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法務・会計・税務からみた循環取引と実務対応 【第2回】「法務からみた循環取引」

法務・会計・税務からみた循環取引と実務対応 【第2回】 「法務からみた循環取引」   弁護士・公認不正検査士 下尾 裕   1 法務からみた循環取引の知識が必要になる場面 法務からみた循環取引の知識が必要となる場面は、主に循環取引の破綻時において、当事者が自らの直接の取引先に対して、未払の売掛金等を請求する場面である。そこで、本稿では、循環取引に基づく請求の可否の判断枠組み及びこれを前提とした具体的な裁判事例について、解説を行う。 なお、本稿においては、契約目的物の現実の引渡し等又はその最終需要者(エンドユーザー)が存在することを指して「実需」という用語を用いる。   2 循環取引に基づく請求の当否に関する判断の枠組み (1) 循環取引に基づく請求の法的根拠 循環取引は、二当事者間の取引が順次連鎖して円環を構成しているものであり、複数の契約の集合体であることから、循環取引に基づく請求についても、個々の契約が請求の根拠となる。 過去の循環取引事例を分析するに、二当事者間においては、業界・業種の実情等に沿って、売買、請負、リース契約及びライセンス契約等の契約形態が用いられているが、本稿においては、実例・裁判例がともに多く存在する売買契約を前提に説明を行う。 (2) 請求の当否に関する裁判所の判断のメカニズム 売主が買主に対して循環取引を構成する売買契約に基づく売買代金を請求する民事訴訟を提起した場合、買主は、主に次のような法的主張により支払を拒絶するものと考えられる。 上記のうち、主張①は売買契約の存在そのものを争う主張であるのに対し、主張②ないし④は売買契約の成立を前提に、実需がないことを理由として、その有効性又は請求の当否を争う主張であると整理することが可能である。 以下では、この整理に従いその当否を検討したい。 (3) 主張①(売買契約の成立等を争う主張)の当否 循環取引においては、「架空循環取引」などと呼ばれるように、循環取引の首謀者がそもそも売買の目的物を現実に所有又は一切調達していないケースがしばしばみられるが、このような場合に、売買契約が直ちに不成立ないし原始的無効と判断されるわけではない。 すなわち、売買契約においては、目的物(契約の対象となる商品等)の存在は契約の不可欠の構成要素であるとされているが、一方で、売買契約の成立時点で他人が所有している物を売買の対象とすることも可能であるし(他人物売買)、また、世間一般に流通しうる商品(法律上、種類物又は限定種類物などと呼ばれるもの)については、現実の引渡し等がなされるまでは、代替品を調達することにより、売買の目的物とすることが可能である。 よって、売買契約においては、目的物が中古品である場合や当該目的物が世の中に数えるほどしか存在せず、かつそれらが全て世の中から滅失しているような例外的な場面を除けば、法的に目的物が存在しない(契約が無効と評価される)ことは観念しにくく、実需がないこと自体は、契約の成立そのものには影響を及ぼさない場合がほとんどである。 この点に関連して、下図の介入取引の事例において、介入者が買主に対して請求を行うにあたり、買主からの上記主張③を封じるため(金融取引であれば、目的物の引渡しの有無は問題とならない)、「その取引の目的は買主の売主に対する支払期限を延長してあげること等にあり(介入取引の機能については【第1回】の解説を参照されたい)、法律上の売買契約ではなく、金融取引(立替払契約)である」と主張した場合、このような主張は認められるのであろうか。 この問題については、最終的には個別事例を踏まえた判断にならざるをえないものの、多くの裁判例は、民法において当事者間の意思を尊重すべきとする契約自由の原則等があることなどを背景に、当事者が実際に締結した契約の建付け(上図における売買契約)を前提に判断を行っており、上記介入者の主張については認められない可能性が高い。 (4) 主張②ないし④(実需がないことを理由に契約の有効性等を争う主張)の可否 主張②ないし④は、実需がないことを前提とすれば形式的には有効な法律上の主張になりうるが、一方で、当初から実需のない取引であることを認識し又は容易に認識しえた買主を保護する必要性は乏しい。 その意味において、いずれの主張においても主要な争点となるのは、買主の主観面、すなわち、買主において実需がないことを認識し又は容易に認識しえたか(故意又は重過失の有無)であり、多くの裁判例がこの点に言及して、実質的な判断を行っている。   3 具体的な裁判事例 近年の循環取引に関する裁判例の1つである東京地裁平成22年6月30日判決(判タNO.1354第158頁(旧加ト吉循環取引売買代金請求訴訟))を取り上げて、裁判例の判断枠組みを具体的に検討してみたい。 当該裁判例は、冷凍食品等を取り扱う被告が、介入取引の依頼を受けて、冷凍商品を取り扱う商社であった原告及び加工食品の製造販売等を行うU社間に介在する取引を行った結果、U社→原告→被告→U社という実需のない循環取引が構成されたという事案である。被告は、原告からの売買代金請求に対し、被告の悪意(信義則違反)、引渡しの有無(同時履行の抗弁権)、詐欺取消し、錯誤無効、公序良俗違反等の主張を行った。 これに対し、東京地裁は、被告について、原告等から循環取引であることを告げられたといった直接的な事実は認定していないものの、 と述べた上、以下の事情を根拠に、被告が循環取引であることを暗黙のうちに認識し容認して取引を継続していたと認定し、当該認定を前提に被告の法的主張を全て排斥し、売買代金請求を認容している。   4 まとめ (売買契約を法形式とする)循環取引の裁判例においては、実需がなくとも、売買契約の成立自体は認めた上で、買主において実需がないことを認識し又は容易に認識しえたかどうか(故意又は重過失の有無)を重視して、売買代金請求の可否を決する枠組みがしばしば用いられる。 *  *  * 次回は会計からみた循環取引の解説を行う。 (了)

#No. 228(掲載号)
#下尾 裕
2017/07/27

〔検証〕適時開示からみた企業実態 【事例17】ソレキア株式会社「佐々木ベジ氏による当社株券に対する公開買付けの結果並びに主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ」(2017.5.24)

〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例17】 ソレキア株式会社 「佐々木ベジ氏による当社株券に対する公開買付けの結果並びに主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ」 (2017.5.24)   事業創造大学院大学 准教授 鈴木 広樹   1 今回の適時開示 今回取り上げる適時開示は、ソレキア株式会社(以下「ソレキア」という)が平成29年5月24日に開示した「佐々木ベジ氏による当社株券に対する公開買付けの結果並びに主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ」である。 佐々木ベジ氏(以下「佐々木氏」という)が同社に対して公開買付を行い、その結果、同社の主要株主である筆頭株主になったという内容だが、「5.今後の見通し」には次のように記載されている。 随分あっさりとした書きぶりだが、同社は、この前日の平成29年5月23日、「富士通株式会社による当社株券に対する公開買付けの結果に関するお知らせ」を開示している。同社に対しては、佐々木氏だけでなく、富士通株式会社(以下「富士通」という)も公開買付を行っていたのである。 しかし、富士通による公開買付は成立しなかった。佐々木氏による公開買付への応募数285,499株よりも、富士通による公開買付への応募数の方が357,765株と多かったのだが、富士通は、ソレキアの完全子会社化を前提として、買付予定数の下限を設定しており、応募数がそれに満たなかったのである。   2 敵対的買収の成立 ソレキアは、佐々木氏による公開買付に対して、いったん意見を留保した後(平成29年2月16日「佐々木ベジ氏による当社株券に対する公開買付けに関する意見表明(留保)のお知らせ」)、反対する意見を表明した(平成29年3月10日「佐々木ベジ氏による当社株券に対する公開買付けに関する意見表明(反対)のお知らせ」)。 平成29年3月10日の開示には、「株主の皆様におかれましては、本公開買付けに応募されないようお願い申し上げます」と記載されている。つまり佐々木氏による公開買付は、いわゆる敵対的買収だったのである。なお、敵対的買収とは、企業やその株主にとって敵対的な買収ではなく、あくまでその経営者にとって敵対的な買収であるといってよいだろう。 それに対して、ソレキアは、平成29年3月16日に「富士通株式会社による当社株券に対する公開買付けに関する意見表明のお知らせ」を開示し、富士通による公開買付には賛同する意見を表明した。富士通は、ソレキアにとって、いわゆるホワイトナイト(白馬の騎士)だったのである。なお、ソレキアと富士通の関係は深く、ソレキアの仕入の約4割が富士通からのものであり、ソレキアの役員の中には富士通出身者が複数名いる。   3 なぜ佐々木氏が勝ったのか? なぜ佐々木氏による公開買付が成立し、富士通による公開買付が成立しなかったのか。その原因は、上述のとおり富士通による公開買付に買付予定数の下限が設定されていたことと、両者の買付価格の違いである。 富士通は、買付価格を当初3,500円としていたが、最終的に5,000円まで引き上げた(平成29年3月16日と平成29年4月5日に同じ題名の「富士通株式会社による買付条件等の変更後の当社株券に対する公開買付けに関する意見表明のお知らせ」を開示)。 それに対して、佐々木氏は当初の2,800円から最終的に5,450円まで引き上げたのである(平成29年3月21日、平成29年3月31日、平成29年4月12日、平成29年4月25日に同じ題名の「佐々木ベジ氏による当社株券に対する公開買付け買付条件等の変更に関するお知らせ」を開示)。 ソレキアは、平成29年3月10日の開示において、佐々木氏が提案する施策を導入しても、「当社の企業価値の向上は見込めず、逆に毀損するおそれがあると判断し、本公開買付けに反対の意見を表明」するに至ったとして、株主に対して、佐々木氏による公開買付に応募しないように促している。 しかし、株式を売却してソレキアと関係がなくなる株主にとっては、同社の今後のことなどはどうでもよく、買付価格が高い方を選択するのが自然な流れだろう(ちなみに同社に対する公開買付が始まる前の同社株価は2,000円に満たなかった)。 なお、それにもかかわらず、富士通による公開買付への応募数の方が多かったのは、佐々木氏による公開買付には、買付予定数の上限が設定されており、応募数がそれを超えた場合、すべてが買い付けられない可能性があり、それを勘案してのことだと思われる。   4 結果は予想できた? ソレキアが平成29年4月21日に開示した「富士通株式会社による買付条件等の変更後の当社株券に対する公開買付けに関する意見表明のお知らせ」には、次のような記載がある。なお、「公開買付者」とは、富士通のことである。 上場会社である富士通にとって、買付価格の引上げはあくまで合理的な範囲内でのみ可能であった。それに対して、佐々木氏は、合理的な範囲を超えて買付価格を引き上げてくる可能性があった。ソレキアの経営者は、佐々木氏という人物を知れば、そうしたなりふり構わぬ行動に出てくる可能性を予想できたのではないだろうか。 佐々木氏と対立する構図をつくり出してしまった、今回のソレキアの経営者の判断は、明らかに失敗だったといえるだろう。 (了)

#No. 228(掲載号)
#鈴木 広樹
2017/07/27

《速報解説》 私道評価をめぐる最高裁判決を受け、国税庁が取扱い変更を示す情報を公表~質疑応答事例に「歩道状空地の用に供されている宅地の評価」を追加~

 《速報解説》 私道評価をめぐる最高裁判決を受け、 国税庁が取扱い変更を示す情報を公表 ~質疑応答事例に「歩道状空地の用に供されている宅地の評価」を追加~   税理士 風岡 範哉   1 歩道状空地の用に供されている宅地の評価の変更 平成29年7月24日、国税庁は次の情報を公表し、マンションやビルにおける一定の歩道状空地の評価の取扱いを変更した。これは、従来、宅地として評価していた部分について、これを私道評価すべきとする平成29年2月の最高裁判決を踏まえての変更となる。 さらに、下記の通り質疑応答事例として「歩道状空地の用に供されている宅地の評価」が新たに追記された。 ここでは、下記のような歩道状空地の用に供されている宅地については、私道として3割評価することとされている。 また、歩道状空地が、不特定多数の者の通行の用に供されている場合には評価しないことともされている。   2 「都市計画法所定の開発行為」とは ① 開発行為とは 開発行為とは、主として、建築物の建築又は特定工作物の建設を目的とした「土地の区画形質の変更」をいう(都計法4⑫)。 つまり、マンションやビルといった建築物を建築する際に、土地に区画形質の変更を加えるのであれば許可がいるということである。 「区画」の変更とは、元の土地にあった道路や公園等を廃止するとか、新たに開発に伴って道路や公園等を新設することをいう(※)。 「形」の変更とは、元の土地に50cm超の盛土をしたり、1m超の切土をしたりすることをいう。 「質」の変更とは、元の土地が農地や雑種地である場合に、これを宅地化することをいう。農地や駐車場を宅地転用してマンションを建築する場合がこれにあたる。 (※) この点は、広大地の適否の判断でなじみがあるだろう。現行の広大地は、原則として開発許可を必要とする面積以上であり、かつ、開発を行った場合に公共公益的施設用地の負担が必要な宅地であることが要件となる(国税庁・質疑応答事例『広大地の評価における「著しく地積が広大」であるかどうかの判断』参照)。 ② 開発許可を必要とする面積 上記の開発行為の目的となっている土地が、一定の面積以上である場合には、都道府県知事等の許可が必要とされている(都計法29)。 その開発許可を要する面積とは、例えば、市街化区域においては1,000㎡(三大都市圏は500㎡)以上、非線引き都市計画区域においては3,000㎡以上の土地など、【図表1】のように定められている(都市計画法施行令19)。 【図表1】 開発許可を必要とする面積基準 ③ 開発許可の基準 開発行為に関しては、良好な市街地の形成を図ることや、宅地に一定の水準を確保させるため、開発許可の基準が定められている(都計法33①)。 そこでは、例えば、道路や公園等の公共空地が適切に設計されていること、公共施設及び予定建築物の用途の配分が適切に定められていることなどといった技術基準が設けられている。 また、各自治体が宅地開発に対して独自に基準の強化又は緩和、最低敷地面積に関する制限などの取扱いを定めることができる。この取扱いを「開発指導要綱」という。 建築物を建築する際、各自治体の開発指導要綱によっては、敷地の一部に歩道状空地の設置を義務づけているケースがある。この開発指導要綱に従って設置した歩道上空地の評価が、宅地か私道か、というのが今回の論点である。   3 最高裁判決までの経緯 この開発許可を受けるための自治体の指導に基づいて設置された歩道状空地は、従来は宅地の一部として評価がなされており、私道としては評価されてこなかった。 この点が争われた事例が前述の最高裁判決である。 本件事案の概要は、以下のとおりである。 (※) インターロッキング舗装とは、コンクリートブロックを使ってレンガ調に組み合わせた舗装のことをいい、歩道や広場などに用いられている。 第一審(東京地裁平成27年7月16日判決〔TAINS Z888-1972〕)及び第二審(東京高裁平成28年1月13日判決〔TAINS Z888-2003〕)は、私道の種類を3つに区分し、 とした。 (※) 建築基準法上の道路においては、道路内に建築物を建築することが原則として禁止され(建基法44)、私道を廃止又は変更することも禁止又は制限されている(建基法45)。 そして、評価対象となった歩道状空地については③に該当することから、私道として評価することはできないと判示されている。 これに対し、最高裁(最高裁平成29年2月28日判決〔TAINS Z888-2047〕)は、私道の評価は、建築基準法等の私道内の建築といった制限のみならず、道路以外の用途への転用の難易等に照らし、宅地の客観的交換価値に低下が認められるか否かによって決定する必要があるとした。 そして、評価の対象となった歩道状空地については、共同住宅を建築する際、開発行為の許可を受けるために、市の指導要綱等を踏まえた行政指導によって私道を設けるに至ったものであり、土地所有者が道路以外の用途へ転用することが容易であるとは認め難いことなどから、評価減額をする必要がないということはできないと判示した。原審の判断には明らかな法令違反があり破棄を免れないとして審理を差し戻したのである。   4 今回の取扱い変更の対象となる土地 相続財産である土地の中に、都市計画法に定める開発許可を要する面積以上のものであり、かつ、現存する建築物を建築する際に開発許可を受けたようなケースにおいては注意が必要である。 そのような土地の中で、開発許可を受けるにあたって、各自治体の行政指導により設けた「歩道状空地」がある場合は、その部分について財産評価基本通達24を適用して評価することとなる。 したがって、土地評価の実務においては、土地の所有者及び役所における調査は必須の確認事項となる。 これをフローチャートで示すと【図表2】の通りである。 【図表2】 今回の取扱い変更の影響の判断のためのフローチャート   5 他の取扱いに与える影響 今回の歩道状空地は、都市計画法に定める開発許可に基づくものである。 これと似たものに建築基準法の総合設計制度に基づく「公開空地」がある(※)。 (※)  大規模ビルの敷地内にあるインターロッキング舗装のなされた通路や公園として利用されている部分である。この公開空地も、敷地内に一定の空地を設け、日常一般に公開することが建築基準法の許可の基準となっている。 この公開空地については、実務上、建物を建てるために必要な敷地を構成するものであり、建築基準法上建ぺい率や容積率の計算に当たっては、その宅地を含めて算定するものであること等からみて、一般の建物の敷地と何ら異ならないという理由で評価上特にしんしゃくは行わないこととされている(国税庁・質疑応答事例「公開空地のある宅地の評価」参照)。 しかし、都市計画法に基づく今回の歩道状空地も、建築基準法に基づく公開空地も、建物を建てるために必要な敷地であり、建ぺい率や容積率の算定根拠となることに変わりがない。 また、最高裁が今回の歩道状空地については、共同住宅を建築する際に許可を受けるために私道の用に供されるに至ったものであり、土地所有者が道路以外の用途へ転用することが容易であるとは認め難いことから私道として評価するのであれば、建築基準法上の公開空地も同様であり、後者においても私道としての評価が行うべく検討する必要があるのではないだろうか。 (了)

#No. 227(掲載号)
#風岡 範哉
2017/07/27

《速報解説》 信託契約の終了に伴い受益者が受ける所有権の移転登記に係る登録免許税法第7条第2項の適用関係について、東京局より文書回答事例が公表

 《速報解説》 信託契約の終了に伴い受益者が受ける所有権の移転登記に係る登録免許税法第7条第2項の適用関係について、東京局より文書回答事例が公表   税理士 仲宗根 宗聡   東京国税局は、平成29年6月22日付(ホームページ公表は7/5)で、「信託契約の終了に伴い受益者が受ける所有権の移転登記に係る登録免許税法第7条第2項の適用関係について」の事前照会に対し、回答文書を公表した。 以下では、その内容について解説する。   【 前 提 】 〈信託財産の移転登記〉 不動産を信託財産とする信託契約を締結した場合、所有者(委託者)から受託者へ、信託を原因とする所有権移転登記を行う。 また、信託契約の終了等に伴い、受託者から元本受益者へ信託財産を元本受益者へ移転する場合も、所有権移転登記を行う。 〈登録免許税の課税の特例(登免法7①)〉 不動産の所有権移転登記については、移転原因が「売買」「贈与」「相続」等の区分に従い、所定の登録免許税が課税されるが、登録免許税法第7条第1項(信託財産の登記等の課税の特例)に規定する信託に伴う次に掲げる移転については、登録免許税は課税されない。 上記の所有権移転については、信託に伴い、形式的に所有権が移転したにすぎないため、登録免許税は非課税とされる。 〈登録免許税の特例の適用外(登免法7②)〉 登録免許税法第7条第1項第2号(上記(2))により、信託財産を受託者から元本受益者へ移す場合は、当該受益者が信託の効力が生じた時から引き続き委託者であることを要件として、登録免許税は非課税とされる。 ただし、登録免許税法第7条第2項により、次の要件をすべて満たすときは、受託者から受益者への信託財産の移転は、相続による移転として登録免許税が課税される。 〈本件信託契約〉 (1) 甲はその有する不動産の管理、運用及び処分を目的として、甲を委託者兼受益者、X社を受託者とする信託契約を締結した。 (2) 甲が死亡した場合、受益権は、甲の養子である乙(甲の唯一の相続人)及び甲の妹である丙が、それぞれ1/2の割合で取得する。ただし、乙又は丙が死亡している場合は、生存する一方の者が受益権を取得する。 (3) 甲の死亡により委託者の権利は消滅するが、委託者の地位は、上記(2)により受益権を取得する者に移転する。 (4) 乙及び丙が、受益権を取得後、いずれかが信託終了前に死亡した場合には、生存する一方の者が死亡した者に係る受益権及び委託者の地位を取得する。 (5) 信託が終了した場合、受託者は、信託財産をその終了時の受益者に引き渡す。   【事前照会者の見解(要約)】 上記の本件信託契約を前提として、次の【ケースⅠ】から【ケースⅢ】の事実関係の下、受益権を取得した「乙(甲の相続人)」が、信託契約が終了したことにより受ける信託財産である不動産の所有権移転登記は、登録免許税法第7条第2項の規定が適用され、登録免許税の非課税ではなく、相続による所有権の移転登記とみなし、登録免許税が課税されると解してよいか。   【回答の要約】 上記の【ケースⅠ】から【ケースⅢ】において、信託が終了したことによる受託者X社から乙への信託財産の移転は、登録免許税法第7条第2項の要件を満たすものと解される。 そのため、乙への信託財産の移転は、相続による移転として登録免許税が課されることとなる。 (了)

#No. 227(掲載号)
#仲宗根 宗聡
2017/07/21

《速報解説》 日税連、税理士業務に係るFinTechの影響と対応をまとめた中間報告を公表~金融機関・クラウド会計ソフトベンダーの動向に懸念を示す~

《速報解説》 日税連、税理士業務に係るFinTechの影響と対応をまとめた中間報告を公表 ~金融機関・クラウド会計ソフトベンダーの動向に懸念を示す~   Profession Journal 編集部   2017年7月12日、日本税理士会連合会はホームページ上にFinTechの進展に伴う金融サービスの変革による税理士業務への影響と対応について取りまとめた中間報告を掲載した。   〇 FinTechとは IT分野の技術革新の波は金融にまで波及しており、その代表が「FinTech(フィンテック)」である。FinTechとはFinance(金融)とTechnology(技術)を組み合わせた造語であり、金融とITの融合による新しいサービスと定義づけられている。 FinTechの領域は幅広いが、中間報告では「クラウド会計」「人工知能」「仮想通貨」といった税理士業務と特に関わりのある分野を取り上げてその影響を解説している。 また、中間報告が公表された背景としては、金融機関がFinTechを用いた過度の営業及び優先的地位を利用した取引先企業の囲い込みを行い、顧問税理士の存在を軽視する動きが進むことを懸念したためだと思われる。   〇 FinTechによる税理士業務への影響 中間報告では次の①~③を主に税理士業務に影響するとして取り上げている。 ① クラウド会計ソフトによる自動仕訳 クラウド会計ソフトにより会計業務が自動化することで企業の経理担当者や会計事務所が行っている手作業が省力化されるため、経理担当者や会計事務所に係る雇用の大幅な削減が見込まれる。ただし、業務の大部分が自動化されたとしても、経理担当者や会計事務所による会計処理に係る入力確認、税理士等による試算表及び決算書の作成時の確認は変わらず必要となる。 ② 人工知能による自動仕訳の精度の向上 人工知能の機能を備えたクラウド会計ソフトの導入により、自動仕訳の精度が上がり、販売管理などの他のアプリケーションと連動することで税理士業務の大幅な減少が見込まれる。なお、人工知能の導入により、判断に係る部分が一定程度代替することが可能ではあるが、高度な判断を求められる場合には当然ながら専門家である税理士の能力が必要となる。 ③ 仮想通貨の普及による新たな課題 「ビットコイン」などで度々メディアに取り上げられており、一般的な認知も高まってきた仮想通貨であるが、いまだ運用のための制度がしっかりと整っていない状況であるため、税務上、課税逃れに利用される可能性もあり、法務・会計・税務上の取扱いには今後多くの課題が出てくるものと思われる。税務面においては、財務省主税局及び国税庁が関心を示しており、今後の動向を注視する必要がある。   〇 金融機関、会計ソフトベンダーの動向と懸念事項 中間報告ではFinTechを要因とした実際の問題事例として、クラウド会計ソフトを提供するベンチャー企業(以下、「クラウドベンダー」という)と金融機関が組んで、中小企業に対して融資の借り換え、クラウド会計ソフトの導入等の営業、さらに税理士の紹介等の提案を行ったことで問題となった事例を取り上げている。 一般的に、融資を受けている企業からすれば、優越的地位にある金融機関からの提案を拒否することは難しい。まして顧問税理士が不在の際に営業・提案を行われたときは、顧問税理士に相談することなく経営者が企業にとって重要な案件を決めてしまうことも考えられる。 その結果、金融機関、会計ソフトベンダーと顧問税理士との間でトラブルに発展する可能性が懸念されている。 〈金融機関による優越的地位を利用した営業(例)〉 (※) 「FinTechへの対応について(中間報告)」より このようなことから、FinTech の進展に伴い、金融機関、会計ソフトベンダーによる顧問税理士の存在を軽視した動きが今後進むのであれば、非常に深刻な問題であるとして日税連は未然防止策を講じることを急務としている。   〇 日税連に求められる対応 以上のような影響、問題に対する日税連・税理士会に求められる対応として、中間報告では次のようにまとめている。 〈日税連・税理士会に求められる対応〉 (※) 「FinTechへの対応について(中間報告)」より *  *  * また、日税連ではFinTechの動向について情報収集を引き続き行い、必要に応じた対応策を検討・実施することで、会員の中小企業支援に係る業務の環境整備を図っていくとのことだ。 (了)

#No. 227(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2017/07/21

《速報解説》 金融庁より「監査法人のローテーション制度に関する調査報告(第一次報告)」が公表~パートナーローテーション制度の有効性を検証、欧州における強制ローテーション制度の動向を注視~

《速報解説》 金融庁より「監査法人のローテーション制度に関する 調査報告(第一次報告)」が公表 ~パートナーローテーション制度の有効性を検証、 欧州における強制ローテーション制度の動向を注視~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成29年7月20日、金融庁は「監査法人のローテーション制度に関する調査報告(第一次報告)」を公表した。 これは、平成28年3月8日に公表された「「会計監査の在り方に関する懇談会」提言-会計監査の信頼性確保のために-」において、監査法人の強制ローテーション制度の導入に関する調査・分析を行うべきとの提言を受けたものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 監査法人の強制ローテーション制度 監査法人の強制ローテーション制度とは、企業が監査契約を締結する監査法人((個人の)監査事務所を含む)を一定期間毎に強制的に交代させる制度のことである(調査報告2ページ)。 一方、パートナーローテーション制度とは、業務執行社員(パートナー)が継続的に同じ被監査企業の会計監査に従事できる期間に上限を設け、これを強制的に交代させる制度である(調査報告2ページの注2)。 調査報告は、パートナーローテーション制度導入後も、わが国では不正会計事案が発生し、同制度の導入時に期待された「新たな視点での会計監査」という観点からは、その目的・効果を必ずしも達成していない状況にあるとも言えると述べている。 欧州では、2014年に制定された法定監査規則において監査法人の強制ローテーション制度の導入が決定され、2016年より適用が開始されている(調査報告2ページ)。 調査報告では、監査法人の強制ローテーション制度などに関する欧州の動向や経験について詳細に記載されている。   Ⅲ 調査報告のまとめ 次のことが記載されている。 今後は、欧州における監査法人の強制ローテーション制度導入の効果等を注視するとともに、わが国において、監査法人、企業、機関投資家、関係団体、有識者など会計監査関係者からのヒアリング等の調査を行い、監査法人の強制ローテーション制度の導入に関する論点についての分析・検討を進めていくことが考えられるとのことである(調査報告32ページ)。 (了)

#No. 227(掲載号)
#阿部 光成
2017/07/21

《速報解説》 「収益認識に関する会計基準(案)」及び同適用指針(案)が公表~IFRS15号とは別の「重要性等に関する代替的な取扱い」も示す~

《速報解説》 「収益認識に関する会計基準(案)」及び同適用指針(案)が公表 ~IFRS15号とは別の「重要性等に関する代替的な取扱い」も示す~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成29年7月20日、企業会計基準委員会は次の公開草案を公表し、意見募集を行っている。 これは、収益認識に関する包括的な会計基準を開発するためのものである。 国際会計基準審議会(IASB)及び米国財務会計基準審議会(FASB)は、共同して収益認識に関する包括的な会計基準の開発を行い、平成26年5月に「顧客との契約から生じる収益」(IASBにおいてはIFRS第15号、FASBにおいてはTopic 606)を公表しており、IFRS第15号は平成30年(2018年)1月1日以後開始する事業年度から、Topic 606は平成29年(2017年)12月15日より後に開始する事業年度から適用される。 公開草案の公表に際して、次の別紙が公表されているので、公開草案の理解に資すると考えられる。 意見募集期間は平成29年10月20日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 公開草案の主な内容 1 範囲 次の①から⑥を除いて、顧客との契約から生じる収益に関する会計処理及び開示に適用する(収益認識会計基準案3項)。 2 定義 契約、顧客、履行義務、契約資産、契約負債、債権などについて定義されている(収益認識会計基準案4項~12項)。 3 会計処理 基本となる原則は、約束した財又はサービスの顧客への移転を、当該財又はサービスと交換に企業が権利を得ると見込む対価の額で描写するように、収益の認識を行うことである。 次の5つのステップからなる。 ステップ1 顧客との契約(次の①から⑤の要件のすべてを満たすもの)を識別する。 ステップ2 契約における取引開始日に、顧客との契約において約束した財又はサービスを評価し、次の①又は②のいずれかを顧客に移転する約束のそれぞれについて履行義務として識別する。 ステップ3 取引価格を算定する。 ステップ4 契約における履行義務に取引価格を配分する。 ステップ5 履行義務を充足した時に又は充足するにつれて収益を認識する。 次の事項に関する設例も設けられている。 4 特定の状況又は取引における取扱い 次の特定の状況又は取引に適用する指針を定めている。 5 重要性等に関する代替的な取扱い 公開草案は、これまで我が国で行われてきた実務等に配慮し、財務諸表間の比較可能性を大きく損なわせない範囲で、IFRS第15号における取扱いとは別に、次の個別項目に対する重要性の記載等、代替的な取扱いを定めている。 (1) 契約変更(ステップ1) ◆ 重要性が乏しい場合の取扱い (2) 履行義務の識別(ステップ2) ① 顧客との契約の観点で重要性が乏しい場合の取扱い ② 出荷及び配送活動に関する会計処理の選択 (3) 一定の期間にわたり充足される履行義務(ステップ5) ① 期間がごく短い工事契約及び受注制作のソフトウェア ② 船舶による運送サービス (4) 一時点で充足される履行義務(ステップ5) ◆ 出荷基準等の取扱い (5) 履行義務の充足に係る進捗度(ステップ5) ◆ 契約の初期段階における原価回収基準の取扱い (6) 履行義務への取引価格の配分(ステップ4) ◆ 重要性が乏しい財又はサービスに対する残余アプローチの使用 (7) 契約の結合、履行義務の識別及び独立販売価格に基づく取引価格の配分(ステップ1、2及び4) ① 契約に基づく収益認識の単位及び取引価格の配分 ② 工事契約及び受注制作のソフトウェアの収益認識の単位   6 認められなくなる日本基準又は日本基準における実務の取扱い 本公開草案によると、主に、次の現行の日本基準又は日本基準における実務の取扱いが認められないこととなる。 7 表示 顧客から対価を受け取る前又は対価を受け取る期限が到来する前に、財又はサービスを顧客に移転した場合は、収益を認識し、契約資産又は債権を貸借対照表に計上する。 契約資産は、金銭債権として取り扱い、「金融商品に関する会計基準」(企業会計基準第10号)に従って処理する。 財又はサービスを顧客に移転する前に顧客から対価を受け取る場合、顧客から対価を受け取った時又は対価を受け取る期限が到来した時のいずれか早い時点で、顧客から受け取る対価について契約負債を貸借対照表に計上する。 企業が履行している場合又は企業が履行する前に顧客が対価を支払う場合には、企業の履行と顧客の支払との関係に基づき、契約資産、契約負債又は債権を適切な科目をもって貸借対照表に表示する(経過措置あり)。 8 注記 顧客との契約から生じる収益については、企業の主要な事業における主な履行義務の内容及び企業が当該履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)を注記する。 企業が履行義務を充足する通常の時点とは、例えば、商品又は製品の出荷時、引渡時、サービスの提供に応じて、あるいはサービスの完了時をいう(収益認識会計基準案133項)。   Ⅲ 適用時期等 公開草案では経過措置が定められている(収益認識会計基準案81項~85項)。 (了) ↓お薦め連載記事↓

#No. 227(掲載号)
#阿部 光成
2017/07/21

プロフェッションジャーナル No.227が公開されました!~今週のお薦め記事~

2017年7月20日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.227を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2017/07/20

日本の企業税制 【第45回】「「収益認識に関する会計基準」の策定が税務へ与える影響」

日本の企業税制 【第45回】 「「収益認識に関する会計基準」の策定が税務へ与える影響」   一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 小畑 良晴   〇「収益認識に関する会計基準(案)」の公表 企業会計基準委員会(ASBJ)は、本稿公開日(7月20日)にも「収益認識に関する会計基準(案)」等を公表する予定と思われる(意見募集期間は3ヶ月)。平成27年3月に収益認識に関する包括的な会計基準の策定に着手して以来、2年を超える検討を経て、まとめられたものである。 この背景には、国際会計基準審議会(IASB)と財務会計基準審議会(FASB)とが共同して、収益認識に関する包括的な会計基準の開発を行い、平成26年5月に「顧客との契約から生じる収益」(IFRS 15号、Topic 606)が公表され、EU、米国においてほぼ同一の会計基準が2018年1月1日に発効されることがある。 一方、日本においては、これまで、企業会計原則の損益計算書原則に、「売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る」とされているのみであり、包括的な基準が存在していないのが現状である。   〇IFRS15号を全面的に採用 今回の公開草案は、基本的に連結財務諸表と個別財務諸表ともに、IFRS15号の定めをすべて取り入れることとした上で、これまでわが国で行われてきた実務等に配慮すべき項目について、国際的な比較可能性を大きく損なわせない範囲で、「適用指針(案)」において、重要性等に関する代替的な取扱いを追加的に定めるかたちとなる。 例えば、一時点で充足される履行義務に関しては、履行義務が充足された一時点で収益を認識することとなるが、国内の販売において、出荷時から当該商品又は製品の支配が顧客に移転されるまでの期間が通常の期間である場合には、出荷時点等に収益を認識することもできることとされている。 この他にも、履行義務の識別に関し、顧客との契約の観点で重要性が乏しい場合の取扱い、一定の期間にわたり充足される履行義務に関し、期間がごく短い工事契約及び受注制作のソフトウェアの取扱いや船舶による運送サービスの取扱いなど、代替的な取扱いは多岐にわたっている。   〇これまでの実務との差異 しかし、新しい会計基準案の基本的な構造は、IFRS15号と同様、5つのステップ(契約の識別、履行義務の識別、取引価格の算定、履行義務への取引価格の配分、収益の認識)に基づき、履行義務の識別、取引価格の配分、支配の移転による収益認識等を採用している。 上記のように一定の代替的な取扱いが認められてはいるものの、主に、次の現行の実務の取扱いは認められないこととなる。 ① 顧客に付与するポイントについての引当金処理 ② 消費税の税込方式による会計処理 ③ 返品調整引当金の計上 ④ 割賦販売における割賦基準に基づく収益計上   〇法人税法における収益の額の計上基準 現行の法人税法では、「各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額」(法法22①)とされ、「当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、・・・当該事業年度の収益の額とする」(法法22②)とされている。その制定経緯からすると、「所得の金額」は純資産の増加額であり、「収益」とは純資産の増加の原因となるすべての事実と解される。 一方、「収益」の額を計上する時期はいつかということについては、資産の引渡しの日(物の引渡しを要しない役務の提供の取引については、役務の全部を完了した日)の属する事業年度とされていると解される(例えば、法基通2-1-1、2-1-5)。 なお、収益認識の特例としては、いくつかの規定が存在しており、返品調整引当金(法法53、法令99~102)、長期割賦販売等に係る収益及び費用の帰属事業年度(法法63、法令124、125、127)、工事の請負に係る収益及び費用の帰属事業年度(法法64、法令129、130)が規定されている。   〇新会計基準の税務への影響 今回の公開草案には、現行実務に配慮して幅広く代替的な取扱いが認められており、税務上の影響も最小限となるものと見られるが、場合によっては、これまでの税務上の取扱いとの間で齟齬が生じ、税額や納税実務に影響を及ぼす可能性がある。 特に代替的な取扱いが認められないものについては注意が必要である。 例えば、物の販売の場合、履行義務は物の引渡しにより充足されるので、当然、収益は一時点で認識することになるが、代金が長期割賦の場合には、現行の税務上の取扱いと差が生じる。 現行法では、「確定した決算において」払期日の到来した賦払金の合計金額に応じて経理するいわゆる「延払基準」の方法により経理した場合には、収益等の一部を繰り延べることが認められている(法法63)。しかし、公開草案では「延払基準」での経理は難しいことから、法人税の所得計算において収益の一部を繰り延べることができなくなるおそれがある。 また、法人税法上、「損金経理により返品調整引当金勘定」に繰り入れた金額については、損金算入が認められることとされているが(法法53)、公開草案では、返品調整引当金勘定に繰り入れるのではなく、返品が見込まれる部分はそもそも収益を認識しないことになるので、損金算入の要件を満たせないおそれがある。 (了)

#No. 227(掲載号)
#小畑 良晴
2017/07/20

〈平成29年度改正対応〉所得拡大促進税制の実務 【第2回】「雇用形態別の留意点」

〈平成29年度改正対応〉 所得拡大促進税制の実務 【第2回】 「雇用形態別の留意点」   公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎   1 はじめに 所得拡大促進税制の計算基礎となる「雇用者給与等支給増加額」は、「国内雇用者」に対して支払われる給与等(雇用者給与等支給額)に基づき算出される。 一方、本税制の適用要件のひとつを構成する「平均給与等支給額」は、「継続雇用者」に対して支払われる給与等(継続雇用者給与等支給額)に基づき算出される。 用語が類似しているが、「継続雇用者」はあくまでも適用要件の判定にのみ用いられる概念であって、本税制は「国内雇用者」に対する給与等について適用されるという点は間違えないように押さえておきたい。 そこで本稿では、様々な雇用形態が想定される中で、主な雇用形態ごとに について検討し、雇用形態ごとの留意点について整理することとする(なお説明の都合上、60歳定年制を前提とする)。   2 国内雇用者及び継続雇用者の意義 所得拡大促進税制の適用上、国内雇用者とは、法人の使用人(当該法人の役員、役員の特殊関係者、使用人兼務役員を除く)のうち、当該法人の国内に所在する事業所につき作成された労働基準法第108条に規定する賃金台帳に記載された者をいう(措法42の12の5②一、措令27の12の5⑤)。 ところで労働基準法第108条には、「使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調整し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払いの都度遅滞なく記入しなければならない」との定めがあり、これを受けた労働基準法施行規則第54条では、「使用者は、法第108条の規定によって、次に掲げる事項(筆者注:省略)を労働者各人別に賃金台帳に記入しなければならない」と定めている。 ここで「労働者」とは何かが問題となるが、労働基準法における労働者は「職業の種類を問わず、事業又は事業に使用される者で、賃金を支払われる者」と定義されている(9条)ことから、賃金台帳は、雇用形態に関わらず、すべての労働者について作成する義務を負っているということになる。 したがって「国内雇用者」という概念は、基本的には雇用形態とは無関係の、比較的幅広く捉えられるものであるといえる。 他方で、適用要件の1つである「平均給与等支給額」の算定に当たっては、「継続雇用者給与等支給額」という概念が登場する。継続雇用者とは、当該適用年度及び当該適用年度開始の日の前日を含む事業年度において給与等の支給を受けた国内雇用者をいい、継続雇用者給与等支給額は、継続雇用者のうち雇用保険の一般被保険者に対して支給する額に限り、一定の継続雇用制度対象者に対して支給された額を除くものとされている(措法42の12の5②八、措令27の12の5⑭)。 要するに継続雇用者とは、前期と当期の2期にわたり給与等の支給対象となった雇用保険一般被保険者(継続雇用制度の適用対象者を除く)ということである。 よって、以下のケースのように、2期にわたり給与等支給対象たる雇用保険一般被保険者となっていない(1期しか支給対象になっていない)者については、平均給与等支給額の算定対象となる継続雇用者には含まれないこととなる。 継続雇用者の範囲から除外される「一定の継続雇用制度対象者」は、当該法人の就業規則において継続雇用制度を導入している旨の記載があり、かつ、雇用契約書又は賃金台帳のいずれかに当該継続雇用制度に基づき雇用されている者である旨の記載がある場合の当該者をいう(措規20の10)。 継続雇用制度とは、現に雇用している高年齢者(55歳以上)が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて65歳まで雇用する制度をいう(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律9①二)。本制度の適用を受ける上では、引き続き雇用保険の一般被保険者の立場を維持することができるが、65歳を迎えた段階で本制度の適用が終了するとともに、一般被保険者としての資格を喪失する(年齢制限)。 ただし、継続雇用制度の適用を受けている中で企業との別段の合意のもと、65歳を超えても引き続き雇用が維持される状況になったときは、雇用保険の高年齢被保険者(平成29年1月1日以降)の資格を取得することとなる。   3 雇用形態に着目した本税制適用上のポイント 以下では、次の①から⑪の雇用形態ごとに、 について個別に検討することとする。なお冒頭に述べたとおり、説明の都合上、60歳定年制を前提とする。 ① 60歳未満の正社員 ▷適用可否 ⇒ 〇 賃金台帳への記載対象であることから、給与等支給額は所得拡大促進税制の適用対象となる。 ▷適用要件 ⇒ 〇 雇用保険の一般被保険者であることから、継続雇用者給与等支給額の算定対象に含めることとなる。   ② 60歳以上65歳未満の正社員 ▷適用可否 ⇒ 〇 賃金台帳への記載対象であることから、給与等支給額は所得拡大促進税制の適用対象となる。 ▷適用要件 ⇒ △ 雇用保険の一般被保険者であるが、雇用状況によって以下の通り異なる。 なお、事業年度の中途で継続雇用制度の適用対象となった者に対して、同一日に、継続雇用前の給与と継続雇用後の給与をあわせて支給している場合において、法人が継続してその合計額を継続雇用制度対象者に対して支給した給与等としているときには、これを認める(措通42の12の5-5)。   ③ 65歳以上の正社員 ▷適用可否 ⇒ 〇 賃金台帳への記載対象であることから、給与等支給額は所得拡大促進税制の適用対象となる。 ▷適用要件 ⇒ × 雇用保険一般被保険者に該当しない(高年齢被保険者)ため、継続雇用者給与等支給額の算定対象に含めない。   ④ 出向者(出向元法人の取扱い) ▷適用可否 ⇒ 〇 賃金台帳への記載対象であることから、給与等支給額は所得拡大促進税制の適用対象となる。 ただし、出向先法人から支払を受ける給与負担金の額は「他の者から支払を受ける金額」として、給与等支給額から控除する(措通42の12の5-2(2))。 ▷適用要件 ⇒ 〇 雇用保険の一般被保険者であることから、継続雇用者給与等支給額の算定対象に含めることとなる。 ただし、出向先法人から支払を受ける給与負担金の額は「他の者から支払を受ける金額」として、給与等支給額から控除する(措通42の12の5-2(2))。   ⑤ 受入出向者(出向先法人の取扱い) ▷適用可否 ⇒ △ ▷適用要件 ⇒ × 雇用保険は出向元法人で加入しているのが一般的であり、出向先の雇用保険一般被保険者に該当しないため、継続雇用者給与等支給額の算定対象には含めない。     ⑥ 嘱託社員・契約社員 ▷適用可否 ⇒ 〇 賃金台帳への記載対象であることから、給与等支給額は所得拡大促進税制の適用対象となる。 ▷適用要件 ⇒ △ 雇用保険一般被保険者の要件を満たしている場合には、継続雇用者給与等支給額の算定対象に含めることとなる。   ⑦ 派遣社員 ▷適用可否 ⇒ × 労働基準法第108条に定める賃金台帳ではなく、労働者派遣法第42条に定める「派遣先管理台帳」の記載対象となるため、派遣社員は国内雇用者に該当しない。 ▷適用要件 ⇒ × 国内雇用者に該当しない以上、継続雇用者にも該当しない。   ⑧ 外国人社員(国内で勤務する外国人社員) ▷適用可否 ⇒ 〇 賃金台帳への記載対象であることから、給与等支給額は所得拡大促進税制の適用対象となる。 ▷適用要件 ⇒ 〇 雇用保険の一般被保険者であることから、継続雇用者給与等支給額の算定対象に含めることとなる。   ⑨ 海外勤務社員(国外で勤務する日本人社員) ▷適用可否 ⇒ × 国内の事業所に勤務しておらず、国内雇用者の定義を満たしていない。 ▷適用要件 ⇒ × 国内雇用者に該当しない以上、継続雇用者にも該当しない。   ⑩ パート、アルバイト ▷適用可否 ⇒ 〇 賃金台帳への記載対象であることから、給与等支給額は所得拡大促進税制の適用対象となる。 ▷適用要件 ⇒ △ 雇用保険一般被保険者の要件を満たしている場合には、継続雇用者給与等支給額の算定対象に含めることとなる。   ⑪ 日雇い労働者 ▷適用可否 ⇒ 〇 賃金台帳への記載対象であることから、給与等支給額は所得拡大促進税制の適用対象となる。 ▷適用要件 ⇒ × 雇用保険一般被保険者に該当しない(日雇労働被保険者)ため、継続雇用者給与等支給額の算定対象に含めない。   (了)

#No. 227(掲載号)
#鯨岡 健太郎
2017/07/20
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