《速報解説》 金融庁、「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正(案)」等に対応する財務諸表等規則等の改正案(公開草案)を公表 ~繰越欠損金に関する注記事項等を改正~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成29年10月13日、金融庁は、次の公開草案を公表し、意見募集を行っている。 これは、平成29年6月6日に、企業会計基準委員会が公開草案を公表し、意見募集を行っていた(意見募集期間は8月7日まで)「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正(案)」(企業会計基準公開草案第60号)、「税効果会計に係る会計基準の適用指針(案)」(企業会計基準適用指針公開草案第58号)などに対応するものである。 意見募集期間は平成29年11月11日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 財務諸表等規則に関する公開草案の主な内容 1 税効果会計に関する注記 「税効果会計に関する注記」(財規8条の12)を次のように改正する。 2 繰延税金資産及び繰延税金負債の表示 繰延税金資産は投資その他の資産の区分に表示し、繰延税金負債は固定負債の区分に表示する(財規16条の2の削除、17条1項12号の削除、31条の3の削除、48条の2の削除、49条1項8号の削除、51条の2の削除、54条1項の削除、31条5号の新設、51条に「繰延税金負債」を規定)。 3 財務諸表等規則ガイドラインの改正 財務諸表等規則ガイドラインの8の12-2-1に次の規定を新設する(連結財務諸表規則ガイドライン15の5は財務諸表等規則ガイドラインの準用規定の新設)。 Ⅲ 連結財務諸表規則等に関する公開草案の主な内容 連結財務諸表規則に関する公開草案は、前述の財務諸表等規則に関する公開草案と同様である。 その他の規則に関する公開草案は、財務諸表等規則の改正案に伴う条文番号の改正である。 Ⅳ 適用時期等 企業会計基準委員会において、公開草案の結果を踏まえ公表される企業会計基準「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」等の適用日と合わせ、同日から施行する予定である。 「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(公開草案)の表示の取扱い及び注記事項の取扱いについては、原則として、平成30年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用するが、公表日以後最初に終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することができるとされていた。 (了)
《速報解説》 監査役協会、「会計監査人の評価及び 選定基準策定に関する監査役等の実務指針」を改定 ~監査法人のガバナンス・コードに対応~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成29年10月13日、日本監査役協会は、改定版「会計監査人の評価及び選定基準策定に関する監査役等の実務指針」を公表した。 これは、主に、平成29年3月31日に、「監査法人の組織的な運営に関する原則」(いわゆる監査法人のガバナンス・コード)が公表されたのを受けたものであるが、公認会計士・監査審査会の検査結果通知書の記載内容を紹介したり、現場の監査チームやグループ監査に関する評価項目の充実を図るなどしている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な改定の内容 1 監査法人の品質管理 「第1部 会計監査人の評価基準策定に関する実務指針」の「第1 監査法人の品質管理」の「評価項目1-1」において、監査法人の品質管理体制を評価するに際しては、監査法人のガバナンス・コードの適用状況を参考にして監査法人と積極的な意見交換を行うことが望ましいと記載されている。 「関連する確認・留意すべき事項」では、監査法人の実効的な経営機関の設置、組織的な運営が行われているか、監査実施者が会計監査をめぐる課題や知見、経験を共有し、積極的な議論を行う、開放的な組織文化・風土を醸成するための工夫を行っているかなどの多くの事項が新設されている。 2 公認会計士・監査審査会による検査結果 「第1部 会計監査人の評価基準策定に関する実務指針」の「第1 監査法人の品質管理」の「評価項目1-2」の「関連する確認・留意すべき事項」において、公認会計士・監査審査会による検査結果に関する脚注が追加されている。 3 監査役等との意見交換 「第1部 会計監査人の評価基準策定に関する実務指針」の「第2 監査チーム」の「評価項目2-3」の「関連する確認・留意すべき事項」において、監査報告書、その他の関連する報告書等の作成過程で、監査役等と適切な意見交換がなされており、報告書等の内容が意見交換を踏まえたものとなっているかについて新設されている。 4 グループ監査 「第1部 会計監査人の評価基準策定に関する実務指針」の「第6 グループ監査」の「評価項目6-1」の「関連する確認・留意すべき事項」において、他の監査人が把握した重要な虚偽表示リスク、不正リスクなどについて、会計監査人に速やかに伝達される体制を確保しているかと改定されている。 (了)
《速報解説》 「監査及びレビュー業務以外の保証業務に関する実務指針」(公開草案)等が会計士協会より公表される ~主題情報の提示を受ける合理的保証業務及び限定的保証業務への適用を想定~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成29年10月10日、日本公認会計士協会は、次のものを公表し、意見募集を行っている。 これは、平成25年12月に国際保証業務基準3000「監査及びレビュー業務以外の保証業務」(International Standard on Assurance Engagements 3000, ASSURANCE ENGAGEMENTS OTHER THAN AUDITS OR REVIEWS OF HISTORICAL FINANCIAL INFORMATION:「ISAE3000」)及び保証業務に関する概念の国際的な枠組みが改訂・公表されたことを受けたものである。 意見募集期間は平成29年11月11日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 保証業務実務指針3000の主な内容 主な構成は次のとおりである。目次を含めて102ページある。 保証業務実務指針3000は、監査事務所が行う監査及びレビュー業務以外の保証業務について実務上の指針を提供するものであり、保証業務を次の2つに分けている(12項(35))。 保証業務実務指針3000の要求事項及び適用指針は、主題情報の提示を受ける合理的保証業務及び限定的保証業務に適用されることを主として想定している。 次のことに注意する。 Ⅲ 「保証業務実務指針3000「監査及びレビュー業務以外の保証業務に関する実務指針」に係るQ&A」の主な内容 保証業務実務指針3000「監査及びレビュー業務以外の保証業務に関する実務指針」に基づき保証業務を実施する際に理解が必要と思われる事項について、Q&A方式によって解説を提供するものである。 保証業務実務指針3000の適用対象となる業務、保証業務に関連する主体など19のQ&Aが述べられている。 Ⅳ 「監査及びレビュー業務以外の保証業務に係る概念的枠組み」の主な内容 監査事務所が行う監査及びレビュー業務以外の保証業務について、その概念的枠組みを取りまとめている。 《付録1 我が国における保証業務の体系及び関連する品質管理の基準及び倫理規則》において、我が国における保証業務の体系及び関連する品質管理の基準及び倫理規則(職業倫理に関する規定)が示されているので参考になる。 Ⅴ 適用時期等 具体的な適用時期については記載されていない。 なお、監査・保証実務委員会実務指針「保証業務実務指針3000「監査及びレビュー業務以外の保証業務に関する実務指針」」の確定版の公表をもって、監査・保証実務委員会研究報告第20号「公認会計士等が行う保証業務等に関する研究報告」は廃止する予定である。 (了)
《速報解説》 「地積規模の大きな宅地の評価方法」を定めた 財産評価基本通達20-2がパブコメを経て正式公表 ~広大地の評価通達は廃止へ、判定フローチャート等を掲載した情報も公表~ Profession Journal編集部 国税庁は10月5日、広大地の評価方法の見直し等を定めた「財産評価基本通達の一部改正について(法令解釈通達)」及び、改正通達の趣旨を説明した「「財産評価基本通達の一部改正について」通達等のあらましについて(情報)」をホームページ上に公表、6月にパブリックコメントに付されていた改正通達が確定することとなった。 今回の改正通達により、その判定をめぐって課税当局と納税者の間に争いの絶えなかった従来の広大地の評価方法を定めた評価通達24-4は改正通達適用後に廃止、新たに要件が明確化された「地積規模の大きな宅地の評価」(評価通達20-2)の適用が始まる。 パブコメ後の変更点としては、寄せられた意見を受け市街地農地(通達40)・市街地山林(通達49)・市街地原野(58-3)の各評価項目において評価通達20-2の適用に係る留意事項が追加された他は、改正案の規定通りとなっている。 今回の改正通達は平成30年1月1日以後に相続、遺贈又は贈与により取得した財産の評価及び平成30年分以後の地価税の課税価格の計算の基礎となる土地等の評価に適用される。 また、パブコメの結果として「「財産評価基本通達」の一部改正(案)に対する意見募集の結果について」も同日に公表されており、寄せられた意見の一部とそれに対する国税庁の考え方を確認することができる。 地積規模の大きな宅地の評価においては、現行の広大地評価で問題となる「その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大であるか」、また「中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているもの(いわゆるマンション適地)であるか」という点について、1,000㎡(三大都市圏では500㎡)以上の地積で判定するといった要件の明確化が図られており、「あらまし(情報)」では次のように『「地積規模の大きな宅地の評価」の適用対象の判定のためのフローチャート』も掲載されている。ただし、これまでの判定方法から大きく見直しが行われることから、今後、国税庁からのより詳しい解説(Q&A等)の公表が待たれるところだ。 〈「地積規模の大きな宅地の評価」の適用対象の判定のためのフローチャート〉 (※) 国税庁ホームページより なお、上記広大地に係る改正のほか、株式保有特定会社の判定基準に新株予約権付社債を加える評価通達189の改正も行われており、この改正に伴い取引相場のない株式等の評価明細書の様式及び記載方法等を定めた通達の改正も行われている。また上記20-2の新設に伴い奥行価格補正率(普通商業・併用住宅地区、普通住宅地区)の見直しも行われているため留意しておきたい。 その他、上記改正内容については、本誌掲載の下記の解説も参照されたい。 (了)
2017年10月12日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.239を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!- - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第57回】 「税制調査会答申から租税法条文を読み解く(その3)」 中央大学商学部教授・法学博士 酒井 克彦 Ⅴ 税制調査会における議論と租税訴訟 ここで大変興味深い議論を紹介したい。 それは、いわゆる航空機リース事件名古屋地裁平成16年10月28日判決(判タ1204号224頁)において、国側が敗訴した後の税制調査会での議論である。 1 航空機リース事件概要 この事件では、納税者らが組合員となっている民法上の組合が行った航空機リース事業に係る所得について、納税者らが同所得は不動産所得に当たるとして航空機リース事業によって生じた損失につき損益通算が認められると主張したのに対し、課税庁側は、かかる契約は利益配当契約であり、そこから生ずる所得は雑所得に該当するため損益通算は認められないと主張して争われていた。 この事件において、名古屋地裁は、民法上の組合契約による事業である以上、その所得は不動産所得に該当し、かかる所得の金額の計算上生じた損失について損益通算が認められるとし、納税者の主張を認める判断を示した。 この判決を受け、課税庁において控訴を行うべきか否か検討が行われているまさにその最中に、当時の国税庁課税部審理室長が、税制調査会に出席して、この事件について説明を行ったところ、注目すべき議論が展開されたのである。 (※) 国税庁課税部審理室とは、租税訴訟のうち課税訴訟について、全国の国税局訟務官室を指揮監督する部局である。 なお、この事件は控訴されたものの、控訴審名古屋高裁平成17年10月27日判決(税資255号順号10180)においても原審が維持され、課税処分の違法性が確定している。 2 税制調査会議事録-国税庁からの説明- 平成16年11月9日に開催された税制調査会第19回総会の議事録を確認してみたい。 上斗米明国税庁課税部審理室長(当時)は、航空機リース事件を念頭に「組合を利用して執行上問題が生じたケース」についての説明を行っている。以下、該当箇所を引用してみたい。 (※) 税制調査会平成16年11月9日資料より そして、次のように試算を示し、同スキームにより生じるキャッシュフローベースの収入を説明している。 (※) 税制調査会平成16年11月9日資料より 続けて、同スキームから生じるタックスメリットについて次のように説明する。 このように、同スキームを、「税の軽減効果を加えて初めて経済合理的な投資となるスキーム」と位置づけた上で、課税処分の趣旨を述べ、前述したとおり、名古屋地裁での判断を紹介し控訴を検討している旨説明している。 上記引用のとおり、この組合スキームが税制調査会で議論の対象とされたのである。 3 税制調査会議事録-各委員からの意見と議論- ここで、税制調査会の村上正敏委員(時事通信社相談役)〔当時〕は次のように述べられている。 このように、税制調査会における議論の中で、「税制として欠陥」があると憂慮されるスキームに対し、「早急に対応策を考える必要がある」とする意見が出ていたところである。 さらに、上斗米審理室長も次のように続ける。 また、井戸敏三委員(兵庫県知事)〔当時(なお、知事は引続き現職)〕からは次のような意見が出されている。 そして、河野光雄委員(経済評論家)からは次のような提案がなされている。 すなわち、「税調も少なくとも年末の答申には、こういうことがあって、これをみんなが肯定しているわけでも何でもないよということを書いて」、多少の牽制力を働かせるべきという。 こうした種々の議論を経て、結論的には、その後、税制改正案が答申において提案されるに至ったのである。そして、新たに、租税特別措置法41条の4の2が創設され、同スキームに対する手当がなされた。 このように、「平成17年度税制改正に関する政府税制調査会の答申」において、組合事業から生じる損失を利用した租税回避行為を防止するため適切な対応措置を講じる必要性について指摘がなされ、これを受けて創設された同条により、「不動産所得を生ずべき任意組合等の事業に係る個人の組合員の組合損失をないものとみなす措置」が、租税特別措置法に条文化されたのである。 したがって、同条の解釈論を展開する場合には、必要に応じて、上記税制調査会における議論や、そこで議論の対象となったいわゆる航空機リース事件を参照することが求められることになろう。 なお、上記の税制調査会における議論が控訴審判決にいかなる影響を及ぼしたのかについては判然としないが、少なくとも、控訴審判決では、税制調査会の上記議論については触れられていない。 結びに代えて 上記のとおり、税制調査会での議論は租税法解釈にとって多くのヒントを提示するものであり、租税法が制定される際の「立法事実」を理解する有益な情報源の一つであるといってよかろう。 ところで、現在は、税制調査会については、その議事録のみならず、当時の配付資料や会議後の委員長の記者会見発言までもが公表されているが、税制調査会での議論が非公式であった時代もあった(もっとも、現在においても非公開会議の開催はあり得る。)。 また、過去には、税制調査会の委員に法律家が加わっていないという批判がされたこともある。 この点につき、北野弘久教授が、昭和52年3月18日の衆議院大蔵委員会において、次のような発言をされているから、最後に引用しておきたい。 現在の税制調査会会長は租税法の研究者である中里実教授であるが、このような批判が過去にあったことは興味深い。 (了)
〔資産税を専門にする税理士が身に着けたい〕 税法や通達以外の実務知識 【第3回】 「不動産鑑定評価について(その1)」 -鑑定評価によって求める価格の種類- 税理士 笹岡 宏保 基本的な論点 相続税法22条(評価の原則)の規定では、相続により取得した財産の価額は、特別の定めのあるものを除き、当該財産の取得の時における時価によるものとされており、この「時価」とは、当該財産の取得の時において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額、すなわち、客観的な交換価値をいうものと解されています。 実際の評価実務において、相続税の課税対象とされる財産は多種多様であることから、国税庁では、相続財産の評価の一般的な基準を評価通達によって定め、各種財産の評価方法に共通する原則や各種の財産の評価単位ごとの評価方法を具体的に定め、課税の公平の観点から、その取扱いを統一するとともに、これを公開し、納税者の申告、納税の便に供するものとされています。 そうすると、相続財産の評価に関する法令解釈等として、評価通達に定める評価方法は、個別の評価によることなく、画一的な評価方法が採られていることから、評価通達に基づき算定された評価額が、取得財産の取得時における客観的な時価と一致しない場合が生ずることも当然に予定されているというべきであり、評価通達に基づき算定された評価額が客観的な時価を超えていることが証明されれば、当該評価方法によらないことはいうまでもないとされています。 上記 部分を立証挙証するために、相続財産が不動産(土地等、家屋等)である場合に、当該不動産の客観的な時価を不動産鑑定士等による不動産鑑定評価に求める事例を数多く見受けます。 今回より、連載で不動産鑑定評価に関する知識を確認してみることにします。 第1回目の本稿では、鑑定評価によって求める価格の種類について確認します。 解決への指針 (1) 鑑定評価で求める価格は4種類 不動産鑑定士等が不動産鑑定評価に当たって、遵守することが求められている不動産鑑定評価基準において、 と定めています。 ◆ポイント◆ 鑑定評価によって求める価格の種類は、次の4つです。 ① 正常価格 ② 限定価格 ③ 特定価格 ④ 特殊価格 (2) 正常価格の意義とその留意点 正常価格とは、市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格をいいます。 この場合の「現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場」の条件は、次のとおりです。 ① 市場参加者についての条件 市場参加者が自由意志に基づいて市場に参加し、参入、退出が自由であること。 「市場参加者」とは、自己の利益を最大化するため次の要件を満たすとともに、慎重かつ賢明に予測し、行動するものをいいます。 ② 取引形態についての条件 取引形態が、市場参加者が制約されたり、売り急ぎ、買い進み等を誘引したりするような特別なものでないこと。 ③ 公開期間についての条件 対象不動産が、相当の期間、市場に公開されていること。 (3) 限定価格の意義とその留意点 限定価格とは、市場性を有する不動産について、不動産と取得する他の不動産との併合又は不動産の一部を取得する際の分割性に基づき、正常価格と同一の市場観念の下において形成されるであろう市場価値と乖離することにより、市場が相対的に限定される場合における取得部分の当該市場限定に基づく市場価値を適正に表示する価格をいいます。 限定価格を求める場合を例示すれば、次のとおりです。 (4) 特定価格の意義とその留意点 特定価格とは、市場性を有する不動産について、法令等による社会的要請を背景とする評価目的の下で、正常価格の前提となる諸条件を満たさない場合における不動産の経済価値を適正に表示する価格をいいます。 特定価格を求める場合を例示すれば、次のとおりです。 (5) 特殊価格の意義とその留意点 特殊価格とは、文化財等の一般的に市場性を有しない不動産について、その利用現況等を前提とした不動産の経済価値を適正に表示する価格をいいます。 特殊価格を求める場合を例示すれば、次の用途に供されている不動産について、その保守等に主眼をおいた鑑定評価を行う場合をいいます。 (了)
組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第8回】 公認会計士 佐藤 信祐 (《第1章》 平成13年度税制改正前の議論) 3 現物出資の課税の特例制度 (1) 制度の概要 【第2回】で解説したように、第7回法人課税小委員会(平成12年6月2日)に提出された資料では、平成13年改正前法人税法における現物出資の取扱いについて、以下のように記載されている。 この制度は、昭和17年の臨時租税特別措置法により、国の政策の実現のための特別の規定として導入され、その後、昭和23年蔵税2758号通牒、昭和25年の法人税基本通達に一般の会社にも適用できるようになり、さらに、昭和40年の法人税全文改正により、法令に取り込まれるようになったと言われている(※1)。 (※1) 大野新二「圧縮記帳における課税繰越趣旨の再吟味」税大論叢35号18頁(平成12年)。 前回で述べたように、組織再編税制を理解するうえで重要になるのは、上記のうち、②子会社の設立時に、株式等の保有割合が95%未満となることが見込まれていないことである。 この規定が導入されたのは、平成10年度税制改正であり、共同事業を行うための組織再編成の要件の1つである株式継続保有要件における「見込まれる」という考え方について、平成13年3月23日の租税研究会の会員懇談会での質疑応答において、「現行の特定の現物出資により取得した有価証券の圧縮額の損金算入制度(法法51、法令93)において、現物出資により取得した株式の持分割合につき、具体的な保有期間を定めず、95%未満となることが『見込まれているものでないこと』の要件が付されていますが、これと同様に考えることとなります」と、財務省主税局の朝長英樹氏(当時)が回答を行っている(※2)。そして、「見込まれる」という不確定概念は、支配関係継続要件や事業継続要件でも同様に規定されているが、上記の回答と同じ解釈をすべきであると考えられる。 (※2) 『企業組織再編成に係る税制についての講演録集』90頁(日本租税研究協会、平成13年)。 (2) 平成10年度税制改正 『平成10年版改正税法のすべて』309-310頁(大蔵財務協会、平成10年)では、特定の現物出資により取得した有価証券の圧縮額の損金算入(以下、「特定現物出資」という)の解説がなされている。 平成10年改正前租税特別措置法66条では、新たに法人を設立するために出資した金銭以外の資産に土地が含まれている場合の特例が定められていたが、平成10年度税制改正では、「土地を巡る状況が大きく変化してきていること、企業経営の合理化、効率化のための分社化の必要性が高まってきていること」を理由として、当該規定が削除されることになった。 さらに、法人税法51条で定められている特定現物出資の取扱いについても、①出資資産が国内にある資産として政令で定める資産である場合には、当該資産の出資により海外子会社を設立するものでないこと、②新設法人の設立時において、当該法人の有する新設法人の株式の保有割合が95%未満になると見込まれるものでないことという2つの要件が追加されることになった。このうち、①の取扱いは、現行法人税法でも、国境を挟む組織再編成が可能な現物出資について、会社分割とは異なる特例が定められている。 そして、②の取扱いは、前述の財務省主税局からの回答にあるように、「見込まれる」という解釈において非常に重要なものとなる。平成12年10月11日の会員懇談会の段階では、株式の継続保有期間を設けるべきかどうかを検討していたようであるが(※3)、前述のように、平成13年3月23日段階では、上記の特定現物出資の取扱いを継続することになった。 (※3) 前掲(※2)84頁。 なお、上記②の「見込まれる」という解釈について、『平成10年版改正税法のすべて』311頁(注)(大蔵財務協会、平成10年)では、「この要件は、現物出資が実質的な会社分割であることを担保するためのものです。すなわち、子会社を設立する時点で増資、合併等により出資割合が95%未満となることが予定されているものには本制度は適用しないというものです。したがって、子会社設立後に新たに生じた事由で出資割合が95%未満となったとしても要件違反を問われることはありません。」と解説されている。すなわち、後発事象により95%未満になったとしても、要件違反は問われないということである。 この解釈が、現在の組織再編税制における「見込まれる」の解釈となっているが、実際に、どのような場合であれば後発事象とみなすことができるのかは、実務上も悩ましい問題である。 この点について、IDCF事件(平成28年2月29日最高裁判決TAINSコードZ888-1983)における朝長英樹氏の鑑定意見書によれば、「『希望している』、『目標となっている』、『目指している』というようなことではなく、『予定されている』ということが、平成10年度税制改正前(原文ママ)の旧法人税法施行令第93条第2項第3号の判定基準とされているわけである。」(※4)「株式を『継続して保有することが見込まれる』ということになっているか否かの判定は、『予定されている』という状態であるのか否かということ、更に具体的に述べると、『売却計画が事前に決定された』という状態となっているのか否かということによって行うこととされている」(※5)と解説されている。 (※4) 朝長英樹『組織再編成をめぐる包括否認と税務訴訟』368頁(清文社、平成26年)。 (※5) 朝長前掲(※4)369頁。 本鑑定意見書が公表される前であっても、ほとんどの実務家がこのような解釈を採用していたことから、この内容について異論はない。ただし、実際に実務に落とし込んでいくと、様々な問題があったことから、国税局や税務専門家からの見解がいくつかの文献で見られるようになっている。この連載でも、可能な限り、これらの見解に触れていきたいと思う。 * * * さて、前置きが長くなってしまったが、平成12年までに議論されていた内容について、【第1回】から【第8回】までの解説で、おおむね解説することができたと思う。次回からは、平成13年度税制改正の具体的な内容に触れていきたい。 なお、実務が進むようになると、国税局や税務専門家からの見解も公表されているし、それがその後の財務省主税局の見解にも影響を与えているように思われる。本連載でも、これらの見解は可能な限り触れていくが、まずは、国税局や税務専門家からの見解に影響を受けていないピュアな財務省主税局の見解を探っていくこととしたい。 (了)
理由付記の不備をめぐる事例研究 【第33回】 「役員給与」 ~代表者の配偶者に対する交際費の支出が代表者に対する役員給与に該当すると判断した理由は?~ 千葉商科大学商経学部講師 泉 絢也 今回は、青色申告法人X社に対して行われた「代表者の配偶者に対する交際費の支出が代表者の役員給与(賞与)に該当すること」を理由とする法人税更正処分の理由付記の十分性が争われた横浜地裁平成22年7月28日判決(税資260号順号11483。以下「本判決」という)を素材とする。 1 更正通知書に記載された更正の理由(本件理由付記) (注) 素材とした本判決の判決文から読み取ることができる理由付記の一部を筆者が加工している。 2 本件理由付記から読み取ることができる関係図 3 本判決の判断 本判決は、大要次のとおり、X社の乙に対する交際費等の支出が甲に対する役員給与の支給に当たり、その金額を損金の額に算入することができないとする評価判断に至った過程自体を省略することなしに具体的に明示するものであり、理由付記に不備はないと判断した(控訴審である東京高裁平成22年12月22日判決・税資260号順号11584もこの判断を維持。上告審である最高裁平成23年9月8日第一小法廷決定・税資261号順号11757は上告棄却・上告不受理)。 (1) 求められる理由付記の程度 (2) 理由付記の十分性 4 検討 (1) 求められる理由付記の程度 本件更正処分は、X社が交際費等として損金計上しているX社の代表取締役甲の配偶者乙に対する誕生日祝金等の支出について、総勘定元帳に記載されているその支出年月日、支出の相手方及び支出の目的をそのまま認めるものである。その上で、各支出は、甲が乙に支出したものでX社の業務とは何ら関連のないものであり、甲個人が支出すべき費用をX社に支出させたものであるため、甲に対する役員給与(賞与)の額に当たるところ、法人税法34条1項各号に規定する役員給与(定期同額給与、事前確定届出給与、利益連動給与)のいずれにも該当しないことから、損金の額に算入されないとするものである。すると、帳簿書類の記載自体を否認することなしに更正をする場合に該当する。 したがって、理由付記の程度としては、更正通知書記載の更正の理由が、そのような更正をした根拠について帳簿書類の記載以上に信憑力のある資料を摘示するものでないとしても、更正の根拠を更正処分庁の恣意抑制及び不服申立ての便宜という理由付記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的に明示するものである限り、法の要求する更正理由の付記として欠けるところはないことになる(最高裁昭和60年4月23日第三小法廷判決・民集39巻3号850頁等参照)。 (2) 理由付記の十分性 次のとおり、本件理由付記は、法の求める理由付記として十分なものであると考える。 本件理由付記は、①乙に対する各支出について、X社の帳簿において、乙に対する誕生日祝金、結婚記念祝金、お中元及びお歳暮であると記載されていること、②乙は代表取締役甲の配偶者であること及び③当該各支出は甲が乙に対して行ったものであることを明記している。 すると、本件更正処分は、乙に対する各支出について、上記①ないし③に着目して、甲が乙に支出したものでX社の業務とは何ら関連のないものであり、甲個人が支出すべき費用をX社に支出させたものであると評価したものであることがわかる。また、かかる評価に基づいて、各支出は甲に対する役員給与(賞与)に該当するところ、法人税法34条1項各号に規定する役員給与のいずれにも該当しないことから、損金の額に算入されない、と判断したことを理解できる。 そうであれば、本件理由付記は、その記載内容から法令上の根拠が明らかになるものであり、かつ、法令上の要件に対応する具体的な事実を記載するものであり、これによって課税庁の判断過程が明らかとなるものである。よって、更正処分庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、更正の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与えるという理由付記の趣旨目的に適うものであると考える。 * * * 次回は、「前代表取締役に対する役員退職給与の額が過大であること」を理由とする法人税更正処分の理由付記の事例を取り上げる。 (了)
さっと読める! 実務必須の [重要税務判例] 【第29回】 「シルバー精工事件」 ~最判平成16年6月24日(集民214号417頁)~ 弁護士 菊田 雅裕 (了)