山本守之の法人税“一刀両断” 【第21回】「土地と共に取得してから1年以内に取り壊した建物」
筆者:山本 守之
文字サイズ
- 中
- 大
- 特
山本守之の
法人税 “一刀両断”
【第21回】
「土地と共に取得してから1年以内に取り壊した建物」
税理士 山本 守之
〔事 例〕
A社は都内に数件の旅館、ホテルを経営していますが、昨年6月に甲駅から徒歩3分の所にある中古の木造旅館用建物とその敷地を取得しました。
取得した段階では、売主は旅館として経営しており、相当数の顧客がありました。A社としては取得後も旅館として経営し続けるつもりでしたが、昨年12月頃より顧客の足がパタリと止まってしまいました。
その事情を調べてみたところ、近くに鉄筋コンクリート造りのビジネスホテルが新築開業し、顧客をとられてしまったのです。
(注) 売主はこのような事情を知っていて売却したのでしょうか。A社はこのような事情を知らなかったのです。
A社は、早速取締役会を開催し、このまま経営すれば赤字が累積することになるので本年3月に木造の建物を取り壊し、新たに鉄筋コンクリート造りのビジネスホテルを建築することとし、旧木造建築の帳簿価額1,300万円を除却損として計上しました。
〔税務調査とその結果〕
A社は本年5月に税務調査を受け、建物除却損1,300万円は否認され、土地の取得価額に計上するように指導を受けました。
この場合に調査官が適用したのは、次のような通達(法人税基本通達7-3-6)でした。
(土地とともに取得した建物等の取壊費等)
7-3-6 法人が建物等の存する土地(借地権を含む。以下7-3-6において同じ。)を建物等とともに取得した場合又は自己の有する土地の上に存する借地人の建物等を取得した場合において、その取得後おおむね1年以内に当該建物等の取壊しに着手する等、当初からその建物等を取り壊して土地を利用する目的であることが明らかであると認められるときは、当該建物等の取壊しの時における帳簿価額及び取壊費用の合計額(廃材等の処分によって得た金額がある場合は、当該金額を控除した金額)は、当該土地の取得価額に算入する。
この通達に関する解説(「法人税基本通達逐条解説」(国税庁課税部法人課税課課長補佐、税務研究会出版局))では次のように述べています。
○記事全文をご覧いただくには、プレミアム会員としてのログインが必要です。
○プレミアム会員の方は下記ボタンからログインしてください。

○プレミアム会員のご登録がお済みでない方は、下記ボタンから「プレミアム会員」を選択の上、お手続きください。
○一般会員の方は、下記ボタンよりプレミアム会員への移行手続きができます。
○非会員の皆さまにも、期間限定で閲覧していただける記事がございます(ログイン不要です)。
こちらからご覧ください。
連載目次
山本守之の法人税“一刀両断”
▷2018年(第43回~54回)
▷2017年(第31回~42回)
▷2016年(第18回~30回)
- 【第18回】 実効税率はどのような経過で引き下げられたか
- 【第19回】 消費税の軽減税率を検証する
- 【第20回】 寄附金の課税要件を考える
- 【第21回】 土地と共に取得してから1年以内に取り壊した建物
- 【第22回】 訴訟のわかれ道~認知症と損益通算
- 【第23回】 税執行における洒落
- 【第24回】 租税法の解釈①-租税法律主義とその問題点-
- 【第25回】 租税法の解釈②-通達の読み方とその問題点(貸倒損失を事例として)-
- 【第26回】 租税法の解釈③-税務形式基準と事実認定-
- 【第27回】 課税要件法定主義を考える
- 【第28回】 売り上げの計上時期はどうなっているか
- 【第29回】 取引別にみた収益の認識基準①
- 【第30回】 取引別にみた収益の認識基準②
▷2015年(第7回~17回)
筆者紹介
山本 守之
(やまもと・もりゆき)
税理士。現在、日本税務会計学会顧問、租税訴訟学会副会長(研究・提言担当)、税務会計研究学会理事、日本租税理論学会理事を務め、全国各地において講演活動を行うとともに、千葉商科大学大学院(政策研究科、博士課程)でプロジェクト・アドバイザー(専門分野の高度な学術研究、高度な実務経験を持つ有識者)として租税政策論の教鞭をとっている。研究のためOECD、EU、海外諸国の財務省、国税庁等を約30年にわたり歴訪。2020年11月29日、逝去。
【著書】
・『時事税談-人間の感性から税をみつめる』(清文社)
・『役員給与税制の問題点-規定・判例・執行面からの検討』(中央経済社)
・『検証 税法上の不確定概念 (新版)』(中央経済社)
・『裁決事例(全部取消)による役員給与・寄附金・交際費・貸倒れ・資本的支出と修繕費』(財経詳報社)
・『法人税申告の実務全書』監修(日本実業出版社)
・『法人税の理論と実務』(中央経済社)
・『体系法人税法』(税務経理協会)
・『税金力-時代とともに「税」を読む』(中央経済社)
・『租税法の基礎理論』(税務経理協会)
他、多数
Profession Journal関連記事
関連書籍
-
時事税談
山本守之 著
定価:3,300円(税込)
会員価格:2,970円(税込)
-
不動産オーナー・税理士のための
〔不動産×会社活用〕相続対策の方程式
税理士 山本和義 監修 弁護士 東信吾、税理士 安東信裕、税理士 石川勝彦、税理士 奥西陽子、 税理士 新谷達也、税理士 塚本和美、 税理士 野田暢之、社会保険労務士 坂東嘉子、税理士 渡辺秀俊 著
定価:3,080円(税込)
会員価格:2,772円(税込)
-
令和3年3月申告用
賃貸住宅オーナーのための確定申告節税ガイド
税理士 植木保雄 著
定価:1,760円(税込)
会員価格:1,584円(税込)
-
記載例でわかる!
不動産鑑定評価書を読みこなすための基礎知識
不動産鑑定士 黒沢泰 著
定価:3,520円(税込)
会員価格:3,168円(税込)
-
令和2年11月改訂
資産税の取扱いと申告の手引
植山隆幸、坪尾直美 編
定価:5,280円(税込)
会員価格:4,752円(税込)
-
相続専門税理士法人が実践する
相続税申告書最終チェックの視点
税理士法人チェスター 公認会計士・税理士 大橋誠一 著
定価:3,960円(税込)
会員価格:3,564円(税込)
-
令和2年11月改訂
減価償却実務問答集
大西啓之 編
定価:3,300円(税込)
会員価格:2,970円(税込)
-
令和2年10月改訂
不動産の評価・権利調整と税務
税理士・不動産鑑定士 鵜野和夫 著
定価:5,500円(税込)
会員価格:4,950円(税込)
-
令和2年10月改訂
資産税実務問答集
植山隆幸、坪尾直美 編
定価:3,740円(税込)
会員価格:3,366円(税込)
-
第4版/Q&A
経理担当者のための 税務知識のポイント
税理士 松田修 著
定価:2,640円(税込)
会員価格:2,376円(税込)