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「従業員の解雇」をめぐる企業実務とリスク対応 【第3回】「解雇紛争の手続」~解雇紛争はどのように争われるのか~

「従業員の解雇」をめぐる 企業実務とリスク対応 【第3回】 「解雇紛争の手続」 ~解雇紛争はどのように争われるのか~   弁護士 鈴木 郁子   1 はじめに 前回説明したように、解雇の有効・無効をめぐっては、最終的には訴訟において①復職、②バックペイ及び遅延損害金の支払いの有無に帰着することになるが、実務的には、解雇に一旦踏み切ったとしても、それまでの間に、従業員と会社の間に何らかの金銭支払等の合意ができ、解決されるケースが大半である。一度こじれた会社・従業員間の関係が復職により修復することは事実上困難だからである(会社と従業員の解雇の問題はその意味で夫婦の離婚に似ている)。 どのタイミングで、どのような内容の合意をすればよいのか、それとも訴訟も辞さず判決を得た方がよいのかを判断するためには、解雇が一般にどのような手続・経過を経て訴訟による判決に至るのかについて、押さえておく必要がある。   2 交渉段階 (1) 解雇理由書の作成・交付と従業員の疑義の表明 会社が従業員を解雇するにあたっては、会社が解雇通知書等により、従業員に対し解雇の意思表示を行う。 これに対し、従業員が解雇に納得していない場合には、まず、会社に対し解雇理由書の交付を求めるのが通常であるので、会社は、解雇理由書(なお、解雇通知書と解雇理由書は兼ねることができる)を作成しこれを交付する(解雇理由書の作成方法、その他の解雇に必要な手続の説明は【第4回】を予定)。 従業員に解雇への疑義があれば、通常、解雇を争う旨の内容証明等が会社宛てに送られてくるのが一般的である。そして、従業員・会社間での交渉が始まる。 (2) 交渉 交渉では、双方もしくは片方に弁護士がつく場合とつかない場合がある。 従業員側の弁護士は、この時点では、会社の出方を探り、また会社の解雇理由に関する不用意な言動を期待して、従業員のバックで法律相談等の形で助言等は行っていても、表には出てこないことがある点、注意が必要である。   3 労働審判 (1) 労働審判とは 交渉で解決しなかった場合、従業員側は訴訟提起の前に、裁判所に労働審判を申し立てることが多い。 労働審判とは、原則として3回以内の期日(申立てから約3ヶ月程度以内)で、裁判所が事件を審理し、調停(和解)の成立による解決を試み、解決に至らない場合には裁判所(裁判官1名と労働者側・使用者側の委員各1名で構成される労働審判委員会)が審判(一定の判断)を行うという手続である。 これに応じず出席しない場合には、会社側は不利益な判断をされるため、会社側は事実上これに応じざるを得ない。 なお、労働審判においては、訴訟と同様、法を踏まえた主張を行うことが求められるため、弁護士に依頼せずにこれを進めていくことは事実上困難である。 (2) 労働審判の期日と準備について 第1回目の期日までの間に、会社は主張書面や証拠を提出する必要がある。第1回期日は申立てから約40日後に指定され、書面等の提出はその7日~10日前に指定される。 第1回目の期日では、通常、裁判所は、事前に提出された主張書面・証拠等を踏まえ、当事者双方に対し口頭で言い分・事実関係を質問し確認する。その後、評議(労働審判委員会内部での打ち合わせ)を経て、裁判所なりの事件に対する心証を形成し、その心証を元に、従業員・会社の双方に対し調停(和解)を試みる。 このように、裁判所は第1回目の期日で心証をほぼ固めるため、会社は、第1回目の期日までに、訴訟における最終準備書面に近い、すべての会社側の言い分を尽くし従業員側の反論を踏まえた書面(答弁書)や証拠を用意することが必要となる。 会社は1ヶ月程度でその準備を行わなければならないが、その準備のために費やさなければならない時間・作業量は極めて膨大であること(弁護士との数回の打ち合わせのほか相当の調査・作業量がある)は覚悟しておいてほしい。 (3) 調停(和解)・審判、解雇の場合の特殊な要素 前述のとおり、労働審判の期日は原則として3回であるが、第3回目の期日まで至らずに、第1回目や第2回目の期日で調停(和解)が成立することが多い。また、申し立てられたもののうち7割程度が審判に至らず、調停(和解)成立で終わるとのデータがある。 調停(和解)が成立しない場合には審判がなされるが、ここで解雇の場合には注意が必要な点がある。 それは、労働者側が復職を希望しない場合には、裁判所は、事案に照らし解雇の有効・無効を必ずしも判断せずその十分な理由を摘示することなしに、退職の確認と会社に対し一定の金員の支払いを命じる審判ができる、ということである(訴訟ではあくまで解雇の有効・無効を判断する)。 要するに、訴訟で解雇無効との判断がなされる可能性の高い案件でも、従業員が復職を希望しない場合には、裁判所が全体的解決の見地から、少額ではあっても会社に対し一定の金員の支払いを命じることがあるのである(だからこそ、従業員側は、復職を希望せず、解雇無効が微妙な事案については、訴訟ではなく労働審判を申し立てることが多い)。 なお、裁判所が支払いを命じる金員の額(給与の何ヶ月分が相当かという形で議論されることが多い)は、訴訟になった場合の解雇の有効・無効の見通し、解雇の違法性の程度、会社のこれまでの対応、会社が従業員に辞めてもらいたい気持ちの強さ、従業員が会社に復職したい気持ちの強さ、従業員の勤続期間、再就職の容易性、会社・従業員のそれぞれの経済状況、年齢等を総合考慮して判断されているものと思われる。 (4) 異議申立てと訴訟への移行 審判の結果、2週間以内に、当事者の少なくとも一方が異議を申し立てた場合には、訴訟に移行する。   4 仮処分 訴訟による判決を待っていたのでは、従業員の生活が脅かされる可能性がある場合には、従業員により、裁判所に対し賃金の仮払いを求める仮処分の申立てがなされることがある。 従業員が多額の預貯金等を持っており生活に困らないと思われる場合には、仮払いは認められない。   5 訴訟 (1) 訴訟での判断内容 訴訟では前述のように、判決までに和解が成立しない限り、原則として地位確認等請求事件として、裁判所により、解雇の有効・無効、すなわち、地位の確認(復職)・バックペイ及び遅延損害金が認められるか認められないかとの二者択一の判断がなされる。 なお、訴訟まで至ってしまった場合には、解雇から時間が経過し従業員が他社で就労していることも多いので、他社での就労の有無等を確認し、中間利益(中間収入)の主張をすることを忘れないようにしたい(詳細は【第2回】参照)。 (2) 訴訟手続 手続としては、約1ヶ月に1回の期日が開かれ、その都度、当事者双方が交替で主張書面や証拠を提出し、双方の主張が尽きたところで、証人尋問(通常、従業員本人と解雇理由に最も近い立場にある会社関係者)を行い、判決がなされる。 地裁判決(第一審)までは短くとも10ヶ月近くかかり(平均審理期間1年4ヶ月)、これに控訴を経ての高裁判決(第二審)までとなると、地裁への提起から2年程度かかると見込んでおく必要がある。 なお、判決まで至ってしまった場合には、事件名に会社名が付いた上で(「〇〇会社解雇事件」等)、判例誌などの公刊物に掲載されるという信用リスクがある点にも注意が必要である。   6 合意・和解について (1) 合意・和解の時期・内容について 訴訟の判決が確定に至るまで、いつでも、従業員側との話し合いにより、何らかの形で解雇紛争を決着させることは可能である。 しかしながら、合意・和解をするのであれば、できるなら交渉段階で行うことが望ましい。これまで説明したように、労働審判・訴訟の手続的・費用的コストは非常に大きく、この初動対応の如何によって(その対応の判断要素は【第2回】の記述を参照)、当該解雇紛争解決にかかるコストが大きく変わってしまうからである。 筆者も、労働審判や訴訟が申し立てられた後に、会社側から相談や代理人就任の依頼を受けることがあるが、交渉の初期段階から相談をしてくれていれば、ここに至る前にうまく解決できていたはずなのにと思うことも多い。それほど、この交渉段階での対応のあり方は重要であることを心に止めておいていただきたい。 訴訟の手続中においても、和解の話し合いは可能である。しかしながら、解雇無効判決が確実視される案件では、従業員側は、それまでのバックペイ分の支払いは当然の前提として、これに加え、これまでの手続に費やした弁護士費用分、退職と引き替えのプラスα分の支払いがなければ、和解に納得せずに、そのまま判決を求めることが多い。くれぐれも早期に和解することを考えたい。 (2) 合意・和解の条項について 合意・和解の条項については専門的な内容となるため、以下では要点のみ記載する。 ① 復職の合意・和解 復職を内容とする場合には、解雇の撤回、復職日の確認、復職までの賃金等の処理及び復職後の雇用条件等の再確認、その他解決金の支払いがある場合は、これを定めることが多い。 ② 退職の合意・和解 解雇の撤回と合意退職の確認、解決金の支払いがある場合は解決金の支払条項が設けられることが多い。 なお、退職日を解雇日ではなく和解日とすると、それまでの間の賃金(税金・社会保険も含む)の処理の問題が発生し、また、従業員が失業保険の仮給付を受けている場合にはこれを返還しなければならないため、実務上は、解雇日を退職日とする扱いが選択されることが多い。 また、失業保険給付の関係から、従業員自身が、解雇のままもしくは会社都合退職の形にしてほしいと希望することもある。 会社側の希望により守秘義務条項が設けられることもある。   (了)

#No. 173(掲載号)
#鈴木 郁子
2016/06/16

マイナンバーの会社実務Q&A 【第12回】「就業規則の改定⑤(「損害賠償」の条文の改定)」

マイナンバーの会社実務 Q&A 【第12回】 「就業規則の改定⑤(「損害賠償」の条文の改定)」   税理士・社会保険労務士 上前 剛   〈Q〉 当社の「損害賠償」の条文の改定について教えてください。現在の条文は、以下の通りです。   〈A〉 会社が社員に損害賠償を請求することは可能である(民法715条)。マイナンバーが流出した場合の会社の損害として、番号法に規定されている罰則により課される罰金(最大200万円。【第7回】参照)、弁護士費用などが考えられる。 顧客の個人情報が流出した場合と異なり、マイナンバーは社内の人間の個人情報なので、謝罪広告の掲載費用やお詫び状の作成・発送費用、お詫びの品の購入・発送費用などは生じないと考えられる。 とはいえ、会社はマイナンバーを流出させた社員に損害賠償を請求することもありうるのだということを周知し、予防的効果を高めるために条文化しておく。 以上を前提に改定を行う(今回は1パターンのみ)。 〈パターン1〉 第2項に“社員がマイナンバーを他にもらしたり、不正アクセス行為などによりマイナンバーを取得したことにより会社に損害を与えた場合は、損害の一部または全部を賠償させることがある。”を追加した。 (了)

#No. 173(掲載号)
#上前 剛
2016/06/16

〔誤解しやすい〕各種法人の法制度と税務・会計上の留意点 【第5回】「社会福祉法人(中編)」

〔誤解しやすい〕 各種法人の法制度と 税務・会計上の留意点 【第5回】 「社会福祉法人(中編)」   司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎 公認会計士・税理士 濱田 康宏   ▷〔前編〕はこちら ▷ 税務・会計について 2 社会福祉法人固有の注意点を確認する (1) 会計 ① 社会福祉法人会計基準の改正の歴史と思想 社会福祉法人は、過去に何度か会計基準の変遷があった。かつては、収支計算だけで損益計算の思想がなかったことから、企業会計における損益計算書に相当する事業活動計算書が組み込まれた平成12年度が、一番大きな改正であろう。 そして、その後、会計処理基準の一本化と、当時既に公益法人会計基準等で導入されていた最新の企業会計手法である時価会計等の導入を目的として、社会福祉法人会計基準の大幅な改正が行われている。 既にこの社会福祉法人会計基準は、平成28年3月決算までに各法人で導入することとされているが、社会福祉法人全体の会計報告を目的とした基準であることが最大の特色といえるだろう。 ② 社会福祉法人会計基準の大きな特色 社会福祉法人会計基準は、基本的に、各法人の裁量の余地を極力減らしているというのが、大きな特色である。良く言えば、これに従えばよいといえるし、悪く言えば、各法人の個性を会計処理で反映する余地のないガチガチの基準だともいえる。 これは、社会福祉法人が、厚生労働省の監督あるいは各市町村などの監督を常に受けるべき存在であるということが、影響している。社会福祉法人の財源は、寄附金や補助金・助成金などが多く、その使途の適正性が常に問われることになるものばかりである。 さらに、税制上の優遇などもあるし、社会福祉法人しか開設できない施設もあるので、不正を招くインセンティブが高く、残念ながら、不正事例が各地で生じてきた歴史がある。 有名な事例で言えば、特養施設の建築資金のキックバックであり、近年、朝日新聞などで社会福祉法人の不正について報道の特集を組んでいたのは、記憶に新しいところだろう(社会福祉法人の私物化(2014年06月02日 朝刊)など)。加えて、本稿作成中にも、報道事例があった。 このような背景から、社会福祉法人会計基準は、監督官庁の都合を意識したものになっているといえる。そもそも、社会福祉法により、決算期が3月決算しか設定できないことも、この点を裏付けている。 また、もう1つ言えることは、社会福祉関係の費用削減のため、国としては、無駄遣いがないかを、全国的な施設を横断する形で比較したいとのニーズがある。そのためにも、標準化して国あるいは厚労省としてデータを採取しやすくすることが、当然に予定されているということである。 厚労省は、取扱いについて、通知やQ&Aなどで細かく指示を出しているので、実務では、これらを熟読することが避けられないと考えてよいだろう。 ③ 財務諸表体系における注意事項 社会福祉法人会計基準では、他の非営利法人と若干異なる、財務諸表体系における注意事項がある。 [注意1] 基本金と国庫補助金等特別積立金は純資産の部だが、繰入が特別損失 社会福祉法人の貸借対照表の純資産は、基本金・積立金・次期繰越活動増減差額からなる。 次期繰越活動増減差額は、企業会計でいう損益計算書に相当する事業活動計算書と繋がるので、理解は容易だろう。 しかし、純資産に位置づけられる基本金に組み入れるべき財産の寄贈を受けた場合、これを特別収益として受入れ処理した上で、基本金組入額を特別費用処理する(注解12)。純資産の次期繰越活動増減差額から、同じ純資産の基本金に移動させるのに、事業活動計算書を通すわけである。 ただ、これは企業会計における費用収益の基本概念、つまり、資産負債の増減変動原因が費用収益であるとの考え方とは矛盾する。厚労省の監督のしやすいようにしているとはいえ、財務諸表体系としては、違和感の残るものとなっている。 同様に、積立金のうち国庫補助金等特別積立金への積立てについても、同じ純資産項目でありながら、国庫補助金受入れ時に特別収益計上した上で、積立時に特別費用処理する(注解11)。 これらを敢えて位置づけるとすれば、基本金や国庫補助金等特別積立金については、純資産の部にありながらも、実は負債に準じてとらえられている可能性がある。この点を裏付けるのが、次の国庫補助金等特別積立金の取崩し処理である。 [注意2] 国庫補助金等特別積立金の毎期取崩し処理 国庫補助金等特別積立金については、取得した減価償却資産の減価償却費に対応する額だけを、毎期、取崩し処理して、減価償却費の控除項目とすることとされている(注解10)。 つまり、補助金で助成を受けた部分だけ、減価償却費が毎期圧縮される処理になるわけである。いわば、補助金は、預り金であり、それを毎期必要な分だけ助成額として振替して受けたのと同じという処理である。 国庫補助金等特別積立金を長期前受収益として位置づければ、これ自体は、理論的な処理と考えられる。ただし、前述のように、この科目は、負債ではなく、純資産の部に位置づけられていることに、違和感が残る。 [注意3] 資金収支計算書の資金定義 財務諸表としてのキャッシュフロー計算書と異なり、社会福祉法人の資金収支計算書の資金定義は、「流動資産-流動負債」となっている。これは、キャッシュフロー計算書の体系化前において、会計慣行として広まっていた資金収支計算書では流動資産-流動負債で定義されていたことによる。予算設定手段としても、実務で定着しているため、これを敢えて変更する必要はないとされたものであろう。 その代わり、資金収支計算書は、内部統制の管理手段と位置づけられ、財務諸表の体系外に置かれた。予算管理などのために作成はされるものの、外部への開示報告の対象とはされていないとの意味である。とはいえ、財務諸表との整合性、特に事業活動計算書との繋がりは実務上の要確認事項となっている。 なお、一定規模以上の法人は、収支計算書とは別途、制度としてのキャッシュフロー計算書の作成が義務付けられることになっている。 [注意4] 拠点区分・事業区分・サービス区分 社会福祉法人の会計では、法人全体の会計以外に、拠点区分・事業区分・サービス区分という3つの区分概念がある。 社会福祉法人は、社会福祉法で認められた事業(社会福祉事業・公益事業・収益事業)以外の事業を行うことができない。仮に収益事業に該当する場合であれば、所轄庁への相談が必要になる。例えば、太陽光発電を社会福祉法人が行うことができるかについては、下記参照されたい。 このように、3つの事業のどれに該当するのか、区別を求めるのが「事業区分」であり、いわば当然の区分である。 その上で、「拠点区分」は、物理的な事業所を中心とした概念であり、一体として運営される施設、事業所又は事務所を1つの拠点区分とする。その拠点区分に、社会福祉事業・公益事業・収益事業という各種の事業がぶら下がる格好になる。 ただし、例外が2つ設けられている。まず1つめの例外は、一体運営している小規模な公益事業については、わざわざ拠点区分を分けることなく、1つの拠点区分に含めてよいとされている点である(運用指針4)。いわゆるサテライト型の施設を開設しているような事例で、人員の配置など一体運営されていることを考えれば当然といえるが、収益事業は、この例外の対象となっていないので、少額でも、別の拠点区分として経理する必要がある。 2つめの例外は、保護施設・養護老人ホーム・特別養護老人ホームなど、指定された12の施設については、それぞれの施設ごとを独立した拠点区分とするとされている点である。仮に養護老人ホームを2つ設けるのであれば、それぞれが別々の拠点区分となる。 それぞれの施設を管理あるいは監督するとの視点で言えば、当然だが、会計の手間が大きいことに加えて、会計システムの対応の問題も視野に入れておく必要がある。 実務的には、共通費用の按分の問題もあるため、複数の拠点区分処理する際には、事前の方針検討が欠かせないといえる。 そして、上記の拠点区分・事業区分という社会福祉法に基づく管理とは別の法令の要請により、「サービス区分」の概念が求められる。介護保険サービスと障害福祉サービス等について、その他のサービスと区分した会計処理が必要になるからである。 ただ、実際には、介護保険サービスの中で、さらに事業を区分するので、かつての指導指針ではセグメントと表現されていた。具体的には、特養や通所介護などの事業区分である。 【事業区分・拠点区分・サービス区分の例示】 介護保険サービス・障害福祉サービスでは、拠点区分事業活動明細書の作成が求められ、保育所運営費、措置費事業による事業実施拠点では、拠点分別資金収支表の作成が求められる。 これらの処理以外でも、社会福祉法人は、独特の処理内容が多くあるため、先述のように厚生労働省の通知を確認されることをお勧めしたい。 なお、このたび、平成28年3月31日付けで「社会福祉法人会計基準」(平成28年厚生労働省令第79号)が制定され、新たに「社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について」(平成28年3月31日厚生労働省課長連名通知)が発出された。さらに、「社会福祉法人会計基準の制定に伴う会計処理等に関する運用上の留意事項について」(平成28年3月31日厚生労働省課長連名通知)も出されている。 *  *  * 次回は税務における注意点を解説する。 (了)

#No. 173(掲載号)
#北詰 健太郎、濱田 康宏
2016/06/16

被災したクライアント企業への実務支援のポイント〔経営面のアドバイス〕 【第1回】「復旧予定時期の設定」

被災したクライアント企業への 実務支援のポイント 〔経営面のアドバイス〕 【第1回】 「復旧予定時期の設定」   公認会計士・税理士 中谷 敏久     1 最優先でなすべきは復旧予定時期の設定 災害直後のパニックの中で非常に難しいかもしれないが、経営者として最優先でなすべきことは、「復旧予定時期の設定」である。 復旧予定時期が3ヶ月後であるならば当然3ヶ月分の固定費を賄うだけの運転資金が必要となるであろうし、顧客に対する商品サービスの提供も3ヶ月間止まることになる。運転資金が確保され、また顧客も3ヶ月間の供給停止を了承するのであれば問題ないが、そうでない場合は会社の存亡を左右することとなる。 復旧予定時期の設定がいい加減であったがために、結果的に従業員への給料が支払えなくなった、あるいは顧客の商品サービスの提供時期が延期されたということになれば、従業員が退職しあるいは得意先との取引が中止になるかもしれない。 復興復旧のための融資制度を利用し事務所工場を再建したものの従業員を確保できず、また顧客からの受注が戻らないまま多額の借金だけが残ったということになれば、目も当てられないのである。   2 正確な復旧予定時期を設定するための情報収集 では、正確な復旧予定時期を設定するために必要な情報とはいったい何か。 欠くことのできないのは である。 これらの状況把握を正確にできるか否かが、以後の復旧時期の設定に大きく影響する。 各項目のポイントは以下の通り。   3 経営者としての事業継続の意思を示す これらの状況を正確に把握し、復旧の制約要因となるものを特定することによって、目標とする復旧予定時期を設定する。そして、復旧予定時期を得意先や従業員に伝えることによって、経営者としての事業継続の意思を明確にしなければならない。 ただし、復旧予定時期があまりにも先になることが見込まれる場合、あるいは復旧の目途が立たない場合には、取引先との契約を一旦解消し、従業員を解雇することが経営者として正しい判断になることもあり得ることを認識しておく必要がある(この点については【第3回】で紹介する)。 (了)

#No. 173(掲載号)
#中谷 敏久
2016/06/16

プロフェッションジャーナル No.172が公開されました!~今週のお薦め記事~

2016年6月9日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.172を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2016/06/09

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第42回】「法人税法にいう『法人』概念(その6)」~株主集合体説について考える~

酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第42回】 「法人税法にいう『法人』概念(その6)」 ~株主集合体説について考える~   中央大学商学部教授・法学博士 酒井 克彦 6 民法上の「法人」概念と租税法上の「法人」 (1) 第二のアプローチによる検討 ここまで、法人該当性を検討するに当たっては、2つのアプローチが考えられることを示した上で、LLC事件、ガーンジー島事件を素材に議論を進めてきた。すなわち、 の2つのアプローチである。 上記の検討からすれば、第二のアプローチを採用することには一定の説得性があることが判然とする。 したがって、LPS事件最高裁平成27年7月17日第二小法廷判決が第二のアプローチを採用したことは妥当といえよう。 しかしながら、ここで改めて、租税法上の「法人」概念について再確認しておく必要があるのではなかろうか。なぜなら、第二のアプローチは、概念を単なる記号としてみるのではなく、その実質的内容にまで踏み込んで解釈論を展開する構成であるため、我が国租税法が採用する「法人」概念の実質的意味内容が明らかにならない以上、かかるアプローチを展開することはできないと言わざるを得ないからである。 (2) 民法上の法人概念 我が国の租税法がいかなる法人観を有しているかという点については、すでにこの連載の【第37回】において述べたところであるが、通説はいわゆる株主集合体説という考え方に立つ。 他方で、民法の学説上は法人を法律による組織体とみる組織体説が通説であると思われる。すなわち、この立場は、法人実在説的な考え方であり、我が国の租税法が支持する法人擬制説的な立場とはその考え方を異にする。 このように、「法人」概念の実質にまで踏み込んで考えた場合に、果たして民法の概念を借用しているからといって、同義に理解することが妥当なのであろうか。再説になるが、第一のアプローチを採用しているのであれば、それは可能であるとしても、第二のアプローチを採用するとした場合、そこには理論上の障壁が立ちはだかっているのではなかろうか。   結びに代えて―米国の「法人」概念と我が国租税法上の「法人」概念 我が国租税法上の「法人」概念は、株主集合体説により捉えており、所得税法92条の配当控除において法人税と所得税の二重課税を排除し、法人税法23条において、原則として、受取配当益金不算入制度を採用することによって、法人の利益配当における多重課税の問題を克服している(【第37回】参照)。 この考え方の背後には、法人税を所得税の前払いと位置付け、所得税法92条の二重課税の計算はドイツ租税法などにおけるいわゆるインピュテーション方式に合致するような計算が理論的には採用されているということを確認した。これは、法人を法人実在説により捉える米国租税法の考え方とは大きく異なるものである。 仮に、米国租税法における「法人」概念に従って、民法上の「外国法人」を理解し、民法上のその法人概念を租税法上の「外国法人」概念と理解するのであれば、第二のアプローチを採用した場合にさらなる問題が惹起されることになる。 第二のアプローチを採用するとしても、米国の「法人」概念の理解に従って、我が国租税法上の「法人」概念を考えることには十分に慎重でなければならないのはいうまでもない。 ましてや、米国における「法人」概念の理解に従うとした場合に、米国における「租税法上の法人」概念を検討の要素にすることは妥当ではないであろう。 なぜならば、我が国租税法上の概念を検討するに当たって、借用概念論の統一説を接着剤として我が国私法上の概念理解を参照することは理論的に説明がつくとしても、我が国私法上の概念を理解するために、米国租税法上の概念を根拠にあるいは参照して議論することは理論的に破たんしているといわざるを得ないからである。 したがって、米国における「租税法上の法人」概念は、議論の俎上にのせるべきではないであろう。 そもそも、我が国民法上の「外国法人」を検討するに当たっては、米国私法上の法人概念を念頭におかなければならないことはいうまでもない。なぜなら、民法上の「外国法人」概念を考えるに当たって、外国の私法上の「法人」概念を念頭におくのは当然であるからである。 そこで、改めて問題として残されているのは、上図にいうところの②の部分であるということが分かる。 この点は、LPS事件最高裁判決においても残された課題であるというべきであろう。 もっとも、上記最高裁は、このような観点ではなく、直接、米国におけるLPSが権利義務の主体となり得るかどうかという観点で論じており、米国私法上の法人該当性の議論(上図②の問題)に触れることはしていない。 本連載の【第39回】においてみたように、最高裁は、当該LPSが「法人該当性の実質的根拠」となる「権利義務の帰属主体」とされているか否かについて、州LPS法を根拠に議論を展開している。 このような点から、最高裁は、次のように説示した。 このように、②の問題に触れずに解決の道筋をつけた判断であったとみることもできるのである。 (了)

#No. 172(掲載号)
#酒井 克彦
2016/06/09

延滞税の除算期間に係る計算期間の特例の見直しについて~最高裁判決を受けた平成28年度税制改正事項~

延滞税の除算期間に係る計算期間の特例の見直しについて ~最高裁判決を受けた平成28年度税制改正事項~   税理士 佐藤 善恵   はじめに 延滞税は、法定納期限までに国税が完納されなかったときに、未納額及び遅延期間に応じて課されるものであるが(通法60)、長期間に遡って更正処分がされた場合等は、延滞税の計算期間から一定期間を除くこととされている(通法61)。 これが、いわゆる「除算期間」(計算期間の特例)である。 この除算期間は、税務調査による更正・決定等の時期が税務官庁の事務都合で左右されることから、それによる各納税者の延滞税の負担の違いを救済するといった趣旨によるものである。 平成28年度税制改正では、この除算期間について新たな条項が追加され見直しが行われることとなった(通法61②)。 なお、この改正は、最高裁平成26年12月12日判決が契機となったものであり、平成29年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税について適用される。 本稿ではこの改正内容について解説を行う。   1 従前からの計算期間の特例 修正申告書の提出又は更正があった場合、偽りその他不正の行為に係る部分等を除き、次の期間が延滞税の計算期間から除かれる(通法61①)。したがって、重加算税が課された場合等は、この特例の適用はない(参考:昭和51年6月10日徴管2-35外「延滞税の計算期間の特例規定の取扱いについて」)。   2 平成28年度税制改正により新設された計算期間の特例 期限内申告書又は期限後申告書が提出された後(当初申告後)に減額更正があり、さらに、その後に増額更正や修正申告書の提出があったとき、除算期間と、その適用を受ける金額に関する規定が新設された。 〈イメージ図〉 (1) 延滞税を課さない期間について ① 減額更正が「職権」による場合 当初申告に係る税額の納付日(法定納期限前のときは法定納期限)の翌日から減額更正の日までの期間(通法61②一)と、減額更正の日から増額更正等の日までの期間(通法61②二)。 ② 減額更正が「更正の請求」による場合 上記①の★の期間について、その起算点が減額更正の翌日から1年を経過する日となる(通法61②二括弧書)。つまり、除算期間が上記①よりも1年短くなる。 (2) 新設された特例の適用を受ける(延滞税を課さない)部分 新設された特例の適用を受ける部分の金額については、国税通則法施行令第26条に規定された(通令26④)。 例えば下図のように、当初申告に係る税額150、その後、減額更正により70の税額が減額され(減額後80)、さらに140の増額更正がされた場合(増額後220)、(a)更正等により納付すべき税額(140)と、(b)当初申告に係る税額(150)から減額更正後の税額(80)を控除した金額(70)を比べて、少ない方の金額(70)は、延滞税が課されないこととなる。 (了)

#No. 172(掲載号)
#佐藤 善恵
2016/06/09

さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第15回】「弁護士夫婦事件」~最判平成16年11月2日(集民215号517頁)~

さっと読める! 実務必須の [重要税務判例] 【第15回】 「弁護士夫婦事件」 ~最判平成16年11月2日(集民215号517頁)~   弁護士 菊田 雅裕   (了)

#No. 172(掲載号)
#菊田 雅裕
2016/06/09

包括的租税回避防止規定の理論と解釈 【第16回】「不当の意味と課税要件明確主義」

包括的租税回避防止規定の 理論と解釈 【第16回】 「不当の意味と課税要件明確主義」   公認会計士 佐藤 信祐   前回は、明治物産株式会社事件(最高裁昭和33年5月29日判決)について解説を行った。矢内一好著『一般否認規定と租税回避判例の各国比較』(財経詳報社、平成27年)122-123頁では、争点8として租税法律主義を支持する判決として昭和51年7月20日判決が紹介されているが、本判決は本連載の【第11回】で紹介した。 そのため、本稿では、争点9として紹介されている最高裁昭和53年4月21日判決について解説を行うこととする。 11 不当の意味と課税要件明確主義(最高裁昭和53年4月21日判決・TAINSコード:Z101-4179) (1) 第一審(釧路地裁昭和49年4月23日判決・TAINSコード:Z075-3313) (2) 控訴審(札幌高裁昭和51年1月13日判決・TAINSコード:Z087-3691) 控訴審も、第一審の判断を踏襲しているが、控訴人(納税者)が と主張したことから、 と判示した。 (3) 裁判所の判断 最高裁は、原審の判断をそのまま踏襲している。 (4) 評釈 本事件が、同族会社等の行為計算の否認の事件であったのかは、第一審における被告の主張として、「これを容認すれば法人税の負担を不当に減少させる結果となる」としていることから、一応はその対象にはなっていたのかもしれない。そのため、控訴審以降では、判決文に「法人税法第132条」という文言が出てくるようになる。 そして、事件そのものを見てみると、納税者が自ら結んだ賃貸借契約を通謀虚偽表示であるとしたり、利益相反取引であると主張したりするなど、その主張がすべて無理のある内容となっている。それが故に、第一審から上告審まで国側が勝訴しているが、当然のことであると思われる。 強いて言えば、法人税法132条が租税法律主義を定める憲法84条に違反するものかどうかが争われたという意味では意義のある事件であったのかもしれない。同族会社等の行為計算の否認が租税法律主義の1つである課税要件明確主義に反するのか否かは議論のあるところであり、いずれ本連載でも明らかにしていきたい。 しかしながら、本事件は同族会社等の行為計算の否認により争われるべき事件ではなかったように思える。同族会社等の行為計算の否認は、個別規定が存在しない場合にのみ適用される規定であるのに対し、現在とは法体系が異なるとはいえ、借地権課税を個別否認規定で行うことができなかったのかは疑問である。現在の法体系の下では、本事件は、同族会社等の行為計算の否認によらずに、個別否認規定で対応されるべき事件であったと考えられる。 次回では、東京高裁昭和49年6月17日判決について解説を行う予定である。 (了)

#No. 172(掲載号)
#佐藤 信祐
2016/06/09

〈Q&A〉印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第29回】「請負に関する契約書⑤(バナー広告掲載契約書)」

〈Q&A〉 印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第29回】 「請負に関する契約書⑤(バナー広告掲載契約書)」   税理士・行政書士・AFP 山端 美德   当社のホームページ上にバナー広告を掲載することを受託した際に、「バナー広告掲載契約書」を作成していますが、課税文書に該当しますか。 また、課税文書に該当した場合、印紙税額はいくらになりますか。   バナー広告掲載契約は、広告という仕事を行い、それに対して報酬を支払う契約であるため、第2号文書(請負関する契約書)に該当する。 記載金額は計算することができ1,100,000円、印紙税額は400円となる。   [検討1] 広告契約とは 広告契約は、一定の期間における広告スライド映写、新聞広告またはコマーシャル放送等をすることを約し、広告主がこれに対して報酬を支払う契約であることから、請負契約に該当する。 インターネット上で行われる広告においては、バナー広告をはじめ、メールマガジンあるいは音声や動画などを取り入れた広告などさまざまな形態があるが、このような広告も請負契約に該当する。 [検討2] 記載金額は 事例の文書には広告掲載期間と広告掲載料金の記載があることにより、記載金額が計算できる。   ▷ まとめ   (了)

#No. 172(掲載号)
#山端 美德
2016/06/09
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