〈ポイント解説〉役員報酬の税務 【第49回】「税制適格ストックオプションに係る要件の緩和」
当社は創立間もないスタートアップ企業です。この度、役員にインセンティブを付与することを目的として、ストックオプションを付与したいと考えています。しかし、当社の事業は、安定的に利益を生み出すための基盤を確立するには10年以上かかるという性質であるため、いわゆる税制適格ストックオプションの要件を満たすことができないと思います。
この点、当社の認識は正しいでしょうか。
〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第16回】「ガーンジー島法人所得税の「外国法人税」該当性(地判平18.9.5、高判平19.10.25、最判平21.12.3)(その1)」~法人税法69条1項、法人税法施行令141条1項、2項、3項~
本件は、英国王領チャネル諸島ガーンジー(ガーンジー島)に本店を有し、再保険を業とする法人であるB(Ark Re Ltd. 以下「B社」という)の発行済株式の全てを保有している原告X(損保ジャパン)に対し、所轄税務署長Yが、B社の負担するガーンジー島の法人所得税は法人税法69条1項に規定する「外国法人税」に当たらないため、B社は租税特別措置法(以下「措置法」という)66条の6第1項(タックス・ヘイブン対策税制)所定の特定外国子会社等に該当するとして、同項に規定する課税対象留保金額に相当する金額をXの所得の金額の計算上、益金の額に算入して本件各事業年度の更正処分等をしたことから、これを不服としたXが、その処分等の取消しを求めた事案である。
法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準を学ぶ 【第1回】「適用範囲と定義」
企業会計基準委員会から「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(企業会計基準第27号。以下「法人税等会計基準」という)が公表されている。
これは、次のものを基本的に踏襲した会計基準である。
① 「諸税金に関する会計処理及び表示に係る監査上の取扱い」(監査保証実務指針第63号)
② 「税効果会計に関するQ&A」(会計制度委員会)における税金の会計処理及び開示に関する部分
③ 「法人事業税における外形標準課税部分の損益計算書上の表示についての実務上の取扱い」(実務対応報告第12号)に定められていた事業税(付加価値割及び資本割)
〈注記事項から見えた〉減損の深層 【第12回】「製粉事業が減損に至った経緯」-減損発生を第三者が予測できるか-
減損損失の額は、多額に上ることがほとんどです。一時的であれ、会社の業績を圧迫します。
そのような減損損失について、発生を予測することができるのかというのが、今回のテーマです。事例として使用するのは、製粉会社の減損事例です。2020年より前に買収した海外事業について、2020年の新型コロナウイルス感染拡大等を背景に、のれんを中心に減損損失を計上しています。
〔会計不正調査報告書を読む〕 【第141回】株式会社アイ・アールジャパンホールディングス「第三者委員会調査報告書(2023年3月7日付)」
2022年11月10日、ダイヤモンド・オンラインにおいて、アイ・アールジャパンHDに関連する、「【スクープ】IRジャパン衝撃の『買収提案書』入手、東京機械の買収防衛でマッチポンプ疑惑」と題する記事(以下「本件記事」という)が掲載され、同記事のリード文では、アイ・アールジャパンHD及びアイ・アールジャパンの元代表取締役副社長・COO栗尾拓滋氏(報告書上の表記は「栗尾氏」。以下、栗尾元副社長と略称する)が2021年春ごろ、アジア開発キャピタル株式会社(報告書上の表記は「A1社」。以下「アジア開発キャピタル」と略称する)に対して、株式会社東京機械製作所(報告書上の表記は「TKS」。以下「東京機械製作所」と略称する)の買収提案を行っていたことが、ダイヤモンド編集部の取材で分かったとし、「東京機械の防衛アドバイザーを務めたアイ・アールジャパンのトップが、実はアジア開発キャピタルに東京機械の「乗っ取り」をけしかけていたという驚愕の事実が発覚した」と結ばれていた。
酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第119回】「節税商品取引を巡る法律問題(その13)」
国民の暮らしに密接に関係する国の施策を進めていくためには、国民の理解・協力が欠かせないことから、政府は広報活動に力を入れている。政府広報は、国の施策について国民に理解してもらうための活動として位置付けられる。
谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第14回】「国税通則法23条(3)」-後発的理由の意義と範囲-
国税通則法が23条2項で特別の更正の請求を定めた趣旨は、前々回1でみたように、「期限内に[減額更正を請求する]権利が主張できなかつたことについて正当な事由があると認められる場合の納税者の立場を保護するため、後発的な事由により期限の特例が認められる場合を[個別税法で規定されていた場合よりも]拡張し、課税要件事実について、申告の基礎となつたものと異なる判決があつた場合その他これらに類する場合を追加する」(税制調査会「税制簡素化についての第三次答申」(昭和43年7月)54頁)ことにあった。
〈判例評釈〉ムゲン・ADW事件が残したもの~最高裁の判示は、納税者の納得が得られるものか~ 【第2回】
前回のⅠのとおり、ADW事件第一審では、争点①の課税対応課税仕入れの是非について、他の判決とは異なる判断基準が示された。以下では、時間の針を戻して、第一審が示した考え方と最高裁で最終的に確定した考え方を比較検討する。