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中小企業事業主のための年金構築のポイント 【第16回】「遺族給付(2)」-遺族厚生年金-

中小企業事業主のための 年金構築のポイント 【第16回】 「遺族給付(2)」 -遺族厚生年金-   特定社会保険労務士 佐竹 康男   厚生年金保険に加入していた人やすでに老齢厚生年金を受給している人が死亡したときには、一定の遺族に遺族厚生年金が支給される。したがって、厚生年金保険に加入していた法人の役員等もその対象になる。   1 遺族厚生年金を受給するための要件 遺族厚生年金は、厚生年金保険の被保険者又は被保険者であった人が次のいずれかに該当する場合に、一定の要件を満たすその人の配偶者、子、父母、孫、祖父母に支給される。 ただし、上記①から③に該当するときは、国民年金の遺族基礎年金と同様に「一定の保険料の納付」が必要である(前回参照)。   2 遺族の範囲 遺族厚生年金を受給することができる遺族は、被保険者又は被保険者であった人の死亡当時、その人によって生計を維持(※)されていた配偶者、子、父母、孫、祖父母であり、妻以外の人については、次の要件に該当していることが必要である。 (※) 「生計維持関係」については、前回参照。 なお、妻が夫の死亡時に30歳未満で子がいない場合、遺族厚生年金は、その受給権が発生したときから5年間しか受給できない。 〈事例1〉 10年間厚生年金保険に加入していた夫が死亡したため、上記1の①の要件に該当する。また保険料の納付要件も満たす。 妻は専業主婦であるため、生計維持関係はある。 したがって妻に遺族厚生年金が支給される。   3 遺族の優先順位 遺族の優先順位は、①配偶者と子、②父母、③孫、④祖父母となっている。 先順位者が受給権を取得した場合は、次順位者には遺族厚生年金は支給されない。 配偶者と子は、遺族厚生年金を受ける順位は同順位であるが、配偶者は子に優先して支給される。 〈事例2〉 妻と子は、遺族の優先順位が同じなので、両方に遺族厚生年金を受ける権利が発生するが、妻は子に優先して支給を受けることができるので、妻に遺族厚生年金が支給される。 また、厚生年金保険に加入している夫は同時に国民年金にも加入していることになるので、妻には子がいるため、遺族基礎年金も支給される(前回参照)。 〈事例3〉 妻が死亡した場合であったとしても、夫に遺族厚生年金が支給される場合がある。   4 遺族厚生年金の年金額 遺族厚生年金の年金額は、老齢厚生年金の計算に用いる報酬比例部分(平均標準報酬額×一定率×加入期間の月数)の4分の3に相当する額である。 被保険者が死亡したときは、死亡時までの加入期間に応じて支給されるが、その加入期間が300月に満たないときは300月として計算する(老齢厚生年金の額については、【第7回】及び【第9回】を参照)。   5 中高齢の寡婦加算(遺族厚生年金に加算されるもの) 一定の要件を満たした妻には、遺族厚生年金に中高齢の寡婦加算額が加算される。 ① 中高齢の寡婦加算が加算される妻 妻が遺族厚生年金の受給権を取得したとき、次のいずれかに該当するときに加算される。 ただし、遺族基礎年金を受けることができる間は、加算されない。 ② 中高齢の寡婦加算額 定額で、585,100円(27年度価額)が加算される。 〈事例4〉 遺族厚生年金として夫の報酬比例部分の年金の4分の3に相当する額に加え、妻は上記①の(イ)に該当することから、中高齢の寡婦加算として585,100円が加算される。 ただし、妻が40歳に達した時点では子が未だ18歳未満で、妻は遺族基礎年金を受給しているため中高齢の寡婦加算は加算されず、子が18歳に達したときから妻が65歳に達するまでの期間、加算されることとなる。   6 経過的寡婦加算 中高齢の寡婦加算は、妻が65歳になると支給されなくなる。 65歳以後は、経過的寡婦加算として、妻が昭和31年4月1日以前生まれであるときは、妻の生年月日に応じて、585,100円から19,500円が支給される。   《おさらいQ&A》 (了)

#No. 143(掲載号)
#佐竹 康男
2015/11/05

養子縁組を使った相続対策と法規制・手続のポイント 【第11回】「養子縁組の取消し」

養子縁組を使った相続対策と 法規制・手続のポイント 【第11回】 「養子縁組の取消し」   弁護士・税理士 米倉 裕樹   [1] はじめに 養子縁組が取り消される原因としては、 が法定されており、養子縁組が取り消されるのは、これらの場合に限られる(民803)。 これらの多くは形式的に判断できる場合が多いため、通常は届出の時点で受理されることは少ないものの、誤って受理された場合には、一定の要件のもとで取り消すことができる。なお、縁組の無効については【第1回】を参照されたい。   [2] 縁組取消しの方法 縁組の届出は、受理されると有効なものとして扱われ、養子縁組の取消しを確認する審判、または養子縁組取消しの訴えが確定するまでは、何人もその効力を争うことができない。この点、縁組意思を欠くような無効な養子縁組は、訴訟や審判で確定されなくとも当然に無効であるのとは大きく異なる。 縁組の取消しを請求する者は、養子縁組取消しの訴えを提起する前に、家庭裁判所に調停の申立てを行わなければならない(家法257①・調停前置主義)。調停において、当事者間で取消しに関する合意が成立し、かつ、この合意が正当と認められる場合には、養子縁組の取消しを確認する審判が行われる(家法277①)。 調停で合意が成立しない場合、または審判に対して2週間以内に異議の申立てがなされた場合には、当事者が普通裁判籍を有する地(被告の住所地等)、またはその死亡の時に有していた地を管轄する家庭裁判所に養子縁組取消しの訴えを提起することとなる(人訴2一・4①)。   [3] 各取消原因における取消権者・取消期間 [1]で挙げた養子縁組が取り消される原因ごとに、その取消権者や取消期間等をまとめると以下のとおりである。   [4] 取消しの効果 養子縁組が取り消されると、その効果は将来に向かってのみ生じ、遡及効は認められない(民808①・748①)。すなわち、縁組が初めからなかったことになるのではなく、離縁のように、縁組が取り消されたときから縁組関係が消滅することとなる。 縁組取消しの効果として遡及効が認められない場合には、取消しが確定するまでに形成されていた法律関係はすべて有効であり、その後もその効力を争うことはできない。したがって、財産上の効果についても、縁組取消しに伴う清算を行う必要はない、というのが論理的帰結となるが、財産上の効果については、不当利得の返還に関する規定が準用されている(民808①・748②③)。 すなわち、過去になされた法律関係は有効であるとしながらも、当事者が縁組よって得た財産については、縁組のときに取消原因があることを知らなかった当事者は、その得た財産のうち現に利益を受けている限度で返還すれば足り(民808①・748②)、縁組のときに取消原因があることを知っていた当事者は、その得た財産の全部を返還しなければならず、さらに相手方が善意(相手方が取消原因を知らなかった場合)であったときは、損害賠償責任も負わなければならない(民808①・748③)。 例えば、第三者による詐欺が養親に対してなされ、養子は当該詐欺をまったく知らない状態(善意)で縁組がなされたような場合において、その後、養親が死亡し、相続により養子が遺産を取得した後に、養子縁組が取り消されたとしても、養子が取消原因たる詐欺を知らなかった以上、養子が遺産をギャンブル等で浪費してしまい何も残っていない場合には、遺産を返還する必要はないこととなる。 もっとも、東京高裁平成19年7月25日判決は、詐欺による養子縁組の取消権は、養親または養子だけが有することを理由に、養親の実子からなされた縁組取消しの訴えを却下している。つまり、この判決では、承継人も取消請求権を有すると定める民法第120条第2項の適用は排除される結果、実親の承継人(相続人)である実子には取消権は承継されないと判断した。 したがって、上記例では、養親がすでに死亡している以上、養子が取消権を行使しない限り、そもそも取り消されることはない。 (了)

#No. 143(掲載号)
#米倉 裕樹
2015/11/05

企業の不正を明らかにする『デジタルフォレンジックス』 【第1回】「あらゆる不正調査に使われるようになった「デジタルフォレンジックス」とは何なのか?」

企業の不正を明らかにする 『デジタルフォレンジックス』 【第1回】 「あらゆる不正調査に使われるようになった 「デジタルフォレンジックス」とは何なのか?」   プライスウォーターハウスクーパース株式会社 シニアマネージャー 池田 雄一   1 デジタルフォレンジックスの定義 『デジタルフォレンジックス』という分野が発生したのは米国および英国を中心とする欧米諸国で、1980年代まで遡る。コンピュータの飛躍的な増加とともに、それを使った犯罪行為も増加したことにより、法整備からコンピュータ犯罪の専門部隊の組織が欧米諸国で開始されたのが1980年代後半から1990年代前半のことである。 日本でフォレンジックスという言葉が聞かれるようになったのは、ライブドア事件で東京地検特捜部が捜査の一環として消去されたメールデータの復元を行った2006年頃からかもしれない。その後、2011年に発覚した大相撲八百長問題、まさに現在報道されている野球賭博問題などにおいて、携帯電話の調査にフォレンジック技術が使用されたことなどで注目を浴びている。 「フォレンジックス」という言葉は、科学的手法を用いて犯罪に関係する情報(証拠)を得ることを意味しており、犯罪捜査を含む司法の現場を起源としている。日本語でいうところの「鑑識」と考えれば分かりやすいかもしれない。 現在、フォレンジックスは50程度の分野に分かれており、これをまとめて「フォレンジックサイエンス」(法科学)と呼ぶ。法科学は、法生理学、法社会学、犯罪捜査学、デジタルフォレンジックスなどの大きな分野に分かれており(図1を参照)、米国の「CSIシリーズ」や日本の「科捜研シリーズ」などに代表されるように、フォレンジックサイエンスに特化した国内外のテレビドラマやニュースなどでもしばしば取り上げられることから、法医学、司法解剖、DNA鑑定、指紋分析などのフォレンジックサイエンスに関係する言葉を知っている読者も少なからずいるであろう。 本連載で紹介するデジタルフォレンジックスも、コンピュータフォレンジックス、ネットワークフォレンジックス、モバイルフォレンジックスなどを含む分野の総称である(図2を参照)。 【図1】 フォレンジックサイエンスの分野 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (※) 筆者作成。 【図2】 デジタルフォレンジックスの分野 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (※) 筆者作成。 もともと「デジタルフォレンジックス」という言葉は、コンピュータフォレンジックスの同義語として使用されていたが、電子データの保存機能を持つ媒体の種類の増加に伴い、デジタルフォレンジックスの分野も細分化され、現在へと至る。 筆者がデジタルフォレンジックスに関わり始めた10年ほど前は、デジタルフォレンジックスという言葉はほとんど聞かれず、筆者の指導教官だった米国の元司法機関出身者もコンピュータフォレンジックスという言葉を使っていたと記憶している。 現在でも、筆者の米国の同僚とコミュニケーションする際は、デジタルフォレンジックスではなくコンピュータフォレンジックスいう言葉を使用しており、デジタルフォレンジックスという言葉は、日本で広く普及している印象を受ける。 デジタルフォレンジックスは、フォレンジックスの法則に則り、電子データを含む媒体の証拠保全、調査・分析から特定した証拠の報告までの一連の流れを指す(図3を参照)。 【図3】 デジタルフォレンジック調査のプロセス 本連載の【第3回】(デジタルフォレンジックスとeディスカバリー)で詳しく解説するが、日本ではデジタルフォレンジックスという言葉が広義に使用されている印象を受ける。典型的なデジタルフォレンジックスは、保全した電子媒体から消去ファイルの復元などを行い、そこから隠れている証拠の断片を探していくなど、1つの媒体を深堀りする詳細かつ緻密な作業である。 デジタルフォレンジックスが使用される典型的な例としては、 情報漏洩における漏洩経路の特定 タイムスタンプの分析による発生事案の日時特定 隠しファイルの特定 などである。会計不正調査などにおいて、関係者から収集した大量なメールデータに対して横断検索をかけ、検索ヒットしたメールのレビュー作業に関しては、デジタルフォレンジックスというよりは、eディスカバリーに用いられる手法を用いた調査業務である。しかしながら、デジタルフォレンジックスは、eディスカバリーを構成する一要素であり、これら2つを切り離して考えることはできない。   2 現実のデジタルフォレンジックスの姿 米国のCSIシリーズなどに代表されるテレビドラマなどのメディアにおいても、しばしば容疑者の使用していたコンピュータを調査する場面がみられるが、ドラマで見られる調査シーンは、実際のあるべき姿とは異なった描写をされていることが多い。 実際のデジタルフォレンジック調査は、何時間にもわたりコンピュータの画面を注視し続ける地道な作業であり、華やかさは全く無いと言っても過言ではない。しかしながら、テンポの速いテレビドラマにおいては華やかな調査に誇張されて描かれている傾向がみられる。 ただ、指摘しなければならないポイントもある。ドラマにおいてデジタルフォレンジックスが描かれている多くのシーンでは、調査官が容疑者のコンピュータに直接アクセスをし、あっという間にその場で証拠を特定する様子が描かれている。しかし、実際の調査では証拠の特定までに数日、検証まで含めると数週間かかるケースも少なからずある。 また、よほどの理由が無い限り、容疑者が使用していたコンピュータに調査官が直接アクセスすることは、実際の調査において「最もやってはいけないこと」の1つである。 容疑者が使用していたコンピュータに直接アクセスすることは、殺人現場に落ちている血の付いたナイフを素手でつかむことに等しく、証拠の汚染へと繋がる。電子データは非常に変わりやすい特性を持っていることから、証拠保全を行わないまま直接コンピュータに触れることは、不正行為に使われていた状態を変えてしまい、証拠の改ざん又は証拠が消失するなどのリスクが発生する。 筆者がデジタルフォレンジックス調査の依頼を受ける際、テレビドラマなどで描かれるデジタルフォレンジックスを実際の調査の様子だと信じ込んでいるクライアントの期待値の調整にはしばしば苦労する。中には午前中に証拠保全を行い午後には結果が出ることを期待している依頼者もおり、実際に調査に要する期間を説明すると、テレビドラマを例に挙げて反論されることがある。 本連載の読者諸氏には、現実には、難易度の低い調査でも検証も含めた最終的な結果を出すまでには数日程度要することをご理解いただきたい。 また、デジタルフォレンジックスは「どんなことでもわかってしまう魔法のような調査手法」ではないことも併せて強調しておきたい。 デジタルフォレンジックスを行えば必ず何らかの証拠が見つかると信じている依頼者も少なからずいるが、不正行為を行う全員が会社で支給されるコンピュータを使って不適切な行為を行っているとは限らず、必ず証拠が発見される保証はない。 中には大胆に会社支給のコンピュータや会社のメールを使用した不正行為が行われている場合もあるが、多くは個人携帯や個人コンピュータを使うなど、会社支給のコンピュータの使用は最小限に止め、都合の悪い情報は消したり隠したりしている。 どのような不正行為でも「完全犯罪」は無く、不正行為者の油断や間違いから生まれる情報のほころびを特定するのがデジタルフォレンジックスなのである。 (了)

#No. 143(掲載号)
#池田 雄一
2015/11/05

パフォーマンス・シェア(Performance Share)とリストリクテッド・ストック(Restricted Stock)~経済産業省報告書で示された「2つの新しい株式報酬」~ 【第2回】「制度の仕組みと米国活用事例」

パフォーマンス・シェア(Performance Share)と リストリクテッド・ストック(Restricted Stock) ~経済産業省報告書で示された「2つの新しい株式報酬」~ 【第2回】 「制度の仕組みと米国活用事例」   弁護士・公認会計士 中野 竹司   役員に対する業績連動型報酬のニーズの高まりを受け、経済産業省報告書で新しい株式報酬プランの具体例として示された「パフォーマンス・シェア」と「リストリクテッド・ストック」とは、どのようなものか。今回は米国における事例を念頭に解説する。なお、わが国においては、米国の制度が直接的には導入されていないが、その点については次回解説する。   1 リストリクテッド・ストック(譲渡制限付き株式)とは リストリクテッド・ストック(Restricted Stock)とは、一定期間の譲渡制限が付された株式による報酬である。 リストリクテッド・ストックは、交付された役員が「一定期間退職しない」といった条件を満たした場合に、通常は追加的な支出なしに株式保有の権利を与えられるものである。 当該権利の付与方法は、勤続年数に比例して段階的に行われることも(段階式権利確定)、あるいはすべて一斉に行われることも(一括式権利確定)ある。また、権利が確定する前であっても、株式の配当を受け取り、議決権を行使できる場合もある。 リストリクテッド・ストックはストック・オプションのように無価値になることは通常はなく、株式を取得するに当たって、ストック・オプションのような追加の支払いもないことから、受領する役員にとっては、一般的に、非常に有利な報酬形態ということがいえる。   2 パフォーマンス・シェアとは パフォーマンス・シェア(Performance Share)とは、中長期的な業績目標の達成度合いによって交付される株式による報酬のことである。 上述のリストリクテッド・ストックは、一定期間の在籍等の条件はあるものの、ストック・オプションと違い、株価の下落により無価値になることは通常はなく、役員に有利な報酬形態であるが、勤続年数条件型の株式報酬手段は、株価と連動しているものの、業績とは連動していないという批判がある。 このような批判に対応するため、パフォーマンス・シェアが設計されることがある。パフォーマンス・シェアは、 という特徴により、報酬と業績を連動させるようにしており、この点でリストリクテッド・ストックの弱点を補うものとなっている。   3 実際の活用事例 実際に「リストリクテッド・ストック」と「パフォーマンス・シェア」はどのように活用されているのか、Johnson&Johnson社(以下「J社」という)がSECに2015年にファイリングした、10-Kに組み込まれている、Proxy Statement記載の報酬委員会報告書を基に見ていく。 (1) 役員報酬構成の決定 J社では、基本報酬、短期インセンティブ及び長期インセンティブの割合(以下合わせて「役員報酬構成」という)について、当該役員が負う責任やリスクを基に、個別に決定される。そして、リストリクテッド・ストックとパフォーマンス・シェアは、長期インセンティブとして付与される。 なお、役員報酬構成はあらかじめ定められるが、業績の達成度合いによってインセンティブの付与額が変わるため、予定役員報酬構成と実際役員報酬構成は異なる。 J社のCEOの実績役員報酬構成は、以下のようになっている。 (2) 長期インセンティブの決定 報酬委員会は、評価対象年度の業績に従って、長期インセンティブを与える。この長期インセンティブとして、J社では、リストリクテッド・ストック(RS)、リストリクテッド・ストック・ユニット(RSU)、パフォーマンス・シェア(PS)、パフォーマンス・シェア・ユニット(PSU)及びストック・オプションを用いている。 このプランでは、RS及びPSは付与された報酬を普通株のみで支払うものである。一方、RSU及びPSUは付与された報酬の普通株式価値相当額を、通常報酬委員会の決定により、現金、普通株又はその2つの組み合わせで支払うものと定められている。すなわち、付与時の報酬の経済的価値は、RS/RSU、PS/PSUはそれぞれ同じになる。 J社では、以下の基準に基づいて、リストリクテッド・ストック及びパフォーマンス・シェアを役員に付与している。 このうち、特に業績連動性が高いのが、パフォーマンス・シェア・ユニット(PSU)であるが、J社においては、その付与のスキームは、以下の表のようになっている。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (※) TBD=未確定 このように、パフォーマンス・シェア・ユニットは、3年間の業績を3つの指標(売上、一株当たり利益(EPS)、相対的株主総利回率(RTSR))を使って総合的に判断し、その業績数値を基礎として役員に付与される計算となっている。 結果として、2014年度のJ社CEOの長期インセンティブのプラン別付与内訳は、以下のような割合となる旨が開示されている。 なお、リストリクテッド・ストックはパフォーマンス・シェアに比べ業績連動性が低いものの、一定期間在籍後の株式の付与が確定していることが多いことから、当該企業の役員に就任や任期延長し、一定期間在籍等することで確定的な数量の株式を得られることとなるので、有能な人材を採用したり引き止めたりするには有効である。 このため、予定役員報酬構成の枠外でこれを付与するケースもある(米国3M.Coの報酬委員会報告書参照)。 (了)

#No. 143(掲載号)
#中野 竹司
2015/11/05

〈小説〉『資産課税第三部門にて。』 【第2話】「書面添付(その2)」~重加算税の二重賦課~

〈小説〉 『資産課税第三部門にて。』 【第2話】 「書面添付(その2)」 ~重加算税の二重賦課~ 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   ■ 前回の続き ■ 谷垣調査官は、税務六法を見ながら問いかける。 「しかし・・・」 「この税理士法35条2項の但し書きによれば、意見聴取に必ずしも拘束されないと思うのですけど・・・」 そう言いながら、谷垣調査官は、該当する箇所を読み上げた。 読み終わると、谷垣調査官は田中統括官の顔を見た。 「・・・。」 田中統括官は、腕を組み黙っている。 しばらくしてから、田中統括官は応えた。 「・・・ということは、法人税の税務調査で架空売上や簿外資産が見つかった場合には、明らかに株価評価の計算のベースとなる決算書が修正されることになるから、意見聴取をするまでもなく、更正をすることができるということか・・・」 田中統括官も税務六法を見ながら確認している。 「統括官、とりあえず法人税の税務調査によって更正された数値に基づいて、株価を出してみましょうか。」 谷垣調査官の声が再び弾んだ。 「それと・・・」 谷垣調査官は、田中統括官の顔を見て言った。 「これって、もしこちらで更正処分をした場合、重加算税を賦課決定しても大丈夫ですよね。」 田中統括官は強い口調で応えた。 「もちろんだ。もっとも、修正申告書を提出してもらっても、但し書に該当すれば、重加算税を賦課決定することはできる。」 谷垣調査官は小さな声でつぶやいた。 「法人税では架空売上や簿外資産が見つかったので、もちろん、隠ぺい・仮装として重加算税が課されているのですけど、相続税も重加算税を賦課することになると、なんだか納税者に気の毒な感じが、しないこともない・・・」 「そんなことはないだろう。隠ぺい・仮装に基づいて申告すれば、法人税や相続税は、重加算税は課されると国税通則法に書いてあるのだから。」 田中統括官は、少し怒った口調で続ける。 「それに、法人税において『過少申告+隠ぺい・仮装』として重加算税が課され、さらに相続税においても『過少申告+隠ぺい・仮装』であれば、当然、重加算税は課されるべきだろう・・・たとえ同一の隠ぺい・仮装に基づくものであったとしても、重加算税は両税目に課される。」 田中統括官の頬が赤くなっている。 「確かに統括官の言うとおりなんですが・・・」 谷垣調査官は、重加算税の事務運営指針をめくりながらうなずいた。 「ところで・・・」 谷垣調査官は田中統括官を見て言った。 「源泉所得税の重加算税については、法人税と二重に重加算税の対象としないと、事務運営指針に定めていますが・・・」 いつの間にか、谷垣調査官は、「源泉所得税及び復興特別所得税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)」を開いている。 谷垣調査官は、この事務運営指針を読み上げた後、田中統括官に尋ねた。 「認定賞与等の場合、法人税と源泉所得税にダブルの課税が発生しますが、法人税と源泉所得税のそれぞれに重加算税を賦課するのは少しかわいそうであると、課税庁が考えているからでしょうかね。」 田中統括官は事務運営指針を見て言った。 「この事務運営指針では、『原則として』と書かれているから、場合によっては二重に重加算税を賦課することは考えられる。」 田中統括官の返答に谷垣調査官は再び質問した。 「その『例外』って、どういうケースを想定しているのでしょうか。」 「・・・。」 田中統括官は眉を寄せて考え込む。 しばらくしてから口を開いた。 「隠ぺい・仮装が・・・よほど悪質な場合、とか・・・」 「その点、消費税の取扱いは異なっていますね。」 谷垣調査官はすぐに返した。 「・・・法人税又は所得税で重加算税が賦課された場合には、消費税においても重加算税を賦課すると事務運営指針に定められている。」 田中統括官は大きくうなずいた。 「それは・・・課税庁において批判はあるものの、消費税は『預り金』的なものであるという認識が強く、それに対する『隠ぺい・仮装』の行為に対しては、より厳しく罰しなければ、と考えているのかもしれないな・・・」 田中統括官は、苦笑いしながら、そう答えた。 (了)

#No. 143(掲載号)
#八ッ尾 順一
2015/11/05

プロフェッションジャーナル No.142が公開されました!~今週のお薦め記事~

2015年10月29日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.142を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2015/10/29

〔巻頭対談〕 川田剛の“あの人”に聞く 「山田二郎 氏(弁護士)」【前編】

〔巻頭対談〕 川田剛の“あの人”に聞く 「山田二郎 氏(弁護士)」 【前編】 〔語り手〕山田 二郎(弁護士) (写真/右) 〔聞き手〕川田 剛(税理士) (写真/左)         (後編(11/5公開)へ続く)

#No. 142(掲載号)
#山田 二郎、川田 剛
2015/10/29

〈平成27年分〉おさえておきたい年末調整のポイント 【第1回】「注意しておきたい最近の改正事項」

〈平成27年分〉 おさえておきたい 年末調整のポイント 【第1回】 「注意しておきたい最近の改正事項」   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   10月も下旬となり、年末調整に向けて準備を始める時期となった。年末調整の業務は、作業量が多く注意点も多岐にわたるため、早目に準備をしておきたい。 今回から3回シリーズで、年末調整における実務上の注意点やポイント等を解説する。 なお、各書類の記載方法や理解しておくべき用語の解説等については、過去の拙稿をご参照いただきたい。 今年から適用される税制改正事項のうち、今回の年末調整に大きな影響を及ぼすものはない。しかし、今年の年末調整事務と同時並行で行われることの多い「平成28年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の受理に際しては、2つの改正事項が影響する。 そこで、今回は、年末調整に関係する最近の主な改正事項と「平成28年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に影響のある改正事項についてまとめることとする。   (1) 注意が必要な最近の税制改正事項 最近の税制改正事項のうち、今年の年末調整に影響のあるものをまとめると次のとおりである。 各改正事項の詳細については、以下の拙稿をご参照いただきたい。   (2) 「平成28年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に影響する改正事項 ① マイナンバー制度への対応 いわゆるマイナンバー法の施行により、平成28年1月以降、国等へ税務関係書類を提出するときには個人番号の記載が求められる。 これに伴い、「平成28年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」については、給与所得者本人、控除対象配偶者、扶養親族の個人番号を記載することが必要となる。 源泉徴収義務者が従業員等から個人番号の提供を受ける場合には、本人確認を実施しなければならない。具体的には、提供を受ける番号が正しいことの確認(番号確認)と番号の提供者が正しい持ち主であることの確認(身元確認)の2つを実施する必要がある。 本人確認の方法には、次の2つがある。 従業員等が個人番号カードを取得するまでにはある程度の時間を要すると思われるため、しばらくは(イ)の方法で本人確認を行うケースが多くなると考えられる。 (イ)の方法の場合、さまざまな書類の組合せがある。一般的な組み合わせを挙げると次のとおりである。 なお、雇用関係にある者等から個人番号の提供を受ける場合には、実質的な身元確認はすでにできていると考えられるため、身元確認の書類は要しないものとされている。 (※) 上記の方法によることが困難な場合には、国税庁から公表されている本人確認に関する告示が参考になる。 【参考】 国税庁ホームページ「国税庁告示について」 源泉徴収事務において、マイナンバーの取得は、必ずしも平成28年1月までに行う必要はない。中途退職者を除き、平成28年分の源泉徴収票(提出期限:平成29年1月末)からマイナンバーを記載することとなるため、それまでに取得していればよい。 なお、本人確認の詳しい解説については、本誌掲載の岡田健司公認会計士による以下の連載が参考になる。 ② 国外居住親族を扶養控除等の対象とするときの取扱い 平成28年分以後の所得税及び平成29年度分以後の個人住民税について、国外に居住する親族を扶養控除等の対象とするときには、「親族関係書類」と「送金関係書類」を扶養控除等申告書に添付等することが必要となった(所令316の2②③)。 このうち、「親族関係書類」については、「平成28年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出するときに提出又は提示しなければならない(※)。 (※) 配偶者特別控除の適用を受ける場合には、「平成28年分 給与所得者の配偶者特別控除申告書」を提出するときに提出又は提示する。 制度の詳細については、以下の拙稿をご参照いただきたい。 なお、扶養控除等申告書に国外居住親族を記載しても「親族関係書類」を提出又は提示していない場合には、源泉徴収税額の計算上その親族は扶養親族等の数に反映されない。「親族関係書類」が提出又は提示された後、最初に支払われる給与等の計算から扶養親族等の数に加えることとなる。 *  *  * 次回は、海外転勤、外国人に関わる年末調整について解説を行う予定である。 (了)

#No. 142(掲載号)
#篠藤 敦子
2015/10/29

包括的租税回避防止規定の理論と解釈 【第1回】「最近の税務訴訟の動き」

包括的租税回避防止規定の 理論と解釈 【第1回】 「最近の税務訴訟の動き」   公認会計士 佐藤 信祐   当連載の目的は、包括的租税回避防止規定の理論を解明したうえで、実務上、問題となりやすい事案について、実際に包括的租税回避防止規定が適用される可能性があるのか否かを検討することにある。 なお、実際の検討としては、法人税法132条の2に規定する組織再編における包括的租税回避防止規定のみならず、法人税法132条に規定する同族会社等の行為計算の否認、その他の租税回避否認手法を含めたうえで、総合的な検討を行う予定である。 第1回目にあたる本稿では、最近の租税回避訴訟の動きについて総括したい。   1 最近の租税回避訴訟の動き ヤフー・IDCF事件では、従来の学説と異なり、法人税法132条の2に規定する包括的租税回避防止規定が適用される場面として、以下のように判示した。 そのため、これらの事件の影響から、行為計算否認規定についての解釈が見直されるのではないかという報道も存在する(※1)。 (※1) T&Amaster571号8頁(平成26年) しかしながら、ヤフー・IDCF事件で国側の立場で書かれた朝長英樹氏の鑑定意見書は、その書かれている立案過程に疑念を示す声もあり(※2)、さらに、ヤフー控訴審判決では、同鑑定意見書に書かれている制度趣旨を一部否定していることから(※3)、制度趣旨を踏まえた解釈が重要になると言われながらも、結局は、立案当初に開示された立案担当者による解説が重要なものとなり、その後に語られたものを根拠とするのであれば、現役の課税当局の者が公式の場で語ったもののみが含まれることになる(※4)。すなわち、考慮すべき制度趣旨についても、組織再編税制の専門家の共通認識を超えることはあり得ない。その意味で、ヤフー控訴審判決は、一応のバランス感覚の取れた判決であったと評価できる。なお、これらの事件の詳細な評釈は、別の連載である「組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例・裁決例について」に委ねることとしたい。 (※2) 大淵博義「『法人税法132条の2』の射程範囲と租税回避行為概念」税経通信69巻9号21-22頁(平成26年) (※3) 佐藤信祐「ヤフー事件高裁判決からみる実務上の留意点」旬刊経理情報1404号37-38頁(平成27年) (※4) むろん、個別事案によって解釈が異なる可能性があることから、その多くはリスクヘッジのために「私見」であるということになっているものの、税務業務に携わる者からすると、尊重すべきものとされているものは少なくない。 さて、筆者が平成21年に中央経済社より、『組織再編における包括的租税回避防止規定の実務』を出版したときは、包括的租税回避防止規定についての考え方はほとんど示されていなかった。 強いて言えば、平成20年当時税務大学校研究部教授であった清水一夫氏の論文において、行為計算否認(法法132、132の2、132の3)を適用するための要件として、①形式的要件、②税負担の減少、③税負担減少の不当性(本件取引の行為・計算が通常の経済人を基準として不自然・不合理であることの評価根拠事実)を挙げられており(※5)、財務省主税局OBであった佐々木浩氏も平成23年に行われた座談会において、包括的租税回避防止規定については経済合理性がキーワードになる旨を述べられた(※6)。 (※5) 清水一夫「課税減免規定の立法趣旨による『限定解釈』論の研究」税大論叢59号314頁(平成20年) (※6) 仲谷修ほか『企業組織再編成税制及びグループ法人税制の現状と今後の展望』(佐々木浩発言)129頁(大蔵財務協会、平成24年) しかしながら、平成24年になると、同じく財務省主税局OBであった朝長英樹氏が制度の濫用について適用されるものであるという見解を述べられるようになり(※7)、また、同年、税務大学校研究部教授であった斉木秀憲氏の論文でも、包括的租税回避防止規定が適用される場面について、①組織再編税制の基本的な考え方からの乖離、②組織再編成の濫用、③個別防止規定の潜脱の3つに類型化されるようになった(※8)。 (※7) 朝長英樹ほか「組織再編成税制を巡る否認が相次ぐ中、今明かされる『行為計算否認規定(法人税法132条の2)』の創設の経緯・目的と解釈」(朝長英樹発言)T&Amaster 449号9頁(平成24年) (※8) 斉木秀憲「組織再編成に係る行為計算否認規定の適用について」税大論叢73号9頁(平成24年) ヤフー・IDCF事件の第一審判決が公表された後には、多くの雑誌・書籍において、包括的租税回避防止規定についての分析がなされるようになってきているが、いまだ上告審判決が公表されていないことや、仮に公表された後であっても、判例の射程がどこまで及ぶのかについては、その後の租税法学者の研究を待つ必要がある。 しかしながら、包括的租税回避防止規定に対する租税法学者の研究が進んでいくのには時間を要するし、仮に研究が進んでいったとしても、実務上は、無批判にそれを受け入れることは妥当ではない。なぜならば、従前から指摘させていただいたように、租税回避を意図する納税者はそれほど多くなく、法律の範囲内で節税を行いたいという納税者が大半であるというのが実感であり、租税法のあるべき論に比べ、かなり保守的な分析をすることが一般的であるからである(※9)。 (※9) 佐藤信祐『組織再編における包括的租税回避防止規定の実務』中央経済社 はじめに(平成21年) すなわち、学者と実務家はそもそも基本的な役割が異なる。具体的には、学者は真理を追究する立場にあるため、やや保守的に考えればよいという立場はとり得ないであろう。これに対し、実務家は、無難に税務調査が終わればよいのであって、わざわざ、節税と租税回避の限界点を探る必要性が乏しい。そのため、やや保守的に考えればよいという立場はむしろ健全な立場であるといえる。 この点も、従前から指摘させていただいた点であるが、租税回避に該当するか否かの判断は、様々な判例や論文が参考になることはいうまでもないが、多くの日本企業では、国税不服審判所や裁判所で争ってまで税負担の減少を図ることを想定しておらず、無難に税務調査が終わることを望んでおり、国税不服審判所や裁判所で納税者が勝訴した事件であっても、国税不服審判所や裁判所で争わざるを得なかったという点をもって否定的に考える傾向にある(※10)。 (※10) 佐藤信祐前掲書(※9)2頁 それでは、租税回避に対する研究や意見の表明に意味がないのかといえば、租税回避行為に該当するような提案をしないという自己牽制効果が働くということから、本来であれば、積極的に租税回避に該当するか否かの意見の表明を行っていくべきであろう(※11)。 (※11) 佐藤信祐前掲書(※9)はじめに このように、本連載では、過去の判例や論文を参考にしながらも、節税と租税回避の限界点を探っていくことを目的とせず、どのような場合であれば、包括的租税回避防止規定が適用される可能性が少ないのかという分析を行うときの一助になることを目的に解説を行っていく予定である。そのため、やや学術的な分析とは異なる可能性もあり得るが、ご容赦いただきたい。 (了)

#No. 142(掲載号)
#佐藤 信祐
2015/10/29

さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第2回】「武富士事件」~最判平成23年2月18日(集民236号71頁)~

さっと読める! 実務必須の [重要税務判例] 【第2回】 「武富士事件」 ~最判平成23年2月18日(集民236号71頁)~   弁護士 菊田 雅裕   (了)

#No. 142(掲載号)
#菊田 雅裕
2015/10/29
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