〔会計不正調査報告書を読む〕 【第18回】 株式会社アイレックス・ 「第三者委員会調査報告書」 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 【概要】 【株式会社アイレックスの概要】 株式会社アイレックス(以下「アイレックス」という)は、1948(昭和23)年設立。プリント配線板の製造を主たる事業としてきたが、近年はシステム開発に事業領域をシフトし、「システム開発を軸として、ハードウェア開発・設計、業務系アプリケーション開発から、評価・検証、運用・保守業務までのトータルソリューションサービスをワンストップで提供できる体制を構築(平成26年3月期有価証券報告書より)」している。 連結売上高37億3,200万円、経常利益1億7,800万円、従業員数392名(2014年3月末)。本店所在地は東京都中央区。JASDAQ上場。 【報告書のポイント】 1 二度にわたる第三者委員会の設置に至る経緯 (1) 不適切な会計処理(第一次)の発覚と調査 アイレックス監査役会は、平成24年11月、会計監査人である聖橋監査法人からの第2四半期レビュー結果報告をきっかけに、売上の実在性に疑義を持ったため、常勤監査役が経営会議等の席で、これを当時の代表取締役社長であった久次米氏(以下「久次米元社長」という)に質したが、明確な回答を得られなかった。 決算期末に当たり、久次米元社長から売上の減額処理を行うとの報告を受けた常勤監査役は、事の重大性に鑑み、親会社の社長に報告・相談した。その結果、親会社グループの社員が参加する内部調査委員会による調査が開始された後、第三者委員会(第一次)が設置され、平成25年6月10日になって、調査報告書が公表された。 (2) 第三者委員会(第一次)による調査結果 約1ヶ月という短期間での調査ということもあって、調査の対象は、実在性について疑義が生じていた「締め後売上」に、実質上、絞られていたようである。 「締め後売上」について、アイレックスは、東京証券取引所へ提出した改善報告書(平成26年3月31日付、以下「改善報告書」と略称する)の中で、次のように説明している。 例えば、顧客の締日が20日である場合、通常は前月21日から当月20日までの作業に係る売上を当月計上すべきところ(検収基準による売上計上)、四半期末に限って、当月21日から末日までの10日分の作業について、売上を計上する。毎月の発生費用は、すでに売上原価として処理されているので、締め後売上計上金額=利益となり、売上原価のない売上に不信感を持たれないように、他のオーダーから勤務表の改ざんを行って売上原価の付け替えを行っていたものである。 こうした締め後売上について、監査法人は、平成24年11月の第2四半期レビュー結果報告会で異常な増加(前年同期比1億7,000万円増)を指摘し、久次米元社長は、平成25年3月期決算において、1億4,000万円の減額処理を行うと報告していたが、第一次調査報告書では、さらに62百万円あまりの利益の訂正が必要であるとした。 (3) 第一次調査報告書の問題点 上述のとおり、第一次第三者委員会の調査対象は「締め後売上」の実在性をのみ対象としていた感があるので、第二次調査で露見した不適切な会計処理が見逃されたことを問題視するのは酷かもしれないが、工事進行基準に関する以下の認識については、疑問を感じるところである。 この文章は、アイレックスによる不適切な売上計上が、「締め後売上」という、いわば顧客の検収がない状態での売上計上に限られているという説明でのくだりにある。 工事進行基準による売上計上ついては、必ず「見積り」に依らざるを得ないところがあり、そうした恣意性の介在をどう防ぐか、どのような統制を行っているのかを問題にすべきであるというのが、一般的な考えであると理解しているが、第一次報告書には、何をもって「厳密に管理されて」いるという判断に至ったかの根拠が示されておらず、むしろ、締め後売上に係る売上原価の付け替えが容易に行われていたという事実からは、工事進行基準による売上計上においても、売上原価を実際よりも過大に計上することによって、売上が過大に、あるいは前倒しで計上されている可能性を排除すべきではなかったと考える。 結果的に、第二次第三者委員会報告書では、工事進行基準による売上の前倒し計上が発覚していることから、第一次第三者委員会の上記の認識は否定された形となっているが、この点に関しては、短い調査期間による調査対象を絞り込んだことの弊害があったと考えざるを得ない。 2 今回の調査結果により判明した事実 (1) 不適切な会計処理(第二次)発覚の経緯 アイレックスは、第一次調査報告書に基づく過年度決算短信等の訂正について、平成25年10月から、証券取引等監視委員会の検査を受ける中で、過年度の仕掛品の一部に資産性のないものが計上されたことが判明し、再び、第三者委員会(第二次)を設置して、平成20年1月から平成25年9月までの期間について、さらに不適切な会計処理に関する調査を行うこととなった。 そして、平成26年3月7日、第二次第三者委員会による調査報告書が公表された。 (2) 第三者委員会(第二次)により指摘された不適切な会計処理 第二次第三者委員会調査報告書により指摘された不適切な会計処理は、次の4つの類型にわたるが、いずれも、アイレックスは平成25年3月期決算で減損処理を行うなどして訂正を済ませた事象であり、第三者委員会は、これを平成25年3月期ではなく、それぞれの事象の発生時期において訂正すべきであるとして、訂正を求めている。 ① 締め後売上の架空計上 締め後売上の手法については上述したとおりであるが、第一次第三者委員会の調査により判明した締め後売上の他にも、金額は数百万円にとどまるが、平成21年3月期以降、締め後売上が計上されていたことが判明した。 ② 工事進行基準における売上の前倒し計上 工事進行基準による売上計上は、予定総原価に対する当期の実績原価の比率をもとに進捗度を計算して行うところ、実際には作業に従事していない人員の作業時間数を勤務表に修正して計上し、実績原価を高くすることにより、売上の前倒し計上を行っていることが判明した。 ③ 市場販売目的のソフトウェアの不適切な資産計上 アイレックスは、平成23年7月に完成した試作機を「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」(※)に規定する「最初に製品化された製品マスター」と判断して、それ以降のソフトウェアの機能の改良・強化を行う制作活動のための費用を「ソフトウェア仮勘定」として資産計上しているが、第二次調査委員会は、この試作機を「最初に製品化された製品マスター」には該当しないとして、費用発生の都度、研究開発費として費用処理するべきものであったと判断した。 (※) 日本公認会計士協会会計制度委員会報告第12号「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」(平成23年3月29日改正) ④ 仕掛品の過大計上 アイレックス大阪支店の赤字プロジェクトの原価を仕掛品として計上することにより赤字を先送りしていたことをはじめとして、本来は工事原価として処理すべき人件費が仕掛品に計上されていたものがあった(第二次第三者委員会を設置するきっかけとなった証券投資等監視委員会の検査によって発見されていた事象でもあった)。 (3) 元社長による「公表値達成至上主義」 第二次調査報告書で繰り返し指摘されているのが、久次米元社長による「公表値達成至上主義」とも言うべき姿勢であり、不適切な会計処理は、久次米元社長から公表した業績予想の達成を強く求められた結果、当時の取締役システム本部長山口克己氏(以下「山口元取締役」という)が主導して行われたものであり、その際には、赤字であれば賞与が出ないというプレッシャーを受け、従業員の士気低下や離職を懸念して、公表値を達成するためにはコンプライアンスを無視しても仕方ないという雰囲気が醸成されたものであった。 なお、第二次第三者委員会の調査に対し、久次米元社長は、利益目標の達成を強く求めた結果、不適切な会計処理が行われたことは認めたものの、売上の前倒し計上を部下に指示したことは否定しているということである。 (4) 資金繰りの悪化 第二次調査報告書には、内部統制上の問題点として、「取締役会の監視機能の不全」という項目が挙げられ、不適切な会計処理が行われていることを知っていた取締役が存在したが、事実の是正を求めた者はいなかったとして、取締役相互の監視機能が不十分だったと結論づけている。 不適切な会計処理を主導した山口元取締役が事実を知っていたことは当然であるが、他にも、当時の取締役管理部長中野浩樹氏(以下「中野元取締役」という)は、第一次調査報告書によれば、「自らが作成した資金繰り表の預金残高と売上高が乖離」したことから、締め後売上が増加していることに、平成24年7月頃、すでに気づいていたということである。資金繰りの悪化は、すぐに久次米元社長に報告されたが、資金繰りの精査を指示されただけで、中野元取締役の営業部門に対する監視機能は働かなかった。 (5) 業務管理部門、経理部門の人員不足 第二次調査報告書では、「営業部門と業務管理・経理部門の相互牽制機能の欠如」を問題点として挙げ、再発防止策の中で「経理部門の増員」について提言しているが、具体的にどのような陣容で業務が行われていたかについては、改善報告書に記述があったので、そちらから引用する。 まず、業務管理課であるが、平成25年3月(第一次不適切な会計処理発覚時)までは、スタッフ1名で実質的な管理職は配置されていなかったところ、平成25年4月から、専任の管理職2名、専任の担当者2名の体制としたということである。 一方、経理部は、平成25年3月まで管理部門の責任者である中野元取締役と経理課員の実質2名であったところ、専任の管理職2名、専任の担当者2名の体制にし、かつ、管理職は仕訳の入力・計上を行わず、内容の確認及び承認を行い、財務分析結果を取締役会に提出する体制となった(平成26年3月分から)ということである。 売上高37億円の上場企業の管理部門としては、いかにも人員不足の感は否めず、むしろ、決算書類や開示資料の作成などが期日通りにできた点に驚きを禁じ得ないが、これだけ少ない人員であれば、集計業務をこなすのが精一杯で、不正の端緒に気づいたとしても、何らかの調査に着手する余裕はなかったのではないかと思料する。 3 アイレックスによる再発防止策 最後にアイレックスによる再発防止策について、同社の有価証券報告書にある「対処すべき課題」から引用する。 両者を比較検討してみると、再発防止のための施策内容は、発覚した「締め後売上」という不適切な会計処理に対する個別的な対策が中心であった平成25年3月期から、平成26年3月期では、不適切な会計処理全般について網羅的な再発防止策を具体化していると言えよう。 例えば、経営改革推進室は、再発防止策というよりは、経営計画の作成、予算精度の向上、営業戦略、コンプライアンス推進など、実に幅広い機能を有する部署として設置され、「二度と有価証券報告書の訂正報告等が起こらない社内管理体制(改善報告書)」を構築する中心的役割が期待されている。 久次米元社長を中心とする旧経営陣が、平成25年6月開催の株主総会までに大幅に入れ替わり、平成26年3月期において再発防止策を進めた結果が、こうした記述になったものと考えられる。 なお、アイレックスに対しては、平成26年6月19日、証券取引等監視委員会から内閣総理大臣及び金 融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、1,500万円の課徴金納付命令を発出するよう勧告を行った旨、公表がされている。 (了)
国際出向社員の人事労務上の留意点 (日本から海外編) 【第5回】 (最終回) 「海外出向者の社会保険適用関係」 社会保険労務士 平澤 貞三 (1) 健康保険・厚生年金 健康保険と厚生年金保険は、適用事業所である日本の出向元との使用関係がある限り、被保険者資格が継続する。 使用関係は、労務の提供、報酬の支払い、人事管理などの観点から判断されるが、実際の保険者の判断は、「報酬の支払いの有無」を重要視しているケースがほとんどである。 ここで問題となるのが、保険料の基礎となる標準報酬月額をどのように算定すべきか、ということであるが、法律には海外勤務者の標準報酬をどのように算定すべきか定義されておらず、日本年金機構においては過去の事例の積み上げで判断しているというのが実態である。 ちなみに、2014年3月に、これまでの事例積み上げ事例をベースに、日本年金機構から海外勤務者の算定報酬の基本的な考え方が示された。 上記発表を踏まえて、筆者が年金事務所に確認し、そのやり取りの中で次のように理解した。 これまでの筆者の経験では、海外勤務することで上乗せされた手当を除き、海外赴任時の国内給与をベースに標準報酬を算定し、その後もその基本給部分の増減をもって月額改定等を行ってきた会社が多数を占めていたのではないかと思われる。 実際の給与の支払い方(日本から払う円貨や現地で受ける外貨)は、会社の規程にもよるが、大半は赴任時の家族構成で決まることも多く、単にキャッシュベースで報酬の算定をするのは被保険者の利益を大きく損なうケースもあり、必ずしも妥当な考え方とは言えないのではないかと考える。 また、赴任者の給与を日本と海外の会社でどのように負担すべきかは、赴任の目的や会社間の関係、あるいは国税当局からの指導により決まることであり、これを個人の社会保険の費用(標準報酬)にリンクさせてしまうのは著しく公平性を欠くものと言わざるを得ない。 海外赴任者に関する社会保険の法整備が追い付いていないのが現状であり、早期に適正な法律やルールが示されることを待ちたい。 (2) 介護保険 国内に住所を有しない場合、介護保険の適用除外者となるので、「介護保険適用除外等該当届」を保険者に提出する必要がある。 (3) 雇用保険 雇用保険は、適用事業所である出向元との雇用関係がある限り、勤務地が国内外を問わず被保険者となる。 (4) 労災保険 「海外出張」中に発生した業務上の事故については通常の労災保険が適用となるが、「海外派遣」中については、「海外派遣の特別加入」手続きを行っていない限り、労災保険の適用はない。 (連載了)
改正会社法 ―改正の重要ポイントと企業実務における留意点 【第1回】 「『インセンティブのねじれ』の解消」 西村あさひ法律事務所 パートナー 弁護士・ニューヨーク州弁護士 柴田 寛子 1 改正会社法の主眼 本年6月27日、会社法の一部を改正する法律(以下「改正会社法」という)が公布された。改正会社法の施行日は、公布日から1年6ヶ月以内で政令で定める日とされており(改正附則1条)、平成27年4月1日又は5月1日と見込まれている。 改正会社法は、「企業統治の強化」と「親子会社の規律」を主眼としたものであり、全面的な規制緩和が主眼であった平成17年商法改正による会社法制定とは大きく異なる。 具体的には、監査役制度の強化による企業統治強化が行き詰まる中、社外取締役選任の「準」義務化や監査・監督委員会設置会社制度の創設等、取締役会の監督機能強化による企業統治の充実が図られた。また、会計監査における「インセンティブのねじれ」の解消も一部盛り込まれた。さらに、親子会社のガバナンスに焦点が当たった初めての改正であり、多重代表訴訟制度の創設のほか、スクイーズ・アウトにより完全親子会社関係を作出するための新制度として株式売渡請求制度が創設された。 改正会社法のポイントについて解説する本シリーズの第1回では、「企業統治の強化」のうち、法務・監査実務に関与する方々にとって特に関心が高いと思われる、「インセンティブのねじれ」の解消について解説する。 2 「インセンティブのねじれ」の一部解消 (1) 現行会社法下での「インセンティブのねじれ」 現行会社法においては、①会計監査人の選解任等に関する議案の決定権及び②会計監査人の報酬等の決定権は、共に、取締役(会)が有している(ただし、委員会設置会社においては、①は監査委員会が有する)(会社法344条、404条2項2号)。監査役(会)には(②につき、委員会設置会社においては監査委員会)、上記①及び②の決定に係る同意権が付与されているに留まる(会社法399条)。 このように、会計監査の対象となる取締役(会)が、会計監査人を選任し、その報酬を決定していることにより、会計監査人の独立性を害し、ひいては会計監査の実効性に疑いを抱かせる原因となっているとの指摘があった(インセンティブのねじれ)。 (2) 改正会社法での対応 改正会社法においては、監査役(会)設置会社における会計監査人の選解任等に関する議案の内容の決定権は、監査役(会)が有することとなった(改正会社法344条)。 一方、会計監査人の報酬等の決定権限は、引き続き取締役(会)が有することとなった(委員会等設置会社においても変更なし)。これは、報酬等の決定は、重要な職務執行に該当するため、監査役(会)に付与することは適切ではないこと、また、監査役(会)や監査委員会が、会計監査人の報酬等に対する同意権等を通じて、会計監査人の独立性を確保することが期待できること等を理由とする。 もっとも、会計監査の独立性維持の観点から、報酬決定の透明性確保が重要であることについては、同意権付与とは異なる形で配慮されている。 具体的には、法務省令の改正により、事業報告や監査報告において、監査役(会)(委員会設置会社においては監査委員会)による、会計監査人の選解任等の議案の決定や報酬への同意の「理由等の開示」を義務づけることが予定されている。開示事項としては、「監査役(会)が当該候補者を会計監査人に選任すべきものとした理由」、「当該事業年度に係る各会計監査人の報酬等の額及び当該報酬等を定めることについて監査役(会)が同意をした理由」等が対象となるのではないかと見込まれる。 〈改正会社法下での監査役(会)及び監査委員会の会計監査人に関する権限〉 (※1) 改正会社法において新設される監査等委員会設置会社の監査等委員会も同様。 (※2) 委員会設置会社は、改正会社法においては、「指名委員会等設置会社」に名称変更される。 (3) 実務に与える影響 監査役(会)に会計監査人の選解任等に関する決定権限が付与されることに伴い、会計監査人の選解任等に関する監査役の負担・責任が重くなる可能性はある。もっとも、会計監査人は、通常、当然再任されることから、上記決定権が行使される場面は、実務上は限られる。 なお、会計監査人の選解任等に関する改正の適用時期については、改正会社法施行前に、選解任等に関する議案が上程される「株主総会の招集手続」が開始された場合には、なお従前の例によると規定されているため(改正附則15条)、改正会社法施行後に、該当する株主総会招集手続が開始される場合には、改正会社法に従うこととなる。 したがって、平成27年4月1日又は5月1日が改正会社法の施行日となった場合、3月決算の会社を例とすると、同年6月開催の定時株主総会において当該議案を上程するに際しては、改正会社法に従い、監査役(会)が会計監査人の選解任等について決定すべきことになろう。 また、監査役(会)による会計監査人の選解任等の議案の決定や報酬への同意の理由等の開示に関しては、仮に、改正法務省令の適用時期が、改正会社法の施行日と同日施行かつ適用とされた場合、3月決算の会社を例とすると、平成27年6月開催の定時株主総会に際して提供する事業報告及び監査報告において、これらの開示が求められることとなる。 したがって、関連する法務省令の改正及び適用時期については引き続き注視する必要がある。 (了)
事例で検証する最新コンプライアンス問題 【第2回】 「中国業者から仕入れた期限切れ肉事件」 弁護士 原 正雄 1 本件が発覚した経緯 本件は、地元テレビ局が2ヶ月ないし3ヶ月に及ぶ潜入取材を経て、7月20日に番組として報道したことによって、世間が知るところとなった。 報道によれば、同番組では、品質保持期限を半月以上経過した食肉を原料として加工するシーンが映し出された。記者が指摘したところ、作業員らは「関係ない、運べ」と指示したという。また、別の作業員は、期限切れの食肉を混ぜることについて「混ぜる割合がある。多すぎると食感が変わる。普通は5%だ」などと語ったとのことである。期限切れで「臭いがする」牛肉が使用されていたこともあった。作業員の一人は「期限切れを食べても、死にはしない」と語っていた。 他にも、冷凍肉を箱に詰め替える際、常温で作業を行う、床に落ちたハンバーグや鶏モモ肉を生産ラインにそのまま戻す、カビが生えて青く変色した牛肉を原料に使う、ということもあったようである。 本件は、日本では「期限切れ肉」として報道されているが、海外ではより直接的な表現として“rotten meat”、すなわち『腐った肉』として報道されている。 以上について、F食品は、当初は「工員の個人的な行為」との見解を示していた。しかし、上海市は、工場ぐるみでの組織的な不正として捉え、7月23日までにF食品の責任者や品質担当幹部ら計5人を刑事拘束している。 本件の発覚の経緯は、F食品の作業員の内部告発であった。この作業員は、最初は上司に問題があると訴えたが、反対に解雇されてしまった。そこで、地元テレビ局に内部告発したとのことであった。 従業員が会社の問題を訴えた場合、会社は、それを真摯に受け止め、自ら改善していく必要がある。会社の問題を訴えた従業員を解雇しても、それは自ら改善する機会を放棄することであり、さらに問題が外部に発覚し、拡大する契機を作ることにもなる。 私たちは、F食品のこうした経緯を教訓とし、従業員からの訴えを真摯に受け止める体制を築かなければならない。 2 日本企業2社による初期対応 2014年7月24日現在、F食品から輸入した加工肉を使用した企業は、日本ではハンバーガーチェーンと、コンビニエンスストアチェーンの2社と報道されている。 ハンバーガーチェーンは、販売するチキンナゲットのうち2割をF食品から調達していた。同社は、本件が発覚した翌日の7月21日、対象商品であるチキンナゲットの販売を中止した。さらに翌22日には、F食品の加工肉を取り扱っていたことを公表するとともに、厚生労働省に報告をしている。 コンビニエンスストアチェーンは、F食品から調達したチキン2種類を販売していた。1つは、7月1日から全国約1万店舗で販売していたとのことである。もう1つは、試験販売中であったため、10店舗のみの販売であったとのことである。同社も、7月22日、対象商品であるチキンの販売を中止するとともに、F食品から輸入した加工肉を取り扱っていたことを公表している。 以上2社の対応は、初期対応として迅速なものであったと考える。 注目すべきは、F食品の加工肉を取り扱っていない外食チェーンも、一斉に、F社の加工肉の取扱いがないことを積極的に公表したということである。世界的に見れば、あまりに多くの著名外食チェーンがF社の加工肉を取り扱っていた。そのため、情報を発信しないと、消費者から「F社の加工肉を実は輸入していたのでは?」と疑われてしまうからである。 同業他社に不祥事が起きた場合、対岸の火事と思うのではなく、自社としていかなるリスクがあるかを判断し、適切に行動する必要がある。 3 輸入食品の自主管理ガイドライン 2008年1月、中国産の冷凍餃子による薬物中毒事件が発生した。それを受けて、厚生労働省は、同年6月5日、輸入加工食品の安全確保策の1つとして、輸入者自身による輸出段階での管理強化を目的としたガイドライン「輸入加工食品の自主管理に関する指針」を公表した。 同ガイドラインは、食品等事業者が、食品安全基本法8条1項に基づき、食品の安全確保について第一義的責任を有することを確認する。また、食品衛生法3条1項に基づき、原材料の安全性の確保、販売食品等の自主検査の実施、その他の必要な措置を講ずるよう努力すべきことを確認する。 そのうえで、同ガイドラインは、食品を輸入する事業者が、海外の製造者に対して「衛生的な環境下で食品の製造加工が行われるための管理体制が整備されていること」や「食品等の取扱い」等について、文書で確認すること、さらには、現地調査、駐在員の設置、試験検査等によって必要な確認を行うべきことを求めている。 4 検査体制の充実を 今回、F食品の加工肉を取り扱ってしまった会社は、上記ガイドラインの要求水準を満たしていたものと推測される。 上記ハンバーガーチェーンは、一般に、調達の際には、サプライヤーである食品加工会社に、HACCP(ハセップ、Hazard Analysis and Critical Control Point、危害分析・重要管理点)による衛生管理や、独自のグローバル品質マネジメントシステムによる品質管理を求めてきた。また、第三者に依頼して外部監査を行う認証制度を採用し、品質・衛生管理を徹底してきたとのことである。 同チェーンのホームページには、こうした仕組みが説明されており、厳格な品質・衛生管理を行っていることを積極的にアピールしている。F食品についても、こうした品質・衛生管理を行ってきたはずである。 また、上記コンビニエンスストアチェーンは、2014年春にF食品と取引を開始したばかりであった。取引開始にあたっては、輸入を仲介した商社に依頼して、ヒアリングや現地工場の視察を通じたチェック体制を構築してきたとのことである。 にもかかわらず、両社は、今回の不祥事を見抜くことができなかった。報道によれば、F食品は、不正を隠すために、帳簿を社内用と社外用とで分けていたとのことである。F食品は、米国の大手食肉加工会社Oグループの傘下にある。Oグループは、40ヶ国以上に食肉を供給しており、世界展開している食品チェーンなどとも幅広く取引をしている。F食品は、地元では「優良企業」として見られていたとのことである。 このように、一見信頼できる外見を有するF食品が、帳簿を偽装してまで隠蔽工作をした場合、取引先が不正を見抜くのは容易ではない。被害にあった米国ファストフードチェーンのCEOは「やや欺かれた」と説明している。 しかし、「偽装されたから見抜けませんでした」と説明しても、消費者が納得するわけではない。海外からの調達を積極的に進めている会社には、偽装を見抜く責任がある。 定期検査で見抜けなかったのであれば、抜き打ちの検査を行うなど、今まで以上に、検査体制を充実させる必要がある。 (了)
事例でわかる消費税転嫁対策特別措置法のポイントQ&A 【第18回】 (最終回) 「転嫁カルテル・表示カルテルの活用〔②効果的な活用方法と留意点〕」 のぞみ総合法律事務所 弁護士 大東 泰雄 弁護士 山田 瞳 1 転嫁カルテルの活用方法と留意点 (1) 転嫁カルテルとして認められる行為 公正取引委員会「消費税の転嫁を阻害する行為等に関する消費税転嫁対策特別措置法、独占禁止法及び下請法上の考え方」(以下「公取委ガイドライン」という)の記述を元に検討すると、転嫁カルテルとして認められる行為は、以下のとおりである。 (2) 転嫁カルテルと認められない行為 公取委ガイドラインの記述を元に検討すると、転嫁カルテルとして認められない行為の具体例は、以下のとおりである。 (3) 独占禁止法上禁止されるカルテルに対する措置 以上のとおり、転嫁カルテルと認められる範囲を踏み越えた場合には、独占禁止法上禁止されるカルテルに該当する可能性があるため、転嫁カルテルが認められることを過大に受け止めず、細心の注意を払いつつ実施する必要がある。 注意喚起の意味で、独占禁止法違反と認定されたカルテルに対して課される処分等について述べると、以下のとおりである。 2 表示カルテルの活用方法と留意点 公取委ガイドラインの記述を元に検討すると、表示カルテルとして認められる行為は、以下のとおりである。 (連載了)
《速報解説》 ASBJ, EFRAG, OICが 「のれんはなお償却しなくてよいか」(ディスカッション・ペーパー)を公表 ~のれんの償却を再導入することが適切であろうとの見解~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 7月22日に、企業会計基準委員会(ASBJ)、欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)及びイタリアの基準設定主体(OIC)から「のれんはなお償却しなくてよいか―のれんの会計処理及び開示」(以下「ディスカッション・ペーパー」という)が公表された。 後述するように、本ディスカッション・ペーパーにおいて、リサーチ・グループは、のれんの償却を再導入することが適切であろうという結論を下している。 ディスカッション・ペーパーは、以下の著者(「リサーチ・グループ」と総称)が、企業結合で取得したのれんの会計処理の要求事項に関する議論を促すために作成したものである。 ディスカッション・ペーパーは、「関係者への質問」として、5項目を記載し、コメント募集を行っている。 コメント募集は平成26年9月20日までである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 ディスカッション・ペーパーの目的は、IASBが基準設定に関する取組みを正式に検討する前に、のれんに関する会計処理及び開示の要求事項について識別された重要な主題に関しての議論を促し進展させることにある。 1 のれんに関する問題点の識別 IASBがIFRS第3号「企業結合」及び他の関連基準を改訂した際に、従前の「償却及び減損アプローチ」を「減損のみアプローチ」で置き換えてから10年が経過し、取得したのれんに関する会計処理及び開示をめぐる議論はますます活発になっているとのことである。 リサーチ・グループは、減損のみアプローチがもたらす情報の有用性及び減損のみアプローチを適用する際の情報の作成と監査に係る課題に関する見解を求めるため、アンケート調査を実施した。 アンケート調査の結果、次のことが識別された。 2 リサーチ・グループによる検討 のれんに関する前述の問題点を解決するために、次の3つの異なるアプローチを検討している。 リサーチ・グループは、のれんの償却を再導入することが適切であろうという結論を下している。 これは、のれんの償却は、企業結合で取得した経済的資源の一定期間にわたる消費を合理的に反映するものであり、適切なレベルの検証可能性と信頼性を達成する方法により適用できるからであると述べている。 また、開示要求の領域においてより一層の改善を検討すべきであることも述べている。 (了)
2014年7月24日(木)AM10:30、Profession Journal No.79 が公開されました。 Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開してまいります。
山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第1回】 「法人税法第34条の罪作り」 税理士 山本 守之 〔事例の内容〕 納税者はこれを不服として審査請求した。「退職給与は法人税基本通達9-2-32に従って損金算入した」という主張である。 これに対して原処分庁は次のように主張した。 結局、国税不服審判所では、 として国側主張に軍配を挙げた。 〔検 討〕 (損金算入時期) 退職給与の損金算入時期は次のように2つの時期(法基通9-2-28)がある。 商事法の考え方からすれば、役員退職金は株主総会の専決事項である以上は、①の処理が原則となり、②はあくまで特例である。 しかし、①のみとすると事実上退職給与を支給しても損金の額に算入しないと次のような不都合が生ずる。 このように、支給額に所得税や相続税を課しながら株主総会の決議がないという理由で法人税の損金の額に算入しないのは説明に苦しむので、損金算入時期について2つの選択肢を置いたのである。 ところで、退職後いつまでに株主総会の決議をしなければならないか問題となるが、課税庁の解説書では次のように書かれている。 (『法人税実例集成』東京国税局調査審理課、同課長監修308頁、税務研究会刊) この回答は、次のような相続税法第3条第1項第2号の規定を援用したものであるが、絶対的基準ではなく、一応の目安としたものに過ぎない。 むしろ、支給決議の遅延が「利益操作の具とされていないか」「課税上弊害がないか」とともに、決議遅延が税負担を有利に導くこと以外に合理的理由がないのか否かといった観点から検討するべき事柄なのであろう。 (分掌変更の場合の支給遅延) 法人税基本通達9-2-32では、次のような取扱いを置いている。 しかし、この通達には2つの問題点がある。 1つは、通達でこのような課税要件を定めてよいのかという問題点である。 通達は分掌変更に際して、「実質的に退職したと同様の事情にあること」について、例えば常勤役員が非常勤役員になったこと、取締役が監査役になったこと、その分掌変更後における報酬がおおむね50%以上減少したこと等を例示している。 通達はあくまで例示で、退職と同様の事情にあったか否かはその分掌変更後における職務の内容、役員としての地位の激変等の事実により実質的に判定するべきなのである。 しかし、一般の税実務では、通達に書かれている例示があたかも課税要件のように受け取られている。 その意味からすれば、このような「例示」は通達に書くものではなく、退職という事実の判定は納税者の法解釈に委ねるべきであったかもしれない。 実は、平成18年2月10日の京都地裁判決(平成18年10月25日大阪高裁同旨)では、法人税基本通達9-2-32に定めた事実に該当するとしても、「退職の事実」はあくまでも実質的に判断すべきだとしている。 この意味では、通達に書かれた事実に盲目的に従っている税実務に対して警鐘を鳴らした判決であるといえる。 残念なのは、課税庁がこの判決(大阪高裁平成18年10月25日)によって通達を廃止しないで、次のような情報を出しただけでお茶をにごしていることである。 もうひとつの問題は、この通達(法基通9-2-32)を適用して退職金を支給する場合は、一般の場合のようにほぼ3年間の猶予があるわけではないというのが課税庁の見解である。 本件における国税不服審判所の裁決では、退職によらない役員退職給与の損金算入を例外的に認める本件通達は、恣意的な損金算入などの弊害を防止する必要性に鑑み、原則として、法人が実際に支払ったものに限り適用されるべきであって、当該分掌変更等の時に当該支給がされなかったことが真に合理的な理由によるものである場合に限り、例外的に適用されるというべきであるとして法基通9-2-32は適用されないから、退職給与でない。としたのである。 そこで、退職給与の支給遅延は次の場合に認めることになっている。 事例では、②を適用したので、退職時に支給したものだけを退職給与とし、翌期支給分や未払分は「退職給与とは認めない」としたのである。 注意したいのは、「法基通9-2-32の適用は認めない」としたのは「退職給与とは認めない」としたのであって「損金不算入」としたのではないということである。 つまり、本事例の基となった平成24年3月27日裁決では、次のように判断している。 課税要件法定主義からすれば、損金不算入の規定は必ず法律に定めなければならず、法基通9-2-32の適用を認めないとするのは、あくまで「退職給与とはしない」とするだけである。 ところで、役員給与の損金不算入を規定した法人税法第34条は、その第1項に次のように規定している(アンダーライン筆者)。 つまり、「定期同額給与」「事前確定届出給与」「利益連動給与」以外は損金不算入とする規定の適用は、①退職給与②新株予約権によるもの③使用人兼務役員の使用人分給与は除かれるのである。 逆にいえば、法基通9-2-32の適用が否認されれば、原則規定(定期同額給与、事前確定届出給与、利益連動給与以外は損金不算入)が適用されるのである。 もちろん、法人が退職給与と認定して支給した給与は、その支給実態からみて「定期同額給与」になるわけではないので、損金不算入となってしまうのである。 これはペテンのような法解釈論理である。 〔本稿のまとめ〕 法人税法第34条で損金不算入としているのは、次の3つの場合だけである。 したがって、課税庁及び国税不服審判所の裁決(平成24年3月27日)では、次期支払い及び未払いは法人税基本通達9-2-32を適用できないとしており、退職給与として取り扱われないとしただけで、損金不算入の決め手となったのは、法人税法第34条第1項である。 次期に支払った125,000,000円は退職給与とされていないし、法人税法第34条第1項第1号から第3号(定期同額給与、事前確定届出給与、利益連動給与)に該当しないから損金不算入となるというのである。未払分も同じである。 しかし、定期同額給与等は、もともと退職給与等を想定したものでなく、通常の給与を前提として定められているから、退職給与として否認されたものがこれに該当するわけはないのである。 これでは、法人税法第34条の役員給与の原則損金不算入の規定はとんだ所で罪を作ったことになる。 (了)
法人税改革の行方 【第1回】 「政府税制調査会での論点」 慶應義塾大学経済学部教授 土居 丈朗 第2次安倍晋三内閣は、6月24日に、「経済財政運営と改革の基本方針2014~デフレから好循環拡大へ~」を閣議決定した。いわゆる「骨太の方針」である。 「骨太の方針」には、法人税率引下げが盛り込まれた。その中で、 と明記された。 これとほぼ並行して、政府税制調査会でも、6月27日に、「法人税の改革について」を取りまとめた。政府税制調査会では、法人課税ディスカッショングループを設けて、3月12日から議論を進めてきた。筆者もその一委員として議論に参加した。 本連載では、今年上半期の法人税改革の議論について整理するとともに、今年末の取りまとめに向けての課題を明らかにしたい。 * * * 今年上半期の議論の基本線は、法人実効税率は引き下げたいが、それに伴う税収減を何ら補いなく引き下げては、わが国の財政収支改善に逆行するから、税率を引き下げたことに伴う税収減は予め代替財源を用意してから行う、というものだった。政府税制調査会の「法人税の改革について」にも と明記されている。 法人税制の中だけで考えたとき、単純にいえば、縦軸に「税率」、横軸に「課税ベース」の大きさを目盛りに取ったイメージでいうと、長方形の面積が法人税収となる。 目下、税率が高くて課税ベースが狭いという状態であり、これから税率を下げると、縦軸方向に高さが縮まって長方形の面積が縦方向に短くなる。そのまま短くしたまま課税ベースを見直さないと、単純に税率を下げた分だけ減収となる。 そこで、課税ベースを見直せば、横軸方向の課税ベースが少し広がり、縦長だった長方形の面積がより横長になる形で、税率引下げに伴う税収減が補える。 ただ、法人税の中だけで、税率を引き下げた分の代替財源を探すとなると、法人税に負担を課し続けるという構造は何ら変わらないことになる。これでは、法人実効税率を引き下げても、国際的に、日本政府が日本国内で活動する企業行動の足かせをなくそうとしているようには見られないだろう。最終的には、法人税がネットで減税となりかつ財政健全化にも支障をきたさないようにするには、所得税など他税目で代替財源を確保することも強く意識せざるを得ないだろう。 とはいえ、今年上半期の議論は、どれを代替財源としていくら捻出できるかという定量的な話はなく、ひとまず法人税の課税ベースで見直す余地のあるところはどこかに焦点を絞って議論が進められた(もちろん、政府税制調査会では、社会保障財源となる消費税を除く所得税などの他税目についても視野を広げて議論はしており、「法人税の改革について」にもその旨が盛り込まれている)。 本連載は、次回以降、今年上半期の議論を振り返り、法人税での課税ベースの見直しに関わるところを中心に、詳説したい。主な論点は、 である。 (了)
《編集部レポート》 「中央出版事件」が決着 ~最高裁、納税者の上告棄却・上告不受理を決定し、納税者の敗訴が確定~ Profession Journal 編集部 アメリカ合衆国の国籍のみを有する原告が、その祖父から米国ニュージャージー州法に準拠して原告を受益者とする信託を設定されたとして、税務署長から、相続税法(平成19年法律第6号による改正前のもの)4条1項に基づき、贈与税の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分を受けたため、その取消しを求めた、いわゆる「中央出版事件」は上告・上告受理申立が行われていたが、最高裁は去る7月15日に上告棄却及び上告不受理の決定を行ったことがわかった(平成25年(行ヒ)第272号,平成25年(行ツ)第267号)。 これにより、納税者の逆転敗訴となった名古屋高裁の控訴審判決が確定することとなる。 本事件の争点は、下記の2点。 第一審の名古屋地裁平成23年3月24日判決(平成20年(行ウ)第114号)では納税者の訴えを支持し納税者勝訴の判決が出されたが、第二審の名古屋高裁は、平成25年4月3日、それぞれの争点について下記の判断を行い贈与税決定処分を違法とした一審判決を取り消す判決を行った(平成23年(行コ)第36号)。 いわゆる「武富士事件」と共に大型の贈与に起因し、上記の争点の行方が注目された本事件は、納税者の敗訴で決着することとなった。 同様の贈与スキームについては、本事件の決着をみる前に、早々に平成25年度税制改正において とする旨の改正が行われたため(相法1の3、1の4)、もはや効果が得られないことから実務上の影響はないものの、最高裁の判断が注目されていた。 (了)