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[無料公開中]法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例1】「即時償却と損金経理」

筆者:安部 和彦

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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説

【事例1】

「即時償却と損金経理」

 

国際医療福祉大学大学院准教授
税理士 安部 和彦

 

【Q】

わが社は電気設備工事を主たる業務とする青色申告を行っている株式会社(3月決算)ですが、平成25年度の税制改正で導入された環境関連投資促進税制の適用を受ける目的で、平成27年3月中にエネルギー環境負荷低減推進設備等(旧措法42の5①)に該当する太陽光発電設備(法定耐用年数17年)を設置しました。わが社は平成27年3月中に当該設備を取得しかつ事業の用に供したと認識し、環境関連投資促進税制(即時償却制度)の適用を受け、その取得価額の全額を損金算入しました(旧措法42の5⑥)。

ところがその後平成30年10月に、わが社は課税庁の税務調査を受け、当該設備を実際に取得し事業の用に供したのは平成27年4月以降であることから、即時償却の適用は受けられないという指摘を受けました。そればかりか、平成28年3月期から平成30年3月期の各事業年度についても、「損金経理」を行っていないため、減価償却費の計上は認められないと言い渡されました。

太陽光発電設備を取得しかつ事業の用に供したタイミングが平成27年4月にずれ込んだという指摘はやむを得ず認めますので、即時償却の適用が受けられないというのは致し方がないと思いますが、平成27年4月以降現在まで毎月売電収入を計上しているにもかかわらず、その後の減価償却費の計上を認めないとする課税庁の指摘は全く納得がいきません。この場合、課税庁の指摘に従うべきなのでしょうか、教えてください。

〇太陽光発電設備への投資と減価償却費の計上

 

【A】

法人が平成27年3月期に取得しかつ事業の用に供していたと考え、同事業年度において損金経理により即時償却を行っていた場合、その後税務調査で課税庁から取得・事業の用に供していたタイミングが翌期にずれこんでいたと指摘されたとしても、指摘されるまでの時期について損金経理を行うことは物理的に不可能といえます。その場合、指摘されるまでの時期について収益は計上していても、費用は計上できないという不合理が生じますが、これは法人税法の所得計算の基本原則である費用収益対応の原則に反しており、妥当ではないと考えられます。

そのため、仮に取得・事業の用に供していたタイミングが翌期にずれこんでいたという課税庁の指摘が正しい場合であっても、平成27年3月期に損金経理により全額償却費を計上しているという事実を重視し、費用収益対応の原則から、平成28年3月期~平成30年3月期についても毎期減価償却費相当額を損金に算入できると解する余地があるものと考えられます。

解 説

(1) 環境関連投資促進税制

本件で問題となっている環境関連投資促進税制の即時償却制度とは何か、まず簡単に確認しておきたい。

当該制度はもともと、エネルギー需要構造改革推進設備等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除(エネルギー需給構造改革推進投資促進税制)の一環として、平成21年度の税制改正で導入された措置がその前身となっている。それによれば、太陽光発電設備などのエネルギー需給構造改革推進設備等については、普通償却限度額に加え、取得価額まで特別償却ができることとされ、つまりはその事業の用に供した事業年度において即時償却が認められるという制度(旧措法42の5⑥、平成24年3月31日まで)となっている。

その後上記制度は、平成24年度税制改正で、エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除(環境関連投資促進税制)に改組され、太陽光又は風力の利用に資する機械その他の減価償却資産のうち、電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法の認定発電設備に該当するもので一定規模以上のものについて、その取得等した日から1年以内に事業の用に供した場合における特別償却限度額は、その取得価額から普通償却限度額を控除した金額に相当する金額とされた(即時償却措置、旧措法42の5①、平成25年3月31日まで)。

また、当該環境関連投資促進税制は翌年度の税制改正で、上記即時償却措置の適用が一部見直しの上2年間延長された(旧措法42の5⑥)。更に、平成27年度税制改正で、即時償却措置の対象となる特定エネルギー環境負荷低減推進設備等の範囲から、太陽光発電設備が除外されたことから、即時償却を行うためには、太陽光発電設備を平成27年3月31日までに取得等をし、その取得等した日から1年以内に事業の用に供する必要があった。

 

(2) 本件への適用

それでは、本件の場合、環境関連投資促進税制の即時償却制度の適用は受けられるのであろうか。まず当該制度の適用要件のうち、太陽光発電設備を平成27年3月31日までに取得等をし、その取得等した日から1年以内に事業の用に供するというものを満たす必要があるが、その取得及び事業の用に供した日が平成27年4月にずれ込んでいる場合には、当該要件を満たせなかったことになる(※1)

(※1) 太陽光発電設備を事業の用に供した日について、「系統連系工事を了して電力の供給を開始したかどうかによって判断するのが相当であ」るとした裁決事例がある(国税不服審判所平成29年12月21日裁決・TAINS:F0-2-768参照)。

仮にその通りである場合には、平成27年3月期における即時償却はできないこととなり、代わりに、太陽光発電設備を取得・事業の用に供した事業年度以降において通常の減価償却を行うこととなる。太陽光発電設備の法定耐用年数は17年であるため、平成28年3月期以降17年にわたって減価償却費(通常定率法)を計上していくこととなるが、本件の場合、平成27年3月期において損金経理により即時償却を行っており、課税庁の税務調査を受ける平成28年3月期から平成30年3月期の3事業年度については、帳簿価額が備忘価格の1円となっているため(法令61①二イ)、当該期間において損金経理により減価償却費を計上するということは論理的にあり得ず、物理的にも不可能な状況となっている。

そもそも法人税法において減価償却費の計上に「損金経理」を要求しているのは、一般に、それが「内部取引」であり、費用化された金額がいくらであるのか企業外部の課税庁等が外形的に判断することは困難であることから、当該費用を計上した企業の意思決定を尊重し、その表れとしての「確定した決算」において費用として経理することを要件とするのが合理的であるからと解されている(総論【第5回】参照)。

そのため、法人税法上減価償却費として計上できる金額は、その法人が当該事業年度において償却費として損金経理した金額のうち、償却限度額に達するまでの金額とされている(法法31①)。そうなると、文理解釈上は、損金経理を行っていない平成28年3月期~平成30年3月期については、減価償却費の計上は一切認められないということになるだろう。

また、法人税法上、事業の用に供していない有形固定資産は、そもそも減価償却の対象となる減価償却資産ではないとも解される(※2)。この点につき最近出された裁決事例においても、「事業年度終了の時において事業の用に供していない資産は、その事業年度における法人税法上の減価償却資産に該当しないこととな」り、事業の用に供する前の事業年度において計上した償却費については、当該事業年度「において償却費として損金経理していたとしても、それは法人税法上の減価償却資産に該当しない資産に係るものであるから、法人税法第31条第1項に規定する減価償却資産に係る損金経理額に該当しない。(下線部筆者)」とされている(国税不服審判所平成30年3月27日裁決・TAINS:J110-3-12)。

(※2) 最高裁平成18年1月24日判決・民集60巻1号252頁(フィルムリース・パラツィーナ事件)参照。

しかも、環境関連投資促進税制の即時償却制度というのは税制優遇措置であるので、その適用を受けるためには要件を厳格に守ることが求められるのであり、それが納税者間の公平にもつながるという考え方もあるだろう。

 

(3) 即時償却と損金経理要件の解釈

本件については、上記(2)で見てきた解釈が常識的なものであると思われるが、それをすんなりと受け入れることにも若干の躊躇を覚える。その理由は、以下の2点にあるといえるだろう。

 法人税法において減価償却費の計上は損金経理を要件としているが、即時償却した事業年度以後の事業年度において更なる損金経理を要件とすることは、物理的に不可能な要件を課していることになるのではないか

 仮に損金経理要件を満たしていないとして減価償却費の損金計上を認めないとした場合、平成28年3月期~平成30年3月期については、収益(益金)を計上させながら、一方で費用(損金)を計上させないこととなり、費用収益対応の原則に反し不合理ではないか

まずについてみていくと、納税者側に減価償却資産の事業の用に供した日の解釈の誤りがあるにしても、申告時点においては正しいと解しており、それに基づき損金経理により即時償却を行うという明確な意思表示を行っているのであるから、当該意思表示は尊重されるべきではないだろうか。

損金経理を行った事業年度以降の事業年度において、損金経理を行っていない(行うことができない)のは、本件が即時償却という減価償却制度の例外的な措置に基づく案件だからであり、即時償却以外の償却制度(耐用年数が2年以上の減価償却資産に係るもの)の案件であれば、当然、翌事業年度以降も損金経理により償却費の計上を行うこととなる。そうなると、償却費の計上額はともかくとして、そもそも損金経理要件が問題となることはないのである。

即時償却を行った時点において損金経理を行ったという納税者の明確な意思表示を無視し、翌事業年度以降物理的に実行不可能な損金経理要件を満たしていないという「不備」を殊更にあげつらって、償却費の計上を認めないというのは、法人税法の解釈としての妥当性を欠くばかりでなく、租税政策としても問題があると思われる。

要するに、法人税法は果たして実行不可能な要件を課しているのか、仮にそのような要件を課しているという結論に至る場合、それはそもそもその解釈に誤りがあるからではないか、ということである。

次にについてみていくと、減価償却費については、収益(益金)を計上した事業年度において、それに対応する費用(損金)を計上するという費用収益対応の原則の適用があるべきではないかという論点である。この点に関して問題となるのは、費用収益対応の原則の法人税法上の位置付けである。

費用収益対応の原則は、本連載の総論【第4回】において既に説明したとおり、もともと会計学において形成された概念であり、法人税法は公正処理基準を通じてそれを取り込み(※3)、受容したのである。仮に費用収益対応の原則を採用しなかったとしたならば、法人税法には減価償却費という概念も取り入れられず、むしろキャッシュフロー法人税のように、収益の計上のタイミングにかかわらず、取得時において即時損金化する(事実上即時償却と同じ経済的効果がある)ものと思われる。そう考えると、減価償却費の計上は、費用収益対応の原則を基に認識するのが妥当ということになるであろう。

(※3) 岡村忠生『法人税法講義』(成文堂・2004年)38頁。

それでは、上記①②を合わせて本件の取扱いを考えるとどうなるのか。

法人が平成27年3月期に取得しかつ事業の用に供していたと考え、同事業年度に損金経理により即時償却を行っていた場合、その後税務調査において課税庁から取得・事業の用に供していたタイミングが翌期にずれこんでいたと指摘されても、指摘されるまでの期間について損金経理を行うことは物理的に不可能といえる。その場合、指摘されるまでの期間(事業年度)について収益は計上していても、費用は計上できないという不合理が生じるが、これは法人税法の所得計算の基本原則であり減価償却を行う根拠と考えられる費用収益対応の原則に反しており、妥当ではない。また、少なくとも平成28年3月期~平成30年3月期については、太陽光発電設備を事業の用に供していることも明らかである。

そのため、仮に取得・事業の用に供していたタイミングが翌期にずれこんでいたという課税庁の指摘が正しい場合であっても、平成27年3月期に損金経理により全額償却費を計上しているという事実を重視し、費用収益対応の原則から、平成28年3月期~平成30年3月期についても毎期減価償却費相当額(耐用年数17年で再計算)を損金に算入できると解する余地があるものと考えられる。

 

(4) 即時償却制度の政策的意義と限界

実務家による損金経理の解釈論としては、上記で議論はほぼ尽きていると思われるが、本連載の事例研究のパートに関し、最初に当該事例を取り上げた意図を最後に述べておきたい。

まずここで強調しておきたいのは、即時償却制度の例外性と不合理性である。

ここでいう「例外性」とは、即時償却制度は法人税法上、減価償却の一類型と位置付けられているが、減価償却はあくまで2年以上の耐用年数にわたって少しずつ費用計上するものであり、取得時に全額費用化する即時償却は、費用計上のタイミングという観点からは、減価償却費というよりも減価償却費以外の費用項目に近い性格を持つといえる、ということを指す。また「不合理性」とは、本件のように取得・事業の用に供したタイミングにつき、納税者の主張と課税庁の認定とがズレてしまうと、損金経理の要件を満たしていないとされ、償却費の計上ができなくなるリスクがあるということである。

次に、現行の法人税法上、即時償却制度を減価償却の一類型と捉えることは、必ずしも適切ではないと考えられる。なぜなら、減価償却というのは費用収益対応の原則に基づき、有形固定資産が耐用年数にわたり使用されることで生じる減価とそれによる収益の獲得とを対応させることで、適切な期間損益計算を行う趣旨により法人税法に採用された、費用化(固定資産の原価配分)の仕組みだからである。

即時償却制度を減価償却の一類型と捉えると、仮に即時償却が認められない場合には、通常の減価償却による費用化に自動的に切り替えられることになるが、その場合これまで何度も指摘しているように、物理的に要件を満たすことのできない「損金経理」要件の壁にぶち当たることとなる。即時償却の対象となる資産の取得そのものは「外部取引」であり、仮に即時償却制度を減価償却の一類型と捉えるのでなければ、損金経理要件は不要となり、通常の資産と同様に、取得により一時の損金となる。

即時償却制度を減価償却の一類型と捉えることにより生じるこのような不合理は、上記で指摘した「例外性」とも通ずるが、特に本件のように耐用年数が17年と比較的長い有形固定資産の場合、とりわけ顕著かつ歪に表れるといえる。

〇即時償却制度と減価償却との関係

即時償却制度というのは、現行の法人税法の枠組みとはやや距離を置いた制度で、むしろキャッシュフロー法人税の枠組みに接近したものではないかといえる。また、設備投資を取得時に全額控除するという意味で、消費税法における仕入税額控除とも親近性がある。そうなると、減価償却による費用化の概念とは乖離している即時償却制度は、現行法人税法を前提とするのであれば、その導入については慎重であるべきということが言えるだろう。仮に導入した場合には、その損金経理要件に関し、これまで説明してきたような不合理が生じ、それに伴う混乱を招来し得ることを覚悟しなければならない。

環境関連投資促進税制の即時償却制度は既に廃止されたが、今後、経済産業省等の要求により、即時償却制度を導入して景気浮揚を図ろうとする政策が採用されることも、可能性としてあるだろう。その際にわれわれは、本件で問題となったような、即時償却制度の負の側面というものを十分理解して、それでも導入するのか否かを冷静に検討する姿勢というものが求められるといえよう。

〔凡例〕
法法・・・法人税法
所法・・・所得税法
旧措法・・・旧租税特別措置法
(例)法法22③一・・・法人税法22条3項1号

(了)

この連載の公開日程は、下記の連載目次をご覧ください。

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