小説 『法人課税第三部門にて。』 【第13話】「優良法人の税務調査(その5(署長との面談)/完)」
「先生、税務署から連絡がきました」
齋藤課長から、吉田税理士事務所に電話が入った。
税務調査が開始されてから、2ヶ月が過ぎていた。
「それで、来週の木曜日の11時に税務署に来てくれと・・・」
齋藤課長が吉田税理士に伝える。
「会長も行かれるのですか?」
〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載30〕 防水工事費用の損金算入時期
当社(3月末決算)の有する店舗の屋根に亀裂が生じ、雨漏りのおそれがあったため、修理業者に依頼し、屋根の防水工事を行いました。修理業者との契約では、防水工事費用は1,000万円、工事期間は当期の1月11日から翌期の4月10日までとなっています。
工事中は店舗を閉鎖しなければならず、工事完了後の4月10日以降に営業を再開する予定でしたが、3月中旬の時点で工事の大部分が完了し、営業できる状態となったため、3月20日から営業を再開することとなりました。未了の工事は仕上げの塗装のみであり、予定どおり、4月10日に完了する見込みです。
防水工事費用1,000万円は、法人税法上、当期の損金の額に算入してよいのでしょうか。
経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第14回】ソフトウェア会計①「市場販売目的のソフトウェアの会計処理」
当社は、パソコン用の業務アプリケーションを開発・販売する会社です。×1年4月より、一般顧客向けの新たな業務アプリケーションの開発プロジェクトを開始しました。このプロジェクトでは、×1年12月末までに製品マスターを完成させ、×2年3月末に製品化する予定となっています。
このプロジェクトの制作コストについて、会計処理上、留意すべき点はありますか。
税効果会計を学ぶ 【第15回】「その他有価証券の評価差額の取扱い③」
固定資産については、「固定資産の減損に係る会計基準」及び「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第6号)が適用されている。
固定資産の減損損失についても、「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」(監査委員会報告第66号。以下「監査委員会報告第66号」という)に従って繰延税金資産の回収可能性を判断することとなる。
酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第2回】「馬券訴訟(その2)」~一時所得・雑所得の判定要件~
前回に事案の概略を紹介したとおり、馬券収入が一時所得に該当するとするY(国側)と雑所得に該当するとするX(納税者側)との間で争われたのであるが、国税不服審判所は一時所得に該当するとのYの主張を妥当と判断している。
ここでの問題点は、一時所得に該当することになると、所得金額の計算上控除することができるのが「その収入を得るために支出した金額」とされ、その金額が、「その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る」と限定されることにある。
すなわち、仮に、Xが主張するように雑所得に該当するのであれば、その必要経費が控除できることになるところから、その場合にははずれ馬券も控除の対象となり得るという大きな違いが生じるのである。
「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例4(消費税)】 「合併事業年度の簡易課税制度の判定を納税義務の判定と同じであると思い込み、被合併法人の基準期間の課税売上高で行ってしまった事例」
合併法人である依頼者(以下「A社」という)と被合併法人(以下「B社」という)の合併事業年度の基準期間の課税売上高は、それぞれ800万円と2億円であった。
税理士は、納税義務の判定はB社の2億円で行い、課税事業者と判断した。しかし、簡易課税制度の判定を、A社の800万円ですべきところ、納税義務の判定と同じであると思い込み、B社の2億円で行ったため、原則課税と判断して申告書を作成、提出してしまった。
A社は過去に「簡易課税制度選択届出書」を提出していたため、正しく判定すると、簡易課税制度での申告であった。これを税務署から指摘され、更正処分を受けた。
これにより、原則課税と簡易課税との差額300万円につき損害賠償請求を受けた。
雇用促進税制・所得拡大促進税制の実務 ~要件・手続の確認から両制度の適用比較まで~ 【追補】「所得拡大促進税制に係る通達の新設」
平成25年6月27日、国税庁より「法人税基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)」が公表された。
今回の改正では、平成25年度税制改正で新たに導入された所得拡大促進税制(雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除)に関し、新たな通達が設けられている。
そこで本稿では、新設された通達の内容について解説することとし、かねて連載していた「雇用促進税制・所得拡大促進税制の実務」(所得拡大促進税制の内容については、第3回の記事を参照)の補足としたい。
「移転価格事務運営要領」の改正について
国税庁は、平成25年6月28日付けで、「移転価格事務運営要領」(以下「事務運営要領」)の一部を改正することを明らかにした。
主な改正項目は、以下の4項目である。
(1) 平成25年度税制改正で認められた営業費用総利益率(ベリー比)を利益指標とするTNMMの適用の留意点について、参考事例集に解説を追加した。
(2) 事前確認の適用報告書の様式が定められた。
(3) 事前確認の報告書の内容の検討の行政手続上の区分を、従来の「調査」から原則として「行政指導」に変更した。「行政指導」に応じない場合には「調査」を実施する(更正により加算税を課す)こととした。
(4) 過大支払利子税制の適用上、関連者支払利子等の額等の計算上、独立企業間利子を超える利子は含めないで計算することを明らかにした。
相続税対策からみた生前贈与のポイント 【第2回】「貸家を贈与した場合の敷地の評価」
賃貸不動産を多数所有する個人が、所得税の節税対策のため、所得の少ない子に貸家の贈与を行う場合がある。
これは、子に家賃収入を移転させることにより子の財産と収入を増やすとともに、親の所得に対する税率と子の所得に対する税率の格差を利用して親子トータルでの税負担の軽減を図ろうとするものである。
このような所得税対策のため貸家の贈与を行う場合、相続税対策の面からは贈与後の敷地の評価額が問題となる。仮に目先の所得税の軽減が図られたとしても、敷地の相続税評価額が増加し、将来の相続税負担が大きくなるのであれば、実行の是非が問われることになるからである。
そこで今回は、親が子に貸家を贈与し、その敷地を子に無償で使用させる場合の敷地の相続税評価について解説したいと思う。