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措置法40条(公益法人等へ財産を寄附した場合の譲渡所得の非課税措置)を理解するポイント 【第16回】「「特別の利益を与えること」とは」

措置法40条(公益法人等へ財産を寄附した場合の 譲渡所得の非課税措置)を理解するポイント 【第16回】 「「特別の利益を与えること」とは」   公認会計士・税理士・社会保険労務士 中村 友理香   - 質 問 - 現物寄附を行った際、取得価額と時価との差額についてのみなし譲渡課税が非課税となる措置(措置法40条)を受けるための条件として、現物寄附を受領する公益法人等への寄附が「寄附者の所得税の負担を不当に減少させ、又は寄附者の親族その他これらの者と特別の関係がある者の相続税もしくは贈与税の負担を不当に減少させる結果とならないと認められること」が課されています。 この「不当減少」に該当するか否かの判断基準として、寄附者や役員等並びにその親族関係者に対し、特別の利益を与えないこと、という要件を満たす必要があるとされています。 ここで言うところの「特別の利益」とは、具体的にどのようなことを指すのですか。   - 回 答 - みなし譲渡課税が非課税となるための条件として、当該寄附を受けた法人が、寄附者や役員等並びにその親族関係者に対し、特別の利益を与えないことが必要とされています。 この「特別の利益」については、措置法40条通達19にその具体例が示されています。 ○●○◆ 解 説 ◆○●○ 寄附者やその親族関係者が公益法人等から特別の利益を受けている場合には、寄附した財産が実質的には従前と同様に寄附者に支配されているにもかかわらず、財産の移転に対して何ら課税がなされないというのでは、課税の公平性上問題があります。したがって、このような場合には、寄附者に対してその寄附に対する譲渡所得税を課するとともに、財産を寄附された法人に対しても贈与税を課すこととされています(相法66)。 ただし、所得税、相続税、贈与税を不当に減少させる結果となるかどうかの判断については、今後発生しうる概念をも含むものであり、難しさがあります。 そこで、租税特別措置法施行令第25条の17第6項に掲げる5つの事項をすべて満たす場合には、逆に、不当に減少する結果とはならないと判断するとされています。 この5つの事項の中に、次の要件が入っています(措令25の17⑥二)。 これは「特別の利益供与の禁止」と呼ばれるものであり、寄附者もしくはその親族等に対し、法人が保有する財産の無償ないしは有利な条件による利用・譲渡、財産の提供、有利な取引、もしくは規則や契約等でそのような行為を認めている場合は、その行為を特別な利益の供与とみなし、寄附については譲渡所得税非課税の措置(措置法40条)は適用できなくなるというものです。 そして、措置法40条通達19では、「特別の利益を与えること」の具体例として、次の(1)又は(2)に該当する場合をいうとしています。   (了)

#No. 346(掲載号)
#中村 友理香
2019/11/28

収益認識会計基準と法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第17回】

収益認識会計基準と 法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第17回】   千葉商科大学商経学部講師 泉 絢也   (6) 立案担当者の見解の要旨 『平成30年度 税制改正の解説』の記述から、法人税法22条の2第1項の規律内容を理解するために参考となる立案担当者の見解を抽出してみたい。 なお、立案担当者の解説は、文字どおり、あくまで「立案担当者」の「解説」にすぎないため、これに盲従することは妥当ではないが、実際には、他に有力な立法関係資料がないことと相まって、改正規定の趣旨を理解するための1つの重要な手掛かりとなる。 ア 法人税法22条の2第1項は「収益の額を益金の額に算入する時期」に関する通則的な定めであること及びかかる定めを設けた経緯・趣旨 『平成30年度 税制改正の解説』271~272頁には、次のような記述がある。 (※) 財務省『平成30年度 税制改正の解説』271頁 (※) 財務省『平成30年度 税制改正の解説』271頁~272頁 これらの解説は、法人税法22条の2第1項が「収益の額を益金の額に算入する時期」に関する通則的な定めであることを明らかにしている。「各事業年度の所得の金額の計算の通則」とは表現していない。なお、文脈上、法人税法22条の2第2項も含めて、収益の認識時期に係る通則的な規定であると捉えている可能性もある。 また、これらの解説によれば、収益認識に関する会計基準の導入を契機として収益の計上額に係る規定(法人税法22条の2第4項)を定めることがまず必要とされ、次いで、かかる規定の整備に伴い、収益の計上時期に係る規定(法人税法22条の2第1項等)の制定にまで切り込んだという説明が成り立ちそうである(この点は、本連載第13回「〈更なる検討〉『無償による資産の譲受けその他の取引』を含めていないことの意義(法人税法22条の2第1項との関係)」も参照)。 さらに、上記解説のうち点線部分については、法人税法22条の2第1項及び2項の適用対象法人を収益認識会計基準の適用対象法人に限定していないことの理由の1つになりそうである。上記解説のロジックを整理すると次のようになる。 イ 改正前における収益の益金算入時期の考え方や収益認識会計基準との整合性 『平成30年度 税制改正の解説』は、改正前における法人税法上の収益の益金算入時期について、次のとおり説明している。 (※) 財務省『平成30年度 税制改正の解説』271頁 上記説明では、法人税法上の収益の計上時期(益金算入時期)については、実現時点=収入すべき権利が確定したときであると解されており、より具体的にいえば、資産の販売又は譲渡については資産の引渡し、請負については役務の提供の完了をもって、実現ないし権利の確定とされていたが、これと異なる時点であっても一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従った処理の範囲内であればその時点で収益を認識することも認められていたと整理している。 その上で、『平成30年度 税制改正の解説』は、次のとおり、収益認識会計基準が採用した履行義務充足基準について、顧客が資産に対する法的所有権を有していることや企業が資産の物理的占有を移転したこと等を考慮することとされていること(前記(5)(前回)参照)に着目することで、「実現」や権利の「確定」という法人税法上の収益の益金算入時期の従来の考え方に基づく益金算入時期と大幅には変わらないとする。 (※) 財務省『平成30年度 税制改正の解説』271頁 この「大幅には変わらない」という表現は、収益認識会計基準が採用する履行義務充足基準による収益認識時期と、「実現」や権利の「確定」という法人税法上の収益の益金算入時期の従来の考え方に基づく益金算入時期とは、完全に重なるものではないことを言外に示しているといえよう。 そして、『平成30年度 税制改正の解説』は、次のとおり、法人税法22条の2第1項について、資産の引渡し又は役務の提供の時点を収益認識の原則的な時点とすることで、従来の「実現」や権利の「確定」といった考え方及び収益認識会計基準における考え方とも整合的となる規定とされたことを説明する。 (※) 財務省『平成30年度 税制改正の解説』271頁 先ほどは、履行義務充足基準による収益認識時期と、「実現」や権利の「確定」という法人税法上の収益に係る従来の考え方に基づく益金算入時期とを比較し、結果論的に、前者は後者と大幅には変わらないとしていた。 他方、ここでは、法人税法22条の2第1項が採用する引渡・役務提供基準が、「実現」や権利の「確定」という法人税法上の収益の益金算入時期の従来の考え方及び収益認識会計基準における収益認識時期の考え方と整合的であるという見解が示されている。 要するに、立案担当者は次のように整理しているようである。 引渡・役務提供基準が着目する側面とその趣旨については、次のウで取り上げる。 ウ 引渡・役務提供基準が着目する側面とその趣旨 法人税法22条の2第1項を定めるに当たり、収益の計上時期について、インプット(権利の確定といった対価の流入)ではなく、アウトプット(資産の引渡し又は役務の提供)の側面に着目する方針を採用したともいうべき、説明がなされている。 (※) 財務省『平成30年度 税制改正の解説』271頁 上記のような方針を採用した理由として、「上記の無償譲渡に関する論点や上記(2)で述べた収益の額についての考え方との整合性」が挙げられている。 「無償譲渡に関する論点」とは、既に見たように、法人税法においては、無償譲渡に係る収益についても課税対象となるが、「収入すべき権利」の「確定」という概念は無償譲渡については適用できないといった論点を指すと考える。 「上記(2)で述べた収益の額についての考え方」については、次の解説部分にあるとおり、「法人税法上、資産の販売等に係る収益の額は、資産の販売等により受け取る対価の額ではなく、販売等をした資産の価額をもって認識すべきとの考え方」を指すと考える(法人税法22条と収益の計上額の問題について、本連載第8回参照)。 (※) 財務省『平成30年度 税制改正の解説』271頁   (了)

#No. 346(掲載号)
#泉 絢也
2019/11/28

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第44回】「親会社等がいない会社間の株式交換」

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第44回】 「親会社等がいない会社間の株式交換」   RSM清和監査法人 公認会計士 西田 友洋   【はじめに】 今回は、親会社等がいない会社間の株式交換について解説する。株式交換とは、会社がその発行済株式の全部を他の会社に取得させ、既存の会社間において100%親子関係を実現するための組織再編である。 ※各ステップをクリックすると、それぞれのページに移動します。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 他の会社の子会社及び関連会社ではないX社が、X社株式を支払対価として、他の会社の子会社及び関連会社ではないY社株式を株式交換により取得した場合、X社は株式交換完全親会社となり、取得の会計処理を行う(企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針(以下、「指針」という)」110)。Y社は、株式交換完全子会社となる。 (1) 株式交換完全子会社株式の取得原価の算定 ① 新株を発行する場合 新株を発行する場合、株式交換完全子会社株式の取得原価は、株式交換完全親会社が交付する株式の時価(株式交換日の株価)で算定する(企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準基準(以下、「基準」という)」23、指針37、38)。 ② 条件付取得対価の場合 (ⅰ) 将来の業績に依存する場合 条件付取得対価が企業結合契約締結後の将来の業績に依存する場合(※1)、対価を追加的に交付する又は引き渡すときには、条件付取得対価の交付又は引渡しが確実となり、その時価が合理的に決定可能となった時点で、支払対価を取得原価として追加的に認識する。そして、のれんを追加的に認識するか、又は負ののれんを減額する(※2)。 また、条件付取得対価が企業結合契約締結後の将来の業績に依存する場合(※1)で、対価の一部が返還されるときには、条件付取得対価の返還が確実となり、その時価が合理的に決定可能となった時点で、返還される対価の金額を取得原価から減額する。そして、のれんを減額するか、又は負ののれんを追加的に認識する(基準27(1))(※2)。 (※1) 「条件付取得対価が企業結合契約締結後の将来の業績に依存する場合」とは、被取得企業又は取得した事業の企業結合契約締結後の特定事業年度における業績の水準に応じて、取得企業が対価を追加で交付する若しくは引き渡す又は対価の一部の返還を受ける条項がある場合等をいう(基準(注3))。 (※2) 追加的に認識又は減額するのれん又は負ののれんは、「企業結合日」時点で認識又は減額されたものと仮定して計算し、追加認識又は減額する事業年度以前に対応する償却額及び減損損失額は当期の損益に計上する(基準(注4))。 (ⅱ) 特定の株式又は社債の市場価格に依存する場合 条件付取得対価が特定の株式又は社債の市場価格に依存する場合(※3)、条件付取得対価の交付又は引渡しが確実となり、その時価が合理的に決定可能となった時点で、以下の会計処理を行う(基準27(2))。 (※3) 「条件付取得対価が特定の株式又は社債の市場価格に依存する場合」とは、特定の株式又は社債の特定の日又は期間の市場価格に応じて当初合意した価額に維持するために、取得企業が追加で株式又は社債を交付する条項がある場合等をいう(基準(注5))。 【新株予約権を交付する場合又は新株予約権付社債を承継する場合】 株式交換完全親会社が株式交換完全子会社の新株予約権者に新株予約権を交付する場合、又は株式交換完全親会社が新株予約権付社債を承継する場合には、当該新株予約権又は新株予約権付社債の時価を子会社株式の取得原価に加算し、同額を新株予約権又は新株予約権付社債として純資産又は負債に計上する(指針110-2)。 【取得関連費用の会計処理】 連結財務諸表上、取得関連費用(外部のアドバイザー等に支払った特定の報酬・手数料等)は、発生した事業年度の費用(販売費及び一般管理費)として処理する(基準26)。個別財務諸表上は、取得関連費用は、株式交換完全子会社株式の取得原価に含めて会計処理する(指針110)。   (2) 株主資本の会計処理 ① 新株を発行する場合 株式交換完全親会社が新株を発行した場合には、払込資本(資本金又は資本剰余金)の増加として会計処理する。増加すべき払込資本の内訳項目(資本金、資本準備金又はその他資本剰余金)は、会社計算規則39条2項に従い、株式交換契約で定めた金額に基づき決定する(指針111)。 ② 自己株式を処分する場合 株式交換完全親会社が自己株式を処分した場合には、増加すべき株主資本の額(自己株式の処分の対価の額。新株の発行と自己株式の処分を同時に行った場合には、新株の発行と自己株式の処分の対価の額)から処分した自己株式の帳簿価額を控除した額を払込資本の増加(当該差額がマイナスとなる場合にはその他資本剰余金の減少)として会計処理する。増加すべき払込資本の内訳項目(資本金、資本準備金又はその他資本剰余金)は、会社計算規則39条2項に従い、株式交換契約で定めた金額に基づき決定する(指針112)。 ③ 自社の株式以外の財産を交付する場合 株式交換完全親会社が株式交換完全子会社の株主に対して、株式交換完全親会社の株式以外の財産を交付する場合には、当該交付した財産の時価と企業結合日の前日における適正な帳簿価額との差額を株式交換日において、株式交換完全親会社の損益に計上する(指針113)。 なお、株式交換完全親会社の株主は、株式交換により取引は発生していないため、会計処理は不要である。 株式交換完全子会社の株主は、株式交換完全子会社株式と交換に、株式交換完全親会社株式を取得する。 この場合、投資は精算されていないため(投資は継続されているため)、株式交換完全親会社株式の取得原価は、株式交換完全子会社株式の企業結合直前の適正な帳簿価額に基づいて算定する(企業会計基準第7号「事業分離等に関する会計基準」43)。 株式交換完全子会社に対する投資と資本を相殺消去する(指針116)。 《設例》 X社は資本関係のないY社を子会社とするために株式交換を行った。X社が取得企業に該当する。 X社及びY社ともに他の会社の子会社でも関連会社でもない。 株式交換の対価として発行した株式交換日におけるX社株式の株価は25,000である。増加する株主資本はその他資本剰余金とした。 Y社の株主が保有している株式の簿価は20,000である。 Y社の株式交換日前日の貸借対照表は以下のとおりである。 (注) 諸資産及び諸負債は簿価=時価である。 〈会計処理〉 1 株式交換完全親会社X社の会計処理 (※1) 株式交換の対価として発行したX社株式の時価 2 株式交換完全子会社Y社の株主の会計処理 (※2) 株式交換完全子会社株式(Y社株式)の株式交換日直前の適正な帳簿価額 3 連結財務諸表における会計処理 投資と資本の相殺消去 (※3) Y社の帳簿価額 (※4) 差額 企業結合年度において、取得とされた企業結合に係る重要な取引がある場合には、以下の事項を注記する。なお、個々の企業結合については重要性は乏しいが、企業結合年度における複数の企業結合全体について重要性がある場合には、(1)、(3)及び(4)について企業結合全体で注記する。また、連結財務諸表における注記と個別財務諸表における注記が同じとなる場合には、個別財務諸表においては、連結財務諸表に当該注記がある旨の記載をもって代えることができる(基準49)。 【暫定的な会計処理の確定】 企業結合年度の翌年度において、暫定的な会計処理の確定に伴い、取得原価の当初配分額に重要な見直しが行われた場合、当該見直しが行われた事業年度において、その見直しの内容及び金額を注記する。なお、連結財務諸表における注記と個別財務諸表における注記が同じとなる場合、個別財務諸表においては、連結財務諸表に当該注記がある旨の記載をもって代えることができる。 なお、計算書類では、上記のような注記は必ずしも求められていない。 *  *  * 以上、4のステップをまとめたフロー・チャートを再掲する。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 (了)

#No. 346(掲載号)
#西田 友洋
2019/11/28

改正相続法に対応した実務と留意点 【第10回】「遺産分割前の財産処分に関する留意点」

改正相続法に対応した実務と留意点 【第10回】 「遺産分割前の財産処分に関する留意点」   弁護士 阪本 敬幸   今回は、遺産分割前の財産処分に関する留意点について解説する。   1 概要 相続開始後、遺産分割前に、一部の相続人が相続財産を処分することがある。伝統的な考えによれば、このように処分された財産は、遺産分割時に遺産中に存在しないため、遺産分割の対象とならないのが原則とされてきた。 改正前民法では、このような場合、財産処分をした相続人に対し、その他の相続人から不当利得・不法行為等に基づき返還・賠償を求める必要があった。 一方、改正後民法906条の2は、下記のように定め、共同相続人全員の同意(処分者の同意は不要。同条第2項)があれば、遺産分割前に処分された場合も遺産として存在するものとみなすことができるとした。 本条文は、2019年7月1日から施行されており、特段の経過措置はないため、同日以後に発生した相続に関して適用される。   2 具体例による検討 〔例①〕 被相続人Aが死亡し、相続人である妻B、子C、子DがAを相続した。相続財産は2,000万円、Dは生前に400万円の生前贈与を受け、相続開始後、相続財産から200万円を無断で処分した。 遺産分割において、各相続人の取得額はいくらになるか。 この場合、Dは相続財産から200万円を処分しているが、他の相続人は、処分された財産が遺産として存在するものとみなす旨の同意をしていない。したがって、原則通り、遺産分割の対象となる財産としては現存する財産に限られ、1,800万円(2,000万-200万)が遺産分割の対象となる。 注意しておきたいのは、具体的相続分は相続開始時に存在した財産を基礎として算定されることである。具体的相続分及び遺産分割で取得できる金額を計算すると、 相続開始時に存在した財産2,000万円 + Dの生前贈与の持ち戻し400万円 = 2,400万円 なので、以下の通りとなる。 B及びCは、Dが無断で処分した200万円について、改正前民法と同様に、不当利得又は不法行為等に基づき、Dに対し請求することとなる。 改正後民法906条の2は関係しないが、遺産分割で取得できる金額の基本的な計算方法について、再確認されたい。 〔例②〕 被相続人Aが死亡し、相続人である妻B、子C、子DがAを相続した。相続財産は2,000万円、Dは相続開始後、相続財産から800万円を無断で処分し、そのうち400万円をCに渡した。 Bは、Dの処分した800万円について遺産とみなすべきと主張しているが、C及びDは同意していない。 Bの主張は認められるか。 改正後民法906条の2第2項は、「共同相続人の1人又は数人により同項の財産が処分されたときは、当該共同相続人については、同項の同意を得ることを要しない。」としている。 本件では、相続財産を処分したのはDであり、Cの同意が存在しない以上、上記906条の2第2項の要件を満たさず、Dの処分した800万円を遺産とみなすことはできないのが原則である(もちろん、CがDと共同で財産処分したといえる場合には、Cの同意も不要である)。したがって、原則としては、Bの主張は認められない。 もっとも、本件のような場合に、利益を得ているCの同意がないためにBに不利益が生じるようなことがあれば公平を害する。したがって、このような場合でも、信義則(民法1条2項)により、Cの不同意は制限されるといった考えもあり得るだろう。 〔例③〕 被相続人Aが死亡し、相続人である妻B、子C、子DがAを相続した。相続財産は2,000万円、Dは相続開始後、相続財産から800万円を無断で処分した。 Bは、Dの処分した800万円について遺産とみなすべきと主張し、Cもこれに同意していたが、CはDから400万円を渡されて同意を撤回すると述べるに至った。 Bの主張は認められるか。 法制審議会民法(相続関係)部会(第25回会議(平成29年12月19日)開催)の「部会資料25-2」(13頁)によれば、 とされている。 本件においては、Cが同意を撤回することは許されず、Dの処分した800万円は遺産とみなされることとなる。 〔例④〕 被相続人Aが死亡し、相続人である妻B、子C、子DがAを相続した。相続財産は2,000万円である。 Bは、「C又はDが、相続開始後、相続財産から800万円を無断で処分したから、無断で処分された財産も遺産とみなすべき」と主張している。 Cは、「800万円を処分したのはDである」と主張しているが、処分された財産も遺産とみなすことには同意している。 Dは、「800万円を処分したのはCである」と主張しているが、処分された財産も遺産とみなすことには同意している。 処分された800万円を遺産とみなすことはできるか。 上記部会資料によれば、 とされている。 したがって、本件において、処分された800万円を遺産とみなし、遺産分割を行うことは可能である。   (了)

#No. 346(掲載号)
#阪本 敬幸
2019/11/28

今から学ぶ[改正民法(債権法)]Q&A 【第10回】「意思能力の明文化・意思表示に関する規定の見直し(その1)」

今から学ぶ [改正民法(債権法)]Q&A 【第10回】 「意思能力の明文化・意思表示に関する規定の見直し(その1)」   堂島法律事務所 弁護士 奥津  周 司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎   【Q】 今回の改正で「意思能力」についての明文化がされたと聞きましたが、どのような意味があるのでしょうか。 また、意思表示に関する規定も見直しがされたとのことですが、どのような点が改正されたのでしょうか。 【A】 「意思能力」とは、契約などの法律行為をする際に必要となる能力のことであり、意思能力を有しない者がした契約は無効とされている。超高齢化社会を迎えた日本では、認知症等により意思能力を喪失する高齢者が増加傾向にあり、こうした人たちを保護するためにも意思能力の制度について明文化されたことの意味がある。 また、意思表示が当事者の自由な真意に基づいてなされたものであれば問題ないが、なかには誤解や詐欺などにより、意思表示に問題があるケースがある。改正法では、意思表示に問題があるケースのうち①心裡留保、②錯誤、③詐欺について改正を加えることとした。 (※) ②錯誤、③詐欺の改正については、次回以降に取り上げる。   1 「意思能力」について 「意思能力」とは、行為の結果を判断するに足るだけの精神的能力などといわれる。意思能力を有しない者がした契約などの法律行為は無効であり、判例・学説ともにこれを支持している。 認知症等により意思能力を喪失してしまった高齢者が、今後増加するといわれており、意思能力の有無について問題となる事例が頻発していくことが考えられる。意思能力の制度は、意思能力を有しない者が行った契約等の法律行為を無効にする効果があるため、認知症等により意思能力を喪失した高齢者が不当な契約を締結させられたようなケースでは、高齢者を保護する役割を果たす。 一方で、こうした高齢者と契約を締結することを考えている事業者に対しては、意思能力制度が存在することをわかりやすく知らせておくことがトラブルの防止にもつながる。 改正法では、こうした社会情勢に対応するため、意思能力制度について明文化を行い、広く国民に分かりやすい制度とすることにしたものである。 明文化される条文は次のとおりである。 事業者としては、契約の相手方が意思能力を有するのかの確認を行うことが必要なケースが増加してくると思われる。必要に応じて、医師の診断書等の提出を求めるなど対応を考える必要がある。   2 意思表示に問題があるケース ◎ 心裡留保 心裡留保とは、例えば不動産の所有する人が冗談で、「この不動産をあなたに売ります。」と意思表示したケースが該当する。このような意思表示がすべて有効とされると、社会的に大きな混乱をきたすことにもつながる。 そこで現行法では「相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたとき」は無効とすると定めていた(現行法93条ただし書)。しかし、表意者の相手方の保護としては、「表意者の真意」がどのようなものかを知らなくても、「真意と異なること」を知っていれば保護をする必要性はないと解されていた。そこで改正法では、その旨を明文化している。 また、このような表意者の相手方から、不動産を購入した第三者のように表意者の意思表示が心裡留保に基づくものと知らない第三者が利害関係に入ることがある。仮に、心裡留保により表意者と相手方の契約が無効となると、当該第三者が不当に害されることになる。 このような「善意の第三者」を保護するために、現行法下においても判例により善意の第三者を保護することとされていた。改正法では、次のとおり、明文により善意の第三者を保護することを定めている(下線筆者)。 (了)

#No. 346(掲載号)
#奥津 周、北詰 健太郎
2019/11/28

〔検証〕適時開示からみた企業実態 【事例41】株式会社サマンサタバサジャパンリミテッド「株式会社コナカ及び株式会社サマンサタバサジャパンリミテッドによる資本業務提携に関する基本合意書締結のお知らせ」(2019.9.18)

〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例41】 株式会社サマンサタバサジャパンリミテッド 「株式会社コナカ及び株式会社サマンサタバサジャパンリミテッドによる 資本業務提携に関する基本合意書締結のお知らせ」 (2019.9.18)   事業創造大学院大学准教授/公認会計士 鈴木 広樹   1 今回の適時開示 今回取り上げる適時開示は、株式会社サマンサタバサジャパンリミテッド(以下、「サマンサタバサ」という)が2019年9月18日に開示した「株式会社コナカ及び株式会社サマンサタバサジャパンリミテッドによる資本業務提携に関する基本合意書締結のお知らせ」である。株式会社コナカ(以下、「コナカ」という)と連名で開示している。 イメージが全く異なる両社による業務提携を不思議に思ったのは、筆者だけではないだろう。業務提携の内容として、以下の6つを記載しているのだが、共同出店や、広告宣伝活動の協働が上手くいくのかどうか、疑問に思ってしまう。   2 サマンサタバサのほうは嫌々? 今回の開示はサマンサタバサとコナカが連名で行っているのだが、よく読むと、業務提携に前向きなのはコナカだけで、サマンサタバサのほうはそうではなさそうなのである。「本資本業務提携の目的及び理由」は次のように記載されている。 3段落目まで、ずっとコナカ側の記載で、3段落目には「コナカグループにとってシナジー効果が期待できると判断」と記載されている。それに対して、サマンサタバサ側の記載は4段落目のみであり、「シナジー効果が期待できると判断」などとは記載されていない。 それもそのはずである。サマンサタバサは、有価証券報告書の「事業等のリスク」において、「ブランド力の維持について」として、次のように記載するほど(第25期有価証券報告書)、自社のイメージを大切にしている会社なのである。背後にコナカのイメージがちらついてしまうことをリスクと捉えているのではないだろうか。   3 なぜ最初からコナカへ譲渡しなかったのか? 今回の開示のタイトルに「資本業務提携」とあるが、資本提携は既に行われている。前日の2019年9月17日に、コナカはサマンサタバサを関連会社化しているのである(2019年9月2日「主要株主である筆頭株主及びその他の関係会社の異動に関するお知らせ」、2019年9月17日「(開示事項の経過及び変更)『主要株主である筆頭株主及びその他の関係会社の異動に関するお知らせ』の変更に関するお知らせ」)。 ということは、コナカは、まずサマンサタバサ株式に対して公開買付けを行う等して(嫌がる同社に対して敵対的TOBを)、同社を関連会社化したのだろうか、と想像してしまいそうなのだが、実際はそうではない。コナカは、サマンサタバサの創業者である寺田和正氏(以下、「寺田氏」という)から、コナカの代表取締役社長である湖中謙介氏(以下、「湖中氏」という)を経由して、サマンサタバサ株式を取得している。 まずサマンサタバサは、2019年4月12日に「株式の売出しに関するお知らせ」を開示した。寺田氏が、保有する同社株式の半数を湖中氏に譲渡するという内容である。なお、同社は、同時に、寺田氏が代表取締役を退任すること等を記載した「代表取締役及び取締役の異動並びに取締役候補者の選任に関するお知らせ」も開示している。 寺田氏から湖中氏へのサマンサタバサ株式の譲渡は、単なる個人間の株式譲渡だったのだろうか。おそらくそうではないだろう。譲渡価額は34億円である。湖中氏は資産家かもしれないが、それでも個人で投資するにはハードルが高い。その証拠に、湖中氏の資金調達に時間がかかったため、当初は2019年4月22日とされていた受渡期日が何度も変更され、最終的に2019年6月21日となった(2019年4月23日「(開示事項の変更)『株式の売出しに関するお知らせ』の一部変更に関するお知らせ」、2019年5月14日「(開示事項の変更)『株式の売出しに関するお知らせ』の一部変更に関するお知らせ」、2019年6月21日「(開示事項の経過)株式の売出しに関するお知らせ」)。 寺田氏が湖中氏へサマンサタバサ株式を譲渡した時点で、サマンサタバサとコナカの資本業務提携について話し合われていたと考えるのが自然ではないだろうか。では、そうだとしたら、なぜ寺田氏は、コナカへ直接サマンサタバサ株式を譲渡しなかったのだろうか。その時点では、コナカとの資本業務提携について、未だサマンサタバサの他の経営陣の合意が得られていなかったため、寺田氏は、コナカではなく、まず湖中氏へサマンサタバサ株式を譲渡したのではないだろうか。まず湖中氏へ、次にコナカへと段階を踏んだほうがいいと考えたのかもしれない。 2019年4月12日に「株式の売出しに関するお知らせ」と同時に開示された「代表取締役及び取締役の異動並びに取締役候補者の選任に関するお知らせ」には、湖中氏がサマンサタバサの取締役に就任することも記載されていた。しかし、その後、2019年4月26日に「(開示事項の変更)『代表取締役及び取締役の異動並びに取締役候補者の選任に関するお知らせ』の一部変更に関するお知らせ」が開示され、湖中氏のサマンサタバサ取締役就任の記載が削除された。「変更の理由」は、湖中氏の「業務上の都合で兼務が困難であることが判明」したためであるとされているが、サマンサタバサの寺田氏以外の経営陣に反発があり、それに配慮したためではないだろうか。   4 寺田氏の本当の意図は? 寺田氏の代表取締役退任はインサイダー情報なので、サマンサタバサのほとんどの従業員は、「代表取締役及び取締役の異動並びに取締役候補者の選任に関するお知らせ」が開示された2019年4月12日に初めてその事実を知ったはずである。同社の中には動揺が広がっただろう。 そうしたこともあってか、3日後の4月15日、同社は「代表取締役の異動の理由の補足説明について」を開示している。そこには次のように記載されている。同社による開示であるので、初めの文章では、主語が「弊社」とされているが、7段落目では、主語が「私」(寺田氏)になっている。 寺田氏は代表取締役を退任すべきだったのだろうか。上述の筆者による推測が正しくなかったとしても、湖中氏へのサマンサタバサ株式譲渡後の展開は容易に想像できたはずである。退任するとしても、コナカとの資本業務提携を軌道に乗せた後ではなかったのだろうか。 寺田氏が湖中氏に譲渡したサマンサタバサ株式は、保有株式の半数であり、現在、寺田氏とコナカは、ともに同数の株式を保有する、サマンサタバサの筆頭株主である。もしかすると、譲渡を保有株式の半数にとどめたところに、寺田氏の意図があるのかもしれない。コナカと同数の株式を保有し、何かあったらコナカを牽制しようと考えているのではないだろうか。そして、本当に「今後はファウンダー(創業者)という立場で、日本発世界ブランドの確立に向け、国内事業と海外事業共に」、サマンサタバサの「今後の成長のために支援をして」いこうと考えているのではないだろうか。この推測も、正しいかどうかは分からないが。 (了)

#No. 346(掲載号)
#鈴木 広樹
2019/11/28

《速報解説》 監査等委員会監査の実態について監査役協会より研究報告が公表される~監査等委員会設置会社会員907社のアンケート結果をもとに検討~

《速報解説》 監査等委員会監査の実態について監査役協会より研究報告が公表される ~監査等委員会設置会社会員907社のアンケート結果をもとに検討~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2019年11月26日、日本監査役協会 監査等委員会実務研究会は、「監査等委員会監査の実態と今後の在り方について-重要な業務執行の決定の取締役への委任が監査に与える影響と組織監査に関する考察を中心に-」を公表した。 これは、監査等委員会設置会社の実務実態を検証し、実務の参考となる好事例を見出すべく、①「重要な業務執行の決定の取締役への委任が監査等委員会の監査に与える影響について」と②「モニタリング・モデルを志向している監査等委員会による実務実態の把握と、モニタリング・モデルを機能させるための要件について」の側面から検討したものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 今回のアンケート調査からは、多くの会社で、従来の監査役(会)設置会社の運用から大きな変更がないことが明らかとなった一方で、重要な業務執行の決定の全部又は一部の取締役への委任や内部統制システムを活用した組織監査といった、監査等委員会設置会社の導入による新たな実務運用の積極的な活用に取り組んでいるケースも一定数見受けられたとのことである(21ページ)。 1 取締役会に委任された事項に対する監査方法の変化 監査等委員会設置会社に特有の制度である「重要な業務執行の決定の取締役への委任」を実際に行っている会社はまだ少数にとどまるとのことである(6ページ)。 委任を行っている会社の回答を見ると、新たに実施、又は頻度を増やした監査活動に共通するのは情報収集であり、情報収集と同時に会議への出席やヒアリングなどを通じて、リスクの所在を確認し、場合によっては対応に向けての情報を聴取、あるいは、取締役として会議に出席して意見を述べるケースがあるかもしれず、また、監査等委員は取締役であり、取締役会では意見の表明とともに議決権を行使するが、報告事項として取締役会で情報を収集し、発言の機会があるのであれば、監査実務への影響は感じていないようであるとのことである(7ページ)。 2 モニタリング・モデルを志向している監査等委員会による実務実態 監査等委員会設置会社は、監査を監督の一部として捉え、取締役会の中に設置する委員会が、実際の監査をモニターするという、いわゆる組織監査を想定して設置された機関設計である(8ページ)。 監査等委員会内における役割分担としては、主に常勤者が選定監査等委員として直接監査を行い、その結果を非常勤者に報告する運用がなされている会社が大半ではあるとのことである(9ページ)。 監査等委員会における直接監査とそれ以外の部署による結果報告の使い分けを行っている会社もあり、会議出席、報告聴取、書類閲覧、実地調査の4項目の中では、相対的に書類閲覧、実地調査について結果報告を受ける例が多く見受けられるとのことである(9ページ)。 監査の各項目における共通した全体的な傾向として、大半の会社においては、監査等委員会内における役割分担として、主に常勤者が選定監査等委員として直接監査を行い、その結果を非常勤者に報告する運用がなされている一方、監査等委員会における直接監査とそれ以外の部署による結果報告の使い分けを行っている会社は少数にとどまっているとのことである(19ページ)。 (了)

#No. 345(掲載号)
#阿部 光成
2019/11/28

《速報解説》 監査役協会、2019.3有報における「監査役会等の活動状況」の早期適用開示例を整理・公表

《速報解説》 監査役協会、2019.3有報における「監査役会等の活動状況」の 早期適用開示例を整理・公表   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2019年11月26日、日本監査役協会は、「2019年3月期有価証券報告書の記載について(監査役会等の活動状況)」を公表した。 これは、2019年1月31日に改正された「企業内容等の開示に関する内閣府令」により、有価証券報告書等において、監査役監査の組織、人員及び手続に加え、監査役及び監査役会の活動状況の記載が求められていることから、「監査役会等の活動状況」を、2019年3月31日以後に終了する事業年度から早期に開示した事例を調査したものである。添付資料として、早期適用を行う旨を明示した会社の記載実例も紹介されている。 なお、日本監査役協会は、2019年4月16日に「『企業内容等の開示に関する内閣府令』における『監査役監査の状況』の記載について」を公表しているところである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 下記の記載のほかに、早期適用を行う旨は明示していないが参考になると思われる記載も紹介されている。 (1) 監査役会の開催頻度・個々の監査役の出席状況 ① 年間の開催回数は各社とも記載している。 ② 表形式で記載している会社や、監査役会等の所要時間を記載している会社がある。 ③ 監査役等の活動状況について、取締役会等の重要な会議への出席、取締役の職務執行状況の監査、子会社からの報告聴取、取締役の競業取引、利益相反取引、会社による無償の利益供与に関する報告聴取などが見られる。 (2) 常勤監査役等の活動状況 取締役会等の重要な会議への出席、内部監査部門との連携、監査結果を踏まえた取締役との面談などが見られる。 (3) 社外監査役等の活動状況 社外監査役等の活動状況について記載している会社がある(味の素、リコー)。 (4) 監査役会等における検討事項・活動状況 監査役会等における検討事項・活動状況について、監査方針・監査計画、監査報告の作成、会計監査人の選解任、会計監査人の評価、常勤監査役等の職務執行状況報告などを記載している会社がある。 (5) 特徴のある記載 ① 監査役会等の一般的な活動状況に加えて、年度の具体的な活動における重点項目を記載している会社がある(味の素、三菱UFJ フィナンシャル・グループ)。 ② 監査役会等の一般的な活動状況に加えて、個別の不祥事件に関する活動について記載している会社がある(野村ホールディングス)。 (了)

#No. 345(掲載号)
#阿部 光成
2019/11/27

《速報解説》 国税庁、軽減税率制度の区分経理に当たっての5つの留意点を公表~即時充当によるキャッシュレス・消費者還元に係る消費税の仕入税額控除の考え方も明らかに~

 《速報解説》 国税庁、軽減税率制度の区分経理に当たっての5つの留意点を公表 ~即時充当によるキャッシュレス・消費者還元に係る消費税の仕入税額控除の考え方も明らかに~   Profession Journal 編集部   消費税の軽減税率制度導入から約2ヶ月が経過しようとする中、国税庁はこの間も国税庁動画チャンネルに「よくわかる消費税軽減税率制度」を掲載するなど周知活動を行っているが、このほど新たに軽減税率制度実施後の消費税申告書作成の留意点に関する資料として「事業者の皆様へ(~区分経理から消費税申告書作成まで~)(令和元年11月)」を公表した。 本資料では「区分経理(記帳)に当たっての留意点」として次の5項目を挙げ、(1)では旧税率8%と軽減税率8%は同じ税率であるものの国税・地方税の割合が異なるため区分経理する必要がある点、(2)では事業者の判断によってイートイン(店内飲食)とテイクアウト(持ち帰り)の税込価格を統一している場合でも、販売時点で顧客に対し「意思確認」を行うなどして判定した適用税率に基づき、区分経理・申告を行う必要がある点について解説している。 さらに、「誤った税率に基づいて税込対価を計算したレシート」を(3)交付した場合と(4)受領した場合の対応がそれぞれ示されており、(3)については、誤った税率に基づいて税込対価を計算したレシートを交付していた場合でも、「取引の事実」に基づく適正な税率で計算して申告する必要があるとし、(4)については、仕入税額控除の適用を受けるためには「一定の事項」が記載された「区分記載請求書等」の保存が必要であり、誤った税率に基づいて税込対価を計算したレシートを受領した場合には、取引先に対して取引の事実に基づくレシートの再交付を依頼するといった対応が必要となるとしている。 上記「一定の事項」について、区分記載請求書等には次の事項が記載されている必要があるが、受領者自身によって取引の事実に基づいた追記をすることができるのは⑥⑦に限られていることから、適用税率の誤りによる税込対価の額を追記することはできない。 (※) ⑥⑦が区分記載請求書等保存方式で新たに追加された事項 また、上記「(5)必要事項が記載されていない請求書等を受領した場合」の対応としては、(4)と同様、取引相手への再交付を依頼するか、上記⑥⑦については受領者自身での追記を行う対応が必要とされているが、再交付や追記など後になっての作業の手間を避けるためにも、請求書等を受領したタイミングでその内容を確認することが必要といえる。 これは先々のインボイス制度下でも同様で、さらに同制度では受領者による追記も認められないことから(「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」問21)、今後は請求書等受領時の確認作業を習慣化することが求められよう。 なお本資料では上記(1)から(5)に加え、その他の事項として「飲食料品の委託販売を行っている場合」「即時充当によるキャッシュレス・消費者還元に係る消費税の仕入税額控除の考え方」が示されている。特に後者は本資料とは別の資料として国税庁の軽減税率特集ページに掲載するなどより周知を図った上で、即時充当による消費者還元を受けた場合には、商品対価の合計額が「課税仕入れに係る支払対価の額」となる一方、自社ポイントのように、商品等の購入の際のポイント利用が「値引き」となる場合には、「値引き後の金額」が「課税仕入れに係る支払対価の額」となることを明示している。 (※) 国税庁ホームページより (了)

#No. 345(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2019/11/27

プロフェッションジャーナル No.345が公開されました!~今週のお薦め記事~

2019年11月21日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.345を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2019/11/21
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