません。お母様が亡くなられたのは、本年2月10日ですから、あなたがその日のうちにお母様の亡くなられたことを知ったとすれば、本年12月10日が相続税の申告書の提出期限となります。一方、お兄様につきましては、お母様が亡くなられたことを知らないうちは、相続税の申告期限は到来しませんが、不在者の財産管理人が選任された場合には、その不在者の財産管理人がお母様の亡くなられたことを知った日が、お兄様がお母様の亡くなられたことを知った日となりますので、その日の翌日から10か月以内に、その不在者の財産管理人がお兄様の相続税の申告をすることとなります。 相続税の申告書は相続人等の全員あるいは一部の者が共同して提出することが多いとは思いますが、お兄様と共同で相続税の申告書を提出することができなければ、あなたは単独で相続税の申告書を提出することとなります。その際、相続税の課税価格は、法定相続分の割合により遺産を取得したものとして計算することとなります。 お兄様と連絡が取れない限り、いつまでもお母様の遺産を分割することはできませんが、家庭裁判所にお兄様の財産管理人の選任を申し立て、選任された財産管理人が、家庭裁判所の許可を得れば、その財産管理人が法定代理人の立場で遺産分割を行うことができます。しかしながら、財産管理人は、お兄様の利益を害するような遺産分割に応じることはできないでしょうし、お兄様の利益を害することとならない遺産分割がされたとしても、小規模宅地等の適用のための選択において、お兄様の利益を害することとなるような同意をすることはできません。 このため、あなたがお母様と同居していた建物の敷地を相続し、その敷地について小規模宅地等の特例を適用したいとのお考えであったとしても、そのような遺産分割や小規模宅地等の特例の適用ができるとは限らないことに注意する必要があります。 (了)
令和8年度税制改正における 『グループ通算制度』改正事項の解説 【第8回】 公認会計士・税理士 税理士法人トラスト 足立 好幸 Ⅲ 租税特別措置の不適用措置の見直し 1 改正の概要 大企業につき研究開発税制等の生産性の向上に関連する税額控除の規定(特定税額控除規定)を適用できないこととする措置について、次の見直しを行った上、その適用期限を令和11年3月31日まで延長する(措法42の13⑤⑦)。 (出典) 経済産業省「経済産業関係 令和8年度税制改正について(令和7年12月)」を筆者一部加工 この改正は、令和8年4月1日以後に開始する事業年度について適用される(令8改所法等附1、50)。 2 グループ通算制度における取扱い 租税特別措置の不適用措置の見直しについて、グループ通算制度における取扱いは以下のとおりとなる。 1 適用時期 特定税額控除規定の適用可否の個社判定については、令和8年4月1日以後に開始する事業年度について改正後の取扱いが適用される(令8改所法等附1、50)。 通算特定税額控除規定の適用可否の全体判定については、令和8年4月1日以後に開始する事業年度について改正後の取扱いが適用される(令8改所法等附57③)。 ただし、通算子法人については、通算親法人の令和8年4月1日以後に開始する事業年度終了の日に終了するその通算子法人の適用対象事業年度については、改正後の取扱いが適用され、通算親法人の同日前に開始した事業年度終了の日に終了するその通算子法人の適用対象事業年度については、改正前の取扱いが適用される(令8改所法等附57③)。 つまり、通算特定税額控除規定の適用可否については、通算グループ全体で判定するため、通算子法人の改正法の適用時期を通算親法人の適用時期に合わせることにしている。 2 大企業の租税特別措置の不適用措置 大企業の租税特別措置の不適用措置とは、収益が拡大しているにもかかわらず、賃上げにも投資にも消極的な大企業に対して、研究開発税制等の一部の租税特別措置の税額控除の適用を停止する措置をいう。 具体的には、非中小企業者等について、「所得金額に係る要件」、「継続雇用者給与等支給額に係る要件」、「国内設備投資額に係る要件」のいずれも満たさない場合に、研究開発税制の適用ができないこととなる。 また、非中小企業者等について、「所得金額に係る要件」を満たさない場合で、「継続雇用者給与等支給額に係る要件」又は「国内設備投資額に係る要件」のいずれかを満たさない場合に、地域未来投資促進税制やカーボンニュートラル投資促進税制等の一部の租税特別措置の適用ができないこととなる。 グループ通算制度では、大企業の租税特別措置の不適用措置について、通算グループ全体で税額控除限度額を計算する税額控除規定(通算特定税額控除規定)については、通算グループ全体で適用可否の要件判定を行い、各通算法人単独で税額控除限度額を計算する税額控除規定(特定税額控除規定)については、その通算法人単独で適用可否の要件判定を行うこととなる(措法42の13⑤⑦、42の4①⑧、42の4の2①②、42の5①③二、42の11の2②、42の12の6②)。 [通算グループ全体で不適用措置の判定を行う租税特別措置(通算特定税額控除規定)] [通算法人単独で不適用措置の判定を行う租税特別措置(特定税額控除規定)] また、戦略分野国内生産促進税制(こちらは中小企業者等も不適用措置の対象となる)及び特定生産性向上設備等投資促進税制(こちらは即時償却規定も不適用措置の対象となる)についても、各税制内に同様の不適用措置の規定を設けている(措法42の12の6③⑥⑭⑮、42の12の7①②⑧⑨)。 3 通算特定税額控除規定の適用可否の全体判定 通算法人(中小企業者(適用除外事業者(通算加入適用除外事業者を除く)又は通算適用除外事業者に該当するものを除く)又は中小通算農業協同組合等を除く)(注1)が、令和8年4月1日から令和11年3月31日までの間に開始する各事業年度(対象年度)(注2)において、通算特定税額控除規定の適用を受けようとする場合において、その対象年度において次の適用条件に該当しないときは(注3)、その対象年度においては、通算特定税額控除規定を適用できない(措法42の13⑤⑦⑧、42の12の5④五・六、措令27の4①②、27の13⑨~⑬⑮⑯、法令24の3)。 [通算特定税額控除規定と適用条件] 通算特定税額控除規定 適用条件 研究開発税制(通算グループ全体計算によるものに限る。また、中小企業技術基盤強化税制、重点産業技術試験研究費の繰越税額控除制度を除く) 次の要件のいずれかを満たす場合に当該規定を適用することができる。 ❶ 所得金額に係る要件 ❷ 継続雇用者給与等支給額に係る要件 ❸ 国内設備投資額に係る要件 [通算特定税額控除規定の適用可否の要件の内容(全体判定)] ❶ 所得金額に係る要件 各通算法人のその対象年度の所得金額の合計額(注4)が各通算法人のその対象年度の前事業年度(注5)の所得金額の合計額(注4)以下であること(ただし、その対象年度が合併等事業年度(通算法人のいずれかが、合併・加入・離脱等をする場合における合併・加入・離脱等の日を含む事業年度をいう)(注9)に該当しない場合に限る)(注6)。 ❷ 継続雇用者給与等支給額に係る要件 各通算法人の継続雇用者給与等支給額(注7)の合計額が各通算法人の継続雇用者比較給与等支給額(注7)の合計額と比べて1%以上増加すること(注8)。 ただし、次のいずれにも該当する場合、各通算法人の継続雇用者給与等支給額の合計額が各通算法人の継続雇用者比較給与等支給額の合計額と比べて2%以上増加すること。 ⅰ.「通算法人のいずれかが資本金の額が10億円以上であり、かつ、常時使用する従業員の数が1,000人以上である場合」又は「通算法人のいずれかが、常時使用する従業員の数が2,000人を超える場合」 ⅱ.その通算法人の対象年度が合併等事業年度(通算法人のいずれかが、合併・加入・離脱等をする場合における合併・加入・離脱等の日を含む事業年度をいう)(注9)に該当しない場合であって各通算法人の対象年度の前事業年度の所得金額の合計額が0を超える場合、又は、その通算法人の対象年度が合併等事業年度に該当する場合 ❸ 国内設備投資額に係る要件 各通算法人の国内設備投資額(注7)の合計額が各通算法人の当期償却費総額(注7)の合計額の30%(上記❷のⅰ及びⅱのいずれにも該当する場合には、40%)を超えること。 (注1) 通算特定税額控除規定の不適用措置は、中小企業技術基盤強化税制の適用対象となる法人以外の法人(大企業)が対象となる。 (注2) 通算子法人の対象年度は、通算親法人の対象年度終了日に終了するその通算子法人の事業年度とする。 (注3) 通算特定税額控除規定の適用可否は、通算法人全社を1つの法人とみなして判定を行う。 (注4) 所得金額の合計額とは、「各通算法人の対象年度の基準通算所得等金額の合計額」又は「各通算法人の前事業年度の基準通算所得等金額の合計額」をいい、それぞれがマイナスの場合には、それぞれ0とする。基準通算所得等金額とは、損益通算・繰越欠損金控除前の所得金額となり、各事業年度のA及びBの金額の合計額からC及びDの金額の合計額を減算した金額とする。ただし、通算対象外欠損金額がある場合、その通算対象外欠損金額を加算する。 A その事業年度の所得金額(被合併法人の最終事業年度にあっては、非適格合併による移転資産等の譲渡利益額の益金算入額又は譲渡損失額の損金算入額を除いた所得金額) B 次のイ)~ニ)の合計額 イ) 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越しの規定(法法57)により損金の額に算入された金額 ロ) 会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入の規定(法法59)により損金の額に算入された金額 ハ) 損益通算の規定(法法64の5①)により損金の額に算入された金額 ニ) 通算法人の合併等があった場合の欠損金の損金算入の規定(法法64の8)により損金の額に算入された金額 C 次のイ)~ハ)の合計額 イ) 中間申告における繰戻しによる還付に係る災害損失欠損金額の益金算入の規定(法法27)により益金の額に算入された金額 ロ) 損益通算の規定(法法64の5③)により益金の額に算入された金額 ハ) 欠損金の通算における修更正の場合の配賦欠損金額の益金算入の規定(法法64の7⑥)により益金の額に算入された金額 D その事業年度において生じた欠損金額(被合併法人の最終事業年度にあっては、非適格合併による移転資産等の譲渡利益額の益金算入額又は譲渡損失額の損金算入額を除いた欠損金額) (注5) 前事業年度とは、対象期間内に終了したその通算法人の各事業年度をいう。対象期間とは、通算法人の対象年度終了日に終了する通算親法人の事業年度(基準事業年度)開始日の1年(基準事業年度が1年に満たない場合には、その基準事業年度の期間)前の日からその開始日の前日までの期間をいう。ただし、通算親法人の最初通算事業年度以後の期間に限られている。なお、その通算法人の最初通算事業年度開始日前に終了した各事業年度は、この前事業年度から除かれる。 (注6) 特定税額控除規定の適用可否の個社判定と異なり、通算法人のいずれかの対象年度が設立事業年度であっても、所得金額に係る要件の判定を行うことが可能となる。 (注7) 継続雇用者給与等支給額、継続雇用者比較給与等支給額、国内設備投資額、当期償却費総額の定義は、特定税額控除規定の適用可否の個社判定と同じとなる。 (注8) 各通算法人の継続雇用者給与等支給額の合計額及び継続雇用者比較給与等支給額の合計額が0である場合には、継続雇用者給与等支給額に係る要件を満たすこととなる。 (注9) 合併等事業年度とは、その通算法人又は他の通算法人のいずれかが、次に掲げる場合のいずれかに該当する場合におけるそれぞれ次に定める日を含む事業年度をいう。 該当する事由 定める日 イ 分割又は現物出資(事業を移転するものに限る。イ及びロにおいて「分割等」という)に係る分割法人又は現物出資法人である場合(その分割等に係る分割承継法人又は被現物出資法人がその通算法人又は他の通算法人との間に通算完全支配関係がある法人である場合を除く) その分割等の日 ロ 合併又は分割等に係る合併法人又は分割承継法人若しくは被現物出資法人である場合(その分割等に係る分割法人又は現物出資法人がその通算法人又は他の通算法人との間に通算完全支配関係がある法人である場合を除く) その合併又は分割等の日 ハ 事業の譲渡をした法人である場合(その事業の譲受けをした法人がその通算法人又は他の通算法人との間に通算完全支配関係がある法人である場合を除く) その譲渡の日 ニ 事業の譲受けをした法人である場合(その事業の移転をした法人がその通算法人又は他の通算法人との間に通算完全支配関係がある法人である場合を除く) その譲受けの日 ホ 特別の法律に基づく承継に係る被承継法人である場合(その承継に係る承継法人がその通算法人又は他の通算法人との間に通算完全支配関係がある法人である場合を除く) その承継の日 ヘ 特別の法律に基づく承継に係る承継法人である場合(その承継に係る被承継法人がその通算法人又は他の通算法人との間に通算完全支配関係がある法人である場合を除く) その承継の日 ト 他の法人(初年度離脱通算子法人を除く)が通算親法人との間に通算完全支配関係を有することとなった場合(当該他の法人の設立日にその通算完全支配関係を有することとなった場合を除く) その有することとなった日 チ 他の法人(初年度離脱通算子法人を除く)が通算親法人との間に通算完全支配関係を有しないこととなった場合 その有しないこととなった日 なお、通算特定税額控除規定の不適用措置(全体判定)に係る継続雇用者給与等支給額に係る要件、国内設備投資額に係る要件に該当することにより、法人が対象年度において、通算特定税額控除規定の適用を受けようとする場合、その通算特定税額控除規定の適用要件となる確定申告書等の添付書類(別表添付要件)には、通常の添付書類のほか、不適用措置が適用されないための継続雇用者給与等支給額に係る要件、国内設備投資額に係る要件に該当することを明らかにする書類を追加で添付する必要がある(措法42の13⑧)。 (続く)
給与計算の質問箱 【第79回】 「旅費日当」 税理士・特定社会保険労務士 上前 剛 Q 当社では旅費規程を作成し、役員や従業員が出張した際に旅費日当を支給することにしました。旅費日当の所得税、消費税、労働保険、社会保険の扱いについてご教示ください。 A 旅費日当は、給与計算の対象外である。 以下、解説する。 * * 解 説 * * 1 所得税 旅費日当のうち、通常必要であると認められるものは非課税である。 【所得税法9条1項4号】 (※) 下線筆者 2 消費税 国内出張にかかる旅費日当は、課税仕入れになる。役員や従業員は適格請求書発行事業者ではないが、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる。 海外出張にかかる旅費日当は、課税仕入れにならない。 3 労働保険 旅費日当は、労働保険の賃金とならない。 (出典) 厚生労働省「令和8年度 労働保険 年度更新 申告書の書き方」 4 社会保険 旅費日当は、社会保険の報酬とならない。 (出典) 日本年金機構「算定基礎届の記入・提出ガイドブック(令和8年度)」 (了)
〈一角塾〉 図解で読み解く国際租税判例 【第102回】 「アジレント事件(高判令5.2.16)(その1)」 ~所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とルクセンブルク大公国との間の条約10条1項、2項、3項~ 税理士 大野 道千 1 判例 (1) 当事者等 (2) 事実の概要 ルクセンブルク大公国に本店を置くX社(被控訴人)は、日本国内に恒久的施設を有さない外国法人である。X社は、2014年4月29日に事業年度を11月1日から翌年10月31日とする内国法人A社およびB社の株式をそれぞれ100%取得しX社の完全子会社とした。内国法人A社およびB社(以下「各子会社」という)は、2014年8月1日に会社分割を行い、その対価として譲り受けた分割承継法人(C社およびD社)の出資持分をX社に剰余金の配当として分配した(非適格分割型分割)。 このうち配当とみなされる部分については、各子会社に源泉徴収義務が生じるため、各子会社は2014年9月8日に20.42%の税率による金額を所得税及び復興特別所得税として源泉徴収し納付した。2015年4月7日、X社は、各子会社を通して、当該みなし配当は「所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とルクセンブルク大公国との間の条約(以下「日蘆租税条約」という)」10条2項(a)の適用を受ける旨の届出をし、20.42%と10条2項(a)が定める5%との差額について還付請求したが、各所轄税務署長から10条2項(b)の適用を受ける旨の見解を受けて、2016年3月7日、20.42%と10条2項(b)が定める15%との差額について還付請求し、還付を受けた。 2019年9月6日、X社はYに対して、10条2項(a)の要件をいずれも満たし、その税率は、所定の限度税率である5%となると主張して、15%と5%の差額(A社約11億2,196万円、B社約2億7,252万円の合計約13億9,448万円)の還付及び還付加算金の支払を求めた事案。原審は、被控訴人の請求を全部認容、これを不服とした控訴人が控訴した。 (3) 争点 請求金額の還付請求権の存否(日蘆租税条約10条2項(a)の保有期間要件を充足しているか否か)が争点となった。 日蘆租税条約10条1項では、配当について、源泉地国と居住地国のいずれも租税を課することができるとしつつ、同条2項は、源泉地国の税率について、「(a)当該配当の受益者が、利得の分配に係る事業年度の終了の日に先立つ六箇月の期間を通じ、当該配当を支払う法人の議決権のある株式の少なくとも二十五パーセントを所有する法人である場合には、当該配当の額の五パーセント(政府訳文)」、「(b)その他のすべての場合には、当該配当の額の十五パーセント(政府訳文)」と定め、保有期間要件と保有割合要件から税率を制限している。本件では、X社と各子会社は完全支配関係にあり、保有割合要件は満たすものの、分割日8月1日の約3ヶ月前に各子会社株式を取得していることから、保有期間要件が問題となった。「the end of the accounting period for which the distribution of profits takes place(利得の分配に係る事業年度の終了の日)」を各子会社の期末10月31日とした場合、保有期間は6ヶ月以上となり要件を充足する一方、「利得の分配に係る事業年度の終了の日」を分割日の前日7月31日とした場合には保有期間は6ヶ月に満たず要件を充足しないことになる。そこで、「利得の分配に係る事業年度の終了の日」の解釈が争われた。 【関連法令】 (4) 当事者の主張 “the end of the accounting period for which the distribution of profits takes place(利得の分配に係る事業年度の終了の日)”について、X社は、「配当を支払う法人がその配当の原資である所得を一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算する会計期間の末日」(10月31日)と解すべきと主張したのに対して、国は「配当の受領者が特定される時点」すなわち、分割型分割の日の直前7月31日であると主張した。 (5) 判旨 認容。 ((その2)へ続く)
〔会計不正調査報告書を読む〕 【第190回】 株式会社イーエムネットジャパン 「第三者委員会調査報告書(開示版)(2026年3月27日付)」 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 【株式会社イーエムネットジャパン第三者委員会による調査の概要】 【株式会社イーエムネットジャパンの概要】 株式会社イーエムネットジャパン(以下、「EMネットジャパン」と略称する)は、2007年に日本支社を設立しインターネット広告事業を展開していたEMNET.INCが、日本での更なる事業展開のため、2013年4月設立。インターネット広告事業を主たる事業とする。2018年9月、東京証券取引所マザーズ市場に株式を上場。2021年5月にソフトバンクと資本業務提携契約を締結するとともに、同年6月に連結子会社となった。 売上高1,594百万円、経常利益180百万円、当期純損失△449百万円、資本金328百万円、従業員数130人。ソフトバンク株式会社が発行済み株式の40.91%を所有している(いずれも2025年12月期有価証券報告書による)。 本店所在地は東京都新宿区。東京証券取引所グロース市場上場。会計監査人は、2023年3月23日までPwC Japan有限責任監査法人、その後、現在まで有限責任監査法人トーマツ東京事務所(以下、「監査法人トーマツ」と略称する)。 【第三者委員会による調査報告書の概要】 1 第三者委員会設置の経緯 EMネットジャパンでは、2026年1月5日、常務取締役CFOであった村井仁氏(以下「元 CFO」という。)が、会社資金を元CFO名義の口座に送金する等の方法により不正に支出(以下「本件不正行為」という)した疑いが判明した。これを受け、EMネットジャパンは、同月11日開催の臨時取締役会において、本件不正行為に関する事実関係の解明及び類似事象の有無の調査を行い、原因分析及び再発防止策の策定を行うため、第三者委員会を設置することを決議し、さらに、同月19日開催の臨時取締役会において、第三者委員会の委員を選任した。 2 第三者委員会による調査結果の概要――不正の手口について 第三者委員会は、調査の結果、元CFOによる不正行為を2つに分類している。元CFOによる不正行為の手口はきわめて単純であり、自らの職務権限に基づき、会社資金を流用したものであった(不正のトライアングル仮説における「機会」)。 (1) 本件不正行為類型①「会社名義のキャッシュカードを使い、会社の銀行口座から現金を引き出して自己のために流用する行為」 元CFOが、EMネットジャパンの金庫内に保管されていた会社名義のキャッシュカードを用い、ATMから出金して自己のために流用するという手口により、当社の資金が元CFOによって私的に流用されたものであり、元CFOは、電子メール等により部下に指示し、現金実査表に記入させることにより、実際には存在しないにもかかわらず、引き出した現金が当社の金庫内に保管されているかのように装っていた。 (2) 本件不正行為類型②「会社の銀行口座から自己名義の銀行口座へ振込送金して自己のために流用する行為」 元CFOが、銀行取引システムを用い、会社名義の銀行口座から元CFO名義の銀行口座に振込送金するという手口により、会社資金を私的に流用したものであり、元CFOは、銀行取引システムに係る自己のアカウントの権限を特権承認者権限(送金指示とその承認を一人で行える権限)とすることにより、他の役職員を関与させることなく、独自に上記振込送金を行っていた。 元CFOは、この手口により振込送金を行う都度、EMネットジャパンの代表印を冒用して、貸主をEMネットジャパン、借主を元CFOとする金銭消費貸借契約書を偽造し、財務及び経理を担当する従業員に提示していた。 3 第三者委員会による調査結果の概要――隠蔽工作と発覚の経緯について 第三者委員会は、調査報告書において、元CFOによる隠蔽工作について詳細な調査を行ったことを記述している。元CFOは、大手監査法人で会計監査実務の経験があることから、監査法人トーマツによる会計監査や親会社のソフトバンクによる業務監査に際して、どうすれば自らの不正を隠すことが可能かについては熟知していたと思われ、たとえば、上記2(1)の段階であれば、現金実査に際して手持ち現金を準備して、現金の実際残高と帳簿残高を一致させたり、上記2(2)の不正の隠蔽策としては、期末日に不正に送金した資金をいったん会社口座に戻して預金残高を一致させたうえで、翌期首に、会社資金を不正に自己の口座に送金したり、期中においては銀行預金残高証明書を偽造したりするといった方法で、監査の目を逃れてきた。 しかし私的流用した金額が増加するにしたがって、こうした隠蔽工作は限界に達していたものと考えられる。財務担当マネージャーは、2026年1月5日、2025年12月30日を返済期限とする4億6千万円の借入金について返済の確認ができていないことから、詳細の共有を求めるメールを元CFOに送信する際、管理統括部部長をC.C.に加えるとともに、代表取締役社長の山本臣一郎氏(以下、「社長」と略称する)をB.C.C.に加えたことから、社長が、元CFOによる会社資金の借入れ=私的流用の事実を認識することとなり、発覚した。 4 原因分析(調査報告書75頁以下) 第三者委員会は、元CFOによる不正行為の原因を、次の7項目に分けて分析している。 第三者委員会は、原因分析の冒頭、EMネットジャパンでは、管理統括部に関する全ての権限が常務取締役CFOであった元CFOに集中しており、これが本件不正行為を許した最大の要因であると述べている。上記の7項目を見ても、「元CFOへの権限の集中」の結果、「管理統括部内における牽制機能」や「内部監査部門による牽制機能」の欠如を招くとともに、「内部通報制度」は実効性に欠けるものであったことから、結果的に、「元CFOに対して意見を言えない・言わない組織風土」ができあがっていたことが理解できる。そこに、「監査等委員会監査」と「親会社のソフトバンクによる内部監査」を軽視する姿勢が加わって、元CFOによる不正行為を防止することができず、発覚まで長期間を要したものであったと言えよう。 第三者委員会は、EMネットジャパンの特殊性として、取締役8名のうち業務執行を担当しているのは社長及び元CFOの2名のみであり、管理統括部における経理、財務、総務、人事、法務等の業務は全て元CFOの所管となっていたことを挙げている。その結果、元CFOの職務執行に対する牽制機能は存在していなかった。内部監査部門についても状況は同じであり、第三者委員会は、内部監査部門の体制・権限が脆弱であり、かつ、内部監査部門に対しても元CFOが実質的に影響力を及ぼしていたため、元CFOの不正に対して内部監査部門による牽制が全く機能していなかったと評価している。 本来、取締役の職務執行を監視監督する立場の監査等委員による監査についても、第三者委員会は、EMネットジャパンにおいては、内部監査部門には元CFOの影響力が強く及んでおり、社外取締役である常勤監査等委員である西村訓仁氏(報告書上の表記は「E氏」。以下、西村常勤監査等委員という)が要請しても資料をなかなか提供しないなど、監査等委員会による監査のサポート機能を全く果たしていなかったうえ、元CFOの態度は、監査を受ける立場にある業務執行取締役が監査等委員に対して圧力をかけていると評価されてもやむを得ないところがあり、元CFOのE氏に対する態度が影響して、管理統括部の担当者らは元CFOの不正疑惑を西村常勤監査等委員に相談しても解決しないという印象を受けていた可能性があると評価している。 さらに、内部通報制度の問題点について、第三者委員会は、EMネットジャパンでは、コンプライアンス管理規程に基づき、内部通報制度が設置されていたが、統括責任者は元CFOであり、コンプライアンス相談窓口宛に送付された情報は元CFOに確認される仕組みになっていたことを指摘して、経営陣から独立した通報窓口や外部窓口は設置されていないこと、ソフトバンクグループとしての内部通報窓口も設置されていなかったことから、元CFOの行為等に関する通報があった場合には、通報内容は元CFOに報告されてしまい、適切な調査が実施される保証はなく、従業員とすれば、元CFOを対象とする内部通報をしたくても、することができない状況となっており、実効性を欠くものであったと評価している。 5 再発防止策の提言(調査報告書83頁以下) 第三者委員会は、上記の原因分析を踏まえて、次の4項目の再発防止策を提言している。 EMネットジャパンの管理体制、とくに元CFOに対する権限集中が特殊であることから、第三者委員会による再発防止策については、他社事例として参考にできる項目はあまりない。元CFOが辞任してしまった以上、その権限は分散せざるを得ないし、EMネットジャパンが注力すべきは、再び特定の役職員に権限を集中させてしまわないよう、内部統制システムを根本から見直すことに尽きるのではないだろうか。 専任者がいない内部監査部門がどうやって監査等委員と連携するのか、ソフトバンクから派遣されている取締役は、業務執行取締役に対してどのように監督機能を果たすのか、第三者委員会による提言を実行することは、容易ではないと思料する。 【調査報告書の特徴】 社長と二人三脚で上場を果たし、業務執行取締役として社長と二人で経営を担ってきた常務取締役CFOが、多額の資金を横領していたことが判明する。大手監査法人でキャリアを積んだ公認会計士有資格者が、なぜ、会社資金の横領という、「必ず発覚する不正行為」を行ってしまったのか。職務権限が集中し、監査の目を潜り抜ける方法も熟知していた元CFOが、どこで道を踏み外してしまったのか。報告書の内容を掘り下げたい。 なお、元CFOの村井仁氏のプロフィールについて、STARTUP DBというサイトでは、次のように説明されている。 1 元CFOによる不正の動機はどこまで解明できたのか 第三者委員会による報告書で気になった点として、元CFOによる不正の動機を挙げることができる。第三者委員会は、元CFOが、「FX取引で損失を重ねたことで自己の資金繰りが悪化し、会社資金に手を付けた」と供述していること、また、「早くFXで利益を出して会社に資金を戻さないといけないという意識があり、レバレッジをかけて、近視眼的な取引を続けて負けを重ねてしまった」こと、「会社資金に手を付けることはバレると思っていたが、常識的な思考ができずに泥沼にはまってしまった」などの供述を紹介している。 そのうえで、第三者委員会は、不正行為により取得した会社資金の多くが継続的にFX口座に送金され、FX取引により損失が拡大している取引記録から、FX取引で出した損失をFX取引で取り戻そうとする悪循環に陥っていたことを認定して、元CFOは自身の資金不足を補う手段として不正行為により会社資金に手を付けたと結論づけている。 筆者が気になったのは、なぜ、元CFOがFX取引に手をつけたのかという点である。有価証券報告書で役員報酬の金額を確認すると、代表取締役と元CFOの2人で59,946千円という記載があり、配分はわからないものの、仮に代表取締役が2、元CFOが1の比率であっても、約2,000万円の報酬を得ていることとなる。元CFOが役員報酬以外にも金銭が必要だったのかどうか。第三者委員会による調査では、FX取引にのめりこんで損失が拡大し、横領する資金額が増加したことに関する動機は解明されているが、そもそもFX取引を始めた理由を追及することなしには、真の動機の解明にはならないのではないかと思料する。 2 特別損失の計上 EMネットジャパンは、2026年3月31日、「特別損失の計上に関するお知らせ」をリリースして、元CFOによる不正行為による私的流用額460,000千円を「長期未収入金」として貸借対照表に計上するとともに、回収不能見込額298,274千円を貸倒引当金繰入額として特別損失に計上したこと、第三者委員会による調査費用及び追加で発生した監査報酬等の見積額156,890千円についても訂正関連費用引当金繰入額として特別損失に計上したことを公表した。 3 EMネットジャパンによる再発防止策 EMネットジャパンは、2026年5月13日、「再発防止策に関するお知らせ」をリリースして、原因分析及び再発防止策の基本方針と再発防止策の概要を公表した。 まず、「原因分析及び再発防止策の基本方針」について、全文を引用したい。 次いで、「再発防止策の概要」については、次の項目を挙げている。 EMネットジャパンが、モニタリング機能が十分でなかったことは、第三者委員会の指摘を待つまでもないところであり、ここで掲げた再発防止策を実行していくことは、上場を維持するうえでも不可欠であると考える。 ただ、内部通報制度に関して、気になるところがあり、指摘しておきたい。EMネットジャパンは、「顧問弁護士宛の社外専用窓口を設置する」ことを挙げているが、顧問弁護士は会社側の利益を一義的に考える存在であり、社長をはじめとする経営者不正の通報先としては相応しくないというのが、昨今の流れである。内部通報制度の実効性を担保するという視点からは、より経営陣から独立した窓口を設置すべきではないだろうか。 4 東京証券取引所による改善報告書の徴求及び公表措置 東京証券取引所は、2026年5月19日、「改善報告書の徴求及び公表措置」をリリースして、EMネットジャパンに対して、「開示された情報の内容に虚偽があり、上場規則に違反し、改善の必要性が高いと認められる」ことを理由に改善報告書を徴求するとともに公表措置を行った。理由の詳細は、次のとおりである。 (了)
《税理士のための》 登記情報分析術 【第39回】 「死因贈与について理解しよう(その2)」」 ~死因贈与の注意点、配偶者居住権について~ 司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎 前回は死因贈与の概要等について解説した。死因贈与は遺言よりも緩やかな要件のもと、遺贈のような効果を実現することができ、相続の実務で利用されることがある。 一方で、特に不動産登記に関連しては特有の注意点があるため、慎重に対応しなければトラブルに発展する可能性もあるので、本稿においてポイント等について解説する。 1 贈与者の相続人全員の協力が必要 死因贈与を原因とする不動産の所有権移転登記は、贈与者の相続人(登記義務者)と受贈者(登記権利者)による共同申請が原則となる。前回、死因贈与契約が成立した場合には、始期付所有権移転仮登記を申請できると解説をしたが、当該仮登記を本登記にする場合も同様である。 もし贈与者の相続人のなかに登記に協力をしない者がいる場合には、別途訴訟等を提起して登記を実現しなければならないことになる。このことが注意点の1つである。 2 死因贈与の執行者を定めた場合 死因贈与には、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用されるため(民法554条)、遺言執行者についての定めも準用され、死因贈与契約において執行者を定めることができる。 死因贈与の執行者を定めていた場合には、死因贈与を原因とする不動産の所有権移転登記は執行者が登記義務者となり、受贈者が登記権利者となって共同申請をすることになる。よって、執行者を定めておけば贈与者の相続人の協力を得ることなく所有権移転登記が可能となるため、メリットが大きいといえる。 ただし、登記の添付書類について注意点がある。死因贈与契約が公正証書で締結されている場合には、執行者の権限を証する書面として当該公正証書を添付すればよいとされている。ただし、死因贈与契約が当事者の用意した書面(私署証書)によって締結されている場合には、贈与者の印鑑証明書の添付や贈与者の相続人全員の証明文(承諾書)と印鑑証明書の添付が必要とされており、厳格な取り扱いとなっている。 死因贈与の執行者は、受贈者自身を指定することも可能とされており、その場合は事実上、受贈者の単独申請ということになる。遺言よりも緩やかな要件で認められる死因贈与において、安易に単独申請を認めれば不正行為を誘発する原因にもなると考えられているためである。 3 配偶者居住権の登記 令和2年4月1日から制度が施行された配偶者居住権については、節税につながるという議論もあり、税理士にとっても認知が広まっていると思われる。 配偶者居住権は、民法の条文上、配偶者が被相続人の財産に属した建物に相続開始時に居住した場合において、「遺産分割」又は「遺贈」によって配偶者居住権を取得するとされているが(第1028条1項)、被相続人と配偶者の間で締結した配偶者に配偶者居住権を取得させる旨の死因贈与契約によっても成立することは理解しておくとよいだろう。 (了)