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相続空き家の特例 [一問一答] 【第5回】「「相続空き家の特例」を受けられない家屋③(別棟の離れ、倉庫、蔵、車庫等の建築物)」-相続空き家の特例の対象となる譲渡の範囲-

相続空き家の特例 [一問一答] 【第5回】 「「相続空き家の特例」を受けられない家屋③ (別棟の離れ、倉庫、蔵、車庫等の建築物)」 -相続空き家の特例の対象となる譲渡の範囲-   税理士 大久保 昭佳   Q Xは、昨年6月に死亡した父親の居住用家屋等(昭和56年5月31日以前に建築)及びその敷地を相続により取得しました。 相続の開始の直前において、父親は、その母屋、離れ、蔵、車庫を一体として居住の用に供し、1人で住んでいました。 Xは、それら建築物を耐震リフォームした上で、その土地と建築物の全てを売却しました。 この場合の、「相続空き家の特例(措法35③)」の適用対象となる被相続人居住用家屋の範囲を説明してください。 A 相続の開始の直前において被相続人が主としてその居住の用に供していたと認められる母屋部分のみが被相続人居住用家屋に該当します。 ●○●○解説○●○● 「相続空き家の特例」の適用対象となる被相続人居住用家屋は、その相続の開始の直前において、その相続又は遺贈に係る被相続人の居住の用に供されていた家屋で、その被相続人が主としてその居住の用に供していたと認められる一の建築物に限るとされています(措法35④、措令23⑥)。 そして、「相続空き家の特例」の場合は、他の「居住用財産を譲渡した場合の特例」と違い、被相続人居住用家屋は一の建築物に限ると規定されていることから、被相続人の居住の用に供されていた家屋が複数の建築物からなる場合であっても、それらの建築物のうち、その被相続人が主としてその居住の用に供していたと認められる一の建築物のみが被相続人居住用家屋に該当し、その一の建築物以外の建築物は、被相続人居住用家屋に該当しないとされています(措通35-10(被相続人居住用家屋の範囲))。 立法者の解説においても とされています(財務省HP「平成28年度税制改正の解説」152頁)。 (了)

#No. 229(掲載号)
#大久保 昭佳
2017/08/03

租税争訟レポート 【第33回】「顧問税理士の不正発見義務(東京地方裁判所判決)」

租税争訟レポート 【第33回】 「顧問税理士の不正発見義務(東京地方裁判所判決)」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝     【事案の概要】 本件は、診療所を経営する医師である原告が、税理士である被告と税務顧問契約を締結していたところ、①原告が雇用していたA(以下「A」という)の横領につき、被告が、会計上の不正行為の有無を調査しなかったこと又は会計上の不正行為が疑われる事実を報告しなかったことが税務顧問契約上の債務不履行になるとし、損害賠償請求権に基づき、損害合計6,975万3,500円、及び、②原告の承諾なく被告が顧問料及び決算報酬の増額分を受け取っていたとして、不当利得返還請求権に基づき、当該増額分の合計額112万円の合計7,087万3,500円の支払いを求める事案である。 争点は、以下の4点である。 本稿では、(争点1)被告の義務及び義務違反の存否について、原告、被告の主張と裁判所の判断を中心に検討したい。   【(争点1-1)被告は、原告に対し、会計上、不正行為が行われているかを調査する義務があったか】 1 原告の主張 原告は、「顧問契約において、決算書類の作成補助、税務申告の代行、税務調査及び税務・会計に関する相談、総勘定元帳等の会計帳簿の作成、税務書類等の作成以外に、経営上の助言及び指導についても委任した」というものであり、「経営上の助言及び指導」については、「金の流れが正常であるかについて確認し、会計上、不正行為が行われているか調査を行うことである」としたうえで、原告が、被告に対し、顧問契約において、経営上の助言及び指導を委任したことは、以下の事実から認められるべきであると主張した。 2 被告の主張 一方、被告である税理士は、「経営の助言・指導及び不正行為の発見は、顧問契約の委任の範囲に含まれていない」とし、「不正の防止・不正の発見は、本来、経営者である原告が行うべきことである」と主張した。 そのうえで、税理士の業務は、税務代理、税務書類の作成、税務相談という本来の税務士業務と、その付随業務としての財務諸表の作成、会計帳簿の記帳代行等であるから、通常の税理士顧問契約は、これらの業務に限られ、これらを超える経営上の助言・指導等の業務は、特別な合意がある場合に限られるところ、顧問契約では特段の合意はないと上記の主張を裏づけ、また、被告には、雇用関係がなく指揮命令権もない事務長であるAを監督する権限又は義務は存在しないと主張した。 3 裁判所の判断 裁判所はまず、「顧問契約につき、原告と被告の間で作成された契約書等はなく、原告が、明示的に、被告に対し、不正行為についての調査を委任したと認めることはできない」として、被告の主張を認めたうえで、原告の経営指導も含まれていたという主張、供述については、「主観的な期待にすぎず、税理士の業務が、税務代理、税務書類の作成、税務相談及び付随業務としての財務諸表の作成、会計帳簿の記帳代行等である(税理士法2条)ことに照らしても、原告の期待がやむを得ないといえるような客観的な事情を認めることはできない」として、原告の主張は採用できないと判断し、被告は、原告に対し、会計上、不正行為が行われているかを調査する義務があったと認めることはできない、と結論づけた。   【(争点1-2)被告は、原告に対し、会計上、不正行為が行われていると疑われる状況がある場合、これを報告する義務があったか】 1 原告の主張 原告は、受任者は、善管注意義務を負い、また、税理士は、税理士法1条又は41条の3から、適正な税額の算定に当たって不正行為を排除すべきことを要求されていると解されることからすれば、会計業務を委託された税理士は、委託者に対して、不正が疑われる状況にある場合には、その状況を報告すべき義務を負うというべきであると主張した。 本件において、保管金から院長出金の名目で複数回にわたって多額の金員が引き出されていることは、不正が疑われる具体的な状況であり、被告はこれを原告に報告すべきであったが怠ったため、注意義務違反に該当するとした。 2 被告の主張 一方、被告は、税理士が、従業員の不正を認識した場合に、依頼者に対し、当該不正を報告する義務が認められることはあっても、不正が疑われるべき状況を報告すべき義務はないとしたうえで、仮に、被告に報告義務が認められるとしても、本件において不正が疑われる状況にあったことは否認すると主張した。 被告は、保管金から「院長出金」として支出された金額について、「事業主貸」「店主勘定」として計上していたが、これらの項目には、一般的に、事業上必要な経費であるが領収書をもらえない支出や事業主の個人的な生活費の支払等が計上されるものであり、高所得の病院長であれば、一般的に事業主貸勘定は高額になり、毎月何百万単位の事業主貸勘定が発生することは特別なことではない、と反論した。 3 裁判所の判断 裁判所は、まず、原告は、被告に対し、不正行為の調査を委任したということはできず、顧問契約における委任事務は、税理士としての本来業務である税務代理、税務書類の作成、税務相談及び付随業務としての財務諸表の作成、会計帳簿の記帳代行に限られるというべきであると前提となる事実を述べたうえで、受任者である被告は、委任の本旨に従った善管注意義務を負うものの、顧問契約において、診療所の適正な運営、委任者である原告の財産の管理や保全が委任の本旨になるものではないため、善管注意義務の内容として、被告が、一般的に、原告の財産又は本件診療所の運営に対する不正が疑われる状況にあるのかどうかを判断し、原告に報告にすべきであったということはできないと判断した。 同時に、仮に、被告が委任事務を処理する際、会計上、不正行為が行われていることを知り、又は不正行為が行われていると疑われる状況を知ったにもかかわらず、原告に報告しなかったとしても、安易にこれを原告に報告することは、かえって当該不正行為を行ったと疑われた者に対する名誉毀損等の問題すら生じかねないのであって、法的な責任を負うべき義務違反はないというべきであると、原告の主張を退けた。 また、原告による税理士法1条、41条の3の趣旨から、被告に報告義務があったとする主張については、「税理士法1条及び43条の1は、税理士が納税義務の適正な実現を目指すことを規定するものであって、委任者の財産等の保護等を規定するものではない」としたうえで、「院長出金の増加や資金繰りの悪化の原因としては、従業員の横領以外の原因であることも十分あり得る」のであって、Aの横領によることが一見して明らかであったともいうことはできないにもかかわらず、被告が、原告に対し報告すべきであったということはできないと判断し、被告は、原告に対し、会計上、不正行為が行われていると疑われる状況を報告する義務があったということはできないと結論づけた。   【(争点1-3)被告は、原告に対し、決算報告等を行うべき義務を怠ったか】 1 原告の主張 原告は、被告が、原告に対し、決算報告、財務書類の説明を行ったことがなく、被告は、Aに対し、決算報告等をしていたと主張するが、否認するとして、原告に決算報告等を行う義務を怠ったと主張した。 2 被告の主張 被告は、Aを通じて、原告に対して決算書類や税務申告の説明・報告をしているし、被告が診療所を訪問した際に、原告と顔を合わせたときには、直接原告に対して説明・報告をしていると主張した。 具体的には、決算時期になれば、原告に決算説明のアポイントを入れ、基本的に原告及び同席していたAに対して、決算説明を行い、その際には、決算資料を原告に渡している。アポイントがとれない場合は、Aに対して説明を行ったが、それは、原告から会計や出納を含め、診療所に関する診療以外の事務についてAに任せているのでAに対して行うよう指示があったからである。 3 裁判所の判断 裁判所は、被告が、診療所のA宛に作成した決算書等の財務諸表を送付し、また、決算報告も電話でAに説明していたことを認めたうえで、Aについて、平成10年9月頃、AがBの事務を全て引き継いでおり、診療所内において、Bが担当していた財務諸表や決算報告の確認についても、Aが担当することになっていたと判断し、原告の明示の指示がなくとも、被告が、Aへ財務諸表を送付し、Aに決算報告を説明すれば、必要なことは原告に伝わるはずだと考えて、Aに財務諸表の送付や決算報告をしたことが、顧問契約上の義務に違反するということはできないと結論づけて、原告の主張を退けた。   【(争点1-4)被告は、Aから横領をしたと聞いた後、直ちに原告に報告すべき義務を怠ったか】 1 原告の主張 原告は、被告が、平成21年5月15日、Aから横領の事実を告白された後、受任者の善管注意義務に基づき、直ちに原告に当該事実を報告すべきであったにもかかわらず、これを怠ったと主張した。 2 被告の主張 原告の主張に対し、被告は、平成21年5月15日にAから横領の告白を受けた際、Aに対し原告へ横領の事実を告白するよう説得し、A本人の意思を尊重するとともに、横領額について帳簿上確認する必要があると判断して原告への報告を一時留保したのであり、報告を怠ったものではないと反論した。 3 裁判所の判断 裁判所は、「被告は、Aから、平成21年5月15日、3,000万円を横領した旨告白されたにもかかわらず、直ちにこれを原告に報告しなかったこと」を認めたうえで、被告は告白を受けてからおよそ1週間後には原告に報告しており、被告には、Aからの告白を受けて直ちにこれを原告に報告すべき義務があったとまで認めるに足りる証拠はないとして、原告の主張を退ける判断を行った。   【解説】 税理士による顧問先従業員不正発見義務については、富山地方裁判所平成12年8月9日判決がこれまでリーディング・ケースとされてきた。同判決は、医院を経営する原告とその顧問税理士である被告との間の事実関係を検討した結果、以下のように判示して、被告である顧問税理士に対する損害賠償請求につき、原告の訴えを却下する判決を下している。 本稿で取り上げた東京地方裁判所平成28年5月18日判決も、大筋で、この見解に沿ったものであり、上記③の報告義務についても、被告は、平成21年5月15日にAから自白された後、同月22日に横領の事実を伝えていることからすれば、「直ちに」報告を行ってはいないものの、被告による報告義務は果たされたといえよう。 こうした判示事項から、税理士が顧問先従業員の不正行為を発見できなかったことによる損害賠償責任を負う場合とは、以下のケースに限られると考えられる。 ① 委任者である納税者との合意事項として、「経営指導」を行う義務を有していること ② 同じく合意事項として、委任者の従業員の「不正の発見」を行う義務を有していること ③ 税理士が不正を発見したにもかかわらず、これを委任者に報告していないこと   (了)

#No. 229(掲載号)
#米澤 勝
2017/08/03

理由付記の不備をめぐる事例研究 【第28回】「棚卸資産」~棚卸資産の計上が漏れていると判断した理由は?~

理由付記の不備をめぐる事例研究 【第28回】 「棚卸資産」 ~棚卸資産の計上が漏れていると判断した理由は?~   千葉商科大学商経学部講師 泉 絢也   今回は、青色申告法人X社に対して行われた「棚卸資産計上漏れ」に係る法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた国税不服審判所平成23年3月25日裁決(裁決事例集82号143頁。以下「本裁決」という)を素材とする。   1 更正通知書に記載された更正の理由(本件理由付記) (注) 素材とした本判決の判決文から読み取ることができる理由付記の一部を筆者が加工している。   2 本件理由付記から読み取ることができる関係図   3 本判決の判断 本裁決は、大要次のとおり、信憑性のある資料を摘示して、計上漏れとなっていた各棚卸資産の品名、数量及び製造原価を具体的に明示しているため、理由付記に不備はないと判断した。 (1) 求められる理由付記の程度 (2) 理由付記の十分性   4 検討 (1) 求められる理由付記の程度 本件更正処分は、X社が平成20年12月期の確定申告書に添付している「棚卸資産の内訳書」と、X社から提出のあった「平成20年12月末在庫一覧表」を照合した結果、期末商品棚卸高に計上漏れがあるとして行うものであるから、X社の帳簿書類の記載自体を否認して更正する場合に該当する。 したがって、理由付記の程度としては、 ことになる(最高裁昭和60年4月23日第三小法廷判決・民集39巻3号850頁等参照)。 なお、法人税法上、売上原価の計算を次のとおり行うことについては、本連載【第7回】を参照されたい。 (2) 理由付記の十分性 次のとおり、本件理由付記は、法の求める理由付記として十分なものであると考える。 本件理由付記は、「期末商品棚卸高計上漏れ」として〇〇〇円を当事業年度の所得金額に加算する処分を行うに当たり、X社の平成20年12月期法人税確定申告書に添付されている「棚卸資産の内訳書」と、X社から提出された資料である「平成20年12月末在庫一覧表」(棚卸資産の品名、数量及び製造原価が記載されたもの)を基礎とした旨記載し、さらに、この「平成20年12月末在庫一覧表」の写しを別紙として更正通知書に添付している。 そうすると、本件理由付記は、法令上の根拠を明らかにし、かつ、法令上の要件に対応する具体的な事実を帳簿書類の記載以上に信憑力のある資料を摘示して具体的に明示するものであり、これによって課税庁の判断過程が明らかとなるものであるといえる。したがって、本件理由附記は、上記(1)①ないし③を満たし、法の求める理由付記として十分なものであると考える。 *  *  * 次回は、「架空の宅地造成費用の否認」に係る法人税更正処分の理由付記の事例を取り上げる。 (了)

#No. 229(掲載号)
#泉 絢也
2017/08/03

〔判決からみた〕会計不正事件における当事者の損害賠償責任 【第4回】「「会計監査人」の損害賠償責任」

〔判決からみた〕 会計不正事件における当事者の損害賠償責任 【第4回】 「「会計監査人」の損害賠償責任」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   ニイウスコー損害賠償請求事件 (東京地方裁判所平成26年12月25日判決) 1 訴訟当事者【再掲】 2 事案の要旨【再掲】 原告は、東京証券取引所に上場していたニイウスコー株式会社(以下「ニイウスコー」という)の有価証券報告書等に虚偽の記載があったにもかかわらず、そのことを知らずにニイウスコー株式の取引をしたため損害を被ったと主張して、同社の取締役、監査役又は会計監査人であった被告ら各自に対し、主位的に金融商品取引法24条の4及び24条の5第5項において準用する同法22条に基づき、予備的に民法709条又は旧商法266条の3第1項、2項、旧商法特例法10条、18条の4第2項、21条の22第1項、会社法429条1項、2項に基づき、損害賠償として、合計2,604万8,983円及び遅延損害金の支払を求めた。 3 訴訟の争点【再掲】 本事件の争点は、以下のとおりであるが、本連載では、主に、争点②及び争点③について、裁判所の判断を検討することとしたい。 4 無限定適正意見を出した監査法人について故意又は過失がなかったかについて 本稿では、裁判所が、どのような事実認定を行い、会計監査人であった有限責任監査法人トーマツ(被告Y8法人)が、「監査基準に適合した監査を行った上、無限定適正意見及び有用意見を表明したということができるから、本件有価証券報告書等の記載が虚偽でないと説明したことについて、故意又は過失がなく、金融商品取引法24条の4、24条の5第5項、22条の責任を負わない」と判断したのかを中心に見ていきたい。 (1) 原告が主張する不正の兆候 原告は、不正の徴候として、以下の事情があったから、被告Y8法人は高度の注意義務を尽くすべきであったと主張した。 (2) 被告Y8法人による監査 裁判所は、原告の主張する「不正の兆候」について、いずれも「そのような事情だけで不正取引を行う可能性が高い」とはいえないとして、原告の主張を退けた。判示の中で、「セールス・アンド・リースバック取引」と「滞留在庫」に関する被告Y8法人の監査に関する判断は次のとおりであった。 ① セール・アンド・リースバック取引 被告Y8法人は、セール・アンド・リースバック取引について、売却時に売却益を一括計上する簡易な会計処理を容認していたものであるが、これは、利益に対する金額的影響を考慮して、計画上の重要性の判断基準額を設定したものであり、平成16年6月期におけるセール・アンド・リースバック取引がニイウスコー社の利益に与える影響は、税引前純利益及び税引後純利益のいずれについての計画上の重要性の判断基準額をも下回るものであったから、簡易な会計処理を許容したとしても、監査基準に反するものではないことから、セール・アンド・リースバック取引について、被告Y8法人は、故意又は過失がなかったと認められる。 ② 滞留在庫 被告Y8法人は、滞留在庫について、聴取りなどにより、販売可能性を確認した上で、評価減の必要性の有無を判断し、また、滞留在庫が増加してきた平成16年6月期には、評価減ルールの制定を求め、その内容の合理性を確認するなどした上、平成18年6月期には、実地検査を行っていたこと、不適切取引による架空在庫が存在することが露呈しないようにするための対策をニイウスコー社の従業員が行っていたことから、被告Y8法人は、滞留在庫について十分な監査を行っており、架空在庫を発見できなかったとしても、やむを得ないことであったというべきであるから、被告Y8法人には故意又は過失がなかったと認められる。   アイ・エックス・アイ損害賠償請求事件 (大阪地方裁判所平成24年3月23日判決) 1 訴訟当事者 2 事案の要旨 本件は、架空循環取引による架空の売上や仕掛品を財務諸表に計上していた再生債務者株式会社アイ・エックス・アイ(以下「再生会社」という)の管財人である原告が、再生会社の監査人であった被告において、架空循環取引を発見するために必要な監査手続を実施することなく漫然と監査を行い、再生会社の平成17年3月期決算、平成17年9月中間期決算及び平成18年3月期決算につき無限定適正(有用)意見を表明したことが、監査契約上の善管注意義務違反に当たるなどと主張して、被告に対し、債務不履行又は不法行為に基づき、被ったと主張する損害25億979万100円のうち、(1)1億2,723万7,000円(監査報酬相当額2,723万7,000円及び無形損害1億円)及び(2)7,276万3,000円(利益処分相当額及び法人税等納付額の各一部の合計)並びに(1)及び(2)に対する各請求の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 3 訴訟の争点 本事件の争点は以下のとおりであるが、本稿では、争点(1)②に掲げる、監査法人の善管注意義務を中心に、裁判所の判断を検討することとしたい。 4 有価証券報告書の財務諸表に重要な虚偽の記載があったかどうか(争点(1)①) 争点(1)①について、被告は、原告が行った架空循環取引についての検証は、その基となった資料が架空循環取引を立証し得ない不十分・不正確なものである上、検証過程に問題があるため、その結果は信用性に欠けるものであり、原告が重要な虚偽記載を立証できていないのは明らかであると主張した。 この主張に対し、裁判所は、原告による検証結果、再生会社元従業員らの証言によれば、再生会社が計上した第17期及び第18期における売上の大部分(少なくとも9割程度)及びこれに対応する仕掛品が、財務諸表への記載が許されない架空循環取引によるものであって、当該虚偽記載によって投資者等の意思決定が左右されるのは自明のことであるから、これらは重要な虚偽の記載に当たるといえると判断して、被告の主張を退けた。 5 監査法人による監査は監査契約上の善管注意義務に違反するかどうか(争点(1)②) (1) 原告の主張 原告の主張の骨子は、以下のとおりである。 そして、再生会社には次のように不正の兆候があったとし、こうした不正の兆候にもかかわらず、被告は、経営者が悪意で売上や資産を仮装した会社の監査を行うに当たり、監査をしているかの如く仮装したものといえるから、被告には、本件監査契約上の善管注意義務違反が認められると主張した。 (2) 裁判所の判断 こうした原告の主張に対し、裁判所は、監査人の善管注意義務について、次のように説示した。 そのうえで、裁判所は、再生会社について、「架空循環取引等の不正行為の存在を具体的に窺わせる事情とはいえない原告主張の諸点を総合的に勘案したとしても、再生会社による不正の可能性はないか、あるいは極めて低いとの判断を前提に、再生会社が健全に成長していると見ることが許容される状況」であったとして、被告は、「監査時において、架空循環取引等の不正行為発見のための監査手続を実施する義務を負っていたということはできず、被告が架空循環取引の存在を前提とすることなく行った本件監査は、リスク・アプローチ等当時の監査の基準に従った適正な監査と評価することができ、本件監査契約上の善管注意義務に違反するものとはいえない」と判断した。 そして、被告が適正な監査を行ったにもかかわらず、重要な虚偽の記載を看破することができなかった理由として、 などを挙げた。   判決の検討 1 難しい「原告による『善管注意義務違反』の立証」 いわゆる大手監査法人が被告となった2つの事件の判決を読むと、無限定適正意見を表明した監査法人の故意又は過失を立証することの困難さを感じざるを得ない。 これには、(1)情報の非対称性、(2)充実した監査ツール・監査マニュアル、(3)原告代理人である弁護士が必ずしも監査の専門家ではないことなどの影響が考えられる。 情報の非対称性については、被告の故意又は過失を立証しようとする原告側には、被告である監査法人が作成した監査調書や監査担当者の残した記録、PCデータが自由に閲覧できるわけではないことが挙げられる。 また、大手監査法人であれば、ソフトウエアを活用した各種監査ツールを使用した監査を行っていると同時に、監査マニュアルに則った監査業務を遂行することで品質を一定以上に保つよう業務内容が統一されており、そうしたマニュアル等を逸脱していれば故意又は過失の立証が可能である場合もあるかもしれないが、通常、その手の逸脱や手抜きは考えられない。そうすると、原告は監査手法そのものの適法性を争うことはまずできないことから、こちらの点でも立証は困難とならざるを得ない。 そして、最後に、原告の代理人たる弁護士が必ずしも監査業務に精通しているわけではなく、たとえ監査に関する知識を有していたとしても、現役の公認会計士に及ばないことは想像に難くない。 こうした点から、会計監査人の故意又は過失を立証するのは容易ではないと言えよう。 2 和解金の支払い合意 アイ・エックス・アイ事件において、再生会社管財人との訴訟では勝訴判決を得た新日本監査法人であるが、大株主から訴えられた損害賠償請求訴訟では、以下のようなリリースを出している。 株式会社インターネット総合研究所は、平成17年8月、アイ・エックス・アイ社の株式35,254株を約116億円で、当時のアイ・エックス・アイ社の親会社である株式会社シーエーシー及びアイ・エックス・アイ社代表取締役から譲り受け、さらに、第三者割当増資により約27億円の払い込みを行っていたところ、アイ・エックス・アイ社が、平成19年1月に民事再生手続き開始決定を受けたことから、損害賠償請求訴訟を提起していたものであった。 その後、株式会社インターネット総合研究所は、株式会社シーエーシーとは和解金30億円の支払いで、新日本監査法人とは、上述のように和解金1億5,000万円の支払いで、それぞれ和解の合意に達したとしている。 新日本監査法人が和解に応じた理由は、両者のリリースを読み比べても判然としないが、今回取り上げた判決文にはこの和解についての記述がなく、和解が大阪地方裁判所の判決に影響しなかったのは確かなようである。それにしても、本判決の「事案の概要」にあるとおり、新日本監査法人が受け取った監査報酬相当額は2,723万7,000円であるのに対して、和解金はその5倍を超える金額となっていることは注目される。 なお、本連載【第1回】で取り上げたエフオーアイ事件においても、会計監査人は和解に応じているようであり、会計監査人が被告となった訴訟において、判決によらずに、和解しているケースはかなり存在することも予想される。 *   *  * 連載5回目となる次回の論考では、幹事証券会社の損害賠償責任について、裁判所の判断を検討したい。 (了)

#No. 229(掲載号)
#米澤 勝
2017/08/03

法務・会計・税務からみた循環取引と実務対応 【第3回】「会計からみた循環取引」

法務・会計・税務からみた循環取引と実務対応 【第3回】 「会計からみた循環取引」   弁護士・公認不正検査士 下尾 裕   1 会計からみた循環取引の問題点 企業会計(財務会計)は、経営者・株主・債権者等に対し財務会計の利益計算を報告することで、これら関係者の利害調整機能を果たすとともに、特に上場企業又は有価証券報告書提出会社(上場企業等)においては、投資家に対する情報提供機能を果たしている。 よって、企業は、財務諸表ないし決算書の作成に際しては、当該企業の経済活動実態を正確に反映する必要があり、仮に財務諸表等に記載された企業の財務状態とその実態に大きな齟齬があれば、借入に際し自社の財務諸表又は決算書を提出しているであろう金融機関等の債権者、さらに、特に上場企業等については株主・投資家との関係で、それぞれ大きな問題が生じることになる。 この点、例えば、企業が物品の売買により循環取引を行っている場合、当該企業は、自らの直前の売主との売買契約に基づき「資産」としての棚卸資産(商品・製品等)を取得し、その後、当該棚卸資産の買主との売買契約に基づき売上を認識するという会計の流れを繰り返すことになるが、上記で述べた企業会計の機能に鑑みれば、このような会計処理を通じて計上された収益(さらにはその前提となる棚卸資産の取得等)は、前提となる取引に経済合理性がない限り、原則として、収益等として取り扱われるべきではないという結論になろう。 そこで、本稿においては、循環取引において主に問題となる収益の認識(計上)について理論的な整理を行った上で、実際に循環取引が発覚した場合に、実務上しばしば問題となる過年度決算修正(循環取引が複数事業年度にわたり継続された場合における会計処理の修正方法)等について解説を行う。   2 循環取引に基づく収益の認識に関する理論的整理 (1) 企業会計における収益認識の考え方 企業がいつの時点で収益を認識すべきかという問題については、現行の企業会計原則においては、実現主義、すなわち、以下の2点が充足された時点で収益を認識すべきものと考えられている(企業会計原則「第二 損益計算書原則」「三」「B」本文)。 また、国際財務報告基準(IFRS)のコンバージェンスとの関係では、国際会計基準審議会(IASB)からは、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」が公表されており、さらに平成29年7月20日にはこれを踏まえた「収益認識に関する会計基準(案)」等が企業会計基準委員会(ASBJ)から公表されている。上記IFRS第15号によれば、①契約の認識、②履行義務の識別、③取引価格の算定、④履行義務への取引価格の配分及び⑤履行義務の充足という5つのステップを踏まえ、⑤履行義務の充足、言い換えれば、顧客が資産に対する支配を獲得した段階で収益を認識するという枠組みが採用されている。 (2) 循環取引における収益認識 循環取引に係る収益認識に関しては、あくまで当該循環取引の実態に応じた個別判断となるものの、少なくとも経済合理性のない円環を構成している場合については、各当事者が移転する財貨又は提供する役務は円環を通して自己に戻ってくることから、現行の企業会計原則で言うところの「財貨の移転又は役務の提供」がない、又は、上記IFRS第15号で言うところの「重要なリスク及び経済的価値の移転」がないと判断されることにより、多くの場合、収益認識が否定されることになると考えられる。   3 会計上の過年度決算修正の是非等 循環取引は、多くの場合、複数の事業年度に跨って取引が継続されることから、不適切な会計処理についても進行年度のみならず、過年度(過去の事業年度)にわたることになる。このような場合、企業においては、不適切な会計処理を前提に過年度の財務諸表等が既に作成されていることから、これらをどのような形で修正するのかという問題が生じる。 また、企業においては、単に財務諸表等を作成するのみならず、当該財務諸表等を前提に会社法上の決算承認又は報告(決算承認等)、さらに上場企業等においては有価証券報告書等の提出が行われているため、これらをどのようにして訂正するかという点が問題となる。 (1) 企業会計における過年度決算修正の考え方 循環取引に係る従前の会計処理が不適切と判断される場合には、企業会計上、当該会計処理は過去の「誤謬」と評価されることになる。 過年度に跨って誤謬が存在する場合の会計処理について、企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(過年度遡及会計基準)の適用開始(平成23年4月1日以降開始する事業年度)以降は、以下の取扱いになっている。 よって、循環取引に基づく会計処理についての過去の誤謬は、企業会計上、原則として、遡及修正方式により修正再表示を行うことになり、実務上は、会社法上の株主・債権者による計算書類等の閲覧期間が5年であることを踏まえ、5年間に限定して遡及修正する方法を採用する場合が多いのではないかと思われる。 (2) 会社法に基づく決算承認等との関係 会社法は、株式会社について、毎事業年度の計算書類等の作成及び株主総会における決算承認等を要求しているところ(会社法第435条・同法第438条第2項・同法第439条)、上記のとおり、循環取引を原因として、企業会計上、遡及修正方式による修正再表示が要求される場合につき、会社法上どのような手続が必要かについては概ね以下の整理となる。 なお、過年度に係る決算承認等の要否については、過年度遡及会計基準が会社法第431条の「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」に該当するであろうことを踏まえ、会社法の観点から、過去の誤謬が決算確定を妨げるほどの重要性を有するのかの観点から判断されるとの考え方も有力であり、例えば株式会社東芝といった最近の大規模会計不正事案では、遡及修正を行った過年度決算につき、改めて株主総会における承認等を取得している例も存在する。 よって、循環取引において過年度修正を行った場合における会社法上の決算承認等についても、当該誤謬が株主等に与える影響等を踏まえた判断が求められよう。 (3) 提出済の有価証券報告書等の処理 有価証券報告書等提出会社において循環取引に基づく過年度の誤謬が存在する場合については、既に当該誤謬を前提に有価証券報告書等を提出している以上、単に修正した財務諸表を再表示するだけでは足らず、これらの内容を反映した訂正報告書の提出が必要になるケースが大半であることから、注意が必要である。 *  *  * 次回は税務からみた循環取引の解説を行う。 (了)

#No. 229(掲載号)
#下尾 裕
2017/08/03

経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第135回】引当金の会計処理⑧「リストラクチャリングに関連する引当金」 ―リストラクチャリングに伴う割増退職金等―

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第135回】 引当金の会計処理⑧ 「リストラクチャリングに関連する引当金」 ―リストラクチャリングに伴う割増退職金等―   仰星監査法人 公認会計士 渡邉 徹     〈事例による解説〉   〈会計処理〉(単位:百万円) (X1年3月決算時) ① 早期退職者に対する割増退職金の合理的な見積額 ② 従業員の配置転換に伴う費用の合理的な見積額 〈会計処理の解説〉 我が国では、引当金について、企業会計原則注解18(以下「注解18」という)にその計上基準が示されています。企業会計基準委員会及び日本公認会計士協会から、個別の会計事象等について、会計基準や監査上の取扱い等が公表されていますが、引当金に関する包括的な会計基準は設定されていません。 そのため、会計事象について「注解18」に示されている引当金の計上基準を満たす場合には、引当金を計上する必要があると考えられます。 「注解18」に示されている引当金の計上基準 ただし、他の会計基準に直接規定されている費用又は損失については、そちらの会計基準の規定が適用されます。 ① 早期退職者に対する割増退職金の合理的な見積額 事業又は子会社等の整理に伴い従業員の早期退職の募集が行われる場合には、退職給付会計において、割増退職金の費用処理は、従業員が早期退職制度に応募し、当該金額が合理的に見積もられる時点で行われるとされています(退職給付に関する会計基準の適用指針 10項)。 今回の事例は、リストラクチャリングに伴う人員整理の一環として、早期退職者の募集に伴う割増退職金の支給であり、期末日時点で金額の合理的な見積りが可能になっています。 よって、期末日時点で「退職給付引当金」等の勘定科目で引当金を計上することが求められます。なお、勘定科目は「早期退職費用引当金」等の科目で「退職給付引当金」とは別の勘定科目で計上することも考えられます。 〈イメージ図〉早期退職者に対する割増退職金の金額の見積りの確度 なお、リストラクチャリング計画を経営者が決定したのみの段階では、従業員にも知らされていないことから、リストラクチャリングの実行可能性が不透明な場合や合理的な見積りが困難な場合が多く、一般的には、引当金の認識要件は満たさないと考えられます。 人員整理の規模・金額の概要を含むリストラクチャリング計画が従業員に周知された段階では、リストラクチャリングの実行可能性が高まり、金額の合理的な見積りも可能となるケースもあると想定されるため、引当金の認識要件を充たすことがあると考えられますが、労使関係等の状況によっては慎重な判断が必要となります。 早期退職の募集が開始された場合には、募集期間が終了していない段階であっても、リストラクチャリング計画が従業員に周知された段階と同様に、募集人員の金額の合理的な見積りが可能となるときもあると想定されるため、引当金の認識要件を満たすことがあると考えられます。 また、早期退職の募集期間が終了し、早期退職者が確定した段階では、割増退職金は債務として確定していることから、未払退職金等として計上されることになります。 ② 従業員の配置転換に伴う費用の合理的な見積額 従業員の配置転換に係る費用は、会計基準等に直接会計処理方法が規定されていませんが、上述した「注解18」に示されている引当金の計上基準を満たす場合には、引当金を計上する必要があります。 当該費用については、支払いがX2年3期に見込まれているので、将来の特定の費用であると考えられます。また、「リストラクチャリングに伴う人員整理計画を決定した」という当期以前の事象に起因していると考えられます。また、事例の前提条件より、発生可能性も高く、金額を合理的に見積もることができます。 よって、当該費用については、引当金の計上要件を満たすため、「事業構造改善引当金」等の勘定科目名称で引当金を計上することが求められると考えられます。 (了)

#No. 229(掲載号)
#渡邉 徹
2017/08/03

外国人労働者に関する労務管理の疑問点 【第5回】「外国人留学生(専門学校生)を社員として雇うとき(「留学」から「技術・人文知識・国際業務」の在留資格への変更)」~「専門士」の社員採用について、大学生との違いは~

外国人労働者に関する 労務管理の疑問点 【第5回】 「外国人留学生(専門学校生)を社員として雇うとき (「留学」から「技術・人文知識・国際業務」の在留資格への変更)」 ~「専門士」の社員採用について、大学生との違いは~   社会保険労務士・行政書士 永井 弘行     1 留学生の採用について、大学生と専門学校生の違いは 「留学」の在留資格から「技術・人文知識・国際業務」の在留資格へ変更する手続きは、大学生と同じです。留学生本人と会社がそれぞれ申請書類を準備して、入国管理局に申請します。 「技術・人文知識・国際業務」許可の基準については、繰り返しになりますが下図のとおりです。 〈入管法第7条第1項第2号(入国審査官の審査)の基準を定める省令(基準省令)の要旨〉 (注) それぞれの職種は、あくまでも例示です。会社で従事する業務内容と、大学・専修学校等で履修した科目等の専門的知識、技術との関連性があること、入管法の定める基準を満たすことが必要です。  入国管理局の審査は、個別の内容により判断されます。詳細は申請先の入国管理局に確認することが重要です。 大学生に比べて、専門学校の卒業生(「専門士」の資格を持つ外国人)は、専門学校で学んだ内容と、会社で従事する業務の関連性が、より厳密に審査されます。 例えば、経理専門学校の留学生なら、会社での従事業務は、経理業務・事務業務に従事することが前提です。また、留学生が大学生の場合は学部・学科を問わずに「翻訳・通訳」業務の申請が可能ですが、専門学校の留学生の場合は、学校で翻訳・通訳に関することを学んでいなければ、「翻訳・通訳」業務の申請ができません。 こうした点が、大学生に比べて大きく異なりますので、注意が必要です。 さらに次に説明するように、現在の法令では就労可能な在留資格がないケースにも注意しなければなりません。   2 専門学校の学科・専攻内容により「就労可能な在留資格がない」ケースも 現在の法令では、専門学校の留学生が日本で就職するためには、会社での従事業務が、「技術・人文知識・国際業務」、「医療」、「介護」(後述)の在留資格に当てはまることが必要です。これらに該当しない業務に従事することを希望しても、就労の在留資格は許可されません。 例えば、ヘアメイクとして美容店での就職が決まっていても、就労の在留資格は許可されません。入国管理局に相談すると、次のように回答されるでしょう。 つまり、現在の入管法で定められた在留資格には、ヘアメイク、美容師の業務に該当するものがないので、就労の在留資格を出すことができない、ということです。 〈現行の法令では、美容師・ヘアメイクに該当する就労の在留資格はない〉 ヘアメイク、美容師の他にも、保育士、救急救命士、調理師、パティシエなどの業務は、「該当する在留資格なし」という理由で、就労の在留資格が許可されません。 なお、後述しますが、入管法改正により、今年9月から「介護」の在留資格が新設されます。これにより社会福祉分野の専門学校を卒業し「介護福祉士」の資格を持つ外国人は、「介護」の在留資格を得て日本で働くことが可能になります。 専門学校の分野・学科と就労可能な在留資格の関係をまとめると下図のとおりです。 〈外国人留学生 :「専門士」の就職と在留資格〉 (注) 入管法改正により、「介護」の在留資格が平成29年(2017年)9月1日から新設されます。   3 多くの場合、「技術・人文知識・国際業務」の業務に従事することが前提です 現在の入国管理局の許可基準は、専門学校の専攻内容と就職先の従事業務に関連性があり、業務内容が「技術・人文知識・国際業務」、「医療」、「介護」(本年9月~)に該当する場合に限って在留資格を許可する、というものです。 例えば、次のような場合は「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を検討します。 つまり、「専門士」の称号を得ている人が「技術・人文知識・国際業務」の業務に従事することが前提になります。 なお、「医療」の在留資格のケースは、条件を満たしていれば許可されますが、未だ事例は少ないようです。   4 通訳・翻訳業務の申請ができないケースが大半です 前回、留学生が大学生の場合は、学部学科を問わずに「翻訳・通訳、語学の指導」に従事する申請が可能であることを説明しました。3年以上の実務経験がなくても「学士」の学位を得た外国人なら、「翻訳・通訳または語学の指導」に従事する社員として「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の申請が可能です。 しかし、専門学校の留学生(専門士)には、この取扱いがありません。 例えば、中国出身の経理専門学校の留学生(専門士)が、中国語と日本語の翻訳・通訳担当者として勤務する予定で「技術・人文知識・国際業務」への変更を申請しても、3年以上の実務経験がなければ、許可されません。この点も、大学生と大きく異なりますので注意が必要です。 なお、留学生が専門学校で翻訳・通訳に関する分野を学んでいる場合に限り、専門学校で学んだ内容と、会社で従事する業務の関連性があると判断され、翻訳・通訳担当者としての業務が許可されることがあります。   5 「介護」の在留資格新設により、介護福祉士としての就労が可能に 入管法改正により、今年9月から「介護」の在留資格が新設されます。 今後は、社会福祉分野の専門学校を卒業し「介護福祉士」の資格を持つ外国人は、「介護」の在留資格を得て日本で働くことが可能になります。 入国管理局のホームページの「平成28年入管法改正について」の中で、概要が紹介されています。 なお、すでに「介護福祉士」の国家資格を得ている外国人は、今年9月を待たずに「特定活動」の在留資格で介護の業務に従事することが可能です。 法務省のホームページ「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律による在留資格「介護」の新設に係る特例措置の実施について」というサイトを参照ください。   6 専門士の留学生雇用の事例紹介 専門学校の留学生(専門士)が「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を得て、会社で勤務するケースについて、具体的な事例を紹介します。   7 日本語学校の卒業生を採用できるか 留学生が日本語学校を卒業した時点で、社員としての就職を希望してきた場合はどうでしょうか。 留学生が、すでに本国などで大学を卒業し「学士」の学位を得ている場合は、その大学の卒業証明書を用いて、「留学」から「技術・人文知識・国際業務」の在留資格への変更申請が可能です。日本の大学を卒業した留学生と同じ基準で審査され、条件を満たしていれば許可されます。 一方、留学生が本国では高校卒業の学歴で、「学士」の学位を得ていない場合は、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は許可されません。日本語学校で学んだ後に、大学または専門学校を卒業して、初めて「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を得ることが可能になります。 つまり、日本語学校を卒業しているだけでは不十分で、大学や専門学校を卒業し、学士、短期大学士、専門士のいずれかを得ていなければ、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は許可されません。 *  *  * 専門学校の団体が、留学生について紹介しているホームページです。留学生の就職事例の紹介などがあり、参考になります。 【参考】 ▷一般社団法人 大阪府専修学校各種学校連合会 大専各留学生支援サイト ▷公益社団法人東京都専修学校各種学校協会 (了)

#No. 229(掲載号)
#永井 弘行
2017/08/03

これからの会社に必要な『登記管理』の基礎実務 【第6回】「役員の任期到来の時期の特定」-実践編-

これからの会社に必要な 『登記管理』の基礎実務 【第6回】 「役員の任期到来の時期の特定」 -実践編-   司法書士法人F&Partners 司法書士 本橋 寛樹   はじめに 本稿では、任期管理とその役員変更の登記手続に携わる実務担当者が、本連載【第2回】で紹介した「会社主導で中長期的に管理し続けられる体制づくり」を実現するための実際の手順を解説する。 まず、役員の任期到来の時期を特定し、役員変更の登記手続をするための前段階として、自社について役員の任期管理の状態を認識しよう。 【〈パターン別〉役員の任期管理の状態】 役員の任期管理の状態として次の①~③のうち、自社はどれにあてはまるだろうか。 上記①~③について、それぞれの任期管理の状態と今後の検討事項をまとめると次の表のとおりとなる。 上記①~③の今後の検討事項をふまえると、役員の任期到来の時期を特定するルールの確立が重要であるといえる。 【ルール確立のメリット】 ルールが確立されていれば、上記①②の場合、実務担当者が交代する場合であっても、引継ぎが容易となる。 また、上記①②で仮に引継ぎがうまくなされない場合や、上記③の場合、ルールに沿ってすぐに任期を特定する作業に取りかかることができる。 それでは、確立されたルール(例)を用いて、実際に取締役の任期到来の時期を特定する作業に取り組もう。   任期到来の時期を特定する作業の実践 【活用資料の準備】 まず、任期特定に活用する資料をそろえる。資料で参照する項目は以下のとおりである。 (※) ①の役員の就任年月日と一致していることが多い。 【活用資料の見方】 ① 登記記録、② 取締役の選任に関する株主総会議事録 登記記録は「就任年月日」、取締役の選任に関する株主総会議事録は「選任年月日」を確認する資料となる。選任年月日と就任年月日は同一日であることが多いことから、登記記録上の「就任年月日」を参照し、直近の取締役の選任時期を確認することになる。 【登記記録例】 取締役Aは、平成26年6月30日に就任し、平成28年6月28日に重任(就任)している。登記記録だけ参照すると、取締役Aの任期は一見2年にみえる。 ただし、この段階で取締役Aの任期が2年と判断してはいけない。 取締役の任期は定款に規定されているため、登記記録や株主総会議事録の内容だけでは取締役の任期を判断しきれないからである。 そこで次に、最新の定款の各規定を参照する。 ③ 最新の定款 本連載【第4回】では最新の定款、【第5回】では取締役の任期の年数や事業年度といった、役員の任期到来の時期を特定するために必要な定款の各規定について解説している。 「取締役の規定」は以下のように規定されることが多いが、年数の箇所については、会社の実情によって異なる。 ここで、“選任後2年”という年数の箇所で読み終わっていないだろうか。 厳密には、選任後2年「以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会」であり、そこまで読みきってはじめて役員の任期到来の時期を正確に特定することができる。 「以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会」については、取締役の任期規定だけでは十分ではないため、「事業年度」と「招集」に関する規定もあわせて参照する必要がある。 「事業年度」と「招集」に関する規定は、定款で以下のように規定されることが多い。 【任期規定の算定式】 ここで、「取締役の任期」「事業年度」「招集」の各規定を参照することにより、「取締役の任期」を判断できる情報がそろった。 それでは、本連載【第5回】で解説した任期規定の方程式に本事例を当てはめて、取締役Aの任期到来の時期を特定してみよう。 【事例の当てはめ】 図に表すと、次のとおりとなる。 したがって、仮に平成30年6月25日に定時株主総会が開かれ、当日中に終結する場合、取締役Aの任期は、平成30年6月25日の定時株主総会の終結時に到来することになる。 *  *  * 以上をふまえて、自社について取締役の任期到来の時期を、ルールに当てはめて特定してみよう。 手順に沿って取締役の任期到来の時期を特定できるようになれば、会社主導で中長期的に管理し続けられる体制づくりに向けた大きな一歩を踏み出すことになる。 (了)

#No. 229(掲載号)
#本橋 寛樹
2017/08/03

家族信託による新しい相続・資産承継対策 【第18回】「信託契約作成上の留意点⑤」-受託者の地位-

家族信託による 新しい相続・資産承継対策 【第18回】 「信託契約作成上の留意点⑤」 -受託者の地位-   弁護士 荒木 俊和   前回は信託契約作成上の留意点として、信託契約における委託者の地位について述べたが、今回は受託者の地位について解説する。   1 受託者の信託契約における位置付け 受託者は、信託契約上の当事者となり、委託者から信託財産を受託し、信託財産の管理又は処分及びその他の信託の目的の達成のために必要な行為をすべき義務を負う(信託法第2条第5項)。 すなわち、家族信託においては、受託者は家族信託の対象となる財産を高齢者である委託者から信託され、委託者に代わって管理を行い、必要に応じて売却するような立場となる。 家族信託の目的にもよるが、受託者は、委託者兼受益者の生活の維持等を目的とする場合には信託開始から委託者兼受益者の死亡時までの信託財産の管理を行うとともに、委託者兼受益者が死亡した場合には信託の清算を行い、帰属権利者に対して残余財産を引き渡す役割を担う。   2 受託者になる資格 受託者になるためには、一般的に法律行為ができることが必要であり、権利義務の主体となる権利能力、法律行為を行う行為能力が必要であるとされるため、未成年者又は成年被後見人若しくは被保佐人は、受託者となることができない(信託法第7条)。 また、「家族信託」という名称から、「家族しか受託者になれないのではないか?」という質問を受けることもあるが、個人の財産管理等を目的とする「家族信託」といわれるものであっても、家族以外を受託者とすることを妨げるものではない。 さらに、個人(自然人)でなくとも受託者になることができ、株式会社や一般社団法人等を受託者とすることもできる。 以上の他、受託者となるべき法律上の要件ではないが、委託者と受託者との信頼関係が非常に重視される家族信託の性質上、受託者は財産管理に関して十分な信頼のおける人物を選ぶ必要があろう。   3 受託者の権限 信託法第26条では、受託者の権限の範囲に関し と定められており、特に信託契約上の制約を設けなければ、受託者は、信託の目的達成の範囲において、信託財産の処分を含むあらゆる行為を行うことができることとなる。 一方で、受託者にあらゆる権限を認めることが不安であるという場合には、重大な行為に関しては信託監督人の同意を要することとする等、信託契約において制限を加えることを検討すべきであろう。 また、実務上、不動産を信託財産とする場合には、登記の関係により、信託目録において受託者の権限として処分ができることを明示する必要があるとの見解があるため、信託契約の文言上も、受託者が処分できることを明示的に記載しておくことが望ましいものと思われる。 なお、受託者が権限の範囲外の行為を行った場合、受益者は、①行為の相手方が信託財産のためになされたことを知っており、かつ、②行為の相手方が受託者の権限の範囲外であることを知っていた又は知らないことに重過失があった場合に限って、当該行為を取り消すことができる(信託法第27条第1項)。   4 受託者の義務 受託者は信託事務を行うにあたって、主要な部分では以下のような義務を負う。 以上のような義務を負うことから、受託者としては、「まずは受益者の利益を最優先する」という意識を持つべきであり、そのことについては信託契約上も明示的に記載すべきである。 なお、上記⑤の分別管理義務との関係では、金銭に関する信託口口座の開設と上場株式に関する信託口口座の開設が問題になりやすい。ただしこの点については、金融機関や証券会社においても徐々に整備が進みつつあり、信託財産の分別が受け入れられる機関も増加傾向にある。   5 二次受託者の必要性 受託者を個人(自然人)とする場合、受益者よりも年下であり、健康上問題のない者を選任することが多いと思われるが、それでも不慮の事故等により信託事務が継続できなくなるリスクを考慮しておく必要がある。 このように、当初受託者が信託事務を継続できなくなる場合に備えて、信託契約上、当初受託者を引き継いで信託事務を行う「二次受託者」を指定しておくことが有効な場合がある。 この場合、指名された二次受託者は必ずしも受託者にならなければならないわけではないが、委託者の意向を明らかにしておくという点で有効であろう。 なお、その他、受託者の死亡による問題と対応については【第6回】を参照されたい。   6 信託報酬について 信託契約においては、信託報酬を規定することができる(信託法第54条第1項)。 ただし、受託者として信託報酬を受ける場合、「業として」受託業務を行っているとみられる場合がある。 この場合、信託業法上、免許を取得しなければならないとされており(信託業法第3条)、免許を取得せずに受託業務を行っているとなると、信託業法違反として処罰の対象となる。 この点、家族信託では「業として」とはいえないとの見解もあるようであるが、「業として」に該当するかどうかは解釈に委ねられているため、家族信託の受託者は無報酬とすることが無難であろう。 また、弁護士であれば一般法律事務として信託報酬を受領し受託者となることができるとする見解もあるようであるが(弁護士法第3条第1項)、必ずしも有力な見解ではなく、業として弁護士を受託者とすることは避けるべきと考える。 (了)

#No. 229(掲載号)
#荒木 俊和
2017/08/03

〈小説〉『資産課税第三部門にて。』 【第23話】「共有物の放棄」

〈小説〉 『資産課税第三部門にて。』 【第23話】 「共有物の放棄」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   「統括官、共有物を放棄したケース・・・なんですけど。」 谷垣調査官が尋ねる。 「・・・共有物?」 田中統括官は、谷垣調査官の顔を覗く。 「例えば、兄弟で共有していた土地について、一方がその持分を放棄した場合の課税関係なのですが・・・」 谷垣調査官は、手に持っている罫紙を見ながら言う。 「谷垣君・・・君は確か法学部の出身だったよね・・・」 田中統括官は、突然、谷垣調査官の出身学部を尋ねる。 「ええ、法学部でしたが・・・大学の授業にはほとんど出席しませんでしたから・・・法学部出身といわれても・・・しかし、それが何か?」 谷垣調査官は苦笑いをする。 「いや・・・ところで、共有物の放棄は民法のどこに規定されているか・・・君は知っているかい?」 田中統括官は、立っている谷垣調査官の前に小六法をポンと置いた。 「・・・共有ですから・・・確か・・・第三章の所有権のところに・・・」 そう言いながら、谷垣調査官は小六法をめくる。 「民法255条(持分の放棄及び共有者の死亡)ですね。」 谷垣調査官は、条文を読む。 「これは『共有の弾力性』と言われるもので・・・例えば、箱の中に、2つの風船が膨らんで入っている場合、1つの風船が破裂すると、もう1つの風船が箱の中をすべて占めてしまう。これと同じように、相続財産が国庫に帰属すべき場合にも、便宜上国庫に帰属させずに、他の共有者に持分に応じて帰属させるという理屈なんだ。」 田中統括官が説明する。 「そうすると、先ほどのケースですが、事業の失敗が原因で、兄が債務超過の状態に陥り、債務の支払が不能な状態になった・・・そこで、弟は自分の土地の持分を放棄しました・・・」 谷垣調査官は、事例の話を続ける。 「・・・そして、共有していた土地の時価は1億円(取得価額は5,000万円)で、弟の持分放棄によって、弟の持分を取得した兄は、直ちにその土地を1億円で譲渡して、その金員を債務の一部に弁済した・・・この場合の兄の課税関係なのですが・・・」 谷垣調査官は、腕を組んで考え込んでいる田中統括官の顔を見る。 「・・・私は、弟は自分の持分を放棄し、兄がその持分を取得したので、相続税法9条(みなし贈与)が適用されると思うのですが、その但書きに該当し、結局、贈与税は課税されないということになる・・・」 谷垣調査官は、相続税法9条を確認する。 「・・・兄が資力を喪失して・・・扶養義務者である弟が土地の持分放棄をし、債務の弁済に充てれば、贈与税は課せられないということか・・・」 田中統括官が確認する。 「ええ、それは分かるのですが・・・問題は、その兄が弟の放棄によって取得した土地を譲渡した場合、譲渡所得はいくらになるかということなんです・・・」 谷垣調査官が言葉を続ける。 「私は、兄が弟の放棄によって取得した土地については、所得税法60条(贈与等により取得した資産の取得費等)1項は適用できないと思うのです。すなわち、同条には『贈与』となっていますから、『みなし贈与』は含まれない。そうすると、その放棄によって取得した土地の取得価額は、時価と考えるのが妥当ではないでしょうか。その根拠は、所得税法施行令126条1項5号です。もっとも、これは、減価償却資産についての規定ですが・・・」 そう言って、谷垣調査官は該当条文を見せる。 「そうすると、弟の放棄によって取得した土地(2分の1)については、取得価額が時価、つまり5,000万円となり、それを時価で譲渡すると、所得金額はゼロになるということか・・・」 田中統括官が腕を組んで、思案顔になる。 「取得価額については、法人税法施行令54条1項6号にも同じような規定があり、さらに、法人税基本通達7-3-16の2では、減価償却資産以外の固定資産の取得価額についても同施行令を適用すると書かれています・・・所得税法もこの法人税の通達と同様に考えたら良いと思うのですが・・・」 谷垣調査官がコメントする。 「なるほど・・・さすが・・・谷垣君は法学部出身だね。」 田中統括官は、満足そうに大きく頷いた。 (つづく)

#No. 229(掲載号)
#八ッ尾 順一
2017/08/03
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