租税争訟レポート 【第41回】「太陽光発電設備の減価償却をめぐる問題(国税不服審判所平成30年3月27日裁決、同6月19日裁決)」
本件は、審査請求人が、太陽光発電設備等を取得した事業年度において当該設備等に係る償却費の額を損金の額に算入して法人税等の確定申告をしたところ、原処分庁が、当該設備等は当該事業年度において事業の用に供していないから当該設備等に係る償却費の額を損金の額に算入することはできないなどとして、法人税等の更正処分等をしたのに対し、請求人が、原処分の全部の取消しを求めた事案である。
〈事例で学ぶ〉法人税申告書の書き方 【第34回】「別表6(24) 中小企業者等が給与等の引上げを行った場合の法人税額の特別控除に関する明細書」及び「別表6(24)付表 雇用者給与等支給増加重複控除額の計算に関する明細書」
この別表は、青色申告書を提出する中小企業者等が平成30年度税制改正後の租税特別措置法第42条の12の5第2項(給与等の引上げ及び設備投資を行った場合等の法人税額の特別控除)の規定の適用を受ける場合において、同法第42条の12第1項もしくは第2項(地方活力向上地域等において雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除)の規定の適用を受ける場合に作成する。
日本の企業税制 【第63回】「役員給与をめぐる規律の見直し」
昨年12月に公表された平成31年度税制改正大綱では、役員の業績連動給与の損金算入要件の1つである手続要件の見直しが行われることが盛り込まれている。
具体的には、現行制度では、報酬(諮問)委員会による決定を経る場合には、同委員会の構成員に1人でも業務執行役員が含まれていると損金不算入となることとされているが、構成員の過半数が「独立社外役員」であり、その「独立社外役員」全員が賛成することを要件に損金算入を認めることとする。
一方、監査役(会)設置会社や監査等委員会設置会社において認められている監査役の過半数の適正書面(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員の過半数の賛成)に基づく損金算入は、今後認められないこととなる。
法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例1】「即時償却と損金経理」
わが社は電気設備工事を主たる業務とする青色申告を行っている株式会社(3月決算)ですが、平成25年度の税制改正で導入された環境関連投資促進税制の適用を受ける目的で、平成27年3月中にエネルギー環境負荷低減推進設備等(旧措法42の5①)に該当する太陽光発電設備(法定耐用年数17年)を設置しました。わが社は平成27年3月中に当該設備を取得しかつ事業の用に供したと認識し、環境関連投資促進税制(即時償却制度)の適用を受け、その取得価額の全額を損金算入しました(旧措法42の5⑥)。
ところがその後平成30年10月に、わが社は課税庁の税務調査を受け、当該設備を実際に取得し事業の用に供したのは平成27年4月以降であることから、即時償却の適用は受けられないという指摘を受けました。そればかりか、平成28年3月期から平成30年3月期の各事業年度についても、「損金経理」を行っていないため、減価償却費の計上は認められないと言い渡されました。
〈事例で学ぶ〉法人税申告書の書き方 【第33回】「別表6(19) 特定の地域又は地方活力向上地域等において雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除に関する明細書」及び「別表6(19)付表 基準雇用者数等、給与等支給額及び比較給与等支給額の計算に関する明細書」
この別表は、青色申告書を提出する法人が租税特別措置法第42条の12第1項もしくは第2項(特定の地域又は地方活力向上地域等において雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除)の規定の適用を受ける場合に作成する。
日本の企業税制 【第62回】「平成31年度与党税制改正大綱における主な法人課税の改正点」
研究開発税制については、総額型の控除率が見直され、より増加インセンティブの高い仕組みとなった。増減試験研究費割合がマイナスの層では、現行より控除率が低下し、約マイナス14%で、最低控除率の6%に到達する(現行はマイナス25%で到達)。一方、プラスの層では、0から8%の層で現行より控除率は向上し、8%超は現行どおりである。
法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【第5回】「法人税の課税所得計算と損金経理(その5)」
それでは、法人税法上、費用収益対応の原則と権利確定主義との関係はどうなっているのであろうか。この点について学説は明確ではないが、筆者は以下の通り理解すべきではないかと考えている。
すなわち、収益については、権利確定主義に基づき(費用を参照することなく単独で)計上すべき年度が決まる。一方で、費用については、前述の通り、償却費を除き債務の確定したものが損金に計上されることとなるが(債務確定主義ないし基準)、その確定の基準が明示されておらず、原則として収益を参照しないと年度帰属が決まらないのである。
法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【第4回】「法人税の課税所得計算と損金経理(その4)」
法人税法における損金性、すなわち当該損金をどの年度において計上するのかという年度帰属の問題を理解するにあたり、避けて通れないのが「費用収益対応の原則」と「権利確定主義」についてである。以下でそれぞれの意義を確認しておきたい。
まず費用収益対応の原則(matching principle)であるが、これは一般に、経済活動の成果をなす収益と、それを得るために費やされた犠牲としての費用を、厳密に対応づけその差額を利益として算定することを通じて、各会計期間の経営成績を適切に測定するという、企業会計における利益計算の基本原則であると解されている(※1)。
法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【第3回】「法人税の課税所得計算と損金経理(その3)」
次に、わが国における法人税の課税所得計算に関して、企業会計準則主義とともに重要な原則である「確定決算主義」について確認しておきたい。
確定決算主義とは一般に、法人は確定した決算に基づき、確定申告書を作成し提出すべきことを指す(法法74①)(※1)。ここでいう「確定した決算」とは、会社法上、定時株主総会による計算書類の承認(会社法438②)又は定時株主総会に提出された計算書類の取締役による内容の報告(会社法439)を意味する(※2)。
