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税効果会計を学ぶ 【第23回】「完全支配関係にある国内会社間の譲渡取引」

筆者:阿部 光成

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税効果会計を学ぶ

【第23回】

「完全支配関係にある国内会社間の譲渡取引

 

公認会計士 阿部 光成

 

「個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針」(会計制度委員会報告第10号。以下「個別税効果実務指針」という)と「連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針」(会計制度委員会報告第6号。以下「連結税効果実務指針」という)では、完全支配関係にある国内会社間の譲渡取引について規定している。
文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。

 

Ⅰ 完全支配関係にある国内会社間の譲渡取引

1 一時差異

完全支配関係(法人税法2条12の7の6号)にある国内会社間の資産の移転に係る譲渡損益のうち一定の要件を満たすものは課税の繰延べが行われる。

課税の繰延べを行った場合、税務上の調整資産又は調整負債が生ずることになる。

個別税効果実務指針では、完全支配関係にある国内会社間の資産の移転による譲渡損の繰延べに係る税務上の調整資産については将来減算一時差異となると規定している(個別税効果実務指針8項)。また、完全支配関係にある国内会社間の資産の移転による譲渡益の繰延べに係る税務上の調整負債については将来加算一時差異となると規定している(個別税効果実務指針10項)。

以下において会計処理を述べるが、これらに関する税効果会計の考え方は資産負債法で整理するところがポイントになる。

 

2 完全支配関係にある国内会社間の譲渡取引の損益の繰延べ

前述のとおり、譲渡当事会社の属する企業集団の連結財務諸表において、譲渡した事業年度の課税所得を構成せずに課税が繰り延べられることとなる損益は、基本的には、連結財務諸表上においても消去されることから、繰延税金資産及び繰延税金負債を認識しない(連結税効果実務指針12-2項、47項)。

 

3 企業集団内の会社に投資(子会社株式又は関連会社株式)を売却した場合の税効果

連結税効果実務指針30-2項では、企業集団内の会社が企業集団内の他の会社に投資(子会社株式又は関連会社株式)を売却すると、個別貸借対照表上の投資簿価が購入側の取得原価に置き換わることになり、投資の連結貸借対照表上の簿価との差額、すなわち、連結財務諸表上の一時差異の全部又は一部が解消することとなると規定している。

この場合、企業集団内での投資の売却により、追加的に又は新たに発生する一時差異については、連結税効果実務指針30項に従い会計処理することになる。

ある会社が完全支配関係にある他の会社に投資(子会社株式又は関連会社株式)を売却したことにより発生した譲渡損益の繰延べに係る税務上の調整資産又は負債に係る個別財務諸表上の一時差異の税効果については、連結財務諸表上も、修正されずに、個別財務諸表上において認識された繰延税金資産又は繰延税金負債が計上されることになると規定している。

連結税効果実務指針53-2項では、企業集団内における完全支配関係にある国内会社間において、投資を売却することにより、売手側の個別貸借対照表上、完全支配関係にある国内会社間における資産の移転による譲渡損益の繰延べに係る税務上の調整資産又は負債として、将来減算一時差異又は将来加算一時差異が生じ、これに係る繰延税金資産又は繰延税金負債が認識されている場合には、投資に係る一時差異とは性格が異なるものであるため、連結財務諸表上においても、個別財務諸表上において認識された繰延税金資産又は繰延税金負債が計上されることになると述べている。

 

Ⅱ 設例

企業集団内の会社に投資(子会社株式又は関連会社株式)を売却した場合の税効果については、理解しにくい内容であるので、連結税効果実務指針でも次の設例により解説している。

【前提条件】

 S1社、S2社及びS3社は、いずれもP社が100%保有する連結子会社である。

 S1社は、S3社株式を保有しており、S1社における個別上の簿価は100、連結上の簿価は120であった。

 S1社は、S2社へS3社株式を売却する予定であり、第30項に基づき、他の子会社等への売却であっても、子会社への投資に係る税効果の対象になるものとしていた。

 S1社は、S2社へS3社株式を130で売却した。

 各社における法定実効税率は40%とする。

【売却前後で税効果が同じ結果となるケース(売却後、子会社の投資に係る将来減算一時差異に回収可能性がある場合)】

(*1) S1社におけるS3社株式の税務上の簿価
(*2) S1社におけるS3社株式売却益に係る税務上の調整負債
(*3) S2社におけるS3社株式の税務上の簿価

【仕訳】
■売却前
〈連結〉

■売却後
〈S1社個別〉

〈S2社個別〉

〈連結〉

親会社P社と完全支配関係にある企業集団内のS1社が、同じく完全支配関係にある企業集団内の他のS2社に投資(S1社個別上の簿価100、連結上の簿価120)を130で売却する場合、売却前に、子会社への投資に係る将来加算一時差異20に対して、連結上、企業集団内であるが、売却予定があるため、繰延税金負債8(=20×40%)を計上していたものとする。

その後、投資を売却した場合、当該一時差異20が解消し、新たに10(=120-130)の将来減算一時差異が生じることになる。この場合、繰延税金負債8を戻し、また、S2社において投資を売却する予定があり、かつ、回収可能性に問題ないときは、繰延税金資産4(=10×40%)が計上される。

また、S1社とS2社が完全支配関係にあるという前提においては、S1社において、譲渡損益の繰延べに係る税務上の調整負債30(=130-100))について、繰延税金負債12(=30×40%)が計上される。これは、上記の投資に係る一時差異とは異なるものであるため、連結財務諸表上も、繰延税金負債12が計上される。

この結果、投資の売却前後とも、純額の繰延税金負債は8となり、同じ結果となる。

(了)

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筆者紹介

  • 阿部 光成

    (あべ・みつまさ)

    公認会計士
    中央大学商学部卒業。阿部公認会計士事務所。

    現在、豊富な知識・情報力を活かし、コンサルティング業のほか各種実務セミナー講師を務める。
    企業会計基準委員会会社法対応専門委員会専門委員、日本公認会計士協会連結範囲専門委員会専門委員長、比較情報検討専門委員会専門委員長を歴任。

    主な著書に、『新会計基準の実務』(編著、中央経済社)、『企業会計における時価決定の実務』(共著、清文社)、『新しい事業報告・計算書類―経団連ひな型を参考に―〔全訂版〕』(編著、商事法務)がある。

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