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税理士のための〈リスクを回避する〉顧問契約・委託契約Q&A 【第7回】「事実関係の調査義務・資料収集義務に関する諸問題」

税理士のための 〈リスクを回避する〉 顧問契約・委託契約Q&A 【第7回】 「事実関係の調査義務・資料収集義務に関する諸問題」   弁護士・税理士 米倉 裕樹 弁護士・ 関西大学法科大学院教授 元氏 成保 弁護士・税理士 橋森 正樹   Q 長年の関与先である社長甲の父親(先代社長)乙が亡くなったとのことで、相続税申告の依頼を受けている。甲社長に対し、先代社長乙の銀行預金通帳を見せてほしいと言ったところ、数百万円の預金のある口座の通帳1つだけを渡され、「この他にはないと思う。」と言われた。乙は引退後、悠々自適の生活をしていたはずで、不自然だとは思ったが、関与先ということもあり、社長に対し強く言うこともしたくない。 しかし、税理士としてはやはり言うことは言わねばならないか、とも迷っている。 どのように対応すべきか。 A 依頼者が、税理士から適切な説明・指示を受けていれば適切に申告ができたにもかかわらず、これが無かったために過少申告加算税・重加算税が賦課されるということは十分にあり、このような場合、依頼者から税理士に対して損害賠償請求が行われることもあり得る。他方で、税理士から質問を受けても、要領を得ない回答をする依頼者もいるところ、このような場合、税理士はどこまで事実関係を調査・確認しなければならないのか。 本件のように税理士の調査・確認義務の範囲が問題となった過去の裁判例を紹介の上、検討を行う。 ① 京都地裁平成7年4月28日判決、大阪高裁平成8年11月29日判決 この2つは、同じ事案の第一審、第二審判決であるが、結論が異なっている。 京都地裁では「税理士の補助者が依頼者から、買替特例の適用を受けていたことを窺わせる説明を受けていた」という事実認定での判断であるが、大阪高裁では「買換特例の適用を受けていたことを窺わせるような事情が存在したとは認められず、課税庁に出向いて買換特例の適用を受けていたかどうかを確認することを必要とする状況が存在したとも認められない」という事実認定での判断であり、前提となる認定事実の差が結論の差に影響している。 両裁判例を考えると、「依頼者からの説明の中に、更なる調査の必要性を窺わせるような事情があれば、税理士としては調査すべき」ということができる。 ② 大阪高裁平成8年3月15日判決 相続財産である土地の区域区分という基本的な事情の確認・調査を怠ったという事案である。依頼者から説明が無くても、事柄から当然に確認・調査の必要性が明らかになっており、このような場合には調査すべきと判断したものである。 ③ 東京高裁平成10年11月9日判決 相続財産である土地の評価について、路線価によらない価額で申告した結果、依頼者が過少申告加算税等を課されたという事案である。 税理士自身、このような評価額で申告した場合には、税務署によって否認される可能性があると認識していた以上、たとえそれが正当な申告であると確信していたとしても、依頼者にその旨説明し、また、同評価額が適正であることを裏付ける不動産鑑定士の鑑定書を用意するように助言・指導すべきであると判断した。 ④ 東京地裁平成24年1月30日判決 相続財産申告にあたって海外資産を申告しなかったため、依頼者が過少申告加算税等を課されたという事案。 税理士が、被相続人の生前、所得税申告の際に被相続人の海外医療費に関する資料を受け取った経験があったことから、被相続人は海外資産を有する可能性が高いと認識していたという認定のもと、相続税の申告に際して海外資産が相続財産から漏れることがないように、依頼者に対して、海外資産に関する資料の提出を求めるとともに、そのような資料が手元に存在しないのであれば、海外資産の存否及びその内容を調査するよう指示すべきと判示した。 ⑤ 東京高裁平成20年2月13日判決 税理士が説明や資料提供を求めたが、依頼者の協力が得られなかったという事案である。 と判示した。 ⑥ 東京地裁平成24年10月16日判決 相続税申告後、課税庁により、被相続人の締結していた保険契約が、被相続人の意思無能力を理由に無効と判断されたという事案である。 と判示している。 上記裁判例をまとめると、税理士の確認・調査義務の内容はおよそ以下のようなものということができる。 *  *  *  * 本設問では、税理士は個人的に、先代社長の生活状況を認識しており、その認識を前提にすれば、先代社長を務め悠々自適に生活していた乙の預金が数十万円というのは明らかに不自然ということができる。したがって、税理士の個人的な認識を考慮すれば調査・確認の必要性が明らかになっているとして、乙の預金の状況について調査・確認すべき義務が生じているといえる。 そうすると、税理士としては、やはり甲に対し本当に乙の預金がないのか十分確認すべきあり、具体的には、乙の預金通帳・取引履歴、自宅内に現金がないかという点について、資料の提供・説明を求めるべきである。あるいは、乙が名義預金の形で貯蓄していることも考えられ、一般人は名義預金の遺産性についてよく知らない可能性があることも税理士であれば当然知っておくべき事柄といえることから、名義預金も相続財産となること、過少申告の場合には加算税が課されるという不利益も生じることなども説明すべきである。 もっとも、乙の預金通帳・取引履歴、自宅内の状況等については甲の協力なしには確認困難で、ほかに税理士として可能な調査方法も存在しない。したがって、税理士の働きかけやリスク説明等にもかかわらず、甲が協力しない場合にまで、税理士が調査・確認義務違反となることはないと考えられる。 もっとも、後々、甲との間で「説明を受けた・受けていない」という点で紛争となる可能性もあり得ることから、場合により、説明内容等を書面にし、甲に確認の署名・押印をもらうことも行っておくべきである。 (了)

#No. 259(掲載号)
#米倉 裕樹、元氏 成保、橋森 正樹
2018/03/08

M&Aに必要なデューデリジェンスの基本と実務-共通編- 【第1回】「デューデリジェンスの種類と必要な場面」

M&Aに必要な デューデリジェンスの基本と実務 -共通編- 【第1回】 「デューデリジェンスの種類と必要な場面」   公認会計士・公認不正検査士 松澤 公貴   (次回)→   デューデリジェンスとは、M&A(企業買収・売却)や企業再生などの取引実行前に、対象会社や対象事業(以下、「対象会社等」)に対して実施する調査の総称である。一昔前は、買収監査や、Due(当然の、正当な)とDiligence(勤勉、精励、努力)を組み合わせた言葉などと説明されていたが、現在ではその必要もなく、デューデリジェンスという用語は一般化している。 特に、近年経営者の説明責任は非常に重要であり、企業買収や組織再編、経営統合などの取引合理性を、株主や金融機関を含む利害関係者に説明するためには、適切なデューデリジェンスが必要不可欠である。デューデリジェンスは、通常、基本合意契約(LOI)が締結された後で、かつ、最終条件交渉に移る前のタイミングで実施される(下図、Step5)。 デューデリジェンスは、調査の視点などにより、ビジネスデューデリジェンス、財務・税務デューデリジェンス、法務デューデリジェンス、人事デューデリジェンス、ITデューデリジェンス、環境デューデリジェンスなどの種類があり、多くは下記の目的で実施される。 ここではデューデリジェンスのなかでも代表的な下記の3つを説明する。 次のEYトランザクション・アドバイザリー・サービス株式会社の調査によると、日本における2017年のM&A市場は、日本企業の経営層が成長に引き続き重点を置くため、さらに活性化すると予測している。国内経済成長の低迷や海外の政治的な不確実性がある中、企業のビジネス環境の変化が加速し、M&Aは成長への近道として、日本企業の重要な戦略のひとつになるであろう。 ◆日本におけるM&A取引(単位:兆円) (出典:EYトランザクション・アドバイザリー・サービス株式会社) 【実務事例1-1】 下北沢建設は、国内市場の拡大のため同業他社である非上場会社の御堂筋建設の買収を検討している。情報漏洩防止のため、下北沢建設の経営企画部が所管となりプロジェクトチームを組成し、ビジネス、財務・税務、法務の側面からデューデリジェンスを実施することとなった。 下北沢建設は、財務・税務デューデリジェンスは会計監査人以外の会計事務所、法務デューデリジェンスは顧問弁護士以外の弁護士事務所をアドバイザーとして登用し、同業の買収であることから、ビジネスデューデリジェンスは、同社プロジェクトチームにて実施することにした。   当然のことながら、今後本連載で紹介する全てのデューデリジェンスを実施する義務や必要性はなく、具体的なM&A取引の状況に鑑み、必要な調査を実施することになる。すなわち、具体的にどのような調査に重点が置かれるのかについては、対象会社等の資産内容やビジネスの性質に応じて決定されることになる。 重要なのは、複数のデューデリジェンスを実施した場合においては、それぞれの結果を有機的に関連づけて、総合的に評価することが、M&Aを失敗しない近道となる。特に、中小企業を対象会社等として、デューデリジェンスを実施する場合、下記の特徴を十分に理解しておく必要がある。 (了)

#No. 259(掲載号)
#松澤 公貴
2018/03/08

AIで士業は変わるか? 【第5回】「AIの時代の税理士業を予想する」

AIで 士業は変わるか? 【第5回】 「AIの時代の税理士業を予想する」   税理士・公認会計士・弁護士 関根 稔   ◆AIが意識を持つ時代 「コンピューターが人間と同じ思考をするようになる」「ロボットが意識を持つようになる」などの議論があるが、そんなことは全くあり得ない。 そもそも人間の意識とは何なのか、人間の思考とは何なのか、人間の脳の働き、記憶などについて、何一つ解明されていないところで、機械が、人間の役割を演じることなどあり得ない。 AIが人間に代わって思考し、働くようになり、専門職の人たちは仕事を失う。そのような意見があるが、それは全くの過剰反応だ。 コンピューターがディープラーニングによってプロの棋士に勝つまでに成長した。それはブルドーザーが相撲取りより重い物を持ち上げられるようになったのと同じように、単純な作業に特化した機械が登場しただけのことだ。 将棋の棋譜で人生が語れるわけではない。   ◆ディープラーニングという知能 そもそもディープラーニングは「分類」と「区分」ができるだけだ。猫の画像をグルーピングして、犬の画像をセパレーションするが、それが猫だと認識しているわけではない。ただ「A」と分類しているだけだ。数字や言葉などデータとして表現できるモノしか扱えず、「これを分類しろ」という命令が実行できるだけのことだ。 ディープラーニングが騒がれるのは、先に定義することなく、機械自体が分類精度を自ら向上させていくことができるシステムということだ。しかし、どのような判断基準で分類したかを自らは語れないという意味で、郵便物の自動仕分け機と差異はない。 人間の脳を人工知能で模倣するというのはSFの世界で、人工知能で人間の仕事がなくなるというのは妄想の会話だろう。脳の機能自体が全く解明されていない段階で、脳を模倣する機械など作れないのは自明の理だ。私自身はディープラーニングの技術を知らないので次の書籍の受け売りだが、もっともな理解だと思う(田中潤・松本健太郎 著『誤解だらけの人工知能 ディープラーニングの限界と可能性』光文社、2018年)。   ◆税理士が消えてしまう職業に 米国発の情報として、税理士業がAIによって消えてしまう職業にリストされたようだが、そもそも税理士という職業は米国に存在しない。消えてしまうと定義されたのは、おそらく企業の経理担当者や銀行の窓口業務の人たちだろう。 そのような職業は、ここで指摘されるまでもなく10年前に比較すれば半減、いや10分の1にまで減っている。現場で入力する数字が、即、経理情報として集計される時代だ。昭和の時代、大企業には大量の経理職員が存在したが、いま、経理職員は数えるほどしか存在しないと思う。さらに、経理業務がプロの仕事からコンピューター入力という単純作業になっていることも指摘できる。   ◆税理士こそがAIの最先端を走る 中小零細企業で、最初にコンピューター化したのは税理士業だ。手書きの元帳からオフコン会計に乗り換え、パソコン会計、税務申告書ソフト、電子申告と事務作業の電算化をいち早く取り入れてきた。 AIの進化は、税理士業に役立ちこそすれ、税理士業の障害になるはずはない。それは、これからも同様であって、コンピューターと税理士業の関係はバラ色でしかない。上手にこれらの道具を利用すれば、時間や場所から開放され自由に仕事ができるし、依頼者との距離もゼロにした仕事ができる。 現に、私の顧問先は日本中に散らばっていて、会ったこともない顧問先とメールで情報交換している。目の前にパソコンがなければ5分と間が持たないが、しかし、目の前にパソコンがあれば場所は問わない。24時間、365日が仕事の時間になっている。 バラバラの時間をバラバラに利用できるようにしてくれたのがコンピューター、ネット、メールという道具だ。そんなことは10年前には不可能だったし、10年後には、さらに便利な社会になっていると思う。   ◆Googleより優秀な税理士 ただ、AI、いや、それ以前にコンピューター、ネット、メールが知的専門職の仕事の仕方を変えてしまったのは事実だろう。いま、Googleより優秀な税理士は存在しないと思う。知識、情報、経験、ノウハウのオープン化が訪れる。いや、既に、そのような時代になっている。 有料の出版情報として提供されていた通達集は全て無料の電子情報になり、タックスアンサー、質疑応答事例、法令解釈の情報、文書回答事例、裁決事例集も無料で公開されている。Googleで検索すれば信頼できる同業者の解説が容易に手に入る。 専門家が財産としていた情報の価値が失われる時代だ。専門家が知識を語っても、その信頼性はGoogleで直ちに検証されてしまう。   ◆知識と共に人生を語る税理士 そのような時代に、税理士は、どのようなスタイルで仕事をすべきか。手書きの帳簿で、借方と貸方を合わせて、別表4と5を書いていたのでは生き残れないのは確かだ。 過去は分析できるが、未来を語るのは容易ではない。それでも、あえて未来を語れば、知識を語る時代ではなく、平穏、経験、人生を語るべき時代だと思う。 部品人間はサラリーマンに任せて、自己責任で生きてきた私たちは、人生の指針を語る存在にならなければならない。それが他人の財産と人生を管理する税理士の立ち位置だと思う。 (了)

#No. 259(掲載号)
#関根 稔
2018/03/08

《速報解説》 馬券の払戻金の所得区分に係る昨年12月の最高裁判決を受け、所得税基本通達が再び改正へ~ソフトウェア未使用の場合にも雑所得に該当するケースを追加~

《速報解説》 馬券の払戻金の所得区分に係る昨年12月の最高裁判決を受け、 所得税基本通達が再び改正へ ~ソフトウェア未使用の場合にも雑所得に該当するケースを追加~   Profession Journal編集部   国税庁は2月15日、昨年12月の最高裁判決を受け馬券の払戻金の所得区分に係る所得税基本通達を改正する旨公表していたが、3月2日付けでこの改正のパブリックコメントが開始され、具体的な改正内容が明らかとなった(意見・情報受付締切日は4月2日)。 競馬の馬券の払戻金の所得区分をめぐっては、平成27年3月10日の最高裁判決により同年5月の通達改正で所得税基本通達34-1《一時所得の例示》に下記下線部が追加され、馬券を自動的に購入するソフトウェアを使用する等、一定の態様により生じた馬券の払戻金について雑所得とする(外れ馬券の購入費用を必要経費として認める)取扱いとなった。 ただしこの改正後にも馬券の払戻金の所得区分をめぐる裁判が繰り返され、昨年(平成29年)12月15日の最高裁判決において、ソフトウェアを使わずに作成した購入パターンに従い年間を通じ多額の利益を上げ回収率が馬券の購入行為の期間総体として100%を超えるよう馬券を購入し続けてきたケースにおいて、営利を目的とする継続的行為からした所得として雑所得に当たるとした判断が下されたことで、今回の見直しに至った。なおこの判決では一審で納税者が敗訴したものの二審で逆転勝訴、最高裁が国側の上告を棄却したことで確定している。 今回パブコメに付された改正案では、所基通34-1(2)の注書きが下記下線部のように改正されており、最高裁の判決内容を織り込む形となっている、 なお、国税庁はホームページ上で今回の取扱いは過去に遡って適用されるため、これにより過去に申告した所得税が納めすぎとなる場合は所轄税務署へ更正の請求をすることで納めすぎとなっている所得税の還付を受けることができるとしている(法定申告期限から5年まで)。 今回の改正で雑所得となるケースが広がったようにも見えるが、上記の通り最高裁判決のケースに限定して反映された内容となっており、確定申告期間中にもかかわらず遡及適用可能としたパブコメ公表を行っていることからも、実際に改正通達により還付を受けられるのはレアケースになると考えられる。 東京高裁平成28年9月29日判決(最高裁平成29年12月20日上告棄却)では馬券購入行為が連続して多数回行われたにすぎず営利を目的とする継続的行為から生じた所得とはいえないとして払戻金を一時所得に該当する(外れ馬券の購入費用は必要経費として認められない)と判断しており、今後も個別の事案ごとにその実態で判断されるという意味においては、改正前後で大きな変更はないともいえよう。 (了)

#No. 258(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2018/03/06

《速報解説》 会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する中間試案、意見募集開始へ~株主が提案できる議案数に上限を設定、社外取締役の設置義務化は2案併記に~

《速報解説》 会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する中間試案、 意見募集開始へ ~株主が提案できる議案数に上限を設定、社外取締役の設置義務化は2案併記に~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成30年2月28日、法務省は、「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する中間試案」(目次を含めて23ページ)を公表し、意見募集を行っている。 中間試案については、その理解に資するために「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する中間試案の補足説明」(表紙を含めて76ページ)も公表されている。 これは、平成26年6月に成立した「会社法の一部を改正する法律」(平成26年法律第90号)における改正法附則25条において、 と規定されていることを踏まえ、法制審議会への諮問を受けたものである。 意見募集期間は、平成30年4月13日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 中間試案に記載された主な項目は次のとおりである。 以下では主なものについて解説する。 1 株主総会資料の電子提供制度 インターネットを利用する方法による株主総会資料の提供によって、印刷や郵送のための費用削減や、株主に対する早期に充実した内容の株主総会資料の提供が期待されている。 そこで、株式会社は、株主総会参考書類、議決権行使書面、会社法437条の計算書類及び事業報告並びに同法444条6項の連結計算書類の交付又は提供に代えて、それらに記載し、又は記録すべき事項に係る情報を電磁的方法により株主が提供を受けることができる状態に置く措置を採る旨を定款で定めることができるものとする。 上記の定款の定めがある株式会社の株主は、当該株式会社に対し、電子提供措置事項を記載した書面の交付を請求することができるものとする。 2 株主が提案できる議案の数 昭和56年の商法改正により導入された株主提案権の制度は、制度上株主が自らの意思を株主総会に訴えることができる権利を保障することにより、株主の疎外感を払拭し、経営者と株主との間又は株主相互間のコミュニケーションを良くして、開かれた株式会社を実現しようとするものである。 しかしながら、近年、1人の株主により膨大な数の議案が提案されたり、株式会社を困惑させる目的で議案が提案されたりするなど、株主提案権が濫用的に行使される事例が見られる。 そこで、株主が提案できる議案の数について、次の案が提案されている。 3 議案の内容による提案の制限 会社法304条及び305条の規定は、次のいずれかに該当する場合には、適用しないものとする。 4 取締役の報酬等 取締役の報酬等が取締役に対して職務を適切に執行するインセンティブを付与するための手段として機能するように取締役の報酬等に関する規律を見直すものとし、取締役の報酬等の内容に係る決定に関する方針を定めているときは、会社法361条1項各号に掲げる事項を定め、又はこれを改定する議案を株主総会に提出した取締役は、当該株主総会において、当該方針の内容の概要及び当該議案が当該方針に沿うものであると取締役(取締役会設置会社にあっては、取締役会)が判断した理由を説明しなければならないものとする。 5 金銭でない取締役の報酬等 会社法361条1項3号を改正し、取締役の報酬等のうち金銭でないものについての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定めるものとする。 6 株式報酬等 上記5のような見直しをするものとする場合において、次のような見直しをするものとする。 7 社外取締役の活用等 株式会社(指名委員会等設置会社を除く)と取締役との利益が相反する状況にある場合その他取締役が株式会社の業務を執行することにより株主の共同の利益を損なうおそれがある場合には、当該株式会社は、その都度、取締役の決定(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)によって、当該株式会社の業務を執行することを社外取締役に委託することができるものとする。ただし、業務執行取締役の指揮命令の下に執行する業務については、この限りでないものとする。 当該委託を受けた行為をしたことは、会社法2条15号イの「当該株式会社の業務を執行した」に当たらないものとする。 8 監査役設置会社の取締役会による重要な業務執行の決定の委任 9 社外取締役を置くことの義務付け 上場会社等は、社外取締役を置かなければならないものとするかどうかについては、法制審議会の会社法制(企業統治等関係)部会において意見が分かれたことから、A案(社外取締役を置かなければならない)とB案(現行法の規律を見直さない)が提案されている。 (了)

#No. 258(掲載号)
#阿部 光成
2018/03/02

プロフェッションジャーナル No.258が公開されました!~今週のお薦め記事~

2018年3月1日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.258を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2018/03/01

monthly TAX views -No.62-「欧州で白熱するポストBEPSの議論」

monthly TAX views -No.62- 「欧州で白熱するポストBEPSの議論」   中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 森信 茂樹   2月24日付の日経新聞は、一面トップで、「G20『アマゾン課税』協議へ  国またぐネット売買 EU案軸、売上高を対象」という見出しの報道をしている。 今回はもう少し詳しく、この動きを解説してみたい。 *  *  * デジタル経済のもとで国際課税ルールが適切に対応できていないという問題意識から、2012年にG20の指揮下でOECD・BEPS(税源侵食及び利益移転)プロジェクトが始まり、2015年秋に最終報告書が出された。 アマゾン・ドット・コム(Amazon.com)やグーグル(Google)に代表される米国IT企業が、自国(源泉国)でビジネスを行い利益を上げながら、税負担は低税率国・タックスヘイブンに回避させる、「価値創造地と納税地のかい離」という問題への対応である。 行動計画1の「電子経済の課税上の課題への対処」に関しては、法人税などの直接税についてPE概念に代わる複数のオプションが議論されたが、抜本的な見直しへの合意は得られず、当面、国際課税原則の精緻化により対応することとなった。 その上で、今後とも議論を続け、2018年に「電子経済に関する中間報告」、2020年に最終報告書を作成、G20に提出することとなった。 では、夏前にも出るとされる中間報告書はどのような内容になるのだろうか。これを占うのが、EUの動きである。 *  *  * EUはBEPSの議論を加速させるべく、自ら議論を開始した。背景には、英国が、BEPSの結論の前に利益迂回税(diverted profits tax)を導入し、独自の対応をしたことなどから、各国バラバラの対応では、税の公平性を歪めたり、企業への二重課税を生じさせるという懸念がある。そこでEUは、早急な合意を目指して議論を急いでいる。グローバルな合意を得るためには、まずEUとして共通ポジションの確立を目指し、中間報告書に影響を与えようということである。 EUの議論を、2017年10月のECOFIN(財務大臣会合)のプレスリリースから読み取ると、以下のようになっている。 議論ではまず、課題への対応を「短期的解決策(quick fix)」と「根本的解決策(Comprehensive approach)」の2つに区分している。その上で、短期的解決としては、online advertisement tax、withholding tax(源泉税)、 equalization levy(平衡税)などを検討の候補に挙げている。 具体的には、VATに付加税をかける方法や、売上(sales)に対して課税するという考え方で、詳しい内容は今後の検討となっている。 一方、根本的解決としては、PE概念を見直し、物理的施設がなくても、Significant Digital Presenceがあれば、PEとみなして法人課税の根拠とすることを検討している。 PEに帰属する所得計算の見直しを同時に行わなければ課税に結びつかないということで、そのためには、多国籍企業から得られる税収を、一定の方式によって各国に配分するフォーミュラーアプローチも選択肢に入っている。これは、共通統合法人課税ベース(CCCTB)の議論とも連動する。 物理的拠点を要しない電子経済の下では、これまでのPE概念に代わり、何らかの課税根拠が必要となる。それは「集積された顧客の個人データ(ビッグデータ)」で、Significant Digital Presenceと表現されている。 その上で、所得課税から消費課税へ、あるいは売上税へ、というシフトも必要となる。 *  *  * デジタル経済の下で、価値を生み出すのは特許権や商標権、ビジネスモデルなどの無形資産で、それの根源はビッグデータである。これを税制としてどう認識しどう扱うのか、このような全く新たな課題が、ポストBEPSとして議論されている。 (了)

#No. 258(掲載号)
#森信 茂樹
2018/03/01

組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第27回】

組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第27回】   公認会計士 佐藤 信祐   (《第2章》 平成13年度税制改正) 4 阿部泰久氏のコメント (1) 概要 既に述べたように、組織再編税制は、財務省主税局が単独で作ったものではなく、個別の条文については、経済界からの要請を受けたものも少なくない。そのため、当時の経済団体連合会経済本部税制グループ長であった阿部泰久氏が述べられていた内容は、財務省主税局が公式に公表したものではないものの、実務家からすると、貴重な情報源のひとつであったことは疑いがない。 そのうち、最も重要な情報源であると思われるのが、山本守之税理士との対談である「企業組織再編税制の考え方と実務検討」税務弘報49巻6号22-44頁(平成13年)及び、阿部泰久氏が行った講演である「改正の経緯と残された課題」江頭憲治郎ほか編『企業組織と租税法(別冊商事法務252号)』79-92頁(平成14年)である。 このうち、後者の「改正の経緯と残された課題(講演)」は、すでに本連載で触れた内容も多いため、本稿では、企業組織再編税制の考え方と実務検討(山本守之税理士との対談)(以下、「本対談」という)について解説を行うこととする。 (2) 企業組織再編税制の考え方と実務検討(山本守之税理士との対談) ① 金銭等不交付要件 【第4回】で解説したように、本対談では、1円でも金銭等を交付した場合には、交付した部分だけでなく、全体が非適格になった理由につき、実務上のニーズがなかったことから、一種の割り切りとして簡素な税制にしたことが明らかにされている。 しかし、平成29年度税制改正により、合併法人又は株式交換完全親法人が、被合併法人又は株式交換完全子法人の発行済株式の3分の2以上を保有している場合の特例が定められた。これは、平成19年度から解禁された合併等対価の柔軟化に遅ればせながらも対応したということであろう。 ② 50%超100%未満グループ内の組織再編 【第4回】で解説したように、当初、財務省は、100%グループ内の組織再編のみを主張していたが、それでは狭すぎるということで、50%超100%未満グループ内の組織再編にまで適格組織再編の対象を広げたということが明らかにされている。 ③ 主要資産等引継要件 本対談では、山本守之氏が、売掛金、買掛金、棚卸資産を主要な資産及び負債に含めるかどうかという点につき、①流動性の高いものは、組織再編の契約時点では残高を把握することも困難であり、また時価も不明確である、②代わりに金銭のような他の資産を加算ないしは減算することによって実質的な移転の効果を得ることができる、③移転対象に含めないことにより、適格外しに利用されることがある、という理由から、主要な資産及び負債に含めるべきではないとする財務省からの見解を説明され、阿部泰久氏が、当時の分割法制が事業の移転に限定していたことから、常に流動しているものにつき、これを厳格に分けることは、商法上も念頭に置いていなかったことも追加的な理由として挙げられている。 このように、主要な資産及び負債に、流動資産及び負債のほとんどが含まれないことから、一般的には、固定資産が主要な資産及び負債の中心的なものになると思われる。 ④ 従業者引継要件 本対談では、労働承継法との比較により、租税法の方が80%というアローワンスの高い考え方を採用していることが述べられている。このことから、従業者引継要件の判定上、分割法人から分割承継法人に引き継ぐべき従業者の判定において、労働承継法の考え方を参考にすることができることが分かる。 ⑤ 事業関連性要件 本対談では、事業関連性の範囲として、産業分類表などにこだわる必要はなく、「何らかのシナジー効果が出ればよい」という考え方になっていることが明らかにされている。しかし、平成19年度税制改正により、事業関連性要件の考え方につき、法人税法施行規則に明記されたことから、現在では、条文上も明記されているということが言える。 ⑥ 事業規模要件及び特定役員引継要件 本対談では、事業規模要件及び特定役員引継要件が、実務のニーズに応じてかなり広く認める内容であったことが明らかにされている。まず、事業規模要件が1対5となったのは、当初は1対2という考え方もあったのだが、せめて1対5まで認めないと組織再編が進まないという実態があったこと、事業規模要件でも救えないものに対し、特定役員引継要件が認められたことが明らかにされている。 さらに、(ⅰ)事業規模の比較は事業単位で行えばよい、(ⅱ)特定役員は通常の任期を全うすればよい、(ⅲ)常務取締役以上になった理由は、役員給与の規定における使用人兼務役員とされない役員とは何かという定義を参考にしたということが明らかにされている。このうち、阿部泰久氏は、「総合電機メーカーが家電専業メーカーと共同事業を行うときに、総合電機メーカーの規模と家電メーカーの規模を1対5で見るのではなくて、総合電機メーカーの中の対応する家電事業分野の規模と、その家電専業メーカーの規模を見ればいいということになります」と解説されている点に注目したい。 私見ではあるが、総合電機メーカーの中における家電事業分野とそれ以外の分野におけるシナジーは高く、このような細かな分解はすべきでないように思える。これが認められるとすれば、どのような切り分けも可能となってしまうからである。阿部泰久氏の意見に依拠するとすれば、事業再編計画において、家電メーカーのみのシナジーを期待したということが明らかな場合に限られると思われる。 ⑦ みなし共同事業要件 本対談の内容よりも、経済団体連合会経済本部税制グループ『新しい企業組織再編税制』53-54頁(税務研究会出版局、平成13年)に記載されている内容の方が分かりやすいため、以下、その内容を抜粋する。 このように、みなし共同事業要件は、グループ内の組織再編であっても、実質的に共同事業を営むための組織再編の要件を満たすものについて、繰越欠損金の引継ぎを認める趣旨で設けられた規定であることが分かる。 しかし、その制度趣旨に反し、みなし共同事業要件には、従業者引継要件及び事業継続要件が定められていないという致命的な問題がある。前回、解説したように、100%グループ内の組織再編を行った場合における税制適格要件には、従業者引継要件及び事業継続要件が要求されていないことから、みなし共同事業要件において、これらの要件を要求すべきだったように思われる。 さらに、事業規模要件及び特定役員引継要件が緩すぎるという問題も挙げられる。実務のニーズに対応するためとはいえ、本来であれば、これらの要件を満たすべきではないものについても、事業目的が十分に認められ、経済合理性も十分に説明できる行為を行った結果、偶然に事業規模要件又は特定役員引継要件を満たしてしまったものも少なくなく、そのようなものについて、「移転資産に対する支配の継続という制度趣旨に反する」という理由で、包括的租税回避防止規定を発動することは、租税法律主義に反するということが言える。 そのような懸念は、ヤフー事件最高裁判決に対する調査官解説により払拭されたため、今後の実務で問題になることはないが、平成13年当時の時代背景と異なる部分も少なくないため、もう一度、税制適格要件及びみなし共同事業要件の内容を見直すべきであると思われる。 *   *   * 今回までで、平成13年当時の議論について述べることができたと思う。これに対し、平成13年当時に公表された課税当局及び実務家の見解は、財務省主税局及び阿部泰久氏の見解を追認するものが多く、ほとんど参考にならなかった。これは、組織再編税制に関連する法人税基本通達の制定が平成14年2月15日まで遅れるなど、課税当局及び実務家が手探りで新しい税制に対応しようとした時代であったためであると考えられる。 しかし、【第9回】で述べたように、肝心の法人税基本通達に書かれている内容は、公表される前から、解釈上、明らかな内容ばかりであったことから、平成13年及び平成14年だけでなく、それ以降に公表された課税当局及び実務家の見解を見てみる必要があるということも言える。 その後の組織再編税制の改正は、平成18年度、平成22年度及び平成29年度がひとつの区切りであると言える。そのため、次回では、平成14年から平成17年までの改正内容について解説し、次々回以降では、平成13年から平成17年までの課税当局及び実務家の見解及び法人税基本通達の内容について触れることとしたい。 (了)

#No. 258(掲載号)
#佐藤 信祐
2018/03/01

「使用人兼務役員」及び「執行役員」の税務をめぐる考察 【第4回】「執行役員の法律上の定義と役割」

「使用人兼務役員」及び「執行役員」の税務をめぐる考察 【第4回】 「執行役員の法律上の定義と役割」   税理士 大塚 進一     1 執行役員の法律上の定義 執行役員そのものを規定している法令は存在しない。しかし、執行役員が各法令に定義される役員に該当すれば役員とみなされるため、法令上の役員の定義、特に税法上の取扱いを見ていく。さらに各法令には、いわゆる執行役員とは異なるものの、似た名称が見受けられるので、それらについても言及する。 (1) 執行役員制度と役員の定義 会社運営は通常、取締役会が経営の意思決定及び業務執行に関する監督を行い、代表取締役が各部署に指示を与え業務執行する。執行役員は代表取締役の指揮監督のもと、その指示に従い業務を執行する。 執行役員は会社法で規定されている機関ではないため、執行役員の選任は一般的に株主総会ではなく取締役会となり、登記の必要もない。つまり、執行役員は役員と称されるが役員ではなく、一般的には「最上位の使用人」と解される。 執行役員制度は会社法に規定されていないので、会社によって任意に制度設計がなされている。執行役員と会社との契約も使用人兼務役員と同様、雇用契約と委任契約の場合があるが、いずれの場合も役員には該当しない。 ここで役員とは、会社法では、取締役、監査役、会計参与を指し、会社法施行規則ではこれらに加え、執行役、理事、監事その他これらに準ずる者も含まれる。法人税法上は取締役、監査役、会計参与、執行役、理事、監事に加え、清算人、みなし役員が含まれる。 (2) みなし役員と執行役員 執行役員は、原則的には使用人であるが、「みなし役員」の要件を満たす場合は、法人税法上の役員となる。そのため「みなし役員」についての要件を確認しておきたい。 「みなし役員」とは「経営に従事している使用人以外の者」「一定の要件を満たす同族会社の使用人」のことであり、ここで「一定の要件」とは、使用人兼務役員になれない者の判定(【第1回】1(1)の⑤)における「役員」を「使用人」と読み替え、かつ、法人の経営に従事している者である。ここで「使用人」とは、職制上使用人としての地位のみを有する者に限られる。 以上をまとめると、みなし役員、法人税法上の役員か使用人かの判定は〈図4-1〉のようになる。 〈図4-1〉 「法人税法上の役員」及び「みなし役員」の判定 (3) 法令上にみる「執行役員」と類似する名称 「執行役員」と似た名称として、会社法には「執行役」、法人税法には役員に対する業績連動給与に示される「業務執行役員」が見受けられるが、これらは一般的に用いられるいわゆる執行役員とは異なる。 いわゆる執行役員は、これら法令上で規定されているものとは異なり、法令上の根拠はない。しいて法令上に規定を見つけるなら、会社法第362条第4項第3号、取締役会が取締役に委任することができない選任及び解任の対象とされる「重要な使用人」にあたると解される。   2 執行役員が会社運営上、必要とされる理由 会社の規模や事業内容によって、会社の意思決定部分と業務執行部分がそれぞれ大きく、役員と使用人を兼務することができない場合もある。少数の取締役が使用人を兼務する場合、通常の会社業務の比重が大きくなると、意思決定に参加できない場合も多く、兼務が難しくなる。そのため、役員の数を増やすと、迅速な意思決定ができない。 そこで、取締役は会社の意思決定に専念し、業務執行に関することは使用人としての「執行役員」に担当させることにより、取締役会や会社全体の運営を迅速に行うことができる。すなわち効率的な会社運営のため、取締役会での決定事項に従い業務の執行に専任する執行役員が必要とされる。 執行役員は、「会社の意思決定をしない役員」、つまり基本的に役員の仕事をしないが「役員」と名が付く「使用人」と理解すればよいが、逆に「会社の意思決定に携わる使用人」は役員と扱われるのか、を考えると、税法上の留意点が浮かび上がる。 次回以降では執行役員に関する税務上に留意点について、基礎的な事項からこれらの留意点までを考察することとしたい。 (了)

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#大塚 進一
2018/03/01

~税務争訟における判断の分水嶺~課税庁(審理室・訟務官室)の判決情報等掲載事例から 【第18回】「従業員等の横領行為に係る損害賠償請求権の益金計上時期が争われた事例」

~税務争訟における判断の分水嶺~ 課税庁(審理室・訟務官室)の判決情報等掲載事例から 【第18回】 「従業員等の横領行為に係る損害賠償請求権の益金計上時期が争われた事例」   税理士 佐藤 善恵     (※) ( )内の青色文字は、略称設定であり、以下その略称を使用する。 〔概要等〕 資本金5,000万円の同族会社であるX社は、その経理部長(甲)の外注費の水増し計上等によって金員が詐取されていた(本件詐取行為)。そのため、X社の平成12年10月1日から平成13年9月30日までの事業年度及び平成14年10月1日から平成15年9月30日までの事業年度(これらの2事業年度を併せて「本件各事業年度」)に架空外注費も含めた金額が外注費として計上されていた。 原処分庁は、税務調査において本件詐取行為を把握し、架空外注費の損金算入を否認する内容の法人税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分を行った(平成16年10月19日付)(なお、処分理由は、損害賠償請求権を損害発生時に益金計上すべきというものではない点に留意が必要である)。 X社の主張は、架空外注費計上による損害額は本件詐取行為のあった各事業年度の損金に算入される一方で、甲に対する損害賠償請求権は、同事業年度の益金には算入されないというものである。   〔双方の主張(要旨)〕 ▷原処分庁 詐取された損失額は損金算入されるが、同時に、X社は甲に対する損失額と同額の損害賠償請求権を取得してその額を益金に算入することになる。 不法行為時に資産が外部に流出し、それと同時に甲に直ちに履行を請求し得る損害賠償請求権が取得されるから、そのとき(不法行為時)に、損害賠償請求権の権利確定があったということができる。 ▷X社 収益(損害賠償請求権)は、確実性、客観性、経済的利益に加え、担税力があること、その利益に現実的な処分可能性があることなどが計上の要件である。 本件では、加害行為の発生により直ちに処分可能性のある経済的利益を客観的かつ確実に取得したとはいえないから、被害額を損金計上した事業年度の益金に算入することは相当ではなく、回収された場合のその時点の益金である。 (※) X社は、甲は債務超過状態であったから、X社は損害発生と同一事業年度における損害回復は事実上不可能であった旨も主張したが、ここでは省略する。   〔東京高裁の判断(要旨)〕 損害賠償請求権の益金計上時期について、(認定された事実によれば)、X社の取締役らは本件詐取行為を認識していなかったものであるが、経理担当取締役が預金口座からの払戻し及び外注先への振込依頼について決済する際に甲が持参した正規の振込依頼書をチェックしさえすればそれが容易に発覚するものであった。また、決算期等において、請求書と外注費として支払った金額とを照合すれば、容易に発覚したものである。 こういった点を考えると、通常人を基準とすると、本件各事業年度当時において、本件損害賠償請求権につき、その存在、内容等を把握できず、権利行使を期待できないような客観的状況にあったということは到底できないというべきである。 そうすると、本件損害賠償請求権の額を本件各事業年度において益金に計上すべきことになる。   〔判断の分水嶺〕 本判決が示す判断基準は、「通常人を基準にしても、本件損害賠償請求権の存在・内容等を把握し得ず、権利行使が期待できないといえるとすれば、当該事業年度の益金の額に計上しない取扱いが許されるということになる。」というものである。 「通常人を基準」という概念的な言葉を用いているが、実質的には、X社において通常は行われるべきチェックが行われていなかったという事実関係を重視して結論を下したのである。   〔本判決が示唆するもの〕 X社のもう1つの主張にも関係するが、本件裁判所は、次のような考え方も示している。 なお、課税庁の判決情報によれば、調査担当者向けに、次のようなポイントが記載されている。 (了)

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