日本の企業税制 【第121回】「令和6年度税制改正にも関連する「デフレ完全脱却のための総合経済対策」」
11月2日、政府は「デフレ完全脱却のための総合経済対策」を閣議決定した。
今回の対策は、①物価高から国民生活を守る、②地方・中堅・中小企業を含めた持続的賃上げ、所得向上と地方の成長を実現する、③成長力の強化・高度化に資する国内投資を促進する、④人口減少を乗り越え、変化を力にする社会変革を起動・推進する、⑤国土強靭化、防災・減災など国民の安全・安心を確保する、という5つの柱から構成されている。このうち第1~第3の柱の中に、令和6年度税制改正に関連する事項が含まれている。
〈令和5年分〉おさえておきたい年末調整のポイント 【第1回】「令和5年分の年末調整に影響する改正事項」~控除対象となる国外居住親族の範囲の見直し等~
11月に入り、今年も年末調整に向けた準備を始める時期となった。
今回から3回シリーズで、年末調整における実務上の注意点やポイント等を解説する。
令和5年分の年末調整に影響する改正事項としては、「控除対象となる国外居住親族の範囲の見直し」がある。また、令和5年分以後の扶養控除等申告書の「住民税に関する事項」部分には、「退職手当等を有する配偶者・扶養親族」欄が追加されている。
第1回(本稿)では、上記2点について取り上げる。
暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第30回】
所得税法では、暗号資産の譲渡原価等を計算する場合の年末評価額について総平均法と移動平均法が定められている。また、暗号資産の評価額の計算の基礎となる暗号資産の取得価額、すなわち年末時点における1単位当たりの取得価額の計算の基礎となる暗号資産の取得価額について、例えば、対価を支払って取得(購入)した場合は「購入の代価(購入手数料その他その暗号資産の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)」とするなど、その取得の方法に応じて算定方法が定められている(本連載第6回)。
相続税の実務問答 【第89回】「第一次相続と第二次相続の相続人が1人となった場合の遺産分割と相続税」
平成30年2月に父が亡くなりました。父の相続人は、母と私の2名でした。父の遺産は、父母が居住の用に供していたA建物とその敷地の各共有持分3分の2(残りの3分の1は母が所有)とわずかな預金でした。父の遺産総額は、相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×2人=4,200万円)に達しませんでしたので、相続税の申告はしませんでした。また、父の遺産について、相続人である母と私の間で遺産分割協議は行っておらず、父の遺産である建物及び土地は、未だに父の名義のままとなっています。
〈ポイント解説〉役員報酬の税務 【第55回】「役員給与と推計課税」
当社は、青色申告法人です。当社が関わっている事業の中に、許認可等が当社名義とはなっていない事業もあり、その事業から生じる収益等は申告対象としていません。ここで、仮にこの事業の収益が実質的に当社に帰属するものと認定されてしまった場合、推計課税が適用される可能性はありますか。また、当社の役員に関連する税務にはどのような影響がありますか。
基礎から身につく組織再編税制 【第58回】「適格株式交換(支配関係)」
前回は「完全支配関係がある場合」の適格株式交換の要件を確認しました。今回は、「支配関係がある場合」の適格株式交換の要件について解説します。
なお、支配関係の定義については、本連載の【第3回】を参照してください。
〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第29回】「武田薬品工業事件-無形資産の形成による移転価格税制の影響-(大裁平25.3.18)(その1)」~租税特別措置法66条の4第1項、第2項~
独立企業間価格の算定において無形資産単体又は無形資産を含めた複数を取り扱う取引(以下「無形資産取引」とする)が含まれた場合、独立企業間価格の算定方法は利益分割法が適用されることが多い。これは無形資産取引に対する「取引内容」と「取引価格(評価額)」の比較対象取引を見つけることが困難又は存在しないため、基本三法を適用できないことは【第10回】及び【第11回】で述べたとおりであるが、取引内容には「排他性」と「独自性」が、取引価格(評価額)には経済的レント等を含めた「算定方法に含める要素」が重要であるといえる。
給与計算の質問箱 【第47回】「年末調整書類の書式の前年からの変更点」~令和5年分対応~
年末調整書類の書式について前年から変更がありましたら教えてください。
〔会計不正調査報告書を読む〕 【第148回】東テク株式会社「特別調査委員会調査報告書(公表版)(2023年6月29日付)」
東テク株式会社(以下「東テク」と略称する)は、1955年7月設立。設立時の社名は東京機工株式会社。1986年現商号に変更。計装事業(※1)、エネルギー事業及び設備機器販売事業を主たる事業とし、国内7社、海外5社の連結子会社を有している。連結売上126,696百万円、経常利益8,172百万円、資本金1,857百万円。従業員数2,505名(2023年3月期連結実績)。本店所在地は東京都中央区。東京証券取引所プライム市場上場。会計監査人は、EY新日本有限責任監査法人東京事務所。
不適切な取引が発覚した連結子会社の東テク電工株式会社(以下「東テク電工」と略称する)は、1972年11月、現・東テク電工代表取締役社長の尾髙功将氏(報告書上の表記は「D社長」。以下「尾髙東テク電工社長」と略称する)の父親により設立された。設立時の社名は尾髙電工株式会社。東テクは、2008年2月に尾髙電工株式会社の全株式を取得して完全子会社とした。当該株式譲渡に当たり、当面の間、尾髙功将氏を東テク電工の代表取締役社長とする旨が確認され、それ以降も本報告書提出時点まで一貫して、尾髙功将氏が東テク電工の代表取締役社長を務めていた。2012年、尾髙電工株式会社から現在の東テク電工株式会社に商号変更。京葉地区での電気設備工事の設計・施工等を主たる事業とする。売上高1,001百万円、経常利益36百万円、資本金100百万円(2022年3月期実績)。従業員数19名。本店所在地は、千葉県千葉市。
酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第125回】「消費税法判例解析講座(その2)」
前述のとおり、消費税法58条は、「事業者・・・は、政令で定めるところにより、帳簿を備え付けてこれにその行つた資産の譲渡等又は課税仕入れ・・・に関する事項を記録し、かつ、当該帳簿を保存しなければならない。〔下線筆者〕」と規定している。ここでは、備え付けた帳簿に必要事項を記録することが要求されているように読むことができる。
この規定振りは、所得税法や法人税法といった所得課税法にみられる規定に近接しているように思われる。例えば、所得税法施行規則56条1項の規定は、まず帳簿書類の備付けを規定している。