企業の不正を明らかにする『デジタルフォレンジックス』 【第3回】「デジタルフォレンジックスと「eディスカバリー」」
「eディスカバリー(eDiscovery)」は、Electronic Discoveryを略したものである。
もともとディスカバリー制度は、米国の民事訴訟における証拠開示手続のことを指していたが、2006年に一部改正された米国連邦民事訴訟規則(FRCP)において、電子形式で保存された情報(ESI:Electronically Stored Information)をいかに取り扱うべきかについて、一貫性のある基本原則が明記されたことに端を発し、定着した言葉である。
社外取締役の教科書 【第12回】「会社役員賠償責任保険(D&O保険)/責任限定契約」
例えば、一連の東芝不正会計事件において、会社が歴代3社長を含む旧経営陣5人に対して損害賠償を求めて訴訟提起した金額は総額3億円である(これでさえ、低額に過ぎるとの批判もある)。
万一の場合にこのような賠償責任が直接に降りかかってくるリスクがあるということは、社外の有能な人材が社外取締役に就任することを躊躇させることにもつながりかねない。
そこで、会社役員が損害賠償責任を負う場合に備え、会社役員賠償責任保険(いわゆるD&O[Directors' and Officers' Liability Insurance]保険)が各保険会社から販売されている。
税理士ができる『中小企業の資金調達』支援実務 【第8回】「具体的な資金調達支援の流れ(その5)」~社長の融資面談には同行しない~
【第2回】で説明したことの繰り返しになるけれども、税理士は社長の交渉面談に同行すべきではない。金融機関は当事者である社長の話を聞きたいと思っているし、税理士が交渉に参加しても有利にはならない。かえってその妨げになるおそれがある。
「同行しないのであれば、支援することは何もない」と思われるかもしれない。しかし、間接的な支援は可能である。すなわち、社長が自信をもって交渉面談にのぞめるよう助言し、金融機関から計数にかかる質問があった場合、回答案を考えるという支援を行う。
現代金融用語の基礎知識 【第24回】「トヨタ自動車のAA型種類株式」
トヨタ自動車のAA型種類株式とは、トヨタ自動車が発行している、以下のような特徴を持つ種類株式のことである。
① 発行価格は、発行価格決定日における普通株式の株価の120%以上(注)
② 配当額は、発行価格の、1年目0.5%、2年目1.0%、3年目1.5%、4年目2.0%、5年目以降2.5%
③ 残余財産の分配は普通株主より優先
④ 議決権あり
⑤ 5年目以降、普通株式に転換可能
⑥ 5年目以降、トヨタ自動車に対して金銭(発行価格)と引き換えに取得請求可能
⑦ 譲渡制限あり
中小企業事業主のための年金構築のポイント 【第17回】「2つ以上の年金が受給できるときの調整」
年金は、一人につき、一つの年金を受給することが基本である。したがって2つ以上の年金が受給できるときは、どちらか一方を選択することになる。
ただし、支給事由が同じものは、両方の年金が受給できる。たとえば、国民年金から支給される老齢基礎年金と厚生年金保険から支給される老齢厚生年金は、「老齢」という同じ事由で支給されるものなので、両方の年金が受給できる。
しかし、遺族厚生年金等の遺族の年金と老齢厚生年金等の老齢の年金は、「遺族」と「老齢」という異なる事由で支給されるため、どちらか一方しか受給できない。
養子縁組を使った相続対策と法規制・手続のポイント 【第12回】「離縁の無効・取消し」
協議離縁が有効に成立するためには、当事者間に離縁の意思の合致がなければならない。「離縁意思」とは、無条件・無期限に養親子関係を解消する意思、すなわち社会通念上、法定の親子と認められている関係を、以後永久に消滅させようとする意思をいう。
常識としてのビジネス法律 【第29回】「知的財産権入門(その2)」
権利侵害の成立要件(侵害ワンツースリー)は、次の3要件である。
[要件1] 有効な特許権の存在
[要件2] 無権限の実施行為
[要件3] 実施行為が特許権の権利範囲に入ること
企業の不正を明らかにする『デジタルフォレンジックス』 【第2回】「デジタルフォレンジックスの効果と限界」~何ができて何ができないのか?~
依頼者側にはほとんど認識されていないデジタルフォレンジックスを難しくする要因の筆頭に挙げられるのが、ハードディスクの暗号化に代表されるセキュリティ対策である。
妙な話に聞こえるかもしれないが、デジタルフォレンジックスによって得られる情報の量は、セキュリティの高さに反比例している。
これは、主に2つの観点からの議論となる。
事例で検証する最新コンプライアンス問題 【第4回】「免震ゴムのデータ偽装事件」
2015年10月14日、ゴム会社T社が、防振ゴムでのデータ偽装を公表した。同年3月15日に公表された免震ゴムでのデータ偽装を受けて、全製品の緊急監査を行い、同年8月10日に「正規品が出荷されていることを確認」と発表した後のことであった。T社は、2007年にも、断熱パネルのデータ偽装で社長が引責辞任している。
今回は、2007年の断熱パネル事案、2015年3月の免震ゴム事案、2015年10月の防振ゴム事案をそれぞれ比較して、なぜ、異なるタイミングで問題が発覚したのか、コンプライアンス上の問題点を分析したい。
社外取締役の教科書 【第11回】「社外取締役としての法的責任(その3)」
上記の最高裁判決は、会社の業務執行に関する取締役の監視・監督義務を広く認めたリーディング・ケースであり、現在でも、広く引用される判例である。
事案を見れば、C・Dの義務違反は明白であろう。取締役でありながら、取締役会も株主総会も開かれない状態のまま放置し、Bの独断的な業務執行につき何らの監視・監督も行っていなかったからである。
同じく「株式会社」と名乗る会社であっても、一部上場企業から街場の家族的な中小企業まで、その実態は千差万別である。