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国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第14回】「PEがある場合の源泉徴収免除制度は事業的規模に満たない不動産所得でも利用できるのか」

国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第14回】 「PEがある場合の源泉徴収免除制度は事業的規模に満たない不動産所得でも利用できるのか」   税理士 菅野 真美   - 質 問 - 外国人で、日本に恒久的施設のある人がいます。その人が、都心のマンションを1室保有して、法人に賃貸しています。法人への賃貸の場合、10.21%の税率で源泉徴収されると思いますが、源泉徴収の免除証明書の交付を申請した場合は許可されるのでしょうか。   ◆ ◆ 解 説 ◆ ◆ ▷非居住者の不動産所得の課税関係 非居住者が所有する日本の不動産を賃貸したことから生ずる所得は、国内源泉所得となる(所法161七)。この不動産所得については、非居住者で、恒久的施設が日本にあろうとなかろうと日本での課税対象となり、いずれも、申告しなければならない(所法164①)。 また、賃貸料の支払者は、支払時に原則として支払額の10.21%の所得税等を源泉徴収しなければならない(所法212①、213①、復興財確法28)。ただし、支払者が個人で、その人又はその親族の居住の用に供されるものについては、源泉徴収を要しない(所令328二)。 非居住者は、日本に滞在しないことが前提であることから、納税管理人が確定申告納付を行うことになる。不動産所得は、源泉分離課税でなく、申告納付となることから、源泉徴収された税額は、確定申告において精算されることになる。   ▷非居住者の源泉徴収の免除制度 非居住者の所得について、源泉徴収されるものは、居住者の所得と比較すると対象が広くなっている。これは、非居住者という性質上、申告納税の確実性に懸念があることから、支払時に源泉徴収という形で、納税を確保することが合理的だからと考える。 しかし、その非居住者に国内の拠点がある場合は納税の確実性が増すことから、あえて支払時に源泉徴収をする必要性が少なくなる。そこで、国内に「恒久的施設」といわれる施設を有する非居住者が、納税地の所轄税務署長から源泉徴収の免除証明書の交付を受け、この証明書を国内源泉所得の支払者に提示した場合には、その証明書の有効期間内にその支払者が支払う国内源泉所得のうち特定のものについては、源泉徴収を要しないこととされている(所法214)。   ▷事業的規模に満たない不動産所得についての源泉徴収の免除は可能か この非居住者の源泉徴収の免除制度は平成26年度税制改正(ただし平成28年4月1日施行)により改正されたが、改正以前の制度において、事業的規模に満たない不動産所得については、源泉徴収免除が可能か否かについての争いがあった(平28-12-20公表裁決)。 この裁決では、非居住者が1物件の不動産を賃貸していたが、これは、代理人等を通じて行う事業に帰せられる所得であることから、他の要件を満たす場合は、源泉徴収の免除が可能と考え、源泉徴収免除の申請を行ったが、この貸付の規模は事業的規模に該当しないことから、代理人等を通じて行う事業に帰せられる国内源泉所得に該当しない。したがって、源泉徴収の免除はできないとされた。 この結論になるに際し、平成26年度税制改正前の所得税法214条(源泉徴収を要しない非居住者の国内源泉所得)がどのようになっていたかを確認することとする。 上記の「事業」という概念は、所得税法上の意義と同一のものである。条文では定められていないが、上述した裁決では、 とされ、これらの観点から事業に該当しないことから、源泉徴収免除の要件である事業に該当しないと判断された。 このような事業の概念は難しく、実務上、不動産所得については5棟10室基準で判断することが一般的であり、その観点からみても本件は、1物件の賃貸では事業的規模には該当しない。   ▷現行税制の確認 それでは、現行税制ではどうなっているのか。 不動産所得は第7号に該当し、この定義では特に事業的規模を要求していない。また、国内源泉所得の次の括弧の中にある「政令で定めるものを除く」に、不動産所得は含まれていない(所令332)。 したがって、現行税制においては、不動産所得の規模が事業的規模以下であったとしても、他の要件を満たした恒久的施設を有する非居住者が恒久的施設に帰属する不動産所得を有する場合は、源泉徴収の免税の適用を受けることができると考える。   (了)

#No. 257(掲載号)
#菅野 真美
2018/02/22

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例59(消費税)】 「設立事業年度に決算期変更することにより、設立事業年度を短期事業年度にすることができたにもかかわらず、その説明をしなかったため、2期目から課税事業者になってしまった事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例59(消費税)】   税理士 齋藤 和助     《基礎知識》 ◆特定期間(消法9の2④) 特定期間とは、法人の場合は原則として、その事業年度の前事業年度(7ヶ月以下の短期事業年度を除く)開始の日以後6ヶ月の期間をいう。 ◆特定期間における課税売上高(消法9の2③) 特定期間における課税売上高については、法人が特定期間中に支払った所得税法第231条1項(給与等、退職手当金等又は公的年金等の支払明細書)に規定する支払明細書に記載すべき給与等の金額に相当するものの合計額とすることができる。 ◆特定期間における課税売上高による納税義務の免除の特例(消法9の2①) 法人のその事業年度の基準期間における課税売上高が1,000万円以下である場合において、その法人のその事業年度に係る特定期間における課税売上高が1,000万円を超えるときは、その法人のその事業年度における課税資産の譲渡等については、納税義務は免除されない。 ただし、その事業年度の前事業年度が7ヶ月以下の短期事業年度である場合には、この特例は適用されない。また、前事業年度が7ヶ月を超え8ヶ月未満の場合であっても、新設法人が設立後に決算期変更を行って、特定期間の末日の翌日から前事業年度終了の日までの期間が2ヶ月未満である場合は短期事業年度に該当し、この特例は適用されない。       (了)

#No. 257(掲載号)
#齋藤 和助
2018/02/22

理由付記の不備をめぐる事例研究 【第42回】「寄附金(売上値引・特別拡売費)」~売上値引が寄附金に該当すると判断した理由は?~

理由付記の不備をめぐる事例研究 【第42回】 「寄附金(売上値引・特別拡売費)」 ~売上値引が寄附金に該当すると判断した理由は?~   千葉商科大学商経学部講師 泉 絢也   今回は、青色申告法人X社に対して行われた「得意先からの特別拡売費の負担依頼を受けて行った売上値引が寄附金に該当すること」を理由とする法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた前橋地裁平成15年9月5日判決(税資253号順号9425。以下「本判決」という)を素材とする。   1 更正通知書に記載された更正の理由(本件理由付記) (注)  素材とした本判決の判決文から読み取ることができる理由付記の一部を筆者が加工している。   2 本件理由付記から読み取ることができる関係図   3 本判決の判断 本判決は、大要次のとおり、理由付記に不備はないと判断した。 (1) 求められる理由付記の程度 (2) 理由付記の十分性   4 検討 (1) 関係法令等の確認 本件更正処分の関係法令等を簡単に確認しておく(詳細は、本連載【第11回】参照)。 法人が支出した寄附金とは、金銭その他の資産や経済的な利益の贈与又は無償の供与であり、いわば事業関連性の有無を問わず、対価を伴わない支出であると解されている(法法37⑦)。 また、直接的・個別的な対価を伴わない支出で、かつ、形式上、寄附金の額から除かれる広告宣伝費等の費用に該当しないものであっても、その支出を行うことにより、①対価的意義を有するものと認められる経済的利益の供与を受けている場合、又は②営利法人としてこれを受けることなくその支出相当額の利益を手離すことを首肯するに足りる何らかの合理的な経済目的等がある場合には、寄附金の額に含まれないと解されている。 子会社等の整理・再建に際し、相当の理由(経済的合理性)がある場合のその子会社等に対する債権放棄は寄附金ではなく、そのまま損金の額に算入される旨を明らかにした通達もある(法人税基本通達9-4-1、9-4-2)。なお、国税庁のタックスアンサー「No.5280 子会社等を整理・再建する場合の損失負担等に係る質疑応答事例等」によれば、この場合の子会社等には、資本関係、人的関係、資金関係を有する者のほか、取引関係において、事業関連性を有する者が含まれる。 (2) 求められる理由付記の程度 本件更正処分は、X社が、売上先であるB社のD副事業部長から特別拡売費の負担依頼を受け、後日、D事業部長と覚書で合意した金額2億7,000万円を売上値引として売上から減算処理している、というX社の帳簿書類の記載又はその前提たる事実を、処分の前提事実としている。その上で、当該売上値引は、値引額算定に係る合理的基準がなく、かつ、X社が負担する合理的理由が認められないので、当該金額を当期利益に加算すると同時に、寄附金に該当するものとしてその損金不算入額を算出するものである。したがって、帳簿書類の記載自体を否認することなしに更正をする場合に該当すると考える。 すると、理由付記の程度としては、更正通知書記載の更正の理由が、そのような更正をした根拠について帳簿書類の記載以上に信憑力のある資料を摘示するものでないとしても、更正の根拠を更正処分庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という理由付記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的に明示するものである限り、法の要求する更正理由の付記として欠けるところはないことになる(最高裁昭和60年4月23日第三小法廷判決・民集39巻3号850頁等参照)。 (3) 理由付記の十分性 次のとおり、本件理由付記は、法の求める理由付記として十分なものであると考える。 本件理由付記は、処分の前提事実として、X社が、売上先であるB社のD副事業部長から特別拡売費の負担依頼を受け、後日、D事業部長と覚書で合意した金額2億7,000万円を売上値引として売上から減算処理していることを記載している。その上で、当該売上値引について、値引額算定に係る合理的基準がないこと及びX社が負担する合理的理由が認められないことという2つの観点から、当該金額を当期利益に加算すると同時に、寄附金に該当するものとしてその損金不算入額を算出するものであることを記載している。 このような本件理由付記に対して、寄附金と判断するに至った、より具体的ないし個別的な事実を、より踏み込んで記載すべきであるという意見もあるであろう。しかしながら、本判決が、上記覚書には「X社が負担することになった拡売費用の額を算出した根拠となる基準が何ら記載されていない」と判示していることに加えて、値引額算定に係る合理的基準又はX社が負担する合理的理由を明らかにする帳簿書類が作成・保存されていないという前提を置くとすれば、本件理由付記程度の記載であってもやむを得ない面がある。 すると、本件理由付記は、その記載内容から法令上の根拠が明らかになるものであり、かつ、法令上の要件に対応する具体的な事実を記載するものである。また、これによって課税庁の判断過程が明らかとなるものといえる。 したがって、更正処分庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、更正の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与えるという理由付記の趣旨目的に適うものであると考える。 *  *  * 次回は、「創業者の配偶者に対する金員の支給が寄附金に該当すること」を理由とする法人税更正処分の理由付記の事例を取り上げる。 (了)

#No. 257(掲載号)
#泉 絢也
2018/02/22

平成30年3月期決算における会計処理の留意事項 【第1回】

平成30年3月期決算における会計処理の留意事項 【第1回】   仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋     Ⅰ 税制改正   平成28年度税制改正、平成29年度税制改正、平成30年度税制改正大綱等のうち、会計処理等において留意すべき改正点としては、以下が挙げられる。 (注) なお、本解説では、平成28年度税制改正、平成29年度税制改正、平成30年税制改正大綱等のうち、会計処理等において留意すべき改正点のみを解説しているため、全てを解説しているわけではない。   1 税率の変更(国内) 平成28年度税制改正において、法人税、地方法人税及び地方税の税率の変更が行われた。また、消費税増税の延期に伴い、地方法人税及び地方税の税率の変更時期が延期された。 なお、平成30年度税制改正大綱において、法人税、地方法人税及び地方税の税率の変更はない。 (1) 法人税率 平成28年度税制改正において、法人税率は、平成28年4月1日以後に開始する事業年度から23.9%から23.4%へ、平成30年4月1日以後に開始する事業年度からは23.2%へとさらに引き下げられた。 平成30年3月期以降の法人税率は、以下のとおりである。 (2) 地方法人税の税率 平成28年度税制改正において、平成 29 年4月1日以後に開始する事業年度から地方法人税の税率が4.4%から10.3%へ引き上げられた。 しかし、平成28年11月28日に「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律等の一部を改正する法律」が公布及び施行され、消費税率の10%への引上げ時期が平成29年4月1日から平成31年10月1日へ2年半延期された。 これに伴い、同日「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律等の一部を改正する法律(以下、「地方税法改正」という)が公布及び施行され、地方法人税の税率の引き上げも2年半延期されている。 そのため、地方法人税の税率の10.3%への引き上げは、平成31年10月1日以後開始する事業年度からとなっている。3月末決算では、平成32年4月1日以後開始する事業年度からとなる。 平成30年3月期以降の地方法人税率は、以下のとおりである。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (3) 地方税の税率 平成28年度税制改正により、平成28年4月1日以後に開始する事業年度より資本金1億円超の外形標準課税適用法人の法人事業税の税率のうち、所得割の税率は6.0%から3.6%へ引き下げられ、付加価値割の税率は0.72%から1.2%へ引き上げられた。また、資本割の税率は0.3%から0.5%へ引き上げられた。 また、資本金1億円超の普通法人の地方法人特別税の税率は、平成28年4月1日以後に開始する事業年度より93.5%から414.2%へ引き上げ、平成29年4月1日以後に開始する事業年度より廃止されることとなった。廃止後は、法人事業税の税率がその分、引き上げられる。 さらに、平成29年4月1日以後に開始する事業年度より法人住民税(道府県民税、市町村民税)の法人税割の税率が都道府県民税で3.2%から1.0%へ、市町村民税は9.7%から6.0%へ引き下げられた。 しかし、上記(2)と同様に、地方税法改正により、地方法人特別税の廃止及び法人住民税の税率の引き下げは、平成31年10月1日以後開始する事業年度からとなっている。3月末決算では、平成32年4月1日以後開始する事業年度からとなる。 平成30年3月期以降の地方税率は、以下のとおりである。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ◆ ◇ 会計上の論点 ◇ ◆ ここまでの解説のとおり、平成30年度税制改正大綱において、税率は変更されていない。そのため、税効果会計で使用する法定実効税率も前期と同様の税率を使用することになる。具体的な税率は、下記の設例①②を参照されたい。 当社は、東京都に本社があり、外形標準課税適用法人である。 また、税率は以下のとおりである。 当社は、東京都に本社があり、外形標準課税適用外法人である。 また、税率は以下のとおりである。   2 税率の変更(アメリカ) アメリカにおいて、2017年12月22日に税制改正法案が成立し、法人税率が引き下げられている。 税制改正前は、所得金額に応じて15%から35%の累進税率で課税されていたが、2018年1月1日以降の連邦法人税率は、一律21%に引き下げられている。 なお、連邦法人税率引き下げの適用開始日が課税年度の途中となる場合、新旧の税率の加重平均により税率を算定する。 したがって、2018年3月期の場合、2017年4月1日から2017年12月31日までが旧税率(35%(※))、2018年1月1日から2018年3月31日までは新税率(21%)となるため、日数按分した税率は、31.55%(=35%×275日÷365日+21%×90日÷365日)となる。 (※) ここでは、最高税率35%が適用されていると仮定して算定している。 ◆ ◇ 会計上の論点 ◇ ◆ 連邦法人税率の引き下げにより、税効果会計で使用する法定実効税率も低下する。そのため、繰延税金資産及び繰延税金負債の取り崩しが発生する。特に、繰延税金資産の取り崩しが多く発生する場合、取り崩しの分、当期純利益が減少するため、注意されたい。   3 繰越欠損金の控除限度額及び繰越期間 平成28年度税制改正において、繰越欠損金の段階的引き下げ及び繰越期間の延長が行われた。 なお、平成30年度税制改正大綱において、繰越欠損金に関して改正はない。 (1) 繰越欠損金の控除限度額 平成28年度税制改正において、平成29年4月1日以後に開始する事業年度では、繰越欠損金の控除限度額が繰越控除前の所得の金額の50%相当額から55%相当額へ引き上げられた。平成30年4月1日以後に開始する事業年度は、変更は50%相当額のままであった。 なお、中小法人等については、繰越欠損金の控除限度額は、繰越控除前の所得の金額の100%相当額である。 (注) 中小法人等とは、①普通法人(投資法人、特定目的会社及び受託法人を除く)のうち、資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下であるもの(100%子法人等は除く)又は資本若しくは出資を有しないもの、②公益法人等、③協同組合等、④人格のない社団等をいう。  100%子法人等とは、①資本金の額若しくは出資金の額が5億円以上の法人又は相互会社等(以下、これらを併せて「大法人」という)による完全支配関係(一の者が法人の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する関係)がある普通法人、②完全支配関係がある複数の大法人に発行済株式等の全部を保有されている普通法人をいう。 (2) 繰越欠損金の繰越期間 平成28年度税制改正において、平成30年4月1日以後に開始する事業年度において生じた欠損金額については、繰越期間が9年から10年に延長された。 当該改正は、中小法人等以外の法人及び中小法人ともに、同様に適用される。 以上の内容をまとめると以下のとおりとなる。 ◆ ◇ 会計上の論点 ◇ ◆ 平成30年度税制改正大綱において、繰越欠損金に関して変更はない。そのため、繰越欠損金に係る繰延税金資産の算定においても前期と同様に検討すればよい。   4 確定申告書の提出期限の延長 確定申告書は、平成29年度税制改正前までは、3月末決算の法人税の確定申告書の提出期限は、原則「事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内」で、延長特例で1ヶ月延長できることから、6月末までに確定申告書を提出していた法人が多かったと考えられる。 株式総会の議案の検討や対話を行うための十分な期間を確保するために、平成29年度税制改正において、法人が、以下の①及び②の場合には、定款等の定めの内容を勘案して4ヶ月を超えない範囲内(※)において税務署長が指定する月数の期間、確定申告書の提出期限を延長することができることになった。 (※) 原則の提出期限である「事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内」を起点に「最大」4ヶ月延長した9月30日までの延長が認められることになる。なお、同様に法人事業税も最大で9月30日までの延長が認められる。 適用時期や手続は以下のとおりである。 (※) 法人住民税については、法人税で期限延長が認められれば、同様に認められる。 詳しくは、経済産業省より公表の「法人税の申告期限延長の特例の適用を受けるに当たっての留意点」が参考となる。 ◆ ◇ 会計上の論点 ◇ ◆ 当該改正により、株主総会の開催時期を7月、8月、9月にすることが可能となり、監査時間の確保や株主総会の集中開催の緩和につながる可能性がある。 会社法上、定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならないと規定されている(会社法296①)ため、事業年度の終了後3ヶ月以内に定時株主総会を招集しなければならないわけではない。しかし、定款で基準日を定めている場合、基準日から株主総会までの期間は、3ヶ月以内にする必要がある(会社法124②、454①)。したがって、定款で基準日を定めている場合、株主総会の開催時期に合わせて、定款を変更する必要がある。 また、上場会社等の場合、有価証券報告書の提出があるため、当該有価証券報告書の提出も考慮して、株主総会の開催時期を決定することが考えられる。   5 組織再編税制 平成30年度税制改正大綱において、以下の組織再編税制の改正がある。なお、適用時期は明らかになっていない。 (1) 完全支配関係がある法人間で行われる当初の組織再編成の後に適格株式分配を行うことが見込まれている場合 現行では、単独新設分社型分割及び単独新設現物出資後に適格株式分配を行うことが見込まれている場合、単独新設分社型分割及び単独新設現物出資における適格要件の完全支配関係の継続要件は、その適格株式分配の直前の時までの関係により判定される。 平成30年度税制改正大綱では、単独新設分社型分割及び単独新設現物出資だけでなく、完全支配関係がある法人間で行われる当初の組織再編成の後に適格株式分配を行うことが見込まれている場合、当初の組織再編成における適格要件の完全支配関係の継続要件は、その適格株式分配の直前の時までの関係により判定される。 (※) 「分社型の会社分割」とは、会社分割をした際に、分割対価としての株式の割当先が分割会社である場合の会社分割をいう。一方、分割対価としての株式の割当先が分割会社の株主である場合を「分割型の会社分割」という。 (2) 当初の組織再編成の後に完全支配関係がある法人間で従業者又は事業を移転することが見込まれている場合 現行では、従業者引継要件及び事業継続要件を適格要件とする当初の組織再編を行い、その後、完全支配関係がある法人間で従業者又は事業の移転が見込まれている場合には、当初の組織再編成は適格要件の従業者引継要件と事業継続要件を満たすことはできず、非適格組織再編となる(複数回の合併が見込まれる場合(例えば、適格合併後に、2度目の適格合併が行われる場合)等は除く)。 平成30年度税制改正大綱では、当初の組織再編成の後に完全支配関係がある法人間で従業者又は事業の移転が見込まれている場合にも、当初の組織再編成は適格要件の従業者引継要件及び事業引継要件を満たすとされている。 (出所:経済産業省「平成30年度経済産業関係 税制改正について」p17) (3) 無対価組織再編成について、適格組織再編成となる類型の見直し 平成30年度税制改正大綱では、無対価組織再編成について、適格組織再編成となる類型の見直しを行うとともに、非適格組織再編成となる場合における処理の方法を明確することとされている。 なお、具体的にどのような改正が行われるかについては、平成30年度税制改正大綱では明らかになっていない。 ◆ ◇ 会計上の論点 ◇ ◆ 当該改正により、適格組織再編の範囲が変更となる。そのため、適格か非適格かにより一時差異の金額が変わる可能性があるため、税効果に影響がある可能性がある。   6 電子申告義務化 平成30年度税制改正大綱において、大法人については法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税・消費税の確定申告書・中間申告書・修正申告書(以下、「申告書等」という)の提出において、これらの申告書等に記載すべきものとされる事項を電子情報処理組織を使用する方法(e-Tax、eLTAX)により提供しなければならないとされている。 (1) 対象法人 大法人とは、内国法人のうち事業年度開始の時において資本金の額又は出資金の額が1億円を超える法人並びに相互会社、投資法人及び特定目的会社をいう。消費税の場合は、さらに国及び地方公共団体も加わる。 (2) 対象となる申告書 法人税、地方法人税、消費税、法人住民税、法人事業税の確定申告書、中間申告書及び修正申告書の提出については、これらの申告書に記載すべきものとされている事項を電子情報処理組織を使用する方法(e-Tax、eLTAX)により提供しなければならない。 (3) 申告書の添付書類の提出 添付書類の記載事項について、電子情報処理組織を使用する方法により提供しなければならない。法人税及び地方法人税の添付書類については、光ディスク等による提出も認められる。 (4) やむを得ない事情による書面提出 電気通信回線の故障、災害その他の理由により電子情報処理組織を使用することが困難であると認められ、書面により申告書を提出することができると認められるときは、納税地の所管税務署長の承認を受けて、申告書及び添付書類を書面により提出することができる。なお、地方税については、国税における措置等を踏まえ、検討する。 (5) 電子申告がなされない場合 上記(4)以外の理由により電子申告がなされない場合には無申告として取り扱う。ただし、現在の運用上の取扱いを踏まえ、期限内に申告書の主要な部分が電子的に提出されていれば無申告加算税は課されない。 (6) 適用時期 平成32年4月1日以後に開始する事業年度・同日以後に開始する課税期間から適用される。 (7) その他の留意事項 (※) 適用時期の記載がないものは、平成30年度税制改正大綱で適用時期が明らかになっていない項目である。 ① 第三者作成書類 法人税の収用等の制度の適用を受ける場合に確定申告書等に添付することとされている第三者作成書類については、添付することに代えて保存することにより収用等の制度の適用を認める。 ② 連結子法人の個別帰属額等の届出 連結親法人が連結子法人の個別帰属額等を電子情報処理組織を使用する方法又は当該個別帰属額等を記録した光ディスク等を提出する方法により連結親法人の納税地の所轄税務署長に提供した場合には、連結子法人が当該個別帰属額等を記載した書類を連結子法人の本店等の所轄税務署長に提出したものとみなされる。つまり、連結子法人による提出が不要ということである。 当該改正は、平成32年4月1日以後に終了する連結事業年度について適用される。 ③ 連結子法人による届出等の提出不要 以下の書類について、連結子法人となる法人又は連結子法人による提出は、不要となる。 当該改正は、平成31年4月1日以後に生じた事実について適用される。 ④ 自書押印制度の廃止 法人税、地方法人税、復興特別法人税、法人事業税及び地方法人特別税の申告書における代表者及び経理責任者等の自署押印制度を廃止する。 ⑤ 大法人以外の添付書類の提出 大法人以外の法人の法人税及び地方法人税の確定申告書、中間申告書及び修正申告書の添付書類の提出については、当該添付書類に記載すべきものとされ、又は記載されている事項を記録した光ディスク等を提出する方法により提供することができる(大法人については、上記(3)参照)。 当該改正は、平成32年4月1日から施行する。   7 収益認識に関する会計基準への対応 平成29年7月にASBJが公表した「収益認識に関する会計基準(案)(以下、「収益基準案」という)」等を受けて、平成30年度税制改正大綱において、法人課税での対応が盛り込まれている。なお、消費税の対応は、ほとんど盛り込まれていない。 (1) 収益の計上金額 資産の販売若しくは譲渡又は役務の提供(以下「資産の販売等」という)に係る収益の額として所得の金額の計算上益金の額に算入する金額は、原則として、その販売若しくは譲渡をした資産の引渡しの時における価額又はその提供をした役務につき通常得るべき対価の額に相当する金額とすることを法令上明確化する。 引渡しの時における価額又は通常得べき対価の額は、貸倒れ又は買戻しの可能性がある場合においても、その可能性がないものとした場合の価額とする。 資産の販売等に係る収益の額を実質的な取引の単位に区分して計上できることとする(※)。また、値引き及び割戻しについて、客観的に見積もられた金額を収益の額から控除することができる(※)。 (※) なお、法人税法改正案では、盛り込まれていない。 (2) 収益の計上時期 ① 原則 資産の販売等に係る収益の額は、原則として目的物の引渡し又は役務の提供の日の属する事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入することを法令上明確化する。 ② 容認 資産の販売等に係る収益の額につき一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って上記①の日に近接する日の属する事業年度の収益の額として経理した場合には、上記①にかかわらず、当該資産の販売等に係る収益の額は、原則として当該事業年度の所得の金額の計算上益金の額に算入することを法令上明確化する。 (3) 返品調整引当金の廃止 返品調整引当金制度は、廃止する。 なお、平成30年4月1日において返品調整引当金制度の対象事業を営む法人について、平成33年3月31日までに開始する各事業年度については現行どおりの損金算入限度額による引当てが認められる。そして、平成33年4月1日から平成42年3月31日までの間に開始する各事業年度については現行法による損金算入限度額に対して1年ごとに10分の1ずつ縮小した額の引当てを認める等の経過措置がとられる。 (4) 長期割賦販売等における延払基準の廃止 長期割賦販売等に該当する資産の販売等について延払基準により収益の額及び費用の額を計算する選択制度は、廃止する。 なお、平成30年4月1日前に長期割賦販売等に該当する資産の販売等を行った法人について、平成35年3月31日までに開始する各事業年度について現行の延払基準により収益の額及び費用の額を計算することができる。そして、平成30年4月1日以後に終了する事業年度において延払基準の適用をやめた場合の繰延割賦利益額を10年均等で収益計上する等の経過措置がとられる。 (注1) 消費税法においても長期割賦販売等の延払基準による計算は廃止となる。 (注2) ファイナンス・リース取引については、改正はない。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 Ⅱ 公共施設等運営事業における運営権者の会計処理   平成23年に民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(平成11年法律第117号)(以下、「PFI 法」という)が改正され、管理者等(PFI 法第2条第3項に規定する公共施設等の管理者である各省各庁の長等をいう)が所有権を有する公共施設等(PFI 法第2条第1項に規定する道路、空港、水道等の公共施設、庁舎等の公用施設、教育文化施設等の公益的施設等をいう。以下同じ)について、公共施設等運営権(PFI 法第2条第7項に規定する公共施設等運営権をいう)を民間事業者に設定する制度(以下「公共施設等運営権制度」という)が新たに導入された。 この公共施設等運営事業(PFI法第2条第6項に規定する公共施設等運営事業をいう。以下同じ)における運営権者(PFI 法第9条第4号に規定する公共施設等運営権を有する者をいう。以下同じ)の会計処理(運営権者と管理者等の間の対価の支払に関する会計処理)等について、実務上の取扱いを明らかにするために、実務対応報告第35号「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い(以下、「公共施設実務」という)」が公表されている。 【公共施設等運営権制度のイメージ(実務対応報告第35号「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い」の公表)】 1 会計処理 公共施設等運営権では、以下の会計処理等の検討が必要である。 (1) 当初の会計処理 ① 会計処理 運営権者は、公共施設等運営権を取得した時に、管理者等と運営権者との間で締結された実施契約(PFI法第22条第1項に規定する公共施設等運営権実施契約をいう)において定められた公共施設等運営権の対価(以下「運営権対価」という)について、合理的に見積られた支出額の総額を無形固定資産として計上する(公共施設実務3)。 実施契約において、運営権対価が固定額ではなく、将来の業績等の指標に連動する形式で定められる場合も、公共施設等運営権を取得した時に合理的に見積られた運営権対価の支出額の総額を無形固定資産として計上する(公共施設実務32、33)。 また、運営権対価を分割で支払う場合、資産及び負債の計上額は、運営権対価の支出額の総額の現在価値による(公共施設実務4)。 そして、割引率及び利息法について、以下の規定がある(公共施設実務5、36)。 (注) なお、公共施設等運営権の取得は、企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」の適用範囲に含めない(公共施設実務7)。 ② 表示 公共施設等運営権は、無形固定資産の区分に、公共施設等運営権などその内容を示す科目をもって表示する(公共施設実務16)。 運営権対価を分割で支払う場合に計上する負債は、貸借対照表日後1年以内に支払の期限が到来するものを流動負債の区分に、貸借対照表日後1年を超えて支払の期限が到来するものを固定負債の区分に、公共施設等運営権に係る負債などその内容を示す科目をもって表示する(公共施設実務18)。 (2) 減価償却方法 無形固定資産に計上した公共施設等運営権は、原則として、運営権設定期間を耐用年数として、定額法、定率法等の一定の減価償却の方法によって、その取得原価を各事業年度に配分する(公共施設実務8)。 なお、実施契約において、一定の条件の下で運営権設定期間を延長することができる条項(延長オプション)が定められる場合、運営権者が当該条項を行使する意思が明らかな場合を除き、延長可能な期間は公共施設等運営権の耐用年数に含めない(公共施設実務9)。 (3) 重要な見積りの変更の会計処理 合理的に見積られた運営権対価の支出額に重要な見積りの変更が生じた場合、当該見積りの変更による差額は、上記(1)で計上した資産及び負債の額に加減する(公共施設実務6)。そして、減価償却を通じて残存耐用年数にわたって費用配分を行う(公共施設実務40)。 なお、重要な見積りの変更が生じた場合にその旨の注記が必要かどうかについては特に定めがないが、企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」第18項に従い、当該注記の要否を判断するものと考えられる(公共施設実務コメントNo.27)。 (4) 更新投資に関する会計処理 ① 更新投資 公共施設等運営事業では、運営権者は、運営権対価の支出とは別に、更新投資を実施する場合がある。更新投資とは、運営権対価の支出とは別に、PFI法第2条第6項に基づき、運営権者が行う公共施設等の維持管理をいう(公共施設実務51)。 下記図は、更新投資について、PFI法と会計制度における関係を示したものである。 【出所:内閣府「公共施設等運営権及び公共施設等運営事業に関するガイドライン」に筆者一部加筆】 ② 会計処理 更新投資においては、(ⅰ)更新投資のうち資本的支出に該当する部分に関して、運営権設定期間にわたって支出すると見込まれる額の総額及び支出時期を合理的に見積ることができる場合と(ⅱ)それ以外の場合に分けて検討する。 (ⅰ) 更新投資のうち資本的支出に該当する部分に関して、運営権設定期間にわたって支出すると見込まれる額の総額及び支出時期を合理的に見積ることができる場合 取得時に、支出すると見込まれる額の総額の現在価値を負債として計上し、同額を資産として計上する(公共施設実務12(2))。 そして、運営権設定期間を耐用年数として、定額法、定率法等の一定の減価償却の方法によって、その取得原価から残存価額を控除した額を各事業年度に配分する(公共施設実務15(2))。 留意点として以下がある(公共施設実務13、14)。 (ⅱ) 上記(ⅰ)以外 上記(ⅰ)以外の場合、更新投資を実施した時に、当該更新投資のうち資本的支出に該当する部分(所有権が管理者等に帰属するものに限る)に関する支出額を資産として計上する(公共施設実務12(1))。 当該更新投資を実施した時より、当該更新投資に係る資産の経済的耐用年数(当該更新投資に係る資産の経済的耐用年数が公共施設等運営権の残存する運営権設定期間を上回る場合は、当該残存する運営権設定期間)にわたり、定額法、定率法等の一定の減価償却の方法によって、その取得原価から残存価額を控除した額を各事業年度に配分する(公共施設実務15(1))。 ③ 表示 更新投資に係る資産は、無形固定資産の区分にその内容を示す科目をもって表示する(公共施設実務17)。 更新投資は、運営権者が実施する公共施設等運営事業において、PFI法に基づき運営権者が公共施設等の維持管理として行うものであることから、公共施設等運営権と同様に、無形固定資産の区分に表示するが、PFI法上の位置付けが公共施設等運営権とは異なると考えられるため、更新投資に係る資産は、公共施設等運営権とは区分し、無形固定資産の区分にその内容を示す科目をもって表示する(公共施設実務57)。 上記②(ⅰ)に基づき計上した更新投資に係る負債は、貸借対照表日後1年以内に支払の期限が到来するものを流動負債の区分に、貸借対照表日後1年を超えて支払の期限が到来するものを固定負債の区分に、その内容を示す科目をもって表示する(公共施設実務19)。 (5) プロフィットシェアリング条項に関する会計処理 実施契約において、運営権対価とは別に、各期の収益があらかじめ定められた基準値を上回ったときに運営権者から管理者等に一定の金銭を支払う条項(「プロフィットシェアリング条項」)が設けられる場合、当該条項に基づき各期に算定された支出額を、算定された期の費用として処理する(公共施設実務11)。 (6) 減損 公共施設等運営権は「固定資産の減損に係る会計基準」の対象となる(公共施設実務10)。 減損会計の適用において、減損損失の認識の判定及び測定において行われる資産のグルーピングは、原則として、実施契約に定められた公共施設等運営権の単位で行う(公共施設実務10)。 ただし、管理会計上の区分、投資の意思決定(資産の処分や事業の廃止に関する意思決定を含む)を行う際の単位、継続的な収支の把握がなされている単位及び他の単位から生じるキャッシュ・イン・フローとの相互補完性を考慮し、公共施設等運営事業の対象とする公共施設等ごとに合理的な基準に基づき分割した公共施設等運営権の単位でグルーピングを行うことができる(公共施設実務10)。 (7) 注記 運営権者は、原則として、以下の事項を公共施設等運営権「ごと」に注記する。ただし、同一の実施契約において複数の公共施設等運営権を対象とすることにより一体的な運営等を行う場合、または個々の公共施設等運営権の重要性は乏しいが、同一種類の複数の公共施設等運営権全体については重要性が乏しくない場合には、集約して注記することができる(公共施設実務20)。   2 適用時期 公共施設実務は、平成29年5月31日以後終了する事業年度及び四半期会計期間から適用される(公共施設実務21、61)。 なお、実際の運用の開始から間もないことを踏まえ、特定の経過的な取扱いを定めずに、公共施設実務を過去の期間のすべてに遡及適用する(公共施設実務61)。 したがって、既に公共施設実務と異なる会計処理を行っている会社の場合、遡及適用により事務処理負担が相当程度かかると考えられる。 (了)

#No. 257(掲載号)
#西田 友洋
2018/02/22

計算書類作成に関する“うっかりミス”の事例と防止策 【第25回】「「赤字⇔黒字」の変わり目の年度に起きるミス」

計算書類作成に関する “うっかりミス”の事例と防止策 【第25回】 「「赤字⇔黒字」の変わり目の年度に起きるミス」   公認会計士 石王丸 周夫   1 今回の事例 計算書類のドラフトにはうっかりミスがつきものです。 たとえば、こんなミスをよく見かけます。 【事例25-1】 損益の名称が一部間違っている。 【事例25-1】の連結損益計算書には、間違いが1ヶ所あります。 事例のタイトルが「損益の名称が一部間違っている。」なので、「~利益」または「~損失」という段階損益の名称にミスがあることはわかりますね。 黒字なのか赤字なのかに注意して、よく探してみてください。   2 経理のプロほど見落としやすい さっそく答えを見てみましょう。本来の正しい姿はこうです。 上の正解では、正しい姿に修正した部分を赤丸で囲ってあります。「税金等調整前当期純利益」の「利益」のところです。 【事例25-1】では、ここが「税金等調整前当期純損失」となっていましたが、この会社はちゃんと利益が出ているので、正しくは「利益」と表示しなければいけません。非常に単純な間違いですね。 しかし、この間違い、実務では意外に発見されにくいのです。 なぜなら、決算書のチェックというのは、できあがった決算書に間違いがあるかどうかを知らされないまま行うからです。 「間違いが1ヶ所あります」とか、「段階損益の名称に注意しましょう」とか、そうしたヒントは一切ありません。そういう中でミスを見つけ出すことはとても難しいのです。 そもそも人間というのは、視界に入っていても認識していない、ということがよくあります。クルマの運転時における赤信号の見落としは、その典型例です。道を探していたり、標識を探していたりというように、何かに集中していると、それ以外のものは、見えていても認識していないことがあるのです。 決算書のチェックも同じで、数字が合っているかどうかを一生懸命見ていると、それ以外のところが認識されないことがあります。特に経理のプロは、決算書を渡されれば、自然と数字に目が行くので、数字以外のところでミスがあっても気がつかないことがあるのです。 【事例25-1】のミスについては、それに加えて見つけにくい理由もあります。 「税金等調整前当期純損失」という項目が、連結損益計算書の下から数行目に表示される項目であり、かつ少し長めの名称であるため、ミスが埋もれてしまい、視界に入りにくいのです。 いわゆる「死角」となっていることが、このミスがよく見落とされてしまう理由なのでしょう。   3 「赤字⇒黒字」「黒字⇒赤字」の年度に注意 では、このミスが起きてしまった原因を考えてみましょう。 本連載では何度も説明していますが、これは「リサイクル・ミス」です。 つまり、今期の連結損益計算書を作るにあたって、前期の連結損益計算書のデータをコピーして、それを再利用(リサイクル)して当期の連結損益計算書を作成したことにより起きたミスです。 【事例25-1】の会社は、前期の連結損益計算書において「税金等調整前当期純損失」を計上していたが、当期はめでたく黒字化したというケースです。 黒字なので「税金等調整前当期純利益」と表示すべきところですが、前期の表示を直し忘れてしまい、「税金等調整前当期純損失」のままになってしまったのです。 このミスが起きるタイミングは決まっています。 会社が、「赤字」⇒「黒字」に変わった年度です。 そういう年度の連結損益計算書の作成作業では、前の年度の連結損益計算書で「~損失」と表示していた部分がそのまま残ってしまわないように注意しなければなりません。 同じ理屈から、「黒字」⇒「赤字」と変わった年度には逆のミスが起きます。 これをふまえて次の事例を見てみましょう。 【事例25-2】 経常損失であるにもかかわらず「経常利益」と表示されている。 「赤字⇒黒字」「黒字⇒赤字」の変化があった年度には、こうしたミスが起きていないか注意しましょう。   4 こんな類似事例も 段階損益の名称に関しては、次のような類似ミスも起きています。 【事例25-3】 損失を「~利益 △***」と表示している。 【事例25-3】に見られる「当期純利益 △18」といった表示の仕方は、一見問題なさそうですが、会社計算規則の定めに準拠していません。 会社法に基づく決算書の表示については、会社計算規則に定めがあり、損益の表示については次のように規定されています。 当期純損益がマイナスである場合、すなわち赤字である場合には、マイナスの符号を取り除いた絶対値の額を「当期純損失」と表示しなければならないとはっきりと書いてあります。 このため、【事例25-3】は間違いなのです。 さらにもうひとつ、類似事例を紹介しておきます。 【事例25-4】 損失を「~損失 △***」と表示している。 当期純損失なので、気を利かせて数字に△をつけたという事例です。これも前掲の会社計算規則の規定を読めば、間違いであることはわかります。 ただし、実務では、「~損失 △***」が一概にすべて誤りとは言えないケースもあります。 会社が任意で決算書を2年度分併記している場合です。 会社法による決算書は単年度開示が原則ですが、参考のために前年度の決算書を並べていることもあります。前年度が黒字で当年度が赤字、もしくはその逆でもよいのですが、つまり、黒字と赤字が並ぶ場合は、「~損失 △***」の表記方法が必要になります。 以下のようなイメージです。 この形式で2期併記する場合、損失の方の数字に△をつけてあげなければ、前期と当期のどちらが当期純損失なのかわからなくなってしまいます。 実務は奥が深いですね。   〈今回のまとめ〉 「赤字⇒黒字」「黒字⇒赤字」に変わった年度には、損益名称の確認をしましょう。 (了)

#No. 257(掲載号)
#石王丸 周夫
2018/02/22

〔検証〕適時開示からみた企業実態 【事例22】株式会社コシダカホールディングス「招集通知に添付した会計監査人の監査報告謄本、監査等委員会の監査報告謄本の訂正に関するお知らせ」(2017.11.9)

〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例22】 株式会社コシダカホールディングス 「招集通知に添付した会計監査人の監査報告謄本、 監査等委員会の監査報告謄本の訂正に関するお知らせ」 (2017.11.9)   事業創造大学院大学 准教授 鈴木 広樹   1 今回の適時開示 今回取り上げる適時開示は、株式会社コシダカホールディングス(以下「コシダカホールディングス」という)が平成29年11月9日に開示した「招集通知に添付した会計監査人の監査報告謄本、監査等委員会の監査報告謄本の訂正に関するお知らせ」である。 タイトルだけを見ると、監査報告書の記載内容にちょっとした誤りが見つかった、という内容のようなのだが、そうではない。平成29年11月7日に定時株主総会の招集通知を発送し、それに会計監査人と監査等委員会それぞれの監査報告書を添付していたのだが、実は会計監査人から監査報告書を受領できていなかったため、それらを削除するという、前代未聞の内容なのである。 なぜそんなことが起こったのか。同社が平成29年11月13日に開示した「第48回定時株主総会議案の一部取り下げに関するお知らせ」には、次のように記載されている。上場会社、しかも東証一部上場の会社とは到底思えない内部統制の水準である。   2 会計監査人の異動に関する開示は? この事例は会社法上の問題点をいくつか含んでいるのだが、本稿では適時開示上の問題点を指摘しておきたい。平成29年11月13日の開示のタイトルには、「定時株主総会議案の一部取り下げ」とある。取り下げる議案は「会計監査人選任の件」であり、その理由として、次のように記載されている。 今回の件を受けて、会計監査人候補であった監査法人に逃げられてしまったという、かわいそうなお話なのだが、単にかわいそうなお話では済ませられない問題点を含んでいる。会計監査人の異動に関しては適時開示が必要とされるのだが、コシダカホールディングスはその開示を行っていない。 つまり、平成29年11月7日に定時株主総会の招集通知が発送された後、平成29年11月13日の開示が行われるまでの間(しかも、この開示は23時5分に行われている)、同社の株主の間にのみ、会計監査人の異動に関する情報が流布していたことになる。 同社は、平成29年11月13日の開示において、次のような弁明を行っているが、弁明になっていない。平成29年11月7日に定時株主総会の招集通知を発送してしまった時点で速やかに会計監査人の異動に関する開示を行い、平成29年11月13日、速やかに(23時5分ではなく)その中止に関する開示を行うべきであった。   3 今は良いけれど コシダカホールディングスは、平成29年11月30日、さらに「財務報告に係る内部統制の開示すべき重要な不備に関するお知らせ」も開示しており、その「事業年度末までに是正できなかった理由」として、次のように記載している。 同社は業績が非常に良く、こうした一連の開示があっても、特に株価は下がっておらず、投資家はさほど重要視していないようである。 しかし、株主総会招集通知の件、会計監査人の異動に関する開示の件、そして、この財務報告に係る内部統制の開示すべき重要な不備の件を見ていると、とても危うい印象を受ける。落とし穴が無ければいいのだが。 (了)

#No. 257(掲載号)
#鈴木 広樹
2018/02/22

AIで士業は変わるか? 【第3回】「AIがもたらす租税専門家への脅威と税務行政の変革」

AIで 士業は変わるか? 【第3回】 「AIがもたらす租税専門家への脅威と税務行政の変革」   中央大学商学部教授・法学博士 酒井 克彦   Ⅰ AIの影響-租税専門家としての生残り問題- 1 技術的失業 AIの出現は、いわゆるテクノロジー失業ともいわれるように、新しい技術の導入がもたらす失業というインパクトを伴っている。2015年10月6日付け週刊エコノミストは、様々な職業の技術的失業可能性につき、受付係を96%、会計士・会計監査役94%、弁護士助手94%、保険の販売代理店員を92%・・・と占っている。 租税専門家におけるAIの影響といえば、まずは、この技術的失業に関心が寄せられているといっても過言ではなかろう。 2 グレート・デカップリング(スキル偏向的技術革新)がもたらす二極化 エリック・ブリニョルフソン=アンドリュー・マカフィーの著した『機械との競争(Race Against the Machine )』は技術的失業が中間所得層に及んでいると分析した。そこでは、一般的な労働者は貧しくなっているが、高所得者層はそれを補って余りあるほど豊かになっていること、さらに低所得者はそれほど技術的失業の被害を受けていない点が指摘されている。これをグレート・デカップリングといい、その主要因がスキル偏向的技術革新であるというのだ。 職業を単純化し、低賃金の肉体労働と中間層の事務労働と高賃金の頭脳労働に分けた場合、コンピュータ化は、文書作成や計算、解析などの事務労働の人手を減らす一方、研究開発などの頭脳労働や、介護、建設労働といった肉体労働はその煽りを受けていないという分析結果である。 次に、このことは、中間所得層がより低賃金の肉体労働や高賃金の頭脳労働にシフトすることによって、中間所得層の労働が減少し、低賃金と高賃金の労働が増大するという二極化(ポラリゼーション:Polarization)が発生することにもなると指摘する。 3 ディフュージョン期間での頭脳労働への完全移行 もっとも、新しい技術や商品開発が社会に普及するまでにはディフュージョン(Diffusion)と呼ばれる期間が存在するため、ディフュージョンの期間にいかなる対応をすべきかを検討しておくことが肝要となる。しかし、このディフュージョンの期間は従来に比べて近時ますます短くなっていると指摘されている。 ましてや全人類の知性をコンピュータが超える技術的特異点、すなわちシンギュラリティ(Singularity)が2045年に到来するといわれている中において、それまでのディフュージョンの期間にそれぞれの専門家がいかなる準備をしておくべきなのかが重要となろう。   Ⅱ 税理士業務への影響 1 RPOの影響 税理士業務に焦点を絞れば、ロボティック・プロセス・オートメーション(RPO)により、その業務は大幅に減少すると予想される。これは正確な意味ではAIによるものではないが、帳簿書類や決算書の作成、年末調整事務は、RPOにより格段に容易になると思われる。すなわち、前述した事務労働領域であるこれらの業務は消失するであろうし、そのディフュージョンの期間は短いとみるべきであろう。 他方、税理士の業務は、本来納税者が行うべき作業を代行する部分に限られるものではなく、専門家としてコンサルティング等の助言業務がある。前者の代行部分の事務作業領域は不要となり、残されるのは、後者の頭脳労働であるコンサルティングや法律家としてのマネジメント専門領域ということになろう。これらの領域は、「AIに取って代わられる」のではなく、「AIを活用する」に値する領域とみることもできそうである。 2 財産評価に関する影響 政府が、国・地方・民間が保有するビッグデータの開放に乗り出す中(平成30年2月20日日本経済新聞(夕刊))、このビッグデータを取り込むことによって、AIによる自動的かつ正確な評価方法が確立され得ると思われる。膨大なデータの蓄積・解析により、評価の客観化と評価基準となる検討要素の精緻化が図られ、今日のような不安定かつ不透明な財産評価基本通達に従った処理を行う必要がなくなろう。 このことは、評価を巡る紛争の未然防止や評価手法を用いた過度な節税、恣意的な課税を排除することを意味するのではなかろうか。 3 不確定概念に関する解釈 不確定概念の解釈に関する大量のデータ解析をAIが行うことによって、解釈論における線引きが可能となるかもしれない。いわば、帰納法的作業が容易となり、例えば、現在、不動産所得が事業的規模か業務的規模かの判断に当たって用いられている5棟10室のような形式的基準が、膨大なデータ分析に基づく経験則から導かれることになろう。 このように、経験則の推論のような作業は大量データを基礎に構築することが可能なのではなかろうか。近い将来、役員給与・役員退職金の妥当額や範囲などはAI判断を参照することが可能となろう。   Ⅲ 税務行政への影響 利益率、粗利率のような解析がビッグデータを利用して的確になされ、客観的な係数による管理分析ができるようになる。すると、当局にとっては、ディープラーニング(深層学習)によって、人間の行う経理処理上の癖や傾向などを発見するなどして、非違事項や調査選定の機械的抽出が格段に容易となるであろう。 単純な例でいえば、未払金が多額に計上されているケースのうち特定の変数を刺激するデータ分析をAIが行い、株価を下げるための未払役員給与の計上事例を抽出するなどの活用が考えられる。当然ながら、より精緻で的確な分析が瞬時に行われることになろう。 最後に租税法領域に限ったことではないが、予期せぬ法条の空白域や誤謬、法条間の矛盾抵触を立法段階で発見することもできるようになるであろうことを指摘しておきたい。 (了)

#No. 257(掲載号)
#酒井 克彦
2018/02/22

《速報解説》 事業の採算性悪化の初期段階で企業が発する「シグナル」の分析から、再生のための着眼点・再生手法までを整理した研究報告が会計士協会より公表される

《速報解説》 事業の採算性悪化の初期段階で企業が発する「シグナル」の分析から、再生のための着眼点・再生手法までを整理した研究報告が会計士協会より公表される   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成30年2月20日、日本公認会計士協会は、「早期着手による事業再生の有用性について」(経営研究調査会研究報告第62号)を公表した。 これは、早期再生についての議論の成果と、金融機関に対して行ったヒアリングにより得られた回答及び日本公認会計士協会の会員に対して実施したアンケートの分析結果を取りまとめたものであり、「早期着手による事業再生」のアドバイザーとして企業の経営支援を行う公認会計士の専門家にとって有用な情報を提供することを目的とするものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 早期着手による事業再生の有用性について、改めて議論を深め、事業の採算性が悪化した初期の段階で、企業のどのような「シグナル」に気をつけなければならないかを検討するとともに、再生のための着眼点や再生手法について取りまとめている。 主な内容は次のとおりであり、目次を含めて73ページに及ぶものである。 日本公認会計士協会は「事業再生実務と公認会計士の役割」(経営研究調査会研究報告第47号)を公表している。 その後、議論を重ねたところ、企業が、事業の採算性の悪化に気づいた早期の段階で、製品別又は事業別の見直し、経費の削減、不採算事業からの撤退などに着手し、経営改善の取組をスタートさせれば、事業の再生はより容易に進めることができ、過剰債務に陥ることを未然に防ぐことができると考えられた。 そこで、企業のどのような「シグナル」に気をつけなければならないかを検討するとともに、再生のための着眼点や再生手法について取りまとめている。 検討の過程では、再生に着手する段階をより早期に移していくに従って、貸借対照表中心の見方から損益計算書中心の見方へと視点が移動していくのではないかという意見が多数を占めたとのことである(1~2ページ)。 このため、研究報告では、再生に着手するタイミングと、公認会計士が対象企業に対して行う財務分析の視点との関係についても述べている。 2 早期着手による事業再生のタイミング、着眼点、再生手法 早期着手時点として把握すべきターニングポイントは、資金収支の悪化、すなわち、年間キャッシュ・フローのマイナスを生じさせる状況と捉えている(14ページ)。 次のことが重要である。 ケーススタディも記載されているので、実務に資するものと思われる。 (了)

#No. 256(掲載号)
#阿部 光成
2018/02/20

《速報解説》 会計士協会、監査の品質管理を中心とした自主規制の在り方について研究会報告書を公表~「誰が監査の品質を規制すべきか」に対するアンケート調査結果も~

《速報解説》 会計士協会、監査の品質管理を中心とした自主規制の在り方について 研究会報告書を公表 ~「誰が監査の品質を規制すべきか」に対するアンケート調査結果も~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成30年1月15日付で(ホームページ掲載日は平成30年2月16日)、日本公認会計士協会は、「品質管理を中心とした自主規制の在り方研究会報告書」(品質管理を中心とした自主規制の在り方研究会。以下「研究会」という)を公表した。 これは、日本公認会計士協会の自主規制機能の中核を成す品質管理制度について、既存の制度や建付けにとらわれることなく自主規制の意義・内容などの原点に遡って研究してきたものである。 本文のほか、補足資料として、「Ⅰ『監査の品質管理』に関するアンケート調査結果」、「Ⅱ アンケート調査票(原票)」がある。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 調査方法は、演繹的なアプローチではなく、監査現場での声に基づき、ボトムアップで「品質管理を中心とした自主規制」を改善するのに必要な論点を取り上げるという帰納的なアプローチを採用している(5ページ)。 1 「監査の品質」の定義 研究会は、監査の品質を、財務諸表利用者(投資家)の視点をとりわけ重視して以下のように定義し、この定義で示されている監査の品質を監査の有効性と称して、監査事務所が社会に向かって保証し、責任を負う監査の品質の実質を構成するものと位置付けている(7ページ)。 個人会員及び監査事務所は、アンケート調査を通じて、「誰が監査の品質を規制すべきか」という問題に対して、監査の品質を金融庁(公認会計士・監査審査会)による検査に全面的に委ねるという方向を否定するという明確な判断を示していると述べている(監査事務所アンケート調査でも、個人会員アンケート調査でも、同様。9ページ)。 このことは、監査事務所が行う監査業務の品質は自分たちの努力によって改善し高めなければならないという監査プロフェッショナリズムが働いていたことを意味しているとしている。 なお、「監査プロフェッショナリズム」とは、財務諸表を利用して経済的意思決定を行う人々全体の利益(公益)を、限られた資源の下で監査を通じて実現・達成することを職業上の使命とする、職業倫理を基礎においた公認会計士という専門職業の姿勢、職業哲学、行動様式を総称する用語として使用している(3ページ)。 2 提言 研究会の目的は、監査の品質に対して社会が不安を抱き始めている昨今の状況を踏まえ、次の事項について、アンケート調査を通じて明らかにし、最終的には、日本公認会計士協会において、監査事務所において、そして公認会計士個人において、一段と高い品質の監査の実施を実現するために求められる対応等を提言として示すことにあるという(11ページ)。 以下の事項に関する提言(全体的提言、個別的な提言、その他の提言)が述べられている。 (了)

#No. 256(掲載号)
#阿部 光成
2018/02/20

《速報解説》 ASBJ移管に伴い注記事項等を見直した「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」等が確定~各改正項目の適用初年度に関する取扱いに注意~

《速報解説》 ASBJ移管に伴い注記事項等を見直した 「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」等が確定 ~各改正項目の適用初年度に関する取扱いに注意~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成30年2月16日、企業会計基準委員会は、次のものを公表した。 これは、日本公認会計士協会の税効果会計に関する実務指針について、企業会計基準委員会に移管するためのものであり、基本的にその内容を踏襲した上で、必要と考えられる見直しを行っており、主として開示に関する改正である。これにより、平成29年6月6日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。 なお、企業会計基準公開草案第60号「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正(案)」等の主なコメントの概要とそれらに対する対応も公表されているので、上記の会計基準等の理解に資するものと考えられる。例えば、早期適用する場合に、税効果会計基準一部改正をすべて適用することとしており、部分的に適用することは想定していないことが記載されている(論点の項目35)。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 会計処理に関する改正 会計処理に関する改正は次のとおりである。 2 開示に関する改正 開示(表示及び注記)に関する改正は次のとおりである。   Ⅲ 適用時期等 原則として、平成30年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用するが、早期適用できる事項もある。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (出所:企業会計基準委員会の「企業会計基準第28号「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」等の公表」にあたっての「適用時期等」(7ページ)の表を一部加工) (了)

#No. 256(掲載号)
#阿部 光成
2018/02/20
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