こんなときどうする? 復興特別所得税の実務Q&A 【第34回】 「国外転出時課税の適用を受ける場合の 所得税及び復興特別所得税の処理」 税理士・社会保険労務士 上前 剛 私は、フリーの経営コンサルタントです。9月30日に日本を出国し、シンガポールに拠点を移すことにしました。顧客は東京の会社なので、出国後も毎月来日する予定です。日本に住居や事務所は設けません。国外転出時課税制度が創設されましたが、対象になるのでしょうか? 9月10日現在、納税管理人の届け出はしておらず、保有資産は以下の通りです。 国外転出時課税制度についてご教示ください。 1 概要 国外転出時課税制度とは、平成27年7月1日以後に国外転出する居住者(国外転出日前10年以内に国内在住期間が5年超)が1億円以上の対象資産を所有又は契約の締結をしている場合には、国外転出時にその対象資産の譲渡又は決済があったものとみなして、対象資産の含み益に所得税及び復興特別所得税が課税される制度である。 国外転出日から5年以内に帰国した場合には、国外転出時課税により課された税額を取り消すことができる。また、納税猶予の適用を受けることで納税を猶予することができる。 2 対象資産 3 確定申告書の提出時期 ① 9月30日(国外転出日)までに納税管理人の届け出をした場合 平成28年3月15日までに経営コンサルタント業の平成27年1~12月の事業所得に国外転出時課税の適用による所得を含めて所得税及び復興特別所得税の確定申告書を税務署へ提出するとともに、納税しなければならない。 対象資産1億円以上の判定は、9月30日(国外転出日)で行う。東京証券取引所のA社株式の9月30日(国外転出日)の最終価格に株式数を乗じた額が1億円以上になった場合は国外転出時課税の適用を受け、1億円未満の場合は国外転出時課税の適用を受けない。 ② 納税管理人の届け出をしない場合 9月30日(国外転出日)までに経営コンサルタント業の平成27年1~9月の事業所得に国外転出時課税の適用による所得を含めて所得税及び復興特別所得税の準確定申告書を税務署へ提出するとともに、納税しなければならない。 対象資産1億円以上の判定は、6月30日(国外転出日の3ヶ月前の日)で行う。東京証券取引所のA社株式の6月30日(国外転出日の3ヶ月前の日)の最終価格に株式数を乗じた額が1億円以上なので、国外転出時課税の適用を受ける。 図表 確定申告書の提出時期 出典:国税庁「国外転出時課税FAQ」P8 (了)
連結納税適用法人のための 平成27年度税制改正 【第12回】 (最終回) 「国際税務の改正」 公認会計士・税理士 税理士法人トラスト パートナー 足立 好幸 [13] 連結納税適用法人に係る国際税務の改正 1 連結納税制度に係る外国子会社配当益金不算入制度の見直し (1) 改正の内容 連結納税制度に係る外国子会社配当益金不算入制度については、外国子会社の範囲において、他の連結法人が保有する外国法人の株式等を含めて、25%以上の保有割合要件を判定すること以外は単体納税制度と同じ取扱い(同じ番号の条文が適用される)となるため、税制改正についても単体納税法人と同様のものなる。 ① 損金算入配当等の額の益金不算入からの除外措置(原則法) 今回の改正では、外国子会社からの配当等の額で、その配当等の額の全部又は一部が外国子会社の本店所在地国の法令において外国子会社の所得金額の計算上損金の額に算入することとされている場合には、その配当等の額(損金算入配当等の額)を、益金不算入制度の適用対象から除外することとなった(法法23の2②一)。 具体的には、現時点では、オーストラリアの優先株式、ブラジルの株式が該当することになるが、今後は、外国子会社からの配当金について、現地の税務上の取扱い(税制改正を含む)を確認する必要が生じる。 ② 一部のみが損金算入配当等の額となる場合の除外措置(実額法) ただし、外国子会社から受ける配当等の額の一部のみが損金の額に算入された場合には、次の計算方法その他合理的な方法により損金算入配当等に対応する金額(損金算入対応受取配当等の額)を、益金不算入制度の適用対象から除外する金額とすることができる(法法23の2③、法令22の4④)。 また、この実額法に係る配当等を受けた日の属する事業年度後の各事業年度において、外国子会社において損金算入額が増額された場合には、その増額後の損金算入対応受取配当等の額を、益金不算入制度の適用対象から除外する修正を行う(法法23の2④)。 増額後の損金算入対応受取配当等の額は、次の計算方法その他合理的な方法により計算する(法令22の4⑤)。 この実額法の取扱いは、この配当等の額を受ける日の属する事業年度に係る確定申告書、修正申告書又は更正請求書にこの規定の適用を受けようとする旨並びに損金算入対応受取配当等の額及びその計算に関する明細を記載した書類の添付があり、かつ、外国子会社の所得金額の計算上損金の額に算入された剰余金の配当等の額を明らかにする書類その他の財務省令で定める書類を保存している場合に限り、適用される(法法23の2⑦)。 ③ 外国源泉税等の額の外国税額控除の取扱い 上記により益金不算入制度の適用対象から除外する配当等の額に対して課される外国源泉税等の額を、外国税額控除の対象とする(法令142の2⑦)。 (2) 適用時期 損金算入配当等の額の益金不算入からの除外措置は、平成28年4月1日以後に開始する連結事業年度において連結法人が外国子会社から受ける配当等の額について適用する(平成27年所法等改正法附則24①)。 ただし、平成28年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する各連結事業年度において連結法人が外国子会社から受ける配当等の額(平成28年4月1日において保有する同日において外国子会社に該当する外国法人の株式又は出資に係るものに限る)については、従前どおりの取扱いとする(平成27年所法等改正法附則24②)。 2 連結納税制度に係る外国子会社合算税制の見直し (1) 改正の内容 連結納税適用法人の外国子会社合算税制については、単体納税適用法人と基本的には同様の取扱いであり、連結納税制度に係る外国子会社合算税制について、次の見直しが行われた。 〈改正1〉 トリガー税率 特定外国子会社等に該当することとされる著しく低い税負担割合の基準(いわゆるトリガー税率)が20%未満(現行20%以下)に変更された(措令39の114①)。 税負担割合は法定税率とは異なるが、タイ20%(2013年1月~)、イギリス20%(2015年4月~)、ベトナム20%(2016年1月~)の法定税率であるため、これらの国に本店所在地を有する外国関係会社は、改正により影響を受けることとなる。 〈改正2〉 適用除外基準(事業基準)の判定 〈改正3〉 合算対象金額の計算(損金算入配当等を受けた場合) (2) 適用時期 特定外国子会社等の平成27年4月1日以後に開始する事業年度から適用される(平成27年所法等改正法附則94①②)。この点、連結法人ではなく、特定外国子会社等の平成27年4月1日以後に開始する事業年度から適用されることに注意を要する。 また、〈改正3〉の①②は、特定外国子会社等の平成28年4月1日以後に開始する事業年度に係る合算対象金額について適用される(平成27年改正措令附則44②)。この点、連結法人ではなく、特定外国子会社等の平成28年4月1日以後に開始する事業年度から適用されることに注意を要する。 〈改正3〉の③については、平成28年4月1日以後に開始する連結事業年度において連結法人が特定外国子会社等から受ける配当等について適用される(平成27年所法等改正法附則94③)。 (連載了)
組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例・裁決例について 【第34回】 「非公開裁決事例⑤」 公認会計士 佐藤 信祐 今回、紹介する事件は、株式を取得する目的で支出した財務調査費が有価証券の取得価額に含まれるか否かについて争われた事件である。 法人税法施行令119条1項1号において、「購入手数料その他その有価証券の購入のために要した費用」を有価証券の取得価額に含めることが明記されているが、財務調査費が有価証券の取得価額に含まるか否かについては、その金額が多額であることから、付随費用として取り扱うことに違和感があり、一部において誤解があったため、実務上も参考になる事件であると思われる。 19 平成22年2月8日裁決(TAINSコード:F0-2-500) (1) 事件の概要 本事件は、審査請求人(以下「請求人」という)が財務調査費(4,500,000円)及び店舗の側溝改修工事費等を損金の額に算入していたところ、原処分庁が、財務調査費については有価証券の取得価額に算入すべきであり、また、工事費等については資本的支出に当たるなどとして、法人税の更正処分等を行ったのに対し、請求人が、これらの処分の違法を理由としてその一部の取消しを求めた事件である。 なお、本連載は組織再編・資本等取引についての連載であるため、本稿においては、前者の財務調査費についてのみ解説することとする。 (2) 原処分庁の主張 請求人は、本件株式を取得するに当たり、■■■■■の買収監査を行うものとされていたことから、■■■■に買収のための財務調査を依頼したものであり、請求人が本件事業年度の損金の額に算入した本件財務調査費は、本件株式を取得するために要した費用と認められ、本件株式の購入のために要した費用に該当し、本件株式の取得価額に算入すべきである。 (3) 請求人の主張 本件財務調査費は、次のことから、本件株式の取得価額には算入されず、本件事業年度の損金の額に算入される。 (イ) 本件財務調査は、■■■■から、連結財務諸表を監査するに当たり、財務調査が必要との指導を受けたため、やむを得ず、監査目的で実施した。 (ロ) ■■■■■の会計処理については、税務上損金不算入となる退職給与引当金や役員退職慰労引当金等が保守的に計上されており、財務諸表は、上場企業と同程度に信頼性の高い決算書であったため、請求人は、本件株式を取得する目的での財務調査は必要ないと判断していた。 (ハ) 請求人は、純資産■■■■■■■(平成19年3月31日現在)の価値がある■■■■■を■■■■■■■程度で譲り受ける旨基本合意していたのであるから、本件株式を取得する目的で改めて財務調査を実施する必要はないと判断していた。 (4) 国税不服審判所の判断 平成19年7月18日に開催した臨時取締役会において、本件株式を取得する旨決議していることからすれば、請求人は同日において、本件株式を取得することを決意していたと認められる。 本件財務調査が本件株式の買収についての意思決定の参考とするために行われたものと認められることからすれば、特定の有価証券を購入することを決定した後に当該有価証券の購入に関連して支出される費用に該当することになるから、有価証券の購入のために要した費用として、本件株式の取得価額に算入されることとなる。 (5) 評釈 本事件の争点は、財務調査費が有価証券の取得価額に含まれるか否かであるが、請求人の主張を見てみると、原則として有価証券の取得価額に含めざるを得ないことは認識した上での主張であり、やや強引であるという印象を受ける。 これに対し、国税不服審判所の判断において、「特定の有価証券を購入することを決定した後に当該有価証券の購入に関連して支出される費用に該当する」という理由により有価証券の取得価額に含めている。 実務上、どの企業を買収するのかを決めないで複数の企業を調査している段階において発生した財務調査費は有価証券の取得価額に含めずに損金として処理することが可能であり、特定の企業を買収することを決めた後に発生した財務調査費は有価証券の取得価額に含める必要があると解されており、上記の国税不服審判所の判断はそれに従ったものであると考えられる。 この論点については、拙著『企業買収の税務』(中央経済社)において、初版から第3版に至るまで継続して指摘させていただいた。 例えば、初版は、本事件よりも前の平成18年に出版したものであるが、その33頁において、「購入手数料その他その有価証券の購入のために要した費用」の具体例として、仲介会社等に支払う仲介手数料、弁護士に支払う売買契約書の作成費用、デューデリジェンスに係わる費用を列記したうえで、当該デューデリジェンスに係わる費用については、34頁において、「被買収会社が決まっていない状態において、買収のターゲットを探すための調査費用を支出した場合には有価証券の取得価額に含める必要は無いが、買収のターゲットが決まり、買収するか否か、買収価格はいくらにするのかを決定するためにデューデリジェンスを行う段階になった場合には、当該デューデリジェンスに要した費用については、被買収会社の株式を取得するために要した費用であることから、有価証券の取得価額に含めるべきであると考えられている。」と解説させていただいた。 請求人の主張は、「連結財務諸表を監査するに当たり、財務調査が必要との指導を受けたため、やむを得ず、監査目的で実施した」ためであり、買収することも、買収価格についてもすでに合意されていたということを根拠としているため、前掲書の解説に沿ったうえで、有価証券の取得価額には含まれないということを主張しているようではある。 そうなると、請求人の主張をそのまま鵜呑みにすれば、財務調査費というよりも、会計監査を受けるための費用であり、有価証券の取得価額に含めるべきではないという整理になってくる。このような主張は、内部統制が導入された当初に、会計監査の現場において、やや手続きが形式的になった時期があったため、違和感のない主張であり、このような主張を行う気持ちは分からないでもない。 しかしながら、その主張を全面的に受け入れるとなると、財務調査費が株主責任を果たすためだけの無駄な費用であったということになるし、財務調査を行ったことにより、結果として大きな問題が発覚し、M&Aが成立しないということもあり得るため、このような主張はやや強引であると思われる。 そのため、本事件における国税不服審判所の判断は妥当なものであったと考えられる。 (了)
税務判例を読むための税法の学び方【68】 〔第8章〕判決を読む (その4) 立正大学法学部准教授 税理士 長島 弘 (2 判決をみるポイント) (② 結果を左右した要素を見極める) (2) 「重要な事実」の有無 以前、【第46回】にて「具体的な事実を抽象化していった結果残された事実、その有無により結論が変わるような事実は「重要な事実(material fact)」と呼ばれる。」と記したように、結果を左右する要素として「重要な事実」がある。 馬券の払戻に係る裁判(大阪事案)においては、第一審及び控訴審においては、「機械的・網羅的」な馬券購入が、この「重要な事実」と認識されていた。 そこで、この事案に係る裁判例を、裁判所HPの裁判例情報から入手して読んでいただきたい。 まず、第一審は、大阪地裁平成25年5月23日判決である。 次に、控訴審は、大阪高裁平成26年5月9日である。 このように、第一審及び控訴審は、インターネットを介して、ソフトを使った機械的、網羅的な馬券購入を「重要な事実」として判断していたことが分かる(ただし最高裁(平成27年3月10日判決)は、そのように認識していない(次回紹介する)。 この最高裁判決後の5月14日に東京地裁で出された判決は、類似の事案でありながら、最高裁判決とは異なり一時所得と判断している。 それは、この最高裁判決においては、機械的、網羅的な馬券購入(特に「機械的」)を「重要な事実」とは見ていないにもかかわらず、この点を見誤り、第一審及び控訴審と同様に、機械的、網羅的な馬券購入を「重要な事実」と見ていたものと思われる。 この点は次回に確認する。 (続く)
〔会計不正調査報告書を読む〕 【第36回】 株式会社東芝 「過年度決算の修正,2014年度決算の概要(平成27年9月7日付)」 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 株式会社東芝(以下「東芝」という)は、平成27年9月7日「過年度決算の修正、2014年度決算の概要及び第176期有価証券報告書の提出並びに再発防止策の骨子等についてのお知らせ」と題するリリースその他を公表し、同日夕刻には、代表執行役社長室町正志氏による記者会見が行われた。 本稿では、東芝が、平成27年7月20日に第三者委員会調査報告書(以下「報告書」という)を受領した後、過年度決算の修正及び2014年度決算発表までの経緯を確認したうえで、報告書における指摘事項がどのように修正されたかを検討することとしたい。 また、同時に発表された「再発防止策の骨子」については、臨時株主総会での公表資料、今後、証券取引所により徴求が予想される改善報告書などを通じ、より具体的な施策が判明した段階で、報告書の提言がどの程度活かされているかを検証することとしたい。 なお、本件の第三者委員会調査報告書に関する検討内容については、本連載の下記2稿をご覧いただきたい。 【過年度決算の修正、2014年度決算発表に至るまでの経緯】 【調査報告書公表後の東芝の対応】 1 経営刷新委員会の設置 調査報告書を受領した後、東芝が最初に公表したリリースは、「経営体制、ガバナンス体制及び再発防止策を検討する」ことを目的とする、経営刷新委員会の設置、委員の選任を伝えるものであった(7月29日付)。 経営刷新委員会の委員には社外取締役5名のほか、公認会計士、弁護士各1名、後に社外取締役候補者となる2名のオブザーバーを加えた9名体制とした。 2 過年度決算の修正概要及び業績予想の公表 次いで8月18日には、以下の4項目からなるリリースを公表し、延長後の有価証券報告書提出期限である8月31日を前に、未だ過年度決算の修正及び2014年度決算が確定していないことを公表した。 このリリースによって、過年度決算の修正額は、第三者委員会による指摘と自主チェックを合わせた1,562億円という既公表数値に、派生影響として、固定資産の減損等による修正額568億円を加えた2,130億円まで拡大していることが判明した。 3 有価証券報告書の提出期限の再延長 上記リリースを公表したことは、東芝としては、提出期限である8月31日を遵守できる見通しが立ったと判断したのであろうというのが大方の見方であったところ、提出期限当日、東芝は有価証券報告書の提出期限の再延長を発表する。 再延長が必要となった理由について、リリースではこう説明している。 「調査が必要となる事象」が発見された理由は、内部通報によるものであることが後になって発表されたのだが、第三者委員会による調査の範囲を制限してしまったことが、この再延長につながった面があるかもしれない。 もっとも、調査範囲をさらに網羅的なものとした場合には、相当長期にわたる調査期間が必要となったことも考えられるため、有価証券報告書の早期提出を優先する観点からは仕方のない選択であったという見方もあろう。 【過年度決算の修正】 9月7日リリースによる「過年度決算の修正」では、税引前損益の減額修正額は、8月18日開示よりもさらに118億円増加(利益は減少)して、2,248億円とされた。 この減額修正が必要となった理由については、以下のような説明書きがある。 具体的な修正案件とは、 海外子会社における水力発電所建設に係る工事進行基準案件で引当金の計上時期が不適切であった案件 製造委託先で発生した一部費用について引当金計上の必要性が認識された案件 の2件であり、一方、派生影響の2件とは、 固定資産の減損に伴う減価償却費及び売却損益計算に関する誤謬の訂正 株式取得により買収した海外子会社の資産評価が完了したことによる買収時に計上した数値の修正 が含まれていると説明されている。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 また、表中の主な固定資産減損としては、パソコン・映像事業におけるものが2009年度で▲417億円、半導体事業に関わるものが2011年度に▲506億円と説明されているものの、減損が必要となった理由について、リリース文中には説明はされていない。 【2014年度決算の概要】 2014年度決算概要については、売上高は6兆6,559億円と、過年度修正後の前年実績を1,662億円上回ったものの、当期純損益は前年から980億円減益となる378億円の赤字決算となった。 同日公表された「経営刷新推進体制の概要および2014年度連結決算等について」と題された資料から、営業損益1,704億円の内訳を抜粋する。 電力・社会インフラ・・・195億円 コミュニティ・ソリューション/ヘルスケア・・・778億円 電子デバイス・・・2,166億円 ライフスタイル・・・▲1,097億円 主な減益要因については、以下のように説明されている。 (※) STP:South Texas Project また、のれんと長期繰延税金資産については、それぞれ、次のように説明がされている。 こうした決算内容について、新日本有限責任監査法人は、無限定適正意見を表明していることは言うまでもない。 【内部統制の開示すべき重要な不備】 過年度決算の修正と同時に公表された「財務報告に係る内部統制の開示すべき重要な不備に関するお知らせ」には、気になる記述が存在する。 東芝は、これまでのリリースにおいて、一貫して「不適切な会計処理」という表現を用いてきたことは周知のとおりであるが、このリリースにおいて、「過去数年間にわたって利益の先取りや費用の先送り等の不適切な会計処理が継続されていたこと」の発生原因として、はじめて「意図的な」という表現が使われている。以下に引用する。 重要な不備について、新日本有限責任監査法人は「強調事項」として以下のように記述している。こうした認識が、監査報告における無限定適正意見の形成につながっていることは、これもまた言うまでもないことである。 * * * 冒頭で述べたとおり、今回のリリースで明らかになった再発防止策の骨子については、より具体的な施策が明らかになった段階で、稿を改めて、報告書の提言がどの程度活かされているかを検証する予定である。 また本事件については、アメリカにおける訴訟のみならず、日本でも個人株主が訴訟を提起したことが報じられ(日本経済新聞(2015/9/9))、証券取引等監視委員会による行政処分、監査法人に対する公認会計士監査審査会による検査などが予想されるため、新事実の発覚などが明らかになった場合には、続報として寄稿させていただく予定である。 (了)
金融商品会計を学ぶ 【第10回】 「売買目的有価証券の会計処理」 公認会計士 阿部 光成 今回は、「金融商品に関する会計基準」(企業会計基準第10号。以下「金融商品会計基準」という)及び「金融商品会計に関する実務指針」(会計制度委員会報告第14号。以下「金融商品実務指針」という)に規定する売買目的有価証券の会計処理について解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅰ 売買目的有価証券とは 有価証券の保有目的区分は、その取得時に判断する(金融商品実務指針59項、「金融商品会計に関するQ&A」Q20)。 1 定義 「売買目的有価証券」とは、時価の変動により利益を得ることを目的として保有する有価証券のことをいう(金融商品会計基準15項)。 次のことに留意が必要である。 2 要件 金融商品会計基準70項は、売買目的有価証券は、売却することについて事業遂行上等の制約がないものと述べている。 しかし、この要件だけでは、経営者の意図だけでいつでも売却可能であることを判定することは恣意的になる可能性があるため、金融商品実務指針では、これに加えて、次のことを規定している(金融商品実務指針65項、268項)。 Ⅱ 売買目的有価証券の会計処理 1 考え方 金融商品会計基準は、売買目的有価証券に関する会計処理の考え方を次のように説明している(金融商品会計基準70項、金融商品実務指針270項)。 2 貸借対照表価額及び時価の変動(評価差額) 売買目的有価証券については、貸借対照表日の時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は当期の損益として処理する(金融商品会計基準15項、金融商品実務指針66項)。 3 売買目的有価証券の売却取引 売買目的有価証券を売却した場合、その売却原価は、売却時点で付されている帳簿価額に基づき算定する(金融商品実務指針67項)。 次のことが規定されており、売買目的有価証券の会計処理については、「洗替処理」と「切放処理」の両方が認められている(金融商品実務指針67項)。 なお、同一銘柄の有価証券について、売買目的有価証券の区分とその他有価証券の区分とにおいて保有している場合に、当該有価証券の一部を売却したときは、これらが組織上、明確に分別管理されていなければ、まず売買目的有価証券を売却したものと推定する(金融商品実務指針67項、271項)。 4 売買目的有価証券に係る損益の表示 「金融商品会計に関するQ&A」Q69では、売買目的有価証券に係る損益について、利息、配当金、売却損益及び評価損益はその性質が異なるため、帳簿上は区分して処理する必要があると述べ、損益計算書の表示について、次のように規定している。 Ⅲ 設例 金融商品実務指針の「設例3 売買目的有価証券の評価及び会計処理」を参考にして、洗替処理と切放処理の仕訳例を示す。 【洗替処理】 〈X1年度期末〉 ⇒A株式の貸借対照表価額を1,400とし、評価差額100(=取得原価1,500-時価1,400)を当期の損益として処理する。 〈X2年度期首〉 ⇒X1年度期末に計上した売買目的有価証券の評価差額100について、洗替処理をする。 〈X2年度期中(売却日)〉 ⇒洗替処理により、売却した時のA株式の帳簿価額は1,500であるので、当該額を売却原価とする。 売却価額1,600と売却原価1,500との差額100(売却損益)を、有価証券運用損益として処理する。 【切放処理】 〈X1年度期末〉 ⇒A株式の貸借対照表価額を1,400とし、評価差額100(=取得原価1,500-時価1,400)を当期の損益として処理する。 〈X2年度期首〉 仕訳なし ⇒切放処理なのでX1年度期末に計上した売買目的有価証券の評価差額100の戻入れは、行われない。 〈X2年度期中(売却日)〉 ⇒切放処理により、売却した時のA株式の帳簿価額は1,400であるので、当該額を売却原価とする。 売却価額1,600と売却原価1,400との差額200(売却損益)を、有価証券運用損益として処理する。 (了)
経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第93回】 人件費に関する会計処理④ 「労働保険料」 仰星監査法人 公認会計士 竹本 泰明 〈事例による解説〉 〈会計処理〉 【毎月の会計処理】 [4月30日] [5月31日] [7月10日] [7月31日] [3月31日] 期中では「前払金」勘定で処理し、決算時に前払金がマイナス(貸方)残高となる場合には「未払金」に振り替える処理が一般的です。 なお、理論的に厳格に会計処理を行う場合は、毎月の実績額で費用計上する方法が考えられます。 〈会計処理の解説〉 労働保険料はその納付方法(分割納付)に特徴がありますが、会計上は発生主義に基づき費用計上を行う必要があるため、毎月費用計上する必要があります。 毎月の費用計上額は、年度更新(*)時に申請する当年度の概算額を均等に按分した金額によることが多く、当年度の概算額と実績額の差額は翌年度に処理することが一般的です。 (*) 労働保険の保険料は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間を単位として計算され、その金額は「賃金×保険料率」で算定されます。労働保険では、年度ごとに概算で保険料を納付し、年度末に賃金総額が確定した後に概算額と実績額の差額を精算します。前年度の保険料の精算は、翌年度の概算保険料の申告・納付と同時に行われ、この前年度の保険料を精算するための確定保険料の申告・納付と新年度の概算保険料を納付するための申告・納付の手続を「年度更新」といいます。 また、事業年度中は前払金がマイナスになることもありますが、最終的には決算でどの勘定科目で表示するかを判断することとなります(下図参照)。 【経過勘定の残高の推移イメージ】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 なお、当該処理方法による場合と理論的に厳格な会計処理を行った場合とでは毎月の費用計上額が異なり、特に前者の場合、当年度の概算額と実績額の差額を翌年度に処理することになるため、前年度の概算額と実績額の差額を処理した月の「法定福利費」の金額が大きくなる又は小さくなるといった歪みが生じてしまいます。 特に、経営管理目的で作成される月次決算では影響が顕著となる可能性もあるため、この歪みの原因については把握しておく必要があるでしょう。 * * * 次回は、人件費に関する会計処理のうち、役員賞与引当金について解説します。 (了)
中小企業事業主のための 年金構築のポイント 【第12回】 「配偶者と年金」 特定社会保険労務士 古川 裕子 厚生年金保険は、「世帯」を単位とした年金である。受給権者に配偶者や子がいれば加給年金が支給され、その配偶者には振替加算が加算される。つまり、配偶者等がいる世帯といない世帯とでは年金額が異なる。したがって、世帯としての年金額を検討する必要がある。 1 加給年金と振替加算 【第4回】で示したとおり、老齢基礎年金には、振替加算額が加算される場合がある。 例えば、夫の老齢厚生年金の加給年金額の算定対象となっていた妻が、65歳になって老齢基礎年金の受給権を取得したときに、老齢基礎年金の年金額に受給者の生年月日(昭和41年4月1日以前に生まれた者に限る)に応じて加算されるものである。 〈事例1〉 振替加算は老齢基礎年金を受ける人の生年月日で異なる(下図参照)。 この事例の姉の場合、「昭和26年4月2日~昭和27年4月1日に生まれた者」に該当するので、年額75,400円の振替加算額が老齢基礎年金に加算されている。 この事例の妻の場合は、「昭和33年4月2日~昭和34年4月1日に生まれた者」に該当するため、年額が33,300円の振替加算額が老齢基礎年金に加算される。 2 繰下げ受給と振替加算 繰下げ受給とは、老齢基礎年金及び老齢厚生年金を65歳のときに請求せずに、66歳以降に申し出をした場合に一定の割り増しの年金が受給できる制度である(【第6回】参照)。 1で示したように、振替加算は老齢基礎年金に加算されるが、振替加算が加算される妻が老齢基礎年金の繰下げ受給するために65歳のときに老齢基礎年金を請求しない場合、その間は振替加算を受け取ることができない。振替加算は繰下げの申し出をした翌月から加算される。ただし、振替加算は繰下げの増額の対象にはならない。 〈事例2〉 平成27年9月20日に65歳。2年(24ヶ月)繰り下げることにより、16.8%増額することになる。 平成29年9月に繰下げの申し出をすれば、翌月の10月から992,656円(平成27年度価額で試算)の年金が支給される。夫の加給年金の対象となっているため、振替加算が支給されるが、振替加算分は、増額の対象にならない。 3 老齢厚生年金と繰下げ受給と加給年金 加給年金は、厚生年金保険の加入期間が20年以上ある人が65歳未満の配偶者や18歳年度末までの子等を生計維持している場合に、定額部分が支給されるとき又は65歳から加算される(【第10回】参照)。 繰下げの申し出をした場合、申し出をした翌月から加給年金が加算される。ただし、加給年金は、繰下げの増額の対象にはならない。 〈事例3〉 5つ年下の妻なので、夫が65歳に達した翌月から加給年金が加算される。平成27年度価格で390,100円になるので、5年間受給できる場合、390100円×5=1,950,500円である。 老齢厚生年金を繰り下げると、繰り下げている間は、加給年金は受給できない。加給年金は、妻が65歳になると支給されなくなるので、例えば、70歳まで繰り下げをした場合は、加給年金が支給されなくなる。年金額の増額のために繰下げ受給を考えているのであれば、老齢厚生年金の繰下げではなく、老齢基礎年金のみの繰下げを検討する必要がある。 《おさらいQ&A》 (了)
養子縁組を使った相続対策と 法規制・手続のポイント 【第7回】 「離縁の要件・離縁を認めなかった裁判例」 弁護士・税理士 米倉 裕樹 [1] はじめに 普通養子縁組は、当事者はいつでも協議により戸籍上の届出のみで離縁をすることができ(民811)、離縁の訴えを提起することもできる(民814)。これに対し、特別養子縁組については、原則として離縁を認めず、養親による虐待、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由があり、かつ実父母に相当の監護能力がある場合に限り、例外的に家庭裁判所の審判によってのみ認められ(民817の10①②)、協議による離縁を認めていない。 また、特別養子縁組の場合、養親からの離縁の審判請求は認められておらず(民817の10①)、特別養子が成年に達して監護の必要性がないときには特段の事情がない限り、離縁させることはできない。 このように、特別養子離縁では厳格な要件のもと、必ず家庭裁判所の審判が必要となる反面、普通養子離縁は当事者の協議によって可能であるため、離縁が当事者間の話し合いによって合意できるのであれば、何ら特別な理由は必要でない。もっとも、話し合いによる解決が困難な場合には、最終的に裁判によって解決されなければならないことから、それ相当の離縁事由が必要となる。 そこで、以下、普通養子離縁が訴訟上認められる要件について、問題となった裁判例とともに紹介する。 [2] 離縁原因 離縁当事者の一方は、①悪意で遺棄されたとき、②3年以上の生死不明、③その他縁組を継続し難い重大な事由があるときは、離縁の訴えを提起できる(民814①)。 養子が15歳未満の場合には、離縁後に養子の法定代理人となる者が訴えを提起でき(民815)、例えば、養子の実父母が生存中でかつ婚姻中である場合には、実父母が訴えを提起することとなる。 なお、離縁の訴えを提起するには、まず、家庭裁判所に調停の申立を行わなければならない(調停前置主義・家法244・257①)。 1 悪意の遺棄 「悪意」とは、遺棄の事実の認識にとどまらず、積極的にこれを認容する意思のことをいう。「遺棄」とは、単なる扶養義務違反に限定されず、親子関係として要請される物質的・精神的な共同生活を正当な事由なく破棄し顧みないことをいう。 問題となった裁判例として、老齢で資力のない養親に対し家計費をほとんど渡さず、酒色にふける生活を続け、約半年間の養親との同居生活においても養子の生活態度は変わらないままに別居し、養親と円満な養親子関係を維持する意思を欠くものとして悪意の遺棄を認めた福島家昭和42年9月12日審判が存在する。 2 3年以上の生死不明 昭和62年の民法改正により、「養子の生死」となっていたものが、子のための養子制度という理念から、「他の一方の生死が3年以上明らかでないとき」と見直された。音信不通では足りず、3年以上継続して生死不明であることを要する。 なお、この事由に関し戦後に公刊された裁判例は見当たらない。 3 その他縁組を継続し難い重大な事由 悪意の遺棄、3年以上の生死不明は「その他縁組を継続し難い重大な事由」の例示とされ、「縁組を継続し難い重大な事由」とは、養親子としての精神的経済的生活関係を維持もしくは回復することがきわめて困難なほどに縁組を破綻せしめる事由の存する場合を意味し、具体的な事案ごとに総合的判断によって認定される(中川善之助・山畠正男編『新版注釈民法(24)』有斐閣、2002年、509頁以下)。公表されている裁判例もこの事由に集中している。 以下、問題となった裁判例を行為態様ごとに紹介する。 (ア) 暴行・虐待・暴言・侮辱等 などが存在する。 (イ) 別居 婚姻と異なり、同居義務のない養親子関係においては、単に別居しているというだけで直ちに破綻を意味するものではない。 裁判例では、養子縁組後、同居したことがないというにとどまらず、当初は相互に交流はあったものの、その後、年賀状を出したり、電話をかけたり、互いの家を訪問したり、一緒に食事をとることもなかったことから、互いに養親子として交流を図る意思がなく、養子縁組関係が破綻しているとして、養子縁組を継続し難い重大な事由を認めた東京地裁平成16年8月23日判決が存在する。 (ウ) 財産的トラブル などが存在する。 [3] 有責当事者からの離縁請求 かつて裁判例は、縁組の破綻に責任を有する者(有責当事者)からの離縁請求は認められないとの立場を堅持してきたが、最近の裁判例は軟化傾向にあり、有責当事者からの離縁請求も認められる余地がある。 東京高裁平成5年8月25日判決では、成人の養子縁組の場合に、親子関係が正常な状態を欠くに至った期間が相当の長期間に及ぶ場合には、有責当事者からの離縁請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情が認められない限り、離縁の請求を認容することができると判示している。同裁判例の原審(新潟地高田支判平成4年5月21日)では、破綻期間が10年を超えたことを理由に離縁を認めている。 なお、有責当事者からの離縁請求が拒否されるのは、相手方の意思に反する場合であるから、相手方にも離縁意思があるときには、単に報復のためや財産的請求のために離縁に応じなくても、有責当事者から離縁請求は認容される(東京弁護士会法友全期会家族法研究会編『離婚・離縁事件実務マニュアル第3版』ぎょうせい、2015年、378頁)。 [4] 財産分与・慰謝料 離縁に伴う財産分与については、明文の規定もないことから、実務上は離縁において財産分与請求権は認められていない。 離縁調停や離縁訴訟の和解においては、財産分与を考慮した給付合意がなされることはあるが、審判や訴訟での判決において財産分与が認められた事例は審判例が1件存在するだけであり、同審判例においても具体的な根拠は示されていない(東京弁護士会法友全期会家族法研究会編『離婚・離縁事件実務マニュアル第3版』ぎょうせい、2015年、392頁)。 他方、慰謝料については、離婚の場合と同様に、縁組当事者の一方は、有責な相手方に対して慰謝料を請求できることに争いはない。慰謝料の算定においては、養親子関係の破綻原因、有責割合、縁組(同居)期間、双方の収入、資産、年齢等が重視される。 (了)
常識としてのビジネス法律 【第27回】 「会社法《平成26年改正対応》(その8)」 弁護士 矢野 千秋 第7 会計参与 1 会計参与の新設 株式会社は、定款の定めによって、会計参与を置くことができる(326条2項)。会計参与は、株主総会の決議によって選任され(329条1項)、取締役または執行役と共同して計算書類等を作成する(374条1項6項)。これにより計算書類の適正性・正確性を高めることを目的とする。 会計監査人と会計参与が並存しうるが、会計参与が計算書類を作成する機関であるのに対し、会計監査人は作成された計算書類が会社の財産・損益の状況を正しく表しているかを監査する機関であるため、両者の役割は異なっている。 2 会計参与の資格 会計参与は、公認会計士、監査法人、税理士または税理士法人でなければならない(333条1項)。 また、以下の①~③のいずれかに該当する者は、会計参与になることができない(同条3項)。 なお、会計参与となった公認会計士または監査法人は、会計監査人を兼任することはできない(337条3項1号)。 3 会計参与の選任等 (1) 会計参与の選解任 会計参与は、株主総会の普通決議で選任され(329条1項)、普通決議により、会計参与をいつでも解任することができる(339条1項)。会計参与の選任決議・解任決議の定足数は、定款をもってしても、議決権を行使できる株主の有する議決権の総数の3分の1未満にすることはできない(341条)。 (2) 会計参与の任期 会計参与の任期は原則として選任後2年(指名委員会等設置会社の場合は1年)以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時総会の終結の時までとする。ただし、定款または株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない(334条1項、332条1項3項)。 非公開会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く)については、定款で、その任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時総会の終結の時まで伸長することがきる(334条1項、332条2項)。 4 会計参与の職務と責任 第8 監査等委員会設置会社 1 総説 監査等委員会設置会社とは、定款に基づいて、監査等委員会を設置するものである(2条11号の2)。この場合、監査役、監査役会は設置されない(327条1項3号、4項、5項)。 監査等委員会設置会社は取締役会設置会社(327条1項3号)で、会計監査人設置会社(327条5項)であることを要する。 監査等委員会は、指名委員会等設置会社の監査委員会が有する権限に加え、監査等委員以外の取締役の選任等(指名委員会)および報酬等(報酬委員会)につき株主総会における意見陳述権を有しており、これが監査「等」と呼ばれる理由である。 2 取締役、取締役会 (1) 選任解任 取締役が監査等委員である取締役の選任議案を総会に提出するには、監査等委員会に、議案への同意権および議題議案の提案権があり(344条の2)、かつ総会において監査等委員はその選任等につき意見陳述権を有する(342条の2第1項)。 監査等委員以外の取締役の選任解任について、監査等委員会の意見を述べることができる(342条の2第4項)。 監査等委員の解任には総会の特別決議が必要である(344条の2第3項)。 (2) 任期 監査等委員の任期は選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時総会の終結の時までである(332条1項)。監査等委員以外の取締役は1年である。 (3) 業務執行の決定 業務執行の決定は取締役会、代表取締役、業務執行取締役等によって行われる(399条の13等)。 以下の①または②の要件を充たせば、取締役会は指名委員会等設置会社が執行役に委任できるのと同じ業務執行事項の決定を取締役に委任できる(416条4項)。 取締役会は内部統制システムの整備に関する決定を行うことが義務付けられている(399条の13第1項1号ハ)。 3 報酬等、責任 (1) 報酬等 定款に定めがなければ総会の決議で決定されるが(361条1項)、決議の際、監査等委員とそれ以外の取締役とを区別して定めることを要し、監査等委員はその報酬等について意見を述べることができる(361条2項5項)。 また、監査等委員会が選定する監査等委員は、総会で監査等委員である取締役以外の取締役の報酬等について監査等委員会の意見を述べることができる(361条6項)。 (2) 責任、一部免除 責任の実体規定については、監査役会設置会社と大きく異なるところはない(ただし423条4項は監査等委員会設置会社のみの特徴的規定である)。一部免除についてもほぼ同様である。 4 監査等委員会 (1) 組織運営 監査等委員会は、3人以上の委員(いずれも取締役)によって構成され、委員の過半数は、社外取締役である(331条6項、399条の2第2項)。 監査等委員は、(社外取締役でない者についても)その会社または子会社の業務執行取締役、支配人その他の使用人などを兼務してはならない(331条3項)。 招集権(399条の8)は委員である各取締役が招集でき、招集手続(399条の9第1項、2項)、決議方法(399条の10第1項、2項)、議事録等は、基本的に取締役会の場合と同じである。 (2) 権限 監査等委員会は、原則、指名委員会等設置会社の監査委員会が有する権限と同様の権限を有する(例えば、委員会による監査は適法性監査のみならず妥当性監査にも及ぶと解されるなど)(399条の3~7)。すなわち取締役の職務の執行を監査し監査報告を作成する(399条の2第3項1号)。 ① 調査権限 監査等委員会が選定する監査等委員は、いつでも取締役以下に対し、職務執行に関する事項の報告を求め、また会社の業務・財産の状況の調査ができる(399条の3第1項)。子会社に対しても同様である(399条の3第2項)。 ② 是正権限 監査等委員会が選定する監査等委員は、監査等委員である取締役以外の取締役会社間の訴訟につき会社を代表する(399条の7第1項2号)。 各監査等委員は取締役の違法行為の差止請求権を有する(399条の6)。 各監査等委員は取締役が不正の行為等をする等の場合は遅滞なくその旨を取締役会に報告しなければならない(399条の4)。 ③ 報告権限 監査等委員会は各事業年度ごとに監査報告を作成する(399条の2第3項1号)。 監査等委員は、取締役が総会に提出しようとする議案等につき、法令定款違反または著しく不当な事項があると認めるときは、その旨を総会に報告しなければならない(399条の5)。 ④ 経営評価権限 監査等委員会は、監査等委員である取締役以外の取締役の選任等および報酬等につき意見を決定し、選定する監査等委員は株主総会における意見陳述権を有している(399条の2第3項3号)。 第9 計算関係をめぐる基礎知識 1 財源規制を課す剰余金の分配の範囲 次に掲げる行為により株主に対して交付する金銭等(当該株式会社の株式を除く)の帳簿価額の総額は、当該行為がその効力を生ずる日における分配可能額を超えてはならない。(461条、166条1項但書、170条5項)。 2 財源規制の課されない場合とその例外 下記のように、会社が不可避的に、または法律の規定に基づき義務的に、自己株式を有償で取得する場合には、財源規制を課すことは不合理であることから規制が課されない。 上記の例外として、 を行う場合で、当該種類株主の種類株主総会決議を要しない場合の、反対株主の株式買取請求による自己株式の取得については、分配可能額を超えた場合に業務執行取締役または執行役その他業務執行者(462条)の超過額の弁済責任が生じる(116条1項、464条)。 株式譲渡制限を新設する定款変更等に対する買取請求に応じる場合も、会社が義務的に自己株式を取得する場合であるが、こうした場合に財源規制を課さないと、会社が単独で大量の自己株式を取得することが可能となるので、新法では、会社が単独で行う行為に起因する買取請求については財源規制の対象としたものである。 3 「剰余金の額」 「剰余金の額」については、最終事業年度の末日における資産の額と自己株式の帳簿価額の合計額の総額から、負債の額、資本金および準備金の合計額ならびにその他法務省令に定める勘定科目に計上した額の合計額の総額を控除した額に、以下の最終事業年度末日後の変動の調整を加えた額とされる(446条)。 4 「分配可能額」の計算 「分配可能額」とは、剰余金の額と臨時決算手続をとった場合の期間利益の額および臨時決算の対象期間の自己株式処分の対価の合計額から、自己株式の帳簿価額(分配可能額計算時のもの)、最終事業年度の末日後の自己株式処分の対価、臨時決算手続をとった場合の期間損失の額およびその他法務省令で定める額の合計額を控除した額とされる(461条2項)。 5 純資産額による剰余金の配当の制限 純資産額が300万円を下回る場合は剰余金の配当ができない(458条)。 最低資本金制度は廃止されることとなったものの、剰余金配当の場面では300万円の最低資本金の規制が課されているのと同じことになる。 6 資本その他 株式会社の資本金の額は、この法律に別段の定めがある場合を除き、設立又は株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額とする。払込み又は給付に係る額の2分の1を超えない額は、資本金として計上しないことができる。 株式会社は、資本金の額を減少することができる。この場合においては、株主総会の特別決議によって、減少する資本金の額、減少する資本金の額の全部又は一部を準備金とするときは、その旨及び準備金とする額、資本金の額の減少がその効力を生ずる日を定めなければならない。 資本金として計上しないこととした額は、資本準備金として計上しなければならない(445条1項2項3項)。 なお会社法上では資本準備金と利益準備金の取扱いに区別がなくなり、共に「準備金」と総称されることとなった(445条4項)。 剰余金の配当をする場合には、株式会社は、法務省令で定めるところにより、当該剰余金の配当により減少する剰余金の額に10分の1を乗じて得た額を準備金として計上しなければならない(4項)。 株式会社は、準備金の額を減少することができる。この場合においては、株主総会の普通決議によって、減少する準備金の額、減少する準備金の額の全部又は一部を資本金とするときは、その旨及び資本金とする額、準備金の額の減少がその効力を生ずる日を定めなければならない(448条1項)。 (了)