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相続空き家の特例 [一問一答] 【第4回】「「相続空き家の特例」を受けられない家屋②(老人ホーム等に入居中であった場合)」-相続空き家の特例の対象となる譲渡の範囲-(平成31年(2019年)3月31日以前の譲渡に係る取扱い)

相続空き家の特例 [一問一答] 【第4回】 「「相続空き家の特例」を受けられない家屋② (老人ホーム等に入居中であった場合)」 -相続空き家の特例の対象となる譲渡の範囲- (平成31年(2019年)3月31日以前の譲渡に係る取扱い)   税理士 大久保 昭佳   Q Xは、昨年8月に死亡した母親の家屋(昭和56年5月31日以前に建築)とその敷地を相続により取得した後、耐震リフォームをした上で、本年12月に4,800万円で売却しました。 母親は、相続の開始の直前において老人ホームに入居していて、既にその家屋を居住の用に供していませんでした。また、母親が老人ホーム入居後から譲渡の時まで空き家でした。 この場合、「相続空き家の特例(措法35③)」の適用を受けることができるでしょうか。 A 相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋と認められなければ、「相続空き家の特例」を受けることはできません。 ●○●○解説○●○● 「相続空き家の特例」の適用対象となる家屋は、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋でなければならないこととされています(措法35④)。 この規定に係る判定については、居住用財産を譲渡した場合の特例制度(措法31の3、35①、36の2、41の5、41の5の2)に共通するところの、措通31の3-2(居住用家屋の範囲)の取扱いに準じて行うこととされていますので(措通35-10(被相続人居住用家屋の範囲))、例えば、相続開始直前に病院に入院されている場合でも、病状等が改善したならば再びその家屋に居住するような状況で死亡した場合であれば、「相続空き家の特例」の適用対象なり得ます。 しかしながら、老人ホーム等入居中の死亡については、 と示されており(財務省HP「平成28年度税制改正の解説」152頁)、その家屋が相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋と認められない場合は、「相続空き家の特例」の適用対象となりません。 (了)

#No. 228(掲載号)
#大久保 昭佳
2017/07/27

国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第7回】「非居住者の退職所得」

国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第7回】 「非居住者の退職所得」   税理士 菅野 真美   - 質 問 - 私(現在、日本の非居住者)甲は、乙社(日本法人)の従業員として30年以上勤務していましたが、このたび退職することになりました。在職期間のうち最後の10年間は海外勤務であり、退職時も海外で仕事をしていました。 退職時に退職金を受け取ることになりますが、海外在住者の場合の税金は、国内勤務者と比較して高額になると聞いて驚いています。会社都合で海外勤務になっているのに、国内勤務者よりも高額な税金を払わなければならないことに納得できません。何とかなりませんでしょうか。   ◆ ◆ 解 説 ◆ ◆ ▷非居住者の退職所得の課税の原則 非居住者である国内法人の従業員に対して支払った退職金のうち、居住者であった期間の勤務に対応するものは国内源泉所得(所法161①十二ハ)であることから、国内勤務対応部分の退職手当等の支給額について20.42%の税率で所得税等が源泉徴収され、課税関係は終了する(所法164②二、169、170、復興財確法28)。 退職手当の計算期間のうち、居住者期間と非居住者期間がある場合は、賞与と同様に期間按分をして国内勤務相当部分を算出する。役員であった者の退職金については、たとえ海外勤務期間であったとしても、内国法人の経営に寄与するための対価であると考えて、原則的には全額が国内源泉所得とされる(所法161①十二ハ)(【第2回】参照)。 質問の場合、甲は、乙社(内国法人)の従業員であることから、退職手当のうち国内勤務対応部分については20.42%の税率で所得税等が源泉分離課税される。   ▷退職所得の課税方法 退職所得については、居住者の場合、退職手当の金額から退職所得控除額を差し引いて、その2分の1相当額について所得税や住民税が課される。退職所得控除額は勤務期間が20年以下である場合は40万円×勤務年数、20年を超える場合は800万円+70万円×(勤務期間-20年)で計算されることから、勤務期間が長くなると控除額も大きくなる。さらに、2分の1相当額について超過累進税率で所得税を計算することから、他の所得と比較して納税負担が著しく軽減されることになる(所法30①②③)。 なお、役員等勤続年数が5年以下である人が支払いを受ける退職金のうち、役員等勤続年数に対応する退職金として支払いを受けるもの(特定役員退職手当等)については2分の1を乗ずることはできない(所法30②④)。これにより、短期間役員を受任し賞与や給与は低めに支給した上で、差額をまとめて退職金として払うことによる節税策に歯止めがかけられている。   ▷非居住者の退職所得の例外 このように、居住者と比較して非居住者が受け取る退職金に対する納税負担が著しく重い場合もあることから、退職所得については、本人の選択により、居住者と同様に退職所得を計算して確定申告をすれば、既に納めた所得税等について精算し、還付を受けることができる制度が設けられている(所法171)。 この場合、退職所得の計算においては、居住者と同様に、退職手当の全額(居住者期間部分+非居住者期間部分)を収入金額として退職所得を計算することになる。 ここで注意すべきは所得控除である。選択課税の適用を受けた場合、各種控除は使えない(所法171)。 この計算のための確定申告は、退職金の支払いを受けた年の翌年の1月1日から行うことができる(所法173①)。また、翌年まで待たなくとも、退職手当等の総額が確定した場合には、確定した日以後(所法173①かっこ書き)、一般的には退職金の支払いは一度であることから、支給日以後においては確定申告をすることにより、源泉徴収された税金の全部又は一部の還付が可能となる。 したがって、甲のケースも、退職金の支給を受けた日以後、確定申告により所得税等の還付ができる。   ▷納税管理人による申告 非居住者の確定申告、還付については、納税管理人制度を利用して行うことになる。 納税管理人は、納税義務者の代わりに税務署からの書類を受け取り、申告書を提出し、納税し、還付を受けることになる。納税が生ずる場合は、本人から納税相当額の資金を送金してもらい、代わりに納付する。 もし、本人が納税資金を送金しなかったならば、代わりに納税する義務はない。滞納の問題があったとしても、納税管理人は税務署からの書類を納税者に渡すにとどまり、納税管理人の財産が差し押さえられることはない。 納税管理人は日本に居住している人なら誰でもできるし、法人でもなれる。納税管理人に選任された場合は、納税管理人の届出書を本人(納税義務者)の納税地の所轄税務署長に提出することになる。 甲が誰かを納税管理人に選任すると、その納税管理人が納税管理人の届出書を甲の納税地の所轄税務署長に提出し、その後、甲の申告書を提出することになる。甲の提出する申告書には、甲の氏名、納税地の住所、現在の住所、納税管理人の氏名、住所を記載することになる。還付額については、納税管理人の口座に支払われることになる。 なお、納税管理人を引き受け申告すると、すみやかに納税管理人の解任届出を提出するという実務がある。解任届出を提出しないと、たとえ、本人が帰国したとしても税務関係の書類が納税管理人に送付されることになる。 (了)

#No. 228(掲載号)
#菅野 真美
2017/07/27

〈事例で学ぶ〉法人税申告書の書き方 【第17回】「別表13(4) 収用換地等に伴い取得した資産の圧縮額等の損金算入に関する明細書」

〈事例で学ぶ〉 法人税申告書の書き方 【第17回】 「別表13(4) 収用換地等に伴い取得した資産の圧縮額等の損金算入に関する明細書」   公認会計士・税理士 菊地 康夫   Ⅰ はじめに 本稿では、法人税申告書のうち、税制改正により変更もしくは新たに追加となった様式、実務書籍への掲載頻度が低い様式等を中心に、簡素な事例をもとに記載例と書き方のポイントを解説していく。 前回、前々回は法人税法上の圧縮記帳を採り上げたが、今回は租税特別措置法上の圧縮記帳の中から、実務で比較的採用するケースの多い、「別表13(4) 収用換地等に伴い取得した資産の圧縮額等の損金算入に関する明細書」を採り上げる。   Ⅱ 概要 この別表は、法人が、租税特別措置法第64条から第65条まで(収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例等)の規定の適用を受ける場合に記載する。 本制度は、いわゆる圧縮記帳と呼ばれるもののうち、収用等(第64条)、換地処分等(第65条)に係るものである。 そもそも法人が所有する土地等の資産の譲渡益があった場合には、その収益は課税所得となるのが原則である。しかし、土地収用法等に基づき法人の有する資産が強制的に収用される場合などは、いわゆる公権力による買取りであって、この利益までをも課税対象とすると、企業は退去させられた設備の代替資産の取得が困難となり、事業継続に支障をきたす恐れが生じてしまう。 そこで法人税法上の圧縮記帳のように、これら譲渡益のうち代替資産の取得に充てた部分に相当する金額等については、取得価額を圧縮して損金の額に算入することを特例として認めることとしたものであり、国土政策等の観点から必要性が高いものとして導入された租税特別措置法上の制度である。 〈収用等の場合〉 法人が収用等により対価補償金を取得した場合において、その補償金をもって、その収用等のあった日を含む事業年度又はその収用等のあった日から原則として2年以内(特定の場合にはその期間延長が認められる)に、収用等により譲渡した資産と同一種類の資産その他これに代わるべき資産(代替資産という)を取得した場合に、その代替資産につき圧縮記帳が認められる。また、代替資産の取得が翌事業年度以降になる見込みのときには、特別勘定として経理することができる。 〈換地処分等の場合〉 収用等があった場合において補償金の支払いに代えて同種の資産の交付を受けた時(交換取得資産という)や、土地改良法による土地改良事業等が施行された場合においてその土地等に係る交換により土地等を取得した時、あるいは土地区画整理法による土地区画整理事業等が施行された場合においてその土地等に係る換地処分により土地等を取得した時、などの場合に、一定の金額の範囲内で、その交換取得資産につき圧縮記帳が認められる。 ▼ 注意!▼ 収用換地等があった場合には、圧縮記帳による損金算入に代えて5,000万円の所得の特別控除制度を選択適用することもできるので十分留意する。 圧縮限度額の計算方法は次のとおり。 (※) 差益割合=(補償金の額-譲渡経費の額-譲渡資産の譲渡直前の帳簿価額)/(補償金の額-譲渡経費の額) ▼ 注意!▼ 「譲渡経費の額」は、譲渡資産に係る斡旋手数料、謝礼、譲渡資産の借地人又は借家人等に対して支払った立退料、資産の取壊し又は除去費用、資産の譲渡に伴って支出する建物等の移設費用などの額の合計額から、譲渡経費に充てるために交付を受けた金額(経費補償金)を控除して算出する。 また、実際の譲渡に要した経費の額がその経費補償金の額を超える場合のその超える金額については、差益割合の計算上は、対価補償金等の額から控除することとなる。 なお、本制度の適用を受けるためには、確定申告書に損金の額に算入される金額の記載があり、かつ計算明細書及び収用証明書等を添付するとともに、一定事項を記載した適用額明細書を提出しなければならない。   Ⅲ 「別表13(4)」の書き方と留意点 (1) 設例 (2) 今回の別表が適用される事業年度 平成29年4月1日以後終了する事業年度。 (3) 別表の記載例 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (4) 圧縮記帳に関する計算と仕訳例 (単位:円) 〔収用時の仕訳〕 〔代替資産取得時の仕訳〕 〔期末時の仕訳〕 〔圧縮限度額の計算〕 ◆譲渡資産の帳簿価額の按分計算 ◆譲渡経費の按分計算 ◆差益割合の計算 ◆代替資産の圧縮限度額 ◆交換取得資産の圧縮限度額 (5) 別表の各記載欄の説明 「譲渡資産の明細」 「譲渡経費の額の計算」 「帳簿価額の計算」 「差益割合の計算」 「代替資産について帳簿価額の減額等をした場合」 「特別勘定を設けた場合」 「交換取得資産について帳簿価額を減額した場合」 (了)

#No. 228(掲載号)
#菊地 康夫
2017/07/27

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例52(消費税)】 「特定期間における給与等支払額の合計額が1,000万円以下であったにもかかわらず、課税事業者と誤認し消費税の申告及び納付をしてしまった事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例52(消費税)】   税理士 齋藤 和助     《基礎知識》 ◆基準期間がない法人の納税義務の免除の特例(消法12の2①) その事業年度の基準期間のない法人のうち、その事業年度開始の日における資本金額が1,000万円以上である法人(新設法人)については、納税義務は免除されない。 ◆特定期間における納税義務の免除の特例(消法9の2①) 平成25年1月1日以後に開始する事業年度について、基準期間における課税売上高が1,000万円以下である場合において、その課税期間の特定期間における課税売上高が1,000万円を超えた場合には、その課税期間から課税事業者となる。なお、特定期間における1,000万円の判定は、課税売上高に代えて、給与等支払額の合計額によることもできる。 ◆特定期間(消法9の2④) 個人事業者の場合はその年の前年の1月1日から6月30日までの期間、法人の場合は、原則として、その事業年度の前事業年度開始の日以後6ヶ月の期間をいう。 ◆消費税課税事業者届出書(特定期間用)(消法57①一) この届出書は、その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下(基準期間における課税売上高がない場合又は基準期間のない場合を含む)である事業者が、特定期間における課税売上高が1,000万円を超えたことにより、その課税期間について納税義務が免除されないこととなる場合に速やかに提出する。 なお、特定期間における1,000万円の判定は、課税売上高に代えて給与等支払額の合計額によることもできる。       (了)

#No. 228(掲載号)
#齋藤 和助
2017/07/27

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第36回】「連結財務諸表における税効果会計(回収指針対応版)」

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第36回】 「連結財務諸表における税効果会計(回収指針対応版)」   仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋   【はじめに】 平成27年12月28日に企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(以下、「回収指針」という)」が公表されている(なお、回収指針は、平成28年3月28日に改正が行われている)。 そこで、今回は回収指針に基づいて、連結財務諸表における税効果会計を解説する。今回の解説は、本連載【第5回】「連結財務諸表における税効果会計」の改訂版である。なお、本解説では3月末決算の会社を前提に解説している。 税効果会計は大きく「個別財務諸表における税効果会計」、「連結財務諸表における税効果会計」、「連結納税における税効果会計」に分けることができる。今回は「連結財務諸表における税効果会計」について解説する。「連結納税における税効果会計」は次回取り上げたい。 連結財務諸表の作成は、親会社及び連結子会社の個別財務諸表を単純合算することから始まる。本解説では、単純合算「後」を解説する。 連結財務諸表における税効果会計は、以下の5つのステップに分けることができる。 ※各ステップをクリックすると、それぞれのページに移動します。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 個別財務諸表で集計したものだけが一時差異ではない。連結手続によっても一時差異は生じる。連結手続により生じる一時差異のことを連結財務諸表固有の一時差異という。 連結財務諸表固有の一時差異についても税効果会計を適用する必要があるため、まず、連結財務諸表固有の一時差異を連結会社(納税会社)ごとに集計する(会計制度委員会報告第6号連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針(以下、「連結実務指針」という)10)。 また、連結財務諸表固有の一時差異も個別財務諸表における一時差異と同様に、将来減算一時差異と将来加算一時差異に分類することができる(連結実務指針5)。ただし、連結財務諸表固有の一時差異は、連結手続上で発生するだけで、実際の課税所得の計算には関係しないということに留意が必要である。 〈将来減算一時差異〉 連結手続の結果として連結貸借対照表上の資産(負債)が、連結会社の個別貸借対照表上の資産(負債)を下回(上回)っていて、将来、当該差異が解消されるときに、連結財務諸表上の利益が減少することによって、その減少後の利益と連結会社の個別財務諸表上の利益を一致させるものである(連結実務指針6)。 〈将来加算一時差異〉 連結手続の結果として連結貸借対照表上の資産(負債)が、連結会社の個別貸借対照表上の資産(負債)を上回(下回)っていて、将来、当該差異が解消されるときに、連結財務諸表上の利益が増加することによって、その増額後の利益と連結会社の個別財務諸表上の利益を一致させるものである(連結実務指針8)。 *  *  *  * 連結財務諸表固有の一時差異は、大きく(1)連結上の会計方針の統一により生じる一時差異、(2)資本連結により生じる一時差異、(3)成果連結により生じる一時差異に分けることができる(連結実務指針3、4)。そのため、連結財務諸表固有の一時差異の集計の際には、一時差異が、(1)から(3)のどの内容により生じているかを検討し、集計することになる。 主な連結財務諸表固有の一時差異は以下のとおりである。 なお、連結手続上、計上される「のれん(負ののれん)」については、繰延税金負債(繰延税金資産)は計上しない(連結実務指針27)。 (1) 連結上の会計方針の統一により生じる一時差異 連結財務諸表作成にあたって親子会社の会計方針を統一する必要がある。この統一により子会社の貸借対照表に計上している資産又は負債と連結財務諸表に計上される資産又は負債に差額が生じる場合がある。この差額が一時差異に該当する。 (2) 資本連結により生じる一時差異 資本連結により生じる一時差異は、大きく以下の4つに分けることができる。 (※) ④については、本解説では省略している。 ① 子会社支配獲得時における子会社の資産及び負債の時価評価に伴う評価差額 連結手続上、子会社支配獲得時に子会社の資産及び負債を時価評価することにより評価差額が生じる。これにより、個別貸借対照表に計上している資産及び負債と連結貸借対照表に計上する資産及び負債に差額が生じる。この差額が一時差異に該当する。 この一時差異は、資産の売却、減価償却(償却資産の場合)等により解消される。 ② 子会社株式評価損及び投資損失引当金の連結修正に伴う差異 個別貸借対照表上の子会社株式に対して、子会社株式評価損又は投資損失引当金(以下、「子会社株式評価損等」という)を計上している場合、連結上、これらは消去する。そのため、子会社株式評価損等が税金計算上、損金算入されていない場合、子会社投資に対する個別上の簿価と連結上の簿価に差額が生じる。当該差額が一時差異(将来加算一時差異)となる(連結実務指針28)。 そして、個別財務諸表上、子会社株式評価損等に係る繰延税金資産を計上している場合、当該将来加算一時差異に係る繰延税金負債と同額となり、連結貸借対照表上、相殺される(連結実務指針28(1)、詳細は【STEP5】(3)参照)。結果的に、この連結修正に関する繰延税金資産及び繰延税金負債は計上されない。 また、個別財務諸表上、子会社株式評価損等に係る回収可能性がなく繰延税金資産を計上していない場合は、特段の検討は不要である。同様に子会社株式評価損等が損金算入されている場合も特段の検討は不要である。 ③ 子会社への投資の個別上の簿価と連結上の簿価の差異 子会社の支配獲得時には、子会社への投資に対する個別上の簿価と連結上の簿価は一致している。しかし、のれんの償却や連結子会社となった後に子会社で生じる利益・その他有価証券評価差額金・為替換算調整勘定等、段階取得(複数の取引による支配獲得)に係る損益により、個別上の簿価と連結上の簿価に差額が生じる。この差額が一時差異に該当する(実務指針29、29-2)。 一時差異の発生原因、解消、税効果の取扱いは以下のとおりである(実務指針30、32、34、35、37)。 (3) 成果連結により生じる一時差異 ① 未実現損益の消去に係る差異 連結会社相互間の取引で生じた未実現損益は連結手続上、消去する。例えば、親会社が子会社へ棚卸資産を売却した場合、子会社の貸借対照表上は、親会社から取得した金額で計上されるが、連結貸借対照表上は親会社の個別貸借対照表で元々計上されていた金額(未実現損益を含まない金額)で計上されることになる。 したがって、子会社の個別貸借対照表と連結貸借対照表の計上額に差異が生じるため、一時差異に該当する。 当該一時差異は資産の売却、減価償却費(償却資産の場合)等により解消する。 ② 債権債務の消去に伴い減額修正される貸倒引当金 連結グループ内の会社に対する債権債務は、連結手続上、相殺消去する。そのため、連結手続上、相殺した債権に個別貸借対照表上、貸倒引当金を計上していた場合、当該貸倒引当金を修正する。これにより、個別貸借対照表上と連結貸借対照表上の貸倒引当金の計上に差額が生じるため、一時差異に該当する。 なお、税務上、損金算入されているかどうかで、以下のように会計処理が異なる。 (ⅰ) 税務上、損金算入されている場合 この場合、個別貸借対照表と税務上の貸倒引当金は一致している。そのため、連結手続における貸倒引当金の修正により、「個別貸借対照表(税務)上の貸倒引当金 > 連結貸借対照表上の貸倒引当金」となる。したがって、将来加算一時差異に該当する。 (ⅱ)税務上、損金算入されていない場合 この場合、「税務上の貸倒引当金 < 個別貸借対照表上の貸倒引当金」となる。そのため、個別貸借対照表上では、将来減算一時差異が生じる。ここで、連結手続における貸倒引当金の修正により、「税務上の貸倒引当金 = 連結貸借対照表上の貸倒引当金 < 個別貸借対照表上の貸倒引当金」となる。これにより、個別貸借対照表の将来減算一時差異がなくなるため、個別貸借対照表で繰延税金資産を計上していた場合、これを取り崩す必要がある。 連結財務諸表固有の一時差異に係る繰延税金資産及び繰延税金負債も、個別財務諸表と同様に、一時差異に法定実効税率を乗じて算定する。 【STEP2】では、この法定実効税率を算定する。 未実現損益の消去に係る一時差異とそれ以外の一時差異で用いる法定実効税率は異なる。そのため、それぞれで法定実効税率を算定する。 (1) 未実現損益の消去以外の一時差異における法定実効税率 未実現損益の消去以外の一時差異における法定実効税率の計算方法は、個別財務諸表と同じであるため、【第35回】「個別財務諸表における税効果(回収指針対応版)」を参照のこと。 なお、連結財務諸表を作成するにあたって、連結子会社の決算日が連結決算日と異なる場合で、かつ、当該連結子会社が連結決算日に正規の決算に準ずる合理的な手続により決算を行う場合、当該連結子会社の繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率は、「連結決算日」における税率による。 また、連結子会社の正規の決算を基礎として連結決算を行う場合、当該連結子会社の繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率は、「連結子会社の決算日」の税率による(企業会計基準適用指針第27号「税効果会計に適用する税率に関する適用指針」9)。 (2) 未実現損益の消去に係る一時差異における法定実効税率 未実現損益の消去に係る一時差異に適用する法定実効税率は、計算方法は上記(1)と同様であるが、用いる法定実効税率が異なる。 未実現損益の消去による一時差異に適用する法定実効税率は、その取引の売却元に適用される法定実効税率が適用される。また、売却元での実際の課税関係は取引時に終了しているため、売却年度に適用された法定実効税率を用いる。そのため、連結決算日までに税率が改正されていても、改正後の税率を用いない(連結実務指針13)。 【STEP3】では、回収可能性考慮前・繰延税金資産及び繰延税金負債を算定する。【STEP2】で未実現損益の消去に係る一時差異とそれ以外の一時差異で別々に法定実効税率を算定したため、それぞれの一時差異に別々の法定実効税率を用いて算定する。 (1) 回収可能性考慮前・繰延税金資産の算定 回収可能性考慮前・繰延税金資産を納税会社ごとに、以下のとおり算定する。 (2) 繰延税金負債の算定 繰延税金負債も納税会社ごとに、以下のとおり算定する。 【STEP3】で算定した繰延税金資産は、回収可能性がない限り連結貸借対照表に計上できない。また、繰延税金負債も例外的な場合に支払可能性の検討が必要な場合がある。ただし、未実現損益の消去に係る一時差異については、その検討方法が異なる。 そこで、【STEP4】では、納税会社ごとに未実現利益に係る一時差異とそれ以外の一時差異に分けて回収可能性を検討する必要がある。 (1) 未実現利益の消去以外の一時差異に係る繰延税金資産及び繰延税金負債の検討 未実現利益の消去以外の一時差異に係る繰延税金資産について、その全額を貸借対照表に計上できるわけではなく、将来の課税所得(税金)を減少させる部分しか貸借対照表に計上できない。 そこで【STEP4】では、連結貸借対照表に計上できる繰延税金資産を算定するために、納税会社ごとに未実現利益の消去以外の一時差異に係る繰延税金資産と個別財務諸表上の繰延税金資産を合算し、「繰延税金資産の回収可能性」を検討する(連結実務指針41)。 具体的には、以下の①~③の検討が必要である。詳細は、【第35回】「個別財務諸表における税効果会計(回収指針対応版)」参照のこと。 (2) 未実現損益の消去に係る一時差異における繰延税金資産及び繰延税金負債の検討 ① 未実現利益の消去に係る税効果 連結手続上、消去された未実現利益に係る税効果は、未実現利益が発生した連結会社と一時差異の対象となった資産を保有する連結会社が異なるという特殊性を考慮し、かつ、従来からの実務慣行を勘案し、売却元で発生した税金額をそのまま繰延税金資産として計上する。この場合、繰延税金資産の回収可能性を検討する必要はない。 その後、未実現利益の実現(減価償却費の計上、売却等)に対応させて取り崩す(連結実務指針13)。 土地、建物等のように、未実現利益の実現が長期間にわたることになっても繰延税金資産を計上する。 ただし、無制限に繰延税金資産を計上できるわけではない。未実現利益の消去に係る将来減算一時差異の額は、売却元の売却年度における課税所得額が限度となる(連結実務指針15)。 ② 未実現損失の消去に係る税効果 未実現損失の消去に係る税効果は、売却元で課税所得の計算上、未実現損失が損金処理されたことによる税金軽減額を繰延税金負債として計上する。その後、未実現損失の実現(減価償却費の計上、売却等)に対応させて取り崩す(連結実務指針14)。 なお、未実現損失に係る繰延税金負債の計上にも限度額がある。未実現損失の消去に係る将来加算一時差異の額は、売却元の当該未実現損失に係る損金を計上する前の課税所得額が限度となる(連結実務指針15)。 【STEP5】では、税効果会計の会計処理について検討する。 (1) 繰延税金資産及び繰延税金負債(その他有価証券評価差額金等の純資産の部に直接計上され、課税所得の計算に含まれないものに係る税効果を除く)の計上 繰延税金資産及び繰延税金負債(純資産の部に直接計上され、課税所得の計算に含まれないその他有価証券評価差額金等に係るものを除く)の増減額を「法人税等調整額」を相手勘定科目として計上する(会計制度委員会第10号個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針(以下、「個別実務指針」という)2)。 繰延税金資産及び繰延税金負債(その他有価証券評価差額金に係るものを除く)の会計処理の例は以下のとおりである。 (※1) 当期末の繰延税金資産-前期末の繰延税金資産 (※2) 当期末の繰延税金負債-前期末の繰延税金負債 (2) 直接純資産の部に計上され、課税所得の計算に含まれないものに係る税効果- その他有価証券評価差額金の場合 その他有価証券評価差額に係る税効果会計の会計処理(時価>取得価額の場合)は以下のとおりである。 (※) (時価-取得価額)× 法定実効税率 (3) 繰延税金資産と繰延税金負債の相殺 同一納税主体ごとに流動資産の繰延税金資産と流動負債の繰延税金負債を相殺して表示する。また、同一納税主体ごとに投資その他の資産の繰延税金資産と固定負債の繰延税金負債も相殺して表示する(連結実務指針42)。したがって、親会社と子会社、子会社間で繰延税金資産と繰延税金負債を相殺することはできない。 また、税効果会計においては、以下の注記が必要である(連結財務諸表規則15条の5)。 なお、連結計算書類では、上記のような注記は必ずしも求められていない。 *  *  * 以上、5つのステップをまとめたフロー・チャートを再掲する。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 (了)

#No. 228(掲載号)
#西田 友洋
2017/07/27

税理士が知っておきたい[認知症]と相続問題〔Q&A編〕 【第14回】「認知症患者の親族が負う監督責任」-JR東海認知症事件-

税理士が知っておきたい [認知症]と相続問題 〔Q&A編〕 【第14回】 「認知症患者の親族が負う監督責任」 -JR東海認知症事件-   クレド法律事務所 駒澤大学法科大学院非常勤講師 弁護士 栗田 祐太郎   [設問13] 私の父親は91歳で、約7年ほど前からアルツハイマー型認知症の症状が出ていました。 そこで、私の母親(父の妻。事故当時85歳)と私の兄、そして私とで家族会議を開き、兄の奥さんが転居して母と一緒に父を介護することになりました。 その後、父の認知症の症状は進行し、最近では週6回前後の頻度で福祉施設に通っていました。 ◆  ◆  ◆ そのような中で、父は、福祉施設に行かない日に自宅を飛び出して徘徊し、行方不明になるといった事件も度々起こしました。このときは発見されて自宅まで戻ってこれたのですが、私たちは用心のため、自宅の玄関付近等にセンサーの付いたチャイムを設置するなどしました。 ところが、今回、父と母がふたりきりとなり、母がまどろんでいたところに父が自宅を抜け出して駅に向かい、電車に乗って隣駅で下りた後に線路内に立ち入り、そこで列車に衝突して亡くなってしまったのです。 ◆  ◆  ◆ 父が突然の事故で亡くなったことにショックを受けたのは当然ですが、私たち家族に追い打ちをかけるように、鉄道会社から遺族である母と兄に対して、父の事故に伴い発生した振替輸送費等として約720万円を支払うよう請求があったのです。 身内である父が大変な迷惑をかけたことは確かですが、他方で、私たち家族としてもできる限りのことはしてきたつもりです。 父のような認知症の高齢者を抱えた家族として、私たちはどのような法的責任を負うのでしょうか。   1 認知症高齢者本人の不法行為責任-責任能力があることが前提 前回の【設問12】で取り上げた交通事故を起こした相談者の父親の場合には、その挙動に照らしても不法行為責任を負う前提となる「責任能力」が認められる余地は少なからずあった。 また、自動車運転中の事故ということで、自賠責保険や任意保険により損害がカバーされることが通常といえる。 他方で、交通事故以外の原因により認知症高齢者が他人に損害を与えた場合には、より一層複雑な問題が生じる。 それが如実に現れたのが、新聞等でも大きく報じられたいわゆる“JR東海認知症事件”である(【設問13】はこの事件における事実関係をベースとしている)。   2 監督者の不法行為責任-どのような場合に責任を負うか? 事故の原因を発生させた高齢者本人の認知能力が低下し、不法行為責任の前提となる「責任能力」(その内容については前回参照)すら欠く状態にあった場合、いったい誰が、どのような条件のもとに法的責任を負うのか。 この点に関し、最高裁平成28年3月1日判決は、【設問13】におけるような「事実上の後見人」(法定後見の申立てがされないまま、事実上、親族等が身の回りの面倒や財産管理を行っている状態)の監督義務・責任につき、民法714条1項が定める法定監督義務者の解釈に関連して次のように判示した。 このように、高齢者本人が責任無能力であり、被害者が民法714条に基づき親族に対して賠償請求を行う場合について、上記最高裁判決は、①精神障害者(認知症の者)と同居する妻であっても、民法714条1項の法定監督義務者にはあたらないこと、②ただし、このような者でも監督義務を引き受けたと見るべき特段の事情が認められる場合には、法定監督義務者に準ずる者として民法714条1項が類推適用され、監督者責任を負うことがあることを判示した上で、③法定監督義務者に準ずる者といえるかを判断する際にあたっての考慮要素を明示した(その他の論点についても言及しているが、ここでは割愛する)。 その上で、線路に侵入した高齢者の妻(【設問13】における相談者の母)と長男(相談者の兄)が法定監督義務者に該当することを否定し、JR東海の賠償請求を棄却した。 この点、JR東海認知症事件の地裁判決は、妻だけではなく、同居していない長男の監督責任まで認めるなど、非常に広い範囲で親族の法的責任を認めていた。 他方、高裁判決は、妻については一部責任を認めたが、長男については法的責任を認めなかった。 このように、地裁・高裁・最高裁のそれぞれで判断内容が異なり、最高裁判決についてもトーンの違う(補足)意見が3つ付されている。 その意味では、今回示された最高裁の規範も固定的なものではなく、今後の状況の変化や事案の内容によっては規範の修正や事案へのあてはめ等をめぐり様々な判断がなされることも予想される。議論はまだ始まったばかりと言えよう。 なお、仮に民法714条に基づき親族に対する請求が認められた場合、この債務は親族固有のものであるから相続放棄をして免れることはできない。 そうすると、親族は自己破産をして債務を免れることを検討することになる(不法行為に基づく債務ではあるが、【設問13】のケースは破産法253条1項2号・3号には該当しないと思われる)。   3 認知症高齢者を介護する家族としての対応方法 【設問13】のように、認知症が進んだ高齢者本人が容易に自宅から外出できるということになれば、徘徊による行方不明や事故への巻き込まれ等、各種のトラブルに巻き込まれる恐れが発生する。 これを防ぐためには、①センサー付きチャイムを出入口に設置する、②GPS機能が付いたグッズを身に着けてもらう、③服の一部に氏名や電話等を記載する、④散歩の時間を作り、体を動かす機会を作る、⑤デイサービスを利用する等の対策が考えられる。 これらに加え、高齢者が誰かに損害を与えてしまう場合に備え、個人賠償責任保険(特約)を利用することも検討事項である。 この点、個人賠償責任保険は、他の保険(自動車保険、傷害保険、火災保険等)の特約として付けることが通常である。典型的には、日常生活の中で誤って他人に怪我をさせた、物を壊したといったようなケース等で補償がなされる。 ただし、【設問13】のように人に怪我をさせたり、物を壊したりということではなく、第三者に対して損害を与えた場合には、従来型の保険では補償が及ばないケースも出てくる。 そこで、保険会社各社では、上記最高裁判例を踏まえて、事故を起こした本人が責任無能力であった場合には、被保険者を法定監督義務者等まで拡大する等の改定を行ったり、電車の運行不能等に対する賠償責任も補償する新商品を販売する等といった対応をしているようである。 【設問13】のようなケースは今後ますます増加することが予想され、認知症高齢者を抱える家族としては、このような保険加入まで含めた総合的な対策を検討すべきであろう。 (了)

#No. 228(掲載号)
#栗田 祐太郎
2017/07/27

法務・会計・税務からみた循環取引と実務対応 【第2回】「法務からみた循環取引」

法務・会計・税務からみた循環取引と実務対応 【第2回】 「法務からみた循環取引」   弁護士・公認不正検査士 下尾 裕   1 法務からみた循環取引の知識が必要になる場面 法務からみた循環取引の知識が必要となる場面は、主に循環取引の破綻時において、当事者が自らの直接の取引先に対して、未払の売掛金等を請求する場面である。そこで、本稿では、循環取引に基づく請求の可否の判断枠組み及びこれを前提とした具体的な裁判事例について、解説を行う。 なお、本稿においては、契約目的物の現実の引渡し等又はその最終需要者(エンドユーザー)が存在することを指して「実需」という用語を用いる。   2 循環取引に基づく請求の当否に関する判断の枠組み (1) 循環取引に基づく請求の法的根拠 循環取引は、二当事者間の取引が順次連鎖して円環を構成しているものであり、複数の契約の集合体であることから、循環取引に基づく請求についても、個々の契約が請求の根拠となる。 過去の循環取引事例を分析するに、二当事者間においては、業界・業種の実情等に沿って、売買、請負、リース契約及びライセンス契約等の契約形態が用いられているが、本稿においては、実例・裁判例がともに多く存在する売買契約を前提に説明を行う。 (2) 請求の当否に関する裁判所の判断のメカニズム 売主が買主に対して循環取引を構成する売買契約に基づく売買代金を請求する民事訴訟を提起した場合、買主は、主に次のような法的主張により支払を拒絶するものと考えられる。 上記のうち、主張①は売買契約の存在そのものを争う主張であるのに対し、主張②ないし④は売買契約の成立を前提に、実需がないことを理由として、その有効性又は請求の当否を争う主張であると整理することが可能である。 以下では、この整理に従いその当否を検討したい。 (3) 主張①(売買契約の成立等を争う主張)の当否 循環取引においては、「架空循環取引」などと呼ばれるように、循環取引の首謀者がそもそも売買の目的物を現実に所有又は一切調達していないケースがしばしばみられるが、このような場合に、売買契約が直ちに不成立ないし原始的無効と判断されるわけではない。 すなわち、売買契約においては、目的物(契約の対象となる商品等)の存在は契約の不可欠の構成要素であるとされているが、一方で、売買契約の成立時点で他人が所有している物を売買の対象とすることも可能であるし(他人物売買)、また、世間一般に流通しうる商品(法律上、種類物又は限定種類物などと呼ばれるもの)については、現実の引渡し等がなされるまでは、代替品を調達することにより、売買の目的物とすることが可能である。 よって、売買契約においては、目的物が中古品である場合や当該目的物が世の中に数えるほどしか存在せず、かつそれらが全て世の中から滅失しているような例外的な場面を除けば、法的に目的物が存在しない(契約が無効と評価される)ことは観念しにくく、実需がないこと自体は、契約の成立そのものには影響を及ぼさない場合がほとんどである。 この点に関連して、下図の介入取引の事例において、介入者が買主に対して請求を行うにあたり、買主からの上記主張③を封じるため(金融取引であれば、目的物の引渡しの有無は問題とならない)、「その取引の目的は買主の売主に対する支払期限を延長してあげること等にあり(介入取引の機能については【第1回】の解説を参照されたい)、法律上の売買契約ではなく、金融取引(立替払契約)である」と主張した場合、このような主張は認められるのであろうか。 この問題については、最終的には個別事例を踏まえた判断にならざるをえないものの、多くの裁判例は、民法において当事者間の意思を尊重すべきとする契約自由の原則等があることなどを背景に、当事者が実際に締結した契約の建付け(上図における売買契約)を前提に判断を行っており、上記介入者の主張については認められない可能性が高い。 (4) 主張②ないし④(実需がないことを理由に契約の有効性等を争う主張)の可否 主張②ないし④は、実需がないことを前提とすれば形式的には有効な法律上の主張になりうるが、一方で、当初から実需のない取引であることを認識し又は容易に認識しえた買主を保護する必要性は乏しい。 その意味において、いずれの主張においても主要な争点となるのは、買主の主観面、すなわち、買主において実需がないことを認識し又は容易に認識しえたか(故意又は重過失の有無)であり、多くの裁判例がこの点に言及して、実質的な判断を行っている。   3 具体的な裁判事例 近年の循環取引に関する裁判例の1つである東京地裁平成22年6月30日判決(判タNO.1354第158頁(旧加ト吉循環取引売買代金請求訴訟))を取り上げて、裁判例の判断枠組みを具体的に検討してみたい。 当該裁判例は、冷凍食品等を取り扱う被告が、介入取引の依頼を受けて、冷凍商品を取り扱う商社であった原告及び加工食品の製造販売等を行うU社間に介在する取引を行った結果、U社→原告→被告→U社という実需のない循環取引が構成されたという事案である。被告は、原告からの売買代金請求に対し、被告の悪意(信義則違反)、引渡しの有無(同時履行の抗弁権)、詐欺取消し、錯誤無効、公序良俗違反等の主張を行った。 これに対し、東京地裁は、被告について、原告等から循環取引であることを告げられたといった直接的な事実は認定していないものの、 と述べた上、以下の事情を根拠に、被告が循環取引であることを暗黙のうちに認識し容認して取引を継続していたと認定し、当該認定を前提に被告の法的主張を全て排斥し、売買代金請求を認容している。   4 まとめ (売買契約を法形式とする)循環取引の裁判例においては、実需がなくとも、売買契約の成立自体は認めた上で、買主において実需がないことを認識し又は容易に認識しえたかどうか(故意又は重過失の有無)を重視して、売買代金請求の可否を決する枠組みがしばしば用いられる。 *  *  * 次回は会計からみた循環取引の解説を行う。 (了)

#No. 228(掲載号)
#下尾 裕
2017/07/27

〔検証〕適時開示からみた企業実態 【事例17】ソレキア株式会社「佐々木ベジ氏による当社株券に対する公開買付けの結果並びに主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ」(2017.5.24)

〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例17】 ソレキア株式会社 「佐々木ベジ氏による当社株券に対する公開買付けの結果並びに主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ」 (2017.5.24)   事業創造大学院大学 准教授 鈴木 広樹   1 今回の適時開示 今回取り上げる適時開示は、ソレキア株式会社(以下「ソレキア」という)が平成29年5月24日に開示した「佐々木ベジ氏による当社株券に対する公開買付けの結果並びに主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ」である。 佐々木ベジ氏(以下「佐々木氏」という)が同社に対して公開買付を行い、その結果、同社の主要株主である筆頭株主になったという内容だが、「5.今後の見通し」には次のように記載されている。 随分あっさりとした書きぶりだが、同社は、この前日の平成29年5月23日、「富士通株式会社による当社株券に対する公開買付けの結果に関するお知らせ」を開示している。同社に対しては、佐々木氏だけでなく、富士通株式会社(以下「富士通」という)も公開買付を行っていたのである。 しかし、富士通による公開買付は成立しなかった。佐々木氏による公開買付への応募数285,499株よりも、富士通による公開買付への応募数の方が357,765株と多かったのだが、富士通は、ソレキアの完全子会社化を前提として、買付予定数の下限を設定しており、応募数がそれに満たなかったのである。   2 敵対的買収の成立 ソレキアは、佐々木氏による公開買付に対して、いったん意見を留保した後(平成29年2月16日「佐々木ベジ氏による当社株券に対する公開買付けに関する意見表明(留保)のお知らせ」)、反対する意見を表明した(平成29年3月10日「佐々木ベジ氏による当社株券に対する公開買付けに関する意見表明(反対)のお知らせ」)。 平成29年3月10日の開示には、「株主の皆様におかれましては、本公開買付けに応募されないようお願い申し上げます」と記載されている。つまり佐々木氏による公開買付は、いわゆる敵対的買収だったのである。なお、敵対的買収とは、企業やその株主にとって敵対的な買収ではなく、あくまでその経営者にとって敵対的な買収であるといってよいだろう。 それに対して、ソレキアは、平成29年3月16日に「富士通株式会社による当社株券に対する公開買付けに関する意見表明のお知らせ」を開示し、富士通による公開買付には賛同する意見を表明した。富士通は、ソレキアにとって、いわゆるホワイトナイト(白馬の騎士)だったのである。なお、ソレキアと富士通の関係は深く、ソレキアの仕入の約4割が富士通からのものであり、ソレキアの役員の中には富士通出身者が複数名いる。   3 なぜ佐々木氏が勝ったのか? なぜ佐々木氏による公開買付が成立し、富士通による公開買付が成立しなかったのか。その原因は、上述のとおり富士通による公開買付に買付予定数の下限が設定されていたことと、両者の買付価格の違いである。 富士通は、買付価格を当初3,500円としていたが、最終的に5,000円まで引き上げた(平成29年3月16日と平成29年4月5日に同じ題名の「富士通株式会社による買付条件等の変更後の当社株券に対する公開買付けに関する意見表明のお知らせ」を開示)。 それに対して、佐々木氏は当初の2,800円から最終的に5,450円まで引き上げたのである(平成29年3月21日、平成29年3月31日、平成29年4月12日、平成29年4月25日に同じ題名の「佐々木ベジ氏による当社株券に対する公開買付け買付条件等の変更に関するお知らせ」を開示)。 ソレキアは、平成29年3月10日の開示において、佐々木氏が提案する施策を導入しても、「当社の企業価値の向上は見込めず、逆に毀損するおそれがあると判断し、本公開買付けに反対の意見を表明」するに至ったとして、株主に対して、佐々木氏による公開買付に応募しないように促している。 しかし、株式を売却してソレキアと関係がなくなる株主にとっては、同社の今後のことなどはどうでもよく、買付価格が高い方を選択するのが自然な流れだろう(ちなみに同社に対する公開買付が始まる前の同社株価は2,000円に満たなかった)。 なお、それにもかかわらず、富士通による公開買付への応募数の方が多かったのは、佐々木氏による公開買付には、買付予定数の上限が設定されており、応募数がそれを超えた場合、すべてが買い付けられない可能性があり、それを勘案してのことだと思われる。   4 結果は予想できた? ソレキアが平成29年4月21日に開示した「富士通株式会社による買付条件等の変更後の当社株券に対する公開買付けに関する意見表明のお知らせ」には、次のような記載がある。なお、「公開買付者」とは、富士通のことである。 上場会社である富士通にとって、買付価格の引上げはあくまで合理的な範囲内でのみ可能であった。それに対して、佐々木氏は、合理的な範囲を超えて買付価格を引き上げてくる可能性があった。ソレキアの経営者は、佐々木氏という人物を知れば、そうしたなりふり構わぬ行動に出てくる可能性を予想できたのではないだろうか。 佐々木氏と対立する構図をつくり出してしまった、今回のソレキアの経営者の判断は、明らかに失敗だったといえるだろう。 (了)

#No. 228(掲載号)
#鈴木 広樹
2017/07/27

《速報解説》 私道評価をめぐる最高裁判決を受け、国税庁が取扱い変更を示す情報を公表~質疑応答事例に「歩道状空地の用に供されている宅地の評価」を追加~

 《速報解説》 私道評価をめぐる最高裁判決を受け、 国税庁が取扱い変更を示す情報を公表 ~質疑応答事例に「歩道状空地の用に供されている宅地の評価」を追加~   税理士 風岡 範哉   1 歩道状空地の用に供されている宅地の評価の変更 平成29年7月24日、国税庁は次の情報を公表し、マンションやビルにおける一定の歩道状空地の評価の取扱いを変更した。これは、従来、宅地として評価していた部分について、これを私道評価すべきとする平成29年2月の最高裁判決を踏まえての変更となる。 さらに、下記の通り質疑応答事例として「歩道状空地の用に供されている宅地の評価」が新たに追記された。 ここでは、下記のような歩道状空地の用に供されている宅地については、私道として3割評価することとされている。 また、歩道状空地が、不特定多数の者の通行の用に供されている場合には評価しないことともされている。   2 「都市計画法所定の開発行為」とは ① 開発行為とは 開発行為とは、主として、建築物の建築又は特定工作物の建設を目的とした「土地の区画形質の変更」をいう(都計法4⑫)。 つまり、マンションやビルといった建築物を建築する際に、土地に区画形質の変更を加えるのであれば許可がいるということである。 「区画」の変更とは、元の土地にあった道路や公園等を廃止するとか、新たに開発に伴って道路や公園等を新設することをいう(※)。 「形」の変更とは、元の土地に50cm超の盛土をしたり、1m超の切土をしたりすることをいう。 「質」の変更とは、元の土地が農地や雑種地である場合に、これを宅地化することをいう。農地や駐車場を宅地転用してマンションを建築する場合がこれにあたる。 (※) この点は、広大地の適否の判断でなじみがあるだろう。現行の広大地は、原則として開発許可を必要とする面積以上であり、かつ、開発を行った場合に公共公益的施設用地の負担が必要な宅地であることが要件となる(国税庁・質疑応答事例『広大地の評価における「著しく地積が広大」であるかどうかの判断』参照)。 ② 開発許可を必要とする面積 上記の開発行為の目的となっている土地が、一定の面積以上である場合には、都道府県知事等の許可が必要とされている(都計法29)。 その開発許可を要する面積とは、例えば、市街化区域においては1,000㎡(三大都市圏は500㎡)以上、非線引き都市計画区域においては3,000㎡以上の土地など、【図表1】のように定められている(都市計画法施行令19)。 【図表1】 開発許可を必要とする面積基準 ③ 開発許可の基準 開発行為に関しては、良好な市街地の形成を図ることや、宅地に一定の水準を確保させるため、開発許可の基準が定められている(都計法33①)。 そこでは、例えば、道路や公園等の公共空地が適切に設計されていること、公共施設及び予定建築物の用途の配分が適切に定められていることなどといった技術基準が設けられている。 また、各自治体が宅地開発に対して独自に基準の強化又は緩和、最低敷地面積に関する制限などの取扱いを定めることができる。この取扱いを「開発指導要綱」という。 建築物を建築する際、各自治体の開発指導要綱によっては、敷地の一部に歩道状空地の設置を義務づけているケースがある。この開発指導要綱に従って設置した歩道上空地の評価が、宅地か私道か、というのが今回の論点である。   3 最高裁判決までの経緯 この開発許可を受けるための自治体の指導に基づいて設置された歩道状空地は、従来は宅地の一部として評価がなされており、私道としては評価されてこなかった。 この点が争われた事例が前述の最高裁判決である。 本件事案の概要は、以下のとおりである。 (※) インターロッキング舗装とは、コンクリートブロックを使ってレンガ調に組み合わせた舗装のことをいい、歩道や広場などに用いられている。 第一審(東京地裁平成27年7月16日判決〔TAINS Z888-1972〕)及び第二審(東京高裁平成28年1月13日判決〔TAINS Z888-2003〕)は、私道の種類を3つに区分し、 とした。 (※) 建築基準法上の道路においては、道路内に建築物を建築することが原則として禁止され(建基法44)、私道を廃止又は変更することも禁止又は制限されている(建基法45)。 そして、評価対象となった歩道状空地については③に該当することから、私道として評価することはできないと判示されている。 これに対し、最高裁(最高裁平成29年2月28日判決〔TAINS Z888-2047〕)は、私道の評価は、建築基準法等の私道内の建築といった制限のみならず、道路以外の用途への転用の難易等に照らし、宅地の客観的交換価値に低下が認められるか否かによって決定する必要があるとした。 そして、評価の対象となった歩道状空地については、共同住宅を建築する際、開発行為の許可を受けるために、市の指導要綱等を踏まえた行政指導によって私道を設けるに至ったものであり、土地所有者が道路以外の用途へ転用することが容易であるとは認め難いことなどから、評価減額をする必要がないということはできないと判示した。原審の判断には明らかな法令違反があり破棄を免れないとして審理を差し戻したのである。   4 今回の取扱い変更の対象となる土地 相続財産である土地の中に、都市計画法に定める開発許可を要する面積以上のものであり、かつ、現存する建築物を建築する際に開発許可を受けたようなケースにおいては注意が必要である。 そのような土地の中で、開発許可を受けるにあたって、各自治体の行政指導により設けた「歩道状空地」がある場合は、その部分について財産評価基本通達24を適用して評価することとなる。 したがって、土地評価の実務においては、土地の所有者及び役所における調査は必須の確認事項となる。 これをフローチャートで示すと【図表2】の通りである。 【図表2】 今回の取扱い変更の影響の判断のためのフローチャート   5 他の取扱いに与える影響 今回の歩道状空地は、都市計画法に定める開発許可に基づくものである。 これと似たものに建築基準法の総合設計制度に基づく「公開空地」がある(※)。 (※)  大規模ビルの敷地内にあるインターロッキング舗装のなされた通路や公園として利用されている部分である。この公開空地も、敷地内に一定の空地を設け、日常一般に公開することが建築基準法の許可の基準となっている。 この公開空地については、実務上、建物を建てるために必要な敷地を構成するものであり、建築基準法上建ぺい率や容積率の計算に当たっては、その宅地を含めて算定するものであること等からみて、一般の建物の敷地と何ら異ならないという理由で評価上特にしんしゃくは行わないこととされている(国税庁・質疑応答事例「公開空地のある宅地の評価」参照)。 しかし、都市計画法に基づく今回の歩道状空地も、建築基準法に基づく公開空地も、建物を建てるために必要な敷地であり、建ぺい率や容積率の算定根拠となることに変わりがない。 また、最高裁が今回の歩道状空地については、共同住宅を建築する際に許可を受けるために私道の用に供されるに至ったものであり、土地所有者が道路以外の用途へ転用することが容易であるとは認め難いことから私道として評価するのであれば、建築基準法上の公開空地も同様であり、後者においても私道としての評価が行うべく検討する必要があるのではないだろうか。 (了)

#No. 227(掲載号)
#風岡 範哉
2017/07/27

《速報解説》 信託契約の終了に伴い受益者が受ける所有権の移転登記に係る登録免許税法第7条第2項の適用関係について、東京局より文書回答事例が公表

 《速報解説》 信託契約の終了に伴い受益者が受ける所有権の移転登記に係る登録免許税法第7条第2項の適用関係について、東京局より文書回答事例が公表   税理士 仲宗根 宗聡   東京国税局は、平成29年6月22日付(ホームページ公表は7/5)で、「信託契約の終了に伴い受益者が受ける所有権の移転登記に係る登録免許税法第7条第2項の適用関係について」の事前照会に対し、回答文書を公表した。 以下では、その内容について解説する。   【 前 提 】 〈信託財産の移転登記〉 不動産を信託財産とする信託契約を締結した場合、所有者(委託者)から受託者へ、信託を原因とする所有権移転登記を行う。 また、信託契約の終了等に伴い、受託者から元本受益者へ信託財産を元本受益者へ移転する場合も、所有権移転登記を行う。 〈登録免許税の課税の特例(登免法7①)〉 不動産の所有権移転登記については、移転原因が「売買」「贈与」「相続」等の区分に従い、所定の登録免許税が課税されるが、登録免許税法第7条第1項(信託財産の登記等の課税の特例)に規定する信託に伴う次に掲げる移転については、登録免許税は課税されない。 上記の所有権移転については、信託に伴い、形式的に所有権が移転したにすぎないため、登録免許税は非課税とされる。 〈登録免許税の特例の適用外(登免法7②)〉 登録免許税法第7条第1項第2号(上記(2))により、信託財産を受託者から元本受益者へ移す場合は、当該受益者が信託の効力が生じた時から引き続き委託者であることを要件として、登録免許税は非課税とされる。 ただし、登録免許税法第7条第2項により、次の要件をすべて満たすときは、受託者から受益者への信託財産の移転は、相続による移転として登録免許税が課税される。 〈本件信託契約〉 (1) 甲はその有する不動産の管理、運用及び処分を目的として、甲を委託者兼受益者、X社を受託者とする信託契約を締結した。 (2) 甲が死亡した場合、受益権は、甲の養子である乙(甲の唯一の相続人)及び甲の妹である丙が、それぞれ1/2の割合で取得する。ただし、乙又は丙が死亡している場合は、生存する一方の者が受益権を取得する。 (3) 甲の死亡により委託者の権利は消滅するが、委託者の地位は、上記(2)により受益権を取得する者に移転する。 (4) 乙及び丙が、受益権を取得後、いずれかが信託終了前に死亡した場合には、生存する一方の者が死亡した者に係る受益権及び委託者の地位を取得する。 (5) 信託が終了した場合、受託者は、信託財産をその終了時の受益者に引き渡す。   【事前照会者の見解(要約)】 上記の本件信託契約を前提として、次の【ケースⅠ】から【ケースⅢ】の事実関係の下、受益権を取得した「乙(甲の相続人)」が、信託契約が終了したことにより受ける信託財産である不動産の所有権移転登記は、登録免許税法第7条第2項の規定が適用され、登録免許税の非課税ではなく、相続による所有権の移転登記とみなし、登録免許税が課税されると解してよいか。   【回答の要約】 上記の【ケースⅠ】から【ケースⅢ】において、信託が終了したことによる受託者X社から乙への信託財産の移転は、登録免許税法第7条第2項の要件を満たすものと解される。 そのため、乙への信託財産の移転は、相続による移転として登録免許税が課されることとなる。 (了)

#No. 227(掲載号)
#仲宗根 宗聡
2017/07/21
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