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企業結合会計を学ぶ 【第6回】「取得原価の配分方法①」-識別可能資産及び負債の範囲-

企業結合会計を学ぶ 【第6回】 「取得原価の配分方法①」 -識別可能資産及び負債の範囲-   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 【第3回】で示した次の吸収合併の〔例〕を用いて、「取得」の会計処理における取得原価の配分方法について解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 吸収合併 〔例〕 次の条件による吸収合併を行った(会社法2条27号)。 A社(存続会社、取得企業)の吸収合併(取得)に関する会計処理は次のとおりである。   Ⅲ 取得原価の配分方法 1 基本的な考え方 取得企業は、被取得企業から受け入れた資産及び引き受けた負債の時価を基礎として、それらに対して取得原価を配分する(企業結合会計基準98項)。 これは、取得とされた企業結合に特有な処理ではなく、企業結合以外の交換取引により複数の資産及び負債を一括して受け入れた又は引き受けた場合に一般的に適用されているものであり、次のような考え方である(企業結合会計基準98項)。 2 取得における取得原価の配分方法 企業結合会計基準は、取得原価は、被取得企業から受け入れた資産及び引き受けた負債のうち企業結合日時点において識別可能なもの(識別可能資産及び負債)の企業結合日時点の時価を基礎として、当該資産及び負債に対して企業結合日以後1年以内に配分すると規定している(企業結合会計基準28項、結合分離適用指針51項)。 取得原価が、受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額を上回る場合には、その超過額はのれんとして企業結合会計基準32項に従って会計処理し、下回る場合には、その不足額は負ののれんとして企業結合会計基準33項に従って会計処理する(企業結合会計基準31項)。 3 識別可能資産及び負債の範囲 識別可能資産及び負債とは、被取得企業から受け入れた資産及び引き受けた負債のうち企業結合日時点において識別可能なものをいう(企業結合会計基準99項、結合分離適用指針52項)。 識別可能資産及び負債の範囲は、被取得企業の企業結合日前の貸借対照表において計上されていたかどうかにかかわらず、対価を支払って取得した場合、原則として、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準の下で認識されるものに限定される(企業結合会計基準99項)。 受け入れた資産に法律上の権利など分離して譲渡可能な無形資産が含まれる場合には、当該無形資産は識別可能なものとして取り扱う(企業結合会計基準29項)。 4 識別可能資産及び負債の時価の算定方法 識別可能資産及び負債の時価は、企業結合日時点での時価を基礎にして算定する(企業結合会計基準28項、102項)。 時価は、強制売買取引や清算取引ではなく、いわゆる独立第三者間取引に基づく公正な評価額であり、通常、それは観察可能な市場価格に基づく価額であるが、市場価格が観察できない場合には、合理的に算定された価額が時価となる(企業結合会計基準102項、103項)。 結合分離適用指針53項及び362項は次のように規定している。 5 取得後に発生することが予測される特定の事象に対応した費用又は損失 取得後に発生することが予測される特定の事象に対応した費用又は損失であって、その発生の可能性が取得の対価の算定に反映されている場合には、負債として認識する(企業結合会計基準30項、99項)。 当該負債を「企業結合に係る特定勘定」といい、結合分離適用指針63項及び64項の要件を満たしている場合に限られる(結合分離適用指針62項)。 当該負債は、原則として、固定負債として表示し、その主な内容及び金額を連結貸借対照表及び個別貸借対照表に注記する(企業結合会計基準30項)。 なお、認識の対象となった事象が貸借対照表日後1年内に発生することが明らかなものは流動負債として表示する(結合分離適用指針62項、451項)。 (了)

#No. 295(掲載号)
#阿部 光成
2018/11/22

相続(民法等)をめぐる注目判例紹介 【第2回】「共同相続人間における相続分の無償譲渡」-最高裁平成30年10月19日判決-

相続(民法等)をめぐる注目判例紹介 【第2回】 「共同相続人間における相続分の無償譲渡」 -最高裁平成30年10月19日判決-   弁護士 阪本 敬幸   1 事案の概要 最高裁平成30年10月19日判決(以下、「本件判決」という)は、下記相続関係図(実際の事案では4人の子がいたようだが、簡略化するためXYの2人とした)の場合に、下記①~⑤の事情があったという事案である。 Xは、上記①B死亡時におけるAからYに対する相続分譲渡(以下、「本件相続分譲渡」という)の価額を、遺留分減殺の基礎となる財産額に算入すべき贈与(民法1044条、903条1項)にあたると主張。原審(東京高裁平成29年6月22日判決)は、Xの主張を認めなかっため、Xが上告。   2 判決要旨 (1) 結論 破棄差戻し。争点となった「本件相続分譲渡が遺留分算定の基礎となる財産額に算入すべき贈与にあたるか」という点について、以下のように述べ、これを肯定した。 (2) 理由 上記結論の理由として、次のように述べられている。   3 解説 (1) 本判決の意義 相続分の譲渡とは、一般に、遺産分割前に、積極財産と消極財産とを包括した遺産全体に対する譲渡人の割合的な持分を移転することをいう(民法905条参照)。共同相続人間で行われる場合と、共同相続人と第三者との間で行われる場合とがある。 本判決は、共同相続人間における相続分の譲渡により、譲受人には遺産の共有持分の移転が生じること、遺産分割手続においても増加した相続分に応じた相続財産の分配を求めることができるようになること、という点を考慮すれば、相続分の譲渡は、譲渡人から譲受人に対して経済的利益を合意により移転するものということができるとして(相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き)、民法903条1項にいう「贈与」にあたるとしたものである。民法903条1項にいう「贈与」にあたるということは、相続分の譲渡が、同条項が定める持ち戻しの対象となるということを意味する。 下級審では、本判決同様、共同相続人間における相続分の譲渡が贈与にあたるとしたもの(東京高判平成29年7月26日・判時2370-31)と、贈与にあたらないとしたもの(東京高裁平成29年6月22日判決。本判決の原審)に分かれていた。本判決により、今後の裁判実務においても統一的な運用がなされるものと思われる。 今後、一部の相続人に対する相続分の譲渡を考える際は、相続時にはこれが民法903条1項の「贈与」となることを理解した上、持ち戻し免除の意思表示をすべきか、あるいは、相続分を譲渡するのではなく遺産分割手続の中で一部相続人の取得する財産の額を多くすべきか(後述の通り、この場合は民法903条1項の「贈与」の問題は生じないと思われる)、等を検討すべきであろう。 (2) 本判決の考え方 本判決は、共同相続人間における相続分の譲渡が民法903条1項にいう「贈与」にあたると判断したものであり、判断の基礎には、共同相続人間の実質的な公平を図ろうという持ち戻し制度の趣旨を全うする点があると思われる。すなわち、民法903条1項が持ち戻しを定めた趣旨は、被相続人から一部の共同相続人に対し、他の共同相続人の意思と無関係に経済的利益を移転させることにより、相続時に他の共同相続人の取得する財産が減少するという不公平を是正することにある。 ところが、同じく被相続人が生前にその財産を一部共同相続人に取得させる場合でも、「被相続人が個々の財産を贈与していれば持ち戻しとなるが、個々の財産ではなく相続分を無償で譲渡すれば持ち戻し不要である」というのでは、あまりにも不公平な結果となってしまうのである。 本判決の原審は、相続分の譲渡は遺産分割が終了するまでの暫定的なものであり、最終的に遺産分割が確定すれば、遺産分割の遡及効(民法909条本文)によって相続分の譲受人は相続開始時に遡って被相続人から直接財産を取得したことになるから、譲渡人から譲受人に相続財産の贈与があったとは観念できないことなどを理由に、相続分譲渡は民法903条1項の「贈与」にあたらないとしていた。 しかし本判決では、相続分の譲渡は、「譲渡人から譲受人に対し経済的利益を合意によって移転するものということができる」とした後に、「遺産の分割が相続開始の時に遡ってその効力を生ずる(民法909条本文)とされていることは,以上のように解することの妨げとなるものではない。」と述べられており、形式的な遡及効の点ではなく、実質的な経済的利益の移転という点に着目し、共同相続人間の公平の実現を意図したものといえよう。 なお、上記の通り、民法903条1項は、一部の相続人が、その他の相続人の意思と無関係に、被相続人から経済的利益の移転を受けることによる不公平を是正する趣旨である。したがって、相続分の譲渡が行われることなく、遺産分割協議の中で、全相続人の合意の下、一部の相続人が法定相続分に応じて算出される額よりも多くの相続財産を取得する場合(現に多くの遺産分割協議で行われていることである)は、当該相続人以外の相続人もそのことを了承する旨の意思表示を行っているのであるから、民法903条1項の「贈与」となる余地はないだろう。 (3) 税との関係 共同相続人間における相続分の譲渡が、課税上も贈与として贈与税が課せられるかは、本判決とは別問題である。 現在の相続税の実務上、共同相続人間で無償の相続分譲渡があった場合、譲受人に対して贈与税が課されることはなく、相続税の中で処理されている。すなわち、相続分譲渡が無償であれば、譲受人のみに増加した相続財産について相続税が課せられ、譲渡が有償であれば、譲受人には増加した相続財産について相続税が、譲渡人には譲渡対価について相続税が課せられる。 このような処理がなされる理由は、相続税法は各共同相続人に対する相続税の課税について各人が現実に取得した相続財産の価格に応じた課税を行うことを原則としており、共同相続人間で無償の相続分の譲渡があった場合でも、遺産分割協議の中で一部の共同相続人に対して多く相続財産を取得させることにより相続分の譲渡と同様の結果が生じた場合でも、同じ税を課すことが、広く納税義務者となる国民との関係では公平であるからと思われる。 また、相続分の譲渡について贈与税を課した上で、譲渡後の相続分に応じた遺産分割の結果、譲受人が現実に取得した相続財産の価格に応じてさらに相続税を課すことは、二重課税となるとも考えられる。未分割遺産に対する課税を定めた相続税法55条の「相続分」には、共同相続人間における譲渡により取得された相続分が含まれるとした判例(最判平成5年5月28日・判タ818-89)からしても、このような処理になるのが自然であろう。 他方で、本判決は、上記の通り共同相続人間の公平という点を考慮したものであると考えられ、課税の場面での原則・公平とは異なる上、民法903条1項にいう「贈与」と、相続税法上の「贈与」とを同じ意味と理解しなければならないわけでもない。したがって、本判決が影響して、共同相続人間における相続分の譲渡について贈与税が課せられるようになるといったことはないと思われる。   4 その他 本判決は共同相続人間での相続分の譲渡に関するものであり、第三者に対する相続分の譲渡の場面では別の取扱いがある。第三者に対する相続分の譲渡は、譲渡人の割合的な持分を移転させるものであって、相続人の地位を移転させるわけではない。したがって、相続分が無償で譲渡された場合、譲受人には相続税ではなく贈与税が、譲渡人には相続税が課せられる(東京高判平成17年11月10日)。この機会に、第三者に対する相続分の譲渡についても確認することをお勧めする。 なお本判決とは直接関係ないが、改正相続法では、遺留分算定の基礎となる財産額の算定の上で持ち戻しの対象となる生前贈与は相続開始前10年に限定されることとなっているので、この点も確認されたい。 (了)

#No. 295(掲載号)
#阪本 敬幸
2018/11/22

事例で検証する最新コンプライアンス問題 【第13回】「アメフト部タックル事件と大学へのガバナンス」

事例で検証する 最新コンプライアンス問題 【第13回】 「アメフト部タックル事件と大学へのガバナンス」   弁護士 原 正雄   2018年5月6日、大学アメリカンフットボール部(以下、アメフト部)の試合で、N大学の部員A選手が危険な反則タックルを行い、相手大学の部員を負傷させた事件(以下、本件)が発生した。本件は、U監督が部員に反則タックルを指示したのではないか、ということで大変な社会問題となった。 5月31日、N大学は第三者委員会を設置して、事実関係と原因究明に着手した。6月29日には第三者委員会の中間報告書が公表され、同年7月30日、第三者委員会の最終報告書(以下、第三者報告書)が公表された。 第三者報告書によれば、本件は「指導者としての基本的な資質を欠いたU氏及びI氏から、精神的に過度のプレッシャーを掛けられた上、ルールを逸脱した危険タックル等の反則行為を指示されたA選手がこれを実行に移し、対戦相手のK大学アメフト部のB選手を負傷させた」というものである(第三者報告書38頁。以下、頁のみ記載)。 また、第三者報告書は、本件が問題となった後のN大学の事後対応について、以下の4点を「問題点」として指摘している(24~27頁)。 以下、第三者報告書に基づいて、「大学のガバナンス」という観点から、本件を分析する。   1 N大学におけるアメフト部の位置付け N大学では、競技部は重要な経営資源であった(14頁)。そのため、アメフト部などの競技部は、学生による任意団体ではなく、大学の組織の一部であり、大学としての事業の一環とされていた。 具体的には、N大学には、付属機関として保健体育審議会が設置されており(N大学保健体育審議会規程1条)、アメフト部はこの保健体育審議会に属している。このためアメフト部は正式名称を「N大学保健体育審議会アメリカンフットボール部」という。アメフト部の部長は、理事長・学長・副学長・常務理事・学部長等の中から選ばれ、そうして選ばれた部長が、監督やコーチを指名する(8、9頁)。 本件当時、アメフト部の部長は、N大学の枢要ポストである常務理事(人事担当)であるU氏が就任していた(14頁)。これは、N大学のT理事長が認めた人事であった。T理事長は、4期10年に及ぶ長きにわたり理事長の職にあり、N大学において絶大な権限と影響力を有していた。そのT理事長が容認した結果、U監督によるアメフト部の独裁体制が可能となった、とされている(28頁)。 そうだとすると、本件での反則タックルは、現場の暴走ではなく、理事会の経営方針に従ってアメフト部を運営した結果である可能性も否定できない。この点について、第三者報告書には特段の記載はない。   2 N大学による事後の対応 A選手は、反則タックルがU監督の指示であった、と説明していた。これに対して、U監督は、反則タックルを指示したことを否定した。 第三者報告書によれば、U監督は、常務理事でもあったため、T理事長に本件の事実経過を随時報告していたことがうかがえる(22頁)。その上で、N大学は、5月23日、大学の講堂でU監督が出席する記者会見を開催し、U監督に弁明の機会を付与した(17頁)。また、N大学は、反則タックルを理由に刑事告訴されたU監督のために、弁護士費用を肩代わりすることを検討していた(24頁)。さらに、T理事長は「私としては経営側の立場であり、今回の対応は教学の責任者である学長にお願いをしている」と述べていた(19頁)。 こうした経緯は、U監督の行動について、理事会が「経営方針の範囲内である」として受け入れていた様子をうかがわせる。   3 N大学による隠蔽工作への関わり 本件は、わずか1週間ほどで社会問題に発展した。そうした中、N大学のI理事が、反則タックルをしたA選手に対して、以下のとおり告げた。 上記は、暗にU監督らの関与がなかったかのように説明することを求めて「口封じ」を図ったものであった(15頁)。また、上記「大学が総力を挙げて」との発言は「口封じ」が大学の総意であるとするものであった。この点について、何らかの裏付けがあっての発言なのか、そうでないのかは、第三者報告書には記載はない。 後に、N大学は、I理事を辞任させた。ただ、それは、上記「口封じ」を記載する中間報告書が公表され、N大学がさらなる批判を浴びた後のことであった。これが、理事会としての自浄作用が働いた結果なのか、それとも社会的に批判されたことだけが理由なのかは、第三者報告書を読む限り、判然としない。 また、上記以外にも、N大学の職員が、アメフト部員数名に対して、U監督の指示について話さないよう求めるという隠蔽工作を行っている(15頁)。第三者報告書においては、当該職員の立場、所属、役職は一切不明である。大学から当該職員への指示の有無も、一切不明のままである。   4 「大学によるアメフト部に対するガバナンス体制の検証」 第三者報告書は、調査嘱託事項の1つを「大学によるアメフト部に対するガバナンス体制の検証」としている(2頁)。 「ガバナンス」という言葉は、コーポレートガバナンス・コードでは「会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組み」と定義されている。すなわち、会社の意思を決定する取締役会に対する監督を意味する。 本件でアメフト部に「ガバナンス」という言葉を用いたのは、アメフト部が大学から独立した組織であり、意思を決定するのは監督であることを前提としている。しかし、上述したとおり、アメフト部は、N大学の組織の一部である。アメフト部に「ガバナンス」という言葉を用いるのは、本来、相応しくない。 第三者報告書は、調査嘱託事項においてアメフト部に「ガバナンス」という言葉を用いた結果、同部を独立した組織であるかのように前提してしまい、アメフト部の暴走という結論を先取りした形になってしまった。   5 大学に対する「ガバナンス」 学外に対して、誰が、どのようにして、大学についての責任を負うかが、大学におけるガバナンスである。大学におけるガバナンスの対象は、理事会以外にはありえない。 ただ、理事の選任方法は、寄付行為で定める(私立学校法38条1項)。私立学校法は、大学に対するガバナンスを求めていない。N大学での理事の選任方法の定めは明らかではなく、N大学に対するガバナンスがどのように実現されるかは、不明である。 第三者報告書を読む限り、上述したとおり、①本件での反則タックルは、理事会の方針に従ってアメフト部を運営した結果である可能性も否定できない。また、②U監督の行動について、理事会が「経営方針の範囲内である」として受け入れていた様子もある。さらに、③隠蔽工作についての理事会の関わりの有無も、明らかにされていない。 本件では「再発を防止するための対策」も調査嘱託事項とされている。真に再発を防止するには、徹底した原因究明が不可欠である。原因を究明するためには、本来、理事会に対するガバナンスという観点から、上記①~③についても検証すべきであった。その上で、再発防止策を提言すべきであった。 また、上述のとおり、第三者報告書のみでは、N大学のガバナンスに疑念が残る形となってしまっている。N大学の名誉回復という観点からも、こうした点にもっと踏み込むべきであった。   6 理事長の声明 第三者委員会が公表された4日後(8月3日)、N大学の理事長は「理事長として・・・、改めて学生ファーストの精神に立ち返って今後の大学運営を行っていくことを、学生諸君、保護者の皆様に宣言いたします。教職員の皆様も、わたくしの決意を受け止め、行動していただきたい」とする声明を公表した。また、I理事の「口封じ」についても「なぜこんな卑劣な行為があったのか、驚愕と激しい怒りがこみ上げました」と記載している。 上記は、理事長である「わたくし」が、今後も理事長の職務を継続するとの決意を表明した上で、理事長に批判的な教職員もいる中で一致団結を求めるものである。また、I理事の「口封じ」については、理事会と関わりのない暴走であったとするものである。 上記は、第三者委員会の認定と結論を踏まえてのものである。ただ、開示文を見る限り、「競技部へのガバナンス強化」や「競技部の改革」は謳っているものの、理事会に対するガバナンス強化には言及していない。これまで「学生ファーストの精神」を実現できていなかったのは、あくまで理事会である。N大学の理事会が、本件への反省を踏まえて「学生ファーストの精神」に立ち返った大学改革を実現できるか、見守っていきたい。 (※) なお、警視庁は、U監督が反則タックルを指示した事実は認められないと判断したとのことである(日本経済新聞2018.11.13夕刊)。 (了)

#No. 295(掲載号)
#原 正雄
2018/11/22

《速報解説》 改正相続法の施行日は2019年(平成31年)7月1日で確定~配偶者居住権は2020年4月1日以後開始の相続から~

《速報解説》 改正相続法の施行日は2019年(平成31年)7月1日で確定 ~配偶者居住権は2020年4月1日以後開始の相続から~   Profession Journal編集部   本日(2018年11月21日)付け官報第7394号にて、「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」及び「法務局における遺言書の保管等に関する法律の施行期日を定める政令」が公布され、本年7月13日に公布された「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」(以下、改正民法)及び「法務局における遺言書の保管等に関する法律」の施行日が確定した。 改正民法の施行期日は原則2019年(平成31年)7月1日とされ、遺留分侵害額の金銭債権化や特別寄与料請求権の新設などが適用される。ただし、遺産分割前の預貯金の仮払い制度は施行日前に開始した相続に関し施行日以後に預貯金債権が行使されるときにも適用される(改正民法附則5条1項)など改正項目によっては経過措置が定められているので留意が必要だ。なお、この仮払い制度に関しては、単独行使による金融機関ごとの払戻し限度額を150万円と規定した改正法務省令が既報のとおりパブコメに付されていたが、本日の官報同号にて改正案どおりの内容で公布されている。 また、配偶者居住権について規定された改正民法2条の施行は2020年(平成32年4月1日)とされ、同日以後に開始した相続については、配偶者居住権を踏まえた遺産分割の対応が求められることとなる。この配偶者居住権の評価方法をめぐっては来年度の税制改正大綱において何らかの言及があるとみる向きもあるが、どのような対応となるか今後の動向に注目される。 さらに、法務局における自筆証書遺言書の保管制度は2020年(平成32年)7月10日からスタートされ、今後、関係法令による整備が進められることになる。なお、自筆証書遺言の方式の緩和については、改正民法附則1条2号で「公布の日から起算して6月を経過した日」から施行されることが規定されており、いち早く来年(2019年)1月13日がその開始時期となる。 (了) ↓お勧め連載記事↓

#No. 295(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2018/11/21

プロフェッションジャーナル No.294が公開されました!~今週のお薦め記事~

2018年11月15日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.294を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2018/11/15

日本の企業税制 【第61回】「シェアリングエコノミー・仮想通貨等の所得把握に向けた検討状況」

日本の企業税制 【第61回】 「シェアリングエコノミー・仮想通貨等の所得把握に向けた検討状況」   一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 小畑 良晴   〇政府税調での議論が進む「経済社会のICT化等に伴う納税環境整備」 10月10日に政府税制調査会第17回総会が開かれてから11月7日の第20回総会まで、4回の総会が開催された。 特に10月23日の第19回総会では、経済社会のICT化等に伴う納税環境整備のあり方について、今後の総会における議論の素材を整理するため、「納税環境整備に関する専門家会合」を設置することが決定され、その後、第20回総会までの2週間で、専門家会合が3回(10月24日、29日、11月5日)、集中的に開催され、第20回総会では「経済社会のICT化等に伴う納税環境整備のあり方について(意見の整理)」が報告された。 経済社会のICT化等への対応については、平成30年度与党税制改正大綱でも、「経済のICT化等の動向や諸外国の制度も踏まえ、適正な記帳の確保に向けた方策を講じつつ、事業所得等の適正な申告、所得把握に向けた取組みを進める」とされていたところであり、早ければ平成31年度税制改正のテーマの1つにもなりうる。 専門家会合での議論の対象は主に、「シェアリングエコノミー」、「仮想通貨取引」、「金地金取引」の3点であった。   〇シェアリングエコノミーの実態 すでに昨年の政府税制調査会では、経済のICT化に関連して次のように述べられていた。 (2017年11月20日「経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する中間報告②(税務手続の電子化等の推進、個人所得課税の見直し)」より) 本年7月に、内閣府経済社会研究所が発表した『シェアリング・エコノミー等新分野の経済活動の計測に関する調査研究』報告書によれば、シェアリング・エコノミー全体の生産額規模(2016年)は約4,700億円~5,250億円程度と試算され、そのうち「SNA(国民経済計算)の生産の境界内ではあるが、捕捉できていないと考えられるもの」の規模は950億円~1,350億円程度とされている。   〇仮想通貨取引 仮想通貨の世界的な市場規模は急速に拡大しており、仮想通貨全体の時価総額は平成26 年から平成30 年にかけて約1,000 倍に増加している。 また、本年5月の国税庁の報道発表資料によれば、確定申告をした者で、公的年金等以外の雑所得に係る収入金額が1億円以上ある者(平成29年分549人)のうち、仮想通貨取引による収入があると判別できた者は331人(速報値)であった。 しかし、仮想通貨はインターネットを通じて簡易に口座間の移転を行うことができ、複数の交換業者を利用している顧客も少なからずおり、交換業者をまたがって口座間の移転が行われた場合、移転先の口座を管理する交換業者においては、移転元における仮想通貨の取得価額が把握できないため、当該仮想通貨における損益の計算もできないという現状にある。 こうしたことから、国税庁では、仮想通貨関連団体とともに納税者自身による適正な納税義務の履行を後押しする環境整備について検討するため、「仮想通貨取引等に係る申告等の環境整備に関する研究会」を本年4月から開始している。 当面の協議事項例として、仮想通貨取引所利用者に対する所得計算上必要な情報の提供といった申告利便向上策が挙げられている。   〇金地金取引 金地金取引については、近年、金の密輸入事件が多発し社会的に大きな問題となっていることを受け、平成30年度税制改正において、金の密輸に対する抑止効果を高め、密輸者に一層の経済的不利益を与える観点から、関税法上の無許可輸出入罪の罰則及び輸入に係る消費税等のほ脱罪の罰則を強化したところである。 国内で金地金を貴金属取扱業者に売却する際、1回200 万円超の取引であれば、業者から税務当局に対して買取額等を記載した法定調書が提出されるが、200万円を下回るよう小口に分割して売却された場合には、調書による報告の対象とはならないという限界が指摘されている。   〇税制上の方策 今回、政府税制調査会総会で報告された「経済社会のICT化等に伴う納税環境整備のあり方について(意見の整理)」では、自主的な適正申告の実現に向けた方策として、 の3点が掲げられている。 ただし、①納税者に対する更なる情報提供及びその活用に関しては、 といった中長期的な方策の指摘が中心であり、また、③源泉徴収に関しては、 との指摘もあり、乗り越えるべき課題は多い。 一方、②税務当局による必要な情報の取得等については、仮想通貨取引やシェアリングエコノミーに関して、 といった、制度設計につながる指摘が見られるところであり、まずは、こうした対応から制度化が行われるのではないかと見られる。 (了)

#No. 294(掲載号)
#小畑 良晴
2018/11/15

〈平成30年分〉おさえておきたい年末調整のポイント 【第2回】「配偶者控除等申告書の記載方法」

〈平成30年分〉 おさえておきたい 年末調整のポイント 【第2回】 「配偶者控除等申告書の記載方法」   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   【第1回】で解説したとおり、平成30年分の年末調整で配偶者控除又は配偶者特別控除の適用を受けるには、その年最後に給与等の支払いを受ける日の前日までに、配偶者控除等申告書を給与等の支払者に提出する必要がある(所法195の2①)。 また、配偶者控除及び配偶者特別控除の改正により、源泉徴収簿や源泉徴収票の様式の一部も変更されている。 以下、配偶者控除等申告書の記載方法と、源泉徴収簿及び源泉徴収票の様式が変更された部分について解説を行う。   【1】 配偶者控除等申告書の記載方法 配偶者控除額及び配偶者特別控除額は、配偶者控除等申告書に必要事項を記載することにより求めることができる。 配偶者控除等申告書は、以下の1から5の順番で記載すると、控除額をスムーズに算出することができる。なお、配偶者控除等申告書は、配偶者控除又は配偶者特別控除の適用を受けるために提出するものであることから、合計所得金額が1,000万円を超える所得者は、配偶者の合計所得金額に関わらず提出する必要はない。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。   【2】 配偶者控除等申告書の記載例 【1】をもとに配偶者控除等申告書の記載例を示すと、次のとおりである。 《例1》 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 《例2》 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。   【3】 源泉徴収簿の様式変更 配偶者控除及び配偶者特別控除の改正に伴い、源泉徴収簿の⑮欄と⑯欄が次のとおり変更された。 平成29年分以前は、⑮欄には配偶者特別控除額のみ記載し、配偶者控除額は⑯欄に他の控除額と合わせて記載していた。 平成30年分以後は、配偶者控除等申告書に記載された配偶者控除額又は配偶者特別控除額を⑮欄に記載することとされた。 (※) 国税庁ホームページより   【4】 源泉徴収票の様式変更 平成30年分以後は、源泉徴収票についても配偶者に関わる部分の様式が変更される。変更箇所は、次の1から5である。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 配偶者控除等申告書の記載にあたっては、所得者及び配偶者の合計所得金額を算出しなければならないため、従業員から計算方法や用語について説明を求められる可能性もある。合計所得金額や各種所得金額の計算方法について、あらかじめ理解しておきたい。 *   *   * 連載最終回となる【第3回】は、改正された配偶者控除及び配偶者特別控除に関する実務上のポイントをQ&A方式で解説する。 (了)   

#No. 294(掲載号)
#篠藤 敦子
2018/11/15

事業年度中の消費税率引上げに関する企業対応

事業年度中の消費税率引上げに関する企業対応   税理士 金井 恵美子   1 10月1日の税率引上げ 消費税の税率は、2019年10月1日に10%(※1)となる。 これまで、消費税法の施行、3%から5%への税率引上げ、5%から8%への税率引上げは、下記のように、その施行日がすべて4月1日であった。したがって、3月末決算法人は、事業年度(※2)の途中で消費税の税率を変更した経験がない。 このため2019年度においては、期中における税率変更と軽減税率の導入という、初めての、2つのハードルを同時に越えなければならない。これに対応するため、検討すべき事項を確認してみよう。 (※1) 国税である消費税7.8%と地方消費税2.2%の合計税率。以下「税率」は、合計税率を示すこととする。 (※2) 原則として、法人の事業年度が消費税の課税期間となる(消法19①二)。   2 価格改定計画の策定 商品の価格は、自由競争の下で市場条件を反映して決定されるものであるから、全ての商品について、税率引上げに見合う一律に単純な値上げができるわけではない。商品ごとの利益率、値上げによる需要の変化、コストの動向、競合他社の動向等を調査した上で、事業全体で利益を確保するための価格設定や販売計画を立案する必要がある。 対消費者取引では、価格の設定の方法として、次の2つが考えられる。 特に、②の方法である場合や、①の方法から②の方法に変更する場合には、消費税率の引上げに対して、いつ、どのような価格改定を行うのか、事業計画は、2019年10月1日の税率引上げの時期を含む事業年度が開始する前に検討しておくべきである。販売システムの改修、広告や値札の変更、追加作業のシミュレーションといった計画に沿った準備と資金調達が必要となるからである。システムの不具合や担当者の不適切な対応は、顧客の離反やクレームを招くおそれがある。 過去の経験から駆け込み需要と反動減の影響を分析し、顧客のニーズと競合価格を考慮しつつ、価格の改定を検討しなければならない。税率引上げの時期にこだわらない柔軟な検討も必要となろう。 さらに従業員への周知と教育は必須であり、また、価格交渉における営業担当者の裁量の範囲等についても検討しておく必要がある。   3 財務会計システムの改修 消費税の税率引上げに当たっては、財務会計システムの改修が必至である。この改修は、2019年10月1日を含む事業年度が開始する前、3月末決算法人においては、2019年3月31日までに完了しておくことが望ましい。 新税率は、旧税率を適用する経過措置の適用があるものを除き、施行日以後に国内において行う資産の譲渡等に適用される(税制抜本改革法附則2)。つまり、それぞれの課税資産の譲渡等を認識すべき日(適正な売上計上の日)において施行されている税率が、適用すべき税率である。 そのため、一般に、財務会計システムは、入力された計上日により適用税率をデフォルトしているが、2019年10月1日以後は複数税率となるため、取引ごとに標準税率又は軽減税率のいずれかを選択しなければならない。 改修前に2019年10月1日以後の日付で計上した仕訳があると、改修後に、適用税率を確認する作業、あるいは訂正する作業が必要となる。 会計ソフトの多くは、新税率対応版へのバージョンアップを来年3月配信に設定しているようであり、これは3月末決算法人の新年度のスタートの時期にあわせたものだろう。10月末決算法人は、すでに税率引上げの時期を含む事業年度が開始しており、システム改修後に、適用税率の再確認を行う必要がある。   4 新旧税率の整理のための経理処理 棚卸資産の販売に適用する税率は、その棚卸資産の引渡しの日がいつであるかによって判断し、施行日以後に引き渡した商品の売上げには新税率が適用される。経過措置の対象となる取引でない限り、契約締結の日や代金受領の日は、税率の適用関係に影響しない(経過措置通達2)。 一の請求書に、施行日前に販売した商品と施行日以後に販売した商品とがある場合には、施行日の前日までに販売した商品には旧税率を、施行日以後に販売した商品には新税率を、それぞれ適用することになる。10月1日をまたぐ請求書については、その内容を区分して税率を適用し、その税率ごとに財務会計システムへの入力を行うこととなる。 役務の提供については、その役務を完了した日に施行されている税率が適用される。仕事の全部が一括して完了する場合にはその一括して完了する日、継続して役務提供する場合には、契約の内容に応じて、個々のサービスが完了する日に施行されている税率を適用することとなる。 したがって、新旧税率の整理のため、2019年9月30日までに認識するべき取引とその後に認識するべき取引を区分する、決算に準じた経理処理が必要となろう。 また、課税仕入れについても、施行日前後の区別が必要である。課税仕入れについては、原則として、課税仕入れを行った日の税率によって控除対象仕入税額の計算を行うこととなるからである。 ただし、仕入税額控除は前段階で課税された税額を控除する手続きであるから、適用する税率は、課税資産の譲渡等を行う事業者と一致していなければならない。課税資産の譲渡等を行う事業者が9月30日までに認識した取引については、経理処理の基準の違いから仕入側が10月1日以後に課税仕入れを認識した場合であっても、課税資産の譲渡等を行う事業者が適正に判断した税率8%を適用して控除対象仕入税額を計算することとなる。 なお、施行日以後の販売については、経過措置の適用がない限り、当事者間で旧税率を適用する旨の合意をして取引を行った場合や、請求書に旧税率を適用すると明記した場合であっても、そのことによって旧税率が適用されることはない。旧税率で取引額を計算したものであっても、受領した金額は、新税率を含む税込対価となる点に留意する必要がある。   5 旧税率を適用する経過措置 次の経過措置は、指定日の前日までに契約を締結しているなど、指定日を基準に一定の要件を設けて適用するものである。 税率10%への引上げに係る指定日(31年指定日)は、2019年4月1日である。上記の経過措置の適用を受けるためには、31年指定日の前日、2019年3月31日までに契約を締結しておかなければならない。慣習として「4月1日」を契約日としている場合には、これを「3月31日」とするべきかどうか、検討する必要がある。 なお、国税庁は、11月2日に、「平成31年(2019年)10月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いQ&A【基本的な考え方編】」及び「平成31年(2019年)10月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いQ&A【具体的事例編】」を公表している。 これらは、税率5%から8%への引上げ時に公表されたQ&Aをベースとしているが、今回、追加された項目もある。 例えば、新たに、「家電リサイクル法に規定する特定家庭用機器廃棄物の再商品化等に関する経過措置の概要」(【基本的な考え方編】問47)、通信販売等に関する経過措置として「インターネット通販に係る経過措置の適用関係」や「販売価格が変動しうることを示している場合」が示された(【具体的事例編】問33、問34)。 (了)

#No. 294(掲載号)
#金井 恵美子
2018/11/15

相続税の実務問答 【第29回】「未支給年金の支給を受けた場合」

相続税の実務問答 【第29回】 「未支給年金の支給を受けた場合」   税理士 梶野 研二   [答] 被相続人の死亡後に支給時期の到来する未支給年金は、相続税の課税対象とはなりません。ただし、支給を受けたお母様の所得税の課税対象となります。 ● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ● 1 未支給年金の相続性 国民年金は、偶数月の15日(15日が土曜日、日曜日又は祝日のときは、その直前の平日)にその前の月までの分が支払われます。そのため相続開始をした日を含む月分及びその前月分(相続開始の日によっては前月分及び前々月分)の年金は、相続開始日においては、未支給の状態となっています。 この相続開始日において未支給の状態となっていた年金(以下「未支給年金」といいます)は年金受給者の相続財産を構成するのかどうかについて、従来、見解が分かれていましたが、最高裁判所第三小法廷平成7年11月7日判決は、未支給年金の相続性を否定しました。 国民年金法は、年金給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき年金給付でまだその者に支給しなかったものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹又はこれらの者以外の三親等内の親族であって、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものが、自己の名でその未支給の年金の支給を請求することができると定めており(国民年金法19①)、未支給年金を受けるべき者の順位は、民法に規定されている相続人となる者の順序とは異なり、死亡した者の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹及びこれらの者以外の三親等内の親族の順序とされている(国民年金法19④、国民年金法施行令4の3の2)ことがその理由です。 【平成7年11月7日最高裁判所第三小法廷判決】 この最高裁判所の判決を踏まえ、現在では、国民年金法が未支給年金を支給請求することのできる者の範囲及び順位について民法の規定する相続人の範囲及び順位決定の原則とは異なった定め方をしているのは、民法の相続とは別の被保険者の収入に依拠していた遺族の生活保障を目的とした立場から未支給の年金給付の支給を一定の遺族に対して認めたからであり、未支給年金請求権は、当該遺族固有の権利であって、年金受給者の財産ではないと解されています。 なお、厚生年金保険法、国家公務員共済組合法、地方公務員等共済組合法、私立学校教職員共済法、独立行政法人農業者年金基金法等の規定に基づく年金の未支給年金についても同様に解されます(厚生年金保険法37、国家公務員共済組合法44、地方公務員等共済組合法47、私立学校教職員共済法25、独立行政法人農業者年金基金法22)。   2 未支給年金に対する課税関係 上記1のとおり、国民年金の未支給年金は、国民年金法の定めにより、被相続人の遺族が固有の財産として原始的に取得するものですから、相続財産には該当しません。また、相続又は遺贈により取得したものとみなされる財産にも該当しません。 (注) 未支給年金請求権は、国民年金法の規定に基づき一方的に付与されるものであることから契約に基づかない権利(請求権)ですが、相続税法第3条第1項第6号に規定する「これに係る一時金」には、継続受取人が受給を受けるべき「定期金が特別に又は選択的に一時金とされる場合の一時金のみが含まれる」こととされている趣旨からすると、未支給年金については、定期金ではなく最初から一時金のみを支給するものであるため、同号に規定するみなし相続財産にも該当しないと考えられます(国税庁 質疑応答事例「未支給の国民年金に係る相続税の課税関係」)。 したがって、未支給年金は、相続税の課税価格の計算の基礎に算入しません。 なお、遺族が支給を受けた当該未支給の年金は、その遺族の一時所得の収入金額となりますので(所基通34-2)、所得税の申告が必要となる場合があります。   3 ご質問の場合 お父様は、4月に2月分及び3月分の年金を受領し、4月分及び5月分の年金は6月に受給することとなっていたものと思われます。しかし、お父様が5月にお亡くなりになられたことから、お父様がこの年金は受給することができなくなりました。そこで、お母様が、国民年金法の規定に基づき、お父様の死亡届を行うとともに未支給年金の請求を行ったものであり、この未支給年金をお母さまの固有の権利として取得したこととなります。 したがって、この未支給年金請求権は、相続税の課税価格の計算の基礎に算入する必要はありません。 ただし、この未支給年金の額は、お母様の一時所得の収入金額となりますので、その他の一時所得の収入金額と併せて一時所得の特別控除額(50万円)を超える場合には、所得税の申告が必要になる場合がありますのでご注意ください。 (了)

#No. 294(掲載号)
#梶野 研二
2018/11/15

〔ケーススタディ〕国際税務Q&A 【第8回】「外国法人に支払った特許ライセンス使用料に係る源泉徴収の検討」

〔ケーススタディ〕 国際税務Q&A 【第8回】 「外国法人に支払った特許ライセンス使用料に係る源泉徴収の検討」   弁護士 木村 浩之   [Q] 日本法人である当社(製造メーカー)は、外国法人であるA社から、同社が日本において保有する特許権についての実施権(ライセンス)の設定を受けました。 この場合の税務上の留意点について教えてください。 [A] 特許権についての実施の対価として支払うことになる使用料(ロイヤルティ)については、源泉徴収の対象になる可能性がありますので、その検討が必要になります。 ・・・[解説]・・・ 1 はじめに 特許に限らず、商標、著作権などを使用する権利を設定してもらい、その対価として使用料を支払う旨のライセンス契約がなされることは多い。このような契約が国外の企業と締結される国際ライセンス契約の場合、ライセンスを受けた日本の居住者から国外の居住者(日本の非居住者)に使用料が支払われる。これは非居住者からすれば、日本の国内で使用料所得を稼得したことになる。 このようにして非居住者が日本の国内で稼得した使用料所得については、日本の国内源泉所得として、日本が課税上の利害関係を有する。しかしながら、非居住者に対して申告納税義務を課すというのは現実的ではない場合も多い。 そこで、日本の国内法上、非居住者に使用料の支払をする場合、支払者が一定の割合で源泉徴収して納税することが定められている。 もっとも、このような源泉徴収については、租税条約が適用されることで減免されることがあり得る。したがって、非居住者に使用料を支払う場合、国内法のほか、租税条約の規定も踏まえて、源泉徴収義務を適切に判断する必要がある。   2 国内法の規定 国内法上、国内の事業者が非居住者に対して国内業務に係る特許等の使用料を支払う場合、その支払の際に所得税を徴収して納付しなければならないとされている(所得税法212条1項、161条1項11号イ)。その税額は、支払額に20%の税率を乗じて計算した金額である(所得税法213条1項1号)。これに復興特別所得税を合わせると、非居住者に使用料を支払う場合、20.42%の割合で源泉徴収しなければならないことになる。 もっとも、租税条約が適用されることで、源泉徴収の税率が軽減され、又は免除されることがあり得るので、その検討が必要である。   3 租税条約の確認と手続 所得の受領者が居住している国(居住地国)と日本との間で租税条約が締結されていれば、その租税条約が適用され得る。そこで、支払者としては、まずは支払の相手方がいずれの国の居住者であるかを確認することが必要である。実務においては、商業登記、納税者番号、居住者証明書などの公的書類によって確認することが多い。 その上で、相手方の居住地国が日本との間で租税条約を締結しているかを確認することになる。租税条約がある場合、「使用料所得条項」を確認して、限度税率が定められているか、あるいは課税免除が定められているかを確認する。 限度税率が定められている場合、国内法上の20.42%の税率は限度税率にまで軽減されることになる。課税免除が定められている場合、源泉徴収義務も免除されることになる。ただし、これらの減免の適用を受けるためには、所得の受領者が支払者を通じて税務署に対して租税条約の適用について届出をする必要がある。 最初に使用料の支払がなされる日の前日までに届出書の提出がなされた場合、支払者は租税条約の適用を踏まえた税額を源泉徴収することになる。これに対して、上記までに届出書の提出がない場合、支払者としては国内法上の税率に基づく源泉徴収をすることになる。この場合、所得の受領者において事後的に税務署に租税条約の適用の届出をして還付の請求をすることができるとされている(租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律の施行に関する省令)。   (了)

#No. 294(掲載号)
#木村 浩之
2018/11/15
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